(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】高固形分塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 175/02 20060101AFI20231226BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20231226BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20231226BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20231226BHJP
【FI】
C09D175/02
C09D175/04
C09D7/63
C09D7/61
(21)【出願番号】P 2023099738
(22)【出願日】2023-06-19
【審査請求日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2023058708
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】芦田 千里
(72)【発明者】
【氏名】柳口 剛男
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/063884(WO,A1)
【文献】特開2011-074390(JP,A)
【文献】特開2017-149858(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163953(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアスパラギン酸エステル(A)、
第1級アミノ基を有するアルコキシシラン(a1)、カルボン酸アルキルエステル(a2)及びポリイソシアネート(a3)を含む成分を原材料とする反応生成物であるシリル基含有変性ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート化合物(B)、エポキシ基含有シランカップリング剤(C)、及び重量平均分子量が250~2300、かつ水酸基価が50~800の範囲内であるポリオール(D)を含有する固形分濃度が70質量%以上である高固形分塗料組成物。
【請求項2】
ポリアスパラギン酸エステル(A)が、下記式(1)で表される2級アミノ基を有するポリアスパラギン酸エステルを含有する請求項1に記載の高固形分塗料組成物。
【化1】
(式中、Xは、数平均分子量25~5000のn価の環式もしくは鎖式の脂肪族炭化水素基またはポリオキシアルキレンポリアミン残基であり、R
1およびR
2は、各々独立して、イソシアネート基に対して不活性な有機基であり、nは2以上の整数である。)
【請求項3】
ポリオール(D)が、ポリエステルポリオール及び/又はポリエーテルポリオールを含有する請求項1又は2に記載の高固形分塗料組成物。
【請求項4】
さらに顔料を含有する、請求項1又は2に記載の高固形分塗料組成物。
【請求項5】
さらに、ゼオライトを含有する、請求項1又は2に記載の高固形分塗料組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の1コート仕様の高固形分塗料組成物。
【請求項7】
被塗物に、請求項1又は2に記載の高固形分塗料組成物を塗装することを含む塗装方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の高固形分塗料組成物が塗装された建設機械又は産業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性及び耐食性に優れ、金属素材に直接塗装可能な高固形分塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業機械、建造物、自動車、構築物、家具(鋼製も含む)等の塗装に際し、アクリルラッカー、アクリルウレタン塗料、アミノアクリル樹脂塗料等が用いられており、特に、ブルドーザー、油圧ショベル、ホイールローダ等の建設機械又は産業機械の塗装においては、常温乾燥性、耐久性等の点から、水酸基含有アクリル樹脂とポリイソシアネート化合物を含むアクリルウレタン塗料が主に用いられている。
【0003】
また、近年、ESGの観点からも環境への影響から、塗料においても揮発性有機化合物(VOC)の削減が求められており、世界的に法整備も含め、VOC規制が強化されることとなっている。
【0004】
建設機械等向けに、金属素材に直接塗装されるワンコート仕様においては、耐候性と耐食性を担保する観点からアクリル樹脂とイソシアネート化合物の塗料組成物が使用されてきたが、一般に塗装固形分濃度が低く、VOC削減には限界があった。
【0005】
また、一般にポリアミン化合物とイソシアネート化合物の塗料組成物は、高い耐食性、耐薬品性等の塗膜性能に優れるが、反応性が高いため硬化速度が速く、ポットライフも短いため、塗装作業性等、ハンドリングに難があるため、建設機械等の塗装用途にはあまり実用化が進んでいなかった。
【0006】
特許文献1には、低分子量のアクリルポリオールあるいはポリエステルポリオールを含有する主剤ポリオールと、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートを原料とし、分子量700以下の成分の含有率が20~60質量%、重量平均分子量と数平均分子量の比が1.2~5.0、25℃におけるポリイソシアネート組成物の粘度(単位mPa.s)とイソシアネート基の数平均官能基数との比が特定の式で表されるポリイソシアネート組成物を用いることを特徴とするハイソリッド塗料組成物が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたハイソリッド塗料組成物は、近年の強化されたVOC規制レベルを満足するには不十分であり、また、塗装作業性が不十分となる場合があった。
【0008】
特許文献2には、光沢安定性着色トップコートを製造するための塗料組成物として、フマル酸ジアルキル含量を大幅に減少させたポリアスパラギン酸エステル系コーティング組成物が開示されている。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載されたコーティング組成物は、耐食性や耐候性が不十分であったり、特に金属素材に直接塗装する際に求められる金属素材への付着性が不十分となる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2003-128989号公報
【文献】特表2022-521250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、耐候性、耐食性及び塗膜硬度に優れ、金属素材に直接塗装可能な高固形分塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、鋭意検討した結果、ポリアスパラギン酸エステル(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、エポキシ基含有シランカップリング剤(C)、及び特定範囲の重量平均分子量及び水酸基価を有するポリオール(D)を含有する高固形分塗料組成物によれば、上記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、
1.ポリアスパラギン酸エステル(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、エポキシ基含有シランカップリング剤(C)、及び重量平均分子量が250~2300、かつ水酸基価が50~800の範囲内であるポリオール(D)を含有する高固形分塗料組成物。
【0014】
2.ポリアスパラギン酸エステル(A)が、下記式(1)で表される2級アミノ基を有するポリアスパラギン酸エステルを含有する上記項1に記載の高固形分塗料組成物。
【0015】
【0016】
(式中、Xは、数平均分子量25~5000のn価の環式もしくは鎖式の脂肪族炭化水素基またはポリオキシアルキレンポリアミン残基であり、R1およびR2は、各々独立して、イソシアネート基に対して不活性な有機基であり、nは2以上の整数である。)
3.ポリオール(D)が、ポリエステルポリオール及び/又はポリエーテルポリオールを含有する上記項1又は2に記載の高固形分塗料組成物。
【0017】
4.固形分濃度が70質量%以上である、上記項1~3のいずれか一項に記載の高固形分塗料組成物。
【0018】
5.さらに顔料を含有する上記項1~4のいずれか一項に記載の高固形分塗料組成物。
【0019】
6.ポリイソシアネート化合物(B)が、シリル基含有変性ポリイソシアネートを含有する、上記項1~5のいずれか一項に記載の高固形分塗料組成物。
【0020】
7.シリル基含有変性ポリイソシアネートが、第1級アミノ基を有するアルコキシシラン(a1)、カルボン酸アルキルエステル(a2)及びポリイソシアネート(a3)を含む成分を原材料とする反応生成物である、上記項6に記載の高固形分塗料組成物。
【0021】
8.さらに、ゼオライトを含有する、上記項1~7のいずれか一項に記載の高固形分塗料組成物。
【0022】
9.上記項1~8のいずれか一項に記載の1コート仕様の高固形分塗料組成物。
【0023】
10.被塗物に、上記項1~8のいずれか一項に記載の高固形分塗料組成物を塗装する塗装方法。
【0024】
11.上記項1~8のいずれか一項に記載の高固形分塗料組成物が塗装された建設機械又は産業機械、に関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の塗料組成物は、ポリアスパラギン酸エステル、ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有シランカップリング剤、及び低分子量かつ高水酸基価のポリオールを構成成分とするため、低粘度であり、VOC削減効果が高く、硬化性に優れ、得られるウレア架橋塗膜は耐候性及び耐食性ともに優れている。
【0026】
また、エポキシ基含有シランカップリング剤によるバリア性向上により、金属付着性が向上し、低分子量ポリオールによる架橋密度の向上により、さらに耐候性、耐食性及び塗膜硬度のレベルが格段に向上するものであると推察される。
【0027】
したがって、本発明の塗料組成物によれば、耐候性、耐食性及び塗膜硬度に極めて優れ、高い金属付着性を有することから金属素材に直接塗装可能であり、さらには仕上り外観にも優れた高固形分塗料組成物を得ることができる、という効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の高固形分塗料組成物(以下、単に、本塗料と略すこともある。)は、ポリアスパラギン酸エステル(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、エポキシ基含有シランカップリング剤(C)、及びポリオール(D)を含有する組成物である。以下、詳細に述べる。
【0029】
<ポリアスパラギン酸エステル(A)>
ポリアスパラギン酸エステルとしては、反応性及び塗装作業性の観点から、2級アミノ基を有するポリアスパラギン酸エステルが好ましい。
【0030】
具体的には下記式(1)
【0031】
【0032】
(式中、Xは、数平均分子量25~5000のn価の環式もしくは鎖式の脂肪族炭化水素基またはポリオキシアルキレンポリアミン残基であり、R1およびR2は、各々独立して、イソシアネート基に対して不活性な有機基であり、nは2以上の整数である。)で表される化合物を含む。
【0033】
式(1)中、Xは、数平均分子量25~5000のn価の環式もしくは鎖式の脂肪族炭化水素基またはポリオキシアルキレンポリアミン残基である。
【0034】
Xは、数平均分子量25~5000のn価の基であるが、数平均分子量は好ましくは50~3000であり、より好ましくは100~2000である。
【0035】
Xは脂肪族炭化水素基またはポリオキシアルキレンポリアミン残基である。
【0036】
脂肪族炭化水素基は、脂環式炭化水素基であってもよいし、鎖式炭化水素基であってもよいし、脂環式部分と鎖式部分の両方を有する基であってもよい。
【0037】
脂環式炭化水素基は、側鎖を有していてもよい。鎖式炭化水素基は直鎖炭化水素基であってもよいし、分岐した炭化水素基であってもよい。
【0038】
Xは、好ましくは2価の脂肪族炭化水素基である。2価の脂肪族炭化水素基としては、アルキレン、シクロアルキレン、シクロアルキルアルキレン、アルキルシクロアルキレン、アルキレンビスシクロアルキレン、アルキレンビス(アルキルシクロアルキレン)、シクロアルキレンビスアルキレンなどが挙げられる。
【0039】
ここで、アルキレンは好ましくは炭素数1~8のアルキレンであり、シクロアルキレンは好ましくは炭素数5~6のシクロアルキレンであり、アルキルは好ましくは炭素数1~8のアルキルであり、シクロアルキルは好ましくは炭素数5~6のシクロアルキルである。
【0040】
ポリオキシアルキレンポリアミン残基とは、ポリオキシアルキレンポリアミンから両末端の第1級アミノ基を取り除いて得られた基をいう。ポリオキシアルキレンポリアミン残基は、側鎖を有していてもよい。ポリオキシアルキレンポリアミン残基は、好ましくは、ポリオキシエチレンポリアミン残基、ポリオキシプロピレンポリアミン残基、ポリオキシブチレンポリアミン残基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリアミン残基である。ポリオキシアルキレンポリアミン残基は、より好ましくは、-(CH(CH3)-CH2-O)x-CH2-CH(CH3)-(ただし、xは3~6の整数である。)である。
【0041】
式(1)中、R1およびR2は、各々独立して、イソシアネート基に対して不活性な有機基である。R1およびR2は、好ましくは、炭素数1~15のアルキルであり、より好ましくは炭素数1~8のアルキルであり、さらに好ましくはメチルまたはエチルであり、最も好ましくはエチルである。
【0042】
式(1)中、nは2以上の整数である。nは好ましくは2~6の整数であり、より好ましくは2~4の整数であり、最も好ましくは2である。
【0043】
式(1)で表される化合物は、例えば任意に置換したマレイン酸エステルまたはフマル酸エステルを、ポリアミンと反応させることによって合成することができる。
【0044】
式(1)で表される化合物の具体例としては、限定するものではないが、N,N′-[メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル)]ビスアスパラギン酸テトラエチル、N,N′-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビスアスパラギン酸テトラエチル、N,N′-(2-メチルペンタン-1,5-ジイル)ビスアスパラギン酸テトラブチル、N,N′-[メチレンビス(3-メチルシクロヘキサン-4,1-ジイル)]ビスアスパラギン酸テトラエチル、N,N′-(ビス-2-プロピル)ポリプロピレングリコール300-O,O′-ジイルビスアスパラギン酸テトラエチル、N,N′-(ブタン-1,4-ジイル)ビスアスパラギン酸テトラエチル、N,N′-(2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイル)ビスアスパラギン酸テトラエチル、N,N′-(2,4-ジメチルヘキサン-1,6-ジイル)ビスアスパラギン酸テトラエチル、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。その中でも、N,N′-[メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル)]ビスアスパラギン酸テトラエチル、N,N′-(2-メチルペンタン-1,5-ジイル)ビスアスパラギン酸テトラブチル、N,N′-[メチレンビス(3-メチルシクロヘキサン-4,1-ジイル)]ビスアスパラギン酸テトラエチルが好ましい。
【0045】
ポリアスパラギン酸エステル(A)の市販品としては、「デスモフェン(Desmophen)NH1420」、「デスモフェン(Desmophen)NH1423LF」、「デスモフェン(Desmophen)NH 1520」、および「デスモフェン(Desmophen)NH 1220」(以上、商品名、住化バイエル社製)、「FEISOARTIC F420」、「FEISOARTIC F220」、「FEISOARTIC F520」(以上、商品名、Feiyang社製)等を挙げることができる。
【0046】
<ポリイソシアネート化合物(B)>
ポリイソシアネート化合物としては、従来からポリウレタン製造に使用されているものを使用することができる。
【0047】
ポリイソシアネート化合物としては、具体的には例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物およびその粗製物、これらのポリイソシアネート化合物の変性物等を挙げることができる。
【0048】
変性物としては、ビウレット変性体、イソシアヌレート変性体;及びこれらの2種以上の混合物等を挙げることができる。
【0049】
上記のうち、高固形分化の観点から、脂肪族ポリイソシアネート化合物を好適に使用することができる。
【0050】
脂肪族ポリイソシアネート化合物は、直鎖あるいは枝分れを含む鎖式の炭素骨格を有し、1分子中に遊離のイソシアネート基を2個以上有する化合物である。
【0051】
脂肪族ポリイソシアネート化合物の具体例としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート等を挙げることができる。
【0052】
脂肪族ポリイソシアネート化合物の変性物の具体例としては、例えば、ビウレット変性HDI、イソシアヌレート変性HDI等を挙げることができる。
【0053】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、硬化性及び仕上り外観の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、及びHDIの変性物を好適に使用することができる。
【0054】
脂肪族ポリイソシアネート化合物(B)の市販品としては、例えば、TUL-100(旭化成ケミカルズ社製)、デスモジュールN3900(住化コベストロウレタン社製)、デスモジュールN3600(住化コベストロウレタン社製)、デスモジュールN3200(住化コベストロウレタン社製)、TOLONATE XF-800(Vencolex社製)、TOLONATE XF-450(Vencolex社製)等をあげることができる。
【0055】
上記脂環式ポリイソシアネート化合物の具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-及び/又は2,6-ノルボルナンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0056】
上記芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物の具体例としては、m-及び/又はp-キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’, α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等を挙げることができる。
【0057】
上記芳香族ポリイソシアネート化合物の具体例としては、1,3-及び/又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-及び/又は2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’-及び/又は4,4’-ビフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、粗製MDI、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-及びp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等を挙げることができる。
【0058】
また、上記脂肪族ポリイソシアネート化合物以外のポリイソシアネート化合物の変性物としては、具体的には、変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、トリヒドロカルビルホスフェート変性MDI)、ウレタン変性TDI、イソシアヌレート変性IPDI等のポリイソシアネート化合物の変性物;及びこれらの2種以上の混合物[例えば、変性MDIとウレタン変性TDIの混合物]等を挙げることができる。
【0059】
さらに、ポリイソシアネート化合物の変性物として、耐食性の向上を目的として、シリル基含有変性ポリイソシアネートを使用することができる。
【0060】
シリル基含有変性ポリイソシアネートにより、得られる塗膜の光沢を低下させることなく、さらに耐食性を向上させることができる。
【0061】
シリル基含有変性ポリイソシアネートとしては、とくに限定されず、シリル基を含有する変性ポリイソシアネートであれば制限なく使用することができるが、特に、第1級アミノ基を有するアルコキシシラン(a1)、カルボン酸アルキルエステル(a2)及びポリイソシアネート(a3)を含む成分を原材料とする反応生成物である、シリル基含有変性ポリイソシアネート(X)を好適に使用することができる。
【0062】
シリル基含有変性ポリイソシアネート(X)は、カルボン酸アルキルエステル(a2)を変性剤として合成される、有機溶剤に安定に希釈でき、貯蔵安定性に優れた変性ポリイソシアネートである。
【0063】
化合物(a1)の具体例としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピル-メチルジエトキシシラン、3-アミノピロピル-メチルジメトキシシランおよび3-アミノプロピル-エチレングリコールオキシメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリエトキシシラン及びこれらの組み合わせが挙げられる。3-アミノプロピルトリメトキシシランおよび3-アミノプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0064】
カルボン酸アルキルエステル(a2)は飽和カルボン酸アルキルエステルであることが好ましい。
【0065】
飽和カルボン酸アルキルエステルの具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸i-ペンチル、酢酸シクロヘキシル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸1-メチルペンチル(別名:酢酸sec-ヘキシル)、酢酸2-メトキシエチル、酢酸2-エトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸3-エトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸i-プロピル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸i-ブチル、プロピオン酸n-ペンチル、プロピオン酸i-ペンチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸i-プロピル、酪酸n-ブチル、酪酸i-ブチル、酪酸t-ブチル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、オクタン酸メチル、ラウリン酸メチル、メトキシプロピルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル、ブチルグリコールアセテート、ブチルジグリコールアセテート 、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、3,3,5-トリメチルヘキサン酸メチル 、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸i-ブチル、i-酪酸n-ブチル、i-酪酸t-ブチル、2ーエチルヘキサン酸メチル 、ピバリン酸メチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、ネオデカン酸メチル、フマル酸ジi-プロピル、アクリル酸イソボルニル及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0066】
ポリイソシアネート(a3)としては、上記ポリイソシアネート化合物(B)に記載のポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0067】
シリル基含有変性ポリイソシアネート(X)の製造方法としては、第1級アミノ基を有するアルコキシシラン(a1)、カルボン酸アルキルエステル(a2)及びポリイソシアネート(a3)を同時に反応させる方法でもよいが、好ましくは、アルコキシシラン(a1)とカルボン酸アルキルエステル(a2)をあらかじめ反応させて2級アミノ基又は2級アミド基を有するアルコキシシランN位変性体を得て、これをさらにポリイソシアネート(a3)と反応させる製造方法が好ましい。
【0068】
シリル基含有変性ポリイソシアネートのイソシアネート基量は、耐食性、乾燥性等の観点から、変性ポリイソシアネート不揮発分1g中に例えば1.0ミリモル以上、2.0ミリモル以上、5.5ミリモル以下、5.0ミリモル以下の範囲内が好ましい。
【0069】
変性ポリイソシアネートのイソシアネート基量は、例えば、試料0.1gに0.1mol/Lジブチルアミン溶液10mlを加えてNCO基を反応させ、滴定指示薬としてブロモフェノールブルーを用い残余のジブチルアミンを塩酸水溶液で滴定することによって求めることができる。
【0070】
ポリイソシアネート化合物(B)は単独で、又は2種以上を組合せて使用することもできる。
【0071】
硬化性及び指触乾燥性の観点から、ポリアスパラギン酸エステル(A)のアミノ基とポリイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基との比率は、アミノ基1当量に対して、イソシアネート基が、0.5~2.0当量、特に0.8~1.5当量、さらに特に1.0~1.3当量の範囲内であることが好ましい。
【0072】
また、耐食性及び耐候性の観点から、ポリアスパラギン酸エステル(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の固形分総量を基準にして、ポリアスパラギン酸エステル(A)が20~70質量%、特に30~50質量%、ポリイソシアネート化合物(B)が30~80質量%、特に50~70質量%の範囲内であることが好ましい。
【0073】
また、ポリイソシアネート化合物(B)として、シリル基含有変性ポリイソシアネートを含有する場合、耐食性及び指触乾燥性の観点からシリル基含有変性ポリイソシアネートの固形分量は、ポリイソシアネート化合物(B)の固形分総量に対して、1~100質量%、特に5~70質量%、さらに特に、5~50質量%の範囲内であることが好ましい。
【0074】
<エポキシ基含有シランカップリング剤(C)>
本発明において、エポキシ基含有シランカップリング剤(C)は、金属素材との付着性向上により、本発明の塗料組成物の特に耐食性向上に寄与する成分である。
【0075】
エポキシ基含有シランカップリング剤(C)は、分子中にアルコキシシリル基及びエポキシ基の両方を有する化合物であり、具体例には例えば、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピル(ジメチル)メトキシシラン、γ-グリシドキシプロピル(エチル)ジメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0076】
エポキシ基含有シランカップリング剤(C)としては、耐食性及び仕上り外観の観点から、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランを好適に使用することができる。
【0077】
エポキシ基含有シランカップリング剤(C)のエポキシ当量は、塗膜外観の観点から、100~1000g/eq、特に100~500g/eqの範囲内であることが好ましい。
【0078】
エポキシ基含有シランカップリング剤(C)は、単独で、又は2種以上を併用して使用することもできる。
【0079】
本発明の塗料組成物において、耐水性及び塗膜外観の観点から、エポキシ基含有シランカップリング剤(C)の量は、ポリアスパラギン酸エステル(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の固形分総量に対して、0.1~50質量%、特に0.5~30質量%、さらに特に0.5~15質量%であることが好ましい。
【0080】
<ポリオール(D)>
ポリオール(D)としては、具体的には例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、フッ素ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール等を挙げることができる。ポリオール(D)は、1種を単独で含んでいてもよく、2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
【0081】
なかでも、ポリオール(D)としては、指触乾燥性、耐候性の観点から、ポリエテスルポリオール、ポリエーテルポリオールが好ましい。
【0082】
1.ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールは、例えば、二塩基酸と多価アルコールとを、縮合反応させることによって得ることができる。
【0083】
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等を挙げることができる。
【0084】
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン、等を挙げることができる。
【0085】
他には、例えば、ε-カプロラクトン等のラクトン類を、多価アルコールを用いて開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等もポリエステルポリオールとして使用することができる。
【0086】
また、上記多価アルコール以外のアルコール成分を使用することもできる。
【0087】
具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2-フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ネオデカン酸グリシジルエステル(市販品としては「カージュラE10P」(商品名、HEXION社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル))等のモノエポキシ化合物と酸を反応させて得られたアルコール化合物;グリコールと一塩基酸のエステル化物等を挙げることができる。
【0088】
2.ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、以下(1)~(3)に示すものを挙げることができる。
【0089】
(1)触媒を使用して、アルキレンオキシドの単独又は混合物を、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、ランダム又はブロック付加して、得られるポリエーテルポリオール類。
【0090】
前記触媒としては、例えば、水酸化物(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、強塩基性触媒(アルコラート、アルキルアミン等)、複合金属シアン化合物錯体(金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等)等を挙げることができる。
【0091】
前記アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド等を挙げることができる。
【0092】
(2)ポリアミン化合物にアルキレンオキシドを反応させて、得られるポリエーテルポリオール類。
【0093】
前記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン類等を挙げることができる。
【0094】
前記アルキレンオキシドとしては、(1)で例示されたものと同様のものを挙げることができる。
【0095】
(3)(1)又は(2)で得られたポリエーテルポリオール類を媒体として、アクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類。
【0096】
前記多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、以下の(i)~(vi)に示すものを挙げることができる。
【0097】
(i)ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等。
【0098】
(ii)エリトリトール、D-トレイトール、L-アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物。
【0099】
(iii)アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類。
【0100】
(iv)トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類。
【0101】
(v)ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類。
【0102】
(vi)スタキオース等の四糖類。
【0103】
3.アクリルポリオール
アクリルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、これと共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、を共重合させることにより得られるものを挙げることができる。
【0104】
前記ヒドロキシ基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を組合せて使用してもよい。なかでも、アクリル酸ヒドロキシエチル又はメタクリル酸ヒドロキシエチルであることが好ましい。
【0105】
上記単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体としては、例えば、以下の(1)~(6)に示すもの等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を組合せて使用してもよい。
【0106】
(1)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル。
【0107】
(2)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等のメタクリル酸エステル。
【0108】
(3)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
【0109】
(4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等の不飽和アミド。
【0110】
(5)メタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル等のビニル系単量体。
【0111】
(6)ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニル系単量体。
【0112】
4.ポリオレフィンポリオール
ポリオレフィンポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン等を挙げることができる。
【0113】
5.フッ素ポリオール
本明細書において、フッ素ポリオールとは、分子内にフッ素を含むポリオールを意味する。フッ素ポリオールとして具体的には、例えば、特開昭57-34107号公報(参考文献1)、特開昭61-275311号公報(参考文献2)等で開示されているフルオロオレフィン、シクロビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体等を挙げることができる。
【0114】
なお、ESGの観点からは、フッ素ポリオールは使用しないことが好ましい。
【0115】
6.ポリカーボネートポリオール
ポリカーボネートポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、以下の(1)~(4)に示すもの等を挙げることができる。
【0116】
(1)ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;
(2)エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート;
(3)ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート;
(4)上記(1)~(3)等の低分子カーボネート化合物を縮重合して得られるもの。
【0117】
7.ポリウレタンポリオール
ポリウレタンポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、常法によりポリオールとイソシアネート成分とを反応させることにより得ることができる。
【0118】
前記ポリオールとしては、例えば低分子量のものとして、エチレングリコール、プロピレングリコール等を挙げることができる。また、例えば高分子量のものとして、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等を挙げることできる。
【0119】
ポリオール(D)の水酸基価は、乾燥性、架橋密度及び耐候性の観点から、50~800であり、特に100~700、さらに特に150~600の範囲内であることが好ましい。
【0120】
なお、本発明において、水酸基価は、JIS K1557に準拠して測定することができる。
【0121】
ポリオール(D)の重量平均分子量は、乾燥性、架橋密度及び耐候性の観点から、250~2300であり、特に250~1500、さらに特に250~1000の範囲内であることが好ましい。
【0122】
本発明において、「重量平均分子量」は、JIS K 0124-2011に記載の方法に準じ、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。
【0123】
ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G-4000HXL」「TSKgel G-3000HXL」「TSKgel G-2500HXL」「TSKgel G-2000HXL」(いずれも東ソー株式会社社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RIの条件で測定することができる。
【0124】
本発明の塗料組成物において、乾燥性及び架橋密度の観点から、ポリオール(D)の量は、ポリアスパラギン酸エステル(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の固形分総量に対して、1~20質量%、特に1~10質量%、さらに特に3~10質量%であることが好ましい。
【0125】
本発明の塗料組成物において、ポリイソシアネート組成物(B)のイソシアネート基に対するポリオール(D)の水酸基のモル比(水酸基/イソシアネート基)は、0.5~2.0当量、特に0.8~1.5当量、さらに特に1.0~1.3の範囲内であることが好ましい。
【0126】
ポリオール(D)により、架橋密度が向上し、特に塗膜の耐候性が向上するものであると推定される。
【0127】
本発明の塗料組成物は、ポリイソシアネート化合物(B)とポリオール(D)の反応促進を目的として、必要に応じて硬化触媒を含有することができる。硬化触媒としては、有機金属化合物、第三級アミン、りん酸化合物等の公知のウレタン硬化触媒を挙げることができる。
【0128】
有機金属化合物としては、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2-エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫脂肪酸塩、2-エチルヘキサン酸鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、脂肪酸亜鉛類、ナフテン酸コバルト、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸銅、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネートを挙げることができる。
【0129】
上記硬化触媒は1種または2種以上を組合せて使用することができる。
【0130】
本発明の塗料組成物には、所望の色とすることを目的として、着色顔料を使用することができる。着色顔料としては、具体的には、チタン白、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、カーボンブラック、黒鉛(グラファイト)、鉄黒(アイアンブラック)、紺青、群青、コバルトブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスロンブルー、黄鉛、合成黄色酸化鉄、べんがら、透明べんがら、ビスマスバナデート、チタンイエロー、亜鉛黄(ジンクエロー)、モノアゾイエロー、オーカー、ジスアゾ、イソインドリノンイエロー、金属錯塩アゾイエロー、キノフタロンイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、モノアゾレッド、無置換キナクリドンレッド、アゾレーキ(Mn塩)、キナクリドンマゼンダ、アンサンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、ペリレンレッド、ジケトピロロピロールクロムバーミリオン、塩素化フタロシアニングリーン、臭素化フタロシアニングリーン、ピラゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンオレンジ、ジオキサジンバイオレット、ペリレンバイオレット等を挙げることができる。
【0131】
本発明の塗料組成物において着色顔料を使用する場合、使用量は、ポリアスパラギン酸エステル(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の固形分総量を基準にして、5~100質量%、特に10~60質量%であることが、塗膜外観、耐候性、下地隠蔽性の観点から好ましい。
【0132】
本発明の塗料組成物には必要に応じて体質顔料を含有させることができる。
【0133】
上記体質顔料としては、例えば、クレー、シリカ、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、珪藻土、炭酸マグネシウム等を挙げることができる。
【0134】
上記の体質顔料において、塗料粘度低減、塗装作業性及び仕上り外観の観点から、平均粒子径が0.01~5μm、好ましくは0.05~4μm、さらに好ましくは0.05~3μmの硫酸バリウム又は炭酸カルシウムを好適に使用することができる。
【0135】
このような体質顔料の市販品としては、硫酸バリウムとしては例えば、バリファインBF-20(堺化学工業社製、商品名、平均粒子径0.03μmの硫酸バリウム)、バリエース B-33(堺化学工業社製、商品名、平均粒子径0.3μmの硫酸バリウム)、SPARWITE(スパーワイト)W-5HB(Sino-Can社製、商品名、硫酸バリウム粉末、平均粒子径:1.6μm)、BLANC FIXE MICRO(Venator Materials社製、商品名、平均粒子径0.7μmの硫酸バリウム)、
炭酸カルシウムとしては例えば、ネオライトSA-200(竹原化学工業社製、商品名、平均粒子径0.08μmの炭酸カルシウム)、マイクロPOWDER 3N(備北粉化工業社製、商品名、平均粒子径1.1μmの炭酸カルシウム)、サンライトSL1500(竹原化学工業社製、商品名、平均粒子径2.5μmの炭酸カルシウム)等を挙げることができる。
【0136】
なお本明細書において、平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定により得られる値である。
【0137】
具体的には、例えばUPA-EX250(商品名、日機装株式会社製、動的光散乱法による粒度分布測定装置)を用いて測定した値である。
【0138】
本発明の塗料組成物において体質顔料を使用する場合、使用量は、ポリアスパラギン酸エステル(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の固形分総量を基準にして、10~200質量%、特に15~150質量%であることが、仕上り外観及び塗装作業性の観点から好ましい。
【0139】
また、本発明の塗料組成物において、顔料(着色顔料、体質顔料及びその他の顔料)の使用量は、仕上り外観および塗装作業性の観点から、ポリアスパラギン酸エステル(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の固形分総量を基準にして、5~250質量%、特に20~200質量%、さらに特に25~150質量%の範囲内であることが好ましい。
【0140】
本発明の塗料組成物には、ポットライフの向上を目的として、さらにゼオライトを使用することができる。
【0141】
ゼオライトは結晶性アルミノ珪酸塩の総称であり、構成元素は、Al、Si、O、カチオン(陽イオン)で、SiO4とAlO4から形成される四面体構造(Si4+又はAl3+を中心として形成される四面体)を基本構造とする化合物である。それらが複雑に且つ規則正しく繋がることで、直径が数Å~十数Åの小さな分子とほぼ同じ大きさの細孔が1次元、2次元又は3次元に規則的に形成されている。これがゼオライトの特徴である。
【0142】
ゼオライトの細孔内にはカチオンが存在しており、カチオンに基づいてゼオライトの諸機能が発現する。ゼオライトの細孔には、その直径より小さな分子のみが進入でき、大きな分子と篩い分けができることから、ゼオライトの中にはモレキュラーシーブ(分子篩)と呼ばれるものがある。
【0143】
ゼオライトには、含水アルミノケイ酸塩を主成分とした天然ゼオライトと、Na2O・Al2O3・xSiO2・yH2Oを主成分とした合成ゼオライトがある。合成ゼオライトはパ-ムチットとも呼ばれ、炭酸ナトリウム、シリカ、アルミナ又はカオリンを共融する乾式法、又はケイ酸ナトリウムとアルミン酸ナトリウムを合わせてゲルを沈澱させる湿式法によって製造される。
【0144】
天然ゼオライト、合成ゼオライトのいずれもイオン交換能を有し、脱水しても結晶構造が変化せず、脱水した後に分子サイズの細孔が得られ、大きい吸着能を有する。また、水熱合成によりアルミノケイ酸ナトリウムゲルを結晶化し脱水した後に一定サイズの細孔が得られるものは、一般にモレキュラーシーブと呼ばれている。
【0145】
ゼオライトとしては、ポットライフ、耐食性の観点から、一般にモレキュラーシーブと呼ばれているものを好適に使用することができる。ゼオライトを粉末状やペレット状に成型したものが市販されており、原料のゼオライトの種類によってモレキュラーシーブ3A、モレキュラーシーブ4A、モレキュラーシーブ5A、モレキュラーシーブ13X等が市販されている。数字は上記細孔のおおよその直径(オングストローム)を、大文字のアルファベットはゼオライトの種類を表しており、AはLTA型ゼオライト、XはFAU型ゼオライトを表している。
【0146】
上記モレキュラーシーブのうち、仕上り外観の観点から、モレキュラーシーブ3A、モレキュラーシーブ4A、モレキュラーシーブ5Aが好ましく、特にモレキュラーシーブ5Aを好適に使用することができる。
【0147】
モレキュラーシーブ結晶の細孔付近にある金属カチオンの位置と大きさにより、この細孔の有効直径は変化し、例えばモレキュラーシーブ5Aはモレキュラーシーブ4Aのナトリウムイオンをカルシウムイオンで置換したものである。
【0148】
ゼオライトの細孔径(細孔の有効直径)の範囲は仕上り外観の観点から、好ましくは0.50nm以下の範囲内であり、特に好ましくは0.10~0.50nmの範囲内であり、さらに特に好ましくは0.20~0.50nmの範囲内である。
【0149】
なお、ゼオライトの細孔径は、窒素ガス吸着法によって測定できる。
【0150】
本発明の塗料組成物においてゼオライトを使用する場合、使用量は、ポリアスパラギン酸エステル(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の固形分総量を基準にして、0.1~30質量%、特に3~30質量%、さらに特に5~20質量%の範囲内であることが、ポットライフ及び仕上り外観の観点から好ましい。
【0151】
本発明の塗料組成物には、塗料の流動性を制御して仕上り外観及び塗装作業性の向上を目的として、レオロジーコントロール剤を使用することができる。
【0152】
レオロジーコントロール剤としては、具体的には例えば、粘土鉱物(例えば、金属ケイ酸塩、モンモロリロナイト)、アクリル樹脂(例えば、分子中にアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのポリマー、オリゴマーからなる構造を含むもの)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、アマイド(高級脂肪酸アマイド、ポリアマイド、オリゴマー等)、ポリカルボン酸(分子中に少なくとも2つ以上のカルボキシル基を有する誘導体を含む)、セルロース(ニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースエーテル等種々の誘導体を含む)、及びウレタン(分子中にウレタン構造を含むポリマー、オリゴマー等)、ウレア(分子中にウレア構造を含むポリマー、オリゴマー等)、ウレタンウレア(分子中にウレタン構造とウレア構造を含むポリマー、オリゴマー等)等を挙げることができる。
【0153】
上記のうち、仕上り外観の観点から、アクリル樹脂、ウレア及びウレタンウレアを好適に使用することができる。
【0154】
レオロジーコントロール剤の市販品としては、例えば、ディスパロン6900(楠本化成(株)製)、ディスパロンA603(楠本化成(株)製)、チクゾールW300(共栄社化学(株))等のアマイドワックス;ディスパロン4200(楠本化成(株)製)等のポリエチレンワックス;CAB(セルロース・アセテート・ブチレート、イーストマン・ケミカル・プロダクツ社製)、HEC(ヒドロキシエチルセルロース)、疎水化HEC、CMC(カルボキシメチルセルロース)等のセルロース系のレオロジーコントロール剤;BYK-410、BYK-411、BYK-420、BYK-425(以上、ビックケミー(株)社製)等のウレタンウレア系のレオロジーコントロール剤;フローノンSA-345HF(共栄社化学(株))等のポリオレフィン系のレオロジーコントロール剤;フローノンHR-4AF(共栄社化学(株))等の高級脂肪酸アマイド系のレオロジーコントロール剤;等を挙げることができる。
【0155】
本発明の塗料組成物においてレオロジーコントロール剤を使用する場合、使用量は、ポリアスパラギン酸エステル(A)及びポリイソシアネート化合物(C)の固形分総量を基準にして、0.1~20質量%、特に0.5~15質量%、さらに特に0.8~10質量%の範囲内であることが、仕上り外観及び塗装作業性の観点から好ましい。
【0156】
本発明の塗料組成物にはさらに必要に応じて、顔料分散剤、表面調整剤、界面活性剤、消泡剤、ポリアスパラギン酸エステル(A)以外の樹脂(例えば、エポキシ樹脂等)、硬化剤(ポリイソシアネート化合物(B)を除く)、防腐剤、凍結防止剤等を含有させることができる。
【0157】
本塗料は、フリー(遊離)のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(B)を構成成分とするため、常温で、基体樹脂であるポリアスパラギン酸エステル(A)との架橋反応が進行するので、(A)成分を含有する主剤と、(B)成分を含有する硬化剤との2液型塗料であり、通常、塗装直前に主剤と硬化剤とを混合し、有機溶剤等の溶媒を必要に応じて添加して粘度調整することにより好適に使用される。
【0158】
その際、必要に応じて使用される成分は、一般に、主剤側に含有せしめることが好ましい。混合は、例えばディスパー、ホモジナイザー等の混合装置を用いて行うことができる。
【0159】
本発明の塗料組成物は高固形分塗料組成物であり、塗装時におけるVOC等の揮発性物質の放散量を少なくせしめることができる。具体的には塗装時の塗料固形分(不揮発分)濃度が、70質量%以上、特に80質量%以上とすることができる。
【0160】
本明細書において塗装時の塗料固形分(不揮発分)濃度は、温度が20℃、湿度が60%の条件において塗装に適した粘度に調整した塗装直前の試料をブリキ皿に1.0g秤量し、加熱温度105℃、3時間で揮発成分を除き、残量を質量百分率として算出することによって求めることができる。
【0161】
本発明の塗料組成物の塗装は、例えば、浸漬塗り、刷毛塗り、ロール刷毛塗り、スプレーコート、ロールコート、スピンコート、ディップコート、バーコート、フローコート、静電塗装、エアレス塗装、電着塗装、ダイコート等の塗装方法によって行うことができる。
【0162】
被塗物としては、冷延鋼板、黒皮鋼板、合金化亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板等、及びこれらを素材とするブルドーザー、油圧ショベル、ホイールローダ等の建設機械又は産業機械等を挙げることができる。これらは必要に応じて、ショットブラスト、表面調整、表面処理等、さらには下塗塗装を施したものであってもよい。
【0163】
本発明の塗料組成物は、耐候性及び耐食性に優れ、金属素材に直接塗装可能な高固形分塗料組成物であるので、上記被塗物用途のESG観点からのVOC規制対応の上塗塗料、特に金属素材に直接塗装されるワンコート仕様の上塗塗料として、好適に使用することができる。
【実施例】
【0164】
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0165】
塗料組成物の製造
実施例1 塗料組成物No.1の製造
以下の工程1及び2により、塗料組成物No.1を得た。
【0166】
工程1
アスパラギン酸エステル樹脂(A-1)49.5部(固形分)、ポリオール化合物(D-1)5.5部(固形分)、バリエースB-33(注1)18部、タイペークCR-95(注2)8部、カーボンMA-100(注3)1部、BYK-161(注4)3部、TINUVIN 400(注5)2部、TINUVIN 123(注6)2部、BYK-052N(注7)0.01部、BYK-300(注8)0.05部を混合して攪拌し、固形分濃度を溶剤で調整することにより、固形分80質量%の塗料組成物No.1の主剤を得た。
【0167】
なお、上記において、体質顔料及び着色顔料は、アスパラギン酸エステル樹脂(A-1)20部を使用して作成した顔料分散ペーストとして添加して混合した。
【0168】
工程2 上記工程1によって得た主剤に、ポリイソシアネート化合物(D-1)45.1部、及びエポキシ基含有シランカップリング剤(B-1)7.0部を添加し、固形分濃度を溶剤で調整することによって固形分80質量%の塗料組成物No.1を得た。
【0169】
実施例2~26及び比較例1~4 塗料組成物No.2~30の製造
表1の配合とする以外は、実施例1と同様にして、各塗料組成物No.2~30を得た。なお、塗料組成物No.27~30は比較例用である。
【0170】
なお、表1の原材料の配合(数値)は、固形分質量である。
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
また、表中の各原材料は以下のとおりである。
【0177】
ポリアスパラギン酸エステル化合物(A)
ポリアスパラギン酸エステル(A-1):Desmophen NH-1420:商品名、コベストロ社製、ポリアスパラギン酸エステル、アミン価201。分子量554.7 粘度1000mPa・s
ポリアスパラギン酸エステル(A-2):Desmophen NH-1423LF:商品名、コベストロ社製、ポリアスパラギン酸エステル、アミン価230、分子量554.7 粘度1500mPa・s
ポリアスパラギン酸エステル(A-3):Desmophen NH-1220:商品名、コベストロ社製、ポリアスパラギン酸エステル、アミン価206、分子量460.6、粘度100mPa・s
ポリイソシアネート化合物 (B)
ポリイソシアネート化合物(B-1):Desmodur N 3900:商品名、コベストロ社製、低粘度HDIイソシアヌレート、NCO基含有23.5%。23℃での粘度700mPa・s
ポリイソシアネート化合物(B-2):Desmodur N 3600:商品名、コベストロ社製、HDIイソシアヌレート、NCO基含有23%。23℃での粘度1200mPa・s
ポリイソシアネート化合物(B-3):Desmodur N 3200:商品名、コベストロ社製、HDIビュレット型イソシアネート、NCO基含有23%。23℃での粘度2500mPa・s
ポリイソシアネート化合物(B-4):TOLONATE XF-800:商品名、VENCOLEX社製、HDI変性脂肪族ポリイソシアネート、NCO基含有20.1%。23℃での粘度900mPa・s
エポキシ基含有シランカップリング剤 (C)
エポキシ基含有シランカップリング剤(C-1):「KBM-403」:商品名、信越化学社製、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシ当量236、分子量236。
【0178】
エポキシ基含有シランカップリング剤(C-2):「KBE-402」:商品名、信越化学社製、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、エポキシ当量248、分子量248。
【0179】
エポキシ基含有シランカップリング剤(C-3):「MP-200」:商品名、モメンティブ社製、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの縮合物、エポキシ当量205。
【0180】
エポキシ樹脂(1):「JER-828」:商品名、三菱ケミカル社製、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量188。
【0181】
ポリオール化合物 (D)
ポリオール化合物(D-1):「デスモフェンXP-2488」:商品名、コベストロ社製、ポリエステルポリオール、水酸基価528。分子量1400
ポリオール化合物(D-2):「EXCENOL 750ED」:商品名、AGC社製、ポリエステルポリオール、水酸基価760、分子量300。
【0182】
ポリオール化合物(D-3):「Joncryl507」:商品名、BASF社製、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基価140。分子量2200。
【0183】
ポリオール化合物(D-4):「TA22-981」:商品名、レゾナック社製、ポリエステルポリオール、水酸基価55、分子量2000。
【0184】
ポリオール化合物(D-5):「サンニックスGP-3000」:商品名、三洋化成社製、ポリエーテルポリオール、水酸基価56、分子量3000。
【0185】
(注1)バリエースB-33:堺化学工業株式会社製、商品名、硫酸バリウム、平均粒子径0.3μm
(注2)タイペークCR-95:石原産業株式会社製、商品名、二酸化チタン
(注3)カーボンMA-100:三菱ケミカル株式会社製、商品名、カーボンブラック
(注4)BYK-161:ビックケミー株式会社製、商品名、湿潤分散剤
(注5)TINUVIN400:B.A.S.F.製、商品名、ヒドロキシフェニルトリアジン紫外線吸収剤
(注6)TINUVIN123:B.A.S.F.製、商品名、ヒンダードアミン系光安定剤
(注7)BYK-052N:BYK株式会社製、商品名、消泡剤、アルキルビニルエーテル共重合物
(注8)BYK-300:BYK株式会社製、商品名、シリコーン系表面調整剤
(注9)ネオスタンU-100:日東化成社製、商品名、ジブチル錫ジラウレート、ウレタン硬化触媒
(注10)シリル基含有変性ポリイソシアネートX1:
3-アミノプロピルトリメトキシシラン89.5部とメトキノン0.04部をフラスコに入れて80℃に昇温し、液中に空気を導入しバブリングさせ攪拌した。これにフマル酸ジi-プロピル110部を2時間かけて滴下したのち80℃で1時間保持し、さらに50℃で1週間エージングさせ、3-(N-(1,2-ビス(i-プロポキシカルボニル)エチル)アミノ)プロピルトリメトキシシランを95%含む混合物199部を得た。別のフラスコに、ミネラルスピリット280部、「スワゾール1000」(ナフサ系溶剤、丸善石油化学社製、商品名)224部、「デュラネートTSA-100」(ヘキサメチレンジイソシアネート系変性イソシアヌレート型ポリイソシアネート、旭化成社製、商品名、イソシアネート基含有率20.6wt%)550部を入れ、室温で攪拌した。これに、3-(N-(1,2-ビス(i-プロポキシカルボニル)エチル)アミノ)プロピルトリメトキシシランを95%含む混合物108部を2時間かけて滴下したのち、60℃で1時間保持し、室温まで冷却し、不揮発分濃度が56%のシリル基含有変性ポリイソシアネートX1溶液を得た。該溶液1g中に含まれるイソシアネート基の濃度は、2.09ミリモル/g(不揮発分換算では3.72ミリモル/g)であった。
【0186】
(注11)シリル基含有変性ポリイソシアネートX2:
3-アミノプロピルトリメトキシシラン89.5部、メトキノン0.04部、「スワゾール1000」(ナフサ系溶剤、丸善石油化学社製、商品名)4部をフラスコに入れて、液中に空気を導入しバブリングさせ攪拌し、これにアクリル酸イソボルニル104部を2時間かけて滴下したのち50℃で1時間保持した。さらに50℃で1週間エージングさせ、3-(N-(2-(イソボルニロキシカルボニル)エチル)アミノ)プロピルトリメトキシシラン/3-アミノプロピルトリメトキシシラン/3-(N,N-ジ(2-(イソボルニロキシカルボニル)エチル)アミノ)プロピルトリメトキシシランを74/13/13のモル比で含む混合物198部を得た。混合物1g中の(1級アミノ基+2級アミノ基)の合計量は2.20ミリモルであった。
【0187】
別のフラスコに、ミネラルスピリット273部、「スワゾール1000」(ナフサ系溶剤、丸善石油化学社製、商品名)223部、「デュラネートTSA-100」500部を入れ、室温で攪拌した。これに、3-(N-(2-(イソボルニロキシカルボニル)エチル)アミノ)プロピルトリメトキシシラン/3-アミノプロピルトリメトキシシラン/3-(N,N-ジ(2-(イソボルニロキシカルボニル)エチル)アミノ)プロピルトリメトキシシランを74/13/13のモル比で含む混合物111部を2時間かけて滴下したのち、60℃で2時間保持し、室温まで冷却し、不揮発分濃度が55%のシリル基含有変性ポリイソシアネートX2溶液を得た。該溶液1g中に含まれるイソシアネート基の濃度は、1.99ミリモル/g(不揮発分換算では3.62ミリモル/g)であった。
【0188】
(注12)シリル基含有変性ポリイソシアネートX3:
窒素雰囲気下のフラスコに、直鎖型飽和エステルである酢酸メチル89部および3-アミノプロピルトリメトキシシラン179部を入れ、室温で攪拌した。これに、触媒としてナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液0.58部を加え攪拌し、70℃に昇温して1日熟成した。3-アミノプロピルトリメトキシシランの反応率は97%であり、反応した3-アミノプロピルトリメトキシシランとほぼ等モルのメタノールが副生していた。その後、酸性化合物としてビス(2―エチルヘキシル)リン酸を1.1部加えて、50℃~70℃で減圧してメタノールと残存する酢酸メチルを除去して濃縮した結果、N位アシル変性体中間物として、触媒由来残渣を含む粗3-アセタミドプロピルトリメトキキシシラン222部を得た。別の窒素雰囲気下のフラスコに、酢酸ブチル62部、「デュラネートTSA-100」500部を入れ、室温で攪拌した。これに粗3-アセタミドプロピルトリメトキキシシラン55部を加え、110℃で7時間加熱し、2級アミド基をイソシアネート基にアダクトさせ、不揮発分濃度90%のシリル基含有変性ポリイソシアネートX3溶液を得た。該溶液1g中に含まれるイソシアネート基の濃度は、3.49ミリモル/g(不揮発分換算では3.88ミリモル/g)であった。
【0189】
(注13)モレキュラーシーブ 3A:ユニオン昭和株式会社、商品名、ナトリウムカルシウムアミノシリケート、細孔径0.25nm
(注14)モレキュラーシーブ 5A:ユニオン昭和株式会社、商品名、ナトリウムカルシウムアミノシリケート、細孔径0.42nm
(注15)モレキュラーシーブ 13X:ユニオン昭和株式会社、商品名、ナトリウムカルシウムアミノシリケート、細孔径1.0nm
なお、試験板の作成及び性能評価は、下記に従って試験板を作成し、試験に供して得た結果を表1に併せて示す。
【0190】
試験板の作成
ショットブラスト処理した一般構造用圧延鋼材SS-400(大きさ2.3×150×300mm、Ra:3.9μm Ry:34μm Rz:23μm)に各塗料組成物No.1~30を乾燥膜厚が80μmとなるようにエアースプレー塗装(圧力0.4MPa)し、20℃で10分間セッティングした後、電気熱風乾燥機を用いて、60℃で30分間加熱乾燥させ、さらに20℃で168時間養生させることにより各塗料組成物No.1~30の各試験板を得た。
【0191】
性能評価
各塗料組成物No.1~30、及び各塗料組成物の試験板について、以下の試験項目につき性能試験に供し、以下の評価基準にて性能評価を行った。性能評価結果を併せて表1に示す。
【0192】
仕上り外観:各試験板の塗面外観を目視及び光沢値で評価した。
◎:平滑性が良好で、かつ60度光沢値が80以上。
○:平滑性が良好で、かつ60度光沢値が70以上80未満。
△:わき、うねり、ツヤビケ及びチリ肌から選ばれる少なくとも1種の仕上り外観の低下がやや見られる、あるいは、60度光沢値が60以上70未満。
×:わき、うねり、ツヤビケ、チリ肌から選ばれる少なくとも1種の仕上り外観の低下が著しい、あるいは、60度光沢値が60未満。
【0193】
鉛筆硬度:各試験板を、JIS K 5600-5-4に準じて、試験塗板面に対し約45度の角度で鉛筆の芯を当て、芯が折れない程度に強く試験塗板面に押し付けながら前方に均一な速さで約10mm動かした。塗膜が破れなかったもっとも硬い鉛筆の硬度記号を鉛筆硬度とした。
◎:2H以上
○:H以上且つ2H未満
△:F以且つH未満
×:F未満
指触乾燥性:各塗料組成物を、温度20℃、湿度50%の恒温恒湿室中で、ブリキ板に乾燥膜厚60μmとなるようにスプレーで塗装し、指で触って塗料が指に付かなくなるまでの指触乾燥時間を測定した。
◎:乾燥時間20分未満
○:乾燥時間20分以上且つ30分未満
△:30分以上且つ45分未満
×:45分以上
耐食性:JIS K 5600-7-1に準じて、試験塗装面に対し素地に達するクロスカットを付けた各試験塗装板を35℃雰囲気下、pHを7.0に調整した5%塩化ナトリウム水溶液を168時間噴霧した後、カット部からの片側フクレ幅を評価した。
◎:1.0mm未満
○:1.0mm以上、かつ2.0mm未満
△:2.0mm以上、かつ3.0mm未満
×:3.0mm以上
耐候性:各試験板に対し、JIS B 7754に規定されたスーパーキセノンウェザオメーター(商品名、スガ試験機社製)を使用し、1時間42分間のキセノンアークランプの照射と18分間の降雨条件における同ランプの照射による2時間を1サイクルとして、1500時間(750サイクル)の繰り返し試験の終了後に、各控え塗板(初期塗板)に対する60度光沢保持率(GR%)と色差(ΔE)を測定し、以下の基準で評価した。
◎:60度光沢保持率(GR%)が80以上かつ色差(ΔE)が2.0未満。
○:60度光沢保持率(GR%)が70以上80未満あるいは色差(ΔE)が2.0以上かつ3.0未満。
△:60度光沢保持率(GR%)が50以上70未満あるいは色差(ΔE)が3.0以上かつ5.0未満。
×:60度光沢保持率(GR%)が50未満あるいは色差(ΔE)が5.0以上。
【0194】
ポットライフ:ゼオライト(モレキュラシーブ)を含有する塗料組成物No.23~26については、塗料組成物No.16との比較でポットライフを増粘率により評価した。
【0195】
各塗料組成物をイワタカップにて粘度を測定した際の1時間後の増粘率(1時間後のイワタカップ粘度(秒)/初期のイワタカップ粘度(秒))は、No16は4.0であったのに対し、それぞれNo.23は1.4、No.24は1.3、No.25、は1.1、No.26は1.2であった。
【産業上の利用可能性】
【0196】
耐候性、耐食性及び塗膜硬度に優れ、金属素材に直接塗装可能な高固形分塗料組成物を提供することができる。
【要約】
【課題】 耐候性、耐食性及び塗膜硬度に優れ、金属素材に直接塗装可能な高固形分塗料組成物を提供すること。
【解決手段】 ポリアスパラギン酸エステル(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、エポキシ基含有シランカップリング剤(C)、及び重量平均分子量が250~2300、かつ水酸基価が50~800の範囲内であるポリオール(D)を含有する高固形分塗料組成物。特に固形分濃度が70質量%以上である、高固形分塗料組成物。被塗物に、該高固形分塗料組成物を塗装する塗装方法、該高固形分塗料組成物が塗装された建設機械又は産業機械。
【選択図】なし