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特許7409721可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイス及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/00 20060101AFI20231226BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20231226BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
G02B26/00
B81B3/00
B81C1/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022573622
(86)(22)【出願日】2020-08-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 CN2020110828
(87)【国際公開番号】W WO2022040864
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】521399803
【氏名又は名称】深▲せん▼市海譜納米光学科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN HYPERNANO OPTICS TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】1903,1904, Building1, COFCO Chuangxin R&D Centre Zone 69, Xingdong Community Xin’an Street, Bao’an District Shenzhen, Guangdong 518000 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】郭 斌
(72)【発明者】
【氏名】黄 錦標
【審査官】河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-169943(JP,A)
【文献】特開2016-097454(JP,A)
【文献】特開2006-023606(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0237538(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00
B81B 3/00
G01J 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイスであって、前記可動ミラーはもう1つのミラーと対向して設けられ、前記可動ミラーと前記もう1つのミラーが周辺で互いにボンディングされることによって前記ミラー間にファブリーペローキャビティ本体が形成され、前記可動ミラーはガラスを嵌め込んだシリコン薄膜を含み、前記シリコン薄膜の中央領域にガラスが嵌め込まれることによって光透過領域が形成され、且つ前記光透過領域の前記キャビティ本体に面する面にはミラー材料が形成され、前記シリコン薄膜のボンディングされた周辺領域と前記中央領域との間の遷移領域にガラスが嵌め込まれることによって弾性構造が形成される、ことを特徴とする可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイス。
【請求項2】
前記シリコン薄膜の前記遷移領域と前記中央領域との間に残されたシリコン層は環状支持構造を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイス。
【請求項3】
前記環状支持構造が部分的に除去されることによって換気貫通孔が形成される、ことを特徴とする請求項2に記載の可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイス。
【請求項4】
前記可動ミラーはSOIウエハからなる、ことを特徴とする請求項1に記載の可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイス。
【請求項5】
前記もう1つのミラーは同様にガラスを嵌め込んだシリコン薄膜を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイス。
【請求項6】
前記もう1つのミラーは固定ミラーを含み、前記固定ミラーはガラス基板と、ガラス基板上に設けられるミラー材料とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイス。
【請求項7】
前記固定ミラーの前記可動ミラーから離れたもう1つの面には同様にもう1つの可動ミラーがボンディングされており、前記もう1つの可動ミラーと前記固定ミラーの前記もう1つの面との間にはもう1つのファブリーペローキャビティ本体が形成されている、ことを特徴とする請求項6に記載の可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイス。
【請求項8】
前記ガラスを嵌め込んだシリコン薄膜の厚さは10~200ミクロンである、ことを特徴とする請求項1に記載の可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイス。
【請求項9】
前記ミラー材料の材質はシリコン、酸化シリコン又はそれらの組み合わせ又は銀を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイス。
【請求項10】
前記ボンディングの方式は共晶ボンディング、ポリマー又は陽極ボンディングを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイス。
【請求項11】
前記可動ミラーには前記可動ミラーの相対変位を制御するための駆動装置が設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイス。
【請求項12】
前記駆動装置は容量駆動装置又は圧電薄膜構造のアクチュエータ駆動装置を含む、ことを特徴とする請求項11に記載の可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイス。
【請求項13】
前記駆動装置は、前記可動ミラーのミラーとは反対側の面の周辺に設けられ、且つ嵌め込まれたシリコン層領域にある第1電極及び第2電極を含む、ことを特徴とする請求項11に記載の可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイス。
【請求項14】
前記駆動装置は前記可動ミラーのミラーとは反対側の面の周辺に設けられる圧電薄膜構造を含む、ことを特徴とする請求項11に記載の可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイス。
【請求項15】
前記圧電薄膜構造はジルコニウムチタン酸鉛薄膜、窒化アルミニウム薄膜又は酸化亜鉛薄膜を含む、ことを特徴とする請求項14に記載の可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイス。
【請求項16】
可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイスの製造方法であって、
基板を提供し、基板の中央領域および前記基板の周辺領域と前記中央領域との間の遷移領域のそれぞれに一定の深さを有するパターンをエッチングするステップS1と、
ガラスを溶融させてエッチング後の基板の前記中央領域および前記遷移領域のそれぞれに充填するステップS2と、
ガラスを充填した後の基板の表面を研磨して、ガラスを嵌め込んだ基板を形成するステップS3と、
ガラスを嵌め込んだ基板の表面に光学ミラー材料を堆積させて光学ミラーを形成するステップS4と、
研磨又はエッチングによって余分な基板を除去して、ガラスを嵌め込んだ薄膜構造の可動ミラー又はファブリーペローキャビティを形成するステップS5と、を含むことを特徴とする可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイスの製造方法。
【請求項17】
S5は、
光学ミラーを有する、ガラスを嵌め込んだ2つの基板を互いにボンディングしてミラー間にファブリーペローキャビティ本体を形成するステップS51と、
研磨又はエッチングによって余分な基板を除去して、ガラスを嵌め込んだ薄膜構造のファブリーペローキャビティを形成するステップS52と、をさらに含む、ことを特徴とする請求項16に記載の可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイスの製造方法。
【請求項18】
前記S1で提供される基板はシリコン基板又はSOI基板を使用する、ことを特徴とする請求項16に記載の可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイスの製造方法。
【請求項19】
前記S1は、
SOI基板を提供し、SOI基板のシリコン層をエッチングして一定の深さのパターンを形成するステップS11と、
ガラス基板を提供し、ガラス基板とSOI基板とを互いにボンディングするステップS12と、を含む、ことを特徴とする請求項16に記載の可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体デバイスの分野に関し、特に可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Fabry-Perot(ファブリーペロー)干渉に基づく調整可能なフィルタリングデバイス(tuneable FPI)はミニチュア分光計及び小型やミニハイパースペクトルカメラの製造に適用できる。可視光-近赤外線範囲のファブリーペローキャビティデバイスは通常、光学ガラス(例えば、合成石英ガラス)を基板として使用し、光学及び半導体加工によってミラーチップを形成し、その後、2つのミラーチップを外付けのピエゾアクチュエータ(piezo actuator)と組み立ててファブリーペローキャビティモジュールを形成し、それによって形成されたファブリーペローキャビティモジュールは体積が大きく、駆動電圧が高く、例えば手持ち式ハイパースペクトルカメラのような空間サイズが極めて限られたデバイスに適用できない。
【0003】
一方、マイクロマシニング(micromachining)によって形成されたファブリーペローキャビティデバイスは主にバルクプロセス型及び表面プロセス型である。表面プロセス型デバイスは宙吊りにされている薄膜によって可動ミラーを形成し、バルクプロセス型デバイスはカンチレバー構造を有する基板によって可動ミラーを形成する。
【0004】
可視光-近赤外線範囲のファブリーペローキャビティデバイスは通常、光学ガラス(例えば、合成石英ガラス)を基板として使用するため、まず、通常、ガラスは化学溶媒(例えば、フッ化水素酸)でしかエッチングできないが、エッチング速度は非常に遅く(1ミクロン/分未満)、その結果、基板の加工が非常に困難であり、そして、加工可能な線のサイズが基板の厚さによって制限され(一般的に、400ミクロン~700ミクロン)、精密加工が不可能であり、次に、基板上にカンチレバーを加工すると、デバイスの設計や加工の複雑度が増加し、さらにコストが増加し、さらに、バルクプロセスデバイスでは弾性構造(spring)とミラーは同一の基板によって提供され、その結果、弾性構造の影響を受けてミラー自体に応力や変形が発生し、最後に、カンチレバー構造は非常に大きなチップ面積を占める必要があるため、ミラー自体のサイズが制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術におけるファブリーペローキャビティデバイスの可動ミラーの制御可能性、安定性及び設計柔軟性といった問題を解決するために、本発明は可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイス及びその製造方法を提案することによって従来技術におけるファブリーペローキャビティデバイスの可動ミラーの制御可能性、安定性及び設計柔軟性といった問題を解決することを試みる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイスを提案し、前記可動ミラーはもう1つのミラーと対向して設けられ、前記可動ミラーと前記もう1つのミラーが周辺で互いにボンディングされることによって前記ミラー間にファブリーペローキャビティ本体が形成され、前記可動ミラーはガラスを嵌め込んだシリコン薄膜を含み、前記シリコン薄膜の中央領域にガラスが嵌め込まれることによって光透過領域が形成され、且つ前記光透過領域の前記キャビティ本体に面する面にはミラー材料が形成され、前記シリコン薄膜のボンディングされた周辺領域と前記中央領域との間の遷移領域にガラスが嵌め込まれることによって弾性構造が形成される。シリコンのヤング率がガラスよりもはるかに高いため、ガラスを嵌め込んだシリコン薄膜は応力の影響を受けることなく良好な機械的強度や安定した弾性係数を持つことができ、それによって可動ミラーは良好な制御可能性や安定性を持ち、また、ガラスとシリコンの嵌合によってデバイスの設計の柔軟性を高めることができ、嵌め込み構造の設計を調整することで、同じ種類のデバイス構造は異なる寸法のデバイスに適用でき、また、ドープ等によってシリコン材料の導電率を調整することができるため、該可動ミラーはさらに電極構造を調整可能なファブリーペローキャビティデバイスの引き出しリード線の電極として形成することができる。
【0007】
1つの好ましい実施例では、前記シリコン薄膜の前記遷移領域と前記中央領域との間に残されたシリコン層は環状支持構造を形成する。シリコン層で形成された環状支持構造によって、可動ミラーの機械的平坦性を強化することができる。
【0008】
1つの好ましい実施例では、前記環状支持構造が部分的に除去されることによって換気貫通孔が形成される。換気貫通孔によって、ファブリーペローキャビティ内の空気と外部の空気の迅速な流れに有利であり、さらに可動ミラーの移動時のファブリーペローキャビティの瞬時応答速度を高める。
【0009】
1つの好ましい実施例では、前記可動ミラーはSOIウエハからなり、前記ガラスは前記SOIウエハのシリコン層をエッチングした後に前記SOIウエハ内に充填される。可動ミラーのプロセス形態の多様化のため、実際の需要に応じて適切なプロセスを選択できる。
【0010】
1つの好ましい実施例では、前記もう1つのミラーは同様にガラスを嵌め込んだシリコン薄膜を含む。もう1つのミラーの多様な選択のため、実際の需要に応じて適切なミラーを選択でき、設計の柔軟性を高める。
【0011】
1つの好ましい実施例では、前記もう1つのミラーは固定ミラーを含み、前記固定ミラーはガラス基板と、ガラス基板上に設けられるミラー材料とを含む。もう1つのミラーの多様な選択のため、実際の需要に応じて適切なミラーを選択でき、設計の柔軟性を高める。
【0012】
1つの好ましい実施例では、前記固定ミラーの前記可動ミラーから離れたもう1つの面には同様にもう1つの可動ミラーがボンディングされており、前記もう1つの可動ミラーと前記固定ミラーの前記もう1つの面との間にはもう1つのファブリーペローキャビティ本体が形成されている。もう1つのミラーの多様な選択のため、実際の需要に応じて適切なミラーを選択でき、設計の柔軟性を高める。
【0013】
1つの好ましい実施例では、前記ガラスを嵌め込んだシリコン薄膜の厚さは10~200ミクロンである。嵌め込み形態の薄膜の厚さは一般的なガラス基板(300ミクロン以上)よりもはるかに小さく、それによってデバイスがより精巧になる。
【0014】
1つの好ましい実施例では、前記光学ミラーの材質はシリコン、酸化シリコン又はそれらの組み合わせ又は銀を含む。ミラー材質の多様化のため、実際の需要に応じて適切な材質を選択できる。
【0015】
1つの好ましい実施例では、前記ボンディングの方式は共晶ボンディング、ポリマー又は陽極ボンディングを含む。ボンディングの方式によって構造を緊密に結合し、調整可能な光学フィルタリングデバイスの安定性を確保することができる。
【0016】
1つの好ましい実施例では、前記可動ミラーには前記可動ミラーの相対変位を制御するための駆動装置が設けられる。駆動装置によって可動ミラーともう1つのミラーとの相対変位を発生させてキャビティ本体間の間隔を調整し、それによって調整可能な光学フィルタリング機能を実現することができる。
【0017】
1つの好ましい実施例では、前記駆動装置は容量駆動装置又は圧電薄膜構造のアクチュエータ駆動装置を含む。容量駆動装置又は圧電薄膜構造のアクチュエータ駆動装置によって可動ミラーの相対変位を制御し、さらに調整可能な光学フィルタリングの効果を実現する。
【0018】
1つの好ましい実施例では、前記駆動装置は、前記可動ミラーのミラーとは反対側の面の周辺に設けられ、且つ嵌め込まれたシリコン層領域にある第1電極及び第2電極を含む。第1電極と第2電極との間に形成される容量構造によって、可動ミラーを変位駆動してキャビティ本体の隙間を調整することができる。
【0019】
1つの好ましい実施例では、前記駆動装置は前記可動ミラーのミラーとは反対側の面の周辺に設けられる圧電薄膜構造を含む。可動ミラーに設けられる圧電薄膜構造によって、可動ミラーを変形させ、さらに可動ミラーを変位させることができる。
【0020】
1つの好ましい実施例では、前記圧電薄膜を前記可動ミラーに堆積させる方式はスパッタリング又はゾルゲルを含む。
【0021】
1つの好ましい実施例では、前記圧電薄膜構造はジルコニウムチタン酸鉛薄膜、窒化アルミニウム薄膜又は酸化亜鉛薄膜を含む。圧電薄膜構造の材質の多様性によって実際の需要に応じて適切な材質を選択することができる。
【0022】
可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイスの製造方法であって、
基板を提供し、基板に一定の深さを有するパターンをエッチングするステップS1と、
ガラスを溶融させてエッチング後の基板に充填するステップS2と、
ガラスを充填した後の基板の表面を研磨して、ガラスを嵌め込んだ基板を形成するステップS3と、
ガラスを嵌め込んだ基板の表面に光学ミラー材料を堆積させて光学ミラーを形成するステップS4と、
研磨又はエッチングによって余分な基板を除去して、ガラスを嵌め込んだ薄膜構造の可動ミラー又はファブリーペローキャビティを形成するステップS5と、を含むことを特徴とする。
【0023】
1つの好ましい実施例では、S5は、
光学ミラーを有する、ガラスを嵌め込んだ2つの基板を互いにボンディングしてミラー間にファブリーペローキャビティ本体を形成するステップS51と、
研磨又はエッチングによって余分な基板を除去して、ガラスを嵌め込んだ薄膜構造のファブリーペローキャビティを形成するステップS52と、をさらに含む。
【0024】
1つの好ましい実施例では、前記S1で提供される基板はシリコン基板又はSOI基板を使用する。
【0025】
1つの好ましい実施例では、前記S1は、
SOI基板を提供し、SOI基板のシリコン層をエッチングして一定の深さのパターンを形成するステップS11と、
ガラス基板を提供し、ガラス基板とSOI基板とを互いにボンディングするステップS12と、を含む。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る調整可能なファブリーペローキャビティデバイスは、ガラスとシリコンを嵌め込むことによって形成された可動ミラーを有し、シリコンのヤング硬度がガラスよりもはるかに高いため、ガラスとシリコンを嵌め込んだ可動ミラーは応力の影響を受けることなく良好な機械的強度や安定した弾性係数を持つことができ、それによって可動ミラーは良好な制御可能性や安定性を持ち、また、ガラスとシリコンの嵌合によってデバイスの設計の柔軟性を高めることができ、嵌め込み構造の設計を調整することで、同じ種類のデバイス構造は異なる寸法のデバイスに適用でき、また、シリコン材料の添加によってその導電率を調整し、従って、該可動ミラーはさらに電極構造を調整可能なファブリーペローキャビティデバイスの引き出しリード線の電極として形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
実施例をさらに理解するために、図面が含まれており、図面は本明細書に本明細書の一部として組み込まれている。図面は実施例を示し、説明とともに本発明の原理を解釈することに用いられる。ほかの実施例及び実施例の多くの望ましい利点は、以下の詳細な説明を引用することでよりよく理解されるので、容易に認識されるだろう。図面における素子は必ずしも互いに縮尺に応じたものではない。同様の符号は対応する類似部材を示す。
【0028】
図1】本発明の一実施例に係る調整可能な光学フィルタリングデバイスの断面図である。
図2】本発明の一実施例に係る調整可能な光学フィルタリングデバイスの上面図である。
図3】本発明の一実施例に係る可動ミラーの形成方式の図である。
図4】本発明の第2実施例に係る調整可能な光学フィルタリングデバイスの断面図である。
図5】本発明の第3実施例に係る調整可能な光学フィルタリングデバイスの断面図である。
図6】本発明の第4実施例に係る調整可能な光学フィルタリングデバイスの断面図である。
図7】本発明の第5実施例に係る調整可能な光学フィルタリングデバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の詳細な説明では、図面を参照し、該図面は詳細な説明の一部を形成し、本発明を実施できる例示的な特定の実施例によって示される。これに対して、説明される図の向きを参照して、例えば「頂」、「底」、「左」、「右」、「上」、「下」等の方向用語を使用する。実施例の部材が複数の異なる向きに特定されるため、図示の目的のために方向用語は使用され、且つ方向用語は制限的なものではない。本発明の範囲を逸脱せずにほかの実施例を使用するか又はロジック変形を行うことができると理解すべきである。従って、以下の詳細な説明は制限するためのものではなく、本発明の範囲は添付特許請求の範囲により限定される。
【0030】
図1は本発明の一実施例における調整可能な光学フィルタリングデバイスの断面図である。図1に示すように、可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイスは可動ミラーを含み、可動ミラーはガラス12とシリコン層11を嵌め込むことによって形成された薄膜であり、具体的には、ガラスを嵌め込んだシリコン薄膜10を含んだものであってもよく、シリコン薄膜10の中央領域にガラス12が嵌め込まれることによって光透過領域が形成され、シリコン薄膜10にミラー材料が堆積することによって光学ミラー30が形成され、可動ミラーはもう1つのミラーと対向して設けられ、可動ミラーともう1つのミラーが周辺でボンディング物60により互いにボンディングされることによってミラー間にファブリーペローキャビティ本体が形成され、シリコン薄膜のボンディングされた周辺領域と中央領域との間の遷移領域にガラスが嵌め込まれることによって弾性構造が形成され、本実施例では、もう1つのミラーは同様にガラスを嵌め込んだシリコン薄膜10を含む。
【0031】
特定の実施例では、可動ミラーはガラスを嵌め込んだシリコン薄膜10であり、厚さは10~200ミクロンであり、普通のガラス基板(300ミクロン超え)の厚さよりも低く、それによってデバイスのさらなる小型化を図ることができる。シリコン薄膜10の遷移領域と中央領域との間に残されたシリコン層11は環状支持構造を形成し、図2に示すように、環状支持構造は可動ミラーの機械的平坦性を強化することができる。環状支持構造の形状は円形に限定されず、楕円形、矩形等のほかの規則的又は不規則な形状であってもよく、具体的な使用シーンに応じて適切なエッチング方式を選択して所要の形状をエッチングすると認識すべきである。また、シリコン層11の形状や位置は需要に応じて異なる形態で設計されてもよく、ボンディング物60も需要に応じて異なる位置に配置されてもよい。
【0032】
特定の実施例では、シリコン薄膜10上にミラー材料が堆積することによって光学ミラー30が形成され、光学ミラーの材質はシリコン、酸化シリコン又はそれらの組み合わせ又は銀を含み、光学ミラー30が銀等の導電材料を使用する場合、ドープ等によってシリコン材料の導電率を調整できるため、電極40はシリコン層11の表面に配置可能であり、良好な導電性を持つシリコン層はシリコン薄膜10によってもう1つの面にある光学ミラー30とともに駆動導電通路を形成する。さらに、マイクロマシニングにおける同じ層のプロセスによって光学ミラー30と同じ材料からなる電極40を形成できることで、可動ミラーの相対変位を制御する例えば容量ドライバのような駆動装置を形成する。
【0033】
特定の実施例では、可動ミラーともう1つのミラーとのボンディングの方式は具体的には、共晶ボンディング、ポリマー又は陽極ボンディングであってもよい。共晶ボンディングは金属を遷移層としてシリコン-シリコンボンディングを実現し、表面に対する要件が低く、ボンディング温度が低く、ボンディング強度が高く、陽極ボンディングはボンディング温度が低く、ほかのプロセスとの互換性が優れ、ボンディング強度や安定性が高い等の利点を持ち、シリコン/シリコン基板間のボンディング、非シリコン材料とシリコン材料、及びガラス、金属、半導体、セラミックの相互ボンディングに適用できる。実際のボンディングの表面プロセス及び材料に応じて適切なボンディング方式を選択して2つのガラス薄膜間のボンディングを実現することができる。
【0034】
特定の実施例では、嵌め込み式の可動ミラーは、シリコン基板を提供し、シリコン基板に一定の深さを有するパターンをエッチングするステップS1と、ガラスを溶融させてエッチング後のシリコン基板に充填するステップS2と、ガラスを充填した後のシリコン基板の表面を研磨して、ガラスを嵌め込んだシリコン基板を形成するステップS3と、ガラスを嵌め込んだシリコン基板の表面に光学ミラー材料を堆積させて光学ミラーを形成するステップS4と、研磨又はエッチングによって余分なシリコン基板を除去して、ガラスを嵌め込んだシリコン薄膜構造の可動ミラーを形成するステップS5と、によって製造される。シリコンのヤング率がガラスよりもはるかに高いため、シリコン層はシリコン薄膜全体を製造し且つその平坦性を維持することができ、また、シリコンが可視光-近遠赤外線範囲内に光透過不能であるため、そのシリコン層11は遮光又は光の反射の作用を発揮できる。
【0035】
特定の実施例では、さらに別のS5のステップを採用してもよく、具体的には、光学ミラーを有する、ガラスを嵌め込んだ2つの基板を互いにボンディングしてミラー間にファブリーペローキャビティ本体を形成するステップS51と、研磨又はエッチングによって余分な基板を除去して、ガラスを嵌め込んだ薄膜構造のファブリーペローキャビティを形成するステップS52と、を含んでもよい。
【0036】
特定の実施例では、可動ミラーはSOIウエハ13からなり、図3に示すように、その製造ステップと上記実施例のステップとの主な相違点はS1であり、具体的には、S11では、SOI基板13を提供し、SOI基板上のシリコン層をエッチングして一定の深さのパターンを形成し、S12では、ガラス基板14を提供し、ガラス基板とSOI基板とを互いにボンディングする。S2では、ガラスを溶融させてエッチング後のシリコン基板に充填し、S3では、ガラスを充填した後のシリコン基板の表面を研磨して、ガラスを嵌め込んだシリコン基板を形成し、S4では、ガラスを嵌め込んだシリコン基板の表面に光学ミラー材料を堆積させて光学ミラーを形成し、S5では、研磨又はエッチングによって余分なシリコン基板を除去して、ガラスを嵌め込んだシリコン薄膜構造の可動ミラーを形成する。
【0037】
特定の実施例では、可動ミラーには前記可動ミラーの相対変位を制御するための駆動装置が設けられ、具体的には、可動ミラーのミラーとは反対側の面の周辺に設けられ、嵌め込んだシリコン層11領域にある第1電極40及び第2電極40である。第1電極と第2電極との間に形成される容量構造によって、可動ミラーを変位駆動してキャビティ本体の隙間を調整することができる。
【0038】
図4は本発明の第2実施例に係る調整可能な光学フィルタリングデバイスの断面図である。図4に示すように、上記実施例との主な相違点として、もう1つのミラーは固定ミラー21を使用し、固定ミラーはガラス基板と、ガラス基板上に設けられるミラー材料とを含む。もう1つのミラーの多様な選択のため、実際の需要に応じて適切なミラーを選択でき、設計の柔軟性を高める。
【0039】
図5は本発明の第3実施例に係る調整可能な光学フィルタリングデバイスの断面図である。図5に示すように、上記実施例を基に、シリコン層11の環状支持構造を部分的に除去することによって換気貫通孔15が形成され、シリコンの除去は乾式又は湿式エッチングによって行われる。換気貫通孔は、ファブリーペローキャビティ内の空気と外部の空気の迅速な流れに有利であり、さらに可動ミラーの移動時のファブリーペローキャビティの瞬時応答速度を高める。
【0040】
図6は本発明の第4実施例に係る調整可能な光学フィルタリングデバイスの断面図である。図6に示すように、可動ミラーを有する調整可能なファブリーペローキャビティデバイスはガラスを嵌め込んだシリコン薄膜10を有する2つの可動ミラーと、1つの固定ミラー21とを含み、固定ミラー21はガラス基板を使用し、且つその上下にそれぞれ光学ミラー30が堆積し、2つの可動ミラーはそれぞれ固定ミラー21と上下にボンディングされて上下2つのファブリーペローキャビティ本体を形成し、2つのファブリーペローキャビティ本体のミラー材料は同じであってもよく異なってもよく、2つのファブリーペローキャビティ本体の光透過特性を調整することによって、単一のファブリーペローキャビティで実現できないフィルタリング機能を実現できる。
【0041】
図7は本発明の第5実施例における調整可能な光学フィルタリングデバイスの断面図を示す。図7に示すように、駆動装置は圧電薄膜構造のアクチュエータ駆動装置を使用し、具体的には、駆動装置は可動ミラーのミラーとは反対側の面の周辺に設けられる圧電薄膜構造50を含む。圧電薄膜を前記可動ミラーに堆積させる方式はスパッタリング又はゾルゲルを含み、圧電薄膜構造はジルコニウムチタン酸鉛薄膜、窒化アルミニウム薄膜又は酸化亜鉛薄膜を含み、実際の応用に応じて選択することができる。
【0042】
本発明は、ガラスとシリコンを嵌め込むことによって形成された可動ミラーを有し、シリコンのヤング硬度がガラスよりもはるかに高いため、ガラスとシリコンを嵌め込んだ可動ミラーは応力の影響を受けることなく良好な機械的強度や安定した弾性係数を持つことができ、それによって可動ミラーは良好な制御可能性や安定性を持ち、また、ガラスとシリコンの嵌合によってデバイスの設計の柔軟性を高めることができ、嵌め込み構造の設計を調整することで、同じ種類のデバイス構造は異なる寸法のデバイスに適用でき、また、シリコン材料の添加によってその導電率を調整し、従って、該可動ミラーはさらに電極構造を調整可能なファブリーペローキャビティデバイスの引き出しリード線の電極として形成することができる。
【0043】
明らかなように、当業者は本発明の趣旨及び範囲を逸脱せずに本発明の実施例に対して種々の変更や変形を行うことができる。このようにして、これらの変更や変形が本発明の特許請求の範囲及びその同等の範囲に属すると、本発明はさらにこれらの変更や変形をカバーすることを目的とする。用語「含む」は請求項にリストされていないほかの素子又はステップの存在を除外しない。いくつかの措置が互いに異なる従属請求項に記載されているという単純な事実はこれらの措置の組み合わせが利益のために使用できないことを示すものではない。請求項における符号はいずれも範囲を限定するものではないと理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7