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  • 特許-吊り足場用吊具及び吊り足場 図1
  • 特許-吊り足場用吊具及び吊り足場 図2
  • 特許-吊り足場用吊具及び吊り足場 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】吊り足場用吊具及び吊り足場
(51)【国際特許分類】
   E04G 3/30 20060101AFI20231226BHJP
   E04G 3/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
E04G3/30
E04G3/00 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019061064
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020159114
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】永田 正道
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-120366(JP,A)
【文献】特開昭61-286455(JP,A)
【文献】実開平05-019436(JP,U)
【文献】登録実用新案第3206533(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00-7/34
E04G 21/14-21/22
E04G 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材を上下方向から挟持するよう形成された挟持部材と、前記挟持部材から垂下した挟持板を有する一対の把持部と、
一対の前記挟持板に挟持されるように連結され下方に垂下した連結板と、前記連結板の下端に設けられた水平板と、前記水平板の下面から下方に垂下して設けられ、貫通孔を有する吊板とを有する吊部と、を備え、
前記貫通孔には、長さ調整可能な鎖が連結された吊り金具を取り付け可能であり、
前記持部材は、前記板状部材の上面側に配置される頂板と、前記頂板と対向し前記板状部材の下面側に配置される底板と、を備え、
前記挟持板は、前記底板から垂下して設けられた板状体であり、
前記一対の把持部を前記板状部材の左右方向から対向するように取り付け、一対の前記挟持板の間に前記連結板を挟み込むことで、前記一対の把持部と前記吊部とを連結可能に構成されていることを特徴とする、
吊り足場用吊具。
【請求項2】
前記把持部は、前記挟持部材を前記板状部材にボルトで固定するよう形成されたボルト取付部を備えることを特徴とする、
請求項1に記載の吊り足場用吊具。
【請求項3】
前記連結板は第1貫通孔を有すると共に、一対の前記挟持板はそれぞれ第2貫通孔を有し、
前記連結板と一対の前記挟持板とは前記第1貫通孔と前記第2貫通孔に挿通されたボルトで固定されることを特徴とする、
請求項1または2に記載の吊り足場用吊具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の吊り足場用吊具と、
前記鎖に連結された足場と、を備えることを特徴とする、
吊り足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業のための吊り足場を吊り下げるための吊り足場用吊具及び吊り足場に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の建設中に地面側から足場を組み立てられない高所の作業用に、梁等の構造体から吊り下げられる吊り足場が用いられる場合がある。特許文献1には、天井に固定される複数の吊具と、上端が吊具に連結された複数の鎖と、複数の鎖の下端に連結された足場板とを備える吊り足場が例示されている。
【0003】
また、特許文献2には、橋梁の主桁(H鋼)の下フランジを上下方向から挟持する一対のローラと、一対のローラを回転自在に支持し、下方に垂下した複数のパイプ状の縦杆と、枠状に組まれると共に複数の縦杆の上部又は下部に連結されたパイプ状の複数の横杆と、複数の横杆を架設する複数の足場板と、を備える吊り足場が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-090160号公報
【文献】特開2005-232677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された吊り足場は、天井に吊具をアンカーボルトで固定する必要があり、建物への加工が必要となると共に、施工時のサイクル工程単位毎の移動に手間がかかるという課題がある。特許文献2に記載された吊り足場は、主桁が斜めに設置されている場合、足場が移動するため固定用の対策が必要となるという課題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、設置対象への加工をすること無く簡素な構成で設置でき、かつ、設置対象に対する汎用性を高めることができる吊り足場用吊具及び吊り足場を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達するために、本発明は、板状部材を上下方向から挟持するよう形成された挟持部材と、前記挟持部材から垂下した挟持板を有する一対の把持部と、一対の前記挟持板に挟持されるように連結され下方に垂下した連結板と、前記連結板の下端に設けられた水平板と、前記水平板の下面から下方に垂下して設けられ、貫通孔を有する吊板とを有する吊部と、を備え、前記貫通孔には、長さ調整可能な鎖が連結された吊り金具を取り付け可能であり、前記持部材は、前記板状部材の上面側に配置される頂板と、前記頂板と対向し前記板状部材の下面側に配置される底板と、を備え、前記挟持板は、前記底板から垂下して設けられた板状体であり、前記一対の把持部を前記板状部材の左右方向から対向するように取り付け、一対の前記挟持板の間に前記連結板を挟み込むことで、前記一対の把持部と前記吊部とを連結可能に構成されている、吊り足場用吊具である。
【0008】
本発明によれば、把持部がH鋼の下フランジを挟持して固定されることで設置対象のH鋼に対して簡便に取り付けることができる共に、一対の把持部と吊部とを分解することで容易に運搬することができる。
【0009】
また、本発明は、前記把持部は、前記挟持部材を前記下フランジにボルトで固定するよう形成されたボルト取付部を備えるようにしてもよい。
【0010】
本発明によれば、把持部が下フランジにボルトで固定されるため、H鋼に加工することなく取り付けることができる。
【0011】
前記連結板は第1貫通孔を有すると共に、一対の前記挟持板はそれぞれ第2貫通孔を有し、前記連結板と一対の前記挟持板とは前記第1貫通孔と前記第2貫通孔に挿通されたボルトで固定されるようにしてもよい。
【0012】
本発明によれば、挟持板を有する一対の挟持部材と連結板を有する吊部がボルトで固定されるため、組み立て及び分解が容易となり、施工性が向上する。
【0013】
本発明は、上記吊り足場用吊具と、前記鎖に連結された足場と、を備える吊り足場である。
【0014】
本発明によれば、設置対象に対して汎用性が高い吊り足場を実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、設置対象への加工をすること無く簡素な構成で設置でき、かつ、設置対象に対する汎用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る吊り足場用吊具の構成を示す分解斜視図である。
図2】吊り足場用吊具の構成を示す斜視図である。
図3】吊り足場用吊具が使用された吊り足場の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る吊り足場用吊具の実施形態について説明する。以下、H鋼Hを断面方向(Y軸方向)に沿って見ることを正面視すると記載する。
【0018】
図1及び図2に示されるように、吊り足場用吊具1は、建設途中の建物において梁として組まれたH鋼Hに取り付けられる。H鋼Hには、複数の吊り足場用吊具1が取り付けられて、足場P(図3参照)が吊り下げられる。設置対象のH鋼Hは、梁としての荷重を受ける帯状の板状体に形成されたウェブH1とウェブH1の上辺に水平方向に設けられた帯状の板状体に形成された上フランジH2と、ウェブH1の下辺に水平方向に設けられた帯状の板状体に形成された下フランジH3とを備える。
【0019】
吊り足場用吊具1は、下フランジH3に取り付けられる一対の把持部2と、一対の把持部2に挟持されて取り付けられる吊部10とを備える。
【0020】
把持部2は、下フランジH3を上下方向から挟持するよう形成された挟持部材3を備える。挟持部材3は、正面視してコ字状に折り曲げられた鋼板により形成されている。挟持部材3は、鉛直方向の鉛直板3Aと、鉛直板3Aの上辺から水平方向に折れ曲がった頂板3Bと、鉛直板3Aの下辺から頂板3Bと対向するように折れ曲がった底板3Cとを備える。鉛直板3A、頂板3B、及び底板3Cは、矩形の板状体に形成されている。頂板3Bと底板3Cとは、下フランジH3を挟持するように下フランジH3の板厚よりも大きい距離で離間している。
【0021】
頂板3Bは、把持部2を下フランジH3にボルトB2で固定するよう形成されたボルト取付部を備える。ボルト取付部は、例えば、頂板3Bに設けられたボルト孔(不図示)と、ボルト孔と同心に溶接されたナットN2と、ナットN2に螺入されたボルトB2の緩みを防止するためのナットN3とを備える。ナットN2の代わりにボルト孔にボルトB2のピッチに対応するネジ溝が切られていてもよい。ナットN3は、いわゆるダブルナットとして用いられ、ナットN2に向かって締め付けられてボルトB2の緩みを防止する。ボルト取付部は、H鋼Hの長手方向に沿って2個設けられている。ボルト取付部は、底板3C側に設けられていてもよい。
【0022】
挟持部材3には、底板3Cの先端から垂下して矩形の板状体に形成された挟持板5が溶接されている。挟持板5は、底板3Cの先端から折り曲げられて形成されていてもよい。挟持板5には、後述するボルトB1を挿通するための一対のボルト孔5A(第2貫通孔)が形成されている。一対のボルト孔5Aは、H鋼Hの長手方向に沿って形成されている。
【0023】
挟持部材3及び挟持板5の両側には、鉛直方向に矩形に形成された板状体の一対の側板4が溶接されている。側板4は、例えば、挟持部材3の両側及び挟持板5の両側に溶接されている。側板4には、正面視して挟持部材3が取り付けられた位置において下フランジH3が挿通される矩形の切欠き部4Aが形成されている。側板4により、挟持部材3に荷重が加わった際に挟持部材3が変形することが防止される。
【0024】
上記構成により、一対の把持部2は、H鋼Hの下フランジH3に対向して取り付けられる。一対の把持部2が下フランジH3に固定された状態で、把持部2に挟持されて吊部10が取り付けられる。
【0025】
吊部10は、下方に垂下した連結板11を備える。連結板11は、矩形の板状体に形成されている。連結板11には、ボルトB1が挿通される一対のボルト孔11A(第1貫通孔)が形成されている。一対のボルト孔11Aは、H鋼Hの長手方向に沿って形成されている。
【0026】
連結板11は、一対の挟持板5に挟持される。連結板11の下辺には矩形の板状体に形成された水平板13が水平方向に溶接されている。水平板13の下面には、下方に垂下して吊板14が溶接されている。吊板14は、挟持板5に対して直交方向に配置されている。吊板14は、正面視して連結板11の中心線から水平方向にオフセットされて配置されている。
【0027】
吊板14には、貫通孔14Aが形成されている。貫通孔14Aには、シャックル等の吊り金具が取り付けられる。連結板11及び水平板13の両側には、一対の側板12が溶接されている。側板12は、例えば、上底が下底よりも短い台形の板状体に形成されている。側板12が設けられていることにより、連結板11と水平板13との接続部分が変形することが防止される。
【0028】
吊り足場用吊具1をH鋼Hに取り付ける際、先ず片側の把持部2Aが下フランジH3に固定される。把持部2は、下フランジH3が頂板3Bと底板3Cとの間に挿入された後、ボルトB2がナットN2に螺入された後に締め付けられて下フランジH3に固定される。ボルトB2は、ナットN3が締め付けられて緩みが防止され把持部2Aが下フランジH3に確実に固定される。その後、ボルトB1が挟持板5のボルト孔5Aに挿通される。その後、挟持板5から突出したボルトB1に連結板11のボルト孔11Aが挿通され、吊部10が仮に吊り下げられる。
【0029】
次に、下フランジH3に固定された把持部2Aに対向する把持部2Bのボルト孔5AにボルトB1が挿通される。その後、ボルトB1に螺入されたナットN1が締め込まれることにより、一対の挟持板5に連結板11が挟持されて吊部10が一対の把持部2A,2Bにより固定される。ナットN1と挟持板5との間には、ワッシャMが挟み込まれていてもよい。次に、把持部2BのボルトB2が締め込まれて把持部2Bが下フランジH3に固定される。ボルトB2は、ナットN3が締め付けられて緩みが防止され把持部2Bが下フランジH3に確実に固定される。
【0030】
図3に示されるように、H鋼Hに吊り足場用吊具1が取り付けられた後、吊り金具Gが吊板14に取り付けられる。吊り金具Gには、鎖Cが吊り下げられる。鎖Cの下端には足場Pが吊り下げられる。足場Pは、例えば、単管パイプ等で組まれた枠体に底板を敷いて構築される。上記構成により、吊り足場Qが構築される。吊り足場用吊具1は、H鋼Hが斜め方向に配置されていても吊り足場Qを構築することができる。即ち、吊り足場用吊具1によれば、吊り足場用吊具1に対して鎖Cが斜めに吊られていても足場Pを取り付けることができる。吊り足場用吊具1によれば、鎖Cの長さを調整することにより、足場Pを水平に設置することができる。
【0031】
上述したように吊り足場用吊具1によれば、設置対象のH鋼Hに穴あけや溶接等の加工をすることなく取り付けることができる。また、吊り足場用吊具1は、3個の部品に分解することができ、人力による運搬を容易にすることができる。また、吊り足場用吊具1によれば、施工時のサイクル工程単位で分解して次の工程に転用するこができ、施工コストを低減することができる。
【0032】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、2個のボルトにより各部材を固定する場合を例示したが、各部材の固定用のボルトは1個以上あればよい。また、吊り足場用吊具の設置対象は、H鋼の下フランジだけでなく、板状部材であればどのようなものに設置してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…吊り足場用吊具、2、2A、2B…把持部、3…挟持部材、3A…鉛直板、3B…頂板、3C…底板、4…側板、4A…切欠き部、5…挟持板、5A…ボルト孔、10…吊部、11…連結板、11A…ボルト孔、12…側板、13…水平板、14…吊板、14A…貫通孔、B1、B2…ボルト、C…鎖、G…吊り金具、H…H鋼、H1…ウェブ、H2…上フランジ、H3…下フランジ、N1、N2、N3…ナット、M…ワッシャ、P…足場、Q…吊り足場
図1
図2
図3