(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】協調型の操作調整方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20231226BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20231226BHJP
B60W 30/095 20120101ALI20231226BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/09 H
B60W30/095
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019170168
(22)【出願日】2019-09-19
【審査請求日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】10 2018 216 082.1
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】マキシム・ドルゴフ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ミハルケ
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・ビルトシュッテ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリク・フックス
(72)【発明者】
【氏名】イグナシオ・リャツェル・マルティ
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0325306(US,A1)
【文献】特開2017-207812(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107564317(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
B60R 21/00 - 21/13
B60R 21/34 - 21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内部の制御機器(16)による車両(10)の操作計画および操作実施のための方法(1)であって、
前記制御機器(16)が、
戦略的ルート(22)を含むルート計画を実施するための戦略的計画レベル(2)と、可能な目標点(20)への正確に車線に合わせた
戦術的軌道(24)を提供するための戦術的計画レベル(4)と、1つの目標点(20)の選択および選択された前記目標点(20)への走行可能な作戦的軌道(
26)の選択のための作戦的計画レベル(6)と、を含む計画レベル(2、4、6)を有しており、
これに関し、前記計画レベル(2、4、6)が階層状に実行され、
かつ少なくとも1つの計画レベル(2、4、6)を実行する際に、
前記車両(10)と少なくとも1台の隣接する車両(12)との間での衝突
が存在するか否かを確定するため、
前記少なくとも1台の隣接する車両(12)との情報交換(8)が通信接続(18)を介して実施され、
この場合、少なくとも1つの計画レベル(2、4、6)で
前記車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)との間での衝突
が存在することが確定されると、前記車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)との間での操作調整が前記通信接続(18)を介して実施される、
方法(1)において、
少なくとも1つの計画レベル(2、4、6)で
前記車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)との間での衝突
が存在することが確定されると、前記計画レベル
(2、4、6)より上位の前記計画レベル
(2、4、6)が前記操作調整の際に考慮されない、
方法(1)。
【請求項2】
車両内部の制御機器(16)による車両(10)の操作計画および操作実施のための方法(1)であって、
前記制御機器(16)が、
戦略的ルート(22)を含むルート計画を実施するための戦略的計画レベル(2)と、可能な目標点(20)への正確に車線に合わせた
戦術的軌道(24)を提供するための戦術的計画レベル(4)と、1つの目標点(20)の選択および選択された前記目標点(20)への走行可能な作戦的軌道(
26)の選択のための作戦的計画レベル(6)と、を含む計画レベル(2、4、6)を有しており、
これに関し、前記計画レベル(2、4、6)が階層状に実行され、
かつ少なくとも1つの計画レベル(2、4、6)を実行する際に、
前記車両(10)と少なくとも1台の隣接する車両(12)との間での衝突
が存在するか否かを確定するため、
前記少なくとも1台の隣接する車両(12)との情報交換(8)が通信接続(18)を介して実施され、
この場合、少なくとも1つの計画レベル(2、4、6)で
前記車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)との間での衝突
が存在することが確定されると、前記車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)との間での操作調整が前記通信接続(18)を介して実施される、
方法(1)において、
前記
車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)間での前記通信接続(18)が、操作調整を実施した後に維持される、
方法(1)。
【請求項3】
車両内部の制御機器(16)による車両(10)の操作計画および操作実施のための方法(1)であって、
前記制御機器(16)が、
戦略的ルート(22)を含むルート計画を実施するための戦略的計画レベル(2)と、可能な目標点(20)への正確に車線に合わせた
戦術的軌道(24)を提供するための戦術的計画レベル(4)と、1つの目標点(20)の選択および選択された前記目標点(20)への走行可能な作戦的軌道(
26)の選択のための作戦的計画レベル(6)と、を含む計画レベル(2、4、6)を有しており、
これに関し、前記計画レベル(2、4、6)が階層状に実行され、
かつ少なくとも1つの計画レベル(2、4、6)を実行する際に、
前記車両(10)と少なくとも1台の隣接する車両(12)との間での衝突
が存在するか否かを確定するため、
前記少なくとも1台の隣接する車両(12)との情報交換(8)が通信接続(18)を介して実施され、
この場合、少なくとも1つの計画レベル(2、4、6)で
前記車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)との間での衝突
が存在することが確定されると、前記車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)との間での操作調整が前記通信接続(18)を介して実施される、
方法(1)において、
前記戦術的計画レベル(2、4、6)では、前記
車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)のいずれが、前記車両(10)と少なくとも1台の隣接する車両(12)との間での衝突が発生することが確定されていた衝突領域内で先に行くのかが決められる、
方法(1)。
【請求項4】
車両内部の制御機器(16)による車両(10)の操作計画および操作実施のための方法(1)であって、
前記制御機器(16)が、
戦略的ルート(22)を含むルート計画を実施するための戦略的計画レベル(2)と、可能な目標点(20)への正確に車線に合わせた
戦術的軌道(24)を提供するための戦術的計画レベル(4)と、1つの目標点(20)の選択および選択された前記目標点(20)への走行可能な作戦的軌道(
26)の選択のための作戦的計画レベル(6)と、を含む計画レベル(2、4、6)を有しており、
これに関し、前記計画レベル(2、4、6)が階層状に実行され、
かつ少なくとも1つの計画レベル(2、4、6)を実行する際に、
前記車両(10)と少なくとも1台の隣接する車両(12)との間での衝突
が存在するか否かを確定するため、
前記少なくとも1台の隣接する車両(12)との情報交換(8)が通信接続(18)を介して実施され、
この場合、少なくとも1つの計画レベル(2、4、6)で
前記車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)との間での衝突
が存在することが確定されると、前記車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)との間での操作調整が前記通信接続(18)を介して実施される、
方法(1)において、
1つの計画レベル(2、4、6)で少なくとも1つの
前記車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)との間での衝突
が存在することが
確定されると、
前記車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)との間での衝突を伴う最も低い前記計画レベル(2、4、6)が協調型の操作調整に用いられ、このとき、より高い前記計画レベル(2、4、6)が自動化モードで動作する、
方法(1)。
【請求項5】
前記車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)がそれぞれ、計画レベル(2、4、6)を有する内部の制御機器(16)を備えており、この場合、少なくとも1つの計画レベル(2、4、6)で
前記車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)との間での衝突
が存在することが確定されたときに協調型の操作調整を実施するため、
前記車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)間で通信接続(18)が確立される、請求項1
~4のいずれか一項に記載の方法
(1)。
【請求項6】
少なくとも2台の車両の少なくとも1つの計画レベル(2、4、6)で
前記車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)との間での衝突
が存在することが
確定されると、
前記車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)が協調相手として選択される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法
(1)。
【請求項7】
前記車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)との間での衝突
が存在することが
確定されると、前記
車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)間の操作調整が、
前記車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)の
戦術的軌道(24)および作戦的軌道(
26)の適合によって実行される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法
(1)。
【請求項8】
前記情報交換(8)が、目標点(20)および目標時点を伴う計画された
戦略的ルート(22)および戦術的軌道(24)を有している、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法
(1)。
【請求項9】
前記
車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)を制御するための、および前記
車両(10)と前記少なくとも1台の隣接する車両(12)間の通信接続(18)を確立するための制御機器(16)であって、前記制御機器(16)が、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法(1)のステップを実行するように適応されている、制御機器(16)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内部の制御機器による車両の操作計画および操作実施のための方法ならびに制御機器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動走行を可能にする従来型のシステムが知られており、この従来型のシステムは、それぞれの自車のためだけに、ほかの道路使用者の挙動を考慮して車両軌道を計画する。
さらに、協調型の操作計画および操作実行を実現するため、車両間通信を用いるという熱心な試みがある。これにより、なかでも安全性および快適性が向上し、かつ燃料消費量が減少する。
【0003】
軌道の計画に車両間通信を取り入れるというこれまでの試みでは、効率的な実行が、互いの間隔の小さい車両間でしかメッセージ交換を行っていないという問題がある。これにより、協調型の操作調整は少数のシナリオだけに限られている。それだけでなく自動化されていない車両との混合交通においては、軌道に関する比較的長い、例えば5秒を超える予測時間は目下のところ実現不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の基礎となる課題は、軌道に関する比較的長い予測時間の場合も適用可能な操作調整方法を提案することに見出せる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、独立形式請求項のそれぞれの対象によって解決される。本発明の有利な形態は、それぞれ従属する引用形式請求項の対象である。
本発明の一態様によれば、車両の操作計画および操作実施のための方法は、車両内部の制御機器によって提供される。制御機器は、ルート計画を実施するための戦略的計画レベルと、可能な目標点への正確に車線に合わせた軌道を提供するための戦術的計画レベルと、1つの目標点の選択および選択された目標点への走行可能な軌道の選択のための作戦的計画レベルとを有している。これらの計画レベルを階層状に実行し、その際、少なくとも1つの計画レベルを実行する際に、とりわけ各計画レベルで、衝突を確定するため、隣接する車両との情報交換を通信接続を介して実施する。少なくとも1つの計画レベルで衝突が確定されると、この車両と少なくとも1台の隣接する車両との間での操作調整を通信接続を介して実施する。
【0006】
本発明のさらなる一態様によれば、少なくとも1台の車両を制御するための、および少なくとも2台の車両間の通信接続を確立するための制御機器が提供されており、この制御機器は、本方法のすべてのステップを実行するように適応されている。
【0007】
通信接続は、ビークルツーエックス(V2X)通信であることが好ましい。この1種のV2X通信は、V2V通信、つまり車車間通信も、車両とインフラストラクチャーユニットの間のV2I(ビークルツーインフラストラクチャー)通信も含んでいる。通信接続の使用により、個々の車両の計画情報を交換でき、比較でき、かつ個々の計画レベルで衝突に関してチェックできる。
【0008】
軌道は、(有効範囲内の)時間を車両の「位置と姿勢」に写像する関数であることが好ましい。この「位置と姿勢」は、最も単純な場合には2D空間内での車両の座標から成っている。しかし姿勢は、向きおよびさらなる状態変数も内包し得る。さらに時間は、離散化された関数として定義することができる。
【0009】
車両の状態としての「位置と姿勢」は、戦略レベルでは、その時々のアウトバーン区間/アウトバーンのキロメートルの提示から成ることができ、戦術レベルでは、車線提示、車線上での位置(例えばその時々のアウトバーン区間内での車線の始まりからの弧長)、および車線に沿った縦速度から成ることができる。作戦レベルではこの状態は、その車両車線に沿ったデカルト座標系またはフレネ座標系内での「位置と姿勢」(位置および向き)、ヨーレート、縦速度および横速度、ならびに縦加速度および横加速度から成ることができる。
【0010】
同じ車線内の車両に対して衝突が存在するのは、例えば縦方向で、車線に沿った最低間隔を下回る場合である。隣り合う車線で衝突が存在するのは、縦方向の間隔も横方向の間隔も下回る場合である。
【0011】
操作は3つの異なる計画レベルで行うことができる。戦略的計画レベルは、例えば個々の車両のためのルート計画に用いられる。中間の戦術的計画レベルは、車両がその戦略的ルートの枠内で走行しなければならない具体的な目標点を設定することができる。作戦的計画レベルでは、例えば約0~10秒の時間の、具体的な走行可能な軌道を計画することができる。
【0012】
それぞれの計画レベルは、階層状に構成されている。これにより、通信接続を介して一群の車両内で分散協調型の走行操作を調整することが可能になる。この場合、戦略的計画、戦術的計画、および作戦的計画から成る計画レベルの階層を走破する。それぞれの計画レベルは、ハードウェアベースでは、制御機器の別個のモジュールとして実行することができる。それぞれのモジュールは、インターフェイスを介して相互にデータ伝送するように連結でき、かつ制御機器の通信ユニットにアクセスできる。その代わりに計画レベルをソフトウェアモジュールの形態で形成することができ、これらのソフトウェアモジュールは、ソフトウェアとハードウェア間のインターフェイスを介して制御機器の通信ユニットを利用できる。
【0013】
衝突を確定するための通信接続を介した各計画レベルでの車両間の情報交換は、メッセージの形態でまとめることができる。
本方法は、例えば、1つまたは複数の通信接続を使用した一群の車両内での協調型の操作調整を含んでいる。これに関し調整は、ルート計画または絶対的な走行目標(例えばカールスルーエ-シュトゥットガルト-アウグスブルク-ミュンヘン)を設定する戦略的計画レベルで行うことができる。戦略的計画レベルは、長期的なルート計画の実施に用いることができる。
【0014】
戦術的計画レベルでは、通信接続を介して受信した情報および戦略的計画レベルからの情報(例えば進入路の終わりでの車線変更)および協調相手を選択する情報を根拠として、目標点設定を処理することができる。したがって戦術的計画レベルは、ルート計画の中期的な計画課題に用いることができる。
【0015】
作戦的計画レベルでは、通信接続を介して交換した情報および戦術的計画レベルからの情報に基づいて、例えば0~10秒の時間の、走行可能な軌道の計画を実施できる。これにより作戦的計画レベルは、短期的なまたはすぐのルート計画に用いられ、かつ計画されたルートのその後の実施を実行するために、または計画されたルートを相応の車両制御ユニットに伝えるために形成することができる。
【0016】
作戦的計画レベルでの調整の実行は、例えば、1台または複数の車両の少なくとも1つの所望のまたは計画された軌道を適合することで行える。
1つの例示的実施形態によれば、少なくとも2台の車両がそれぞれ、計画レベルを有する内部の制御機器を備えており、この場合、少なくとも1つの計画レベルで衝突が確定されたときに協調型の操作調整を実施するため、車両間で通信接続を確立させる。好ましいのは、通信接続の到達範囲内に並んでいる少なくとも2台の車両が、ルート計画のための計画レベルの実行中に情報を相互に交換できることである。それぞれの車両の制御機器が相互に通信できることが好ましい。制御機器はこの場合、異なる制御機器のそれぞれの計画レベルが別個に相互間で通信できるように形成されている。それぞれの計画レベルが段階的に次々と制御機器によって実行され、したがって各計画レベル中に情報交換を行うことができる。その代わりにまたはそれに加えて、制御機器は、既に完結した計画レベルの情報にアクセスできるか、または同期化を行うことができ、この同期化により、それぞれの計画レベルが同時に複数の制御機器によって新たに実施される。
【0017】
一実施形態によれば、少なくとも1つの計画レベルで衝突が確定されると、この計画レベルより上位の計画レベルは操作調整の際に考慮しない。これに関しては、最も低い計画レベルでの衝突を優先する。例えば戦略的計画レベルで、計画された軌道の衝突が突き止められると、この車両を協調相手として定義する。最終的には、戦術レベルでの軌道および目標点を交換する。
【0018】
さらなる一形態によれば、少なくとも2台の車両の少なくとも1つの計画レベルで衝突が突き止められると、この少なくとも2台の車両が協調相手として選択される。例えば1台の車両が、戦略的および作戦的な計画または計画レベルを有する車両のデータを受信することができる。これらの計画レベルでは、軌道の衝突は、場所および時間に基づく比較によって確定できる。それらの間での衝突が確定された車両を、その後、協調相手と見なす。これらの協調相手はその後、確立された通信接続を、衝突のない軌道を確定するために利用する。これについては、例えば1台または複数の車両がそれらの軌道を互いに適合させることができ、これにより衝突問題の分散型の解決策を事前に確定および実行できる。
【0019】
さらなる一実施形態によれば、衝突が突き止められると、少なくとも2台の車両間の操作調整を、少なくとも1台の車両の軌道の適合によって実行する。衝突が突き止められると、どの車両が例えば車線変更を実施するのか、および/または先に行くのかを調整する。作戦的計画レベルでは、車両は例えば基本的に自由であることができ、かつ衝突の際にのみ調整を行えばよい。本方法は車線変更のシナリオだけに限定されない。さらなるシナリオは、例えば優先通行権をもつ道路に曲がること、隊列走行、幹線道路での追い越し、同じ通行権をもつ交差点での争いの解決、およびそれに類することであり得る。
【0020】
さらなる一実施形態によれば、少なくとも2台の車両間での通信接続を、操作調整を実施した後に維持している。これにより、協調相手とその後も情報を交換するために接続していられる。したがって事後的な修正も行える。
【0021】
さらなる一実施形態によれば、情報交換は、目標点および目標時点を伴う計画された軌道を有している。したがって車両の区間進路および中間目標についてのすべての重要な情報を、通信接続を介して交換でき、これにより衝突チェックを実施できる。
【0022】
1つの例示的実施形態によれば、戦術的計画レベルでは、どの車両が衝突領域内で先に行くのかを決める。このために、例えば車線変更をいつ(場所的および時間的)行うのか、およびどの車両が先に行くのかを決定できる。戦術的計画レベルではこれに加え、それぞれの国の道路交通規則の規定およびさらなる法規類を考慮できる。
【0023】
さらなる一実施形態によれば、1つの計画レベルで少なくとも1つの衝突が突き止められると、衝突を伴う最も低い計画レベルが協調型の操作調整に用いられ、このとき、より高い計画レベルは自動化モードで動作する。それぞれの利用されない計画レベルは、いわゆるオートパイロットモードに移すことができ、オートパイロットモードでは計画レベルは、例えば車線中央に沿った目標点の計算のような基本課題を実施し、かつ基本課題の結果をその次の階層または計画レベルにさらに渡す。
【0024】
本方法は、例えば以下の機能のための協調型の走行操作調整に適合させた形態でも用いることができる。
- 進入路および錯綜領域で協調的に入るおよび出る
- 先に行っている車両に対する協調的な間隔調節
- 幹線道路での協調的な追い越し
- 幹線道路をわたる協調型予測ルーティング
- 幹線道路から協調的に曲がって出ていく
- アウトバーンでのトラックの協調的なトラック追い越し操作
戦略的計画レベルでも戦術的計画レベルでも作戦的計画レベルでも調整を行うことにより、すべての言及した機能を本方法によって考慮することができる。機能に応じて、事情によっては計画レベルの1つだけに影響を及ぼせばよく、これにより実装の手間、したがってエラー率を低減できる。
【0025】
以下に、非常に簡略化した概略図に基づいて本発明の好ましい例示的実施形態をより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】一実施形態に基づく方法を図解するためのアウトバーン進入路の概略図である。
【
図3】一実施形態に基づく方法を図解するためのアウトバーン進入路の概略図である。
【
図4】一実施形態に基づく方法を図解するためのアウトバーン進入路の概略図である。
【
図5】一実施形態に基づく方法を図解するためのアウトバーン進入路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1では、計画レベル2、4、6の概要を示している。各計画レベル2、4、6で、方法1に関与する車両の制御機器間での情報交換8が行われる。
情報交換8は、通信接続を介して行われることが好ましく、この通信接続はV2X通信接続であり得る。
【0028】
戦略的計画レベル2は、車両の最終的な走行目標への長期的なルート計画に用いられる。戦略的計画レベル2の後に配された戦術的計画レベル4は、例えば目標点設定を生じさせ、かつこの方法のための協調相手を選択できる。戦術的計画レベル4は、ルートの中期的な、例えば次の道路区間までの計画に用いられる。戦術的計画レベル4の後に続く作戦的計画レベル6は、0~10秒の時間範囲の、短期的なまたはすぐの操作計画に用いられる。
【0029】
それぞれの計画レベル2、4、6は、階層状に構成されている。これにより、
図2~
図5に示した通信接続18を介して情報交換8を実施することが可能になる。とりわけ、情報交換8を介して一群の車両内での分散協調型の走行操作を調整できる。それぞれの計画レベル2、4、6は、ハードウェアベースでは、制御機器16の別個のモジュールとして実行することができる。それぞれのモジュールは、インターフェイスを介して相互にデータ伝送するように連結でき、かつ制御機器16の通信ユニットにアクセスできる。その代わりに計画レベル2、4、6をソフトウェアモジュール、とりわけ別々のソフトウェアプログラムの形態で形成することができ、これらのソフトウェアモジュールは、ソフトウェアとハードウェア間のインターフェイスを介して制御機器16の(図示されていない)通信ユニットを利用できる。
【0030】
図2~
図5では、アウトバーン進入路14で協調型の操作計画を実施する2台の車両10、12を概略図で示している。車両10、12はそれぞれ制御機器16を備えており、制御機器16は、情報交換のために車両10、12または図示されていないインフラストラクチャーの間の通信接続18を確立でき、かつ方法1を実行するために形成されている。制御機器16は、計画レベル2、4、6を有しており、かつ相応のステップを実行でき、かつ車両10、12を相応に制御または命令できる。
【0031】
以下では方法1を、アウトバーン14または高速道路への進入シナリオに基づいて説明する。車両10、いわゆる自車が、アウトバーンまたは高速道路の、別の車両12、いわゆる協調車が走行している優先通行権をもつ車線に進入したがっている
図2に示したシナリオを考察する。
【0032】
この例示的実施形態によれば、両方の車両10、12間の操作調整は、自車10の視点からは以下のように実行される。
初期状況では戦略的計画レベル2で、戦略的ルート22の中間点20の形態で、アウトバーン14への車線変更を実現するルート計画が存在している。ルート計画の実装に応じて、中間点20は進入車線上にあることができ、その一方で既に進入後の次の中間点がアウトバーン14上にある。複数車線のアウトバーンでは、この点は必ずしも車線の1つと結びついているのではなく、単にアウトバーンのキロメートルを提示している。戦術的計画レベル4では、アウトバーン14への車線変更のための目標点(場所的および時間的)を計算する。その際、車線中央での正確に車線に合わせた設置を行う。この点20への戦術的軌道24は、車線中央に沿って通っており、最初はほかの道路使用者12を遮っている。作戦的計画レベル6では、戦術的計画レベル4の設定に基づいて、次の0~10秒の軌道26を計算し、この軌道26を車両アクチュエータに転送する。これに関し、戦術的計画レベル4の設定は、車両運動力学に基づいて達成可能な、戦術的軌道24をたどった目標点20(場所的および時間的)および戦術的軌道自体を含むことができる。作戦的計画レベル6は、適切な目標点およびこの目標点への走行可能な軌道24の選択を担っている。
【0033】
戦略的計画レベル2で衝突検出を実施する。これを
図3で図解している。自車10が、戦略的計画レベル2および作戦的計画レベル6のデータを、相応に装備された車両12から受信する。階層2、4、6は、衝突が起こる最も低い計画レベル(作戦-戦術(最初は入手できない)-戦略)を特定する(ここでは戦略的計画レベル2)。これより上位のすべてのレベルはもう考察しなくてよい。
【0034】
戦略的計画レベル2で衝突が起こる車両10、12を、可能な協調相手として選択する。例えば、その前に存在しているここでは図示されていない出口でアウトバーン14を離れるようなほかの車両はもう考察しない。
【0035】
通信接続18を介し、アウトバーン14上の車両12の制御機器16内での戦術的計画を能動化する。このために自車10がその目標点20(場所的および時間的)を有する戦術的軌道24を協調車12に送信する。
【0036】
この場合、戦術的計画レベル4での衝突が確定される。これは
図4から分かる。協調車12内での戦術的計画レベル4の能動化は、協調車12による戦術的軌道24の計算を作動させ、協調車12は戦術的軌道24を自車10に伝える。両方の車両10、12が、それらの戦術的軌道24の衝突を突き止め、かつ協調する。
【0037】
戦術的計画レベル4での調整を行う。このために、車線変更をいつ(場所的および時間的)行えるのか、およびどの車両10、12が先に行くのかを決定する。戦術的計画レベル4ではこれに加え、道路交通規則による規定を考察する。この例示的実施形態によれば、例えばジッパー法が適用される。
【0038】
作戦的計画レベル6での計画は、ここでは衝突がないので、車両10、12によって個別に実施できる。
図5では、作戦的計画レベル6での衝突の回避を示している。戦術的計画レベル4での衝突が解決した後、両方の車両10、12内の計画ユニットまたは制御機器16は、作戦的計画レベル6での衝突を突き止める。これらの衝突が発生し得るのは、例えば、戦術的計画レベル4が、車両10を質点としてモデル化し、かつ戦術的軌道24を車線中央に沿って通しているのに対し、実際に走行する作戦的軌道26は、車両寸法および車線中央からの逸脱を考慮しており、これらの影響による衝突を検出するからである。
【0039】
作戦的計画レベル6での衝突が突き止められたので、この計画レベル6が、衝突を伴う最も低い階層レベルとして調整を引き継ぎ、かつ衝突を例えば作戦的軌道26の適合によってお互いに解決する。
【0040】
戦術的目標点20(場所的および時間的)に達すると、進入操作は、したがってこの操作のための協調も終了と見なされる。ここからは両方の車両10、12の短い間隔に基づいて、作戦的軌道26の衝突があり得るので、計画は作戦的計画レベル6で行い、それゆえこのレベルが衝突を伴う最も低い階層レベルとして調整主権を有している。
【0041】
戦術的計画レベル4はこの場合、いわゆるオートパイロットモードであることができ、このモードでは戦術的計画レベル4は、目標点(場所的および時間的)を、この目標点への戦略的ルート22および(車線中央に沿った)戦術的軌道24をたどって計算し、かつこれらの目標点を、作戦的計画レベル6に計画根拠としてさらに渡す。車両10、12はその後も、例えば障害物が急に現れる場合に協調型のブレーキ操作または回避操作を調整できるように、メッセージを交換する。
【0042】
前述の調整方法は、曲がって入ってくるおよび出ていくシナリオにも適用できる。例えば渋滞状況に基づいてまたは排気ガス放出による負荷の軽減のために、交通の迂回が実施されるべきシナリオでは、協調型の調整を例えば専ら戦略的計画レベル4で行う。両方のほかの計画レベル2、6はオートパイロットモードであることができる。つまり戦術的計画レベル4が、戦略的ルート22に沿った目標点20(場所的および時間的)およびそれに属する(車線中央に沿った)戦術的軌道24を計算して、作戦的軌道の計画のための作戦的計画レベル6にさらに渡し、この作戦的軌道はここでも車両アクチュエータへとさらに送られる。