(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ダイヤフラム、バルブ、および成膜方法
(51)【国際特許分類】
F16K 7/12 20060101AFI20231226BHJP
F16J 3/02 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
F16K7/12 Z
F16J3/02 B
F16J3/02 D
(21)【出願番号】P 2021515956
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(86)【国際出願番号】 JP2020015585
(87)【国際公開番号】W WO2020217961
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019086353
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100183380
【氏名又は名称】山下 裕司
(72)【発明者】
【氏名】稲田 敏之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 研太
(72)【発明者】
【氏名】中田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一誠
(72)【発明者】
【氏名】中田 朋貴
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/113666(WO,A1)
【文献】特開2004-060741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/12
F16J 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の薄板と、
前記薄板の一方側の面に環状に形成された薄膜層と、を備え
、
前記薄膜層は、環状の本体部と、前記本体部に対し径方向の内側に位置する環状の内側部と、前記本体部に対し径方向の外側に位置する環状の外側部とを備え、
前記内側部は、その外周縁から内周縁に近づくにつれて前記一方側の面に近づく内側傾斜面を有し、
前記外側部は、その内周縁から外周縁に近づくにつれて前記一方側の面に近づく外側傾斜面を有する、ダイヤフラム。
【請求項2】
前記本体部と前記内側部との境界部は凸面状をなし、
前記内側部の内周縁部は、凹面状をなしている、請求項
1に記載のダイヤフラム。
【請求項3】
流体通路が形成されたボディと、
前記ボディに設けられた弁座と、
前記弁座に当接および前記弁座から離間して前記流体通路を開閉する請求項1
または請求項2に記載のダイヤフラムと、を備え、
前記ダイヤフラムの前記薄膜層は、前記弁座側に位置している、バルブ。
【請求項4】
第1冶具と第2冶具とを用いて薄板に薄膜層を成膜する成膜方法であって、
前記第1冶具には、平面視円形の開口孔が形成され、前記開口孔を形成する内周面の一方側の端部には、一方側へ近づくにつれて径が拡大する環状の第1傾斜面が形成され、
前記第2冶具は、円柱状をなし、その直径は前記開口孔の内径よりも小さく構成され、その外周面の先端部には、先端に近づくにつれて径が縮小する環状の第2傾斜面が形成され、
前記薄板を前記第1冶具に対し前記第1傾斜面を覆うように装着し、
前記第2冶具を前記開口孔に対し前記第1傾斜面側とは反対側から挿入し、
前記薄板のうち、前記第1冶具と第2冶具との間の環状に露出している部分に対して、前記薄膜層を成膜する、成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体製造装置等に用いるダイヤフラム、バルブ、および成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の微細化に伴い、プロセスチャンバ内へ進入するパーティクルの抑制が求められている。プロセスチャンバ内へのパーティクルの進入を抑制するために、基盤に薄膜層を形成したダイヤフラムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス種によっては薄膜層の方がダイヤフラムよりも耐食性が弱く、薄膜層が剥離してしまいパーティクル発生の原因につながる可能性がある。このため、薄膜層の量を減らすために、薄膜層を環状に形成した方が望ましい。しかし、環状の薄膜層を基盤に形成したのみでは、薄膜層と基盤との境界にパーティクルの滞留部が発生してしまう。
【0005】
そこで本開示は、ダイヤフラムにおいて、パーティクルの滞留を抑制可能な技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決するために、本開示の一態様であるダイヤフラムは、金属製の薄板と、前記薄板の一方側の面に形成された薄膜層と、を備え、前記薄膜層は、環状の本体部と、前記本体部に対し径方向の内側に位置する環状の内側部と、前記本体部に対し径方向の外側に位置する環状の外側部とを備え、前記内側部は、その外周縁から内周縁に近づくにつれて前記一方側の面に近づく内側傾斜面を有し、前記外側部は、その内周縁から外周縁に近づくにつれて前記一方側の面に近づく外側傾斜面を有する。
【0007】
前記本体部と前記内側部との境界部は凸面状をなし、前記内側部の内周縁部は、凹面状をなしていてもよい。
【0008】
本開示の一態様であるバルブは、流体通路が形成されたボディと、前記ボディに設けられた弁座と、前記弁座に当接および前記弁座から離間して前記流体通路を開閉する上記のダイヤフラムと、を備え、前記ダイヤフラムの前記薄膜層は、前記弁座側に位置している。
【0009】
本開示の一態様である成膜方法は、第1冶具と第2冶具とを用いて薄板に薄膜層を成膜する成膜方法であって、前記第1冶具には、平面視円形の開口孔が形成され、前記開口孔を形成する内周面の一方側の端部には、一方側へ近づくにつれて径が拡大する環状の第1傾斜面が形成され、前記第2冶具は、円柱状をなし、その直径は前記開口孔の内径よりも小さく構成され、その外周面の先端部には、先端に近づくにつれて径が縮小する環状の第2傾斜面42Bが形成され、前記薄板を前記第1冶具に対し前記第1傾斜面を覆うように装着し、前記第2冶具を前記開口孔に対し前記第1傾斜面側とは反対側から挿入し、前記薄板のうち、前記第1冶具と第2冶具との間の環状に露出している部分に対して、前記薄膜層を成膜する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ダイヤフラムにおいて、パーティクルの滞留を抑制可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る開状態にあるバルブの断面図である。
【
図2】閉状態にあるバルブにおけるダイヤフラム近傍の拡大断面図である。
【
図3】(a)は、最もシート側に位置する薄板と薄膜層の断面図であり、(b)は、(a)の薄板と薄膜層の一部を拡大した断面図である。
【
図4】薄板に薄膜層を成膜する成膜方法の説明図である。
【
図5】(a)は、第1冶具の下面図であり、(b)は、第1冶具および第2冶具の一部拡大断面図である。
【
図6】変形例に係る薄膜層の一部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の一実施形態に係るダイヤフラム30およびバルブ1について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る開状態にあるバルブ1の断面図である。
【0014】
図1に示すように、バルブ1は、ボディ10と、アクチュエータ20と、を備える。なお、以下の説明において、バルブ1の、アクチュエータ20側を上側、ボディ10側を下側として説明する。
【0015】
[ボディ10]
ボディ10は、ボディ本体11と、弁座であるシート12と、ボンネット13と、ダイヤフラム30と、押えアダプタ14と、ダイヤフラム押え15と、ホルダ16と、圧縮コイルスプリング17を備える。
【0016】
ボディ本体11には、弁室11aと、弁室11aに連通する流入路11bおよび流出路11cとが形成されている。樹脂製のシート12は、環状をなし、ボディ本体11において、弁室11aと流入路11bとが連通する箇所の周縁に設けられている。
図2に示すように、シート12の頂面12Aは、平面状をなしている。流入路11bおよび流出路11cは流体通路に相当する。
【0017】
図1に示すように、ボンネット13は、有蓋の略円筒状をなし、その下端部をボディ本体11に螺合させることにより、弁室11aを覆うようにボディ本体11に固定されている。
【0018】
弁体であるダイヤフラム30は、ボンネット13の下端に配置された押えアダプタ14とボディ本体11の弁室11aを形成する底面とにより、その外周縁部が挟圧され保持されている。ダイヤフラム30がシート12に対し離間および当接(圧接)することによって、流体通路の開閉が行われる。ダイヤフラム30の詳細な構成について後述する。
【0019】
ダイヤフラム押え15は、ダイヤフラム30の上側に設けられ、ダイヤフラム30の中央部を押圧可能に構成されている。ダイヤフラム押さえ15はホルダ16に嵌合されている。
【0020】
ホルダ16は、略円柱状をなし、ボンネット13内に上下移動可能に配置されている。後述のステム23Bは、ホルダ16の上部に対し螺合されている。
【0021】
圧縮コイルスプリング17は、ボンネット13内に設けられ、ホルダ16を常に下側に付勢している。バルブ1は、圧縮コイルスプリング17によって、通常時(アクチュエータ20の非作動時)は閉状態に保たれる。
【0022】
[アクチュエータ20]
アクチュエータ20は、エア駆動式であり、全体で略円柱形状をなし、ケーシング21と、仕切ディスク22と、第1ピストン部23と、第2ピストン部24と、を備える。
【0023】
ケーシング21は、下ケーシング21Aと、下端部が下ケーシング21Aの上端部に螺合された上ケーシング21Bとを有する。下ケーシング21Aは、略段付き円筒状をなしている。下ケーシング21Aの下端部の外周が、ボンネット13の貫通孔の内周に螺合されている。上ケーシング21Bは、有蓋の略円筒状をなしている。上ケーシング21Bの上端部には、流体導入路21cが形成されている。
【0024】
下ケーシング21Aの下端部の外周には、ナット25が螺合されている。ナット25は、ボンネット13に当接して、下ケーシング21Aのボンネット13に対する回動を抑制する。
【0025】
仕切ディスク22は、略円盤状をなし、ケーシング21内に移動不能に設けられている。
【0026】
第1ピストン部23は、第1ピストン23Aと、ステム23Bと、第1上延出部23Cとを有する。第1ピストン23Aは、仕切ディスク22と下ケーシング21Aとの間に設けられ、略円盤状をなしている。下ケーシング21Aと第1ピストン23Aとにより、第1圧力室S1が形成されている。
【0027】
ステム23Bは、第1ピストン23Aの中央部から下側に向かって延びている。ステム23Bは、その下端部はホルダ16に螺合されている。第1上延出部23Cは、第1ピストン23Aの中央部から上側に向かって延び、仕切ディスク22を貫通している。
【0028】
第1ピストン23A、ステム23B、および第1上延出部23Cには、上下方向に延び第1圧力室S1および第2圧力室S2に連通する第1流体流入路23dが形成されている。
【0029】
第2ピストン部24は、第2ピストン24Aと、第2上延出部24Bとを有する。第2ピストン24Aは、仕切ディスク22と上ケーシング21Bとの間に設けられ、略円盤状をなしている。仕切ディスク22と第2ピストン24Aとにより、第2圧力室S2が形成される。第2ピストン24Aには、第1上延出部23Cの上端部が連結されている。
【0030】
第2上延出部24Bは、第2ピストン24Aの中央部から上側に向かって延び、流体導入路21cに挿入されている。第2上延出部24Bには、流体導入路21cおよび第1流体流入路23dに連通する第2流体流入路24cが形成されている。
【0031】
[バルブ1の開閉動作]
次に、本実施形態に係るバルブ1の開閉動作について説明する。
図2は、閉状態にあるバルブ1におけるダイヤフラム30近傍の拡大断面図である。
【0032】
本実施形態のバルブ1では、第1、2圧力室S1、S2に駆動流体が流入していない状態では、
図2に示すように、ホルダ16およびステム23Bは圧縮コイルスプリング17の付勢力によって下死点にあり(ボディ本体11に近接し)、ダイヤフラム押え15によりダイヤフラム30が押され、ダイヤフラム30の下面がシート12に圧接されてバルブ1は閉状態となっている。つまり、バルブ1は、通常状態(駆動流体が供給されていない状態)では閉状態である。
【0033】
そして、図示せぬ駆動流体供給源からバルブ1へ駆動流体が流れる状態にする。これにより、バルブ1へ駆動流体が供給される。駆動流体は、図示せぬエアチューブおよび管継手を介して、流体導入路21cを通過し、第1、2流体流入路23d、24cを通過して、第1、2圧力室S1、S2に流入する。第1、2圧力室S1、S2に駆動流体が流入すると、第1、2ピストン23A、24Aが、圧縮コイルスプリング17の付勢力に抗して上昇する。これにより、ホルダ16、ダイヤフラム押さえ15およびステム23Bは上死点に移動してボディ本体11から離間し、弾性力および流体(ガス)の圧力によってダイヤフラム30は上側に移動し、流入路11bと流出路11cとが連通し、バルブ1は開状態となる。
【0034】
バルブ1を開状態から閉状態にするには、図示せぬ三方弁を、駆動流体がバルブ1のアクチュエータ20(第1、2圧力室S1、S2)から外部へ排出する流れに切り替える。これにより、第1、2圧力室S1、S2内の駆動流体が、第1、2流体流入路23d、24c、および流体導入路21cを介して、外部へ排出される。これにより、ホルダ16およびステム23Bは圧縮コイルスプリング17の付勢力によって下死点に移動し、バルブ1は閉状態となる。
【0035】
[ダイヤフラム30]
次に、ダイヤフラム30の構成について説明する。
【0036】
ダイヤフラム30は、球殻状をなし、上に凸の円弧状が自然状態となっている。ダイヤフラム30は、例えば、複数枚の金属の薄板31と薄膜層32とを備えている。各薄板31は、ニッケルコバルト合金、ステンレス鋼等により構成され、平板状の素材を円形に切り抜き、中央部を上方へ膨出させて球殻状に形成される。
【0037】
図3(a)は、最もシート12側に位置する薄板31と薄膜層32の断面図であり、(b)は、(a)の薄板31と薄膜層32の一部を拡大した断面図である。
【0038】
薄膜層32は、薄板31の凹状面である接液面31Aに環状に形成されている。接液面31Aは、薄板31の一方側の面に相当する。薄膜層32は、例えば、炭素膜またはフッ素樹脂膜である。炭素膜は、例えば、DLC(Diamond like Carbon)膜であり、フッ素樹脂膜は、例えば、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)や四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体(FEP)やテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)である。薄膜層32は、その膜厚は例えば2~4μmである。このため、低摩擦、耐摩耗、耐腐食性に優れたダイヤフラム30を提供することができ、シート12のダイヤフラム30接触部への転写を抑制することができる。
【0039】
薄膜層32は、環状の本体部33と、本体部33に対し径方向の内側に位置する環状の内側部34と、本体部33に対し径方向の外側に位置する環状の外側部35とを備える。本体部33の膜厚は例えば2~4μmである。本体部33は、径方向に沿った断面が略矩形状をなし、下面33Aは接液面31Aに略平行になっている。下面33Aの径方向の幅は、シート12の頂面12Aの径方向の幅より大きく構成される。内側部34は、その外周縁から内周縁に近づくにつれて接液面31Aに近づく内側傾斜面34Aを有する。外側部35は、その内周縁から外周縁に近づくにつれて接液面31Aに近づく外側傾斜面35Aを有する。
【0040】
次に、ダイヤフラム30の製造方法について説明する。
【0041】
図4は、複数枚の薄板31に薄膜層32を成膜する成膜方法の説明図である。なお、
図4では、薄板31は一枚のみ図示している。
図5(a)は、第1冶具41の下面図であり、(b)は、第1冶具41および第2冶具42の一部拡大断面図である。
【0042】
まず、複数枚の円板状かつ平板状の薄板(素材)を準備し、それらを積層して接着剤等により互いに接着させて一体にする。一体化した複数枚の薄板31を、プレス装置の冶具に固定して、パンチにより中央部を押圧して、球殻状に成形する。
【0043】
次に、成形後の複数枚の薄板31を、成膜装置40の金属製または樹脂製の第1冶具41に固定する。
【0044】
第1冶具41は、
図4(a)、
図5(a)に示すように、平面視略正方形の板状をなし、その下面側の中央部には平面視円形の開口孔41aが形成されている。第1冶具41には、一方の側面(
図5(a)における上側の側面)から他方の側面(
図5(a)における下側の側面)に向かって延びるスリット41bが形成されている。スリット41bは、一方の端面に開口し、開口孔41aに連通している。スリット41bは、第1冶具41の中央部において上に凸の略球殻状をなしている。
図5(b)に示すように、第1冶具41において、開口孔41aを形成する内周面41Cのスリット41b側の端部には、スリット41b側(外側)に近づくにつれて径が拡大する環状の第1傾斜面41Dが形成されている。
【0045】
第1冶具41の側面の開口から薄板31が挿入され、
図4(a)に示すように、薄板31が第1冶具41に対し装着される。これにより、薄板31は、第1傾斜面41Dを覆うように第1冶具41に装着され、薄板31の接液面31Aは、開口孔41aを介して外部に露出している。
【0046】
次に、第2冶具42を開口孔41aに挿入して、薄板31の接液面31Aに当接させる。第2冶具42は、金属製または樹脂製であり、円柱状をなしている。第2冶具42の直径は、開口孔41aの内径よりも小さく構成されている。開口孔41aの中心軸と、第2冶具42の中心軸とが、同軸となるように、第2冶具42は開口孔41aに挿入される。薄板31の接液面31Aのうち、開口孔41aを介して露出している部分は環状をなしている。
図5(b)に示すように、第2冶具42の外周面42Aの先端部には、先端に近づくにつれて径が縮小する環状の第2傾斜面42Bが形成されている。
【0047】
次に、
図4(c)に示すように、薄板31の接液面31Aのうち、環状に露出している部分に対して、薄膜層32を成膜する。薄膜層32がDLC膜である場合には、物理蒸着法(PVD)および/または化学蒸着法(CVD)により薄膜層32を成膜する。例えば、マグネトロンスパッタとPACVD(プラズマアシストCVD)とを組み合わせてDLC膜を成膜する。薄膜層32がPFA膜である場合には、静電塗装を用いて成膜する。なお、薄膜層32がDLC膜である場合には、噴霧塗装であってもよい。
【0048】
そして、第1冶具41および第2冶具42を外すことにより、ダイヤフラム30が得らえる。すなわち、第1傾斜面41Dおよび第2傾斜面42Bに沿って、内側部34の内側傾斜面34Aおよび外側部35の外側傾斜面35Aを有する薄膜層32が成膜されたダイヤフラム30が得られる。
【0049】
以上説明した本実施形態のダイヤフラム30を備えるバルブ1によれば、薄膜層32は、環状の本体部33と、本体部33に対し径方向の内側に位置する環状の内側部34と、本体部33に対し径方向の外側に位置する環状の外側部35とを備え、内側部34は、その外周縁から内周縁に近づくにつれて接液面31Aに近づく内側傾斜面34Aを有し、外側部35は、その内周縁から外周縁に近づくにつれて接液面31Aに近づく外側傾斜面35Aを有する。当該構成によれば、ダイヤフラム30の薄膜層32と薄板31との境界において、パージの際にパーティクルが滞留するのを抑制することができる。よって、半導体の製造中にプロセスチャンバ内へ滞留したパーティクルが進入するのを抑制することができ、半導体の歩留まりを向上させることができる。
【0050】
本実施形態の第1冶具41と第2冶具42とを用いて薄板31に薄膜層32を成膜するによれば、第1冶具41には、平面視円形の開口孔41aが形成され、開口孔41aを形成する内周面の一方側の端部には、一方側へ近づくにつれて径が拡大する環状の第1傾斜面41Dが形成され、第2冶具42は、円柱状をなし、その直径は開口孔41aの内径よりも小さく構成され、その外周面の先端部には、先端に近づくにつれて径が縮小する環状の第2傾斜面42Bが形成されている。そして、薄板31を第1冶具41に対し第1傾斜面41Dを覆うように装着し、第2冶具42を開口孔41aに対し第1傾斜面41D側とは反対側から挿入し、薄板31のうち、第1冶具41と第2冶具42との間の環状に露出している部分に対して、薄膜層32を成膜する。
【0051】
これにより、内側部34に、その外周縁から内周縁に近づくにつれて接液面31Aに近づく内側傾斜面34Aを有し、外側部35に、その内周縁から外周縁に近づくにつれて接液面31Aに近づく外側傾斜面35Aを有する薄膜層32を形成することができる。よって、ダイヤフラム30の薄膜層32と薄板31との境界において、パージの際にパーティクルが滞留するのを抑制することができる。
【0052】
なお、本開示は、上述した実施例に限定されない。当業者であれば、本開示の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
【0053】
薄板31は、複数枚であったが、一枚であってもよい。また、シート12の頂面12Aは、平面状であったが、上に凸の曲面(径方向に沿った断面形状がR面)であってもよい。アクチュエータ20は、エア駆動式であったが、電磁駆動式またはピエゾ素子駆動式であってもよい。
【0054】
図6に示すように、本体部33と内側部34との境界部34Bは凸面状をなし、内側部34の内周縁部34Cは、凹面状をなしていてもよい。同様に、本体部33と外側部35との境界部35Bは凸面状をなし、内側部35の外周縁部35Cは、凹面状をなしていてもよい。当該構成によれば、薄膜層32と薄板31との境界において、パージの際にパーティクルが滞留するのをさらに抑制することができる。
【0055】
図7に示すように、第1冶具41を、第1-1冶具41Eと、第1-2冶具41Fとにより構成してもよい。第1-1冶具41Eに開口孔41a、第1傾斜面41Dが形成され、第1-1冶具41Eと第1-2冶具41Fとを組み合わせることによりスリット41bが形成される。
【符号の説明】
【0056】
1:バルブ
11:ボディ本体
11b:流入路
11c:流出路
12:シート
30:ダイヤフラム
31:薄板
31A:接液面
32:薄膜層
33:本体部
34:内側部
34A:内側傾斜面
35:外側部
35A:外側傾斜面
41:第1冶具
41a:開口孔
41C:内周面
41D:第1傾斜面
41E:第1-1冶具
41F:第1-2冶具
42:第2冶具
42A:外周面
42B:第2傾斜面