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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20231226BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20231226BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20231226BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20231226BHJP
   C08K 5/44 20060101ALI20231226BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C08L7/00
B60C1/00 A
C08J3/20 CEQ
C08K3/04
C08K5/44
C08L21/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017233605
(22)【出願日】2017-12-05
(65)【公開番号】P2019099718
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-10-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 健宏
【合議体】
【審判長】淺野 美奈
【審判官】加藤 友也
【審判官】天野 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-159769(JP,A)
【文献】特開2013-35902(JP,A)
【文献】特開2017-141325(JP,A)
【文献】特開平7-69003(JP,A)
【文献】特開2004-203954(JP,A)
【文献】天然ゴムの加工・配合技術、児玉総治・秋葉光雄、日本ゴム協会誌、第82巻、第10号(2009)、438-442ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムラテックスにギ酸を添加して固めたシートを洗浄、乾燥後、ブロック状にした天然ゴムを含み、天然ゴム比率が40質量%以上であるゴム成分と、
前記ゴム成分100質量部に対し、3質量部以下のN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドを含むゴム組成物。
【請求項2】
アミン系老化防止剤をさらに含む、請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
香料をさらに含む、請求項1または2記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム成分100質量部に対し、20質量部以上のカーボンブラックをさらに含む、請求項1、2、または3に記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項1、2、3、または4に記載のゴム組成物により構成されたタイヤ部材を有するタイヤ。
【請求項6】
天然ゴムラテックスにギ酸を添加して固めたシートを洗浄、乾燥後、ブロック状にした天然ゴムを得る工程、および
前記ブロック状にした天然ゴムを含むゴム成分100質量部に対し、3質量部以下のN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドを添加し混練する工程を含むゴム組成物の製造方法であって、
前記ゴム成分の天然ゴム比率が40質量%以上である製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
天然ゴムは、物性(特に強度)が優れるため、タイヤをはじめ、種々の分野で利用されている。天然ゴムは、天然ゴム各種等級品の国際品質包装標準(グリーンブック)における格付けによるリブド・スモーク・シート(RSS型)、技術的格付けゴム(TSR型)等の凝固ゴムや、溶液のまま出荷されるラテックス等に分類され得る。ところで、天然ゴム等のゴム成分を含むゴム組成物から構成されたタイヤは、臭気(たとえば腐敗臭や刺激臭等)が発生することがある。特許文献1には、臭気をもつアミンの発生を防止するために、硫黄および所定のベンゾチアゾール系加硫促進剤を含むゴム組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-50201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のゴム組成物によれば、公知の天然ゴムを用いた場合における特定の臭気(特に腐敗臭)に関して充分に抑制できない。また、特許文献1に記載のゴム組成物は、刺激臭に関しても充分に抑制できない。本発明は、公知の天然ゴムを用いた場合に生じる特定の腐敗臭や、刺激臭を低減することができるゴム組成物およびタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記腐敗臭および刺激臭の要因について鋭意研究を行い、これらの臭気が、天然ゴムの製造時における貯蔵工程において、天然ゴム中のポリイソプレン成分以外の成分(たとえばタンパク質、脂質、糖等)が腐敗することにより腐敗臭を生じることや、上記ベンゾチアゾール系加硫促進剤を用いる場合に副生成物が産生され、刺激臭を生じることを見出した。これに対し、本発明者は、特定の天然ゴムと、特定量のN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドとを組み合わせることにより、上記臭気を低減させ得ることを見出し、本発明を完成させた。上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0006】
(1)天然ゴムラテックスにギ酸を添加して固めたシートを洗浄、乾燥後、ブロック状にした天然ゴムと他のゴム成分とを混練し、天然ゴム比率が40質量%以上であるゴム成分と、前記ゴム成分100質量部に対し、3質量部以下のN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドを含むゴム組成物。
【0007】
(2)アミン系老化防止剤をさらに含む、(1)記載のゴム組成物。
【0008】
(3)香料をさらに含む、(1)または(2)記載のゴム組成物。
【0009】
(4)前記ゴム成分100質量部に対し、20質量部以上のカーボンブラックをさらに含む、(1)~(3)のいずれかに記載のゴム組成物。
【0010】
(5)(1)~(4)のいずれかに記載のゴム組成物により構成されたタイヤ部材を有するタイヤ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、公知の天然ゴムを用いた場合に生じる特定の腐敗臭や、刺激臭を低減することができるゴム組成物およびタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<ゴム組成物>
本発明の一実施形態のゴム組成物(以下、ゴム組成物という)は、天然ゴムラテックスにギ酸を添加して固めたシートを洗浄、乾燥後、ブロック状にした天然ゴム(NR)と他のゴム成分とを混練し、天然ゴム比率が40質量%以上であるゴム成分と、ゴム成分100質量部に対し、3質量部以下のN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドを含む。本実施形態のゴム組成物は、このような構成を備えることにより、公知の天然ゴムを用いた場合に生じる特定の腐敗臭や、刺激臭を低減することができる。以下、それぞれについて説明する。
【0013】
(ゴム成分)
ゴム成分は、天然ゴムラテックスにギ酸を添加して固めたシートを洗浄、乾燥後、ブロック状にしたNRと他のゴム成分とを混練し、天然ゴム比率が40質量%以上であるゴム成分である。上記ブロック状にしたNRは、他のグレードのNRであるTSRのように、製造時に貯蔵されることがない。そのため、上記ブロック状にしたNRは、たとえば貯蔵時に生じるタンパク質の腐敗等が生じないと考えられる。その結果、本実施形態のゴム組成物は、上記ブロック状にしたNRが用いられることにより、タンパク質の腐敗によって生じるイソ吉草酸類や酪酸類等の腐敗臭が低減され得る。
【0014】
上記ブロック状にしたNRは、特に限定されない。一例を挙げると、このようなNRは、TSS#8等である。
【0015】
なお、ブロック状にしたNRを得るための条件は特に限定されない。一例を挙げると、天然ゴムラテックスに添加するギ酸の量は、0.1~50質量%であってもよい。また、得られたシートの洗浄方法、乾燥条件はどのような方法であってもよい。また、ブロック状のNRを得る方法は、どのような方法であってもよい。
【0016】
上記ブロック状にしたNRは、他のゴムと混練された後の天然ゴム比率が40質量%以上であればよく、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。天然ゴム比率の上限は特に限定されない。天然ゴム比率が40質量%以上であることにより、得られるゴム組成物は、腐敗臭が低減され得る。
【0017】
上記他のゴム成分は、NRおよびポリイソプレンゴム(IR)を含むイソプレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムやブチル系ゴムである。これらのゴム成分は、併用されてもよい。本実施形態のゴム組成物は、他のゴム成分として、BRが用いられることが好ましい。これにより、得られるタイヤは、耐摩耗性、耐久性、グリップ性等が向上され得る。
【0018】
(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
本実施形態のゴム組成物は、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)を含む。これにより、たとえばN-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)が代わりに用いられる場合と比較して、ゴム組成物は、加硫時に副生成物としてtert-ブチルアミンを生じにくい。tert-ブチルアミンは、嗅覚閾値が低く、タイヤから発生する刺激臭の一因となり得る。その結果、本実施形態のゴム組成物は、tert-ブチルアミンに由来する刺激臭が低減され得る。
【0019】
CBSは、ゴム成分100質量部に対し、3質量部以下となるよう含まれればよく、2.5質量部以下となるよう含まれることが好ましく、2質量部以下となるよう含まれることがより好ましい。また、CBSは、ゴム成分100質量部に対し、0.4質量部以上となるよう含まれることが好ましく、0.6質量部以上となるよう含まれることがより好ましく、0.8質量部以上となるよう含まれることがさらに好ましい。CBSは、ゴム成分100質量部に対し、3質量部以下となるよう含まれることにより、得られるゴム組成物は、刺激臭がより低減され得る。
【0020】
なお、本実施形態のゴム組成物は、CBS以外に、加硫促進剤を含んでもよい。このような加硫促進剤は、グアニジン系加硫促進剤、アルデヒド-アミン系加硫促進剤、アルデヒド-アンモニア系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、チオ尿素系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、ジチオカルバメート系加硫促進剤、ザンデート系加硫促進剤等である。
【0021】
(任意成分)
本実施形態のゴム組成物において、好適に配合される任意成分について説明する。本実施形態のゴム組成物は、上記した成分に加え、タイヤ用ゴム組成物の製造に一般に使用される他の成分が任意で配合され得る。一例を挙げると、このような任意成分は、充填剤、老化防止剤、香料、シランカップリング剤、架橋剤、プロセスオイル、ステアリン酸、酸化亜鉛、ワックス等である。
【0022】
・充填剤
充填剤は特に限定されない。充填剤は、従来、タイヤ用ゴム組成物において汎用されている各種充填剤から任意に選択して用いられ得る。一例を挙げると、充填剤は、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、セリサイト、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、クレー、タルク、酸化マグネシウム等である。充填剤は、併用されてもよい。これらの中でも、充填剤は、得られるタイヤにおいて、優れたグリップ性および耐摩耗性が得られる点から、カーボンブラックを含むことが好ましい。
【0023】
充填剤としてカーボンブラックが用いられる場合、カーボンブラックは特に限定されない。一例を挙げると、カーボンブラックは、汎用のカーボンブラックであってもよく、オイルファーネス法により製造されたカーボンブラックであってもよい。また、カーボンブラックは、コロイダル特性の異なるものが併用されてもよい。
【0024】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は特に限定されない。一例を挙げると、カーボンブラックのN2SAは、10(m2/g)以上であることが好ましく、20(m2/g)以上であることがより好ましい。また、カーボンブラックのN2SAは、90(m2/g)以下であることが好ましく、80(m2/g)以下であることがより好ましく、60(m2/g)以下であることがさらに好ましい。カーボンブラックのN2SAが10(m2/g)以上であることにより、得られるタイヤにおいて、充分なグリップ性が示されやすい。一方、カーボンブラックのN2SAが90(m2/g)以下であることにより、カーボンブラックは、ゴム組成物中で分散されやすく、得られるタイヤの耐摩耗性が充分に示されやすい。なお、本実施形態において、N2SAは、JIS K 6217-2:2001に準拠して測定され得る。
【0025】
カーボンブラックのオイル吸収量(OAN)は特に限定されない。一例を挙げると、OANは、50mL/100g以上であることが好ましく、100mL/100g以上であることがより好ましい。また、OANは、250mL/100g以下であることが好ましく、200mL/100g以下であることがより好ましく、135mL/100g以下であることがさらに好ましい。OANが50mL/100g以上であることにより、得られるタイヤにおいて、充分な耐摩耗性が示されやすい。一方、OANが250mL/100g以下であることにより、得られるタイヤにおいて、充分なグリップ性が示されやすい。なお、カーボンブラックのOANは、たとえばJIS K 6217-4:2008に準拠して測定され得る。
【0026】
カーボンブラックのDBP(ジブチルフタレート)吸油量は、70mL/100g以上、好ましくは80~160mL/100gである。カーボンブラックのDBPが上記範囲内であることにより、カーボンブラックに依る補強の効果が得られやすい。
【0027】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対し、20質量部以上であることが好ましく、25質量部以上であることがより好ましい。また、充填剤は、ゴム成分100質量部に対し、75質量部以下であることが好ましく、65質量部以下であることがより好ましい。充填剤が上記配合割合となるよう含有されることにより、得られるタイヤは、優れたグリップ性と、耐摩耗性とが両立されやすい。
【0028】
充填剤としてシリカが用いられる場合、シリカは特に限定されない。一例を挙げると、シリカは、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等である。これらの中でも、シリカは、湿式シリカであることが好ましい。シリカは、併用されてもよい。
【0029】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は特に限定されない。一例を挙げると、シリカのN2SAは、80(m2/g)以上であることが好ましく、100(m2/g)以上であることがより好ましく、110(m2/g)以上であることがさらに好ましい。また、シリカのN2SAは、250(m2/g)以下であることが好ましく、235(m2/g)以下であることがより好ましく、220(m2/g)以下であることがさらに好ましい。シリカのN2SAが80(m2/g)以上であることにより、得られるタイヤにおいて、充分な耐久性が得られやすい。また、シリカのN2SAが250(m2/g)以下であることにより、シリカは、ゴム組成物中で分散されやすく、ゴム組成物は加工されやすい。なお、本実施形態において、シリカのN2SAは、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定され得る。
【0030】
シリカが含有される場合、シランカップリング剤が併用されることが好ましい。シランカップリング剤は、ゴム工業において、従来、シリカと併用される任意のシランカップリング剤が使用され得る。シランカップリング剤は、併用されてもよい。
【0031】
シランカップリング剤が含有される場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ分散性の改善効果が得られやすい観点から、シリカ100質量部に対し、2質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましい。また、シランカップリング剤の含有量は、コストに見合った効果が得られやすい観点から、25質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。
【0032】
充填剤として水酸化アルミニウムが用いられる場合、水酸化アルミニウムは特に限定されない。水酸化アルミニウムの平均粒子径は、0.69μm以下であることが好ましく、0.65μm以下であることがより好ましく、0.62μm以下であることがさらに好ましい。また、水酸化アルミニウムの平均粒子径は、0.20μm以上であることが好ましく、0.25μm以上であることがより好ましい。水酸化アルミニウムの平均粒子径が上記範囲内であることにより、本実施形態のゴム組成物を用いて得られるタイヤにおいて、良好な耐摩耗性およびグリップ性能が示されやすい。なお、水酸化アルミニウムの平均粒子径は、数平均粒子径であり、たとえば透過型電子顕微鏡により測定され得る。
【0033】
水酸化アルミニウムの窒素吸着比表面積(N2SA)は特に限定されない。一例を挙げると、水酸化アルミニウムのN2SAは、10(m2/g)以上であることが好ましく、12(m2/g)以上であることがより好ましく、14(m2/g)以上であることがさらに好ましい。また、水酸化アルミニウムのN2SAは、110(m2/g)以下であることが好ましく、100(m2/g)以下であることがより好ましく、90(m2/g)以下であることがさらに好ましい。水酸化アルミニウムのN2SAが上記範囲内であることにより、本実施形態のゴム組成物を用いて得られるタイヤにおいて、良好な耐摩耗性およびグリップ性能が示されやすい。
【0034】
・老化防止剤
老化防止剤は特に限定されない。老化防止剤は、従来、タイヤ用ゴム組成物において汎用されている各種老化防止剤から任意に選択して用いられ得る。一例を挙げると、老化防止剤は、ジフェニルアミン系、フェニレンジアミン系などのアミン系老化防止剤;キノリン系老化防止剤;モノフェノール系、ビス、トリス、ポリフェノール系などのフェノール系老化防止剤等である。老化防止剤は、併用されてもよい。これらの中でも、老化防止剤は、耐オゾン性の観点から、アミン系老化防止剤を含むことが好ましい。
【0035】
アミン系老化防止剤に関して、ジフェニルアミン系老化防止剤は特に限定されない。一例を挙げると、ジフェニルアミン系老化防止剤は、p-イソプロポキシジフェニルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)-ジフェニルアミン、N,N-ジフェニルエチレンジアミン、オクチル化ジフェニルアミン等である。フェニレンジアミン系老化防止剤は、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-エチル-3-メチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N-4-メチル-2-ペンチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジアリール-p-フェニレンジアミン、ヒンダードジアリール-p-フェニレンジアミン、フェニルヘキシル-p-フェニレンジアミン、フェニルオクチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン等である。
【0036】
キノリン系老化防止剤は、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、6-アニリノ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、ポリ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等である。
【0037】
フェノール系老化防止剤に関して、モノフェノール系老化防止剤は、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、1-オキシ-3-メチル-4-イソプロピルベンゼン、2-メチル-4,6-ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネート、スチレン化フェノール、フェノール誘導体等である。ビスフェノール系、トリスフェノール系、ポリフェノール系老化防止剤は、2,2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、1,1’-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等である。
【0038】
老化防止剤を含有する場合の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、老化防止剤は、ゴム成分100質量部に対し、0.5質量部以上となるよう含まれることが好ましく、1質量部以上となるよう含まれることがより好ましい。老化防止剤は、ゴム成分100質量部に対し、10質量部以下となるよう含まれることが好ましく、8質量部以下となるよう含まれることがより好ましい。老化防止剤が上記範囲内となるよう含有されることにより、得られるゴム組成物は、熱酸化による劣化防止効果、オゾンクラック防止効果およびゴム成分の熱分解防止効果が優れる。
【0039】
フェノール系老化防止剤を含有する場合の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、フェノール系老化防止剤は、ゴム成分100質量部に対し、0.5質量部以上となるよう含まれることが好ましく、1質量部以上となるよう含まれることがより好ましい。フェノール系老化防止剤は、ゴム成分100質量部に対し、10質量部以下となるよう含まれることが好ましく、8質量部以下となるよう含まれることがより好ましい。フェノール系老化防止剤が上記範囲内となるよう含有されることにより、得られるゴム組成物は、熱酸化による劣化防止効果、オゾンクラック防止効果およびゴム成分の熱分解防止効果が優れる。
【0040】
アミン系老化防止剤を含有する場合の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アミン系老化防止剤は、ゴム成分100質量部に対し、0.5質量部以上となるよう含まれることが好ましく、1質量部以上となるよう含まれることがより好ましい。アミン系老化防止剤は、ゴム成分100質量部に対し、10質量部以下となるよう含まれることが好ましく、8質量部以下となるよう含まれることがより好ましい。アミン系老化防止剤が上記範囲内となるよう含有されることにより、得られるゴム組成物は、熱酸化による劣化防止効果、オゾンクラック防止効果およびゴム成分の熱分解防止効果が優れる。
【0041】
・香料
香料は、香りを発生することによりゴム組成物特有の臭いを和らげために、好適に含有される。一例を挙げると、香料は、ヘリオトロープ系香料、ジャスミン系香料、ローズ系香料、オレンジフラワー系香料、アンバー系香料、ムスク系香料、シトラス系香料等である。香料は、併用されてもよい。
【0042】
より具体的には、香料は、パチュリ油を主成分とするオリエンタルベース(パチュリ油、ハーコリン(メチルアビエテート)、バニリン、エチルバニリン、クマリン)に、ローズ系(フェニルエチルアルコール、ゲラニオール、イソ-ボルニルメトキシシクロヘキサノール)、アンバー系(テトラヒドロパラメチルキノリン)、ムスク系(ガラクソリッド、ムスクケトン)およびジャスミン系の香料成分(α-アミルシンナムアルデヒド、メチルジヒドロジャスモネート)を、溶剤としてジオクチルフタレートとともに上乗せしたタブ(TABU)タイプの香料等である。
【0043】
また、香料は、ヘリオトロープ系香料成分(ヘリオトロピン、ムスクケトン、クマリン、エチルバニリン、アセチルセドレン、ハーコリン(メチルアビエテート)、オイゲノール、メチルヨノン)を主香調とし、ジャスミン系香料成分(メチルジヒドロジャスモネート)、さらに高調性、拡散性を付与する目的で、ローズ系香料成分(ダマスコン-β、ダマスコン-α、イソ-ボルニルメトキシシクロヘキサノール)、またはオレンジフラワー系香料成分(メチルアンスラニレート、γ-ウンデカラクトン、γ-ノナデカラクトン)を、溶媒としてジオクチルフタレートとともに加えたアメシスト(AMETHYST)タイプの香料等である。
【0044】
シトラス系香料は、柑橘系の香料であり、ベルガモット油、グレープフルーツ油、マンダリン油、レモン油、オレンジ油、ライム油、ネロリ油、シトラール等である。
【0045】
香料の沸点は特に限定されない。一例を挙げると、香料の沸点は、170℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましい。香料の沸点が上記範囲内であることにより、香料は、ゴム組成物の混練り途中や、タイヤの加硫中等において蒸発しにくい。
【0046】
香料が含有される場合において、香料の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、香料の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましい。また、香料の含有量は、ゴム成分100質量部に対し、10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましい。香料が上記範囲となるように含有されることにより、ゴム組成物は、香料由来の香りによって臭気が改善され得る。
【0047】
・架橋剤
架橋剤は特に限定されない。一例を挙げると、架橋剤は、硫黄、カプロラクタムジスルフィド等の硫黄含有化合物である。架橋剤としての硫黄は、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、オイル処理硫黄等である。架橋剤は、併用されてもよい。
【0048】
架橋剤が含有される場合において、架橋剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、架橋剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対し、0.5質量部以上であることが好ましく、0.6質量部以上であることがより好ましい。また、架橋剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対し、3質量部以下であることが好ましく、2質量部以下であることがより好ましい。架橋剤が上記範囲となるように含有されることにより、ゴム組成物は、良好な加硫反応が進行されやすい。
【0049】
・プロセスオイル
プロセスオイルは特に限定されない。一例を挙げると、プロセスオイルは、パラフィン成分、ナフテン成分、アロマ成分等からなる。プロセスオイルは、市販品が用いられてもよい。一例を挙げると、プロセスオイルは、出光興産(株)、H&R社等によって販売されているプロセスオイルである。プロセスオイルは、併用されてもよい。
【0050】
プロセスオイルが含有される場合において、プロセスオイルの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、プロセスオイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましい。また、プロセスオイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対し、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。プロセスオイルが上記範囲となるように含有されることにより、得られるゴム組成物は、耐久性が向上し得る。
【0051】
<ゴム組成物の製造方法>
本実施形態にゴム組成物は、一般的な方法により製造され得る。一例を挙げると、ゴム組成物は、バンバリーミキサー、ニーダー、オープンロール等の一般的なゴム工業で使用される公知の混練機を用いて、上記した各成分を混練し、その後加硫する方法等により製造され得る。
【0052】
得られたゴム組成物は、種々の用途に好適に用いられ得る。一例を挙げると、ゴム組成物は、タイヤ、靴底ゴム、産業用ベルト、ブチル枠ゴム、パッキン、免震ゴム、薬栓等の技術分野において好適に用いられ得る。これらの中でも、ゴム組成物は、靴底ゴム、産業用ベルト、空気入りタイヤのトレッド用として好適である。
【0053】
<タイヤの製造方法>
本実施形態のゴム組成物からタイヤを製造する方法は特に限定されない。一例を挙げると、タイヤは、未加硫の段階で各タイヤ部材の形状(たとえばトレッド部の形状)にあわせてゴム組成物を押出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、次いで、汎用の方法にて成型することにより未加硫タイヤを得て、その後、加硫機中で加熱加圧することにより製造され得る。
【0054】
得られたタイヤは、上記ゴム組成物から構成されたタイヤ部材を有しているため、特定の腐敗臭や、刺激臭が低減されている。
【実施例
【0055】
実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。本発明は、これら実施例に限定されない。
【0056】
実施例および比較例で使用した各種薬品を以下に示す。
(ゴム成分)
NR1:天然ゴム、TSR(カップランプを細かく粉砕し、プレス成型したもの)
NR2:天然ゴム、TSS8(通常のゴム農園で採取された天然ゴムラテックスにギ酸を添加して固めたシートを洗浄、乾燥後、ブロック状にしたもの)
BR:ブチル系ゴム
(加硫促進剤)
CBS:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(ノクセラーCZ、大内新興化学工業(株)製)
TBBS:N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(ノクセラーNS、大内新興化学工業(株)製)
(その他)
充填剤:カーボンブラック(N550、N2SA:42m2/g、DBP:113mL/g、キャボットジャパン(株)製)
プロセスオイル:TDAEオイル(vivatec500、H&R社製)
老化防止剤:6PPD(N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、アミン系老化防止剤、アンチゲン6C、住友化学(株)製)
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛
硫黄:5%オイル含有粉末硫黄(HK200-5、細井化学工業(株)製)
【0057】
(実施例および比較例)
表1に示す配合処方に従い、配合材料のうち、架橋剤以外の薬品を、2.0Lバンバリーミキサーを用いて、4分間、排出温度150℃になるまで混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に、架橋剤を添加し、2.0Lバンバリーミキサーを用いて、3分間、排出温度95℃で混練し、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を厚さ2mmのゴムシートに圧延し、試験用金型を用いて190℃、30分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。混練物および加硫ゴム組成物に対し、臭気評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
<臭気評価>
200mLガラス密閉容器に上記調製したゴム組成物を20mg入れ、オーブンで60℃、3時間加温後に、下記基準での官能評価を行った。官能評価は2人が行い、2人の平均点を官能評価の評点とした。
(評価基準)
6点:非常に強い腐敗臭を感じる
5点:強い腐敗臭を感じる
4点:腐敗臭を感じる
3点:やや弱いが腐敗臭を感じる
2点:注意して嗅げば、わずかに腐敗臭を感じる
1点:無臭(腐敗臭を感じない)
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示されるように、本発明のゴム組成物は、臭気を劇的に改善することができた。