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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】害虫誘引剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/10 20060101AFI20231226BHJP
   A01N 25/12 20060101ALI20231226BHJP
   A01N 37/44 20060101ALI20231226BHJP
   A01N 43/16 20060101ALI20231226BHJP
   A01N 65/00 20090101ALI20231226BHJP
   A01P 19/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A01N25/10
A01N25/12 101
A01N37/44
A01N43/16 A
A01N65/00 G
A01N65/00 Z
A01P19/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018105381
(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2019210224
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】陸井 梨乃
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-503638(JP,A)
【文献】特公平6-79532(JP,B2)
【文献】特開2014-226783(JP,A)
【文献】特開2010-57502(JP,A)
【文献】特開2010-46090(JP,A)
【文献】特表2015-506374(JP,A)
【文献】特開2019-119697(JP,A)
【文献】かつおエキス[1リットル],[online],2014年12月21日,[令和4年8月22日検索],インターネット,<URL:https://tama5ya.jp/product/256>
【文献】Product Overview,[online],2022年07月08日,[令和4年8月31日検索],インターネット,<URL:https://www.sanyo-chemical.co.jp/products/pdf/productoverview_J_2206.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖及びアミノ酸を含有する誘引成分を含有する誘引液と吸水性ポリマーとを含有する害虫誘引剤における前記吸水性ポリマーの型崩れの発生を抑制する方法であって、前記吸水性ポリマーとしてアクリル酸塩系ポリマーを用い、前記誘引液を吸液後の前記吸水性ポリマーの平均粒子径が200μm~30mmである、吸水性ポリマーの型崩れの発生を抑制する方法。
【請求項2】
前記アクリル酸塩系ポリマーのアルカリ金属イオンが、ナトリウムイオンである、請求項1に記載の吸水性ポリマーの型崩れの発生を抑制する方法。
【請求項3】
前記アクリル酸塩系ポリマーが、アクリル酸ナトリウム共重合体及びアクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物のうちの少なくとも1つである、請求項2に記載の吸水性ポリマーの型崩れの発生を抑制する方法。
【請求項4】
前記糖及びアミノ酸を含有する誘引成分が、果汁及び醸造酒からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸水性ポリマーの型崩れの発生を抑制する方法。
【請求項5】
前記害虫誘引剤は、前記糖を5~70質量%含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸水性ポリマーの型崩れの発生を抑制する方法。
【請求項6】
前記吸水性ポリマーの乾燥状態での平均粒子径が50μm~20mmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸水性ポリマーの型崩れの発生を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は害虫誘引剤に関し、更に詳しくは、吸水性ポリマーに揮発性の誘引成分を保持させてなる害虫誘引剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、捕獲器を用いて害虫を捕獲・殺虫することが行われており、捕獲器まで害虫を誘引するために誘引剤が使用されている。誘引剤は、例えば、揮発性の誘引成分を吸水性ポリマーに保持させて構成され、誘引剤を捕獲器内に収納又は捕獲器に隣接させて設置し、誘引成分が空中に徐放されることにより誘引活性を得る。
【0003】
吸水性ポリマーは水分を吸液して膨潤しゲル化する高分子材料であり、揮発性の有効成分を含む液体に接触させることにより当該有効成分をその内部に保持し、その後は有効成分を徐放し、所定期間にわたり所望の効果を発揮することができる。
吸水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸塩系ポリマー、ポリスルホン酸塩系ポリマー、無水マレイン酸塩系ポリマー、ポリアクリルアミド系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー等の合成ポリマーや、デンプン系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリアルギン酸系ポリマー等の天然物由来のポリマー等が挙げられ、使用形態、使用場所、吸液させる薬液等に応じて適宜使い分けられている。
【0004】
害虫に対して使用される誘引剤として、このような吸水性ポリマーに揮発性の誘引成分を保持させた製剤が種々検討されている。例えば、吸液性ポリマーを添加し、そのかさ密度が0.1~0.3である不織布製担体に、殺虫成分と誘引成分を含有する液状の薬剤組成物を湿潤状態で保持させた薬剤保持体を備えた、飛翔害虫捕獲具(特許文献1)、フェロモンを含有するポリアクリル酸系共重合体粒子およびフェロモン放出抑制剤を含む水分散型のフェロモン徐放製剤(特許文献2)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-143173号公報
【文献】特開2004-331625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
害虫を誘引する誘引成分には、糖やアミノ酸等が含まれるものがあるが、糖及びアミノ酸を含有する成分を吸水性ポリマーに保持させると、吸水性ポリマーが経時的にその形状を保てなくなり、型崩れを引き起こす(具体的に、吸水性ポリマーが溶けて液状化する)ことがあった。製剤の流通時にこのような形状崩壊が起きてしまうと製品としての信頼性が損なわれ、また、使用時において形状崩壊がおきてしまうと使用終期の確認ができず、いずれも害虫誘引剤としては性能が不十分である。
そこで、本発明は、吸水性ポリマーに糖及びアミノ酸を含む誘引成分を保持させた害虫誘引剤であって、誘引成分が吸水性ポリマーに確実に保持され、かつ吸水性ポリマーに型崩れを起こさせることのない害虫誘引剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、吸水性ポリマーとしてアクリル酸塩系ポリマーを用いることにより上記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下の(1)~(6)を特徴とする。
(1)糖及びアミノ酸を含有する誘引成分を含有する誘引液と、吸水性ポリマーとを含有し、前記吸水性ポリマーがアクリル酸塩系ポリマーを含む害虫誘引剤。
(2)前記アクリル酸塩系ポリマーのアルカリ金属イオンが、ナトリウムイオンである、前記(1)に記載の害虫誘引剤。
(3)前記アクリル酸塩系ポリマーが、アクリル酸ナトリウム共重合体及びアクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物のうちの少なくとも1つである、前記(2)に記載の害虫誘引剤。
(4)前記誘引成分が、果汁及び醸造酒からなる群から選択される少なくとも1つである、前記(1)~(3)のいずれか1つに記載の害虫誘引剤。
(5)前記糖を5~70質量%含有する、前記(1)~(4)のいずれか1つに記載の害虫誘引剤。
(6)前記吸水性ポリマーが、平均粒子径50μm~20mmの粒状である、前記(1)~(5)のいずれか1つに記載の害虫誘引剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の害虫誘引剤は、誘引液中に糖及びアミノ酸を含有する場合であっても、誘引液を吸水性ポリマーに十分に吸液させることができ、また、高温下に晒された場合や経時的にも吸水性ポリマーが型崩れを起こすことがない。さらに、害虫誘引剤中の体積の減少と共に使用の終期を容易に視認できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の害虫誘引剤について詳細に説明する。
本発明の害虫誘引剤は、糖及びアミノ酸を含有する誘引成分を含有する誘引液と、アクリル酸塩系ポリマーを含む吸水性ポリマーとを含有し、吸水性ポリマーに誘引液を吸液させることにより誘引成分が吸水性ポリマーに保持されている。
【0011】
(吸水性ポリマー)
吸水性ポリマーは水分を吸液して膨潤する高分子材料である。本実施形態において、吸水性ポリマーとしてアクリル酸塩系ポリマーを用いる。
【0012】
アクリル酸塩系ポリマーは、下記式(1)で示される繰り返し単位を基本構造とするものである。
【0013】
【化1】
【0014】
(式(1)中、Mはアルカリ金属イオンを示し、nは繰り返し単位数を示す整数である。)
【0015】
アクリル酸塩系ポリマーのアルカリ金属イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が挙げられ、ナトリウムイオンがより好ましい。
【0016】
アクリル酸塩系ポリマーとしては、ナトリウム塩のポリマーが透明性に優れ、また入手が容易であるため好ましい。アクリル酸塩系ポリマーとしては、例えば、アクリル酸ナトリウム共重合体、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1つを用いることがより好ましい。
【0017】
糖とアミノ酸を同時に配合することで、糖とアミノ酸によるメイラード反応が生じる。メイラード反応には酸化還元反応が含まれ、この酸化還元反応が吸水性ポリマーの構造に何らかの影響を与えると推測される。しかし、本発明者により吸水性ポリマーの中でもアクリル酸塩系ポリマーは糖とアミノ酸を含有する誘引成分を保持させた場合でも型崩れの発生が抑制されることが見い出され、そのメカニズムは定かではないがアクリル酸塩系ポリマーは酸化還元反応による影響を受け難いと考えられる。
【0018】
吸水性ポリマーは、常温常圧(25℃、0.10MPa)で生理食塩水を含浸させた際に、自身の重量の10~300倍の吸液倍率、すなわち吸水性ポリマー1g当たり10~300gの生理食塩水を吸収する性能を有していることが好ましく、20~200倍の吸液倍率であることがより好ましく、50~150倍の吸液倍率がさらに好ましい。吸液倍率が10倍以上であると、誘引液を吸液したのちの膨潤性が大きいため、より多くの誘引成分を保持できる。また、吸液倍率が300倍以下であると、吸液後、揮発性の誘引性分を安定的に徐放できる。
【0019】
本実施形態の害虫誘引剤に使用される吸水性ポリマーは、粒状であることが好ましい。吸水性ポリマーの乾燥状態の平均粒子径は、50μm~20mmであることが好ましく、100μm~10mmがより好ましく、150μm~5mmがさらに好ましい。乾燥状態での平均粒子径が50μm以上であることで、誘引液中に均一に分散して吸液することができ、20mm以下であることで、容器内に害虫誘引剤を収納して使用する場合に、害虫誘引剤同士、すなわち誘引液により膨潤した吸水性ポリマー同士が隙間を形成しにくく、揮散性の誘引成分を安定的に徐放できる。
【0020】
なお、誘引液吸液後の吸水性ポリマー(すなわち、害虫誘引剤)の平均粒子怪は200μm~30mmであることが好ましく、800μm~20mmがより好ましく、1000μm~15mmがさらに好ましい。誘引液吸液後の平均粒子径が200μm以上であることで、容器に収納された害虫誘引剤は容器が傾いてもこぼれにくく、また30mm以下であることで、吸水性ポリマー同士の間に隙間ができにくく、容器内でのポリマーの密度が安定的であるため、揮発性の誘引成分が安定的に揮散する。
【0021】
吸水性ポリマーは乾燥状態における粒子径が異なるものを組み合せて使用してもよいが、誘引液の吸液速度や使用終期を一定にするために粒子径が近いものを使用することが好ましい。例えば、吸水性ポリマーの最大粒子径は、平均粒子径に対して好ましくは1.5倍以下、より好ましくは1.2倍以下であることが好ましく、また、吸水性ポリマーの最小粒子径は、平均粒子径に対して好ましくは0.3倍以上、より好ましくは0.5倍以上であることが好ましい。
【0022】
(誘引液)
上記した吸水性ポリマーに吸液させる誘引液は、少なくとも糖及びアミノ酸を含有する誘引成分を含有する。誘引成分は、常温(20~30℃)で揮発する成分であることが好ましい。
【0023】
誘引成分としては、例えば、糖、アミノ酸の両方を含む誘引成分としてリンゴ、オレンジ、ミカン、モモ、ブドウ、パイナップル及びマンゴーからなる群から選択される少なくとも1種の果実に由来する果汁;日本酒、果実酒(ワイン、シードル)、ビール、紹興酒等の醸造酒;ブランデー、ウイスキー、ラム酒、ウォッカ、焼酎等の蒸留酒、その他誘引剤として黒酢、赤酢、食酢、リンゴ酢、米酢等の醸造酢;蜂蜜、液糖、メープルシロップ等の糖類;乳酸飲料、ヨーグルト、チーズ等の乳酸製品;前記した果実調の香料等が挙げられる。
これらの中でも、蚊に対する誘引性が高く、通年で入手しやすいという観点から、果汁及び醸造酒からなる群から選択される少なくとも1つを含有することが好ましく、具体的に、リンゴ、オレンジ、ミカン、モモ、ブドウ、パイナップル及びマンゴーからなる群から選択される果実に由来する果汁、並びに日本酒、果実酒(ワイン、シードル)、ビール及び紹興酒からなる群から選択される醸造酒からなる群から選択される少なくとも1つを含有することがより好ましい。
誘引成分は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合せて使用してもよい。
【0024】
誘引液中の誘引成分の含有量は、10~95質量%であることが好ましく、20~95質量%がより好ましく、50~95質量%がさらに好ましい。誘引成分の含有量が10質量%以上であると、誘引成分を使用終期まで継続して徐放することができるため好ましく、95質量%以下であると誘引成分以外の吸水性ポリマーを適正な量配合できるため好ましい。
【0025】
本実施形態の誘引液には本発明の効果を阻害しない範囲において、誘引成分以外の成分を含有することができる。その他の成分としては、例えば、防腐剤、誤食防止剤、酸化防止剤、着色剤、殺虫成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、溶媒等が挙げられる。
【0026】
防腐剤としては、例えば、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸、ε-ポリリジン、パラベン類、塩化セチルピリジニウム等が挙げられる。
【0027】
誤食防止剤としては、例えば、安息香酸デナトニウム、トウガラシ抽出物等が挙げられる。
【0028】
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン、緑茶抽出物、トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸等が挙げられる。
【0029】
着色剤としては、例えば、青色1号、黄色4号等の合成着色料、カラメル色素等の天然色素等が挙げられる。
【0030】
殺虫成分としては、例えば、ジクロルボス、フェニトロチオン、IBTA、IBTE、プロポクスル、フェノブカルブ、アミドフルメト、ジノテフラン、フィプロニル、ヒドラメチルノン、カルバリル等が挙げられる。
【0031】
紫外線吸収剤としては、例えば、トリスレゾルシノールトリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物等が挙げられる。
【0032】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0033】
溶媒としては、例えば、水及び有機溶媒が挙げられる。水は、例えば、蒸留水、水道水、脱イオン水等が挙げられ、有機溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0034】
誘引液は、誘引成分と所望によりその他の成分を混合、溶解させることにより作製することができる。
【0035】
なお、吸水性ポリマーの誘引液の吸液性及び誘引成分の徐放性を阻害しないよう、常温(20~30℃)で揮発しない不揮発性成分の誘引液中の含有量が0.1~60質量%とすることが好ましい。誘引液中の不揮発成分の含有量が60質量%を超えると、揮発性成分が揮発し含有量が少なくなるにつれて吸水性ポリマーに保持される不揮発成分割合が多くなり、誘引成分の揮発性が妨げられやすくなるため、誘引成分の徐放性が保たれなくなる場合がある。不揮発成分の含有量は、1~40質量%であることがより好ましい。
【0036】
(害虫誘引剤の製造方法)
本実施形態の害虫誘引剤の製造方法は、少なくとも誘引成分を含有する誘引液を吸水性ポリマーに吸液させることを含む。吸水性ポリマーに誘引液を吸液させる方法としては、例えば、誘引液に吸水性ポリマーを浸漬し膨潤させる方法、吸水性ポリマーに誘引液を滴下、噴射、塗布等して誘引液を含浸させて膨潤させる方法等が挙げられるが、誘引液に吸水性ポリマーを浸漬させる方法が簡便であるため好ましい。
【0037】
吸水性ポリマーは、誘引液100質量部に対して0.1~30質量部の範囲で使用することが好ましく、1~20質量部がより好ましく、5~10質量部がさらに好ましい。吸水性ポリマーと誘引液の配合比が上記範囲となるようにすることで、誘引液をロスなく吸水性ポリマーに吸液させることができる。
【0038】
このようにして得られた本実施形態の害虫誘引剤は、糖を5~70質量%の範囲で含有することが好ましい。糖を5質量%以上含有することで害虫の誘引効果を発揮することができ、70質量%以下で含有することで揮散性の誘引成分を使用終期まで安定して徐放させることができる。
なお、害虫誘引剤中の糖の含有量は、糖度計(例えば、株式会社アタゴ製ポケット糖度計「PAL-1」(品番))によりBrix値として測定することができる。
【0039】
(使用場所)
本実施形態の害虫誘引剤は、少なくとも一部が開口した容器等に充填し、リビングルーム、寝室、客室、台所、玄関、トイレ等の室内や、庭先、公園等の屋外、ペットの小屋の周り等の任意の場所に設置して使用することができる。
例えば、害虫を捕集する捕集部を備えた捕獲器に本実施形態の害虫誘引剤を備えることで、害虫誘引剤に誘引された害虫を捕獲器により捕獲することができる。なお、捕集部としては、例えば、粘着シート、吸引器等が好適に使用できるが、捕集した害虫の回収や取り換えの簡便さ、衛生面から、粘着シートであることが好ましい。
【0040】
(対象害虫)
本実施形態の害虫誘引剤により誘引される害虫としては、特に限定されないが、例えば、飛翔害虫や匍匐害虫が挙げられる。飛翔害虫としては、例えば、アカイエカ,コダカアカイエカ,チカイエカ等のイエカ、ヒトスジシマカ,ネッタイシマカ等のヤブカ、ハマダラカ、ユスリカ、ガガンボ等の蚊類;キイロショウジョウバエ、カスリショウジョウバエ、クロショウジョウバエ、オオショウジョウバエ、ノミバエ、オナジショウジョウバエ等のコバエ類;キンバエ、クロバエ、イエバエ等のハエ類;アシナガバチ、スズメバチ、クマバチ、ミツバチ等のハチ類等が挙げられ、匍匐害虫としては、例えば、ワモンゴキブリ、チャバネゴキブリ、クロゴキブリ等のゴキブリ類;ヒメアリ、クロヤマアリ、アミメアリ、トビイロケアリ等のアリ類;アオズムカデ、セスジアカムカデ、トビズムカデ等のムカデ類;ヤスデ類;ダンゴムシ類;ワラジムシ類;ナメクジ類;ゲジゲジ類等が挙げられる。
【実施例
【0041】
以下、具体的な試験例に基づき本発明の蚊の誘引方法を更に説明するが、本発明は下記例に何ら制限されるものではない。
【0042】
(実施例1)
1.誘引液の作製
リンゴ果汁(日本果実加工株式会社製「50°BXりんご透明果汁」(商品名))を50質量%、日本酒(宝酒造株式会社製 料理用清酒「酒菜」(商品名))を50質量%の割合で混合して、誘引液を作製した。なお、リンゴ果汁及び日本酒は糖及びアミノ酸を含んでいる。
【0043】
2.害虫誘引剤及び試験検体の作製
上記作製した誘引液をプラスチック製カップ(直径φ8cm、高さ10cm、容量200mL)に100g充填した。これに吸水性ポリマーとして、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物(SDPグローバル株式会社製「サンフレッシュST-250」(商品名)、平均粒子径:510μm)5gを投入し、吸水性ポリマーに誘引液を含浸させて害虫誘引剤を得た。
株式会社アタゴ製ポケット糖度計「PAL-1」により害虫誘引剤中の糖の含有量を測定したところ、31.1質量%であった。また害虫誘引剤(吸液後の吸水性ポリマー)の平均粒子径は1.2mmであった。
その後、プラスチック製カップの開口部にアルミニウム製フィルムを熱溶着させ、カップ内を密封し、害虫誘引剤入り検体を得た。
【0044】
(実施例2)
吸水性ポリマーとしてアクリル酸ナトリウム共重合体(AKChemTech Co.,LTD製「ASCO HISOBEAD」(商品名)、平均粒子径:2.8~4mm)10gを用いた以外は実施例1と同様にして、害虫誘引剤及び当該害虫誘引剤入りの検体を作製した。
害虫誘引剤中の糖の含有量は31.1質量%であり、害虫誘引剤(吸液後の吸水性ポリマー)の平均粒子径は約8mmであった。
【0045】
(比較例1)
吸水性ポリマーとして変性ポリアルキレンオキサイド(住友精化株式会社製「アクアコーク TWB」(商品名)、平均粒子径:4mm×4mm×2mmの直方体)10gを用いた以外は実施例1と同様にして、害虫誘引剤及び当該害虫誘引剤入りの検体を作製した。
害虫誘引剤中の糖の含有量は31.1質量%であり、害虫誘引剤(吸液後の吸水性ポリマー)の平均粒子径は10mm×10mm×8mmであった。
【0046】
(比較例2)
吸水性ポリマーとしてイソブチレン-無水マレイン酸共重合体架橋物(株式会社クラレ製「KIゲル-201K」(商品名)、平均粒子径:850μm)5gを用いた以外は実施例1と同様にして、害虫誘引剤及び当該害虫誘引剤入り検体を作製した。
害虫誘引剤中の糖の含有量は31.1質量%であり、害虫誘引剤(吸液後の吸水性ポリマー)の平均粒子径は1.2mmであった。
【0047】
<試験方法>
各例における検体を、40℃に設定した恒温槽に3ヶ月間保管した。保管後の検体の外観を目視で観察し、下記基準に従って形状の変化及び褐変の有無を評価した。
同様に、検体を50℃に設定した恒温槽に1ヶ月間保管し、保管後の検体の外観を目視で観察し、下記基準に従って形状の変化を評価した。
結果を表1に示す。
〔評価基準 害虫誘引剤の形状〕
○:保管前と比較して害虫誘引剤の形状に変化はない。
×:害虫誘引剤の形状が崩れ、液状化している。
〔評価基準 害虫誘引剤の褐変〕
○:保管前と比較して害虫誘引剤の褐変がほとんど生じない。
×:害虫誘引剤が目視で判断できるほど褐変する。
【0048】
【表1】
【0049】
表1の結果より、実施例1、2は経時変化が起こらず、高温保管時においても害虫誘引剤の形状を維持することができた。これに対し、比較例1は40℃、3ヶ月保管での経時変化は起こらなかったが、50℃、1ヶ月保管で吸水性ポリマーの崩壊が見られた。そして、比較例2は40℃、3ヶ月保管、50℃、1ヶ月保管のいずれにおいても吸水性ポリマーが崩壊し、液状化した。
よって、アクリル酸塩系ポリマーは糖及びアミノ酸を含有する誘引成分を含有する誘引液を十分に吸液し、さらに経時的にも吸水性ポリマーが型崩れを起こすことなく、誘引成分を徐放できることがわかった。
また、実施例1は高温保管時において害虫誘引剤の褐変も起こらず、害虫誘引剤の外観も良好に維持できることが確認された。