(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】静電チャック及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/569 20060101AFI20231226BHJP
C04B 37/00 20060101ALI20231226BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C04B35/569
C04B37/00 Z
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2019164470
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良太
(72)【発明者】
【氏名】市川 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】傳井 美史
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-018434(JP,A)
【文献】特開2006-013302(JP,A)
【文献】特開2005-276886(JP,A)
【文献】特開2012-071995(JP,A)
【文献】国際公開第2018/210786(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84,37/00-37/04
H01L 21/68-21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電チャックの基板が上方に載置される載置面を備えるセラミックス焼結体
を用いた静電チャックであって、
前記基板と前記セラミックス焼結体とを備え、
前記セラミックス焼結体は、前記載置面から離れた位置において前記載置面に沿って延在し、冷却媒体を流す流路を備え、
前記載置面の垂直方向における前記セラミックス焼結体の前記流路と前記載置面との間の部分を流路上部領域と定義して、
前記流路上部領域の少なくとも一部の熱伝導率は、前記載置面に沿った方向において前記セラミックス焼結体の前記流路上部領域に隣接する他の領域の少なくとも一部の熱伝導率よりも
18W/mK以下小さく、
前記流路上部領域と前記他の領域とは、セラミックスで形成されていることを特徴とする
静電チャック。
【請求項2】
請求項1に記載の
静電チャックであって、
前記流路上部領域の少なくとも一部の嵩密度は、前記他の領域の少なくとも一部の嵩密度よりも小さいことを特徴とする
静電チャック。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の
静電チャックであって、
前記セラミックス焼結体は、炭化ケイ素を主成分とすることを特徴とする
静電チャック。
【請求項4】
請求項1に記載の
静電チャックであって、
前記他の領域の熱伝導率が前記流路上部領域の熱伝導率よりも11W/mK以上大きいことを特徴とする
静電チャック。
【請求項5】
請求項1に記載の
静電チャックの製造方法であって、
前記セラミックス焼結体は、
第1の平面と第2の平面との少なくとも一方に凹部が形成され、前記第1の平面を有する第1の仮焼体と、前記第2の平面を有する第2の仮焼体と、を前記第1の平面と前記第2の平面とが対向するように積層し、積層方向に10kgf/cm
2以上で加圧した状態で加熱する加圧焼結を行うこと
により製造されることを特徴とする
静電チャックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス焼結体を用いた静電チャック及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、媒体流路としての中空構造を有し、界面を有さずに一体化したセラミックス焼結体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のものでは、中空部を有し、一体に焼成された平板状のセラミックス部材の製造方法であって、金型にセラミックス粉末を充填し第1のプレス成形をする工程と、第1のプレス成形体の一方の主面側に、本体が樹脂製の中子を設ける工程と、中子の上からセラミックス粉末を充填し第2のプレス成形をする工程と、加熱により第2のプレス成形体の側面から中子本体の樹脂を除去する工程と、樹脂を除去した第2のプレス成形体を焼成する工程と、を含む。
【0004】
このように、2段階で十分にプレスしたセラミックス粉末の成形体から樹脂製の中子本体を除去して中空構造を形成することで、中空構造を有し、界面を有しない一体化したセラミックス焼結体を低コストで製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内部に例えば冷却用の媒体を流すことができる流路を有するセラミックス焼結体を、ウエハや静電チャックなどの基板を載置する載置面を備えた基台として使用する場合、セラミックス焼結体の載置面から流路までの距離が、載置面の直下に流路が位置している部分と、載置面の直下に流路が位置していない部分とによって、真っ直ぐ下に向かう距離となるか、斜めに傾斜する距離となるかで距離が異なり、載置面の位置によって載置面から流路までの距離が異なる。そのため、セラミックス焼結体の載置面から流路までの熱抵抗に差が生じる。
【0007】
熱抵抗がセラミックス焼結体の載置面の位置によって異なるということは、セラミックス焼結体に一様に入力された熱量が流路を流れる媒体に伝熱されるときに、直下に流路が存在する載置面部分とそれ以外との部分との間に温度差が生じる。
【0008】
従って、セラミックス焼結体の流路内を流れる媒体による冷却効果が載置面に均一に現れず、セラミックス焼結体に載置される基板の温度分布に影響を与え、基板温度が不均一になる虞がある。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、載置面に一様な温度分布を形成することができるセラミックス焼結体を用いた静電チャック及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]上記目的を達成するため、本発明は、
静電チャックの基板が上方に載置される載置面を備えるセラミックス焼結体を用いた静電チャックであって、
前記基板と前記セラミックス焼結体とを備え、
前記セラミックス焼結体は、前記載置面から離れた位置において前記載置面に沿って延在し、冷却媒体を流す流路を備え、
前記載置面の垂直方向における前記セラミックス焼結体の前記流路と前記載置面との間の部分を流路上部領域と定義して、
前記流路上部領域の少なくとも一部の熱伝導率は、前記載置面に沿った方向において前記セラミックス焼結体の前記流路上部領域に隣接する他の領域の少なくとも一部の熱伝導率よりも18W/mK以下小さく、
前記流路上部領域と前記他の領域とは、セラミックスで形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、流路上部領域の少なくとも一部の熱伝導率は、前記載置面に沿った方向において前記セラミックス焼結体の前記流路上部領域に隣接する他の領域の少なくとも一部の熱伝導率よりも小さいため、載置面に一様な温度分布を形成することができる静電チャックを提供することができる。
【0012】
[2]また、本発明においては、前記流路上部領域の少なくとも一部の嵩密度は、前記他の領域の少なくとも一部の嵩密度よりも小さいことが好ましい。
【0013】
[3]また、本発明においては、前記セラミックス焼結体は、炭化ケイ素を主成分とすることが好ましい。本発明において炭化ケイ素を主成分とするとは、セラミックス焼結体中に炭化ケイ素が50質量%以上含むことを意味する。
[4]また、本発明のセラミックス焼結体においては、
前記他の領域の熱伝導率が前記流路上部領域の熱伝導率よりも11W/mK以上大きいことが好ましい。
[5]また、本発明のセラミックス焼結体の製造方法は、
第1の平面と第2の平面との少なくとも一方に凹部が形成され、前記第1の平面を有する第1の仮焼体と、前記第2の平面を有する第2の仮焼体と、を前記第1の平面と前記第2の平面とが対向するように積層し、積層方向に10kgf/cm2以上で加圧した状態で加熱する加圧焼結を行うことで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るセラミックス焼結体の製造方法を示すフローチャート。
【
図2】
図2Aは第1及び第2のSiC仮焼体を示す模式断面図。
図2Bは第1及び第2のSiC仮焼体を積層した状態を示す模式断面図。
図2Cはセラミックス焼結体を示す模式断面図。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係るセラミックス焼結体の製造方法を示すフローチャート。
【
図4】
図4Aは第1から第3のSiC仮焼体を示す模式断面図。
図4Bは第1から第3のSiC仮焼体を積層した状態を示す模式断面図。
図4Cはセラミックス焼結体を示す模式断面図。
【
図5】
図5Aは実施例8,9,11における第1及び第2のSiC仮焼体を示す模式断面図。
図5Bは第1及び第2のSiC仮焼体を積層した状態を示す模式断面図。
図5Cはセラミックス焼結体を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1実施形態に係るセラミックス焼結体10について図面を参照して説明する。なお、図面は、セラミックス焼結体10及びその構成要素などを明確化するために模式的に示されており、実際の比率を表すものではなく、上下などの方向も単なる例示である。
【0016】
第1実施形態のセラミックス焼結体10は、
図1に示すように、第1のSiC仮焼体取得工程STEP1、第2のSiC仮焼体取得工程STEP2、第1の平面形成工程STEP3、第2の平面形成工程STEP4、凹部形成工程STEP5、積層工程STEP6及び焼成工程STEP7を備えている。
【0017】
第1のSiC仮焼体取得工程STEP1においては、
図2Aを参照して、第1のSiC成形体を1200℃以上1900℃以下の温度で仮焼して第1のSiC仮焼体1を得る。第2のSiC仮焼体取得工程STEP2においては、第2のSiC成形体を1200℃以上1900℃以下の温度で仮焼して第2のSiC仮焼体2を得る。なお、第1のSiC仮焼体取得工程STEP1及び第2のSiC仮焼体取得工程STEP2における仮焼温度は同じであっても、相違していてもよい。
【0018】
第1のSiC仮焼体取得工程STEP1及び第2のSiC仮焼体取得工程STEP2においては、SiC(炭化ケイ素)粉末を成形した2個のSiC成形体を仮焼して第1及び第2のSiC仮焼体1,2を形成する。例えば、SiC粉末に、焼結助剤、バインダなどの添加剤を適宜添加して混合して、成形原料を作製し、この成形材料を用いて加圧成形して2個のSiC成形体を形成する。
【0019】
SiC粉末は、高純度であることが好ましく、その純度は、好ましくは96%以上、より好ましくは98%以上である。また、SiC粉末の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上1.0μm以下、より好ましくは0.3μm以上0.8μm以下である。
【0020】
混合方法は、湿式、乾式の何れであってもよく、例えばボールミル、振動ミルなどの混合器を用いることができる。また、SiC粉末に焼結助剤などを添加してSiC顆粒を作製し、このSiC顆粒にバインダなどの添加剤を添加したものを用いて加圧成形してSiC成形体を形成してもよい。成形方法としては、例えば、一軸加圧成形や冷間静水等方圧加圧(CIP:Cold Isostatic Pressing)法などの公知の方法を用いればよい。
【0021】
なお、SiC成形体を900℃以上1200℃未満の温度で加熱してSiC脱脂体を得たうえで、このSiC脱脂体を1200℃以上1900℃以下の温度で加熱して第1及び第2のSiC仮焼体1,2を得てもよい。また、SiC成形体を1200℃以上1900℃以下の温度まで連続的に昇温させながら加熱して第1及び第2のSiC仮焼体1,2を得てもよい。
【0022】
第1の平面形成工程STEP3においては、第1のSiC仮焼体1に第1の平面1aを形成する。第2の平面形成工程STEP4においては、第2のSiC仮焼体2に第2の平面2aを形成する。なお、第1の平面1aと第2の平面2aは、積層工程STEP6において接触する面となる。
【0023】
NC旋盤、MC加工機などの平面研削機やラッピング加工機などを用いて、例えば、表面粗さRaが、好ましくは0.15μm以上0.8μm以下、より好ましくは0.15μm以上0.4μm以下となるように研削および必要に応じて研磨を行うことにより、第1及び第2の平面1a,2aを形成する。
【0024】
凹部形成工程STEP5においては、第1の平面1a又は第2の平面2aの少なくとも一方に凹部3を形成する。凹部3は、流路4を構成するためのものであり、第1の平面1a、第2の平面2aの何れか一方、又は双方から掘り込むように研削加工などによって形成する。
【0025】
なお、第1の平面形成工程STEP3又は第2の平面形成工程STEP4において、第1の又は第2の平面1a,2aを研磨加工せずに、あるいは粗く研削加工しただけとしておき、凹部形成工程STEP5において凹部3を形成した後で、第1又は第2の平面1a,2aを研磨加工、あるいは仕上げの研削加工を行ってもよい。
【0026】
なお、第1及び第2の平面1a,2aの双方から掘り込むように凹部3を形成する場合、これらの凹部3は、第1及び第2の平面1a,2aを積層工程STEP5において接触されたときに、一体化して流路4を構成するものであってもよいが、他の平面によって閉じられるものであってもよい。また、第1及び第2の平面1a,2aと凹部3の境界部分及び凹部3の底隅部分には、R面やC面などの面取り加工を施すことが好ましい。
【0027】
また、第1の平面形成工程STEP3、第2の平面形成工程STEP4又は凹部形成工程STEP5において、乾式の研削加工又は研磨加工により、第1の平面1a、第2の平面2a又は凹部3を形成することが好ましい。これにより、研削液又は研磨液が第1又は第2の仮焼体1,2の内部に侵入し、セラミックス焼結体10に不純物が残存するおそれの解消を図ることが可能となる。なお、研削加工及び研磨加工を行う場合、これら加工の双方ともに乾式で行うことが好ましい。
【0028】
さらに、凹部形成工程STEP5の前に、第1及び第2のSiC仮焼体1,2を保管する保管工程を備えていてもよい。これにより、予め作製した第1及び第2のSiC仮焼体1,2を保管しておくことにより、少なくとも仮焼に要する時間だけ短い時間でセラミックス焼結体10を得ることが可能となる。また、第1の平面形成工程STEP3及び第2の平面形成工程STEP4後の第1及び第2のSiC仮焼体1,2を保管しておくことにより、第1の平面1a及び第2の平面2aを形成する工程に要する時間の分も短い時間でセラミックス焼結体10を得ることが可能となる。
【0029】
積層工程STEP6においては、
図2Bを参照して、第1のSiC仮焼体1と第2のSiC仮焼体2とを、第1の平面1aと第2の平面2aとを接触させた状態で積層する。
【0030】
なお、積層工程STEP6において、第1の平面1aと第2の平面2aとの間に、ホウ素を含む焼結助剤を介在させることが好ましい。これにより、焼成工程STEP7にて接合面となる第1及び第2の面1a,2aに焼結助剤が介在するので、接合面1a,2a付近での焼結が促進され、接合強度の向上を図ることが可能となる。例えば、ホウ素を含む焼結助剤としては、ホウ酸水溶液などを用いることができる。
【0031】
焼成工程STEP7においては、積層した第1のSiC仮焼体1及び第2のSiC仮焼体2を、積層方向に10kgf/cm
2以上の圧力を加えながら2000℃以上2200℃以下で焼成する。これにより、
図2Cを参照して、第1及び第2のSiC仮焼体1,2が焼結して一体化されたセラミックス焼結体10が得られる。
【0032】
焼成工程STEP7においては、少なくとも積層方向に加圧した状態で加熱するホットプレスなどによって、加圧焼結を行う。加熱時間は、好ましくは0.1時間以上10時間以下、より好ましくは1時間以上5時間以下である。そして、焼成雰囲気は、例えば不活性ガス雰囲気であるが、真空などの雰囲気であってもよい。
【0033】
SiC焼結体同士を拡散接合して一体化する場合、SiC焼結体は難加工性であるので、接合面の研磨に多大な時間を要するが、これと比較して、上述した本発明の第1の実施形態に係るセラミックス焼結体10の製造方法においては、第1及び第2の仮焼体1,2の第1及び第2の平面1a,2a並びに凹部3を研削加工又は研磨加工する時間の低減を図ることが可能となる。また、凹部3を形成したSiC成形体同士を焼成して一体化する場合と比較して、凹部3に由来するセラミックス焼結体10の中空構造などの寸法精度の向上を図ることが可能となる。
【0034】
さらに、錘を用いた小さな荷重を加えた状態で焼成を行う従来技術と比較して、10kgf/cm2以上の加圧を行いながら焼成を行うので、接合強度の向上、及びセラミックス焼結体10の緻密化を図ることが可能となる。なお、10kgf/cm2未満の加圧では、焼成時に第1及び第2の仮焼体1,2の第1及び第2の平面1a,2aの良好な面接触が得られず接合不良を引き起こすため不適である。
【0035】
ここで、
図2B、
図2Cに示すように、載置面Fの垂直方向(
図2B、
図2Cの上下方向)におけるセラミックス焼結体10の流路4と載置面Fとの間の部分を流路上部領域Xと定義し、載置面Fと流路4との間において流路上部領域Xを除いた領域を他の領域Yと定義する。換言すれば、他の領域Yは、載置面Fに沿った方向においてセラミックス焼結体の流路上部領域Xに隣接する領域と定義することができる。
【0036】
一般的に、内部に冷却用媒体を流すことができる流路を有するセラミックス焼結体を、ウエハや静電チャックなどの基板を載置する載置面を備えた基台として使用する場合、セラミックス焼結体の載置面から流路までの距離が、載置面の直下に流路が位置している部分と、載置面の直下に流路が位置していない部分とによって、真っ直ぐ下に向かう距離となるか、斜めに傾斜する距離となるかで距離が異なり、載置面の位置によって載置面から流路までの距離が異なる。そのため、セラミックス焼結体の載置面から流路までの熱抵抗に差が生じる。
【0037】
熱抵抗がセラミックス焼結体の載置面の位置によって異なるということは、セラミックス焼結体に一様に入力された熱量が流路を流れる媒体に伝熱されるときに、直下に流路が存在する載置面部分とそれ以外との部分との間に温度差が生じる。
【0038】
従って、セラミックス焼結体の流路内を流れる媒体による冷却効果が載置面に均一に現れず、セラミックス焼結体に載置される基板の温度分布に影響を与え、基板温度が不均一になる虞がある。
【0039】
しかしながら、本実施形態のセラミックス焼結体10は、流路上部領域X(
図2Bの点線で囲われた領域)の少なくとも一部の熱伝導率は、載置面F(
図2B参照)に沿った方向においてセラミックス焼結体10の流路上部領域Xに隣接する他の領域Y(
図2Bの一点鎖線で囲われた領域)の少なくとも一部の熱伝導率よりも小さい。
【0040】
これは、冷却媒体が流れる流路4となる凹部3に中子を入れることなく、第1仮焼体1と第2仮焼体2とを一軸加圧焼成することにより、凹部3上方のセラミックス焼結体10は加圧の影響を受け難く、セラミックス焼結体10の密度が疎になるのに対し、凹部3が直下に存在しない載置面Fの部分には加圧の影響でセラミックス焼結体10の密度が密になって、熱伝導率の差が生じるものと考えられる。
【0041】
これにより、載置面Fと流路4としての凹部3との間の距離の短い、流路上部領域Xの少なくとも一部の熱伝導率は低くなり、他の領域Yと比べて熱が伝わり難くなる。反対に、載置面Fと流路4との距離の長い、他の領域Yの少なくとも一部の熱伝導率は大きくなり、流路上部領域Xよりも熱が伝わり易くなる。このため、載置面Fに一様な温度分布を形成することができるセラミックス焼結体10を提供することができる。
【0042】
なお、熱伝導率は、流路上部領域Xおよび他の領域Yのそれぞれから直径5mm、厚さ1mm測定サンプルを切り出して、JIS R1611に準拠して測定される。
【0043】
また、載置面Fの温度と冷却媒体の温度との温度差T(℃)は、以下の式1から求められる。
T=Q/(λ/d) ・・・ (式1)
但し、λ(W/mK):熱伝導率、Q(W/m2):載置された静電チャックなどに入射された熱流束(一定値)、d(m):載置面と流路との間の距離。
【0044】
また、セラミックス焼結体10の流路上部領域Xの密度が疎となり、他の領域Yの密度は流路上部領域Xより密となるということは、流路上部領域Xの嵩密度は、他の領域Yの嵩密度と比較して小さくなる。嵩密度の測定方法としては、例えば、流路上部領域Xおよび他の領域Yのそれぞれから測定サンプルを切り出してJIS-R-1634に準拠したアルキメデス法で測定することができる。
【0045】
次に、本発明の第2実施形態に係るセラミックス焼結体20の製造方法について図面を参照して説明する。
【0046】
本発明の第2の実施形態に係るセラミックス焼結体20の製造方法は、
図3に示すように、第1のSiC仮焼体取得工程STEP11、第2のSiC仮焼体取得工程STEP12、第3のSiC仮焼体取得工程STEP13、第1の平面形成工程STEP14、第2の平面形成工程STEP15、凹部形成工程STEP16、積層工程STEP17及び焼成工程STEP18を備えている。
【0047】
図3における第1のSiC仮焼体取得工程STEP11においては、
図4Aを参照して、第1のSiC成形体を1200℃以上1900℃以下の温度で仮焼して第1のSiC仮焼体11を得る。第2のSiC仮焼体取得工程STEP12においては、第2のSiC成形体を1200℃以上1900℃以下の温度で仮焼して第2のSiC仮焼体12を得る。なお、第1のSiC仮焼体取得工程STEP11及び第2のSiC仮焼体取得工程STEP12における仮焼温度は同じであっても、相違していてもよい。
【0048】
第1のSiC仮焼体取得工程STEP11は上述した
図1における第1のSiC仮焼体取得工程STEP1と同様であり、第2のSiC仮焼体取得工程STEP12は上述した第2のSiC仮焼体取得工程STEP2と同様であるので、説明は省略する。
【0049】
第3のSiC仮焼体取得工程STEP13においては、第3のSiC成形体を1200℃以上1900℃以下の温度で仮焼して第3のSiC仮焼体13を得る。第3のSiC仮焼体13は、上述した第1又は第2のSiC仮焼体11,12と同様して得ればよい。なお、第3のSiC仮焼体取得工程13における仮焼温度は、第1又は第2のSiC仮焼体取得工程STEP11,12における仮焼温度と同じであっても、相違していてもよい。
【0050】
第3のSiC仮焼体13は、積層工程STEP17において、
図4Bを参照して、第1のSiC仮焼体11と第2のSiC仮焼体12とを、第1の平面11aと第2の平面21aとを接触させた状態で積層したときに、積層方向外側における段差や凹部を解消するような形状に構成されている。例えば、第2の仮焼体12の積層方向外側の表面の外周部に環状の段差が形成されている場合、第3のSiC仮焼体13は段差の高さとほぼ一致する厚みを有する環状部材として形成される。
【0051】
次に、第1の平面形成工程STEP14において、第1のSiC仮焼体11に第1の平面11aを形成する。第2の平面形成工程STEP15において、第2のSiC仮焼体12に第2の平面12aを形成する。
【0052】
第1の平面形成工程STEP14は上述した第1の平面形成工程STEP3と同様であり、第2の平面形成工程STEP15は上述した第2の平面形成工程STEP4と同様であるので、説明は省略する。
【0053】
次に、凹部形成工程STEP16において、第1の平面11a又は第2の平面12aの少なくとも一方に凹部14を形成する。凹部形成工程STEP16は上述した凹部形成工程STEP5と同様であるので、説明は省略する。
【0054】
次に、積層工程STEP17においては、
図4Bを参照して、第1のSiC仮焼体11と第2のSiC仮焼体12とを、第1の平面11aと第2の平面12aとを接触させた状態で積層する。
【0055】
さらに、積層工程17において、第3のSiC仮焼体13を第1のSiC仮焼体11又は第2のSiC仮焼体12の積層方向外側に剥離材15を介して積層する。これにより、第1から第3のSiC仮焼体11~13は、積層方向外側において段差や凹部を解消されて平面状となって積層される。剥離材15としては、例えば、カーボンシート、窒化ホウ素シートなどを用いることができる。また、カーボンや窒化ホウ素を第1のSiC仮焼体11又は第2のSiC仮焼体12に直接コーティングしてもよい。
【0056】
次に、焼成工程STEP18において、積層した第1から第3のSiC仮焼体11~13を、積層方向に1MPa以上の圧力を加えながら2000℃以上2200℃以下で焼成する。焼成工程STEP18は上述した焼成工程STEP7と同様であるので、説明は省略する。
【0057】
焼成工程STEP18の完了により、
図4Cを参照して、第1及び第2のSiC仮焼体11,12が焼結して一体化されたセラミックス焼結体20が得られる。なお、第3のSiC仮焼体13が焼結してなる図示しないセラミックス焼結体は、剥離材15を介してセラミックス焼結体20と接しているだけであるので、セラミックス焼結体20と焼結せず、容易にセラミックス焼結体20と分離することができる。
【0058】
以上説明した本発明の第2の実施形態に係るセラミックス焼結体20の製造方法においても、前述した本発明の第1の実施形態に係るセラミックス焼結体10の製造方法と同様の作用効果を奏する。
【0059】
さらに、本発明の第2の実施形態に係るセラミックス焼結体20の製造方法においては、第1又は第2のSiC仮焼体11,12の積層方向外側における段差部や凹部などに剥離材15を介して第3のSiC仮焼体13が配置された状態で加圧焼成される。そして、この焼成の際、第3のSiC仮焼体13は第1及び第2のSiC仮焼体11,12と同様に収縮する。これらにより、焼成中に第1及び第2のSiC仮焼体11,12に加わる圧力の均一化、及び接合強度の向上を図ることが可能となる。
【0060】
なお、本発明は、上述した第1又は第2の実施形態に具体的に記載したセラミックス焼結体10,20の製造方法に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内であれば適宜変更することができる。例えば、セラミックス焼結体10,20は2個のSiC仮焼体1,2又は11,12が一体化したものであるが、3個以上のSiC仮焼体が一体化したものであってもよい。
【0061】
また、第2実施形態のセラミックス焼結体20においても、流路上部領域Xの少なくとも一部の熱伝導率は低くなり、他の領域Yと比べて熱が伝わり難くなるが、他の領域Yの少なくとも一部の熱伝導率は大きくなり、流路上部領域Xよりも熱が伝わり易くなる。このため、載置面Fに一様な温度分布を形成することができるセラミックス焼結体10を提供することができる。なお、熱伝導率は、流路上部領域Xおよび他の領域Yのそれぞれから直径5mm、厚さ1mm測定サンプルを切り出して、JIS R1611に準拠して測定することは、第1実施形態と同一である。
【0062】
また、第2実施形態においても、セラミックス焼結体10の流路上部領域Xの密度が密となり、他の領域Yの密度は流路上部領域Xより疎となるということは、流路上部領域Xの嵩密度は、他の領域Yの嵩密度と比較して小さくなる。嵩密度の測定方法としては、例えば、流路上部領域Xおよび他の領域Yのそれぞれから測定サンプルを切り出してJIS-R-1634に準拠したアルキメデス法で測定することができる。
【実施例】
【0063】
(実施例1~7)
実施例1~7においては、第1及び第2のSiC仮焼体取得工程STEP1,2として、まず、純度98%、平均粒径0.5μmのSiC粉末に、焼結助剤としてB4C、C(カーボン)、成形助剤としてPVAなどのバインダなどを添加したものを原料とし、顆粒化して顆粒を得た。
【0064】
そして、この顆粒を金型に充填し、圧力を20MPaとした一軸加圧成形して2個のSiC成形体を得た。これらのSiC成形体の嵩密度は表1に示す通りであった。次に、これらSiC成形体を焼成炉内にてアルゴン雰囲気で炉内温度を1200℃~1900℃として3時間焼成して2個のSiC仮焼体を得た。仮焼後の嵩密度及び仮焼による収縮率は、表1に示す通りであった。
【0065】
次に、第1及び第2の平面形成工程STEP3,4として、2個のSiC仮焼体を、
図2Aを参照して、一辺100mm、高さ10mmの正方形板状の第1及び第2のSiC仮焼体1,2に加工した。第1のSiC仮焼体1の第1の平面1a及び第2のSiC仮焼体2の第2の平面2aは、実施例1~4,6,7においては、♯170のダイヤモンド砥粒を備えた砥石を用いて研削加工を行った。そして、実施例5においては、♯600のダイヤモンド砥粒を備えた砥石を用いて研削加工を行った。研削加工は、研磨液は用いずに、乾式で行った。第1及び第2の平面1a,2aの算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rz)の平均は、表1に示す通りであった。
【0066】
次に、凹部形成工程STEP5として、第2のSiC仮焼体2の第2の平面2aに凹部3を形成した。凹部3は、3本の幅20mm、深さ5mm、長さ70mmの直線状の溝であった。この凹部3は、直径20mmのエンドミルを用いてMC加工により形成した。このMC加工の加工性の評価は表1に示す通りであった。
【0067】
なお、評価は加工時の主軸の負荷、ビビリ及び仮焼体の破損の発生によって判定した。表1において、評価「◎」は1パスの切り込み量が0.25mm以上、且つ刃送り量が250mm/min以上が可能であって優良を意味する。評価「〇」は1パスの切り込み量が0.2mm以上、且つ刃送り量が200mm/min以上が可能であって良を意味する。評価「△」は1パスの切り込み量が0.15mm以上、且つ刃送り量が150mm/min以上が可能であって可を意味する。
【0068】
これより、凹部3を形成する際の加工性に関しては、仮焼温度が1200℃以上1900℃であれば凹部3の形成は可能であるが、1250℃以上1785℃以下であると良好であることが分かった。
【0069】
次に、積層工程STEP6として、
図2Bを参照して、第1のSiC仮焼体1と第2のSiC仮焼体2とを、第1の平面1aと第2の平面2aとを接触させた状態で積層させた。
【0070】
次に、焼成工程STEP7として、このように積層した第1及び第2のSiC仮焼体1,2を焼成炉内にてアルゴン雰囲気で押圧板としてのカーボン平板で挟み込んで、実施例1~6では25kgf/cm
2(=2.45MPa)の荷重、実施例7では10kgf/cm
2(=0.98MPa)の荷重を積層方向にかけながら、炉内温度を2070℃として3時間焼成した。これにより、
図2Cを参照して、セラミックス焼結体10が得られた。セラミックス焼結体10の流路上部領域X及び他の領域Yの熱伝導率と嵩密度は表1に示す通りであった。この結果、実施例1~7は何れも他の領域Yの熱伝導率が流路上部領域Xの熱伝導率よりも11W/mK~18W/mK大きく、流路上部領域Xの嵩密度が他の領域Yの嵩密度よりも0.02g/cm
3~0.05g/cm
3小さいことが確認された。
【0071】
そして、このセラミックス焼結体10に対して、接合部を含むように切断し、切断面を研磨加工した後、接合部を拡大鏡などを用いて実験者が目視した。その結果、接合部に接合不不良や破損などは確認されず、凹部3に由来する中空構造にも破損や歪みなどは確認されなかった。
【0072】
実施例1~7の結果を表1にまとめた。
【0073】
【0074】
(実施例8)
実施例8においては、
図1における第1及び第2の平面形成工程STEP3,4として、2個のSiC仮焼体を、
図5Aを参照して、直径400mm、厚さ10mmの円板状の第1のSiC仮焼体21及び直径400mm、厚さ25mmの円板状の第2のSiC仮焼体22に加工した。第1のSiC仮焼体21の第1の平面21a、第2のSiC仮焼体22の第2の平面22aは、♯170のダイヤモンド砥粒を備えた砥石を用いて研削加工を行った。このとき、研磨液は用いずに、乾式で研削加工を行った。第1及び第2の平面21a,22aの算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rz)の平均は、表2に示す通りであった。また、
図1における凹部形成工程STEP5として、実施例1と同様のMC加工により凹部23,24を形成した。凹部23は、第2のSiC仮焼体22の第2の平面22aに幅20mm、深さ5mmの円周形状に形成した。凹部24は、第2のSiC仮焼体22の第2の平面22aとは反対側の表面の外周部に幅25mm深さ15mmを有する環状に形成した。これらのことを除いて実施例1と同様にして、セラミックス焼結体30を作製した。
【0075】
このセラミックス焼結体30も、実施例1と同様に、接合部に接合不良や破損などは確認されず、凹部23に由来する中空構造にも破損や歪みなどは確認されなかった。実施例8の結果を表2にまとめた。そして、実施例8で作製したセラミックス焼結体30は、他の領域Yの熱伝導率が流路上部領域Xの熱伝導率よりも大きく、流路上部領域Xの嵩密度が他の領域Yの嵩密度よりも小さいことが確認された。
【0076】
実施例8で作製したセラミックス焼結体30の載置面Fに熱量3000Wを入熱し、流路4に20℃の冷媒を循環させた状態で載置面Fの温度を測定した。温度測定には赤外線温度計を使用した。流路上部領域Xの温度は23.8℃であり、他の領域Yは23.7℃であった。流路上部領域Xと他の領域Yとで温度差が少なく、載置面Fのより均一な温度分布が図れることが確認された。
【0077】
(実施例9)
実施例9においては、第1及び第2の平面21a,22aに対する研削加工方法を除いて実施例8と同様にして、第1及び第2のSiC仮焼体21,22を得た。
【0078】
詳述すると、第1及び第2のSiC仮焼体21,22に対して、♯600のダイヤモンド砥粒を備えた砥石を用いて研削加工を行い、第1及び第2の平面21a,22aの算術平均粗さ(Ra)の平均を0.27μmとした。さらに、算術平均粗さ(Ra)が0.01μmの平面を有する別のSiC焼結体を用い、面方向に垂直に6000Paの荷重をかけながら0.5m/minの速度で摺動させて乾式で研磨を行った。これにより、第1及び第2の平面21a,21bの算術平均粗さ(Ra)の平均は0.18μmとなった。
【0079】
次に、実施例8と同様にして、
図1における積層工程STEP6及び焼成工程STEP7を行った。これにより、セラミックス焼結体30を得た。
【0080】
このセラミックス焼結体30も、実施例8と同様に、接合部に接合不良や破損などは確認されず、凹部23に由来する中空構造にも破損や歪みなどは確認されなかった。実施例9の結果を表3にまとめた。そして、実施例9で作製したセラミックス焼結体30は、他の領域Yの熱伝導率が流路上部領域Xの熱伝導率よりも大きく、流路上部領域Xの嵩密度が他の領域Yの嵩密度よりも小さいことが確認された。
【0081】
(実施例10)
実施例10においては、
図3における第1及び第2のSiC仮焼体取得工程STEP11,12として、実施例8の第1及び第2のSiC仮焼体取得工程STEP1,2と同様にして、2個のSiC成形体を得た。次に、これらSiC成形体を焼成炉内にてアルゴン雰囲気で炉内温度を1500℃として3時間焼成して2個のSiC仮焼体を得た。
【0082】
また、第3のSiC仮焼体取得工程STEP13として、実施例1の第1及び第2のSiC仮焼体取得工程STEP1,2と同様にして、SiC成形体を得た。次に、このSiC成形体を焼成炉内にてアルゴン雰囲気で炉内温度を1500℃として3時間焼成して1個のSiC仮焼体を得た。
【0083】
次に、
図3における第1及び第2の平面形成工程STEP14,15として、
図4Aを参照して、前記2個のSiC仮焼体を、直径400mm、厚さ10mmの円板形状の第1のSiC仮焼体11及び直径400mm、厚さ25mmの円板形状の第2のSiC仮焼体12に加工した。第1のSiC仮焼体11の第1の平面11a及び第2のSiC仮焼体12の第2の平面12aは、♯170のダイヤモンド砥粒を備えた砥石を用いて研削加工を行った。また、前記1個のSiC仮焼体を、外径400mm、内径350.5mm、厚さ14.5mmの円環形状の第3のSiC仮焼体13に加工した。
【0084】
次に、凹部形成工程STEP16として、第2のSiC仮焼体12の第2の平面12aに凹部14を形成し、第2のSiC仮焼体12の第2の平面12aとは反対側の表面の外周部に幅25mm、深さ15mm円環状の凹部を形成した。凹部14は、幅10mm、深さ10mmであって冷媒用の流路に相当する円周形状であった。この凹部14は、実施例8と同じようにMC加工により形成した。
【0085】
次に、積層工程STEP17として、
図4Bを参照して、第1のSiC仮焼体11と第2のSiC仮焼体12とを、第1の平面11aと第2の平面12aとを接触させた状態で積層させた。さらに、第2のSiC仮焼体12の外周外側に剥離材15を介して第3のSiC仮焼体13を、剥離材15を介して第1のSiC仮焼体11の第1の平面11aの下方に設置した。なお、剥離材15は共に厚さ0.25mmのカーボンシートを用いた。
【0086】
次に、焼成工程STEP18として、このように積層した第1から第3のSiC仮焼体11~13を、実施例1の焼成工程STEP7と同様にして焼成した。その後、第3のSiC仮焼体13が焼成された部分を剥離することにより、
図4Cを参照して、セラミックス焼結体20が得られた。
【0087】
そして、このセラミックス焼結体20に対して、接合部を含むように切断し、切断面を研磨加工した後、接合部を拡大鏡などを用いて実験者が目視した。その結果、接合部に接合不良や破損などは確認されず、凹部14に由来する中空構造にも破損や歪みなどは確認されなかった。また、実施例10で作成したセラミックス焼結体20は、他の領域Yの熱伝導率が流路上部領域Xの熱伝導率よりも大きく、流路上部領域Xの嵩密度が他の領域Yの嵩密度よりも小さいことが確認された。
【0088】
(実施例11)
実施例11においては、
図1における積層工程STEP6において、第1のSiC仮焼体21の第1の表面21a及び第2のSiC仮焼体22の第2の表面22aに、濃度0.3g/Lのホウ酸水溶液用を塗布したうえで、第1及び第2のSiC焼結体21,22を積層したことを除いて、実施例8と同様にして、セラミックス焼結体30を作製した。
【0089】
このセラミックス焼結体30も、実施例8と同様に、接合部に接合不良や破損などは確認されず、凹部23に由来する中空構造にも破損や歪みなどは確認されず、他の領域Yの熱伝導率が流路上部領域Xの熱伝導率よりも大きく、流路上部領域Xの嵩密度が他の領域Yの嵩密度よりも小さいことが確認された。
【0090】
実施例8~11の結果を表2にまとめた。
【0091】
【0092】
(比較例1)
比較例1においては、まず、実施例1における第1及び第2の仮焼体取得工程STEP1,2と凹部形成工程STEP6に代えて、予め凹部を形成した2つのSiC成形体を焼成炉内にてアルゴン雰囲気で炉内温度を2070℃として3時間焼成して、第1のSiC焼結体と第2のSiC焼結体を作製した。第1の平面を有する第1のSiC焼結体は、直径400mm、厚さ10mmの円板状であり、第2の平面を有する第2のSiC焼結体は、直径400mm、厚さ25mmであり、第2の平面に幅20mm、深さ5mmの円板形状の凹部と、第2の平面と反対側の表面の外周部に幅25mm、深さ15mmの環状の凹部とを有している。
【0093】
次に、第1及び第2の平面形成工程STEP3,4として、第1のSiC焼結体の第1の平面と第2のSiC焼結体の第2の平面に対して、♯170および#600のダイヤモンド砥粒を備えた砥石を用いて研削加工を行ったのち、1μmのダイヤモンド遊離砥粒によるラッピング加工を行った。第1及び第2の平面は、算術平均粗さ(Ra)の平均が、0.1μmであり、最大高さ(Rz)の平均が1.1μmであった。これらのことを除いて実施例1と同様にしてセラミックス焼結体30を作製した。
【0094】
比較例1のセラミックス焼結体30において、流路上部領域Xと他の領域Yの熱伝導率は、ともに158W/mKであり、流路上部領域Xと他の領域Yの嵩密度はともに3.12g/cm3であり、流路上部領域Xと他の領域Yとで熱伝導率や嵩密度の差は認められなかった。
【0095】
実施例8と同様に測定された比較例1のセラミックス焼結体の流路上部領域Xの温度は23.0℃であり、他の領域Yは23.7℃であった。実施例8と比較して、載置面の温度分布が不均一であることが分かる。
【符号の説明】
【0096】
1,11,21 第1のSiC仮焼体
1a,11a,21a 第1の平面
2,12,22 第2のSiC仮焼体
2a,12a,22a 第2の平面
3、14,23 凹部
13 第3のSiC仮焼体
15 剥離材
10,20,30 セラミックス焼結体
F 載置面
X 流路上部領域
Y 他の領域