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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】瓦礫内部調査装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
E04G23/08 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019151402
(22)【出願日】2019-08-21
(65)【公開番号】P2021031905
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 豊
(72)【発明者】
【氏名】小川 達也
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-059360(JP,A)
【文献】特開2018-059371(JP,A)
【文献】特開2014-091180(JP,A)
【文献】特開2014-162619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/00-23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
瓦礫の内部を調査するための装置であって、
揚重機に懸垂支持された本体と、
前記本体に対して起伏可能に設けられ、先端側を前記瓦礫の内部に挿入するために伸縮可能に構成されたアーム手段と、
前記アーム手段の先端側に設けられ、遠隔操作により前記瓦礫の内部を調査するための調査手段と、
前記瓦礫の周辺の安定した構造体に押し当てて前記本体を安定化するために前記本体の外側に設けられ、前記瓦礫の崩落を防止する緩衝手段と
前記揚重機に懸垂支持された前記本体の荷振れを防止するために前記本体に設けられ、地上から延びる係留索を介して前記本体を空中に係留するための係留手段とを備えることを特徴とする瓦礫内部調査装置。
【請求項2】
前記本体に設けられ、自身の鉛直軸回りの旋回方向を調整する旋回手段を有する駆動・制御ユニットをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の瓦礫内部調査装置。
【請求項3】
前記アーム手段に設けられ、前記調査手段を保護するための保護手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の瓦礫内部調査装置。
【請求項4】
前記調査手段は、遠隔操作により前記瓦礫の内部を撮影する撮影手段、遠隔操作により前記瓦礫を採取する採取手段、遠隔操作により前記瓦礫の内部の形状データを取得する3Dスキャナー手段、遠隔操作により前記瓦礫の内部の放射線の線量を計測する線量計測手段、遠隔操作により前記瓦礫の内部のダストをサンプリングするダストサンプリング手段のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の瓦礫内部調査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瓦礫の内部状況などを調査するための瓦礫内部調査装置に関し、特に放射能汚染したコンクリート構造物の解体などに伴って発生する放射性瓦礫の内部状況などを調査するのに好適な瓦礫内部調査装置、および、この瓦礫内部調査装置を用いた瓦礫内部調査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、放射能汚染されたコンクリート構造物の解体などに伴って発生する放射性瓦礫の内部状況などを調査できる装置として、例えば内視鏡のような索状ロボットや、車輪のついた自走式ロボットなど種々のタイプが存在している。
【0003】
しかし、こうした装置は一般に機構が複雑で、信頼性に乏しい、コストが高いなどの問題を抱えている。さらに、放射性瓦礫の堆積場所のような人が近づき難い場所への遠隔操作となるとさらにハードルは高く、また装置が瓦礫に直接触れることで、堆積した瓦礫の崩落リスクが高くなるなど作業安全性の確保に関しても問題を抱えている。
【0004】
このような問題を解決する技術として、本特許出願人は、特許文献1に示すような瓦礫内部調査装置を提案している。この瓦礫内部調査装置は、瓦礫の内部を調査するための装置であって、揚重機に懸垂支持された本体と、前記本体から出没自在に設けられ、先端を前記瓦礫の内部に挿入可能なアーム手段と、前記アーム手段に設けられ、遠隔操作により前記瓦礫の内部を調査するための調査手段と、前記瓦礫の周辺の安定した構造体に押し当てるために前記本体の外側に設けられ、前記瓦礫の崩落を防止する緩衝手段とを備えるものである。これを用いて瓦礫の内部を調査する場合には、揚重機を操作して前記本体を調査対象の瓦礫の近傍に配置し、続いて、前記緩衝手段を、前記瓦礫の周辺の安定した構造体に押し当てて前記本体の安定化を図り、その後、前記アーム手段の先端を前記瓦礫の内部に挿入して、前記調査手段により前記瓦礫の内部を調査する、という手順を踏む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-059360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の従来の特許文献1の瓦礫内部調査装置は、駆動・制御ユニットに吊り下げて使用するので、緩衝手段を瓦礫の周辺の安定した構造体に押し当てて本体を安定化した後でなければ、アーム手段の先端を瓦礫の内部に挿入することは難しい。また、瓦礫の上方など任意の場所から瓦礫の内部を調査することは難しい。さらに、玉掛けから地切り、荷降ろし仮置きなど準備や片付け作業に時間が掛かるとともに、仮置き時のヤードを広く確保する必要がある。駆動・制御ユニットに自身の鉛直軸回りの旋回方向を調整する旋回手段が設けられているので、旋回制御の際にワイヤーによる捻れが発生するといった問題もある。そこで、このような問題を解決するために使用性に優れた瓦礫内部調査装置が求められていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、使用性に優れた瓦礫内部調査装置および瓦礫内部調査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る瓦礫内部調査装置は、瓦礫の内部を調査するための装置であって、揚重機に懸垂支持された本体と、前記本体に対して起伏可能に設けられ、先端側を前記瓦礫の内部に挿入するために伸縮可能に構成されたアーム手段と、前記アーム手段の先端側に設けられ、遠隔操作により前記瓦礫の内部を調査するための調査手段と、前記瓦礫の周辺の安定した構造体に押し当てて前記本体を安定化するために前記本体の外側に設けられ、前記瓦礫の崩落を防止する緩衝手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る他の瓦礫内部調査装置は、上述した発明において、前記本体に設けられ、自身の鉛直軸回りの旋回方向を調整する旋回手段を有する駆動・制御ユニットをさらに備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の瓦礫内部調査装置は、上述した発明において、前記揚重機に懸垂支持された前記本体の荷振れを防止するために前記本体に設けられ、地上から延びる係留索を介して前記本体を空中に係留するための係留手段をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の瓦礫内部調査装置は、上述した発明において、前記アーム手段に設けられ、前記調査手段を保護するための保護手段をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る他の瓦礫内部調査装置は、上述した発明において、前記調査手段は、遠隔操作により前記瓦礫の内部を撮影する撮影手段、遠隔操作により前記瓦礫を採取する採取手段、遠隔操作により前記瓦礫の内部の形状データを取得する3Dスキャナー手段、遠隔操作により前記瓦礫の内部の放射線の線量を計測する線量計測手段、遠隔操作により前記瓦礫の内部のダストをサンプリングするダストサンプリング手段のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る瓦礫内部調査方法は、上述した瓦礫内部調査装置を用いて瓦礫の内部を調査する方法であって、前記揚重機を操作して前記本体を調査対象の瓦礫の近傍に配置した後、前記本体を安定化するステップと、安定化した前記本体から前記アーム手段の先端側を前記瓦礫の内部に挿入して、前記調査手段により前記瓦礫の内部を調査するステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る瓦礫内部調査装置によれば、瓦礫の内部を調査するための装置であって、揚重機に懸垂支持された本体と、前記本体に対して起伏可能に設けられ、先端側を前記瓦礫の内部に挿入するために伸縮可能に構成されたアーム手段と、前記アーム手段の先端側に設けられ、遠隔操作により前記瓦礫の内部を調査するための調査手段と、前記瓦礫の周辺の安定した構造体に押し当てて前記本体を安定化するために前記本体の外側に設けられ、前記瓦礫の崩落を防止する緩衝手段とを備えるので、瓦礫に対して任意の方向からのアプローチが可能となり、使用性に優れた瓦礫内部調査装置を提供することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る他の瓦礫内部調査装置によれば、前記本体に設けられ、自身の鉛直軸回りの旋回方向を調整する旋回手段を有する駆動・制御ユニットをさらに備えるので、従来の装置に比べて揚重、旋回時の操作性が向上するとともに、装置全体がコンパクトになり、仮置き時の占有面積を小さくし、設置準備や片付けの時間を短縮することができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る他の瓦礫内部調査装置によれば、前記揚重機に懸垂支持された前記本体の荷振れを防止するために前記本体に設けられ、地上から延びる係留索を介して前記本体を空中に係留するための係留手段をさらに備えるので、本体の荷振れを防止することで、瓦礫の上部からの調査が容易になるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る他の瓦礫内部調査装置によれば、前記アーム手段に設けられ、前記調査手段を保護するための保護手段をさらに備えるので、調査手段が瓦礫に接触して破損するおそれを低減することができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係る他の瓦礫内部調査装置によれば、前記調査手段は、遠隔操作により前記瓦礫の内部を撮影する撮影手段、遠隔操作により前記瓦礫を採取する採取手段、遠隔操作により前記瓦礫の内部の形状データを取得する3Dスキャナー手段、遠隔操作により前記瓦礫の内部の放射線の線量を計測する線量計測手段、遠隔操作により前記瓦礫の内部のダストをサンプリングするダストサンプリング手段のうち少なくとも一つを含むので、瓦礫内部についての多様な調査が可能になるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明に係る瓦礫内部調査方法によれば、上述した瓦礫内部調査装置を用いて瓦礫の内部を調査する方法であって、前記揚重機を操作して前記本体を調査対象の瓦礫の近傍に配置した後、前記本体を安定化するステップと、安定化した前記本体から前記アーム手段の先端側を前記瓦礫の内部に挿入して、前記調査手段により前記瓦礫の内部を調査するステップとを備えるので、使用性に優れた瓦礫内部調査方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に係る瓦礫内部調査装置の実施の形態を示す概略斜視図である。
図2図2は、本発明に係る瓦礫内部調査装置の実施の形態の要部側面図であり、(1)は完全収縮状態、(2)は中間状態、(3)は完全伸長状態である。
図3図3は、本発明に係る瓦礫内部調査装置の実施の形態の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る瓦礫内部調査装置および瓦礫内部調査方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
(瓦礫内部調査装置)
まず、本発明に係る瓦礫内部調査装置の実施の形態について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る瓦礫内部調査装置10は、瓦礫の内部を調査するための装置であって、図外のクレーン(揚重機)のフックにワイヤー12で吊り下げられた本体14と、駆動・制御ユニット16と、アーム18(アーム手段)と、調査装置20(調査手段)と、係留装置22(係留手段)とを備える。なお、本実施の形態では、本体14の総重量が数t程度のものを想定し、本体14の横幅、高さ、奥行きが数m程度のものを想定しているが、重量、寸法はこれに限るものではない。
【0023】
本体14は、略直方体状の鋼製の枠体24と、枠体24の内部に上下方向に間隔をあけて設けられた仕切板26と、枠体24の下部の四隅の下に延びる脚部28とを備える。枠体24の内部は、上の仕切板26によって上室と下室とに仕切られている。下室の左右両外側には、作業員が搭乗可能な張出足場30が設けられる。また、本体14の前側の上下左右には、左右方向に長いロール状のバンパー32が設けられる。バンパー32は、瓦礫の崩落を防止するために、瓦礫の周辺の安定した構造体(例えば安定した動かない鉄骨や躯体など)に押し当てて本体14を安定化するための緩衝手段である。バンパー32を周辺の構造体に押し当てることで本体14が安定し、荷振れなどして瓦礫に過剰な外力を与えるおそれがなくなり、瓦礫の崩落リスクを回避しながら、瓦礫の内部状況をより安全に調査することができる。バンパー32は、本体14における位置を可変に構成してもよい。このようにすれば、例えば調査直前に現場にて所望の位置に取付けることが可能である。また、調査地点の特性の違いなど、押し当てる構造体の位置の変化に柔軟に対応することができる。なお、本体14に、位置確認用のプリズムやLED光源等の照明装置、監視用または俯瞰用のカメラを複数設けてもよい。これらを用いて、本装置10を構成する機器やその周囲との距離等を監視したり、照明するようにしてもよい。
【0024】
駆動・制御ユニット16は、アーム18および調査装置20の動作を駆動・制御するためのものであり、旋回装置34と、エンジン発電機36と、制御盤38とを含んで構成される。旋回装置34は本体14の上室に、エンジン発電機36、制御盤38は下室に設けられる。
【0025】
旋回装置34は、自身の鉛直軸回りの旋回方向を調整制御する旋回ファン40(旋回手段)を有する。旋回ファン40は旋回装置34の左右2カ所に配置され、水平方向の推力を発生する。各旋回ファン40の回転速度、回転方向等を駆動・制御することで本体14の旋回方向を所望の方向(鉛直軸回りに360°)に調整可能である。
【0026】
エンジン発電機36は、本装置10を駆動する電源であり、図示しない電源ケーブルを介して旋回装置34、後述のアーム駆動装置、調査装置20、係留装置22、通信機器などに駆動電力を供給する。制御盤38は、本装置10を制御する装置であり、図示しない通信機器および通信ケーブルによるデータの送受信によって旋回装置34、後述のアーム駆動装置、調査装置20、係留装置22、通信機器などの動作を制御する。また、制御盤38は図示しないカメラから受信した映像信号を自身に備わるレコーダーに記録することもできる。
【0027】
アーム18は、根元フレーム42と、中間フレーム44と、先端フレーム46とからなり、2段階の伸縮機能と、向きを変更可能な起伏機能とを有している。各フレーム42、44、46は同一方向に直線状に延びており、例えば形鋼を組み合わせて構成することができる。根元フレーム42の後端部は、本体14に対して回動自在に固定されている。すなわち、図2および図3に示すように、根元フレーム42の後端部には、根元フレーム42の延在方向に対して直角下向きに延びた基部48が設けられている。基部48は、上側の軸支部50で本体14に対して本体14の左右方向の軸回りに回転自在に固定され、下側の軸支部52で起伏シリンダ54の可動ロッド56の前端部に対して本体14の左右方向の軸回りに回転自在に固定されている。起伏シリンダ本体58は、本体14の下部に取り付けられており、本体14の前側に行くに従って下側に行くように斜め方向に配置されている。この構成において、起伏シリンダ54の伸長動作は、図示しないアーム駆動装置によって駆動される。起伏シリンダ54の可動ロッド56が伸長すると、基部48の下端部を前方下側に押し出し、根元フレーム42を介してアーム18が起き上がる。逆に、起伏シリンダ54の可動ロッド56が収縮すると、基部48の下端部を後方上側に引き込み、根元フレーム42を介してアーム18が倒伏する。可動ロッド56の伸縮量を調整することで、アーム18の倒伏角度θを水平状態と鉛直状態の間の任意の角度に設定することができる。アーム18が本体14に対して姿勢を起伏可能なため、従来の装置のように瓦礫に対して水平方向からだけでなく、任意の方向からのアプローチが可能である。
【0028】
根元フレーム42は、一対の溝形鋼42Aを背向配置して構成される。根元フレーム42の下側には、中間フレーム44を伸縮するための電動ウインチ60を含む伸縮機構62が設けられている。
【0029】
中間フレーム44は、根元フレーム42の上面に対して延在方向に相対移動可能に固定されている。この中間フレーム44は、根元フレーム42を左右上側から挟み込む態様で左右に間隔をあけて対向配置された一対の形鋼44Aと、形鋼44Aの上面間を左右方向に連結する連結部材44Bと、根元フレーム42の左右の溝に対してそれぞれ転動自在に嵌め合わされた複数の車輪44Cとを備える。中間フレーム44の上側には、先端フレーム46を伸縮するための電動ウインチ64を含む伸縮機構66が設けられている。中間フレーム44の先端側には、調査装置20を保護するための柵状の保護カバー68(保護手段)が設けられている。保護カバー68を設けることで、調査装置20が瓦礫に接触して破損するおそれを低減することができる。
【0030】
先端フレーム46は、中間フレーム44に対して延在方向に相対移動可能に固定されている。この先端フレーム46は、中間フレーム44の左右の形鋼44A間に配置された角型鋼管46Aと、角型鋼管46Aの左右に支持され、中間フレーム44の左右の形鋼44Aの溝に対してそれぞれ転動自在に嵌め合わされた複数の車輪46Bとを備える。
【0031】
各電動ウインチ60、64には図示しないワイヤーが巻き付けられている。ワイヤーは各フレーム42、44に沿って前後方向に張設されている。各電動ウインチ60、64は、図示しないアーム駆動装置によって駆動される。本実施の形態では、電動ウインチ60、64によるワイヤー牽引力を中間フレーム44、先端フレーム46の伸縮機構の動力源としている。このため、例えば電動ウインチ60、64でワイヤーを繰り出すことで中間フレーム44、先端フレーム46をそれぞれ後方向に向けて移動(収縮)し、ワイヤーを巻き取ることで中間フレーム44、先端フレーム46をそれぞれ前方向に移動(伸長)することができる。なお、伸縮機構62、伸縮機構66を保護するためのカバーを取り付け、アーム18を瓦礫の内部に挿入した際に瓦礫が当たらないようにしてもよい。
【0032】
図2(1)は、中間フレーム44と先端フレーム46がそれぞれ完全収縮した状態(完全収縮状態)、(2)は、中間フレーム44のみが伸長した状態(中間状態)、(3)は中間フレーム44と先端フレーム46がそれぞれ伸長した状態(完全伸長状態)である。この図に示すように、アーム18は、本体14からアーム18の延在方向に2段階で伸縮可能である。これにより、アーム18は、伸長したその先端を瓦礫の内部に挿入可能である。また、アーム18は2段階で伸縮可能なため、収縮時のアーム全長を短くすることができる。なお、中間フレーム44、先端フレーム46の各伸縮量を調整することで、アーム18の伸長量を適宜調整してもよい。
【0033】
調査装置20は、遠隔操作により瓦礫の内部を調査するためのものであり、アーム18(先端フレーム46)の先端に対して着脱自在に設けられている。調査装置20としては、調査内容や調査位置の開口の大きさに合わせて様々な装置を用いることができ、例えば、遠隔操作により瓦礫の内部を撮影する撮影手段としての360°静止画カメラ、遠隔操作により瓦礫を採取する採取手段としてのスコップ、遠隔操作により瓦礫の内部の形状データを取得する3Dスキャナー手段としての3Dスキャナー、遠隔操作により瓦礫の内部の放射線の線量を計測する線量計測手段としてのハンディ線量計、遠隔操作により瓦礫の内部のダストをサンプリングする手段としてのダストサンプリング装置などを用いることができる。このようにすれば、瓦礫内部についての多種多様な調査が可能になる。例えば、調査装置20としてカメラや採取用スコップを用いた場合、人が近づき難い放射性瓦礫に対してクレーンで本体を吊り下げ移動して、遠隔操作により瓦礫内部の映像取得や、瓦礫サンプル取得を行うことができる。調査装置20の電源ケーブルおよび通信ケーブルは、アーム18の内側に配置して外側に露出しないようにしてもよい。このようにすれば、これらのケーブルが周辺の瓦礫などに引っ掛かる事態を防止することができる。
【0034】
係留装置22は、瓦礫の上部からなどのアプローチを考慮して本体14の荷振れを防止するために、本体14に設けられる。この係留装置22は、本体14の下の仕切板26の下面の左右側に取り付けられた電動チェーンブロック22Aと、これに接続したスプリングバランサー22B(係留索)と、錘22Cとを用いて構成される。この係留装置22は船の錨のように作用し、クレーンで吊り下げられた本体14から錘22Cを任意の位置(地上)に下ろすことで、本体14が安定化する。これにより瓦礫の上部からの調査が容易になる。
【0035】
上記の構成によれば、瓦礫に対して任意の方向からのアプローチが可能となる。すなわち水平方向のみならず、垂直方向や斜め方向など任意の場所から、瓦礫の内部状況の調査が可能となる。したがって、従来の装置に比べて使用性に優れた瓦礫内部調査装置10を提供することができる。また、自身の鉛直軸回りの旋回方向を調整する旋回装置34を本体14に備えるので、従来の装置に比べて揚重、旋回時のワイヤーの捻れなどがなくなり操作性が向上する。また、装置全体がコンパクトになり、仮置き時の占有面積を小さくし、設置準備や片付けの作業時間を短縮することができる。作業時間が短くなることで、被ばく線量を低減することができる。
【0036】
(瓦礫内部調査方法)
次に、本発明に係る瓦礫内部調査方法の実施の形態について説明する。
本発明に係る瓦礫内部調査方法は、上述した瓦礫内部調査装置10を用いて瓦礫の内部を調査する方法である。まず、クレーンを操作して本体14を調査対象の瓦礫の近傍に配置する。続いて、係留装置22の錘22Cを地上に下ろして本体を安定化させる。その後、調査対象の瓦礫に応じて、アーム18の起伏角度θ、伸縮量を調整する。次に、アーム18の先端側を瓦礫の内部に挿入して、調査装置20により瓦礫の内部を調査する。例えば調査装置20としてカメラやサンプル採取用スコップを先端に搭載したアーム18をスライドさせ、瓦礫の上方より瓦礫の内部に挿入し、映像やサンプルを取得する。
【0037】
本実施の形態によれば、瓦礫に対して任意の方向からのアプローチが可能となる。すなわち水平方向のみならず、垂直方向や斜め方向など任意の場所から、瓦礫の内部状況の調査が可能となる。したがって、従来の装置に比べて使用性に優れた瓦礫内部調査方法を提供することができる。また、自身の鉛直軸回りの旋回方向を調整する旋回装置34を本体14に備えるので、従来の装置に比べて揚重、旋回時のワイヤーの捻れなどがなくなり操作性が向上する。また、装置全体がコンパクトになり、仮置き時の占有面積を小さくし、設置準備や片付けの作業時間を短縮することができる。作業時間が短くなることで、被ばく線量を低減することができる。
【0038】
以上説明したように、本発明に係る瓦礫内部調査装置によれば、瓦礫の内部を調査するための装置であって、揚重機に懸垂支持された本体と、前記本体に対して起伏可能に設けられ、先端側を前記瓦礫の内部に挿入するために伸縮可能に構成されたアーム手段と、前記アーム手段の先端側に設けられ、遠隔操作により前記瓦礫の内部を調査するための調査手段と、前記瓦礫の周辺の安定した構造体に押し当てて前記本体を安定化するために前記本体の外側に設けられ、前記瓦礫の崩落を防止する緩衝手段とを備えるので、瓦礫に対して任意の方向からのアプローチが可能となり、使用性に優れた瓦礫内部調査装置を提供することができる。
【0039】
また、本発明に係る他の瓦礫内部調査装置によれば、前記本体に設けられ、自身の鉛直軸回りの旋回方向を調整する旋回手段を有する駆動・制御ユニットをさらに備えるので、従来の装置に比べて揚重、旋回時の操作性が向上するとともに、装置全体がコンパクトになり、仮置き時の占有面積を小さくし、設置準備や片付けの時間を短縮することができる。
【0040】
また、本発明に係る他の瓦礫内部調査装置によれば、前記揚重機に懸垂支持された前記本体の荷振れを防止するために前記本体に設けられ、地上から延びる係留索を介して前記本体を空中に係留するための係留手段をさらに備えるので、本体の荷振れを防止することで、瓦礫の上部からの調査が容易になる。
【0041】
また、本発明に係る他の瓦礫内部調査装置によれば、前記アーム手段に設けられ、前記調査手段を保護するための保護手段をさらに備えるので、調査手段が瓦礫に接触して破損するおそれを低減することができる。
【0042】
また、本発明に係る他の瓦礫内部調査装置によれば、前記調査手段は、遠隔操作により前記瓦礫の内部を撮影する撮影手段、遠隔操作により前記瓦礫を採取する採取手段、遠隔操作により前記瓦礫の内部の形状データを取得する3Dスキャナー手段、遠隔操作により前記瓦礫の内部の放射線の線量を計測する線量計測手段、遠隔操作により前記瓦礫の内部のダストをサンプリングするダストサンプリング手段のうち少なくとも一つを含むので、瓦礫内部についての多様な調査が可能になる。
【0043】
また、本発明に係る瓦礫内部調査方法によれば、上述した瓦礫内部調査装置を用いて瓦礫の内部を調査する方法であって、前記揚重機を操作して前記本体を調査対象の瓦礫の近傍に配置した後、前記本体を安定化するステップと、安定化した前記本体から前記アーム手段の先端側を前記瓦礫の内部に挿入して、前記調査手段により前記瓦礫の内部を調査するステップとを備えるので、使用性に優れた瓦礫内部調査方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明に係る瓦礫内部調査装置および瓦礫内部調査方法は、瓦礫の崩落リスクを回避しながら、瓦礫の内部状況を調査するのに有用であり、特に、放射能汚染したコンクリート構造物の解体などに伴って発生する放射性瓦礫の内部状況などを調査するのに適している。
【符号の説明】
【0045】
10 瓦礫内部調査装置
12 ワイヤー
14 本体
16 駆動・制御ユニット
18 アーム(アーム手段)
20 調査装置(調査手段)
22 係留装置(係留手段)
24 枠体
26 仕切板
28 脚部
30 張出足場
32 バンパー(緩衝手段)
34 旋回装置
36 エンジン発電機
38 制御盤
40 旋回ファン(旋回手段)
42 根元フレーム
44 中間フレーム
46 先端フレーム
48 基部
50,52 軸支部
54 起伏シリンダ
56 可動ロッド
58 起伏シリンダ本体
60,64 電動ウインチ
62,66 伸縮機構
68 保護カバー(保護手段)
θ 倒伏角度
図1
図2
図3