(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】液体を蒸気に変えるための装置、及び加熱電力を制御するための関連する方法
(51)【国際特許分類】
B01D 1/02 20060101AFI20231226BHJP
F22B 1/28 20060101ALI20231226BHJP
C25B 15/08 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
B01D1/02
F22B1/28 Z
C25B15/08 302
(21)【出願番号】P 2018515968
(86)(22)【出願日】2016-09-28
(86)【国際出願番号】 EP2016073081
(87)【国際公開番号】W WO2017055335
(87)【国際公開日】2017-04-06
【審査請求日】2019-08-02
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-08
(32)【優先日】2015-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ・シャトルー
【合議体】
【審判長】池渕 立
【審判官】山本 佳
【審判官】井上 猛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0025341号明細書(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0292761号明細書(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1151705号明細書(EP,A1)
【文献】特表2013-515862号公報(JP,A)
【文献】特表2014-503689号公報(JP,A)
【文献】特開2008-086851号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D1/00-5/00
B01J7/00-7/02
F22B1/00-3/08
F24H1/10-1/16
C25B1/00-9/20
C25B13/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温蒸気電解槽のための、液体を蒸気に変えるための装置であって、
-蒸発面(17)と、
-前記蒸発面(17)に接続された液体入口(2)と、
-前記蒸発面(17)を加熱するための手段(7)と、
-前記液体入口(2)に配置された流れ制御器(9)であって、前記装置が、前記流れ制御器(9)の様々な流量設定ポイントに対応する様々な
液体の流量を送るように構成される、流れ制御器(9)と、
-前記流れ制御器(9)によって前記液体入口(2)に注入される液体流量(D
L)を制御するように構成された制御ユニットと、
を含み、
-前記装置はまた、
・前記蒸発面(17)を含むチャンバー(6)であって、前記チャンバー(6)が、前記液体入口(2)及び蒸気出口(4)に接続された開口を有し
、基準温度(T
ref)が、液体を蒸気に変えるための前記装置の動作に対して選択される平均温度に対応し、前記基準温度が、前記液体の蒸発温度より高い、チャンバー(6)と、
・前記蒸発面(17)上に配置された温度センサー(8)と、
を含み、
-前記制御ユニットは、流量(D
L)、前記基準温度(T
ref)及び前記温度センサー(8)によって測定された温度(T)に応じて、所定の制御法則に従って前記加熱するための手段(7)の加熱電力(P)を制御するように構成され、前記基準温度(T
ref)は、150℃から250℃の範囲であり、
前記所定の制御法則は、
-前記流れ制御器(9)の流量設定ポイントがゼロである場合、前記加熱するための手段(7)の前記加熱電力(P)を制御して、前記基準温度(T
ref)と実質的に等しい前記チャンバー(6)の温度(T)を得るステップと、
-前記流れ制御器(9)の流量設定ポイントがゼロでない場合、前記流量(D
L)及び係数(R
L)に応じて理論的加熱電力(P
T)を計算するステップと、
-前記温度センサー(8)によって測定された前記温度(T)に応じて、前記理論的加熱電力(P
T)を補正するステップと、
-補正された前記理論的加熱電力を加えるために前記加熱するための手段(7)を制御するステップと、
を含み、
前記理論的加熱電力(P
T)を補正するステップは、
-前記測定温度(T)が第1温度閾値(T
1)より低い場合、前記加熱するための手段(7)の最大電力(P
MAX)を100で割り、第1係数(A
1)を乗じて加えることによって電力(P)を補正するステップであって、前記第1温度閾値(T
1)は前記液体の蒸発温度(T
VAP)と前記基準温度(T
ref)との間で選択される、ステップと、
-前記測定温度(T)が第2温度閾値(T
2)より低い場合、前記加熱するための手段(7)の最大電力(P
MAX)を100で割り、前記測定温度(T)と前記第2温度閾値(T
2)との間の温度差
(T-T
2
)を乗じ、第2係数(A
2)を乗じて引くことによって電力(P)を補正するステップであって、前記第2温度閾値(T
2)は前記基準温度(T
ref)より高くなるように選択される、ステップと、
-前記測定温度(T)が前記第2温度閾値(T
2)より高い場合、前記加熱するための手段(7)の最大電力(P
MAX)を100で割り、前記測定温度(T)と前記第2温度閾値(T
2)との間の温度差
(T-T
2
)を乗じ、第3係数(A
3)を乗じて引くことによって電力(P)を補正するステップと、
-前記測定温度(T)が第3温度閾値(T
3)より高い場合、前記加熱するための手段(7)の最大電力(P
MAX)を100で割り、第4係数(A
4)を乗じて引くことによって電力(P)を補正するステップであって、前記第3温度閾値(T
3)は前記第2温度閾値(T
2)より高くなるように選択される、ステップと、
を含むことを特徴とする、液体を蒸気に変えるための装置。
【請求項2】
前記温度センサー(8)は、前記液体入口(2)に接続された端部とは反対側の前記蒸発面(17)の端部に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の液体を蒸気に変えるための装置。
【請求項3】
前記蒸発面(17)はらせん形状を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の液体を蒸気に変えるための装置。
【請求項4】
前記装置はまた、前記チャンバー(6)内に現れるガス入口(12)と、前記ガス入口(12)に配置された第2流れ制御器(11)とを含み、前記制御ユニットは、前記第1流れ制御器(9)の前記流量(D
L)、前記第2流れ制御器(11)の加熱されるガスの流量(D
g)、及び前記温度センサー(8)によって測定された温度(T)に応じて、所定の制御法則に従って前記加熱するための手段(7)の加熱電力(P)を制御するように構成されることを特徴とする、請求項1から3の何れか1項に記載の液体を蒸気に変えるための装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体を蒸気に変えるための装置の加熱電力(P)を制御する方法であって、
前記装置が、前記チャンバー(6)内に現れるガス入口(12)と、前記ガス入口(12)に配置された第2流れ制御器(11)とを含む場合、前記理論的加熱電力(P
T)の計算は、前記加熱するための手段(7)の最大電力(P
MAX)を100で割った値に、(流量(D
L)/係数(R
L)+前記第2流れ制御器(11)の加熱されるガスの流量(D
g)/第2係数(R
G))の値を乗じたものに相当することを特徴とする、加熱電力を制御する方法。
【請求項6】
前記係数(R
L)は、考慮される液体の蒸発潜熱及び蒸気の比熱容量に従って決定されることを特徴とする、請求項5に記載の加熱電力を制御する方法。
【請求項7】
前記基準温度(T
ref)は、前記液体の蒸発温度(T
VAP)よりも高いことを特徴とする、請求項5又は6に記載の加熱電力を制御する方法。
【請求項8】
前記理論的加熱電力(P
T)を補正するステップは、前記測定温度(T)が第4温度閾値(T
4)より高い場合、前記加熱するための手段(7)の最大電力(P
MAX)を100で割った値に第5係数(A
5)を乗じて引くことによって電力(P)を補正するステップであって、前記第4温度閾値(T
4)は前記第3温度閾値(T
3)より高くなるように選択される、ステップを含むことを特徴とする、請求項5から7の何れか一項に記載の加熱電力を制御する方法。
【請求項9】
前記理論的加熱電力(P
T)を補正するステップは、
-補正された電力(P)の値がゼロ未満である場合、その電力(P)をゼロに設定するステップと、
-補正された電力(P)の値が最大加熱電力よりも大きい場合、その電力(P)を最大加熱電力に設定するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項8に記載の加熱電力を制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸気発生器の分野に関し、特に、高温水蒸気電解槽(HTSE)に使用される蒸気発生器に関する。
【0002】
本開示は、より具体的には、低蒸気流量、特に10g/h~10kg/hの範囲の蒸気流量を特に供給し、一定圧力、特に大気圧又は数十bar下で作動することができる、液体を蒸気に変えるための装置に関する。
【0003】
本開示はまた、液体を蒸気に変えるための装置の加熱電力を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
高温水蒸気電解槽(HTSE)は、電気的に直列に接続され、それぞれが固体酸化物電解質膜を挟んだ2つの電極、すなわちカソード及びアノードから形成された電解セルの積層体に電流を印加することによって水蒸気から水素を発生させる電気化学装置である。通常、水蒸気は電気で駆動される各セルのカソードに導入され、水蒸気の電気化学還元反応は、結果としてカソードで水素を形成する。
【0005】
一般に、電解槽の所定の作用点に対してそれに印加される電流が存在し、電解槽に導入される水蒸気又は蒸気の流れは、電解槽に印加される電流の強度に応じて計算される。電流強度は通常、電解槽の作用範囲の0~100%変動し得るため、発生する蒸気の流れはまた、容量の0~100%線形に変動できるべきであり、また蒸気のみで作られるべきである。
【0006】
さらに、電解槽は、電流/ガス流の不均一性に対して非常に敏感なシステムであり、そのような不均一性は実際に、電解槽の早期老化を引き起こすことができる。例えば、蒸気流量がその設定ポイント値の付近で変動する場合、電解槽の作用点の不安定性が観察され得、結果としてセル電圧の変動をもたらし、それは早期老化の原因となる。蒸気流量のより悪くて強い変動は、結果として数十~数百mbarの圧力変動をもたらし、それはシールの損傷あるいは電気化学セルの割れをもたらすのに十分であり得る。従って、可能な限り均一で規則的な蒸気流量が望ましい。
【0007】
蒸気発生装置は通常、液体の蒸発を生じさせるために、その上に堆積された液体を有する加熱蒸発面を含む。例えば、特許文献1には、アイロンがけを改善するために蒸気を発生させることができる洗濯用アイロンが記載されている。発生する蒸気の量は、加熱面上に堆積された液体の流量を調節することによって、経時的に調整することができる。
【0008】
しかしながら、加熱面上での液体の流量の変動は、蒸気パフとも呼ばれる一時的過圧を誘発する。このような一時的過圧は、液体が加熱面の大部分、特に沸点より高い温度である領域を覆い、制御されていない局所的な蒸発を引き起こすという事実に起因する。そのような一時的過圧はまた、流量設定ポイントの変化に対応する一時的な局面にも現れる。
【0009】
バッファー容積の追加は一時的過圧を制限する解決策であり得るが、この解決策は、特に大気圧よりも高い圧力で作動するように設計された蒸発器の場合、設定ポイントの変化に対する蒸気発生器の反応性を減少させ、蒸発器の複雑さを増大させるという欠点を有する。さらに、この解決策は過圧の振幅を減少させるが、それらを抑制するものではない。
【0010】
本発明の技術的課題は、液体を蒸気に変えるための装置の一時的過圧を制限することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本開示は、流量に応じて、かつ加熱面の温度に応じて加熱面の加熱電力を調節することによって、この技術的課題の解決を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、第1態様によると、本発明は、高温蒸気電解槽のための、液体を蒸気に変えるための装置に関し、この装置は、
-蒸発面と、
-蒸発面に接続された液体入口と、
-蒸発面を加熱するための手段と、
-液体入口のレベルに配置された流れ制御器と、
-流れ制御器によって液体入口に注入される液体の流量を制御するように構成された制御ユニットと、
-蒸発面を含むチャンバーであって、液体入口及び蒸気出口に接続された開口を有する、チャンバーと、
-蒸発面上に配置された温度センサーと、
を含む。
【0014】
制御ユニットは、流量及び温度センサーによって測定された温度に応じて、所定の制御法則に従って加熱手段の加熱電力を制御するように構成され、前記所定の制御法則は、各流量に対して、チャンバーの基準温度と温度センサーによって測定された温度との間の差に対して非線形に、かつ反比例して変化する。
【0015】
本発明は従って、加熱面を含むチャンバーにおける流量及び残留温度に応じて、加熱面の温度を制御することを可能にする。従って、本発明は、液体の蒸発を可能にするために必要な電力に関して、加熱面の過熱又は過熱不足を回避し、故に一時的過圧を制限する。
【0016】
流量変化の局面がまた、一時的過圧を回避するために予期される。制御法則に対して反比例する非線形変化は、低流量において、基準温度を超えて加熱面を合理的に過熱することによる流量の増加を予期することを可能にする。反対に、高流量において、制御法則の変化は、加熱面の加熱電力を基準温度未満に合理的に低下させることによる流量の低下を予期することを可能にする。
【0017】
加熱面の制御はまた、低平均温度、すなわち液体沸点を100℃程度超える温度での作動を可能にし、それは熱損失を制限する。
【0018】
さらに、この装置は単一の温度センサーを必要とするため、実施が特に簡単である。好ましくは、温度センサーは、液体入口に接続された端部とは反対側の蒸発面の端部のレベルに配置される。「蒸発面の端部」は、液体入口に接続された端部とは反対側の端部から開始して、蒸発面の1/3の長さまでずっと延びる蒸発面の部分を意味する。液体入口とは反対側に温度センサーを配置することにより、センサーと液体との相互作用を制限することができる。
【0019】
一実施形態によると、装置はまた、チャンバー内に現れるガス入口と、ガス入口のレベルに配置された第2流れ制御器とを含み、制御ユニットは、第1流れ制御器の流量、第2流れ制御器の流量、及び温度センサーによって測定された温度に応じて、所定の制御法則に従って加熱手段の加熱電力を制御するように構成される。この実施形態は、液体の蒸発をガスと組み合わせて制御された濃度を有するガス状混合物を形成することを可能にする。変形例として、装置は、本発明を変更することなく、複数のガス入口を含むことができる。
【0020】
第2態様によると、本発明は、本発明の第1態様による装置の加熱電力を制御する方法に関し、本方法は、
-流量設定ポイントがゼロである場合、加熱手段の加熱電力を制御して、基準温度と実質的に等しいチャンバー温度を得るステップと、
-流量設定ポイントがゼロでない場合、流量/係数に相当する理論的加熱電力を計算するステップと、
-温度センサーによって測定された温度に応じて、理論的加熱電力を補正するステップと、
-補正された理論的加熱電力を加熱手段に印加するステップと、
を含む。
【0021】
加熱面に印加される理論的加熱電力により、実用上加熱面の長さ全体に液体を分配することができるが、これは、特に流量設定ポイントの変化において適切な作動を得るには十分ではない。実際に、低流量では、基準温度を超えて加熱面を合理的に過熱することによる流量の増加を予期すべきである。反対に、低流量では、加熱面が大きい長さにわたって液体で覆われているため、基準温度に加熱面全体を維持することはもはや不可能である。しかしながら、この場合、単に気化が非常に乏しい領域であるチャンバーの裏側に液体が到達するリスクがあると、多大な電力を印加する必要があるかもしれない。本発明は従って、気化される各液体流に対して、測定温度に応じて加熱面に印加される電力の補正を定義することを含む。
【0022】
一実施形態によると、装置がチャンバー内に現れるガス入口と、ガス入口のレベルに配置された第2流れ制御器とを含む場合、理論的加熱電力の計算は、パーセンテージとしての加熱手段の最大電力×(流量/係数+第2流れ制御器の流量/第2係数)に相当する。この実施形態は、加熱されるガスの流量/考慮されるガスの比熱容量を考慮に入れた第2係数の寄与を加えることを可能にする。好ましくは、第1係数は、考慮される液体の蒸発潜熱及び蒸気の比熱容量に従って決定され、次いで、熱損失を考慮に入れるために実験的試験によって改良される。
【0023】
一実施形態によると、基準温度は、液体を蒸気に変えるための装置の作動に対して選択された平均温度に相当し、液体の蒸発温度よりも高い。
【0024】
一実施形態によると、理論的加熱電力を補正するステップは、
-測定温度が第1温度閾値より低い場合、パーセンテージとしての加熱手段の最大電力×第1係数を加えることによって電力を補正するステップであって、第1温度閾値は液体の蒸発温度と基準温度との間で選択される、ステップと、
-測定温度が第2温度閾値より低い場合、パーセンテージとしての加熱手段の最大電力×測定温度と第2温度閾値との間の温度差×第2係数を引くことによって電力を補正するステップであって、第2温度閾値は基準温度より高くなるように選択される、ステップと、
-測定温度が第2温度閾値より高い場合、パーセンテージとしての加熱手段の最大電力×測定温度と第2温度閾値との間の温度差×第3係数を引くことによって電力を補正するステップと、
-測定温度が第3温度閾値より高い場合、パーセンテージとしての加熱手段の最大電力×第4係数を引くことによって電力を補正するステップであって、第3温度閾値は第2温度閾値より高くなるように選択される、ステップと、
を含む。
【0025】
この実施形態は、少なくとも基準温度に等しい温度で作動チャンバーを制御し、蒸気濃縮のリスクを回避することを可能にする。その制御は、基準温度に装置の作動温度を集めることを可能にし、ここで、作動温度は第1温度閾値と第3温度閾値との間の範囲を有する。提供されたアルゴリズムは、測定温度による流量の変化への自己適合を可能にし、それは装置使用の履歴を反映する。実際に、実用上は、測定温度はその前の瞬間に蒸発した液体量に反比例する。
【0026】
一実施形態によると、理論的加熱電力を補正するステップは、測定温度が第4温度閾値より高い場合、パーセンテージとしての加熱手段の最大電力×第5係数を引くことによって電力を補正するステップであって、第4温度閾値は第3温度閾値より高くなるように選択される、ステップを含む。
【0027】
第4温度閾値は、作動温度の範囲の上限レベルにおいて、温度制限効果を強調することを可能にする。
【0028】
一実施形態によると、理論的加熱電力を補正するステップは、
-補正された電力値がゼロ未満である場合、その電力をゼロに設定するステップと、
-補正された電力値が最大加熱電力よりも大きい場合、その電力を最大加熱電力に設定するステップと、
を含む。
【0029】
この実施形態により、加熱面に印加される電力設定ポイントを制限することができる。
【0030】
本発明は、単に添付図面と関連する例として提供された以下の説明を読むことで、より良く理解されるだろう。ここで、同一の参照符号は、同一又は類似の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態による液体を蒸気に変えるための装置を簡略化して示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による
図1の装置の温度に従う加熱面の電力の制御法則である。
【
図3】本発明の一実施形態による
図1の装置の加熱面の電力を制御するステップを示すフローチャートである。
【
図4】本発明の第2実施形態による
図1の装置の温度に従う加熱面の電力の4つの制御法則を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、蒸気出口4と、それ自体液体入口1から供給される第1の従来型流れ制御器9に結合された液体入口2とを備えるチャンバー6を含む、液体を蒸気に変えるための装置を示す。第1流れ制御器9は、例えば熱質量流又はコリオリ制御器などの市販の制御器であってもよい。チャンバー6は、液体の蒸気への転化を保証する異なる要素、特に、例えば円形の断面を有し、加熱面7を使用してその中に挿入される蒸発面17としてワイヤ電気加熱抵抗器を有するらせん状構造物3を含む。らせん状構造物3の下部には、電気抵抗器に接触して温度センサー8が設けられている。冷スポットを回避するために、蒸気発生器の壁には断熱ジャケット5が配置されている。好ましくは、ジャケット5は、液体の沸点よりもはるかに高い温度に維持される。
【0033】
図1の非限定的な例において、ガスライン10によって駆動されるガス流制御器11は、入口12によって蒸気発生器に接続され、ガス状混合物の形成を可能にする。
【0034】
制御ユニットは、図示されていないが、第1制御器9、第2制御器11、温度センサー8、及び電気抵抗器に接続され、第1制御器9の流量DL、第2制御器の流量Dg、及び電気抵抗器の加熱電力Pを制御する。電気抵抗器の加熱電力Pは、流量DL及びDgと、温度センサー8によって測定された温度Tとに応じて、制御法則に従って制御される。
【0035】
図2は、温度Tに応じた、2つの特定の流量D
L及びD
gに対する電力Pのそのような制御法則を示す。制御法則は基準温度T
refを中心とし、基準温度T
refと測定温度Tとの間の差に対して非線形的に、かつ反比例して変化する。電力Pは、ゼロワットと加熱面7の最大電力P
MAXとの間で示される。理論電力P
Tは、流量D
L及びD
gが低い場合は制御法則の部分20に位置し、流量の増加を予期できるが、なぜならシステムはT
refより高い温度で作動しているからである。反対に、部分21は、流量D
L及びD
gが非常に大きい場合の理論電力P
Tを示し、同時にこれらの流量の減少を予期できるが、なぜならシステムはT
refより低い温度で作動しているからである。
【0036】
図3は、比較、加算、減算、又は乗算などの非常に単純な関数で実施される電力Pを制御する方法のフローチャートを示す。フローチャートは、加熱面7に印加される電力Pの値をもたらす試験及び計算の自動ループを示す。
【0037】
第1ステップ30において、発生器が液体を気化しない場合、すなわち流れ制御器9がゼロ設定ポイントを有する場合、電力Pは、ヒーターケーブルを基準温度Trefに維持するように適合される。この制御は、閾値又はPID型の従来の制御によって実行され得る。
【0038】
ステップ31において、発生器が液体を気化する場合、すなわち液体流れ制御器9がゼロより大きい設定ポイントを有する場合、理論電力PTは、以下の式:
PT=PMAX/100・(DL/RL+DG/RG)
に従って、気化される液体の流量DL、並びに考慮される液体の蒸発潜熱及び蒸気の比熱容量を考慮に入れた係数RLに従って、また、加熱されるガスの流量DG/考慮されるガスの比熱容量を考慮に入れた係数RGの寄与に従って計算される。
【0039】
ヒーターケーブルに印加される電力Pは従って、この理論値PTで初期化され、温度Tに応じて次のステップで適合される。
P=PT
【0040】
ステップ32において、測定温度Tは、液体の蒸発温度Tvapと基準温度Trefとの間で選択された第1温度閾値T1と比較される。測定温度Tが第1温度閾値T1よりも低い場合、電力Pは、以下の式:
T<T1 → P=P+A1・PMAX/100
に従って、1より大きい正の係数A1だけ増加する。
【0041】
ステップ33において、測定温度Tは、基準温度Trefより大きい第2温度閾値T2と比較される。測定温度Tが第2温度閾値T2よりも低い場合、電力Pは、以下の式:
T<T2 → P=P-A2・(T-T2)・PMAX/100
に従って、1より小さい正の係数A2だけ増加する。
【0042】
ステップ34において、測定温度Tは第2温度閾値T2と比較される。測定温度Tが第2温度閾値T2よりも高い場合、電力Pは、以下の式:
T>T2 → P=P-A3・(T-T2)・PMAX/100
に従って、1より小さい正の係数A3だけ線形に減少する。
【0043】
ステップ35において、測定温度Tは、第2温度閾値T2より高い第3温度閾値T3と比較される。測定温度Tが第3温度閾値T3より高い場合、電力Pは、以下の式:
T>T3 → P=P-A4・PMAX/100
に従って、1より大きい正の係数A4だけ減少する。
【0044】
ステップ36において、測定温度Tは、第3温度閾値T3より高い第4温度閾値T4と比較される。測定温度Tが第4温度閾値T4より高い場合、電力Pは、以下の式:
T>T4 → P=P-A5・PMAX/100
に従って、1より大きい正の係数A5だけ減少する。
【0045】
ステップ37及び38は、電力Pの値を制限することができる。上記計算の結果がゼロより小さい値Pを提供する場合、Pはゼロに設定される。上記計算の結果がPMAXより大きい値Pを提供する場合、PはPMAXに設定される。最終的に、ステップ39において、電力設定ポイントPが加熱面7に印加され、その後、試験ループが再度始めから開始される。
【0046】
図4は、ガス供給物を水素及び窒素と一体化する、水を蒸気に変えるための装置の特定のケースを示す。最大水流量は6,400g/hであり、水素の最大流量は500l/hであり、窒素の最大流量は1,000l/hである。加熱抵抗器の最大電力P
MAXは、6,000Wである。好ましくは、基準温度T
refは、150℃~250℃の範囲である。
図4の例では、基準温度T
refは200℃、すなわち水の沸点より100℃高く設定される。
【0047】
ステップ30において、発生器が液体を気化しない場合、すなわち流れ制御器9がゼロ設定ポイントを有する場合、電力Pは、ヒーターケーブルを基準温度Tref、すなわち200℃に維持するように適合される。
【0048】
ステップ31において、発生器が液体を気化する場合、すなわち流れ制御器9がゼロより大きい設定ポイントを有する場合、理論電力PTは、以下の式:
PT=PMAX/100・(DH2O/80+DH2/500+DN2/500)
に従って、気化される水の流量(DH2O(g/h))、水素の流量(DH2(l/h))、及び窒素の流量(DN2(l/h))に応じて計算される。
【0049】
数値80及び500は計算によって決定され、次いで実験的試験によって検証及び改良されている:
・流量DH2Oがg/hであると分かると、比DH2O/80は、1g/hの水を気化するのに必要な総電力PMAXのパーセンテージ、すなわち流量D0=1g/h=2.78.10-7kg/sの水を20から100℃まで加熱するのに必要な電力P1(1)、蒸発のためのP2(2)、及び発生した蒸気を100から200℃まで加熱するためのP3(3)に相当する。
(1)P1=D0.Cpwater.(20-100)=0.093W ここで、Cpwater=4,195J/(kg.K)
(2)P2=D0.CLvapor=0.627W ここで、CLvapor=2.26.106J/kg
(3)P3=D0.Cpvapor.(100-100)=0.056W ここで、Cpvapor=2,030J/(kg.K)
理論比は故に、PMAX/100/(P1+P2+P3)=77.2である。
この理論比は、熱損失を考慮に入れておらず、実験的に検証されるべきであり、制御アルゴリズムで値80の選択につながっている。
・流量DH2がl/hであると分かると、比DH2/500は、1l/hの水素を加熱するのに必要な総電力PMAXのパーセンテージ、すなわち流量DH2=1l/h=2.78.10-4l/sの水素を20から200℃まで加熱するのに必要な電力PH2に相当する。
PH2=DH2.CpH2.(20-200)=0.035W ここで、CpH2=1.27J/(l.K)
理論比は故に、PMAX/100/PH2=1,695である。
この理論比は、熱損失を考慮に入れておらず、実験的に検証されるべきであり、制御アルゴリズムで値500の選択につながっている。
・N2ガスに対して同種類の計算が実施される。流量DN2がl/hであると分かると、比DN2/500は、1l/hの窒素を加熱するのに必要な総電力PMAXのパーセンテージ、すなわち流れDN2=1l/h=2.78.10-4l/sの窒素を20から200℃まで加熱するのに必要な電力PN2に相当する。
PN2=DN2.CpN2.(20-200)=0.036W ここで、CpN2=1.28J/(l.K)
理論比は故に、PMAX/100/PN2=1,685である。
この理論比は、熱損失を考慮に入れておらず、実験的に検証されるべきであり、制御アルゴリズムで値500の選択につながっている。
【0050】
ステップ32において、測定温度Tは、150℃に選択された第1温度閾値T1と比較される。測定温度Tが150℃よりも低い場合、電力Pは、以下の式:
T<150℃ → P=P+15・PMAX/100
に従って、値15に相当する係数A1だけ減少する。
【0051】
この15%の増加は、蒸気発生器の能力試験の間に実験的に決定された。同じことが、係数A2、A3、A4及びA5に対しても行われた。
【0052】
ステップ33において、測定温度Tは、250℃に選択された第2温度閾値T2と比較される。測定温度Tが250℃よりも低い場合、電力Pは、以下の式:
T<250℃ → P=P-0,15・(T-250)・PMAX/100
に従って、値0.15に相当する係数A2だけ線形に減少する。
【0053】
ステップ34において、測定温度Tは第2温度閾値T2と比較される。測定温度Tが250℃よりも高い場合、電力Pは、以下の式:
T>250℃ → P=P-0,3・(T-250)・PMAX/100
に従って、値0.3に相当する係数A3だけ線形に減少する。
【0054】
ステップ35において、測定温度Tは、300℃に選択された第3温度閾値T3と比較される。測定温度Tが300℃よりも高い場合、電力Pは、以下の式:
T>300℃ → P=P-5・PMAX/100
に従って、値5に相当する係数A4だけ、すなわち5%減少する。
【0055】
ステップ36において、測定温度Tは、310℃に選択された第4温度閾値T4と比較される。測定温度Tが310℃よりも高い場合、電力Pは、以下の式:
T>310℃ → P=P-5・PMAX/100
に従って、値5に相当する係数A5だけ、すなわち5%減少する。
【0056】
変形例として、温度閾値及び係数の値は、本発明を変更することなく変えることができる。例えば、第1温度閾値T1は、140℃~175℃の範囲であり得る。第2温度閾値T2は、220℃~280℃の範囲であり得る。第3温度閾値T3は、280℃~350℃の範囲であり得る。第4温度閾値T4は、300℃~350℃の範囲であり得る。係数A1、A2及びA3は、1.05~10の範囲であり得る。係数A4及びA5は、0.1~1の範囲であり得る。
【0057】
図4は、製造範囲全体を網羅する典型的な製造値、100g/h、2,000g/h、4,000g/h及び6,000g/hに対応する、測定温度Tに対する電力Pの変動を示す。理論電力P
Tは、低い流量(100g/h、2,000g/h)で基準温度(200℃)より上に位置し、高い流量(4,000g/h及び6,000g/h)でこの温度より下に位置する。
【0058】
例えば
図4に示すような本発明で実施された試験は、一定流量において長い作動時間にわたる安定な制御を可能にし、かつ蒸気を使用して下流の設備に悪影響を及ぼし得る過圧を作り出すことなく顕著な流量変化を可能にすることで、完全に十分に証明された。
【符号の説明】
【0059】
1 液体入口
2 液体入口
3 らせん状構造物
4 蒸気出口
5 断熱ジャケット
6 チャンバー
7 加熱面
8 温度センサー
9 第1の従来型流れ制御器
10 ガスライン
11 第2流れ制御器
12 ガス入口
17 蒸発面