IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベステラ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-塔型風力発電設備の解体方法 図1
  • 特許-塔型風力発電設備の解体方法 図2
  • 特許-塔型風力発電設備の解体方法 図3
  • 特許-塔型風力発電設備の解体方法 図4
  • 特許-塔型風力発電設備の解体方法 図5
  • 特許-塔型風力発電設備の解体方法 図6
  • 特許-塔型風力発電設備の解体方法 図7
  • 特許-塔型風力発電設備の解体方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】塔型風力発電設備の解体方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 13/00 20160101AFI20231226BHJP
【FI】
F03D13/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022538506
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2020028099
(87)【国際公開番号】W WO2022018797
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】594154978
【氏名又は名称】ベステラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】吉野 佳秀
(72)【発明者】
【氏名】竹本 正治
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/116511(WO,A1)
【文献】特開2016-94734(JP,A)
【文献】特開2010-242362(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0102039(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の塔体と、該塔体の上端部に設けられた風力発電機と、を備え、前記塔体の上端部に上方先細り部を有する塔型風力発電設備の解体方法において、
前記塔体の内部空洞内に前記上方先細り部の下端部の上方まで伸長する内部支柱を構築する内部支柱構築工程と、
前記塔体の上方先細り部の内壁の所定位置に当接される当接当接支持部材を介して前記内部支柱の上部に設けられたジャッキによって前記上方先細り部に該上方先細り部より上方の全設備の荷重以上の支持力を上方に加える塔体上端部支持工程と、
作業者が載って作業可能な作業台を前記塔体の上部から昇降可能に吊り下げる作業台設置工程と、
前記作業台での作業により前記支持された状態の上方先細り部の前記当接支持部材の当接位置よりも下部の所定領域を塔体全周に亘って切断除去する先細り部下部除去工程と、
前記先細り部下部除去工程の後、下方側に残存する塔体の内壁に突設された、前記上方先細り部より上方の全設備を載置可能な載置用突設部に残存する前記上方先細り部を前記ジャッキによって下降させて載置する先細り部下降載置工程と、
前記作業台を利用して、前記先細り部下部除去工程の後に下方側に残存する塔体の最上部の所定範囲を塔体全周に亘って切断除去する下方側最上部除去工程と、
前記残存する上方先細り部から前記内部支柱を吊り下げた状態で該内部支柱の下端部を除去し、下端部が除去された状態の内部支柱を前記内部空洞内の地上に下降する内部支柱短縮工程と、を有し、
前記先細り部下降載置工程と、前記下方側最上部除去工程と、前記内部支柱短縮工程と、を繰り返して行う下降・除去繰り返し工程を含むことを特徴とする塔型風力発電設備の解体方法。
【請求項2】
前記下方側最上部除去工程は、前記残存する塔体上端部と前記残りの塔体の上端部とを連結部材で連結する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の塔型風力発電設備の解体方法。
【請求項3】
前記作業台設置工程は、前記作業台を前記塔体の外周全周に亘って設置することを特徴とする請求項1又は2に記載の塔型風力発電設備の解体方法。
【請求項4】
前記塔体の下端部に設備搬入用の開口部を形成する開口部形成工程を前記内部支柱構築工程の前に含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の塔型風力発電設備の解体方法。
【請求項5】
前記塔体の上端部のみに上方先細り部を有し、それより下部が寸胴である場合、前記所定領域は、前記塔体の上方先細り部と寸胴部との接続部の下部を含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の塔型風力発電設備の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電設備の解体方法、特に塔型の風力発電設備の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塔型の風力発電設備は、例えば下記特許文献1に記載されるように、多くの場合、塔体の上端部に風力発電機を備える。また、塔体の内部は円形断面の空洞である。こうした塔型風力発電設備は、風力発電効率を追求するため、平均風速が高く、風向が安定しており、乱れが少ない、いわゆる風況の良い地点、つまり山の上や海上(洋上)など、様々な場所に設営される。
【0003】
この種の塔型風力発電設備の寿命は20~30年(日本国における耐用年数は17年)とされている。寿命又は耐用年数となった塔型風力発電設備は、他の発電設備と同様に解体される。また、落雷や台風などにより事故・故障となり、寿命より手前で解体される場合もある。従来の塔型風力発電設備の解体方法は、建設時の建設方法と同様に、塔の周囲に足場を組み、大型揚重機を発電設備の近傍に移動又は輸送し、この大型揚重機を用いて風力発電機及び塔体を解体する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-102692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大型揚重機を用いる塔型風力発電設備の解体工事には、例えば、大型揚重機の使用に伴うコスト高、大型揚重機の輸送、大量の足場等資機材の輸送といった問題があり、更には、大型揚重機の使用に支障のない広大な作業領域を必要とする。また、塔型風力発電設備は通常風の強い場所に設営されることから、強風の影響を受けやすい大型揚重機では、頻繁に解体作業の中断を余儀なくされる。具体的に、クレーン等安全規則によれば、10分間の平均風速10m以上で作業中止とされる。
【0006】
近年の高出力化に伴って、塔型風力発電設備は更に巨大化しており、寿命又は耐用年数となって解体が必要な塔型風力発電設備は、塔体の上端部のみが上方先細りで、それより下部は寸胴の形状や、塔体全体が上方先細りとなった形状のものが解体対象となっている。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、大型揚重機を用いることなく、また塔の周囲に足場を組むことなく、上端部に上方先細りの部分を有する塔体を解体することができ、工事期間の短縮を達成することも可能な塔型風力発電設備の解体方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明の塔型風力発電設備の解体方法は、
中空の塔体と、該塔体の上端部に設けられた風力発電機と、を備え、前記塔体の上端部に上方先細り部を有する塔型風力発電設備の解体方法において、
前記塔体の内部空洞内に前記上方先細り部の下端部の上方まで伸長する内部支柱を構築する内部支柱構築工程と、前記塔体の上方先細り部の内壁の所定位置に当接される当接当接支持部材を介して前記内部支柱の上部に設けられたジャッキによって前記上方先細り部に該上方先細り部より上方の全設備の荷重以上の支持力を上方に加える塔体上端部支持工程と、作業者が載って作業可能な作業台を前記塔体の上部から昇降可能に吊り下げる作業台設置工程と、前記作業台での作業により前記支持された状態の上方先細り部の前記当接支持部材の当接位置よりも下部の所定領域を塔体全周に亘って切断除去する先細り部下部除去工程と、前記先細り部下部除去工程の後、下方側に残存する塔体の内壁に突設された、前記上方先細り部より上方の全設備を載置可能な載置用突設部に残存する前記上方先細り部を前記ジャッキによって下降させて載置する先細り部下降載置工程と、前記作業台を利用して、前記先細り部下部除去工程の後に下方側に残存する塔体の最上部の所定範囲を塔体全周に亘って切断除去する下方側最上部除去工程と、前記残存する上方先細り部から前記内部支柱を吊り下げた状態で該内部支柱の下端部を除去し、下端部が除去された状態の内部支柱を前記内部空洞内の地上に下降する内部支柱短縮工程と、を有し、前記先細り部下降載置工程と、前記下方側最上部除去工程と、前記内部支柱短縮工程と、を繰り返して行う下降・除去繰り返し工程を含むことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、塔体の上端部の上方先細り部が当接支持部材を介して内部支柱の上部のジャッキによって支持されている状態で、塔体の上部から吊り下げ設置された作業台に載って当接支持部材の当接位置よりも下部の上方先細り部の所定領域を切断除去すると、それより上方の残存する上方先細り部がそれより下方側の塔体から分離される。この分離された残存する上方先細り部をジャッキで下降させて、その下端部を残存する塔体の内壁に突設された載置用突起部上に載置させると、残存する上方先細り部の下部は残存する塔体内に収容されるので、その上方先細り部の倒れが防止されると共に上方先細り部の荷重を残存する塔体で受けて上方先細り部が安定支持される。その状態で、上記作業台に載って、残存する塔体の最上部の所定範囲を塔体全周に亘って除去し、それに伴い、残存する上方先細り部から内部支柱を吊り下げた状態で内部支柱の下端部を除去してから内部空洞内の地上に下降し、これを上記残存する上方先細り部の下降と共に繰り返すことにより、残存する塔体を上部から順に解体することができる。その結果、例えば、残存する上方先細り部が地上に下降されたら、その上方先細り部を解体するか、または搬出することにより、塔型風力発電設備を完全に解体することができる。この間、大型揚重機を用いる必要がなく、残存する塔体も残存する上方先細り部も安定していることから、解体作業に困難性もなく、また解体作業を頻繁に中断する必要もなく、簡易な作業のみで解体することができ、結果として工事期間を短縮することができる。
【0010】
本発明の更なる構成は、前記下方側最上部除去工程は、前記残存する塔体上端部と前記下方側の残存する塔体の上端部とを連結部材で連結する工程を含むことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、残存する上記塔体上端部と残りの塔体の上端部を連結部材で連結することにより、残存する塔体上端部の倒れが防止されて安定する。
【0012】
本発明の更なる構成は、前記作業台設置工程は、前記作業台を前記塔体の外周全周に亘って設置することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、作業台に載って塔体を塔体の外側から解体する際、作業環境が安定し、効率よく解体作業を行うことが可能となる。
【0014】
本発明の更なる構成は、前記塔体の下端部に設備搬入用の開口部を形成する開口部形成工程を前記内部支柱構築工程の前に含むことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、設備搬入用の開口部から内部支柱部材やジャッキを搬入することにより、塔体内の内部支柱の構築や内部支柱上部へのジャッキの設置(移動)を容易に行うことが可能となる。
【0016】
本発明の更なる構成は、前記塔体の上端部のみに上方先細り部を有し、それより下部が寸胴である場合、前記所定領域は、前記塔体の上方先細り部と寸胴部との接続部の下部を含むことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、塔体上端部の上方先細り部とその直下の寸胴部は、塔体の内壁から塔内に突出するフランジを介して連結・接続されることが多いが、この接続部の下部を含めて除去することにより、塔内に突出するフランジを除去することができるので、残存する上方先細り部を寸胴部内に下降する際、フランジとの干渉を回避してスムースに下降することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、下から足場を組む必要も、大型揚重機を用いる必要も、解体作業を頻繁に中断する必要もなく、塔型風力発電設備の解体工事期間を短縮することも可能となることから、塔型風力発電設備の解体工事のコストを低廉化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の塔型風力発電設備の解体方法が適用された塔型風力発電設備の一実施の形態を示す概略構成一部断面正面図である。
図2図1の塔型風力発電設備の説明図である。
図3図1の塔型風力発電設備の解体方法の概要の説明図である。
図4図1の塔型風力発電設備の解体方法の説明図である。
図5図1の塔型風力発電設備の解体方法に用いられる作業台の平面図である。
図6図1の塔型風力発電設備の解体方法の説明図である。
図7図1の塔型風力発電設備の解体方法の説明図である。
図8図1の塔型風力発電設備の解体方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の塔型風力発電設備の解体方法の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、この実施の形態の解体方法が適用された塔型風力発電設備の解体前の状態を示す一部断面正面図である。なお、図1では、後述するブレード6(図2参照)が省略されているが、このブレード6は、解体に先立って除去されてもよいし、残存されたままでもよいし、或いは、中間部で切断除去するなどしてもよい。この塔型風力発電設備は、既存の塔型風力発電設備と同様に、塔体1の上端部に風力発電機2を備え、一般に、塔体1の内部は断面円形の内部空洞3になっている。この塔体1の内部空洞3には、例えば風力発電機2の保守・点検を行う人が登れるように、元来は、図示しない梯子やエレベータなどが設けられている。塔体1の高さや大きさは、例えば風力発電設備の設営場所によってさまざまであるが、この実施の形態の塔体1の高さは、ハブ7の中心位置で85mである。この塔型風力発電設備、特に塔体1のサイズについては後述する。なお、塔体1の内部空洞3が部分的に閉塞されているような場合には、内部空洞3が連続するように閉塞を除去する。
【0021】
図2は、図1の塔型風力発電設備の解体前の説明図であり、図2(a)は正面図、図2(b)は右側面図である。塔体1の頂部の風力発電機2は、ローター4及びナセル5を有する。ローター4は風力発電機2の回転子であり、ナセル5は、風力発電機2の主要機器を収納する収納部(筐体)である。ローター4は、風車の翼を構成するブレード6、ブレード6を主軸に接続するためのハブ7などを備えて構成され、ハブ7はロータカバーで覆われている。ナセル5内には、主として主軸の回転速度を増速するトランスミッション、増速された回転軸から起電する発電装置などが収納されている。また、ナセル5の下部には、ローター4の向き、つまりヨー軸をナセル5ごと調整する図示しないヨー調整装置などが設けられている。また、塔体1の下部には、上記発電装置で起電された電力を系統に適した電力に変換する図示しない変電装置なども配設されている。
【0022】
この実施の形態の塔型風力発電設備は、図2より明らかなように、塔体1の上端部のみが上方先細りで、その下部は寸胴である。この実施の形態では、合計で5つの筒状塔体部材10を上方に積み上げるようにして塔体1が構築されているが、このうちの下方4つの筒状塔体部材10-2~10-5は円筒形状、つまり寸胴であり、最上部の筒状塔体部材10-1のみが上方先細りの円錐台形状であり、その内部空洞3も上方先細りである。具体的には、地上66mの高さまで塔体1は寸胴で、それより上方はテーパ状の先細りである。この実施の形態の寸胴部9における塔体1の外径は4.3m、塔体頂部、すなわちナセル5直下における塔体1の外径は3.0mである。ちなみに、上記ブレード6の長さは約43mであり、ブレード6を含む塔型風力発電設備の最大高さは約129mである。なお、これらのサイズ(寸法)は、あくまでも一例である。また、上記筒状塔体部材10は、20~40mm程度の鋼板からなる、いわゆる鉄皮構造である。
【0023】
前述したように、塔型風力発電設備の寿命は20~30年、日本国での耐用年数は17年であり、寿命や耐用年数となった塔型風力発電設備は解体される。図2は、この実施の形態で塔型風力発電設備の解体作業が行われる前の状態を示しており、この実質的な解体工事の準備といえる作業では、塔体1の下端部に、設備搬入用の開口部14を形成する(開口部形成工程)。この実施の形態の解体方法では、前述した塔体1の上方先細り部8を支持するためのジャッキを搭載する内部支柱部材やジャッキ自体などを塔体1の内部空洞3に搬入する必要がある。一般に、塔体1の下端部には、人が入れる程度の入口Eがあるが、そこからでは設備(設備用部材)を搬入することは困難である。そのため、例えば上記入口Eを拡げて設備(設備用部材)を搬入可能な大きさの開口部14を形成し、必要に応じてその開口部周辺の補強を行う。また、この実施の形態では、解体作業に先立ち、解体中の塔体1の倒壊を防止するために、例えば図1に示すように、塔体1の上端部に連結された倒壊防止用ワイヤロープ11の下端部を地表に固定する。この倒壊防止用ワイヤロープ11には、例えば、張力自動調整装置12を介装して、倒壊防止用ワイヤロープ11に作用する張力が一定になるようにする。なお、以下の説明では、この塔体倒壊防止用ワイヤロープ11を省略する。
【0024】
図3は、この実施の形態の塔型風力発電設備の解体方法の概要を示す説明図であり、図の左方から順に解体が進められる。この解体方法では、塔体1の上端部の上記上方先細り部8と寸胴部9の接続部を含めて上方先細り部8の下端部(所定領域)を切断除去する(先細り部下部除去工程)。作業は、後述するように、塔体1の外壁の外側に吊り下げ設置された作業台15に載って塔体1の外側から行う。切断除去で生じた解体物は、例えば図1に示すように、作業台15に取付けられた揚重装置13を用いて塔体1の外側から下降する。上方先細り部8の下端部を除去すると、残存する上方先細り部8が下方の寸胴部9から切り離されるので、その上方先細り部8を寸胴部9の内部空洞3内に下降しながら(先細り部下降載置工程)、残存している寸胴部9の最上部を切断除去し(下方側最上部除去工程)、それによって生じた解体物を、例えば上記揚重装置13を用いて塔体1の外側から下降する。また、この実施の形態では、これらに伴って、後述する内部支柱16の下端部を順次除去して内部支柱16を次第に低くする工程(内部支柱短縮工程)も行う。そしてこれらの工程を繰り返すこと(下降・除去繰り返し工程)により、一番上の寸胴筒塔体状部材(上記円筒形状の筒状塔体部材)10-2、上からの2番目の寸胴筒状塔体部材10-3、上から3番目の寸胴筒状塔体部材10-4、一番下の寸胴筒状塔体部材10-5の順に解体することができ、地上まで下降された上方先細り部8(上方先細り筒状塔体部材10-1)を最後に解体する。なお、地上まで下降された上方先細り部8は、十分に低く、或いは十分に小さいので、解体せず、小型クレーンなどの重機を用いて搬出してもよい。また、塔体1の内部空洞3に設けられている前述の梯子やエレベータなどは適宜のタイミングで撤去する。また、上記揚重装置13は、例えば風力発電機2(ナセル5)に取付けるなどしてもよい。以下の図面では、揚重装置13を省略している。
【0025】
上記残存する上方先細り部8は、塔体1の内部から支持する。そのため、塔体1の内部空洞3には、塔体1の下端部領域から風力発電機2の下方まで連続する内部支柱16を立て(内部支柱構築工程)、この内部支柱16に設けたジャッキ17で残存する上方先細り部8を支持する。ジャッキ17は、例えば、内部支柱16の上端部に取付けられる。ジャッキ17を筒内の上端部近傍で支持することから内部支柱16と称しているが、実際には、例えば、折り畳み型の足場部材16aを用い(図4など参照)、これを、例えば上方先細り部8に取付けた図示しない揚重装置で吊り上げながら、その下端部に個別の足場部材16aを継ぎ足し、これを順次繰り返して、塔体1の内部空洞3に内部支柱16を構築する。したがって、内部支柱16が足場部材16aで構成されていることから、この足場部材16aに載って塔内から各種作業を行うこともできる。残存する上方先細り部8を支持する方法については、後述する。
【0026】
また、内部支柱構築工程に伴って、又は、それと前後して、塔体1の外壁の外側に作業台15を吊り下げ設置する(作業台設置工程)。この作業台15は、作業者がそれに載って解体作業を行うためのものであり、塔体1の上部、すなわち上方先細り部8の上端部又は風力発電機2(ナセル5)から昇降可能に吊り下げられている。また、この実施の形態では、後述するように、作業台15を塔体1の外周全周に亘って設ける。この実施の形態の塔型風力発電設備の解体方法では、凡そ、塔体1の外側から寸胴部9を解体し、それを上から順次下向きに繰り返すので、それに伴って下降され且つ塔体1の外周全周に亘って設けられる作業台15の内径は一定でよい。すなわち、ひとたび設置された作業台15は、そのまま寸胴部9に沿って次第に下降されながら解体作業位置に設置される。この実施の形態では、塔体1の外周全周を囲繞する作業台15は、例えば図1に示すように、風力発電機2(ナセル5)又は上記上方先細り部8の上端部からワイヤロープ15aで吊り下げられると共に塔体1の外壁に固定される。この作業台15は、例えば塔体1の外周全周を囲繞するように地上で組み上げ、例えば、風力発電機2(ナセル5)に取付けられた揚重装置でそれを吊り上げて解体箇所に設置してもよい。また、風力発電機2の部分から作業台部材を吊り下げ、それを解体箇所で組み上げて構築してもよい。
【0027】
図4は、塔型風力発電設備、具体的には塔体1の解体開始時の構成を示している。図から明らかなように、塔体1の内部空洞3には、図示しない下端部領域から上方先細り部8、すなわち風力発電機2の下方まで連続する上記内部支柱16が上記折り畳み型の足場部材16aを積み上げて構築されている(内部支柱構築工程)。また、塔体1の上方先細り部8と寸胴部9の上端部の接続部における外壁の外側には、塔体1を囲繞する上記作業台15が昇降可能に吊り下げ設置されている(作業台設置工程)。この作業台15は、足場部材を組んで構築されているが、その詳細は後述する。また、図は、塔体1が解体される直前の状態を示しており、未だ上方先細り部8と寸胴部9は連結されているが、この上方先細り部8の下端部と寸胴部9の上端部には上下方向に伸長する連結部材18が連結されており、その連結部材18は上方先細り部8から吊り下げられている。この連結部材18は、例えばH型鋼などにより頑健に構成されている。
【0028】
図5は、図4の上端部で上方先細り部8を水平方向に切断して上方から見た平面図である。図4図5から明らかなように、内部支柱16の上端には、例えばH型鋼で構築した平面視八角形の架台19の上面に4つのジャッキ17が搭載されている。このジャッキ17は、上下方向に伸長するステップロッド20を伸長方向に継ぎ足したり取り除いたりすることで、例えば吊り下げられている重量物を上下方向に移動したり、その吊り下げ状態で維持したりすることができるものである。このステップロッド20の下端部には、例えばH型鋼で構築した支持台21が連結されており、この支持台21の上面に円板状の当接支持部材22が搭載固定されている。
【0029】
この円板状の当接支持部材22は、例えば40mm程度の厚さの鋼板で構成され、上記上方先細り部8の下端部よりやや上方の内壁と同等の(半径又は直径)の円形外周面を有する。この円板状の当接支持部材22を上方先細り部8の下端部から上記ジャッキ17で支持台21と共に吊り上げていくと、当接支持部材22の円形外周面が半径又は直径の一致する上方先細り部8の内壁に当接し、それ以上、上昇できなくなる。すなわち、ジャッキ17は、当接支持部材22の当接部分で上方先細り部8より上方の全設備の荷重を支持する上向きの支持力を上方先細り部8に付与することが可能となる(塔体上端部支持工程)。その状態で、上方先細り部8の下端部のうち、例えば図4の上下の一点鎖線の間の部分を切断除去(解体)すると、残存する上方先細り部8から上方の全設備の荷重が上記当接支持部材22及び支持台21を介してジャッキ17で支持される。
【0030】
なお、上記当接支持部材22は、必ずしも外形が円形でなくともよい。すなわち、当接支持部材22は上方先細り部8の外形と同様に上方先細りになる内壁に当接し、それ以上、上方に移動することなく、上方先細り部8の内壁で突っ張るものであるから、例えば、上方先細り部8の内壁と同等の(半径又は直径の)円弧部を少なくとも2カ所(その場合は内部空洞3の直径方向の位置に規定)、外形に備えていればよい。但し、上記ジャッキ17によって残存する上方先細り部8を安定支持するためには、上記円弧部が3カ所以上であることが好ましい。また、当接支持部材22は、個別の固定手段によって当接する上方先細り部8の内壁に固定されるものであってもよい。
【0031】
上記上方先細り部8の下端部を解体する場合には、上方先細り部8と上記一番上の寸胴筒状塔体部材10-2の接続部の下部を含めて切断除去(解体)することが望ましい。この上方先細り部8と一番上の寸胴筒状塔体部材10-2との接続部を含めて、塔体1を構成する上記筒状塔体部材10同士は、図4図1も参照)に示すように、互いの下端部及び上端部から塔内に突設されたフランジ23を介して、例えば対向するフランジ23間にボルトを挿通し、その挿通突出部にナットを螺合し締め付けて接続・固定されている。後述するように、残存する上方先細り部8は上記ジャッキ17で支持されながら寸胴部9の内部空洞3内に下降される。この上方先細り部8の上方向への縮小率は、上方先細り部8の高さ1mあたり、半径で20mm程度であり、図4の上下の一点鎖線間の高さ方向の距離は2.5m程度であることから、寸胴部9の外径と解体された上方先細り部8の下端部の外径の差は半径で約50mmである。前述のように、塔体1を構成する寸胴筒状塔体部材10-2~10-5の壁部、すなわち鉄皮の厚さは20~40mmであるので、この厚さ分より外径が小さい上方先細り部8は寸胴部9の内部空洞3内に降ろすことができる。しかしながら、上記円筒部材接続用のフランジ23が内部空洞3内に突出したままだと、そのフランジ23と干渉して上方先細り部8を寸胴部9の内部空洞3内に降ろすことができない。そこで、上方先細り部8の下端部を切断除去する際には、上方先細り部8と上記一番上の寸胴筒状塔体部材10-2の接続部の下部、すなわち接続用フランジ23を含めて切断除去することとした。
【0032】
また、図5に示すように、上記作業台15は、方形板状の床板(布板)部材24を6つ、塔体1の外壁の外側に等配し、それらの隙間を平面視三角形の隙間用床板部材24aで閉塞するようにして連結したものであり、前述のように塔体1の外周全周に亘って設けられている。この実施の形態では、図4に示すように、これらの床板部材24を上下に二段設け、それらを支柱部材25や手摺部材26で連結すると共に、壁繋ぎ部材27で塔体1(上方先細り部8や寸胴部9)の外壁に固定している。また、前述のように、作業台15は風力発電機2(ナセル5)又は上方先細り部8の上端部からワイヤロープ15aで昇降可能に吊り下げられている。なお、この実施の形態では、図5から明らかなように、上記上方先細り部8と寸胴部9を連結する連結部材18は、塔体1の外周で計8カ所に等配されている。
【0033】
前述のようにして上方先細り部8の下端部を解体したら、図6に示すように、寸胴部9の上端部からやや下方の内壁に載置用突起部28を取付ける。この載置用突起部28は、上記上方先細り部8を載置するための横板部28a材と、その横板部材28aを下方から支持するリブ28bとを備えて断面T字型に構成される。この実施の形態では、寸胴部9の内壁の内周の計8カ所に等配してこれらの部材を取付けることにより内壁に載置用突起部28を突設している。このようにして載置用突起部28が寸胴部9の内壁に突設されたら、上記連結部材18による寸胴部9と上方先細り部8の連結を解除した状態で、上記ジャッキ17によって当接支持部材22を支持しながら下降させることにより、残存する上方先細り部8を寸胴部9の内部空洞3内に下降し、上方先細り部8の下端部を載置用突起部28上に載置する。このように上方先細り部8を載置用突起部28上に載置することにより、上方先細り部8より上方の全設備の荷重が寸胴部9で受けられ、上方先細り部8が安定支持される。また、上方先細り部8を寸胴部9の内部空洞3内に下降する、すなわち寸胴部9内に収容することにより、この外側の寸胴部9によって上方先細り部8の倒れを防止することが可能となる。なお、上方先細り部8を寸胴部9の内部空洞3内に下降したら、寸胴部9の上端部と上方先細り部8を再び連結部材18で連結する。また、上方先細り部8を下降する場合には、例えば風力発電機2(ナセル5)と寸胴部9の上端部をワイヤロープ31で連結することが望ましい。
【0034】
このようにして上方先細り部8を下降すると、或いは、後述のように寸胴部9の上端部を上部から順次解体すると、図6に示すように、内部支柱16が寸胴部9よりも上方に突出してしまう。このように内部支柱16が寸胴部9よりも上方に突出すると、前述のようにして残存する上方先細り部8を下降した際、内部支柱16の上端部が上方先細り部8と共に下降される風力発電機2と干渉するおそれがある。また、前述のように、ジャッキ17はステップロッド20を継ぎ足すことで支持している支持台21及び上方先細り部8を大幅に下降することも可能であるが、ステップロッド20が長すぎるのは不安定になり得る。そこで、図7に示すように、内部支柱16の上端部よりも上方で上方先細り部8の内壁に梁部材などの強度部材28を取付け、この強度部材に取付けられたワイヤロープ29とウインチなどの揚重機30で内部支柱16及びジャッキ17を吊り下げる。この実施の形態では、重量の大きいジャッキ17と内部支柱16を個別に吊り下げているが、重要なのは内部支柱16であるから、ジャッキ17ごと内部支柱16のみを吊り下げるようにしてもよい。
【0035】
このようにして内部支柱16を上方先細り部8から吊り下げたら、内部支柱16の図示しない下端部を除去する。この実施の形態では、内部支柱16は折り畳み型足場部材16aで構築されているので、例えば、内部支柱16の下端部に相当する最下部の折り畳み型足場部材16aを取り外して折り畳み、上記開口部14から塔体1の外部に搬出する。このようにして内部支柱16の下端部が除去されたら、上記揚重機30を利用して内部支柱16及びジャッキ17を下降し、内部支柱16の下端部を再び内部空洞3内の地上に降ろして固定する。これにより、内部支柱16の上端部は、図の二点鎖線の位置(図は上記架台19とジャッキ17を示している)から実線の位置まで下降されて短縮されるので、上方先細り部8と共に下降される風力発電機2との干渉が回避される。
【0036】
前述のように、上方先細り部8の下端部の解体が終わり、上方先細り部8が寸胴部9の内部空洞3内に下降されたら、上記作業台15を利用して寸胴部9の最上部を塔体1の外側から順次切断除去して解体し、その解体物を塔体1の外側から上記揚重装置13を用いて下降する。寸胴部9の最上部を順次解体するためには、それまで寸胴部9の最上部に配設されていた作業台15も順次下降しなければならないので、上記図6と同様、図8に示すようにして寸胴部9の最上部の解体が終わるたびにジャッキ17を用いて残存する上方先細り部8を下降し、その上方先細り部8を図6の載置用突起部28上に載置すると共に、風力発電機2又は上方先細り部8の上端部から吊り下げられている作業台15を寸胴部9の最上部に下降してから上記壁繋ぎ部材27で外壁に固定する。このように作業台15が固定されたら、その固定されている部位で寸胴部9の最上部を切断除去(解体)し、これを順次繰り返して図3の最終段階のように、残存する上方先細り部8を地上まで下降する。地上に下降された残存する上方先細り部8は、前述のように、解体してもよいし、解体せずに搬出してもよい。なお、残存する上方先細り部8の下降時に上記連結部材18が邪魔な場合には、例えば図8に二点鎖線で示すように、一旦、連結部材18を取り外し、上方先細り部8が図6の載置用突起部28上に載置されたら再び連結部材18で寸胴部9の上端部と残存する上方先細り部8を連結するようにしてもよい。また、ブレード6を含む風力発電機2は、適時に解体してよい。
【0037】
このように、この実施の形態の塔型風力発電設備の解体方法では、塔体1の上端部の上方先細り部8が当接支持部材22を介して内部支柱16の上部のジャッキ17によって支持されている状態で、塔体1の外壁の外側に吊り下げ設置された作業台15に載って当接支持部材22の当接位置よりも下部の上方先細り部8の所定領域を切断除去すると、それより上方の残存する上方先細り部8がそれより下方側の塔体1(寸胴部9)から分離される。この分離された残存する上方先細り部8をジャッキ17で下降させて、その下端部を残存する塔体1(寸胴部9)の内壁に突設された載置用突起部28上に載置させると、残存する上方先細り部8は残存する塔体1(寸胴部9)内に収容されるので、その上方先細り部8の倒れが防止されると共に上方先細り部8の荷重を残存する塔体1(寸胴部9)で受けて上方先細り部8が安定支持される。その状態で、上記作業台15に載って、残存する塔体1(寸胴部9)の最上部の所定範囲を塔体全周に亘って除去し、それに伴い、残存する上方先細り部8から内部支柱16を吊り下げた状態で内部支柱16の下端部を除去してから内部空洞3内の地上に下降し、これを上記残存する上方先細り部8の下降と共に繰り返すことにより、残存する塔体1(寸胴部9)を上部から順に解体することができる。その結果、残存する上方先細り部8が地上に下降されたら、その上方先細り部8を解体するか、または搬出することにより、塔型風力発電設備を完全に解体することができる。この間、大型揚重機を用いる必要がなく、残存する塔体1(寸胴部9)も残存する上方先細り部8も安定していることから、解体作業に困難性もなく、また解体作業を頻繁に中断する必要もなく、簡易な作業のみで解体することができ、結果として工事期間を短縮することができる。
【0038】
また、残存する塔体1の寸胴部9を最上部から順に解体・除去すると、残存する塔体1(寸胴部9)から内部支柱16のみが上方に突出する状態となるが、残存している上方先細り部8から内部支柱16を吊り下げ、その状態で内部支柱16の下端部から除去してから内部支柱16を内部空洞3の地上に下降すれば、その分だけ内部支柱16の上端部を低くすることができる。また、これにより、上方先細り部8と共に下降される風力発電機2と内部支柱16の上端部との干渉を回避することができる。
【0039】
また、残存する上方先細り部8と寸胴部9の上端部を連結部材18で連結することにより、残存する上方先細り部8の倒れが防止されて安定する。
【0040】
また、作業台15を塔体1の外周全周に亘って配置することにより、作業台15に載って塔体1の寸胴部9を塔体1の外側から解体する際、作業環境が安定し、効率よく解体作業を行うことが可能となる。
【0041】
また、塔体1の下端部に設備搬入用の開口部14を形成することにより、この開口部14から内部支柱16部材やジャッキ17を搬入することができ、塔体1内の内部支柱16の構築や内部支柱16上部へのジャッキ17の設置(移動)を容易に行うことが可能となる。
【0042】
また、塔体1の上方先細り部8とその直下の寸胴部9は、塔体1の内壁から塔内に突出するフランジ23を介して連結されることが多いので、この接続部の下部を含めて塔体上端部除去工程で除去することにより、塔内に突出するフランジ23を除去することができ、これにより残存する上方先細り部8を寸胴部9内に下降する際、フランジ23との干渉を回避してスムースに下降することができる。
【0043】
以上、実施の形態に係る異材接合方法について説明したが、本件発明は、上記実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、本件発明の要旨の範囲内で種々変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、塔体1の外壁の外側に配設される作業台15を上方先細り部8の上端部又は風力発電機2、すなわち塔体1の上部から吊り下げると共に塔体1の外壁に固定したが、例えば、作業台15を塔体1の上部から昇降可能に吊り下げるだけでも設置可能である。しかしながら、作業台15を安定支持するためには、両者を併用することが望ましい。また、その他の支持手法も適用可能である。
【0044】
また、上記実施の形態では、塔体の上端部のみが上方先細りで、それより下部が寸胴な塔型風力発電設備のみを解体対象としたが、本発明の塔型風力発電設備の解体方法は、例えば下端部から上端部まで上方先細りの塔体についても同様に適用可能である。この場合、解体位置が下降するにつれて、上記上方先細り部を載置する載置用突起部28の内壁からの突出寸度を大きくするか、又はその載置位置を内壁から遠ざける必要がある。
【符号の説明】
【0045】
1 塔体
2 風力発電機
3 内部空洞
8 上方先細り部
9 寸胴部
13 揚重装置
14 開口部
15 作業台
16 内部支柱
17 ジャッキ
18 連結部材
22 当接支持部材
23 フランジ
28 載置用突起部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8