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特許7409789W/O型ピッカリングエマルション、及びこれを含む化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】W/O型ピッカリングエマルション、及びこれを含む化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20231226BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 8/58 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20231226BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/25
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/58
A61K8/81
A61K8/89
A61Q17/00
A61Q17/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019113935
(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公開番号】P2021001117
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中谷 明弘
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-208046(JP,A)
【文献】特開2013-129626(JP,A)
【文献】特開2019-085368(JP,A)
【文献】特開2018-177620(JP,A)
【文献】特開2018-203646(JP,A)
【文献】特開2013-043875(JP,A)
【文献】特開2002-327019(JP,A)
【文献】特開2003-020314(JP,A)
【文献】特開平09-255543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相と、油相と、1次粒子径が200nm以下及びM値が10以上である疎水化粉体とを含み、前記油相に含まれる油剤全量に対して、揮発性油剤を40質量%以上80質量%以下含み、
前記疎水化粉体が、アクリル樹脂、及び/又は有機ケイ素化合物が被覆された粉体であることを特徴とする、W/O型ピッカリングエマルション。
【請求項2】
W/O型ピッカリングエマルション全量に対して、油剤の含有量が20~70質量%である、請求項1に記載のW/O型ピッカリングエマルション。
【請求項3】
前記油相に含まれる油剤全量に対して、揮発性油剤を40質量%以上65質量%以下含む、請求項2に記載のW/O型ピッカリングエマルション。
【請求項4】
油相全体に含まれる油剤全量に対して、揮発性油剤を40質量%以上55質量%以下含み、W/O型ピッカリングエマルション全量に対して、油剤の含有量が20~50質量%である、請求項1~3の何れか一項に記載のW/O型ピッカリングエマルション。
【請求項5】
前記疎水化粉体が水相及び油相の界面に存し、乳化状態を保っている、請求項1~4の何れか一項に記載のW/O型ピッカリングエマルション。
【請求項6】
前記W/O型ピッカリングエマルション全量に対する、水相全量の含有量が5質量%以上であることを特徴とする、請求項1~の何れか一項に記載のW/O型ピッカリングエマルション。
【請求項7】
前記揮発性油剤が、炭化水素油及び/又は揮発性シリコーン油であることを特徴とする、請求項1~の何れか一項に記載のW/O型ピッカリングエマルション。
【請求項8】
請求項1~の何れか一項に記載のW/O型ピッカリングエマルションを含む、化粧料。
【請求項9】
ファンデーション、又はサンスクリーン剤であることを特徴とする、請求項に記載の化粧料。
【請求項10】
内部の乳化滴が揮発した後に、微粒子で囲まれた中空のスペースがそのまま存残し、多孔構造となることを特徴とする、請求項1~9の何れか一項に記載のW/O型ピッカリングエマルション。
【請求項11】
水相を調製する工程と、
油相を調製する工程を備え、
前記油相は、油剤と、1次粒子径が200nm以下及びM値が10以上である疎水化粉体とを含み、前記油剤として、油剤全量に対して、40質量%以上80質量%以下の揮発性油剤を含み、前記疎水化粉体が、アクリル樹脂、及び/又は有機ケイ素化合物が被覆された粉体であり、
前記水相と前記油相を混合し、乳化物を調製する工程を備えることを特徴とする、W/O型ピッカリングエマルションの製造方法。
【請求項12】
化粧膜の評価方法であって、
W/O型ピッカリングエマルションを含有する化粧品を塗布して得られた化粧膜の表面、又は断面を観察する工程と、化粧膜中に多孔構造が観察される場合に、二次付着抑制効果を有する化粧膜であると評価する工程を備える、化粧膜の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、W/O型ピッカリングエマルション、及びこれを含む化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧料が衣服、カップ等に付着したり、手で擦る等の物理的接触により取れてしまう、いわゆる「二次付着」が問題となっている。
【0003】
二次付着が起こると、化粧がくずれるため、頻繁に化粧直しをする必要が生じる。また、衣類に化粧料が付着すると落としづらいという問題があり、多くの化粧料利用者を悩ませている。
【0004】
二次付着を防止するための化粧品の設計として、反応性シリル基を含有する架橋性ポリマーを含む被膜形成剤が配合されたポリマーエマルションを含む方法が知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-327019号公報
【文献】特開2003-20314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような被膜形成剤を用いる方法であっても、十分に二次付着を防ぐことができなかった。
【0007】
二次付着の発生原因は、化粧膜が高付着性であることに由来して、化粧膜の表面(空気界面)に力が加わることで、化粧膜の一部が剥がし取られることにある。
【0008】
そこで、二次付着を低下させる手段として、化粧膜全体の付着性を低下させることが考えられるが、この場合には肌への付着性も低下するため、結果として二次付着も発生し得る。
【0009】
そこで、本発明は、二次付着性が低い化粧料の設計技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究の結果、特定の油剤を特定の配合比で含み、かつ粉体により乳化された乳化物(ピッカリングエマルション)が、肌への密着性に優れ、かつ二次付着性が低いことを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、前記課題を解決する本発明は、
水相と、油相と、疎水化粉体とを含み、前記油相に含まれる油剤全量に対して、揮発性油剤を40質量%以上含む、W/O型ピッカリングエマルションである。
本発明のピッカリングエマルションは、極めて高い二次付着防止効果を有している。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記W/O型ピッカリングエマルション全量に対する、水相の含有量が5質量%以上である。
水相の含有量が特定量以上である本発明のW/O型ピッカリングエマルションは、極めて高い二次付着防止効果を有する。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記疎水化粉体のM値が、10以上である。
M値が前記数値以上である疎水化粉体を用いることで、より高い二次付着防止効果が得られる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記疎水化粉体の1次粒子径が、200nm以下である。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記疎水化粉体が、アクリル樹脂、及び/又は有機ケイ素化合物が被覆された粉体である。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記揮発性油剤が、炭化水素油及び/又は揮発性シリコーン油である。
【0017】
また、前記課題を解決する本発明は、上述したW/O型ピッカリングエマルションを含む、化粧料である。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記化粧料がファンデーション、又はサンスクリーン剤である。
【0019】
また、前記課題を解決する本発明は、
水相を調製する工程と、
油相を調製する工程を備え、
前記油相は、油剤、及び疎水化粉体を含み、前記油剤として、油剤全量に対して、40質量以上の揮発性油剤を含み、
前記水相と前記油相を混合し、乳化物を調製する工程を備えることを特徴とする、W/O型ピッカリングエマルションの製造方法である。
【0020】
また、本発明者らは、上述したピッカリングエマルション、又は化粧料を塗布して得られる化粧膜について、さらに研究を進めたところ、肌への密着性が優れ、かつ二次付着性が低い化粧膜は、内部の乳化滴が揮発した後に、微粒子で囲まれた中空のスペースがそのまま存残し、多孔構造となることを見出した。すなわち、化粧膜の構造を観察することで、上記性質を有する化粧膜を見分けることができる。
【0021】
すなわち、前記課題を解決する本発明は、
化粧膜の評価方法であって、
W/O型ピッカリングエマルションを含有する化粧品を塗布して得られた化粧膜の表面、又は断面を観察する工程と、化粧膜中に多孔構造が観察される場合に、二次付着抑制効果を有する化粧膜であると評価する工程を備える、化粧膜の評価方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明のW/O型ピッカリングエマルション、及びこれを含む化粧料は、二次付着抑制効果が極めて高い。また、本発明の化粧膜の評価方法によれば、二次付着抑制効果が高い化粧品を見極めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】二次付着性試験の結果を示す図面代用写真である。
図2】実施例、及び比較例の化粧膜表面を観察したSEM像である。
図3】実施例の化粧膜断面を観察したCT像である。
図4】実施例及び比較例における、乾燥時間に対する二次付着量を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<1>W/O型ピッカリングエマルション
本発明は、水相と油相とが、疎水化粉体により乳化されたW/O型ピッカリングエマルションである。以下、各構成について詳細に説明する。
【0025】
(1)油相成分
本発明のピッカリングエマルションは、油相成分として油剤を含む。
油剤の含有量は、ピッカリングエマルション全量に対して、好ましくは10~80質量%であり、より好ましくは20~70質量%であり、さらに好ましくは20~50質量%であり、特に好ましくは20~40質量%である。
【0026】
油剤としては、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、シリコーン油等を含有することができる。
【0027】
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、メドウフォーム油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等が挙げられる。
【0028】
固体油脂としては、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化脂、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0029】
ロウ類としては、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0030】
炭化水素油としては、流動パラフィン、オゾケライト、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0031】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸等が挙げられる。
【0032】
高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等が挙げられる。
【0033】
エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、ステアリン酸スクロース、オレイン酸スクロース、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリ-2-エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、パルミチン酸セチル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキ
シルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0034】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジフェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等の鎖状シロキサンや、ペンタシロキサン、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサンなどの環状シロキサン等が挙げられる。
【0035】
本発明のピッカリングエマルションは、油剤全量に対して、揮発性油剤を40質量%以上含む。
揮発性油剤としては、揮発性シリコーン油、揮発性炭化水素油、揮発性エステル油、揮発性天然動植物油及び揮発性フッ素油等が好ましく挙げられ、揮発性シリコーン油、及び揮発性炭化水素油がより好ましい。
【0036】
揮発性シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルトリメチコン、トリス(トリメチルシリル)メチルシラン、テトラキス(トリメチルシリル)シラン、ヘキサシクロトリシロキサン、オクタメチルテトラシクロシロキサン、シクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン及びテトラデカメチルシクロへプタシロキサン等が挙げられる。
【0037】
揮発性炭化水素油としては、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、イソオクタン、イソデカン、イソドデカン、イソヘキサデカン、シクロデカン及びシクロドデカン等が挙げられる。
【0038】
本発明のピッカリングエマルションは、揮発性油剤及び不揮発性油剤の両方を含むことが好ましい。
油剤全量に対する揮発性油剤の含有量は、好ましくは42質量%以上であり、より好ましくは45質量%以上である。
また、油剤全量に対する揮発性油剤の上限は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは65質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下であり、特に好ましくは55質量%以下であり、最も好ましくは50質量%以下である。
【0039】
(2)水相成分
本発明のピッカリングエマルションの水相における水の含有量は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、さらに好ましくは35質量%以上であり、特に好ましくは40質量%以上であり、最も好ましくは45質量%以上である。
水の含有量をこのような範囲とすることで、化粧膜中の乳化滴が揮発した後、化粧膜中の多孔構造の占有面積が大きくなり、より二次付着効果が高まる。
【0040】
また、水の含有量は、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下であり、特に好ましくは60質量%以下であり、最も好ましくは50質量%以下である。
また、水の含有量は、好ましくは1~60質量%であり、より好ましくは5~50質量%以上であり、さらに好ましくは20~50質量%であり、特に好ましくは30~50質量%であり、最も好ましくは40~50質量%以上である。
【0041】
水の含有量は、上記(1)で説明した油剤全量1質量部に対して、好ましくは0.05~2質量部であり、より好ましくは0.1~2質量部であり、さらに好ましくは0.4~2質量部であり、特に好ましくは0.6~1.5質量部であり、特に好ましくは0.8~1.2質量部である。
また、水の含有量は、揮発性油剤1質量部に対して、好ましくは0.05~5質量部であり、より好ましくは0.5~4質量部であり、さらに好ましくは1~3質量部であり、特に好ましくは1.0~2.5質量部であり、
【0042】
ピッカリグエマルション全量に対する、水相全量の含有量の下限値は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上であり、特に好ましくは40質量%以上であり、最も好ましくは45質量%以上である。
上限値は、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下であり、特に好ましくは60質量%以下であり、最も好ましくは55質量%以下である。
【0043】
また、ピッカリングエマルション全量に対する、水相全量の含有量は、好ましくは5~70質量%であり、より好ましくは20~60質量%であり、さらに好ましくは30~60質量%であり、特に好ましくは40~60質量%であり、最も好ましくは45~55質量%である。
【0044】
本発明のピッカリングエマルションにおける水相は、通常化粧料に用いられる成分を特に制限なく含むことができるが、例えば、以下の成分を含有することが好ましい。
ポリオールとしては、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ヘキシレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等が挙げられ、中でも、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ソルビトールが好ましく挙げられる。これらの含有量は、ピッカリングエマルション全体の好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは3~10質量%である。また、これらの含有量は、水相の好ましくは3~15質量%、さらに好ましくは5~10質量%である。
【0045】
また、本発明のピッカリングエマルションは、増粘剤を含んでもよい。増粘剤としては、キサンタンガム、ジェランガム、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、アクリル酸ナトリウムグラフトデンプン、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、ベントナイト等が挙げられる。これらの含有量は、ピッカリングエマルション全体の好ましくは0.05~5質量%、より好ましくは0.1~1質量%である。また、これらの含有量は、水相の好ましくは0.1~3質量%、さらに好ましくは0.3~1質量%である。
【0046】
(3)疎水化粉体
疎水化粉体としては、シリカ、二酸化チタン、酸化スズ、粘度鉱物、酸化アルミニウム、ナノ微粒子沈降炭酸カルシウム、石炭、酸化マグネシウム、及び三ケイ酸マグネシウムなどの無機粉体、並びにエチルセルロース、結晶性脂肪アルコール及び脂肪酸、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の樹脂粒子等の有機粉体の何れを用いることができ、必要に応じて、これらの粉体表面を疎水化処理したものを用いることができる。
好ましくは、これらの粉体表面を部分的に疎水化した、部分疎水化粉体を用いる。
【0047】
疎水化処理としては、有機ケイ素化合物、シリコーン、炭化水素油、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、高級アルコール、ポリオキシアルキレン化合物等の疎水化処理剤で粉体を処理する方法が挙げられる。
特に好ましくは、有機ケイ素化合物又はシリコーンを疎水化処理剤として粉体を処理する。
【0048】
有機ケイ素化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、モノメチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、トリメチルエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、パルミチルシラン等が挙げられる。これらは一種或いは二種以上の混合物で用いることができる。
【0049】
シリコーンとしては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、α-メチルスチレン変性シリコーン、クロルフェニルシリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
【0050】
本発明のピッカリングエマルションにおける疎水化粉体のM値の下限は、好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上、特に好ましくは20以上とすることができる。
【0051】
なお、M値は微粒子の疎水性の程度を表わす値であり、M値が高いほど疎水性が高いといえる、M値は水とメタノールの混合溶液に、測定試料を均一分散させるための必要最低量のメタノールの容量割合で表され、以下の方法で求めることができる。
【0052】
[M値の算出方法]
測定試料(疎水化粉体微粒子)0.2gを容量250mLのビーカー中で50mLの水に添加し、続いてメタノールをビュレットから徐々に滴下する。このとき、ビーカー中の溶液をマグネティックスターラーで常時撹拌し、測定試料の全量が溶液中に均一に懸濁された時点を終点とする。この終点におけるビーカー中の水・メタノール混合溶液のメタノールの容量百分率がM値である。
疎水化粉体のM値は、その疎水化率によって調整することができる。M値乃至は疎水化率は、粉体と疎水化剤との混合比、及び処理時間を適宜設定することにより調節することができる。
【0053】
疎水化粉体の粒径は、平均一次粒子径が200nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下、特に好ましくは15nm以下である。
疎水化粉体の粒子径を上記の範囲とすることによって、乳化粒子を小さく調節することができ、製剤の安定性が向上する。
【0054】
なお、本発明において平均一次粒子径とは、特に制限されず粒子に関して一般的に用いられる方法で測定される一次粒子の経を意味するものであるが、具体的には透過電子顕微鏡写真から、粒子の長軸と短軸の相加平均として求められるものである。
【0055】
本発明のピッカリングエマルション全量に対する前記疎水化粉体の含有量は、好ましくは0.3~5質量%、より好ましくは0.4~4質量%、さらに好ましくは0.5~3質量%、特に好ましくは0.7~2.5質量%、最も好ましくは1~2質量%である。
【0056】
前記油剤10質量部に対して、前記疎水化粉体の含有量は、好ましくは0.1~1質量部、より好ましくは0.2~1質量部、さらに好ましくは0.3~1質量部、特に好ましくは0.4~1質量部、最も好ましくは0.5~0.8質量部である。
【0057】
前記水10質量部に対して、前記疎水化粉体の含有量は、好ましくは0.1~3質量部、より好ましくは0.1~1質量部、さらに好ましくは0.1~0.5質量部、特に好ましくは0.2~0.3質量部である。
【0058】
(4)ピッカリングエマルション
本発明のピッカリングエマルションは、油中水型(W/O型)の乳化物である。 本発明のピッカリングエマルションにおいては、上記成分以外に通常化粧料で使用される任意成分を発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。かかる任意成分としては、例えば、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、トリエトキシカプリリルシラン等のシリコーンエーテル類、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、表面処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、水酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面処理されていても良い、酸化コバルト、群青、紺青、酸化亜鉛の無機顔料類、表面処理されていても良い、酸化鉄二酸化チタン焼結体等の複合顔料、表面処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩,ビタミンB6トリパルミテート,ビタミンB6ジオクタノエート,ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール,β-トコフェロール,γ-トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸モノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシパラアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジエトキシパラアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルパラアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルパラアミノ安息香酸ブチルエステル、N,N-ジメチルパラアミノ安息香酸エチルエステル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル等の安息香酸誘導体;ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等のアントラニル酸誘導体;サリチル酸及びそのナトリウム塩、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸誘導体;オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、2-エチルヘキシルp-メトキシシンナメート(メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸オクチル)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート(シノキサート)、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリラート(オクトクリレン)、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート、フェルラ酸及びその誘導体等のケイ皮酸誘導体;2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(オキシベンゾン-3)、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー;2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール;2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン;4-t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン等のジベンゾイルメタン誘導体;オクチルトリアゾン;ウロカニン酸及びウロカニン酸エチル等のウロカニン酸誘導体;2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、1-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-1,3-ペンタンジオン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル等のヒダントイン誘導体;フェニルベンズイミダソゾールスルホン酸、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸、ドロメトリゾールトリシロキサン、アントラニル酸メチル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ルチン及びその誘導体、オリザノール及びその誘導体等の紫外線吸収剤などが好ましく例示できる。
【0059】
以上のとおり、本発明のピッカリングエマルションは界面活性剤を用いてもよいがその含有量は極力少なくすることが好ましい。界面活性剤の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
【0060】
本発明のピッカリングエマルションは、その二次付着抑制効果の高さから、皮膚外用剤に好適である。
中でも、化粧料に用いることが好ましく、日焼け止め、化粧下地、及びファンデーション等とすることが好ましい。ファンデーションとしては、特にリキッドファンデーションとして用いることが好ましい。
【0061】
本発明のピッカリングエマルションは以下の製造方法により製造することができる。
まず、上述した任意成分を適宜含む水相を調製する工程と、上述した油相を調製する工程を備える。
油相は、油剤及び疎水化粉体を含み、前記油剤として、油剤全量に対して、40質量%以上の揮発性油剤を含む。
【0062】
次いで、前記水相と前記油相を混合することで、疎水化粉体による水相と油相の乳化が起こり、本発明のW/O型ピッカリングエマルションが製造される。
【0063】
本発明のピッカリングエマルション、及びこれを含む化粧料は容器内で保存している状態は、粉体が水相及び油相の界面に存し、乳化状態を保っている。
【0064】
本発明者らは、これを肌に塗布すると、乳化滴が揮発した後、微粒子で囲まれた中空のスペースがそのまま残存し、多孔構造となることを確認している。
【0065】
この知見から、本発明のピッカリングエマルション及び化粧料における、優れた二次付着抑制効果は、乳化滴揮発後の多孔構造に起因すると考えられる。
【0066】
<2>化粧膜の評価方法
本発明は化粧膜の評価方法であって、上述した知見に基づいて完成させた発明である。
本発明の化粧膜の評価方法は、W/O型ピッカリングエマルションを含有する化粧品を塗布して得られた化粧膜の表面、又は断面を観察する工程を備える。
化粧膜の表面の観察は、例えば、顕微鏡を用いて行うことができる。顕微鏡としては、光学顕微鏡、及び電子顕微鏡等を用いることができ、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いることが好ましい。
化粧膜の表面の観察は、例えば、X線CT装置を用いて行うことができる。
【0067】
次いで、本発明の化粧膜の評価方法は、化粧膜中に多孔構造が観察される場合に、二次付着抑制効果を有する化粧膜であると評価する工程を備える。
このように、多孔構造を有する化粧膜は当該、多孔構造の存在により、衣服等の二次付着先と、化粧膜中の液体成分が直接触れ合わなくなることで、二次付着が抑制できると推察される。
また、多孔構造を有する化粧膜は、当該多孔構造に起因する、構造的な強度が高いことから、擦れにも強い化粧膜になると推察される。
【0068】
本発明の評価方法は、好ましくは、化粧膜の厚みに対する多孔構造の占有率が、50%を超える場合には、前記占有率が50%未満である化粧膜として、より優れた二次付着抑制効果を有する化粧膜であると評価する評価工程を備える。
評価における前記占有率の基準値は、好ましくは55%であり、より好ましくは70%であり、さらに好ましくは75%であり、特に好ましくは80%であり、最も好ましくは95%である。
当該評価工程は、化粧膜の厚みに対する多孔構造の占有率が大きいほど、二次付着抑制効果が高いという知見に基づくものである。
【0069】
前記占有率は、計算により導くことができる。
まず、化粧膜を観察し、多孔構造が確認された場合、多孔構造の粒径を測定する。この多孔構造の粒径は、W/Oエマルション中の水滴の粒径であると仮定することができる。これに、任意の粒径を有する、乳化能を持つ粉体が吸着し、それが積み重なる場合における、化粧膜の厚みに対する多孔構造の占有率を算出することができる。
【実施例
【0070】
<試験例1>乳化物の調製
以下の表1に記載の水相と油相を調製し、これらを混合して乳化させ、ファンデーションを製造した。
なお、表1中の「粉体」は、乳化能を有さない粉体であり、「乳化剤」の欄における「シリル化シリカ」が、本明細書中における「疎水化粉体」である。本試験においては、平均一次粒子径が12nm、M値が10以上のシリル化シリルを用いた。
また、表1中の「W/O(P)」は、W/O型ピッカリングエマルションを意味し、「W/O」は、ピッカリングエマルションでない、W/O型のエマルションを意味する。
【0071】
<試験例2>二次付着性評価試験
実施例1、比較例1及び比較例2について、以下の試験を行い、二次付着性を評価した。
5cm×5cmの人工皮革に、試験例1で調整したファンデーションを2mg/cmで塗布した。
10分間乾燥させた後、5cm×5cmの白い布(綿100%)を、人工皮革に塗布したファンデーションを覆うように上から静置した。
さらにその上から、300gの重りを載せ、その状態で白い布を引き抜いた。
【0072】
白い布に付着したファンデーションを目視により確認した。また、白い布を撮影し、ファンデーションが付着した部分と、付着していない部分を二値化して、これらの面積比を求めた。結果を表1、及び図1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1、及び図1の結果から、水相と、油相と、疎水化粉体とを含み、前記油相に含まれる油剤全量に対して、揮発性油剤を40質量%以上含むピッカリングエマルションである実施例1~5は、二次付着性が極めて低いことがわかる。
【0075】
一方で、粉体によらず、シリコーン系界面活性剤で乳化を行った比較例1(従来のリキッドファンデーションに相当)、水を含まず、分散媒として油剤のみを用いた比較例2は二次付着性が高かった。
【0076】
また、水を含まず、分散媒として油剤のみを用いた比較例2は、肌への密着性に優れ、乾きやすい性質であったものの、二次付着性が高かった。この結果から、油中水型の乳化系であることが、二次付着性を低下させる要因の一つであることがわかる。
【0077】
さらに、油剤全量のうち、揮発性油剤が40質量%未満である比較例3は、二次付着性が高かった。
この結果から、油剤全量のうち、少なくとも40質量%以上の揮発性油剤を含むことで、二次付着性に優れた組成物となることがわかった。
【0078】
<試験例3>膜構造の観察
以下の表2に記載の配合に従い、ファンデーションを調製した(実施例6、比較例4、比較例5)。
調製したファンデーションを、人工皮革の上に0.2mg/cmとなるように塗布し、30分乾燥させた後にSEMを用いた表面観察を行った。
実施例2のファンデーションにおいては、さらに、X線CT装置を用いた断面観察を行った。結果を図2、及び図3に示す。
【0079】
<試験例4>乾燥時間毎の二次付着量の変化
試験例2の二次付着性評価試験において、乾燥時間を、1分、3分、5分、10分、15分と変動させ、実施例6、比較例4、及び比較例5の二次付着性を評価した。なお、各検証はN=3で実施し、平均値を算出した。結果を図4に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
実施例6は、肌の二次付着性の抑制効果に優れ、比較例4及び5は、二次付着抑制効果を確認することができなかった。この結果は、試験例2の結果と良く一致する。
図2及び図3から、実施例6のファンデーションから得られる化粧膜は、乳化滴が蒸発した後にできたと推察される、5μm程度の空洞を持つ多孔構造を確認することができた。界面活性剤を使用したファンデーション(比較例4)、及び油剤による分散体のファンデーション(比較例5)では、多孔構造を確認することができず、所々に粉体の凝集が観察された。
このように、ピッカリングエマルションの形態を採用した乳化ファンデーションは、多孔構造を持つ化粧膜を形成することができ、当該多孔構造に起因する、優れた二次付着抑制効果を有していることが確認された。
【0082】
また、図3の結果から、実施例6のファンデーションは、放置時間によらず、高い二次付着抑制効果を有していた。特に、ファンデーションが乾いていない状態を想定した、放置時間1分の結果では、比較例4及び5と比して、二次付着量が大幅に抑制されていた。
【0083】
<試験例4>水相量の影響の確認試験
以下の表3に記載の配合に従い、ファンデーションを調製した。
各ファンデーションについて、試験例4と同一の試験を行い、二次付着量を評価した。結果を表3に示す。なお、表3中のジメチコンとして、表1、及び表2と異なり、不揮発性のものを使用した。
【0084】
<試験例5>化粧膜中の多孔構造占有率のシミュレーション
実施例7~12において、W/Oエマルション中の5μmの水滴の周りに12nmの粉体が吸着し、それが積み重なる場合における、化粧膜の厚みに対する多孔構造の占有率を、計算した。結果を表3に示す。
【0085】
【表3】
【0086】
表3の結果から、ピッカリングエマルション全量に対する、水相の含有量、又は水の含有量が増加するほど、優れた二次付着抑制効果を有することが示された。
特に、水相の含有量が30質量%以上、又は水の含有量が25質量%以上である実施例7、8及び9は、特に優れた二次付着抑制効果を有する。
実施例7及び12は、最も優れた二次付着抑制効果を有し、乾燥時間が1分において二次付着率が6%未満、15分においては、二次付着率が1%未満であった。この結果から、本発明のピッカリングエマルションは、揮発性油の種類が異なる場合であっても、優れた二次付着抑制効果を有する化粧膜を形成できることが示された。
【0087】
なお、実施例10及び実施例11は、乾燥時間が15分の場合における二次付着抑制効果が、比較例5に劣るものの、乾燥時間が1分の場合における二次付着抑制効果は、比較例5より優れている。この結果から、実施例10及び11は、最も二次付着が発生しやすい、塗布着後の乾燥していない状態においては、比較例と比して優れた二次付着抑制効果を有しているといえる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、密着性に優れ、かつ二次付着性が低い、膜構造の設計に応用することができる。
図1
図2
図3
図4