(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】銅系の抗菌性PVDコーティング
(51)【国際特許分類】
B32B 18/00 20060101AFI20231226BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20231226BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20231226BHJP
C23C 14/14 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B32B18/00 B
B32B15/04 B
C23C14/06 H
C23C14/06 N
C23C14/14 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019118593
(22)【出願日】2019-06-26
【審査請求日】2022-06-17
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599006524
【氏名又は名称】ベイパー テクノロジーズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブライス ランドルフ アントン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ピーターソン
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/038151(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/038152(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0034487(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0296873(US,A1)
【文献】国際公開第2015/141839(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
C23C 14/00 - 14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に配設されたジルコニウム含有ベース層であって、前記ジルコニウム含有ベース層が、炭窒化ジルコニウムベース層または窒化ジルコニウムベース層である、ジルコニウム含有ベース層と、
前記ジルコニウム含有ベース層上に配設された1つ以上の銅合金層と
を含み、前記銅合金層のそれぞれは、前記銅合金層の総重量に対して72~92重量%の銅および8~28重量%の量のニッケルを含む、または、前記1つ以上の銅合金層は、単一
のジルコニウム銅合金層である、コーティングされた基材。
【請求項2】
前記ジルコニウム含有ベース層が、少なくとも50モル%の量のジルコニウム、少なくとも0.02モル%の量の炭素、および少なくとも0.02モル%の量の窒素を含む、請求項1に記載のコーティングされた基材。
【請求項3】
前記ジルコニウム含有ベース層が、下記式を有する化合物を含む、請求項1に記載のコーティングされた基材:
Zr
1-x-yC
xN
y
式中、xは0.0~0.3であり、Yは0.1~0.5である。
【請求項4】
前記ジルコニウム含有ベース層が、下記式を有する化合物を含む、請求項1に記載のコーティングされた基材:
Zr
1-x-yC
xN
y
式中、xは0.0~0.2であり、Yは0.2~0.3である。
【請求項5】
前記ジルコニウム含有ベース層が、式Zr
0.60C
0.10N
0.30を有する炭窒化ジルコニウムを含む、請求項1に記載のコーティングされた基材。
【請求項6】
ニッケルが各銅合金層の総重量の10~25重量%の量で存在し、銅が各銅合金層の総重量の75~90重量%の量で存在する、請求項1に記載のコーティングされた基材。
【請求項7】
各銅合金層が、鉄、ジルコニウム、タングステン、クロム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される追加の元素を含む、請求項1に記載のコーティングされた基材。
【請求項8】
前記追加の元素のそれぞれが、前記銅合金層の総重量の0.01~5重量%の量で独立的に存在する、請求項7に記載のコーティングされた基材。
【請求項9】
単一の銅合金層が前記基材上に配設される、請求項1に記載のコーティングされた基材。
【請求項10】
前記ジルコニウム含有ベース層が100~800nmの厚さを有し、単一の銅合金層が50~600nmの厚さを有する、請求項1に記載のコーティングされた基材。
【請求項11】
前記ジルコニウム含有ベース層上に配設された交互の銅合金層とジルコニウム含有中間層とを有し、前記ジルコニウム含有中間層が、炭窒化ジルコニウム中間層または窒化ジルコニウム中間層である、請求項1に記載のコーティングされた基材。
【請求項12】
前記ジルコニウム含有ベース層および前記ジルコニウム含有中間層がそれぞれ独立して20~300nmの厚さを有し、各銅合金層が10~200nmの厚さを有する、請求項11に記載のコーティングされた基材。
【請求項13】
3~10個の銅合金層および3~10個のジルコニウム含有中間層を有する、請求項1に記載のコーティングされた基材。
【請求項14】
前記基材と前記ジルコニウム含有ベース層との間に介在する金属接着層をさらに含む、請求項1に記載のコーティングされた基材。
【請求項15】
前
記ジルコニウム銅合金層
がジルコニウム含有/銅合金層である、請求項1に記載のコーティングされた基材。
【請求項16】
前
記ジルコニウム銅合金層が50~600nmの厚さを有する、請求項1に記載のコーティングされた基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年6月27日に出願された米国仮特許出願番号第62/690,781号の利益を主張し、さらに2019年6月20日に出願された米国特許出願番号第16/447,339号の優先権を主張し、これらの開示はそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
少なくとも1つの態様では、本発明は抗菌性コーティング、特に抗菌特性を有する装飾コーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
以下の特許および特許出願は、銅を含むコーティングの変形形態を開示している。米国特許第9107981号明細書、米国特許第8530056号明細書、および米国特許第8066854号明細書、ならびに米国特許出願公開第20090162695号明細書、米国特許出願公開第20090198343号明細書。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第9107981号明細書
【文献】米国特許第8530056号明細書
【文献】米国特許第8066854号明細書
【文献】米国特許出願公開第20090162695号明細書
【文献】米国特許出願公開第20090198343号明細書
【発明の概要】
【0005】
少なくとも一態様では、抗菌特性を有する銅合金を有するトップコートを有する硬質Zr系ベース層を含む多層コーティングスタックが提供される。Zr含有ベース層は、Cu合金(これはシェードが少ない、ホワイトブロンズ、ローズ銅およびブロンズで入手可能である)の色に類似するように色合わせすることができる。有利には、より硬質のベース層は2つの機能を提供する:1)耐久性の向上、および2)軟質Cu合金が摩耗する場合に、より硬質の層が視覚可能になり、色差が近いと消費者には目立たなくなる。変形形態には、Cu/ZrCN/Cu/ZrCNの多層サンドイッチまたは材料の同時堆積がある場合のブレンド層が含まれる。さらに、Zr、W、Crなど、現在提供されていない異なる金属を使用して代替のCu合金を製造することができる。これらの代替の合金元素は、異なる色および物理的特性をもたらす可能性がある。
【0006】
有利には、本発明の様々な製品を製造するために使用することができる銅ベース合金が市販されている(例えば、CuVerroから)。一変形形態では、この合金で作られたターゲットからの物理気相成長(PVD)堆積が、合金それ自体では形成できない製品用の薄膜を提供できる。本発明の他の態様は、軟質銅合金の耐久性および機能性を改善することに関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】外側銅合金層を有するコーティングされた基材の概略図である。
【
図2】交互のジルコニウム含有層と銅合金層とを有するコーティングされた基材の概略図である。
【
図3】外側混合ジルコニウム銅合金層を有するコーティングされた基材の概略図である。
【
図4】本明細書で提供される多層コーティングを形成するために使用することができるコーティングシステムの概略図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らに現在知られている本発明を実施する最良の形態を構成する、本発明の現在好ましい組成物、実施形態および方法をここで詳細に参照する。図は必ずしも縮尺通りではない。しかしながら、開示された実施形態は本発明の単なる例示であり、それは種々のおよび代替の形態で具体化され得ることが理解されるべきである。したがって、本明細書に開示された特定の詳細は、限定として解釈されるべきではなく、単に本発明の任意の態様の代表的な根拠としておよび/または当業者に本発明を様々に使用することを教示するための代表的な根拠として解釈される。
【0009】
特定の構成要素および/または条件はもちろん変化し得るので、本発明は以下に記載される特定の実施形態および方法に限定されないこともまた理解されるべきである。さらに、本明細書で使用される用語は、本発明の特定の実施形態を説明する目的でのみ使用されており、決して限定することを意図していない。
【0010】
明細書および添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の指示対象を含むことにも留意しなければならない。例えば、単数形の構成要素への言及は、複数の構成要素を含むことを意図している。
【0011】
用語「含む」は、「含む」、「有する」、「含有する」、または「によって特徴付けられる」と同義である。これらの用語は包括的であり、非限定的であり、列挙されていない追加の要素または方法工程を排除するものではない。
【0012】
「からなる」という句は、請求項に特定されていないあらゆる要素、工程、または成分を除外する。この句が前段の直後ではなく、請求項の主要部の文節に現れるときは、その文節で示される要素だけを制限し、他の要素は全体として特許請求の範囲から排除されない。
【0013】
「から本質的になる」という句は、特許請求の範囲を特定の材料または工程、ならびに特許請求される主題の基本的および新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。
【0014】
用語「含む」、「からなる」、および「から本質的になる」に関して、これらの3つの用語のうちの1つが本明細書で使用される場合、本開示および特許請求される主題は他の2つの用語のいずれかの使用を含むことができる。
【0015】
整数範囲は明示的に全ての介在する整数を含むことも理解されるべきである。例えば、1~10までの整数の範囲には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10が明示的に含まれる。同様に、1~100の範囲には、1、2、3、4...97、98、99、100が含まれる。同様に、いずれかの範囲が要求されるとき、上限と下限との間の差を10で割った増加分である介在する数は、代替の上限または下限と見なすことができる。例えば、範囲が1.1~2.1の場合、以下の数値1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9および2.0を下限または上限として選択できる。
【0016】
本明細書に示される例では、濃度、温度、および反応条件(例えば、圧力、pH、流速など)は、例に与えられた値の2桁の有効数字に丸めまたは切り捨てて示された値の±50%で実施することができる。一改良形態において、濃度、温度、および反応条件(例えば圧力、pH、流速など)は、例に与えられた値の2桁の有効数字に丸めまたは切り捨てて示された値の±30%で実施することができる。別の改良形態において、濃度、温度、および反応条件(例えば圧力)は、例に与えられた値の2桁の有効数字に丸めまたは切り捨てて示された値の±10%で実施することができる。
【0017】
本出願を通して、刊行物が参照される場合、これらの刊行物の開示はそれらの全体が参照により本出願に組み込まれ、本発明が属する技術分野の状況をより完全に説明する。
【0018】
略語:
【0019】
「SCCM」とは、毎分標準立方センチメートルを意味する。
【0020】
一実施形態では、銅含有合金を含むコーティングされた基材が提供される。コーティングされた基材は、基材、基材上に配設されたジルコニウム含有ベース層、およびジルコニウム含有ベース層上に配設された1つ以上の(すなわち、または複数の)銅合金層を含む。ジルコニウム含有ベース層は、炭窒化ジルコニウムベース層または窒化ジルコニウムベース層のいずれかである。一変形形態では、各銅合金層は銅およびニッケルを含む。典型的には、各銅合金は、銅合金層の総重量の約8~28重量%の量のニッケルを含み、銅は、銅合金層の総重量の約72~92重量%の量で存在する。一改良形態において、各銅合金層は、銅合金層の総重量の約10~25重量%の量のニッケルと、銅合金層の総重量の約75~90重量%の量の銅とを含む。いくつかの変形形態では、各銅合金層は、鉄、ジルコニウム、タングステン、クロム、およびそれらの組み合わせなどの追加の元素を独立して含むことができる。一改良形態では、これらの追加の元素のそれぞれは、銅合金層の総重量の約0.01~約5重量%の量で独立して存在する。一改良形態では、これらの追加の元素のそれぞれは、銅合金層の総重量の約0.01~約5重量%の量で独立して存在する。銅合金の例は、Louisville,KYにあるOlin Brassから市販されているCuVerro(登録商標)White BronzeおよびCuVerro(登録商標)Roseである。
【0021】
典型的には、ジルコニウム含有ベース層はジルコニウム、炭素および窒素を含み、ここでジルコニウムは少なくとも50モル%の量で存在し、炭素および窒素はそれぞれ少なくとも0.02および0.1モル%の量で存在する。一改良形態では、ジルコニウム含有ベース層は、以下の式を有する化合物を含む:
Zr1-x-yCxNy
式中、xは0.0~0.3であり、yは0.1~0.5である。一改良形態では、xは0.0~0.2であり、yは0.2~0.3である。別の改良形態では、xは、少なくとも好ましさが増す順に0.0、0.02、0.03、0.04、0.05、0.07、または0.09で、最大では好ましさが増す順に0.5、0.4、0.3、0.25、0.2、0.15、または0.11である。同様に、この改良形態では、yは、少なくとも好ましさが増す順に0.1、0.15、0.2、0.25、0.27、または0.29で、最大では好ましさが増す順に0.6、0.5、0.40、0.35、0.33、または0.31である。さらなる改良形態において、ジルコニウム含有ベース層は、Zr0.60C0.10N0.30によって記載される炭窒化ジルコニウムを含む。
【0022】
本明細書で使用される基材は、実質的に任意の固体基材を含み得る。そのような基材の例には、金属基材、プラスチック基材、およびガラス基材が含まれる。一変形形態では、基材はガラスではない。いくつかの変形形態では、基材は金属接着層で予めコーティングされている。そのような金属接着層は、クロム、ニッケル、タングステン、ジルコニウム、およびそれらの組み合わせなどの金属を含む。接着層には任意の厚さを使用することができるが、有用な厚さは100nm~0.2ミクロンである。
【0023】
図1、2、および3は、上記で示されたジルコニウム含有ベース層および銅合金層でコーティングされた基材についての異なる構成を提供する。
図1は、1つ以上の銅合金層が単層である例を提供する。この例では、基材10は、銅合金層14でオーバーコーティングされているジルコニウム含有ベース層12でコーティングされている。一改良形態では、任意の金属接着層18が基材10とジルコニウム含有層12との間に挿入されている。別の改良形態において、ジルコニウム含有ベース層12は典型的には約100~800nmの厚さを有し、銅合金層14は典型的には約50~600nmの厚さを有し、存在する場合、金属接着層18は約10~200nmの厚さを有する。さらに別の改良形態では、ジルコニウム含有ベース層12は典型的には約200~400nmの厚さを有し、銅合金層14は典型的には約100~300nmの厚さを有し、存在する場合、金属接着層18は約20~80nmの厚さを有する。
【0024】
図2を参照すると、交互の銅合金層とジルコニウム含有層とを有するコーティングされた基材の概略図が提供されている。この例では、基材20は、交互の銅合金層24およびジルコニウム含有中間層26でオーバーコーティングされているジルコニウム含有ベース層22でコーティングされている。ジルコニウム含有中間層は、炭窒化ジルコニウム中間層または窒化ジルコニウム中間層のいずれかである。一変形形態では、コーティングされた基材は、3~10個の銅合金層と、3~10個のジルコニウム含有中間層とを含む。一改良形態では、任意の金属接着層28が、基材20とジルコニウム含有ベース層22との間に挿入されている。ジルコニウム含有ベース層22およびジルコニウム含有中間層26はそれぞれ典型的には約40~150nmの厚さを有し、一方で銅合金層14は典型的には約20~80nmの厚さを有する。金属接着層28は、存在する場合、約20~80nmの厚さを有する。この変形形態では、ジルコニウム含有ベース層22およびジルコニウム含有中間層26は、それぞれ独立して、上記で示されたジルコニウム含有に関する式を有する。
【0025】
図3を参照すると、ブレンドジルコニウム銅合金層を有するコーティングされた基材の概略図が提供されている。この例では、基材30は、ブレンドジルコニウム銅合金層34でオーバーコーティングされているジルコニウム含有ベース層32でコーティングされている。一改良形態では、ブレンドジルコニウム銅合金層34はブレンドジルコニウム含有/銅合金層である(すなわち、それは炭窒化ジルコニウムと一緒にブレンドされた銅合金の両方を含む)。一変形形態では、ジルコニウム含有ベース層32は存在しない。別の改良形態では、任意の金属接着層38は、基材30と、ジルコニウム含有ベース層32またはジルコニウム含有ベース層32が存在しない場合はブレンドジルコニウム銅合金層34との間に挿入される。ジルコニウム含有ベース層32は、存在する場合、典型的には約20~300nmの厚さを有し、ブレンドジルコニウム銅合金層34は典型的には約50~600nmの厚さを有し、存在する場合、金属接着層38は約10~200nmの厚さを有する。一改良形態では、ジルコニウム含有ベース層32が存在する場合、それは典型的には約40~150nmの厚さを有し、ブレンドジルコニウム銅合金層34は、典型的には約100~300nmの厚さを有し、金属接着層38は、存在する場合には、約20~80nmの厚さを有する。
【0026】
図4を参照すると、上記で示されたコーティングされた基材を形成するために使用することができるコーティングシステムの概略図が提供されている。コーティングシステム40は真空チャンバ44内に配設されたアークソース42を含む。アークソース42は、上記で示された金属接着層とジルコニウム含有層とを堆積するために使用される。コーティングシステム40はまた、銅合金層を堆積するためのマグネトロンスパッタソース46と、関連するシャッタ48とを含む。シャッタ48はマグネトロンスパッタソース46の利用可能性を制御し、銅合金層が堆積されたときに開き、そうでなければ閉じられる。基材50はまた、典型的にはアークソース42の周りを移動する真空チャンバ44と共に配設される。
【0027】
以下の実施例は本発明の様々な実施形態を例示する。当業者は、本発明の趣旨および特許請求の範囲内にある多くの変形形態を認識する。
【0028】
[実施例1](二層)
【0029】
真空薄膜堆積チャンバを2.0×10-5Torrの圧力まで排気する。次いで、壁に取り付けられた抵抗発熱体を使用してチャンバを150℃の温度に加熱する。チャンバ内のカルーセル上には、壁に取り付けられたマグネトロンスパッタリングカソードと中央に配置された円筒形アークカソードとの間で2軸の遊星運動で回転するラック上にクロム電気メッキ真鍮ドアハンドルが取り付けられている。イオンエッチング表面処理は、アルゴンガスを用いて25.0mTorrの圧力に埋め戻すことによって行われ、-500Vのバイアス電圧が部品に印加される。ジルコニウム金属接着層は、400Aの電流でアークカソ―ドにアークを当てることによってハンドル部品に適用される。チャンバをアルゴンで3.0mTorrの圧力まで埋め戻し、-100Vの基材バイアスを印加する。この工程は3分間続き、厚さ50nmのZr金属の層を構築する。炭窒化ジルコニウムで構成される第2のコーティング層は、Zrターゲット上にアークを作動させ続けるが、およそZr0.60C0.10N0.30の組成のために、窒素およびメタンガスをそれぞれ80sccmおよび20sccmのフローで加えることによって適用される。この層は25分で300nmまで構築され、その時点でZrアークカソードが止められ、窒素およびメタンガスが遮断され、アルゴンのみが3.0mTorrの圧力で流れ続ける。壁に取り付けたマグネトロンスパッタリングカソードへのシャッタが開かれ、C706銅合金材料で構成されるターゲットが現れる。カソードに30分間10kWのレベルまで電力を供給し、200nmの層厚さを得る。得られた膜は全部で550nmの厚さである。
【0030】
[実施例2](多層)
【0031】
真空薄膜堆積チャンバを2.0×10-5Torrの圧力まで排気する。次いで、壁に取り付けられた抵抗発熱体を使用してチャンバを150℃の温度に加熱する。チャンバ内のカルーセル上には、壁に取り付けられたマグネトロンスパッタリングカソードと中央に配置された円筒形アークカソードとの間で2軸の遊星運動で回転するラック上にステンレス鋼パネルが取り付けられている。イオンエッチング表面処理は、アルゴンガスを用いて25.0mTorrの圧力に埋め戻すことによって行われ、-500Vのバイアス電圧が部品に印加される。ジルコニウム金属接着層は、400Aの電流でアークカソードにアークを当てることによってパネルに適用される。チャンバをアルゴンで3.0mTorrの圧力まで埋め戻し、-100Vの基材バイアスを印加する。この工程は3分間続き、厚さ50nmのZr金属の層を構築する。炭窒化ジルコニウムで構成される第2のコーティング層は、Zrターゲット上にアークを作動させ続けるが、およそZr0.60C0.10N0.30の組成のために、窒素およびメタンガスをそれぞれ80sccmおよび20sccmのフローで加えることによって適用される。この層は5分で60nmまで構築され、その時点でZrアークカソードが止められ、窒素およびメタンガスが遮断され、アルゴンのみが3.0mTorrの圧力で流れ続ける。壁に取り付けたマグネトロンスパッタリングカソードへのシャッタが開かれ、C706銅合金材料で構成されるターゲットが現れる。カソードに6分間10kWのレベルまで電力を供給し、40nmの層厚さを得る。これら最後の二層はさらに4回繰り返され、交互に合計10層まで構築される。得られた膜は全部で550nmの厚さである。
【0032】
[実施例2](ブレンド)
【0033】
真空薄膜堆積チャンバを2.0×10-5Torrの圧力まで排気する。チャンバは室温で操作される。チャンバ内のカルーセル上には、壁に取り付けられたマグネトロンスパッタリングカソードと中央に配置された円筒形アークカソードとの間で2軸の遊星運動で回転するラック上にCrメッキABSプラスチックトリム部品が取り付けられている。イオンエッチング表面処理は、アルゴンガスを用いて25.0mTorrの圧力に埋め戻すことによって行われ、-500Vのバイアス電圧が部品に印加される。ジルコニウム金属接着層は、300Aの電流でアークカソードにアークを当てることによってパネルに適用される。チャンバをアルゴンで3.0mTorrの圧力まで埋め戻し、-50Vの基材バイアスを印加する。この工程は3分間続き、40nm厚さのZr金属の層を構築する。Cu合金および炭窒化ジルコニウムの混合物で構成される第2のコーティング層は、Zrターゲット上にアークを作動させ続けるが、およそZr0.60C0.10N0.30の組成のために、窒素およびメタンガスをそれぞれ80sccmおよび20sccmのフローで加えることによって適用される。壁に取り付けたマグネトロンスパッタリングカソードへのシャッタが開かれ、C706銅合金材料で構成されるターゲットが現れる。カソードは10kWのレベルに電力が供給される。ZrアークターゲットおよびCu合金スパッタターゲットの両方が10分間作動して、160nmの厚さのコーティング層をもたらした。得られた膜は200nmの厚さである。
【0034】
表1は、銅合金およびZrCNに基づくコーティングされた基材について、D65光源および10度の観察者角度でCIELAB色空間を使用するMinolta分光光度計を使用して行った色測定を提供する。上記で示されたコーティングされた基材の変形形態は表1の値の±10%の色座標を有する。
【表1】
【0035】
例示的な実施形態が上記で記載されているが、これらの実施形態が本発明の全ての可能な形態を説明することを意図するものではない。むしろ、本明細書で使用されている言葉は、限定ではなく説明の言葉であり、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な変更がなされてもよいことが理解される。さらに、様々な実施形態の特徴を組み合わせて本発明のさらなる実施形態を形成してもよい。