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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】レーダーおよびレーダーシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20231226BHJP
   G01S 13/87 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
G01S7/40 104
G01S13/87
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023523318
(86)(22)【出願日】2021-05-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 CN2021092419
(87)【国際公開番号】W WO2022001368
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】202010635399.6
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523001625
【氏名又は名称】上海▲ゆぇ▼▲すぇん▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI YUEXUAN TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 1488 (Centralized Registration Place), Pingliang Road, Yangpu District Shanghai 200438, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】叶 雷
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0188125(US,A1)
【文献】特開2016-217807(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0269226(US,A1)
【文献】中国実用新案第207051476(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
G01S 19/00-19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダーであって、前記レーダーは一定の領域内で複数のレーダーを使用し、レーダーのネットワーク化構造を構成して異なる体積、形状、大きさの監視対象を監視し、
監視対象の監視情報を取得して送信するように配置されているレーダー本体と、
前記レーダー本体のローカルクロック情報を生成するように配置されている水晶振動モジュールと、
北斗衛星システムから送信した固有周波数信号および前記ローカルクロック情報を取得して、前記固有周波数信号と前記ローカルクロック情報とが同期していない時、および、前記固有周波数信号とローカルクロック情報との時間差の精度が予め設定された条件を満たす時、前記固有周波数信号とローカルクロック情報との時間差に基づいて、前記ローカルクロック情報を修正することにより、前記レーダーと、対応するレーダーネットワーク化システム内の各レーダーが測定時に時間を同期するように配置されている自律時計モジュールと、を含み、
前記監視情報は、前記監視対象の監視パラメータを表示するための監視データと、前記レーダー本体の位置に対応するタイムスタンプを表示するためのタイムスタンプとを含み、
前記レーダー本体は送信機と、送信アンテナと、受信機と、受信アンテナと、プロセッサと、補助設備とを含み、前記レーダー本体は監視対象の監視情報を取得する時、送信機が線形無線周波数信号を生成し、送信アンテナを介して監視対象に送信し、受信機は受信アンテナを介して監視対象によって生成されたエコー信号を受信し、プロセッサおよび補助設備を介して監視対象の監視情報を取得するように配置され、前記線形無線周波数信号はK波無線周波数信号またはX波無線周波数信号であり、対応する繰返し周波数は10Hz~10GHzであり、
前記自律時計モジュールが前記ローカルクロック情報を修正することは、
前記固有周波数信号とローカルクロック情報とに基づいて、前記固有周波数信号とローカルクロック情報との時間差を取得することと、
前記時間差に基づいて前記レーダーの修正信号を取得することと、
前記ローカルクロック情報を固有周波数信号と同期させるように、前記修正信号に基づいて前記レーダーのローカルクロック情報を修正し、
前記時間差に基づいて前記レーダーの修正信号を取得する前に、前記自律時計モジュールは、さらに、
前記時間差の精度を評価し、
前記精度が予め設定された条件を満たすことに応答して、前記時間差を前記レーダーの修正信号を取得するために用いるように配置されている
ことを特徴とするレーダー。
【請求項2】
前記固有周波数信号とローカルクロック情報とに基づいて、前記固有周波数信号とローカルクロック情報との時間差を取得することは、
タイミングモードを決定することと、
前記固有周波数信号とローカルクロック情報との時間差を算出し取得することと、を含むことを特徴とする請求項に記載のレーダー。
【請求項3】
前記時間差の精度を評価することは、
前記自律時計モジュールが衛星システムの原子時計に接続されているかどうかを判定することと、
前記自律時計モジュールが前記衛星システムの原子時計に接続されていることに応答して、前記時間差の外部精度を決定することと、を含むことを特徴とする請求項に記載のレーダー。
【請求項4】
前記時間差の精度を評価することは、
前記自律時計モジュールが衛星システムの原子時計に接続されていないことに応答して、前記自律時計モジュールにサイクルスリップがあるかどうかを判断することと、
前記自律時計モジュールにサイクルスリップがないことに応答して、前記時間差の内部精度を決定することと、をさらに含むことを特徴とする請求項に記載のレーダー。
【請求項5】
レーダーシステムであって、
監視対象の監視情報を取得して送信するように配置されているレーダー本体と、前記レーダー本体のローカルクロック情報を生成するための水晶振動モジュールとを含み、一定の領域内で複数のレーダーを使用し、レーダーのネットワーク化構造を構成して異なる体積、形状、大きさの監視対象を監視する複数のレーダーと、
同一時刻に異なるレーダーにより取得された同一監視対象の監視情報を融合するように配置されている融合センターと、
北斗衛星システムから送信した固有周波数信号およびローカル時計情報を取得して、前記固有周波数信号とローカル時計情報とが同期していないことと、前記固有周波数信号とローカルクロック情報との時間差の精度が予め設定された条件を満たすことに応答して、前記固有周波数信号とローカルクロック情報との時間差に基づいて前記ローカル時計情報を定期的に修正することにより、前記レーダーシステム内の複数のレーダーが測定時に時間を同期するように配置されている複数の自律時計モジュールと、を含み、
前記レーダーの数は前記自律時計モジュールに対応し、前記監視情報は、前記監視対象の監視パラメータを表示するための監視データと、前記レーダー本体の位置に対応するタイムスタンプを表示するためのタイムスタンプとを含み
前記レーダー本体は送信機と、送信アンテナと、受信機と、受信アンテナと、プロセッサと、補助設備とを含み、前記レーダー本体は監視対象の監視情報を取得する時、送信機が線形無線周波数信号を生成し、送信アンテナを介して監視対象に送信し、受信機は受信アンテナを介して監視対象によって生成されたエコー信号を受信し、プロセッサおよび補助設備を介して監視対象の監視情報を取得するように配置され、前記線形無線周波数信号はK波無線周波数信号またはX波無線周波数信号であり、対応する繰返し周波数は10 Hz~10GHzであり、
前記自律時計モジュールが前記ローカルクロック情報を修正することは、
前記固有周波数信号とローカルクロック情報とに基づいて、前記固有周波数信号とローカルクロック情報との時間差を取得することと、
前記時間差に基づいて前記レーダーの修正信号を取得することと、
前記ローカルクロック情報を固有周波数信号と同期させるように、前記修正信号に基づいて前記レーダーのローカルクロック情報を修正し、
前記時間差に基づいて前記レーダーの修正信号を取得する前に、前記自律時計モジュールは、さらに、
前記時間差の精度を評価し、
前記精度が予め設定された条件を満たすことに応答して、前記時間差を前記レーダーの修正信号を取得するために用いるように配置されている
ことを特徴とするレーダーシステム。
【請求項6】
前記自律時計モジュールは、さらに、
前記固有周波数信号とローカルクロック情報とに基づいて、前記固有周波数信号とローカルクロック情報との時間差を取得し、
前記時間差に基づいて前記レーダーの修正信号を取得し、
前記ローカルクロック情報を固有周波数信号と同期させるように、前記修正信号に基づいて前記レーダーのローカルクロック情報を修正するように配置されていることを特徴とする請求項に記載のレーダーシステム。
【請求項7】
前記水晶振動モジュールは恒温水晶振動であることを特徴とする請求項に記載のレーダーシステム。
【請求項8】
前記自律時計モジュールは前記レーダー本体内部に集積されていることを特徴とする請求項に記載のレーダーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本願は、2020年7月3日に出願された、出願番号202010635399.6、発明の名称「レーダーおよびレーダーシステムのネットワーク化方法」の中国特許出願に対して優先権を主張し、そのすべての内容は引用により本願に組み込まれている。
【0002】
本発明はレーダー技術分野に関し、特にレーダーおよびレーダーシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
レーダーのネットワーク化は、一般的には、複数のレーダーを異なる場所に設置して監視点の監視データ測定を実現するネット全体である。レーダーネットワークを構築する際には、データ測定と追跡の正確性を保証するために、各レーダー探査情報の時間的統一性を維持する必要がある。
【0004】
従来のレーダーのネットワーク化では、衛星測位システムの高安定時計や高安定性のルビジウム原子時計を同期信号として利用することが多く、レーダーのネットワーク化の時間的統一性の問題を解決し、タイミング精度は信頼できるが、使用コストが高く、測定データの正確性はまだ向上する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この点に鑑みて、本発明の実施形態は、レーダー測定の時間空間の一貫性とレーダー監視情報の正確性を向上させるためのレーダーおよびレーダーシステムのネットワーク化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様では、本発明の実施形態は、レーダーであって、
監視対象の監視情報を取得して送信するように配置されているレーダー本体と、
前記レーダー本体のローカルクロック情報を生成するように配置されている水晶振動モジュールと、
衛星システムから送信した固有周波数信号および前記ローカルクロック情報を取得して、前記固有周波数信号と前記ローカルクロック情報とが同期していない時に前記ローカルクロック情報を修正するように配置されている自律時計モジュールと、を含み、
前記監視情報は、前記監視対象の監視パラメータを表示するための監視データと、前記レーダー本体の位置に対応するタイムスタンプを表示するためのタイムスタンプとを含む。
【0007】
さらに、前記自律時計モジュールは前記ローカルクロック情報を修正することは、
前記固有周波数信号とローカルクロック情報とに基づいて、前記固有周波数信号とローカルクロック情報との時間差を取得することと、
前記時間差に基づいて前記レーダーの修正信号を取得することと、
前記ローカルクロック情報を固有周波数信号と同期させるように、前記修正信号に基づいて前記レーダーのローカルクロック情報を修正することと、を含む。
【0008】
さらに、前記固有周波数信号とローカルクロック情報とに基づいて、前記固有周波数信号とローカルクロック情報との時間差を取得することは、
タイミングモードを決定することと、
前記固有周波数信号とローカルクロック情報との時間差を算出して取得することと、を含む。
【0009】
さらに、前記時間差に基づいて前記レーダーの修正信号を取得する前に、前記自律時計モジュールは、さらに、
前記時間差の精度を評価し、
前記精度が予め設定された条件を満たすことに応答して、前記時間差を前記レーダーの修正信号を取得するために用いるように配置されている。
【0010】
さらに、前記時間差の精度を評価することは、
前記自律時計モジュールが衛星システムの原子時計に接続されているかどうかを判定することと、
前記自律時計モジュールが前記衛星システムの原子時計に接続されていることに応答して、前記時間差の外部精度を決定することと、を含む。
【0011】
さらに、前記時間差の精度を評価することは、
前記自律時計モジュールが衛星システムの原子時計に接続されていないことに応答して、前記自律時計モジュールにサイクルスリップがあるかどうかを判断することと、
前記自律時計モジュールにサイクルスリップがないことに応答して、前記時間差の内部精度を決定することと、をさらに含む。
【0012】
第2の態様では、本発明の実施形態は、レーダーシステムであって、
監視対象の監視情報を取得して送信するように配置されているレーダー主体と、前記レーダー本体のローカルクロック情報を生成するための水晶振動モジュールとを含む複数のレーダーと、
同一時刻に異なるレーダーにより取得された同一監視対象の監視情報を融合するように配置されている融合センターと、
前記衛星システムから送信した固有周波数信号およびローカルクロック情報を取得して、前記固有周波数信号とローカルクロック情報とが同期していないことに応答して、前記固有周波数信号とローカルクロック情報とに基づいて、前記ローカルクロック情報を定期的に修正するように配置されている複数の自律時計モジュールと、を含み、
前記レーダーの数は前記自律時計モジュールに対応し、前記監視情報は、前記監視対象の監視パラメータを表示するための監視データと、前記レーダー本体の位置に対応するタイムスタンプを表示するためのタイムスタンプとを含む。
【0013】
さらに、前記自律時計モジュールは、さらに、
前記固有周波数信号とローカルクロック情報とに基づいて、前記固有周波数信号とローカルクロック情報との時間差を取得し、
前記時間差に基づいて前記レーダーの修正信号を取得し、
前記ローカルクロック情報を固有周波数信号と同期させるように、前記修正信号に基づいて前記レーダーのローカルクロック情報を修正するように配置されている。
【0014】
さらに、前記水晶振動モジュールは恒温水晶振動である。
【0015】
さらに、前記自律時計モジュールは前記レーダー内部に集積されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の実施形態に係る発明は、レーダー本体により監視対象の監視情報を測定して送信し、監視対象の監視情報の取得を実現する。水晶振動モジュールによりレーダー本体のローカルクロック情報を生成し、自立時計モジュールは衛星システムから送信した固有周波数信号およびローカルクロック情報を取得し、固有周波数信号とローカルクロック情報とが同期していない時にローカルクロック情報を修正し、ローカルクロック情報を固有周波数信号と同期させ、レーダーの同期タイミングを実現し、さらにレーダー測定時の時間空間の一貫性とレーダー監視情報の正確性を高める。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下の図面を参照して本発明の実施形態を説明することにより、本発明の上述およびその他の目的、特徴および利点がより明確になる。
図1】本発明の実施形態に係るレーダーの構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る自律時計モジュールの構成図である。
図3】本発明の実施形態に係るレーダーシステムの構成図1である。
図4】本発明の実施形態に係るレーダーシステムの構成図2である。
図5】本発明の実施形態に係る自律時計モジュールがローカルクロック情報を修正するフローチャートである。
図6】本発明の実施形態に係る時間差算出のフローチャートである。
図7】本発明の実施形態に係る時間差精度の評価のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。以下、本発明の詳細な説明では、特定の詳細な部分について詳しく説明する。本発明は、当業者にとってこれらの詳細な部分の説明がなくても完全に理解できる。本発明の本質を混同することを避けるために、公知の方法、プロセス、フロー、素子、回路は詳細に述べられていない。
【0019】
また、本明細書で提供される図面は、説明の目的のために提供され、必ずしも比例して描かれたものではないことを当業者は理解するであろう。
【0020】
文脈が明確に要求されない限り、明細書の「含む」、「備える」などの類似語は、排他的または貧挙的な意味ではなく、含む意味として解釈されるべきである。つまり、「含むがこれに限らない」という意味である。
【0021】
レーダーは電磁波を利用して目標を探査する電子機器であり、レーダーにより監視対象に電磁波を発射し、エコーを受信して監視対象から電磁波発射点までの距離、鏡像速度、方位、高さと形変数などの情報を取得し、全天候、全時間測定する特性を持ち、一定の貫通能力を持ち、気象予報、資源探査、環境監視、地質調査などの方面に広く応用されている。
【0022】
橋梁や床などの建築構造の変形を測定する例について説明する。測定時には、監視対象の異なる監視点のエコー信号を取得し、複数のエコー信号に基づいてレーダー装置と監視点との線方向の変位量を取得し、複数の変位量に基づいて監視対象の異なる方向の変位量を算出し、すなわち監視対象の変形量を取得する。
【0023】
図1は本発明の実施形態に係るレーダーの構成図である。図1に示すように、本発明の実施形態に係るレーダー1は、レーダー本体11と、水晶振動モジュール12と、自律時計モジュール13とを含み、水晶振動モジュール12および自律時計モジュール13がレーダー本体11に接続されており、自律時計モジュール13が水晶振動モジュール12にも接続されている。レーダー本体11は、監視対象2の監視情報を取得して送信するように配置されており、監視情報は、監視対象2の監視パラメータを表示するための監視データと、レーダー本体11の位置に対応するタイムスタンプを表示するためのタイムスタンプとを含む。水晶振動モジュール12は、レーダー本体11のローカルクロック情報を生成するように配置されている。自律時計モジュール13は、衛星システム3から送信した固有周波数信号およびローカルクロック情報を取得し、固有周波数信号とローカルクロック情報とが同期していない時に、固有周波数信号とローカルクロック情報とが同期するようにローカルクロック情報を修正するように配置されている。
【0024】
代替的な実施形態では、本実施形態の水晶振動モジュール12および自律時計モジュール13は、レーダー1の配置および使用を容易にするためにレーダー本体11内に配置されている。
【0025】
レーダー本体11は、送信機111と、送信アンテナ112と、受信機113と、受信アンテナ114と、プロセッサ115と、補助設備116とを含み、送信機111、送信アンテナ112、受信機113、受信アンテナ114、および補助設備116は、いずれもプロセッサ115に接続されている。補助設備116は、データ採用設備と耐干渉設備などを含む。使用時に、送信機111は線形無線周波数信号を生成し、送信アンテナ112を介して監視対象2に送信し、受信機113は受信アンテナ114を介して監視対象2によって生成されたエコー信号を受信し、プロセッサ115および補助設備116を介して監視対象2の監視情報を取得する。
【0026】
好ましくは、線形無線周波数信号はK波無線周波数信号またはX波無線周波数信号である。ここで、Xバンドの周波数範囲は8~12GHzであり、Kバンドの周波数範囲は18~27GHzである。
【0027】
レーダーにより監視対象の微変形パラメータを測定する場合、Xバンド信号を採用する場合、周波数を10GHzに選択し、最大無線周波数幅を200MHzまたは500MHzに選択し、実現可能な最大探査距離は1キロである。Kバンド信号を採用する場合、周波数を24.0125GHzに選択し、最大無線周波数幅を250MHzに選択し、実現可能な最大探査距離は270メートルである。さらに、K波無線周波数信号またはX波無線周波数信号の選択にかかわらず、送信される無線周波数信号のパルス繰返し周波数(RPF)は10 Hz~10GHzであり、データ更新率は10-10Hzに配置されている。これにより、レーダー監視変形の最小目標解像度を1メートルとし、測定精度を0.01ミリより高くすることを実現し、レーダー監視の正確性を高めることができる。
【0028】
通常、水晶振動モジュールは温度補償水晶振動と恒温水晶振動とを含む。ここで、温度補償水晶振動(TCXO)は、周囲の温度変化による発振周波数変化量を付加的な温度補償回路により削減する水晶発振器である。恒温水晶振動(OCXO)は、恒温槽を用いて水晶発振器中の水晶共振器の温度を一定に保ち、周囲温度変化による発振器出力周波数変化量を最小に削減する水晶発振器である。一般に、温度補償水晶振動の周波数安定度は1E-6であり、経年劣化率は1E-6である。一方、恒温水晶振動の周波数安定度は1E-12であり、経年劣化率は1E-8である。したがって、本実施形態の水晶振動モジュールは、恒温水晶振動を採用して、レーダー時間を定期的に較正することが好ましい。
【0029】
自律時計モジュール13は、衛星受信機131と、時計自律ユニット132と、時計出力インタフェース133とを含み、時計出力インタフェース133は水晶振動モジュール12に接続されている。レーダーに対してタイミング補正を行う時には、衛星受信機131は、ナビゲーション衛星信号を捕捉し追跡し、衛星システム3の時間を表示するための固有周波数信号を取得する。自律時計ユニットは、固有周波数信号に基づいてレーダーのローカルクロック情報を周波数補正する。時計出力インタフェース133は、補正後時計自律ユニット132が生成したクロックソース情報を水晶振動モジュール12に送信し、さらにレーダーのローカルクロック情報の補正を完了するためのものである。
【0030】
既存の衛星受信機にはGPS、北斗、CAPS、GLONASSがある。好ましくは、本発明の実施形態に係る衛星受信機は、北斗衛星受信機を選択し、北斗衛星受信機を介して北斗衛星システムから送信した固有周波数信号を読み取る。通常、衛星受信機は1PPS(1 Pulse Per Second)のパルス信号を出力する。
【0031】
衛星受信機が発生する固有周波数信号の長期安定度はより良いが、一定のジッタを持っているのに対し、水晶振動モジュールが発生するローカルクロック情報は短期安定性は良いが周波数ドリフトが存在し、時計自律ユニットは固有周波数信号に基づいてローカルクロック情報を補正すると、2種類の周波数信号の特徴を結合して、レーダーにクロックソース情報を提供することができ、ローカルクロック情報を調整するのに便利である。
【0032】
時計出力インタフェースは、時計自律ユニットによって生成されたクロックソース情報を水晶振動モジュールに送信する。一般的な時計出力には、シリアルデータクロック、IRIG-Bコードクロック、NTPクロックなどがある。好ましくは、本実施形態の時計出力インタフェースはシリアルデータクロックであり、シリアルデータクロックと水晶振動モジュールによりタイミング較正を実現する。
【0033】
代替的な実施形態では、本実施形態のレーダーには、アンテナフィーダを接続して、レーダーのネットワーク化を実現するオプションとして使用するためのアンテナフィーダインタフェースがさらに配置されている。アンテナフィーダは受信アンテナと送信機および受信機が無線周波数エネルギーを伝送する伝送線を指し、レーダーのアンテナと良好なインピーダンス整合、伝送損失が小さく、放射効果が小さいなどの利点がある。通常、アンテナフィーダは平行二重線および同軸線を用いている。
【0034】
電磁波を発射するレーダーと電磁波を受信するレーダーが異なる位置にあるか、または複数の監視対象を同時に監視する必要がある場合、監視対象の監視データとタイムスタンプを全面的に正確に取得するために、通常は一定の領域内で複数のレーダーを使用し、レーダーのネットワーク化構造を構成して異なる体積、形状、大きさの監視対象を監視し、監視対象は点、線、面、または体の目標であり、橋梁工事、堤防工事、軌道交通工事、道路と建築物などの維持と監督管理に使用することができ、同時に都市住宅地の斜面を監視し、地滑り、土石流などを警報することができ、地震ネットワーク化監視と臨震警報を実現することもできる。そのため、監視データの正確性と有効性を保証するためには、ネットワーク化構造における各レーダー探査情報の時間的統一性(すなわち時間同期)を維持し、さらにレーダーネットワーク化システムに統一の時間スケールを提供する必要がある。
【0035】
図3および図4は、本発明の実施形態に係るレーダーシステムの構成図である。図3に示すように、レーダーシステムは、複数のレーダー1と、融合センター4と、複数の自律時計モジュール13とを含む。
【0036】
レーダー1は、レーダー本体11と水晶振動モジュール12とを含む。ここで、レーダー本体11は監視対象の監視情報を取得して送信するように配置されており、水晶振動モジュール12はレーダー本体11のローカルクロック情報を生成するために用いられる。
【0037】
自律時計モジュール13の数はレーダー1の数に応じて、衛星システム3から送信した固有周波数信号およびレーダー1のローカルクロック情報を取得するために用いられ、固定周波数信号とローカルクロック情報とが同期していないことに応答して、固定周波数信号とローカルクロック情報とに基づいてローカルクロック情報を定期的に修正し、レーダー1のローカルクロック情報を固有周波数信号と同期させ、さらに異なるレーダー1の同期タイミングを実現し、レーダー監視情報の正確性と有効性を保証する。
【0038】
融合センター4は、異なるレーダー1が取得した監視対象の監視情報を受信し融合し、一定の基準に従って監視情報を自動分析、最適化、統合するように配置されている。代替的な実施形態では、融合センター4は、サーバ、サーバクラスタ、または監視対象の監視情報を受信して処理する他の設備であってもよい。好ましくは、本実実施形態の融合センター4はサーバクラスタを採用し、単一組のレーダー1から送信した監視対象の監視情報を受信して処理するように配置されており、複数組のレーダー4から送信した監視対象の監視情報を受信して処理するように配置されてもよく、前記監視情報は、ある特定の時間帯における離散的な形式のデータであってもよく、連続的な形式のデータであってもよい。これに対応して、融合センター4が単一組のレーダー1から送信した監視情報を受信して処理するように配置されている場合、単一組のレーダー1のローカルクロック情報を補正し、単一組のレーダー1のローカルクロック情報を衛星システム3の固有時計周波数信号と同期させるだけでよい。融合センター4が複数組のレーダー1から送信した監視対象の監視情報を受信して処理するように配置されている場合、複数のレーダー1のローカルクロック情報を同時に校正し、さらに監視情報の時間空間の一貫性を保証し、監視情報の正確性を高める必要がある。
【0039】
代替的な実施形態では、図4に示すように、本実施形態の衛星システム3は北斗衛星システムを採用し、自律時計モジュール13は北斗自律時計を採用し、水晶振動モジュール12は恒温水晶振動を採用する。使用時に、レーダー本体11により監視対象の監視情報を測定して取得し、レーダー本体11内の前処理モジュールを介して前処理した監視情報を融合センター4に送信する。融合センター4は、複数のレーダーから送信した監視対象の監視情報を受け取り、分析し、複数の監視情報のアライメント、関連付け、フィルタ予測、識別、評価などを行う。アライメントとは、レーダーシステムにおける複数のレーダー1が取得した監視情報における測定データおよびタイムスタンプを統一した基準時間および空間に統一することをいう。関連付けとは、予め設定された測定スケールを用いて複数のレーダー1からの監視情報を比較し、相関処理を行う候補対を決定することをいう。識別とは、関連付けた監視情報を処理して、監視情報に対応するものが同じ目標に属しているかどうかを判断することをいう。評価とは、監視情報の関連処理結果を分析し、監視情報が反映する監視対象の具体的な状況を決定することをいい、監視対象に対して適時に相応の措置をとるのに便利である。フィルタ予測とは、関連付け処理後の構造に基づいて監視情報を更新し、監視情報の発展傾向の予測を実現することをいう。これにより、レーダー1により監視対象の測定を実現し、融合センター4により監視情報の分析と融合処理を行い、監視対象の監視情報に基づいて適時に相応の措置をとりやすく、不利な監視情報による損失を回避する。
【0040】
好ましくは、自律時計モジュールは前記レーダー本体内に集積されている。これにより、レーダーの配置が容易になり、レーダーのタイミング同期精度を向上させることに有利である。
【0041】
時間同期を実現する際には、無線電波を用いて時間情報を伝播し、衛星システムから送信した無線電波を介して時間基準(すなわち衛星システムから送信した固有周波数信号)を伝達し、その後、自律時間モジュールにより、固有周波数信号と水晶振動モジュールが発生するローカルクロック情報とを照合し、固有周波数信号の伝播経路上の時間遅延および各種誤差要因の影響を除去し、さらに、複数のレーダーの時間同期を実現する。同時に、衛星は世界的に超短波で時間信号を伝播することができ、かつ伝播精度が高いため、時計情報の照合と時間同期の精度を高めるのに有利である。
【0042】
好ましくは、本実施形態の複数のレーダーは、同じ時間同期方法を用いてタイミングキャリブレーションを行うので、以下では、単一レーダーのタイミングキャリブレーションを例に説明する。
【0043】
図5は本発明の実施形態に係る自律時計モジュールがローカルクロック情報を修正するフローチャートである。図5に示すように、自律時計モジュールがローカルクロック情報を修正することは、以下のステップを含む。
【0044】
ステップS100で、固有周波数信号とローカルクロック情報とに基づいて、固有周波数とローカルクロック情報との時間差を取得する。
【0045】
ステップS200で、時間差に基づいてレーダーの修正信号を取得する。
【0046】
ステップS300で、修正信号に基づいてレーダーのローカルクロック情報を修正し、ローカルクロック情報を固有周波数信号と同期させる。
【0047】
ユーザがレーダーのローカルクロック情報と固有周波数信号との時間差を取得しやすく、算出作業量を節約するために、本実施形態の固有周波数信号とローカルクロック情報とに基づいて前記固有周波数信号とローカルクロック情報との時間差を取得する解決方法は、ユーザが予め設定した方法に従って行うことができる。
【0048】
図6は本発明の実施形態に係る時間差算出のフローチャートである。図6に示すように、代替的な実施形態では、本実施形態の固有周波数信号とローカルクロック情報とに基づいて前記固有周波数信号とローカルクロック情報との時間差を取得することは、以下のステップを含む。
【0049】
ステップS110で、制御処理ファイルを取得する。
【0050】
本実施形態の制御処理ファイルには、固有周波数信号とローカルクロック情報との時間差を解決するためのアルゴリズムファイルと処理ファイルが複数格納されており、処理ファイルにはOBS観測ファイル、衛星ナビゲーションファイル、精密グレゴリオファイル、時計差ファイルなどが含まれる。アルゴリズムファイルには、サイクルスリップ監視、搬送波位相擬似距離平滑化、衛星精密軌道と衛星時計補間データ、誤差修正アルゴリズム、最小二乗解決アルゴリズムなどが含まれる。
【0051】
使用時に、ユーザは制御処理ファイルのパスを入力することで、対応するアルゴリズムファイルと処理ファイルを取得することができる。
【0052】
ステップS120で、タイミングモードを決定する。
【0053】
好ましくは、本実施形態の衛星タイミングモードは、精密グレゴリオタイミングモード(PPP)と時計差タイミングモード(SPP)とを含む。精密グレゴリオタイミングモードは単点測位原理と似ており、搬送波位相と擬似距離に基づく時間伝達技術である。時計差タイミングモードは、擬似距離観測値に基づく時間伝達技術である。
【0054】
精密グレゴリオタイミングモード(PPP)を決定する場合、レーダーシステムはOBS観測ファイルとグレゴリオクロックファイルのみを処理ファイルとして読み込む。時計差タイミングモード(SPP)を決定する場合、レーダーシステムはOBS観測ファイルとナビゲーションファイルのみを処理ファイルとして読み込む。
【0055】
ステップS130で、タイミングモードにおける対応する前記固有周波数信号とローカルクロック情報との時間差を算出して取得する。
【0056】
タイミングモードが時計差タイミングモード(SPP)を採用している場合、擬似距離観測値、ブロードキャストグレゴリオおよび衛星時計差により測位を行う。同時に、4つの衛星(3つのRDSS衛星と仮想4番目の衛星である高時計を含む)を観測してレーダーの座標と時計差を得て、誤差修正(電離層修正、対流層修正、相対論的効果修正、地球自転効果修正などを含む)によって衛星固有周波数信号とローカル時計情報との時間差を得る。時計差タイミングモードは擬似距離とブロードキャストグレゴリオとに基づいて時間伝達を実現し、擬似距離とブロードキャストグレゴリオの精度が低いため、時間同期の精度を高めるために、本実施形態のデフォルトシステムのタイミングモードはブロードキャストグレゴリオタイミングである。
【0057】
タイミングモードが精密グレゴリオタイミングモード(PPP)を採用する場合、精密軌道データと精密時間差データを取得することによってブロードキャスト軌道と時計との誤差を克服すると同時に、精密グレゴリオタイミングモードは標準測位中の各誤差を修正する以外に、アンテナ位相中心の改正、固体潮汐の改正、海洋潮汐の改正、マルチパス効果などを含む正確な誤差修正モデルを考慮し、対流層修正などのパラメータにより衛星固有周波数信号とローカルクロック情報との時間差を取得する。
【0058】
精密グレゴリオタイミングモード(PPP)で搬送波位相とコード観測を組み合わせた方法を用いて測位タイミング解決を行うため、搬送波位相周波数は高く、位相測定の精度は純コード測定の精度より高い。したがって、本実施形態では、ローカルクロック情報と固有周波数信号との時間差の算出精度を高め、ローカルクロック情報補正の精度を高めるために、精密タイミングモード(PPP)をデフォルトタイミングモードに設定する。
【0059】
レーダーの時間同期性をさらに向上させるために、衛星固有周波数信号およびローカルクロック情報を解決した後、本実施形態では、解決した時間差の精度を評価し、前記解決した時間差精度が予め設定された精度条件を満たす場合に、前記時間差をレーダーの修正信号を取得するために用いる。
【0060】
図7は本発明の実施形態に係る時間差精度の評価のフローチャートである。図7に示すように、精密グレゴリオタイミングモード(PPP)における時間差を解決した後、時間差精度を評価することは、以下のステップを含む。
【0061】
ステップS210で、前記自律時計モジュールが衛星システムの原子時計に接続されているかどうかを判定する。
【0062】
ステップS221で、前記自律時計モジュールが前記衛星システムの原子時計に接続されていることに応答して、前記時間差の外部精度を決定する。
【0063】
外部精度は、外部から与えられた基準値を対比基準とし、主に観測値と基準値との間の偏差の程度、すなわち精度を反映する。外部精度は測位結果の実際の信頼性を反映し、一般的に誤差の二乗平均根(RMS)で測定される。
【0064】
ステップS222で、前記自律時計モジュールが衛星システムの原子時計に接続されていないことに応答して、前記自律時計モジュールにサイクルスリップがあるかどうかを判断する。
【0065】
ステップ230で、前記自律時計モジュールにサイクルスリップがないことに応答して、前記時間差の内部精度を決定する。
【0066】
内部精度は推定された最尤推定値を対比基準とし、主に観測値間の離散度、すなわち精密度を反映し、一般に誤差または標準差(STD)で測定される。
【0067】
なお、自律時計にサイクルスリップが存在することを監視する場合、まずサイクルスリップ修復を実行し、サイクルスリップが時間差に与える影響を除去し、もはや自律時計にサイクルスリップが存在することを監視しなくなるまで、時間差の内部精度を決定する必要がある。解決された時間差外部精度または内部精度が予め設定された条件を満たした後、解決された時間差をレーダーの修正信号を取得するために用いて、さらにレーダーのタイミング同期を実現する。
【0068】
本発明の実施形態に係る発明はレーダー本体により監視対象の監視情報を取得して送信し、自律時計モジュールは衛星システムから送信した固有周波数信号およびローカルクロック情報を取得し、固有周波数信号とローカルクロック情報とが同期していない時にローカルクロック情報を修正し、ローカルクロック情報を固有周波数信号と同期させ、レーダーの同期タイミングを実現する。さらに、レーダーのネットワーク化の複数のレーダーを介して監視対象を監視することで、時間空間同期性を保証した上で監視情報の正確性を保証することができる。
【0069】
以上説明した本発明の好適な実施例のみであって、本発明を限定するものではなく、当業者にとって、本発明は種々の変更や変化が可能である。本発明の精神と原理の内に行ったいかなる修正、均等置換、改善も、本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0070】
1 レーダー
11 レーダー本体
111 送信機
112 送信アンテナ
113 受信機
114 受信アンテナ
115 プロセッサ
116 補助設備
12 水晶振動モジュール
13 自律時計モジュール
131 衛星受信機
132 時計自律ユニット
133 時計出力インタフェース
2 監視対象
3 衛星システム
4 融合センター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7