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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ゴム組成物、タイヤおよびゴム製品
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20231226BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20231226BHJP
   B65G 15/32 20060101ALI20231226BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20231226BHJP
   F16L 11/04 20060101ALI20231226BHJP
   E02B 3/26 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C08L9/00
B60C1/00 Z
B65G15/32
C09K3/00 P
F16L11/04
E02B3/26 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019156151
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021031645
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、内閣府、革新的研究開発推進プログラム、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】庄田 靖宏
(72)【発明者】
【氏名】小谷 享平
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-120804(JP,A)
【文献】特開2014-109019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムと、
樹脂として、シンジオタクチックポリブタジエンと、ビニルブタジエンポリマーとを含み、
前記シンジオタクチックポリブタジエンの1,2-結合の量が、80質量%以上であり、当該1,2-結合におけるシンジオタクチシティが、60%以上であり、
前記ビニルブタジエンポリマーは、1,2-結合を有し、当該1,2-結合におけるシンジオタクチシティが、60%未満であり、
前記ビニルブタジエンポリマーの1,2-結合の量が、5~80質量%であり、
前記ジエン系ゴムは、前記シンジオタクチックポリブタジエンおよび前記ビニルブタジエンポリマーを除く、ゴム組成物。
【請求項2】
前記ビニルブタジエンポリマーの数平均分子量が、1,000~50,000である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ビニルブタジエンポリマーを、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、1~15質量部含む、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記ビニルブタジエンポリマーの1,2-結合の量が、20~80質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記ビニルブタジエンポリマーの分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が、2.0以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いた、タイヤ。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載のゴム組成物を用いた、コンベアベルト、防振ゴム、免振ゴム、ゴムクローラ、ベルト、ホースおよび防舷材からなる群より選択される、ゴム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、タイヤおよびゴム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のように、ゴム組成物にシンジオタクチックポリブタジエンを配合することで、タイヤなどのゴム製品では、耐き裂成長性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-109019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らが検討したところ、シンジオタクチックポリブタジエンを配合したゴム組成物では、シンジオタクチックポリブタジエンの結晶相に伴う、未加硫粘度の上昇および高弾性化によって、作業性が悪化することが分かった。
【0005】
そこで、本発明は、良好な作業性(未加硫時の作業性および加硫後の作業性)を有するゴム組成物を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、当該ゴム組成物を用いたタイヤを提供することを目的とする。
【0007】
さらに、本発明は、当該ゴム組成物を用いたゴム製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るゴム組成物は、
ジエン系ゴムと、
樹脂として、シンジオタクチックポリブタジエンと、ビニルブタジエンポリマーとを含み、
前記シンジオタクチックポリブタジエンの1,2-結合の量が、80質量%以上であり、当該1,2-結合におけるシンジオタクチシティが、60%以上であり、
前記ビニルブタジエンポリマーは、1,2-結合を有し、当該1,2-結合におけるシンジオタクチシティが、60%未満である、ゴム組成物である。これにより、本発明に係るゴム組成物は、良好な作業性を有する。
【0009】
本発明に係るゴム組成物では、前記ビニルブタジエンポリマーの数平均分子量が、1,000~50,000であることが好ましい。これにより、良好な作業性に加えて、優れた耐き裂成長性も得られる。
【0010】
本発明に係るゴム組成物では、前記ビニルブタジエンポリマーを、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、1~15質量部含むことが好ましい。これにより、良好な作業性に加えて、優れた耐き裂成長性も得られる。
【0011】
本発明に係るゴム組成物では、前記ビニルブタジエンポリマーの1,2-結合の量が、3~80質量%であることが好ましい。これにより、良好な作業性に加えて、優れた耐き裂成長性も得られる。
【0012】
本発明に係るゴム組成物では、前記ビニルブタジエンポリマーの分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が、2.0以下であることが好ましい。
【0013】
本発明に係るタイヤは、上記いずれかのゴム組成物を用いた、タイヤである。
【0014】
本発明に係るゴム製品は、上記いずれかのゴム組成物を用いた、コンベアベルト、防振ゴム、免振ゴム、ゴムクローラ、ベルト、ホースおよび防舷材からなる群より選択される、ゴム製品である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、良好な作業性(未加硫時の作業性および加硫後の作業性)を有するゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、良好な作業性、耐カット性および耐摩耗性を有するタイヤを提供することができる。また、本発明によれば、良好な作業性、耐カット性および耐摩耗性を有するゴム製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0017】
本発明では、2以上の実施形態を任意に組み合わせることができる。
【0018】
本発明では、用語「シンジオタクチシティ」は、その重合体主鎖中の1,2-結合におけるシンジオタクチック(不斉炭素の絶対配置が交互)の割合を意味する。
【0019】
本明細書において、数値範囲は、別段の記載がない限り、その範囲の下限値および上限値を含むことを意図している。例えば、1,000~50,000は、1,000以上50,000以下を意味する。
【0020】
(ゴム組成物)
本発明に係るゴム組成物は、
ジエン系ゴムと、
樹脂として、シンジオタクチックポリブタジエンと、ビニルブタジエンポリマーとを含み、
前記シンジオタクチックポリブタジエンの1,2-結合の量が、80質量%以上であり、当該1,2-結合におけるシンジオタクチシティが、60%以上であり、
前記ビニルブタジエンポリマーは、1,2-結合を有し、当該1,2-結合におけるシンジオタクチシティが、60%未満である、ゴム組成物である。
【0021】
以下、本発明のゴム組成物の必須成分である、ジエン系ゴムおよび樹脂と、任意成分を例示説明する。
【0022】
<ジエン系ゴム>
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分としてジエン系ゴムを含む。ジエン系ゴムとしては、公知のジエン系ゴムを用いることができる。
【0023】
ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。
【0024】
BRとしては、例えば、1,3-ブタジエン単位中のシス-1,4結合含有量が90%以上のハイシスBRおよび1,3-ブタジエン単位中のシス-1,4結合含有量が50%以下のローシスBRなども挙げられる。
【0025】
ジエン系ゴムは、変性ジエン系ゴムであってもよい。変性ジエン系ゴムとしては、例えば、特開2019-104888号公報に記載の変性ジエン系ゴムなどが挙げられる。
【0026】
本発明では、ジエン系ゴムを1種単独でまたは2種以上(例えば、2種または3種)を組み合わせて用いることができる。
【0027】
一実施形態では、ジエン系ゴムは、NR、IR、BRおよびSBRからなる群より選択される1種以上である。別の実施形態では、ジエン系ゴムは、NR、IRおよびBRからなる群より選択される1種以上である。さらに別の実施形態では、ジエン系ゴムは、NR、IRおよびSBRからなる群より選択される1種以上である。さらに別の実施形態では、ジエン系ゴムは、NRおよびSBRからなる群より選択される1種以上である。さらに別の実施形態では、ジエン系ゴムは、NRのみである。さらに別の実施形態では、ジエン系ゴムは、IRのみである。さらに別の実施形態では、ジエン系ゴムは、SBRのみである。さらに別の実施形態では、ジエン系ゴムは、NRとSBRの2種のみである。
【0028】
一実施形態では、ジエン系ゴムは、1,4-ブタジエンゴムを含まない。
【0029】
一実施形態では、ジエン系ゴムは、ジエン系ゴム100質量部に対して、NR、IR、BRおよびSBRからなる群より選択される1種以上を、50質量部以上、60質量部以上、70質量部以上、80質量部以上、90質量部以上または100質量部含む。一実施形態では、ジエン系ゴムは、ジエン系ゴム100質量部に対して、NR、IR、BRおよびSBRからなる群より選択される1種以上を、100質量部以下、90質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下または50質量部含む。
【0030】
別の実施形態では、ジエン系ゴムは、ジエン系ゴム100質量部に対して、NR、IRおよびBRからなる群より選択される1種以上を、50質量部以上、60質量部以上、70質量部以上、80質量部以上、90質量部以上または100質量部含む。一実施形態では、ジエン系ゴムは、ジエン系ゴム100質量部に対して、NR、IRおよびBRからなる群より選択される1種以上を、100質量部以下、90質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下または50質量部含む。
【0031】
一実施形態では、ジエン系ゴムが、NRのみ(NR100%)、NRとBRの組合せおよびNRとSBRの組合せの場合、特にタイヤのサイドウォール部とトレッド部(例えばベースゴムとキャップゴムなど)に好適にゴム組成物を適用することができる。
【0032】
<その他のゴム成分>
本発明に係るゴム組成物には、上記ジエン系ゴム以外の非ジエン系ゴムが含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。非ジエン系ゴムとしては、例えば、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。
【0033】
非ジエン系ゴムは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
<樹脂>
本発明に係るゴム組成物は、樹脂としてシンジオタクチックポリブタジエンと、ビニルブタジエンポリマーとを含む。
【0035】
・シンジオタクチックポリブタジエン
本発明におけるシンジオタクチックポリブタジエン(以下、単に「SPB」ということがある)は、シンジオタクチックポリブタジエンの1,2-結合の量が、80質量%以上であり、当該1,2-結合におけるシンジオタクチシティが、60%以上である。
【0036】
本発明者らが検討したところ、ゴム組成物にSPBを配合することで、高歪下でのSPBの結晶相の犠牲破壊による大きなエネルギー散逸と、き裂先端形状の鈍化が発生し、これによって、タイヤなどのゴム製品では、耐カット性と耐疲労性と耐き裂成長性が向上することが判明した。
【0037】
SPBのミクロ構造は、1,2-結合の量が、80質量%以上であればよく、1,2-結合の他に、シス-1,4結合およびトランス-1,4結合の1種以上を有していてもよい。
【0038】
一実施形態では、SPBの1,2-結合の量(SPBのミクロ構造における1,2-結合の量)は、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、91質量%以上、92質量%以上、93質量%以上、94質量%以上または95質量%以上である。一実施形態では、SPBの1,2-結合の量は、100質量%以下、95質量%以下、94質量%以下、93質量%以下、92質量%以下、91質量%以下、90質量%以下または85質量%以下である。
【0039】
一実施形態では、SPBの1,2-結合におけるシンジオタクチシティは、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上または100%である。一実施形態では、SPBの1,2-結合におけるシンジオタクチシティは、100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下または65%以下である。
【0040】
本発明において、SPBの1,2-結合の量および当該1,2-結合におけるシンジオタクチシティは、Hおよび13C核磁気共鳴(NMR)分析によって求める。13C-NMRは、溶媒:テトラクロロエタンd-2、温度:110℃以上で測定する。
【0041】
SPBは、1,3-ブタジエンの他に、1,3-ペンタジエン、1-ペンチル-1,3-ブタジエンなどの共役ジエンが少量、共重合した共重合体であってもよいし、1,3-ブタジエンの単独重合体であってもよい。
【0042】
SPBが1,3-ブタジエン以外の共役ジエン由来の単位を含む場合、一実施形態では、SPBの全繰り返し単位中の1,3-ブタジエン由来の単位の割合は、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上または99%以上である。また、その場合、一実施形態では、SPBの全繰り返し単位中の1,3-ブタジエン由来の単位の割合は、99%以下、98%以下、95%以下、90%以下または85%以下である。
【0043】
一実施形態では、SPBの融点(以下、単に「mp」ということがある)は、100℃以上、105℃以上、110℃以上、115℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、150℃以上、160℃以上または170℃以上である。一実施形態では、mpは、180℃以下、170℃以下、160℃以下、150℃以下、140℃以下、130℃以下、120℃以下、115℃以下、110℃以下または105℃以下である。
【0044】
本発明において、mpは、示差走査熱量測定(DSC)の2回目の走査時のDSC曲線の融解ピーク温度を指す。DSCは、DSC装置内にSPBのサンプルを入れ、1回目の走査で室温から200℃まで昇温し、2回目の走査で-100℃から200℃まで昇温し、各昇温速度は10℃/分である。
【0045】
一実施形態では、SPBの重量平均分子量(Mw)は、50,000以上、100,000以上、110,000以上、120,000以上、130,000以上、140,000以上、150,000以上、160,000以上、170,000以上、180,000以上、190,000以上、200,000以上、300,000以上、400,000以上、500,000以上または600,000以上である。一実施形態では、SPBのMwは、800,000以下、700,000以下、600,000以下、500,000以下、400,000以下、300,000以下、200,000以下、190,000以下、180,000以下、170,000以下、160,000以下、150,000以下、140,000以下、130,000以下、120,000以下、110,000以下または100,000以下である。
【0046】
一実施形態では、SPBの数平均分子量(Mn)は、50,000以上、100,000以上、110,000以上、120,000以上、130,000以上、140,000以上、150,000以上、160,000以上、170,000以上、180,000以上、190,000以上、200,000以上、300,000以上、400,000以上、500,000以上または600,000以上である。一実施形態では、SPBのMnは、800,000以下、700,000以下、600,000以下、500,000以下、400,000以下、300,000以下、200,000以下、190,000以下、180,000以下、170,000以下、160,000以下、150,000以下、140,000以下、130,000以下、120,000以下、110,000以下または100,000以下である。
【0047】
SPBのMwとMnの測定方法は、以下のとおりである:
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC):東ソー社製「HLC-8220/HT」により検出器として示差屈折計を用いて測定し、単分散ポリスチレンを標準としたポリスチレン換算で示す。カラムは、東ソー社製「GMHHR-H(S)HT」を用い、溶離液は、トリクロロベンゼンであり、測定温度は、140℃である。
【0048】
SPBは、例えば、特開2006-063183号公報、特開2000-119324号公報、特表2004-528410号公報、特表2005-518467号公報、特表2005-527641号公報、特開2009-108330号公報、特開平7-25212号公報、特開平6-306207号公報、特開平6-199103号公報、特開平6-92108号公報、特開平6-87975号公報などに記載された重合方法により調製することができる。
【0049】
SPBは、市販品を用いてもよい。SPBの市販品としては、例えば、JSR社のJSR RB(登録商標)810、820、830、840などのJSR RB(登録商標)シリーズ;宇部興産社のUBEPOL VCR(登録商標)412、617、450、800などのUBEPOL VCR(登録商標)シリーズなどが挙げられる。
【0050】
SPBは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
ゴム組成物におけるSPBの配合量は、適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、SPBの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、2~50質量部である。一実施形態では、SPBの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、2質量部以上、3質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、25質量部以上、30質量部以上、35質量部以上、40質量部以上または45質量部以上である。一実施形態では、SPBの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、50質量部以下、45質量部以下、40質量部以下、35質量部以下、30質量部以下、25質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下または5質量部以下である。
【0052】
・ビニルブタジエンポリマー
本発明におけるビニルブタジエンポリマー(以下、単に「Vi-BR」ということがある)は、1,2-結合を有し、当該1,2-結合におけるシンジオタクチシティが、60%未満である。
【0053】
本発明のゴム組成物において、Vi-BRは、作業性(未加硫粘度)と破壊特性のバランスを向上する働きをする。理論に拘束されることを望むものではないが、これは、Vi-BRが、SPBと相溶性が高く、SPBの非晶部をVi-BRが軟化することで、SPBの結晶部由来の性質を維持しつつ、ゴム組成物のバルクの粘度を低減することができるためと推測される。
【0054】
Vi-BRのミクロ構造は、1,2-結合の他に、シス-1,4結合およびトランス-1,4結合の1種以上を有していてもよい。
【0055】
一実施形態では、Vi-BRの1,2-結合の量(Vi-BRのミクロ構造における1,2-結合の量)は、3質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上または80質量%以上である。一実施形態では、Vi-BRの1,2-結合の量は、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下または5質量%以下である。
【0056】
本発明に係るゴム組成物では、前記ビニルブタジエンポリマーの1,2-結合の量が、3~80質量%であることが好ましい。これにより、良好な作業性に加えて、優れた耐き裂成長性も得られる。
【0057】
一実施形態では、Vi-BRの1,2-結合におけるシンジオタクチシティは、60%未満、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、3%以下、1%以下または約0%である。一実施形態では、Vi-BRの1,2-結合におけるシンジオタクチシティは、1%以上、3%以上または5%以上である。
【0058】
本発明において、Vi-BRの1,2-結合の量および当該1,2-結合におけるシンジオタクチシティは、Hおよび13C核磁気共鳴(NMR)分析によって求める。
【0059】
Vi-BRは、1,3-ブタジエンの他に、1,3-ペンタジエン、1-ペンチル-1,3-ブタジエンなどの共役ジエンが少量、共重合した共重合体であってもよいし、1,3-ブタジエンの単独重合体であってもよい。
【0060】
Vi-BRが1,3-ブタジエン以外の共役ジエン由来の単位を含む場合、一実施形態では、Vi-BRの全繰り返し単位中の1,3-ブタジエン由来の単位の割合は、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上または99%以上である。また、その場合、一実施形態では、Vi-BRの全繰り返し単位中の1,3-ブタジエン由来の単位の割合は、99%以下、98%以下、95%以下、90%以下または85%以下である。
【0061】
Vi-BRの分子量は、適宜調節すればよい。一実施形態では、Vi-BRの数平均分子量(Mn)は、1,000以上、3,000以上、5,000以上、7,000以上、10,000以上、15,000以上、20,000以上、25,000以上、30,000以上、35,000以上、40,000以上、45,000以上、50,000以上、60,000以上、70,000以上、80,000以上、90,000以上または100,000以上である。一実施形態では、Vi-BRのMnは、100,000以下、90,000以下、80,000以下、70,000以下、60,000以下、50,000以下、45,000以下、40,000以下、35,000以下、30,000以下、25,000以下、20,000以下、15,000以下、10,000以下、9,000以下、8,000以下、7,000以下、6,000以下、5,000以下、4,000以下、3,000以下または2,000以下である。
【0062】
本発明に係るゴム組成物では、前記ビニルブタジエンポリマーの数平均分子量が、1,000~50,000であることが好ましい。これにより、良好な作業性に加えて、優れた耐き裂成長性も得られる。
【0063】
一実施形態では、Vi-BRのMwは、1,000以上、3,000以上、5,000以上、7,000以上、10,000以上、15,000以上、20,000以上、25,000以上、30,000以上、35,000以上、40,000以上、45,000以上、50,000以上、60,000以上、70,000以上、80,000以上、90,000以上または100,000以上である。一実施形態では、Vi-BRのMwは、100,000以下、90,000以下、80,000以下、70,000以下、60,000以下、50,000以下、45,000以下、40,000以下、35,000以下、30,000以下、25,000以下、20,000以下、15,000以下、10,000以下、9,000以下、8,000以下、7,000以下、6,000以下、5,000以下、4,000以下、3,000以下または2,000以下である。
【0064】
Vi-BRのMwとMnの測定方法は、SPBの測定方法と同様である。
【0065】
一実施形態では、Vi-BRの分子量分布(Mw/Mn)は、2.0以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.07以下または1.05以下である。一実施形態では、Vi-BRのMw/Mnは、1.00以上、1.04以上、1.05以上、1.07以上、1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上または1.5以上である。
【0066】
Vi-BRは、例えば、国際公開第2011/045918A1などに記載された方法により調製することができる。
【0067】
Vi-BRは、市販品を用いてもよい。Vi-BRの市販品としては、例えば、Cray Valley社のRicon130、131、134、142、150、152、153、154、156、157などのRiconシリーズが挙げられる。
【0068】
Vi-BRは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
ゴム組成物におけるVi-BRの配合量は、適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、Vi-BRの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、1~50質量部である。一実施形態では、Vi-BRの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、1質量部以上、2質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、25質量部以上、30質量部以上、35質量部以上、40質量部以上または45質量部以上である。一実施形態では、Vi-BRの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、50質量部以下、45質量部以下、40質量部以下、35質量部以下、30質量部以下、25質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下または5質量部以下である。
【0070】
本発明に係るゴム組成物では、前記ビニルブタジエンポリマーを、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、1~15質量部含むことが好ましい。これにより、良好な作業性に加えて、優れた耐き裂成長性も得られる。
【0071】
<その他の成分>
本発明に係るゴム組成物には、上記必須成分の他、ゴム組成物に配合される公知の添加剤を適宜配合してもよい。このような添加剤としては、例えば、フィラー(例えば、カーボンブラック、シリカ)、加硫剤(架橋剤)、加硫促進剤、加硫遅延剤、老化防止剤、補強剤、軟化剤、加硫助剤、着色剤、難燃剤、滑剤、発泡剤、可塑剤、加工助剤、酸化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、着色防止剤、プロセスオイルなどが挙げられる。これらは、それぞれ、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
本発明に係るゴム組成物では、プロセスオイルを用いる場合、発熱性と耐摩耗性の観点から、プロセスオイルの配合量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下または5質量部以下であることが好ましい。本発明に係るゴム組成物では、プロセスオイルを用いる場合、作業性と耐き裂成長性の観点から、プロセスオイルの配合量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、1質量部以上、5質量部以上、10質量部以上または15質量部以上であることが好ましい。
【0073】
本発明に係るゴム組成物の調製方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、ジエン系ゴムと、樹脂(SPBおよびVi-BR)と、任意にフィラーなどの任意成分とを、同時にまたは任意の順序で添加して、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練り機を用いて混練りすることによって得られる。
【0074】
本発明に係るゴム組成物では、上述したように、Vi-BRによって、SPBの結晶部由来の性質を維持しつつ、ゴム組成物のバルクの粘度を低減し、良好な作業性を有する。
【0075】
<加硫ゴム組成物>
好適には、本発明に係るゴム組成物を以下に述べる方法で加硫して加硫ゴム組成物とすることにより、高強度加硫ゴム組成物となり、その耐カット性および耐摩耗性を大幅に向上させることができる。
【0076】
・好適な加硫ゴム組成物の製造方法
好適な加硫ゴム組成物の製造方法は、
1A)ゴム組成物における、NRとSPBとVi-BRとの混練時において、mpより10~100℃高い温度で混練する工程;または
1B)ゴム組成物における、NR以外のジエン系ゴムとSPBとVi-BRとの混練時において、mpより10~100℃高い温度で混練する工程と、
2)その混練工程から得られた未加硫ゴム組成物を、mp以上の温度で加硫する工程と、を含む。
【0077】
ジエン系ゴムが、NRの場合、混練条件や加硫温度条件によってダブルネットワークを形成して耐き裂成長性などが大きく向上する。本明細書において、「ダブルネットワーク」は、加硫ゴム組成物において、ジエン系ゴムのネットワーク中に、SPBの3次元の網目状のネットワークが固定化された構造をいう。
【0078】
ジエン系ゴムが、NR以外のジエン系ゴムの場合、混練条件や加硫温度条件をNRでのダブルネットワーク形成条件と同じようにしても、ダブルネットワークを必ずしも形成しないが、SPB添加による補強効果が得られる。
【0079】
・混練工程
上記1A)工程(混練工程)において、混練時の温度をmpより10℃以上高い温度とすることで、結晶相を含むSPBをNRに高度に相溶させ得る。
【0080】
上記1A)工程において、混練時の温度をmp+100℃以下とすることで、樹脂(SPBおよびVi-BR)とNRの熱劣化が好適に防止され、加硫ゴム組成物の耐カット性および耐摩耗性を向上させ得る。
【0081】
上記1B)工程(混練工程)では、上述したゴム組成物のジエン系ゴムから、NR以外のジエン系ゴムを1種単独で、あるいは2種、3種またはそれ以上組み合わせて選択すればよい。
【0082】
本明細書において、混練工程の混練時の温度とは、ゴム組成物のマスターバッチが混練装置から排出された時点でのマスターバッチの温度をいい、マスターバッチ練りにおいて、混練装置から排出された直後のマスターバッチの内部温度を温度センサーなどで測定した温度をいう。ただし、混練装置内にゴム組成物の温度測定手段がある場合は、排出された時点のマスターバッチの温度を測定してもよい。
【0083】
本明細書において、マスターバッチとは、加硫剤および加硫促進剤などの加硫系を配合しない混練段階で、ジエン系ゴム成分と、SPBと、任意にVi-BRとを混練する段階で得られるゴム混合物をいう。
【0084】
一実施形態では、上記混練工程での混練時の温度は、mpより10℃以上、mpより12℃以上、mpより15℃以上、mpより20℃以上、mpより30℃以上、mpより40℃以上、mpより50℃以上、mpより60℃以上、mpより70℃以上、mpより80℃以上またはmpより90℃以上高い。一実施形態では、上記混練工程での混練時の温度は、mp+100℃以下、mp+90℃以下、mp+80℃以下、mp+70℃以下、mp+60℃以下、mp+50℃以下、mp+40℃以下、mp+30℃以下またはmp+20℃以下である。
【0085】
一実施形態では、1A)工程において、NRまたはNRとVi-BRとの混合物に、SPBを添加する工程を含む。
【0086】
一実施形態では、1B)工程において、NR以外のジエン系ゴムまたはNR以外のジエン系ゴムとVi-BRとの混合物に、SPBを添加する工程を含む。
【0087】
1A)工程の混練により、SPBをNRに高度に相溶させ、その後、上記特定温度範囲で加硫することにより、SPBがNRに半相溶状態となり、高強度加硫ゴム組成物となるものと推測される。
【0088】
加硫ゴム組成物の製造方法では、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練り機が好適に用いられる。
【0089】
・加硫工程
上記2)工程(加硫工程)において、加硫温度をmp以上とすることにより、熱力学的にジエン系ゴムでSPBが結晶状態となったドメイン構造を抑制し得る。さらに、ダブルネットワークを形成するためには、mp以上の温度で加硫することが重要と考えられる。得られた未加硫ゴム組成物を、mp以上の温度で加硫することによって、SPBがゴム成分に半相溶状態となり、ゴム成分中のネットワークとして固定化されることで、加硫ゴム組成物中に上述したダブルネットワークを形成できる、と考えられるためである。ただし、このことは、mp未満の温度で加硫した場合には、全くダブルネットワークを形成しないという意味ではない。mp未満の温度で加硫した場合であっても、SPBの一部が溶解しダブルネットワークを少なくとも部分的には形成しうるためであり、例えば、加硫温度が「mp-15℃」以上かつmp未満であっても、少なくとも部分的にはダブルネットワークを形成しうると考えられる。
【0090】
本明細書において、加硫工程の加硫時の温度とは、加硫開始から加硫が進行し、到達した最高温度(通常は、加硫装置の設定温度である)をいう。
【0091】
一実施形態では、加硫工程での加硫温度は、mp以上、mp+5℃以上、mp+10℃以上またはmp+13℃以上である。一実施形態では、加硫工程での加硫温度は、mp+15℃以下、mp+13℃以下、mp+10℃以下またはmp+5℃以下である。
【0092】
加硫工程における加硫は、公知の加硫系を用いることができ、硫黄加硫系でもよいし、非硫黄加硫系でもよい。
【0093】
1A)工程と2)工程とから得られる加硫ゴム組成物では、NRのネットワーク中に、SPBのネットワークが固定化され、加硫ゴム組成物中にダブルネットワークが形成されている。
【0094】
1B)工程と2)工程とから得られる加硫ゴム組成物の一実施形態では、加硫ゴム組成物中にダブルネットワークが形成されている。
【0095】
(タイヤ)
本発明に係るタイヤは、上記いずれかのゴム組成物を用いた、タイヤである。これにより、本発明に係るタイヤは、良好な耐カット性および耐摩耗性を有する。
【0096】
上記ゴム組成物または上記加硫ゴム組成物を用いるタイヤの部位としては、特に限定されない。上記ゴム組成物または上記加硫ゴム組成物は、例えば、トレッド部(キャップゴム、ベースゴムなど)、ベルトコーティングゴム、およびサイドウォール部など高い耐久性が求められる部位に好適に用いることができる。
【0097】
タイヤの製造時に、所望の部位に上記ゴム組成物を用いて、上述した好適な加硫ゴム組成物の製造方法を適用することで、タイヤを製造してもよい。
【0098】
(ゴム製品)
本発明に係るゴム製品は、上記いずれかのゴム組成物(または加硫ゴム組成物)を用いた、コンベアベルト、防振ゴム、免振ゴム、ゴムクローラ、ベルト、ホースおよび防舷材からなる群より選択される、ゴム製品である。これにより、本発明に係るタイヤは、良好な耐カット性および耐摩耗性を有する。
【0099】
ゴム製品の製造時に、所望の部位に上記ゴム組成物を用いて、上述した好適な加硫ゴム組成物の製造方法を適用することで、ゴム製品を製造してもよい。
【実施例
【0100】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。実施例において、配合量は、特に断らない限り、質量部を意味する。
【0101】
実施例で用いた材料の詳細は以下のとおりである。
天然ゴム(NR):RSS#1
シンジオタクチックポリブタジエン(SPB):JSR社製の「JSR RB(登録商標)840」、1,2-結合量=94質量%、シンジオタクチシティ=68%、融点=122℃、Mw=163,000、Mn=66,000
ビニルブタジエンポリマー1(Vi-BR 1):後述する方法で合成、シンジオタクチシティ=60%未満
ビニルブタジエンポリマー2(Vi-BR 2):後述する方法で合成、シンジオタクチシティ=60%未満
ビニルブタジエンポリマー3(Vi-BR 3):後述する方法で合成、シンジオタクチシティ=60%未満
ビニルブタジエンポリマー4(Vi-BR 4):後述する方法で合成、シンジオタクチシティ=60%未満
ビニルブタジエンポリマー5(Vi-BR 5):後述する方法で合成、シンジオタクチシティ=60%未満
ビニルブタジエンポリマー6(Vi-BR 6):後述する方法で合成、シンジオタクチシティ=60%未満
ビニルブタジエンポリマー7(Vi-BR 7):後述する方法で合成、シンジオタクチシティ=60%未満
プロセスオイル:石油系炭化水素プロセスオイル、出光興産社製の商品名「DAIANA PROCESS OIL NS-28」
カーボンブラック:ISAF
ワックス:精工化学社製の商品名「マイクロクリスタリンワックス」
老化防止剤(6C):N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製の商品名「ノクラック(登録商標) 6C」
老化防止剤(TMQ):2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、大内新興化学工業社製の商品名「ノクラック(登録商標) 224」
加硫促進剤:N-(シクロヘキシル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、大内新興化学工業社製の商品名「ノクセラー(登録商標)CZ」
加硫遅延剤:東レ・ファインケミカル社製の商品名「CTPI」、N-シクロヘキシルチオフタルイミド
【0102】
・Vi-BR 1の合成
Vi-BR 1を以下のように合成した。窒素雰囲気下、室温で、重合瓶にシクロヘキサン76gを加え、その重合瓶に重合開始剤としてn-ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.57mol/L)6.11mL、ランダマイザーとして2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパンのシクロヘキサン溶液(0.69mol/L)0.69mL、および1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液(24.2質量%)124.0gを順次添加した。次いで、回転式重合槽を用いて、50℃の水浴で55分間反応を行った。その反応終了後、重合瓶に窒素で脱気した2-プロパノールを5mL添加して、セメントを得た。次いで、2-プロパノールとメタノールの混合溶媒(体積比1:1)を過剰量用いて、そのセメントを3回洗浄した。次いで、酸化防止剤として2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)の2-プロパノール溶液(5質量%)を1.0mL添加した。次いで、その混合物を、真空乾燥機に65℃で6時間静置し、残留溶媒を留去して、Vi-BR 1を29g得た。
【0103】
・Vi-BR 2の合成
以下の点を変更したこと以外は、Vi-BR 1と同様に合成を行い、Vi-BR 2を30g得た。
ランダマイザーの量:2.22mL
反応時間:45分
【0104】
・Vi-BR 3の合成
以下の点を変更したこと以外は、Vi-BR 1と同様に合成を行い、Vi-BR 3を30g得た。
ランダマイザーの量:6.94mL
反応温度:20℃
反応時間:45分
【0105】
・Vi-BR 4の合成
以下の点を変更したこと以外は、Vi-BR 1と同様に合成を行い、Vi-BR 4を30g得た。
重合開始剤の量:2.35mL
ランダマイザーの量:0.27mL
反応時間:70分
【0106】
・Vi-BR 5の合成
以下の点を変更したこと以外は、Vi-BR 1と同様に合成を行い、Vi-BR 5を29g得た。
重合開始剤の量:2.35mL
ランダマイザーの量:0.85mL
反応時間:60分
【0107】
・Vi-BR 6の合成
以下の点を変更したこと以外は、Vi-BR 1と同様に合成を行い、Vi-BR 6を30g得た。
重合開始剤の量:2.35mL
ランダマイザーの量:2.67mL
反応温度:20℃
反応時間:45分
【0108】
・Vi-BR 7の合成
以下の点を変更したこと以外は、Vi-BR 1と同様に反応を行い、セメントを得た。
シクロヘキサンの量:67g
重合開始剤の量:1.70mL
ランダマイザーの量:7.71mL
1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液の量:100.0g
反応温度:20℃
反応時間:45分
次いで、過剰量の2-プロパノールにそのセメントを注ぎ、白色の沈殿物を得た。さらにその沈殿物を2-プロパノールで2回洗浄した。次いで、Vi-BR 1と同様に酸化防止剤を添加し、乾燥して残留溶媒を留去して、Vi-BR 7を24g得た。
【0109】
粘弾性測定装置:TA Instruments社製の商品名「ARES-G2」
【0110】
実施例において、SPBとVi-BRの1,2-結合の量および当該1,2-結合におけるシンジオタクチシティ;Vi-BRのMnおよびMwは、前述の方法により求めた。
【0111】
(実施例1~8、比較例1~2および参考例1~2)
表1および表2に示す配合で、非生産混練工程を行った。その混練時温度は160℃であった。次いで、非生産混練工程から得られたマスターバッチに表1に示す成分を加えて、生産加硫工程を行い、加硫ゴム組成物を得た。加硫時の温度は160℃とした。
【0112】
・未加硫粘度測定試験
非生産混練工程から得られた各マスターバッチの各サンプルについて、JIS K 6300-1:2013に準拠して温度80℃で未加硫粘度を測定した。測定値の逆数をとり、比較例1の値を100とし、指数表示した。その結果を表2に示す。指数値が大きいほど、未加硫粘度が小さく、作業性に優れることを示す。
【0113】
生産加硫工程から得られた加硫ゴム組成物の各サンプルについて、以下に記載する弾性率試験および耐き裂性試験をそれぞれ、行った。
【0114】
・粘弾性試験
各加硫ゴム組成物のサンプルについて、粘弾性測定装置を使用して、周波数15Hz、せん断ひずみ10%、温度50℃の条件で測定し、せん断弾性率G’(MPa)を測定した。測定値の逆数をとり、比較例1の値を100とし、指数表示した。その結果を表2に示す。指数値が大きいほど、弾性率が小さく、作業性に優れることを示す。
【0115】
・耐き裂性試験
各加硫ゴム組成物のサンプルについて、引張試験装置を使用し、JIS K 6252に準拠して、トラウザ形で引裂強さを測定した。比較例1の測定値を100とし、指数表示した。その結果を表2に示す。指数値が大きいほど、引裂強さが大きく、耐き裂成長性に優れることを示す。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
表2に示すように、実施例では、未加硫粘度と弾性率の指数値が大きく、作業性に優れることが分かる。
【0119】
また、実施例3、6および7の対比から、Vi-BRのMnが小さいほど、耐き裂成長性に優れる傾向があることも分かる。
【0120】
また、Vi-BRの配合量を10質量部とした実施例1~7では、耐き裂成長性の指数値が大きく、作業性に加えて、耐き裂成長性にも優れることが分かる。
【0121】
さらに、実施例1、2および3の対比ならびに実施例4、5および6の対比から、Vi-BRの1,2-結合量が少ないほど、耐き裂成長性に優れる傾向があることも分かる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明によれば、良好な作業性を有するゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、良好な耐カット性および耐摩耗性を有するタイヤを提供することができる。また、本発明によれば、良好な耐カット性および耐摩耗性を有するゴム製品を提供することができる。