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特許7409749軸受隙間測定装置を有する水中又は水上移動体の舵、舵の軸受隙間の測定方法及び舵の軸受隙間測定装置
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  • 特許-軸受隙間測定装置を有する水中又は水上移動体の舵、舵の軸受隙間の測定方法及び舵の軸受隙間測定装置 図1
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  • 特許-軸受隙間測定装置を有する水中又は水上移動体の舵、舵の軸受隙間の測定方法及び舵の軸受隙間測定装置 図9
  • 特許-軸受隙間測定装置を有する水中又は水上移動体の舵、舵の軸受隙間の測定方法及び舵の軸受隙間測定装置 図10
  • 特許-軸受隙間測定装置を有する水中又は水上移動体の舵、舵の軸受隙間の測定方法及び舵の軸受隙間測定装置 図11
  • 特許-軸受隙間測定装置を有する水中又は水上移動体の舵、舵の軸受隙間の測定方法及び舵の軸受隙間測定装置 図12a
  • 特許-軸受隙間測定装置を有する水中又は水上移動体の舵、舵の軸受隙間の測定方法及び舵の軸受隙間測定装置 図12b
  • 特許-軸受隙間測定装置を有する水中又は水上移動体の舵、舵の軸受隙間の測定方法及び舵の軸受隙間測定装置 図13
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】軸受隙間測定装置を有する水中又は水上移動体の舵、舵の軸受隙間の測定方法及び舵の軸受隙間測定装置
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/38 20060101AFI20231226BHJP
   B63H 25/52 20060101ALI20231226BHJP
   B63B 81/00 20200101ALI20231226BHJP
   B63B 79/10 20200101ALI20231226BHJP
   F16C 41/00 20060101ALI20231226BHJP
   F16C 25/04 20060101ALI20231226BHJP
   F16C 25/08 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B63H25/38 104D
B63H25/52
B63B81/00
B63B79/10
F16C41/00
F16C25/04 Z
F16C25/08 Z
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020041489
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2020147278
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】19162575.5
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20160036.8
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518190020
【氏名又は名称】ベッカー マリン システムズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】becker marine systems GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング キュールマン
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-522117(JP,A)
【文献】特開2002-181526(JP,A)
【文献】特開2002-188411(JP,A)
【文献】特表2017-518911(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0118117(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0046242(US,A1)
【文献】米国特許第06080982(US,A)
【文献】特開平10-252751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/38
B63H 25/52
B63B 81/00
B63B 79/10
F16C 41/00
F16C 25/04
F16C 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹管(12)内に配置された舵シャフト(14)と、前記舵シャフト(14)に接続された舵板(16)と、幹管(12)と舵シャフト(14)との間に配置された軸受ブッシュ(32)と、さらに軸受隙間測定装置(25)とを備え、前記軸受隙間測定装置(25)は軸受隙間の無摩損測定用の少なくとも1つのセンサ(26、26a)を備える水中若しくは水上移動体(10)用、又は、船(11)用の舵(100)であって、
前記少なくとも1つのセンサ(26、26a)は、非接触方式で、前記舵シャフト(14)から距離を置いて配置される、及び/又は、前記少なくとも1つのセンサ(26、26a)は、渦電流センサ(36)又は超音波センサ(40)であり、
前記少なくとも1つのセンサ(26、26a)は、ホルダ(45、48)に配置され、前記ホルダ(45、48)は、前記幹管(12)の前側(47)に締結され、前記ホルダ(45、48)は、少なくとも1つのリングセグメント(50)を有し、前記少なくとも1つのリングセグメント(50)は、少なくとも90°の角度領域をカバーすることを特徴とする舵(100)。
【請求項2】
軸受隙間の無摩損測定用の前記少なくとも1つのセンサ(26、26a)は、前記センサ(26、26a)と前記舵シャフト(14)との間の距離(37)の無摩損測定用の、及び/又は、前記軸受ブッシュ(32)の壁厚(43)の無摩損測定用のセンサ(26、26a)であることを特徴とする請求項1に記載の舵(100)。
【請求項3】
前記センサ(26、26a)は前記軸受ブッシュ(32)の外側(41)に配置されること、及び/又は、前記少なくとも1つの前記センサ(26、26a)は、前記舵シャフト(14)の軸方向(33)で見たときに前記軸受ブッシュ(32)の下に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の舵(100)。
【請求項4】
少なくとも2つ、少なくとも3つ、若しくは、少なくとも4つのセンサ(26、26a)が設けられ、複数の前記センサ(26、26a)は、前記幹管(12)及び/若しくは前記軸受ブッシュ(32)の周囲にわたって間隔をあけて又は規則的な角度間隔で配置されること、
並びに/又は、前記少なくとも1つのセンサ(26、26a)若しくは複数の前記センサ(26、26a)のうちの少なくとも1つは、固定された前記幹管(12)の船尾領域に配置されることを特徴とする請求項1に記載の舵(100)。
【請求項5】
超音波接触手段(42)又はシリコーンベースの超音波接触手段(42)が、前記超音波センサ(40)と、前記軸受ブッシュ(32)及び/又は前記舵シャフト(14)と、の間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の舵(100)。
【請求項6】
信号伝達手段(28)、又は、信号伝達手段(28)であるケーブル(29)が設けられ、
前記信号伝達手段(28)は、前記幹管(12)の外側(27)に延在するように配置され、及び/又は、前記信号伝達手段(28)は、信号伝達手段チャネル(30)内に、少なくともセクション内に配置され、
前記信号伝達手段チャネル(30)は前記幹管(12)の前記外側(27)に配置され、及び/又は、前記信号伝達手段チャネル(30)は溝、U字プロファイル(31)若しくはケーブルチャネルであることを特徴とする請求項1に記載の舵(100)。
【請求項7】
請求項1に記載の舵(100)の軸受隙間を測定する方法であって、前記少なくとも1つのセンサ(26、26a)は、ホルダ(45、48)に配置され、前記ホルダ(45、48)は、前記幹管(12)の前側(47)に締結され、前記ホルダ(45、48)は、少なくとも1つのリングセグメント(50)を有し、前記少なくとも1つのリングセグメント(50)は、少なくとも90°の角度領域をカバーし、前記少なくとも1つのセンサ(26、26a)は、渦電流センサ(36)又は超音波センサ(40)であり、前記軸受隙間の無摩損測定が行われ、前記無摩損測定は、非接触測定である、及び/又は、前記無摩損測定は、前記超音波センサ(40)を使用する超音波測定若しくは前記渦電流センサ(36)を使用する渦電流測定であることを特徴とする方法。
【請求項8】
前記軸受隙間の前記無摩損測定は、センサ(26、26a)と舵シャフト(14)との間の距離(37)の無摩損測定、及び/又は、軸受ブッシュ(32)の壁厚(43)の無摩損測定であることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記測定は自動的に、及び/若しくは、規則的な時間間隔で行われること、並びに/又は、前記測定は、軸受ブッシュ(32)及び/若しくは舵シャフト(14)及び/若しくは幹管(12)の周囲にわたる少なくとも2つ、少なくとも3つ、若しくは、少なくとも4つの位置で行われることを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の舵(100)のための軸受隙間測定装置(25)であって、前記軸受隙間測定装置(25)は、軸受隙間の無摩損測定用の少なくとも1つのセンサ(26、26a)を備え、軸受隙間の無摩損測定用の前記少なくとも1つのセンサ(26、26a)は、前記センサ(26、26a)と舵シャフト(14)との間の距離(37)の無摩損測定用の、及び/又は、軸受ブッシュ(32)の壁厚(43)の無摩損測定用のセンサ(26、26a)であり、
前記少なくとも1つのセンサ(26、26a)は、非接触方式で、前記舵シャフト(14)から距離を置いて配置されるように構成され、及び/又は、前記少なくとも1つのセンサ(26、26a)は、渦電流センサ(36)又は超音波センサ(40)であり、前記少なくとも1つのセンサ(26、26a)は、ホルダ(45、48)に配置され、前記ホルダ(45、48)は、前記幹管(12)の前側(47)に締結されるように構成され、前記ホルダ(45、48)は、少なくとも1つのリングセグメント(50)を有し、前記少なくとも1つのリングセグメント(50)は、少なくとも90°の角度領域をカバーすることを特徴とする軸受隙間測定装置(25)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幹管内に配置された舵シャフトと、舵シャフトに接続された舵板と、幹管と舵シャフトとの間に配置された軸受ブッシュと、軸受隙間測定装置とを備える水中又は水上移動体用、特に船用の舵に関する。本発明はさらに、舵の軸受隙間を測定する方法及び舵の軸受隙間測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水中又は水上移動体用、特に船用の舵は、舵シャフトに締結された舵板を備える。舵シャフトは通常、船の船尾に配置された幹管内の舵シャフト軸の周りで回転可能に案内される。幹管内に軸受シャフトを実装するために少なくとも1つの軸受ブッシュが設けられ、この軸受ブッシュは好ましくは幹管の下端の領域に配置される。
【0003】
運転中に生じる大きな力の結果として、軸受ブッシュは、舵の損傷又は舵システム全体の故障さえももたらす可能性のある、激しい摩耗に曝される。このため、軸受ブッシュ内又は幹管内の舵の遊びである、摩耗によって生じた軸受隙間を、定期的に測定する必要がある。従来技術では、軸受隙間の測定は、通常、港で又は舵の右舷側で、水中の有資格ダイバーによって、手作業で行われる。
【0004】
船の舵は、国際公開第2011/117301 から知られている。舵は、舵板又は舵シャフトを船体に実装するための軸受を備える。軸受は、内側軸受セクションと、内側軸受セクション上に摺動的に載置された外側軸受セクションとを備える。さらに、外側軸受セクション上又は内側軸受セクション上に配置され、内側軸受セクション及び外側軸受セクションの他方に摺動的にさらに載置された摩耗ピンが設けられる。
【0005】
本出願人の国際公開第2015/150266 から、摩耗面に付く測定値センサを有する舵の電子軸受隙間測定装置が知られている。摩耗面に付く測定値センサは、軸受の軸受要素と摺動的に接触している。測定値センサは、ピン型に構成されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2011/117301号
【文献】国際公開第2015/150266号
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、費用効率が高く、好ましくは自動的な軸受隙間の測定を可能にする、保守頻度の低い軸受隙間測定装置を有する、水中又は水上移動体用、特に船用の舵を提供することであり、測定は、軸受隙間の定量化のための関連する測定値を直接もたらす。さらに、本発明の目的は、前述の利点を達成できるようにする、舵の軸受隙間の測定方法及び舵の軸受隙間測定装置を提供することである。
【0008】
本発明の基礎を形成する目的を達成するために、幹管内に配置された舵シャフトと、舵シャフトに接続された舵板と、幹管と舵シャフトとの間に配置された軸受ブッシュとを備え、さらに軸受隙間の無摩損測定用の少なくとも1つのセンサを備える軸受隙間測定装置が設けられた、水中又は水上移動体用、特に船用の舵が提案される。
【0009】
水中又は水上移動体用の舵は、特に客船、コンテナ船、タンカー、ばら積み船又はフェリーなどの大型船向けに構成されている。
【0010】
舵を有する水中又は水上移動体では、舵の舵板は通常、舵の舵シャフトに締結されている。舵シャフトは、水中又は水上移動体の船体に配置された舵システムによって、水中又は水上移動体に回転可能に接続されている。運転中に生じる舵力を受けるために、舵シャフトは、水中又は水上移動体の船体から下方に突起する幹管内に案内され得る。この場合、舵シャフトは、軸受、特にネック軸受で、幹管内に回転可能に実装される。軸受は、軸受シャフト又は幹管のいずれかに配置された、少なくとも1つの軸受ブッシュを有する。軸受ブッシュは、幹管の内部に、回転不能に配置され得る。舵シャフト又は舵シャフトに締結された別の軸受ブッシュは、幹管内に配置された軸受ブッシュと摺動的に接触している。代わりに又は追加で、軸受ブッシュは、幹管の外側に配置されることも可能である。この場合、舵板を介した舵は幹管上の軸受ブッシュの外側に実装され、幹管の外側に配置された軸受ブッシュと摺動的に接触している舵板上に、さらなる軸受ブッシュを設けることができる。
【0011】
本発明は、軸受又は軸受ブッシュの前述の構成及び配置の全てに適している。
【0012】
したがって、本発明の基礎を形成する目的のさらなる解決策は、幹管内に配置された舵シャフトと、舵シャフトに接続された舵板と、幹管と舵板との間に配置された軸受ブッシュと、軸受隙間測定装置とを備える水中又は水上移動体用、特に船用の舵であって、軸受隙間測定装置は、軸受隙間の無摩損測定用の少なくとも1つのセンサを備える、舵を提供することにある。
【0013】
本発明の範囲内で、軸受隙間の無摩損測定は、センサが実質的に摩損を受けない測定として理解される。用語「無摩耗」及び「摩耗」もまた、用語「無摩損」及び「摩損」と同義に使用され得る。センサは摩損又は摩耗に曝されないので、軸受隙間測定装置は特に保守不要である。軸受隙間は、特に、幹管内又は軸受ブッシュ内の軸受シャフトの径方向の遊びとして理解される。
【0014】
運転中に舵に作用する力は、軸受ブッシュのいくらかの摩耗をもたらす可能性がある。軸受ブッシュのこの摩耗の結果として、幹管内の舵シャフト又は幹管上の舵板が、舵シャフトの軸の回りの回転に加えて径方向に揺動する可能性があり、その結果、幹管、舵、舵シャフト又は舵システムに損傷を与える可能性がある。
【0015】
軸受隙間の無摩損測定用のセンサを備える軸受隙間測定装置によって、あらゆる損傷を防ぐための対策を講じられるように、軸受隙間が存在するとき、適時に決定することができる。たとえば、軸受又は軸受ブッシュが更新され得る。加えて、軸受隙間の無摩損測定用のセンサによる軸受隙間の測定により、水中で有資格ダイバーによって行われる手動測定を大幅に省くことができる。手動測定は各時点で行うことができないので、軸受隙間の無摩損測定用のセンサによる軸受隙間の測定により、軸受隙間の連続した、したがって特に適時な測定が可能になる。
【0016】
好ましくは、軸受隙間の無摩損測定用の少なくとも1つのセンサは、センサと舵シャフトとの間の距離の無摩損測定用及び/又は軸受ブッシュの壁厚の無摩損測定用のセンサであることが前提とされる。
【0017】
センサと舵シャフトとの間の距離の測定及び/又は軸受ブッシュの壁厚の測定の結果として、軸受隙間の定量化に適したこれらの測定値は、軸受隙間測定装置によって直接決定される。これとは対照的に、従来技術では、軸受隙間は補助測定値によって決定される。既知の補助測定値は、軸受隙間がそこから求められる軸受隙間の測定用のセンサの摩損である。
【0018】
距離又は壁厚の直接測定の結果として、軸受隙間の測定は、より正確になり、誤差が少なくなる。
【0019】
特に有利には、少なくとも1つのセンサは、非接触方式で、舵シャフトから距離を置いて配置されることが前提とされる。
【0020】
したがって、少なくとも1つのセンサは、幹管内で回転可能に案内される舵シャフトと物理的に接触して配置されていない。センサと舵シャフトとの間に物理的接触がないので、センサもまた摩損を受けない。センサは特に、舵シャフトから少なくとも10mmの距離、好ましくは少なくとも30mmの距離、さらに好ましくは少なくとも40mmの距離、特に好ましくは少なくとも50mmの距離に配置される。
【0021】
水中又は水上移動体の舵の軸受ブッシュは、通常10mmから50mmの壁厚を有する。したがって、舵シャフトから距離を置いたセンサの配置の利点は、軸受ブッシュをセンサと舵シャフトとの間に配置できることである。
【0022】
好ましくは、センサは軸受ブッシュの外側に配置されることが前提とされる。
【0023】
センサは、特に好ましくは、軸受ブッシュの外側と接触して配置される。軸受ブッシュは、さらに特に好ましくは、幹管の中又は上に固定的に配置され、つまり、軸受ブッシュは、舵シャフト又は舵と共に延在しない。特に固定された軸受ブッシュの外側の少なくとも1つのセンサの配置では、センサは、センサの摩損を生じることなく軸受ブッシュと接触することができる。
【0024】
さらに有利には、少なくとも1つのセンサは、舵シャフトの軸方向で見たときに、軸受ブッシュの上又は下に配置されることが前提とされ得る。
【0025】
少なくとも1つのセンサが軸受ブッシュの上又は下に配置される場合、特に軸受隙間の完全非接触測定が可能である。センサは特に、舵シャフトとも軸受ブッシュとも接触していない。しかしながら、非接触測定は、センサと軸受ブッシュとの間に海水、接触手段又はグリースなどの潤滑剤が配置されるという事実を除外するものではない。
【0026】
少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、特に好ましくは少なくとも4つのセンサが設けられ、センサは特に、幹管及び/又は軸受ブッシュの周囲にわたって規則的な角度間隔で配置される場合、特に有利である。
【0027】
複数のセンサの配置の結果として、軸受隙間のより正確な測定を行うことができる。軸受ブッシュの摩耗は通常、周囲にわたって均一に分布していないので、軸受ブッシュの周囲にわたる少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、特に好ましくは少なくとも4つの位置での測定が、特に有利である。この目的のため、センサは好ましくは、幹管の周囲にわたって配置される。3つのセンサが設けられる場合、センサ間の角距離は、好ましくは120°である。4つのセンサでは、角距離は好ましくは90°である。
【0028】
特に好ましくは、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、特に好ましくは少なくとも4つのセンサが、舵シャフトの軸方向で見たときに同じ高さに配置されることが前提とされる。
【0029】
さらに好ましくは、少なくとも1つのセンサ、特にセンサのうちの少なくとも1つは、特に固定された幹管の船尾領域に配置されることが前提とされ得る。
【0030】
幹管は通常、水中又は水上移動体の船体にしっかりと接続されており、回転可能には実装されていない。水中又は水上移動体の通常の前進航行中に、舵の舵力は、船尾方向の後ろに向かう航行方向とは反対に特に強く作用するので、軸受ブッシュの船尾側領域において軸受ブッシュの最大の摩耗が予想されるべきである。この理由のため、センサのうちの少なくとも1つが船尾側領域に、特に正確には船尾向きに配置されれば、特に有利である。さらなるセンサが設けられる場合、たとえば4つのセンサの場合、それぞれ2つのセンサが真横に、つまり水中又は水上移動体の縦軸に対して90°で正確に配置され、第4のセンサは前方方向、すなわち船首方向で、縦軸上に正確に配置される。
【0031】
好ましくは、少なくとも1つのセンサは、幹管のセンサレセプタクル内、特にドリル穴内に配置され、好ましくは幹管の中に又は幹管にネジ留めされることが前提とされ得る。
【0032】
したがって、少なくとも1つのセンサの取り付けのため、センサレセプタクルを幹管に設けることができる。センサレセプタクルは、たとえば、好ましくは雌ネジを有する、幹管の製造後に幹管内に設定されるドリル穴であり得る。少なくとも1つのセンサはその後、幹管の外側からセンサレセプタクル内に便宜上導入され、そこに締結される。センサを締結するために、これはドリル穴内に直接ネジ留めされ得る。しかしながら、接着剤、樹脂又はさらなるネジ接続など、他の締結手段も提供され得る。
【0033】
特に有利には、少なくとも1つのセンサは渦電流センサ又は超音波センサであることが前提とされる。
【0034】
この場合、センサは渦電流センサであることが、特に好ましい。
【0035】
渦電流センサを用いると、軸受隙間の誘導的な測定を行うことができる。渦電流センサによって使用される効果は、共振回路からのエネルギーの引き出しに基づいている。したがって、渦電流センサは好ましくは、交流電流が供給され得るコイルを備える。交流電流がコイルに供給されると、コイル内に磁場が形成される。渦電流センサの近傍にあり、通常はステンレス鋼で作られた舵シャフト内では、ファラデーの電磁誘導の法則にしたがって渦電流が形成され、同様に磁場を形成する。この誘導磁場は、コイルの場を打ち消し、コイルインピーダンスの変化をもたらす。インピーダンスは、センサのコイルの振幅及び位相位置の変化として測定され、測定可能な量として取得されることが可能である。舵シャフトからの渦電流センサの距離は、振幅及び位相位置の変化から決定され得る。
【0036】
特に、少なくとも1つのセンサが渦電流センサとして構成される場合、センサは、舵シャフトの軸方向で見たときに、軸受ブッシュの上又は下に配置されると有利である。これにより、センサから舵シャフトまでの距離の非接触測定が可能となる。有利には、軸受ブッシュの材料が距離測定に不利な影響を及ぼし得ないように、軸受ブッシュは渦電流センサと舵シャフトとの間に配置されない。
【0037】
好ましくは、渦電流センサは、軸受ブッシュの上又は下に少なくとも5mm、さらに好ましくは少なくとも10mm、非常に特に好ましくは少なくとも20mmの最短距離で配置される。
【0038】
任意選択的に、水、空気、潤滑剤、特にグリースなど、渦電流センサと舵シャフトとの間に位置する材料は、距離測定に不利な影響を及ぼさない。
【0039】
舵シャフトとセンサ、特に渦電流センサとの間の距離の測定は、軸受隙間の無摩損及び非接触測定である。
【0040】
代わりに又は追加で、センサのうちの少なくとも1つは、超音波センサとしても構成され得る。超音波センサは好ましくは、さらに好ましくは固定された軸受ブッシュと直接接触して配置される。超音波を送受信することによって、超音波センサの領域内の軸受ブッシュの壁厚を直接決定することができる。基本的には、超音波センサとの非接触測定を行うことも可能である。この場合、非接触測定では、超音波センサは、軸受ブッシュ及び/又は舵シャフトと直接物理的に接触していない。超音波センサもまた、舵シャフトからの距離が超音波センサによって送受信される超音波によって決定されるように、幹管上の軸受ブッシュの上又は下に配置され得る。超音波は、舵シャフトに対して反射される。
【0041】
軸受ブッシュの壁厚は決定されるべきであるが、軸受ブッシュは幹管ではなく舵シャフトに締結され、したがって幹管内の舵シャフトと共に回転する場合、超音波センサを使用する非接触測定が特に好ましい。
【0042】
さらに好ましくは、特にシリコーンベースの超音波接触手段が、超音波センサと軸受ブッシュ及び/又は舵シャフトとの間に配置されることが前提とされる。
【0043】
超音波センサによる測定は、接触手段の提供によって改善される。
【0044】
さらに、非固定軸受ブッシュ、つまり舵シャフトと共に回転する軸受ブッシュの場合、センサと舵シャフトとの間の距離又は軸受ブッシュの壁厚の無摩損測定を行うことができるように、超音波センサと軸受ブッシュとの間に配置された接触手段によって超音波センサと軸受ブッシュ及び/又は舵シャフトとの間の直接物理的接触を回避することができる。
【0045】
さらに好ましくは、少なくとも1つのセンサがホルダ上に配置され、ホルダは幹管に、特に幹管の前側に締結されることが前提とされ得る。
【0046】
少なくとも1つのセンサをホルダ上に締結した結果として、既存の舵に改造ソリューションが提供される。したがって、既存の舵内でも軸受隙間の無摩損測定を可能にするために、少なくとも1つのセンサを有するホルダで既に存在する舵を改造することができる。
【0047】
好ましくは、ホルダはフライス加工部品である。
【0048】
このため、ホルダは、従来技術から知られる手段及び方法を使用して製造されることが可能であり、特に費用効率良く製造されることが可能である。ホルダは、幹管の内部に導入され、そこで、たとえば軸受ブッシュの上又は下に、締結されることが可能である。しかしながら、ホルダに締結されたセンサが、幹管から突起している舵シャフトの領域からセンサまでの距離を測定するように、水中又は水上移動体の船体から突起している幹管の下端の前側にホルダが設置されることもまた可能である。
【0049】
好ましくは、ホルダは環状に構成されている。
【0050】
さらに有利には、ホルダは少なくとも1つのリングセグメントを備えることが前提とされ得る。少なくとも1つのリングセグメントは好ましくは、少なくとも90°、さらに好ましくは少なくとも120°、さらに好ましくは少なくとも180°、非常に特に360°の角度領域をカバーする。言い換えると、少なくとも1つのリングセグメントは、たとえば、1/4リング、1/3リング、1/2リング又はフルリングである。さらに、ホルダは2つ以上のリングセグメントを備えることができる。複数のリングセグメントが平面内に配置されている場合、好ましくは、複数のリングセグメントは一緒に、最大で360°の角度領域をカバーすることが前提とされる。たとえば、ホルダは、1/4リングとして構成された2つのリングセグメントを備える。
【0051】
好ましくは、1/4リングとして構成されたリングセグメントは、90°より幾分大きく、たとえば約95°又は100°をカバーする。これにより、1/4リングとして構成されたリングセグメント上では、2つのセンサを90°の角距離で配置することが可能となる。ホルダが1/4リングとして構成されたこのようなリングセグメントを2つ備える場合、合計4つのセンサが舵シャフトの周りに90°の規則的な角距離で配置されるように、これらは軸受ブッシュの上又は下に配置され得る。
【0052】
1/4リングとして構成された2つのリングセグメントを備えるホルダは、既存の舵の改造ソリューションに特に適している。しかしながら、改造ソリューション用のホルダは、1つのみの1/4リング又はフルリングを備えることも可能である。
【0053】
フルリングとして構成されていない少なくとも1つのリングセグメントを備えるホルダは、保守に関しても有利である。故障したセンサの場合、この場合は故障したセンサを有するリングセグメントのみを交換する必要がある。ホルダは、1つのリングセグメント、たとえば、1/4リングとして構成されたリングセグメントのみを備えることが、さらに前提とされ得る。このようなホルダは、軸受隙間の無摩損測定が軸受の1つの側面又は1つの領域でのみ実現されるとき、特に有利である。たとえば、軸受隙間の無摩損測定は、軸受の船尾領域でのみ実行すべきであることが前提とされ得る。
【0054】
軸受隙間の無摩損測定は、軸受の2つ又は3つの側面及び/又は領域で行われることも可能である。したがって、適切な数及び/又は組み合わせのリングセグメントが、ホルダ向けに選択され得る。
【0055】
好ましくはホルダ、特にホルダの少なくとも1つのリングセグメントは、本体及びカバーを備える二部式で構成され、少なくとも1つのセンサが配置される内部がホルダ内に形成される。好ましくはシール、たとえばシーリングコードが、本体とカバーとの間に配置される。さらに好ましくは、本体及びカバーは互いにネジ留めされる。
【0056】
2部式で構成されたホルダは、既存の舵の改造ソリューションに特に有利である。既存の舵の舵柱は通常、下部前側に平坦な表面を有していないため、そこにはシールを貼付できない。センサは、本体及びカバーを有するホルダの二部構成によって保護されることが可能であり、少なくとも1つのセンサはホルダの内部に配置される。
【0057】
原則として、舵柱はまた、シールを貼付できるように、平坦な下部前側を有することも可能である。この場合、舵柱又は幹管がある程度ホルダのカバーを形成するように、幹管の下部前側に対して本体がネジ留めされ得る。
【0058】
さらに好ましくは、センサケーブルが設けられ、これは少なくとも1つのセンサから信号又はデータを伝達するように構成されている。センサケーブルは特に、センサの信号又はデータを評価ユニットに送信するために、信号接続部を介して信号伝達手段に接続され得る。
【0059】
センサケーブルは好ましくは、二部式ホルダの内部に配置される。二部式ホルダの内部のセンサケーブルの配置は、センサケーブルを保護するために使用される。
【0060】
好ましくは、内部はグリースで満たされ、グリースは特にセンサケーブルを包囲することが、さらに前提とされ得る。内部のグリースの配置は、センサケーブルを振動から保護するために使用される。
【0061】
好ましくは、リングセグメントごとに2つ、3つ又はそれ以上のセンサが設けられることが前提とされ得る。
【0062】
リングセグメントは好ましくは、ほぼU字型に構成され得る。
【0063】
好ましくは、信号伝達手段、特にケーブルが設けられ、信号伝達手段は好ましくは、幹管の外側に延在するように配置されることが前提とされ得る。
【0064】
特に好ましくは、信号伝達手段は、信号接続部に電気的に接続されている。
【0065】
信号伝達手段、特にケーブルは、少なくとも1つのセンサから評価ユニットに信号又はデータを送信するのに役立ち、これは特に好ましくは水中又は水上移動体の中、たとえば船のブリッジ上に配置される。基本的に、データのケーブルレス又はワイヤレス送信が提供されることも可能であり、この場合、信号伝達手段は、無線信号用の送信機及び/又は受信機を備える。さらに、このような場合、少なくとも1つのセンサには、たとえばバッテリなどの電源が設けられるべきである。
【0066】
しかしながら、好ましくは、ケーブルなどの信号伝達手段を介して信号送信が行われることが前提とされる。
【0067】
信号伝達手段は幹管の外側に延在するように配置されるので、これらを幹管に締結又は取り付けることは特に容易である。
【0068】
さらに有利には、信号伝達手段チャネル内に、少なくともセクション内に、信号伝達手段が配置され、信号伝達手段チャネルは幹管の外側に配置されることが前提とされ得る。
【0069】
この場合、信号伝達手段チャネルは好ましくは、セクション内に幹管の外側にのみ配置される。
【0070】
特に、信号伝達手段チャネルは、水中又は水上移動体の船体から、特に水中又は水上移動体のスケグから突起し、さらに舵の舵板内に突起する、幹管の下端の領域にのみ配置される。
【0071】
さらに好ましくは、信号伝達手段チャネルは溝、U字プロファイル又はケーブルチャネルであることが前提とされ得る。
【0072】
U字プロファイルとして構成された信号伝達手段チャネルは、幹管に向かって開放し、U字プロファイルが幹管の外側と共に信号伝達手段チャネルを形成するようにU字プロファイルのU字脚の末端で幹管に溶接されるように、構成され得る。
【0073】
さらに、信号伝達手段チャネルは、幹管の外側に組み込まれて任意選択的に被覆された溝として構成されることが可能であるか又は完全に閉鎖されたケーブルチャネルが幹管の外側に取り付けられることが可能である。
【0074】
信号伝達手段チャネル内の信号伝達手段は、絶縁手段内に、特にグリース内にさらに有利に埋め込まれる。
【0075】
信号伝達手段、特にケーブルをグリースなどの絶縁手段に埋め込むことによって、信号伝達手段、特にケーブルは、振動及び環境の影響から保護され得る。
【0076】
本発明の基礎を形成する目的のさらなる解決策は、軸受隙間の無摩損測定が行われる舵の軸受隙間を測定する方法を提供することにある。
【0077】
本発明による方法は、特に、前述の舵において実行され得る。
【0078】
特に、前述の舵によって達成される全ての利点は、方法の対応する構成で達成されることが可能であり、前述の舵、特に軸受隙間測定装置の特徴は、適切なやり方で方法に移すことができる。
【0079】
好ましくは、軸受隙間の無摩損測定は、センサと舵シャフトとの間の距離の無摩損測定及び/又は軸受ブッシュの壁厚の無摩損測定である。
【0080】
測定された距離又は測定された壁厚が所定の公差値から外れる場合、つまり測定された距離又は測定された壁厚が大きすぎるか又は小さすぎる場合、対応する情報を評価ユニットに表示することができる。その後、軸受又は軸受ブッシュは変更され得る。
【0081】
さらに、無摩損測定は、好ましくは超音波センサを使用する超音波測定又は好ましくは渦電流センサを使用する渦電流測定であることが前提とされ得る。
【0082】
加えて、測定は自動的に、特に規則的な時間間隔で行われることが前提とされ得る。
【0083】
特に規則的な時間間隔で、自動的に実施された測定の結果として、舵の軸受隙間の継続的な監視が提供され得る。特に、通常は長い時間間隔で行われる水面下の有資格ダイバーによる費用のかかる手動測定によって軸受隙間を決定する必要がなくなった。
【0084】
好ましくは、測定は、軸受ブッシュ及び/又は舵シャフト及び/又は幹管の周囲にわたる少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、特に好ましくは少なくとも4つの位置で行われることが前提とされ得る。
【0085】
本発明の基礎を形成する目的の別の解決策は、好ましくは前述の舵のための及び/又は前述の方法のための、軸受隙間測定装置を提供することにあり、軸受隙間測定装置が軸受隙間の無摩損測定用の少なくとも1つのセンサを備える。
【0086】
前述の舵及び方法に関連して説明された特徴もまた、本発明による軸受隙間測定装置に相応に移すことができる。
【0087】
好ましくは、軸受隙間の無摩損測定用の少なくとも1つのセンサは、センサと舵シャフトとの間の距離の無摩損測定用及び/又は軸受ブッシュの壁厚の無摩損測定用のセンサである。
【0088】
好ましくは、少なくとも1つのセンサは渦電流センサ又は超音波センサであることが前提とされる。
【0089】
本発明の基礎を形成する目的の別の解決策は、特に前述の舵における、前述の舵の軸受隙間の測定方法での渦電流センサ又は超音波センサの使用にある。
【0090】
本発明は、添付図面を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
図1】水中又は水上移動体の舵を示す図である。
図2】舵シャフト及び軸受隙間測定装置を有する舵の幹管を示す図である。
図3】渦電流センサを有する軸受隙間測定装置を有する幹管を示す図である。
図4】超音波センサを有する軸受隙間測定装置を有する幹管を示す図である。
図5】軸受隙間測定装置の4つのセンサが配置された幹管を示す図である。
図6】軸受隙間測定装置の3つのセンサが配置された幹管を示す図である。
図7】幹管の前側にある軸受隙間測定装置を示す図である。
図8】軸受隙間測定装置のセンサを有するホルダを示す図である。
図9】幹管の前側にあるリングセグメントを有するホルダを示す図である。
図10】ホルダのリングセグメントを示す図である。
図11】リングセグメントを有するホルダを示す図である。
図12a】幹管の前側にあるリングセグメントを有するホルダの側面図である。
図12b】幹管の前側にあるリングセグメントを有するホルダの詳細図である。
図13】U字型ホルダを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
図1は、図1において断面でのみ示される水中又は水上移動体10の舵100を示す。水中又は水上移動体10は、船11として構成されている。舵100は、船11の船体13に固定的に締結された幹管12を備える。舵シャフト14は、幹管12内に回転可能に配置されている。舵100の舵板16は、舵シャフト14の下端15に締結されている。舵板16は、船11のプロペラ17の背後に配置されている。舵板16の前縁18は、プロペラ17に面している。さらに、スケグ19は船体13上に配置されており、これを通じて幹管12及び舵シャフト14が案内される。舵シャフト14の下端15は、舵板16内に突起している。舵板16は、舵板16の末端ストリップ22上の連結装置21によって旋回可能に配置された、ヒンジフィン20をさらに有する。舵板16及び舵シャフト14は、船体13内の舵システム23に接続されており、これにより、舵シャフト14及び舵シャフト14に接続された舵板16が旋回できる。幹管12はまた、下端24で舵板16内に案内される。幹管12の下端24内には、舵シャフト14が実装される軸受ブッシュ32が位置している。さらに、舵100は、図2から図8に詳細に示される軸受隙間測定装置25を有する。
【0093】
図2は、幹管12、幹管12内に配置された舵シャフト14及び舵板16内に導入される幹管の下端24を示す。舵シャフト14又は舵シャフト14の下端15は、幹管12の下端24から突起している。軸受隙間測定装置25は、幹管12の下端24の周囲にわたって配置された、軸受隙間の無摩損測定用のセンサ26を有する。センサ26は、詳細には示されない評価ユニットに接続されており、信号伝達手段28を介したデータ送信のために船体13内に配置されている。この場合、信号伝達手段28は、幹管12の外側27に延在するように配置されたケーブル29として構成されている。幹管12の下端24には、ケーブル29が少なくともいくつかの領域に延在する、信号伝達手段チャネル30が位置している。信号伝達手段チャネル30は、幹管12の外側27に溶接されてグリースで満たされたU字プロファイル30として構成されている。U字プロファイル31内に延在するケーブル29は、グリースによって振動ならびに外部及び環境の影響から保護される。
【0094】
図3は、幹管12の下端24の断面図を示す。舵100の舵シャフト14は、幹管12にしっかりと固定された軸受ブッシュ32によって幹管12内に回転可能に実装されている。舵シャフト14の軸方向33で見たときに、少なくとも1つのセンサ26は軸受ブッシュ32の上方に配置されている。少なくとも1つのセンサ26は、ケーブル29として構成された信号伝達手段28を介して評価ユニットに接続されている。センサ26は、ドリル穴35として構成されたセンサレセプタクル34内に配置され、センサレセプタクル34内にネジ留めされている。センサ26は、渦電流センサ36として構成されており、したがって、詳細には示されないコイルを有する。コイルに交流電流を印加することによって、渦電流センサ36の反対側に形成された舵シャフト14内に渦電流を誘導する磁場が生成され、これを通じて再び磁場が誘導される。誘導磁場は、渦電流センサ36のコイルに戻って作用し、渦電流センサ36のコイルの振幅及び位相位置の変化として測定でき、測定可能な量として取得できる、コイルのインピーダンスを変化させる。舵シャフト14からの渦電流センサ36の距離37は、コイルの位相位置又は振幅の変化から決定され得る。舵シャフト14と幹管12との間の間隙38には、海水又はグリースなどの潤滑剤が位置している。軸受ブッシュ32は渦電流センサ36と舵シャフト14との間に位置していないので、渦電流センサ36は、非接触方式で、舵シャフト14から距離を置いて配置されている。軸方向33で見たときに、渦電流センサ36は、軸受ブッシュ32の材料が渦電流センサ36の渦電流測定を誤らせないように、軸受ブッシュ32の上方に最小距離39で配置される。ケーブル19として構成された信号伝達手段は、信号伝達手段チャネル30内に案内される。
【0095】
図4は、舵100の軸受隙間測定装置25のさらなる実施形態を示す。図4の軸受隙間測定装置25もまた、幹管12のセンサレセプタクル34内に配置されたセンサ26を備える。図3のセンサ26とは対照的に、図4のセンサ26は、超音波センサ40として構成されており、軸受ブッシュ32の外側41と直接物理的に接触して配置されている。シリコーンベースの超音波接触手段42は、幹管12内に特に固定的に配置された軸受ブッシュ32と超音波センサ40との間に配置されている。超音波センサ42は、軸受ブッシュ32の材料を通過して軸受ブッシュ32と舵シャフト14との間の境界面46から反射される超音波を発する。軸受ブッシュ32の壁厚43は、超音波の通過時間から決定され得る。加えて、図4の軸受隙間測定装置25は、図3の軸受隙間測定装置25と同一に構築されている。
【0096】
図5は、軸受隙間測定装置25の高さで図4の幹管12を通る断面を示す。幹管12内には、幹管12の周囲にわたって均一な角距離で4つのセンサ26が配置されている。舵シャフト14は、軸受ブッシュ32を介して幹管21内に実装されている。センサ26のうちの1つのセンサ26aは、水中又は水上移動体10の進行方向44とは反対側の、幹管12のちょうど船尾側に配置されている。センサ26の角度間隔は、いずれの場合も互いに対して90°である。
【0097】
図6は、軸受隙間測定装置25のセンサ26、26aの代替配置を示す。図5と比較すると、センサレセプタクル34内に配置された3つのセンサ26が設けられている。幹管12の周囲にわたって均一な角距離で3つのセンサ26、26aが配置されている。個々のセンサ26、26aの間の角距離は120°である。図6による構成では、センサ26aは、幹管12上の船尾側の進行方向44とはちょうど反対に締結されている。
【0098】
図7は、渦電流センサ36を有する軸受隙間測定装置25のさらなる構成を示す。渦電流センサ36は、環状ホルダ45上に配置されている。環状ホルダ45は、幹管12の下端24の前側47に配置されている。このため、舵シャフト14の軸方向33で見たときに、渦電流センサ36は軸受ブッシュ32の下に位置している。さらに、図7による構成は、図3による構成と類似している。
【0099】
最後に、図8は、4つのセンサ26が規則的な角距離で配置された環状ホルダ45の斜視図を示す。
【0100】
図9は、幹管12の下端24の前側47の平面図で、幹管12の前側47に配置されたさらなるホルダ48を示す。ホルダ48は、1/4リング49として構成された2つのリングセグメント50を備える。リングセグメント50の各々は、90°より幾分大きい角度領域をカバーする。各リングセグメント50は、渦電流センサ36として構成され得る2つのセンサ26を有する。各リングセグメント50のセンサ26は、互いに対して90°の角距離で配置されている。1/4リング49として構成された2つのリングセグメント50を有する図9に示される構成は、既存の舵シャフト14を有する既存の舵100の改造ソリューションとして特に適している。
【0101】
図9からの単一のリングセグメント50が、図10に示される。リングセグメント50は、二部式で形成され、本体51及びカバー52を有する。カバー52は、本体51にネジ留めされている。約90°の角距離で、軸受隙間の無摩損測定用の2つのセンサ26は、リングセグメント50の径方向58で内向きに突起している。リングセグメント50の前側53の1つに信号接続部54が設けられ、これを介して2つのセンサ26の信号及びデータをリングセグメント50から導き出すことができる。信号伝達手段28(図2)は信号接続部54に接続されることが可能であり、これによってセンサ26の信号及びデータが評価ユニットに伝達され得る。
【0102】
図11は、図9による2つのリングセグメント50を有するが幹管12のないホルダ48を、平面図で示す。両方のリングセグメント50は、図10による本体51を有する。リングセグメント50は、それぞれのカバー52なしで示されている。リングセグメント50の各々は、センサ26が少なくとも部分的に配置された、内部55を有する。センサ26の各々は、それぞれのリングセグメント50の前側53にある信号接続部54にセンサ26の信号及びデータを案内する、センサケーブル56に接続されている。リングセグメント50の内部55は、センサケーブル56を振動から保護するために、グリースで満たされている。
【0103】
図12a及び図12bは、図7と類似の幹管12の下端24の側面図を示す。図12bは、図12aの詳細図である。ホルダ48のリングセグメント50は、幹管12の下端24の前側47に配置されている。センサ26は、軸受隙間の無摩損測定のためにそれぞれのリングセグメント50の内部55から突起している。特に図12bに示されるように、リングセグメント50は、接続ネジ57によって幹管12の前側47にネジ留めされている。各リングセグメント50は、本体51及びカバー52を有する。
【0104】
図13は、ホルダ48のさらなる構成を平面図で示す。ホルダ48は、ほぼU字型のリングセグメント50として構成されている。リングセグメント50は、軸受隙間の無摩損測定用のセンサ26を備える。
【符号の説明】
【0105】
100 舵
10 水中又は水上移動体
11 船
12 幹管
13 船体
14 舵シャフト
15 舵シャフトの下端
16 舵板
17 プロペラ
18 前縁
19 スケグ
20 フィン
21 連結装置
22 末端ストリップ
23 舵システム
24 幹管の下端
25 軸受隙間測定装置
26 センサ
26a センサ
27 幹管の外側
28 信号伝達手段
29 ケーブル
30 信号伝達手段チャネル
31 U字プロファイル
32 軸受ブッシュ
33 軸方向
34 センサレセプタクル
35 ドリル穴
36 渦電流センサ
37 距離
38 間隙
39 最短距離
40 超音波センサ
41 軸受ブッシュの外側
42 超音波接触手段
43 壁厚
44 進行方向
45 ホルダ
46 境界面
47 前側
48 ホルダ
49 1/4リング
50 リングセグメント
51 本体
52 カバー
53 前側
54 信号接続部
55 内部
56 センサケーブル
57 接続ネジ
58 径方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12a
図12b
図13