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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】発泡性エアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20231226BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20231226BHJP
   C09K 3/30 20060101ALI20231226BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALN20231226BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/02
A61K8/36
A61K8/04
C09K3/30 F
C09K3/30 J
C09K3/30 Z
A61Q19/00
A61Q5/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019164715
(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2021042155
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡野 史典
(72)【発明者】
【氏名】松井 和弘
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-081763(JP,A)
【文献】特開2010-018645(JP,A)
【文献】国際公開第2004/061043(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/033196(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0164226(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C09K 3/20- 3/32
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰イオン性界面活性剤、セルロースナノファイバーおよび水を含む原液と、液化ガスとを含み、
前記原液と前記液化ガスとが乳化しており、
前記液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中50~90質量%であり、
前記セルロースナノファイバーの含有量(固形分)は、原液中、0.01~0.1質量%であり、
前記陰イオン性界面活性剤は、脂肪酸のケン化物を含み、
前記脂肪酸の重量平均分子量は、200~300であり、
前記陰イオン性界面活性剤の含有量は、原液中、3~20質量%であり、
前記セルロースナノファイバーの平均繊維径は、3~500nmであり、
前記セルロースナノファイバーの平均アスペクト比は、10~1000である、発泡性エアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性エアゾール組成物に関する。より詳細には、本発明は、原液と液化ガスとの乳化が容易であり、吐出すると軽く、指などで押すと容易につぶすことのできる泡体を形成することのできる発泡性エアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吐出後に発泡する発泡性エアゾール組成物が開発されている(特許文献1~2)。特許文献1には、陰イオン性界面活性剤、水を含有する原液と液化ガスを含有する発泡性エアゾール組成物であり、液化ガスの含有量が40~90質量%である発泡性エアゾール組成物が開示されている。特許文献2には、セルロースナノファイバーを含む原液と噴射剤を含む発泡性エアゾール組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-81763号公報
【文献】特開2017-222610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発泡性エアゾール組成物は、陰イオン性界面活性剤と水を含有する原液に多量の液化ガスを乳化させると、エアゾール組成物の粘度が急激に高くなり、乳化が困難になる。そのため、特許文献1に記載の発泡性エアゾール組成物は、液化ガスを多量に含む場合において、均一な泡体を形成しにくい。また、このような発泡性エアゾール組成物は、内容物が分離した後に再乳化させることが難しい。また、特許文献2に記載の発泡性エアゾール組成物は、セルロースナノファイバーが水に添加されると粘度が高くなる特性を利用し、弾力のある泡体を形成するものであり、軽くてつぶしやすい性状の泡体を得るものではない。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、原液と液化ガスとの乳化が容易であり、吐出すると軽く、指などで押すと容易につぶすことのできる泡体を形成することのできる発泡性エアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)陰イオン性界面活性剤、セルロースナノファイバーおよび水を含む原液と、液化ガスとを含み、前記原液と前記液化ガスとが乳化しており、前記液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中50~90質量%である、発泡性エアゾール組成物。
【0008】
このような構成によれば、発泡性エアゾール組成物は、原液が陰イオン性界面活性剤および水を含んでおり、さらに多くの液化ガスを含んでいるにも関わらず、原液と液化ガスとを容易に乳化することができる。そのため、発泡性エアゾール組成物は、均一な組成で吐出することができ、得られる泡体は、軽く、指などで押すと容易につぶすことができる。
【0009】
(2)前記陰イオン性界面活性剤は、脂肪酸のケン化物を含む、(1)記載の発泡性エアゾール組成物。
【0010】
このような構成によれば、エアゾール組成物は、液化ガスを多量に配合した場合でも吐出物中に液化ガスを保持し、液化ガスをゆっくりと気化させることができ、きわめて軽く、長時間にわたって安定な泡体が得られやすい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原液と液化ガスとの乳化が容易であり、吐出すると軽く、指などで押すと容易につぶすことのできる泡体を形成することのできる発泡性エアゾール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<発泡性エアゾール組成物>
本発明の一実施形態の発泡性エアゾール組成物(以下、エアゾール組成物ともいう)は、陰イオン性界面活性剤、セルロースナノファイバーおよび水を含む原液と、液化ガスとを含む。原液と液化ガスとは、乳化している。液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中50~90質量%である。このようなエアゾール組成物は、原液が陰イオン性界面活性剤および水を含んでおり、さらに多くの液化ガスを含んでいるにも関わらず、原液と液化ガスとを容易に乳化することができる。そのため、発泡性エアゾール組成物は、均一な組成で吐出することができ、得られる泡体は、軽く、容易につぶすことができる。以下、それぞれについて説明する。
【0013】
(原液)
原液は、陰イオン性界面活性剤、セルロースナノファイバーおよび水を含む。
【0014】
・陰イオン性界面活性剤
陰イオン性界面活性剤は、原液と液化ガスとを乳化するために配合される。また、陰イオン性界面活性剤が配合されていることにより、エアゾール組成物は、外部に吐出されると、液化ガスの気化により、雲やわたあめに似た外観の、泡比重が非常に小さな泡体を形成することができる。
【0015】
陰イオン性界面活性剤は特に限定されない。一例を挙げると、陰イオン性界面活性剤は、脂肪酸のケン化物、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N-アシルアミノ酸塩、N-アシルメチルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウムなどの高級アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキルエーテル硫酸エステル塩、ラウロイルサルコシンナトリウムなどのN-アシルサルコシン酸、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム、ラウリルメチルタウリッドナトリウムなどの高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸などのリン酸エステル塩、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウムなどのスルホコハク酸塩、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウムなどのN-アシルグルタミン酸塩、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウムなどの高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩、ロート油などの硫酸化油、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、二級アルコール硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム、N-パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン、カゼインナトリウム等である。これらの中でも、エアゾール組成物は、液化ガスを多量に配合した場合でも液化ガスをゆっくりと気化させることができ、きわめて軽く、長時間にわたって安定な泡体が得られやすい点から、陰イオン性界面活性剤として脂肪酸のケン化物を含むことが好ましい。陰イオン性界面活性剤は併用されてもよい。
【0016】
脂肪酸のケン化物は特に限定されない。一例を挙げると、脂肪酸のケン化物は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸などの脂肪酸類と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカリ類との反応物等である。
【0017】
脂肪酸のケン化物は、脂肪酸の種類を選択することにより、原液の粘度を調整することができ、吐出直後の泡体の泡質や発泡時間、泡比重なども調整することができる。たとえば分子量が大きいステアリン酸を用いる場合、得られるエアゾール組成物の吐出物は、吐出直後がクリーム状であり、発泡時間が長く、泡比重が大きくなる傾向がある。一方、分子量が小さいラウリン酸を用いた場合、得られるエアゾール組成物の吐出物は、原液の粘度が小さくなり、発泡時間が短く、泡の弾力性が小さくなる傾向がある。脂肪酸の好ましい重量平均分子量は、200~300である。
【0018】
陰イオン性界面活性剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、陰イオン性界面活性剤の含有量は、原液中、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、陰イオン性界面活性剤の含有量は、原液中、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましい。陰イオン性界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、原液と液化ガスとを乳化しやすく、発泡性が優れ、かつ、得られる泡体は軽く、保形性が優れ、指などで押すと容易につぶすことができる。
【0019】
なお、原液は、陰イオン性界面活性剤のほかにも、原液と液化ガスとの乳化を補助する目的で、乳化補助剤が配合されてもよい。乳化補助剤は特に限定されない。一例を挙げると、乳化補助剤は、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、天然系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等である。乳化補助剤は併用されてもよい。
【0020】
非イオン性界面活性剤は、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、脂肪酸アルキロールアミド等である。
【0021】
陽イオン性界面活性剤は、アルキルアンモニウム塩、アルキルベンジルアンモニウム塩等である。
【0022】
両性界面活性剤は、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(ラウリルベタイン)、ステアリルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(コカミドプロピルベタイン)等である。
【0023】
天然系界面活性剤は、サーファクチンナトリウム、シクロデキストリン、水添酵素大豆レシチン等である。
【0024】
シリコーン系界面活性剤は、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・メチルポリシロキサン共重合体等である。
【0025】
乳化補助剤が配合される場合、乳化補助剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、乳化補助剤の含有量は、原液と液化ガスとの乳化の補助効果が充分に発現される点から、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、べたつきや皮膚への刺激が少ない点から、乳化補助剤の含有量は、原液中、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。
【0026】
・セルロースナノファイバー
セルロースナノファイバーは、原液と液化ガスとの乳化を容易にしたり、乳化物を安定化させたりするために配合される。
【0027】
セルロースナノファイバーは、未変性セルロースまたは化学変性セルロースの微細繊維である。セルロースナノファイバーは、通常、平均繊維径が3~500nm程度である。また、セルロースナノファイバーは、通常、平均アスペクト比が10以上である。アスペクト比の上限は特に限定されない。一例を挙げると、アスペクト比の上限は、1000以下である。セルロースナノファイバーの平均繊維径および平均繊維長の測定は、たとえば、セルロースナノファイバーの0.001質量%水分散液を調製し、この希釈分散液をマイカ製試料台に薄く延ばし、50℃で加熱乾燥させて観察用試料を作成し、原子間力顕微鏡(AFM)にて観察した形状像の断面高さを計測することにより、数平均繊維径あるいは繊維長として算出することができる。また、平均アスペクト比は下記の式により算出することができる:
平均アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
【0028】
本実施形態のセルロースナノファイバーは、セルロース原料を解繊すること、セルロース原料を化学変性した後に解繊すること、または、セルロース原料を解繊した後に化学変性することにより得ることができる。なお、セルロースナノファイバーは、公知の方法により製造されたセルロースナノファイバーであってもよく、市販品であってもよい。
【0029】
セルロースナノファイバーの含有量(固形分)は特に限定されない。一例を挙げると、セルロースファイバーの含有量(固形分)は、原液中、0.001質量%以上であることが好ましく、0.003質量%以上であることがより好ましい。また、セルロースナノファイバーの含有量(固形分)は、原液中、1.0質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以下であることがより好ましい。セルロースナノファイバーの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、原液と液化ガスとの乳化促進効果が得られやすく、かつ、原液の粘度が高くなり過ぎない。
【0030】
・水
水は、溶媒として用いられ、原液やエアゾール組成物の粘度を調節するために配合される。
【0031】
水は特に限定されない。一例を挙げると、水は、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水等である。
【0032】
水の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、水の含有量は、原液中、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。また、水の含有量は、原液中、95質量%以下であることが好ましく、93質量%以下であることがより好ましい。水の含有量が上記範囲内であることにより、原液およびエアゾール組成物は、粘度が適切に調整されやすい。
【0033】
原液は、上記陰イオン性界面活性剤、乳化補助剤、セルロースナノファイバーおよび水のほかにも、たとえば、有効成分、低級アルコール、多価アルコール、油成分、高分子化合物、粉体などが適宜配合されてもよい。これらはいずれも併用されてもよい。
【0034】
有効成分は、発泡性エアゾール組成物の使用目的や用途に応じて適宜選択される。一例を挙げると、有効成分は、ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル等の消臭剤、香料、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、感光素、パラクロルメタクレゾール等の殺菌・消毒剤、1-メントール、カンフル等の清涼剤、N,N-ジエチル-m-トルアミド(ディート)、力プリル酸ジエチルアミド等の害虫忌避剤、フタルスリン、アレスリン、ペルメトリン、テフルスリン、ベンフルスリン等の殺虫剤、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸オクチルアミド・アクリル酸ヒドロキシプロピル・メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸ブチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体、アクリル酸アルカノールアミン、アクリル酸アルキル共重合体エマルジョン、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルジョン等の頭髪用セット剤、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、コラーゲン、キシリトール、ソルビトール、ヒアルロン酸、力ロニン酸、乳酸ナトリウム、d,1-ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、カゼイン、レシチン等の保湿剤、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゼン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤、グリシン、アラニン、ロイシン、セリン、トリプトファン、シスチン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン等のアミノ酸、ビタミンA油、レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、ニコチン酸d,1-α-トコフェロール、ビタミンD2(エルゴカシフェロール)、d,1-α-トコフェロール、酢酸d,1-α-トコフェロール、パントテン酸、ビオチン等のビタミン類、アスコルビン酸、α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等の酸化防止剤、シャクヤクエキス、ヘチマエキス、バラエキス、レモンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、セージエキス、茶エキス、海藻エキス、プラセンタエキス、シルク抽出液の抽出液、リドカイン、ジフェンヒドラミン、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸ジカリウム等の鎮痒剤、サリチル酸メチル、カンフル、ジフェンヒドラミン、インドメタシン、ピロキシカム、フェルビナク、ケトプロフェン、クロタミトン等の消炎鎮痛剤、酸化亜鉛、アラントインヒドロキシアルミニウム、タンニン酸、クエン酸、乳酸等の収斂剤、アラントイン、グリチルレチン酸、アズレン等の抗炎症剤、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸リドカイン等の局所麻酔剤、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤等である。
【0035】
有効成分が配合される場合、有効成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分の含有量は、有効成分を配合することによる効果を充分に発揮させる点から、原液中、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、適切な効果が得られやすい点から、原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0036】
低級アルコールは、有効成分の溶解剤(溶媒)、乾燥性の向上など、使用感を向上させたり、吐出したエアゾール組成物の発泡時間や、発泡の大きさ(発泡倍率)、泡質など、発泡性を調整するために好適に配合される。
【0037】
低級アルコールは特に限定されない。一例を挙げると、低級アルコールは、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなど、炭素数が2~3の1価アルコール等である。
【0038】
低級アルコールが配合される場合、低級アルコールの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、低級アルコールの含有量は、原液中、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、低級アルコールの含有量は、原液中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。低級アルコールの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、原液と液化ガスとの乳化が阻害されにくく、かつ、低級アルコールを配合する効果が奏されやすい。
【0039】
多価アルコールは、有効成分の溶解剤(溶媒)、皮膚や頭髪の保湿性を向上させるなど、使用感を向上させるために好適に配合される。
【0040】
多価アルコールは特に限定されない。一例を挙げると、多価アルコールは、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等である。
【0041】
多価アルコールが配合される場合、多価アルコールの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、多価アルコールの含有量は、原液中、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、多価アルコールの含有量は、原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。多価アルコールの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、優れた乾燥性および使用感を維持しつつ、多価アルコールを配合する効果が奏されやすい。
【0042】
油成分は、原液の粘度を調整したり、泡の安定性をより向上させるために好適に配合される。なお、泡の安定性を向上させるためには、油成分は、常温でペースト状または固形状の油成分が好適に配合される。
【0043】
常温でペースト状または固形状の油成分は特に限定されない。一例を挙げると、常温でペースト状または固形状の油成分は、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、ラノリンアルコールなどの高級アルコール;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素;ミツロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、カンデリラロウなどのロウ類等である。
【0044】
また、油成分は、発泡物を頭髪や皮膚などの適用箇所に用いた際に、適用箇所において撥水性や艶を付与したり、櫛通りをよくするなど、使用感を向上させるために好適に配合される。このような目的において、油成分は、常温で液状の油成分が好適に用いられる。
【0045】
常温で液状の油成分は特に限定されない。一例を挙げると、常温で液状の油成分は、メチルポリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル;ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、流動パラフィン、イソパラフイン、ケロシン、スクワラン、スクワレンなどの炭化水素油;ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、酢酸エチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジエトキシエチル、コハク酸ジエトキシエチルなどのエステル油;ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコール;ツバキ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、アマ二油、サフラワー油、ホホバ油、ヤシ油などの油脂類等である。
【0046】
なお、上記した常温で液状の油成分のうち、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサンなどの炭素数が5~6の炭化水素は、発泡倍率や発泡時間などを調整するために、後述する液化ガスに配合されてもよい。
【0047】
油成分が配合される場合、油成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、油成分の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、油成分の含有量は、原液中、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。油成分の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、優れた乾燥性および使用感を維持しつつ、油成分を配合する効果が奏されやすい。
【0048】
高分子化合物は、泡体の潰れやすさ、乾燥性など、泡質を調整するために好適に配合される。
【0049】
高分子化合物は特に限定されない。一例を挙げると、高分子化合物は、カラギーナン、ペクチン、デンプン、ゼラチン、コラーゲン、カルボキシメチルデンプン、エチルセルロース、結晶セルロース、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム等である。これらの中でも、高分子化合物は、吐出物が多量の液化ガスが気化することにより大きく膨張した際の保形性を高めて、軽い泡体が形成しやすくする、乾燥性にすぐれた泡が得られる点から、ゼラチンであることが好ましい。
【0050】
高分子化合物が配合される場合、高分子化合物の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、高分子化合物の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、高分子化合物の含有量は、原液中、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。高分子化合物分の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、軽く、保形性が優れ、指などで押すと容易に潰すことができる泡体が得られやすい。
【0051】
粉体は、粉体自体が有効成分として作用したり、他の有効成分を担持する担体、保護剤、付着剤、潤滑剤などとして作用する。
【0052】
粉体は特に限定されない。一例を挙げると、粉体は、シリカ、タルク、酸化亜鉛、力オリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ゼオライト、セラミックパウダー、チッ化ホウ素等である。
【0053】
粉体が配合される場合、粉体の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、粉体の含有量は、原液中、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、粉体の含有量は、原液中、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。粉体の含有量が上記範囲内であることにより、前述の効果が得られやすい。
【0054】
原液全体の説明に戻り、原液の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、原液の含有量は、エアゾール組成物中、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、原液の含有量は、エアゾール組成物中、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。原液の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、原液と液化ガスとが乳化しやすい。また、得られるエアゾール組成物の吐出物は、軽く、指などで押すと容易につぶれる泡体を形成しやすい。
【0055】
原液の調製方法は特に限定されない。原液は、従来公知の方法により調製することができる。たとえば、原液は、水に陰イオン性界面活性剤、セルロースナノファイバー等を添加し、混合することにより調製し得る。
【0056】
(液化ガス)
液化ガスは、エアゾール容器内では蒸気圧を有する液体であり、エアゾール容器から外部に吐出されると気化し、容積の膨張により原液を発泡させて、軽い泡体を形成する。
【0057】
液化ガスは特に限定されない。一例を挙げると、液化ガスは、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンなどのハイドロフルオロオレフィン、およびこれらの混合物等である。
【0058】
液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、50質量%以上であればよく、60質量%以上であることが好ましい。また、液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、90質量%以下であればよく、85質量%以下であることが好ましい。液化ガスの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、原液と乳化しやすい。また、得られるエアゾール組成物の吐出物は、軽く、指などで押すと容易につぶれる泡体を形成しやすい。
【0059】
エアゾール組成物全体の説明に戻り、エアゾール組成物の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、エアゾール組成物は、耐圧性の容器本体に原液を充填し、バルブを容器本体の開口部上に保持して開口部とバルブの隙間から液化ガスをアンダーカップ充填し、容器本体にバルブを固着することにより調製し得る。なお、原液を充填した後にバルブを固着し、バルブから液化ガスを充填してもよい。
【0060】
以上、本実施形態のエアゾール組成物は、原液が陰イオン性界面活性剤および水を含んでおり、さらに多くの液化ガスを含んでいるにも関わらず、原液と液化ガスとを容易に乳化することができる。そのため、発泡性エアゾール組成物は、均一な組成で吐出することができ、得られる泡体は、軽く、指などで押すと容易につぶすことができる。
【0061】
具体的には、本実施形態のエアゾール組成物は、たとえば、25℃に調整された状態で噴射されると、非常に軽い泡体を形成する。泡体の泡比重(g/ml)は、0.001以上であることが好ましく、0.002以上であることがより好ましい。また、泡体の泡比重は、0.02以下であることが好ましく、0.015以下であることがより好ましい。このように、本実施形態によれば、泡比重の小さな、軽くて指などで押すと容易につぶすことのできる泡体が形成され得る。
【実施例
【0062】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0063】
(実施例1)
以下の表1に示される処方にしたがって、原液Aを調製した。この原液A10g(25質量%)をポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填し、耐圧容器の口部にバルブを固着した。バルブから液化石油ガス30g(75質量%)を充填し、実施例1のエアゾール組成物を調製した。
【0064】
【表1】
【0065】
(実施例2~5、比較例1~2)
表1に示される処方にしたがって、原液B~Eを調製した。得られた原液B~Eを用いて、表2に示される処方にしたがって、実施例1と同様の方法により液化石油ガスを充填し、それぞれ実施例2~5および比較例1~2のエアゾール組成物を調製した。
【0066】
実施例1~5および比較例1~2において得られたエアゾール組成物を用いて、以下の評価方法により、乳化性、泡比重、泡の強度を評価した。結果を表2に示す。
【0067】
1.乳化性
前述の製造工程において、原液と液化ガスとを充填したポリエチレンテレフタレート製耐圧容器を20cmの振幅で上下に振盪し、1往復を1回として乳化に要した振盪回数を測定し、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
◎:振盪回数が1~20回であった。
○:振盪回数が21~50回であった。
△:振盪回数が51~100回であった。
×:振盪回数が100回以上であった。
-:液化ガスの配合量が少ないため振盪不要。
【0068】
2.泡比重
25℃に調整したエアゾール組成物を、内容量が25mlの比重カップに吐出して泡体で満たし、その重量を測定し、泡比重(g/ml)を算出した。
【0069】
3.泡の強度
25℃に調整したエアゾール組成物を、内径40mm、高さ25mmの有底筒状のカップに吐出して泡体で満たし、直径12.5mm、質量2.5gのガラス玉を泡体の上面に載せて自然落下させ、カップの下まで落ちる時間を測定し、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
○:ガラス玉は、1分以内に底部に落下した。
△:ガラス玉は、1分を超え、2分以内に底部に落下した。
×:ガラス玉は、2分経過しても底部に落下しなかった。
【0070】
【表2】
【0071】
表2に示されるように、実施例1~5のエアゾール組成物は、50回以内の振盪で乳化し、優れた乳化性を示した。また、これらエアゾール組成物の泡体は、非常に軽く、ガラス玉を載せると、ガラス玉が短時間で底部に落下したことから、容易につぶすことができると考えられた。
【0072】
一方、セルロースナノファイバーを含有しない比較例1のエアゾール組成物は、100回以上振盪しても乳化しなかった。また、特許文献2の原液と液化ガスの含有比率に合わせた比較例2のエアゾール組成物は、泡体が重く、泡体にガラス玉を載せても、ガラス玉が底部に落下しなかったことから、容易につぶすことができないと考えられた。