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  • 特許-高周波用同軸ケーブル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】高周波用同軸ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 11/18 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
H01B11/18 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019182994
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2021061109
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】596001379
【氏名又は名称】デュポン帝人アドバンスドペーパー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 新二
(72)【発明者】
【氏名】藤森 竜士
(72)【発明者】
【氏名】田中 康紀
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-068153(JP,A)
【文献】特開2009-146704(JP,A)
【文献】特開2004-014253(JP,A)
【文献】特開2004-259599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体と、
前記中心導体の外周を被覆する絶縁被覆層と、
前記絶縁被覆層を被覆するシールド層と、
前記シールド層を被覆するジャケット層と、
を備え、
前記シールド層は、
樹脂シート(ただし、複数の貫通孔を有する樹脂シートを除く。)と、
前記樹脂シートにコーティングされた金属層と、
を備え、
前記シールド層は、0.100Ω・cm2以下の厚み方向抵抗値を有する、
厚み方向抵抗値は、抵抗値計測定で得られる実効抵抗値に、電極との接触面積を乗じた値である、
高周波用同軸ケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の同軸ケーブルであって、
前記金属層の坪量が、25g/m2以上である、
同軸ケーブル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の同軸ケーブルであって、
前記シールド層の表面抵抗率が0.01Ω/□以下である、
同軸ケーブル。
【請求項4】
中心導体と、
前記中心導体の外周を被覆する絶縁被覆層と、
前記絶縁被覆層を被覆するシールド層と、
前記シールド層を被覆するジャケット層と、
を備え、
前記シールド層は、
樹脂シート(ただし、複数の貫通孔を有する樹脂シートを除く。)と、
前記樹脂シートにコーティングされた金属層と、
を備え、
前記樹脂シートが、アラミド短繊維及び/又はアラミドファイブリッドを含むアラミド紙であり、
前記金属層が、軸ケーブルの横断面において閉じた形状を形成している、高周波用同軸ケーブル。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の同軸ケーブルであって、
前記樹脂シートが、前記ジャケット層よりも高耐熱性のシートである、
同軸ケーブル。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれかに記載の同軸ケーブル又は請求項1乃至3のいずれかに従属する請求項5に記載の同軸ケーブルであって、
前記樹脂シートが、アラミド短繊維及び/又はアラミドファイブリッドを含むアラミド紙である、
同軸ケーブル。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の同軸ケーブルであって、
前記樹脂シートが、導電性フィラーを含む、
同軸ケーブル。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の同軸ケーブルであって、
前記同軸ケーブルをとめ結びし、ジャケット層の引張強さの1/2の強さで前記同軸ケーブルを引っ張ったときのとめ結びの部分の外径が、前記同軸ケーブルの外径の4倍以下である、同軸ケーブル。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の同軸ケーブルであって、
0.045~18GHzの範囲で周波数(GHz)―伝送減衰(dB)の傾きが、-0.8(dB/GHz)以上である、同軸ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波用同軸ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器(パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、8ミリカメラ、および携帯端末等)、医療機器、センサネットワーク、メッシュネットワーク、および車車間通信機器等には、通信のために同軸ケーブルが使用されることがある。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2015-8072号公報)には、中心導体の外周に絶縁被覆層が積層形成され、その外側にシールド層とジャケット層とを有する同軸ケーブルであって、前記絶縁被覆層が、所定の多孔質絶縁被覆層と、前記多孔質絶縁被覆層の直上に形成されフッ素樹脂からなる中実絶縁被覆層とを有し、前記多孔質絶縁被覆層は、その空隙率が70%超80%以下であり、該空隙が互いに連通していることを特徴とする高周波信号伝送用の同軸ケーブルが開示されている。また、当該文献には、シールド層として、編組導体が好ましく用いられることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-8072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した機器間の通信には、高速化を達成すべく、高周波信号による通信が求められている。本発明者らの知見によれば、特許文献1に記載されるように、シールド層として編組導体を用いた場合には、高周波数の信号を伝送する際に伝送損失が大きくなりやすい。
また、通信機器には、小型・薄型化も要求されている。これに伴い、同軸ケーブルにも、細径化が求められている。しかし、同軸ケーブルの細径化は、伝送路の伝播損失や帯域劣化、伝送路間クロストークや外来雑音による伝送品質劣化等を招く。従って、同軸ケーブルを細径化した場合には、高周波数の信号を伝送する際の伝送損失に関する問題が、より顕著になる。そのため、細径であり、かつ、高周波信号を伝送する際の伝送損失を抑えることができる、同軸ケーブルの実現が望まれている。
すなわち、本発明の課題は、細径かつ高周波数信号を伝送する際の伝送損失を抑えることができる、同軸ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、シールド層として所定の構成の材料を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の手段により実現される。
[1]線状の中心導体と、前記中心導体を被覆する絶縁被覆層と、前記絶縁被覆層を被覆するシールド層と、前記シールド層を被覆するジャケット層とを備え、前記シールド層は、樹脂シートと、前記樹脂シートにコーティングされた金属層とを備え、前記シールド層は、0.100Ω・cm2以下の厚み方向抵抗値を有する、高周波用同軸ケーブル。
[2]上記[1]に記載の同軸ケーブルであって、前記金属層の坪量が、25g/m2以上である、同軸ケーブル。
[3]上記[1]又は[2]のいずれかに記載の同軸ケーブルであって、前記シールド層の表面抵抗率が0.01Ω/□以下である、同軸ケーブル。
[4]中心導体と、前記中心導体の外周を被覆する絶縁被覆層と、前記絶縁被覆層を被覆するシールド層と、前記シールド層を被覆するジャケット層とを備え、前記シールド層は、樹脂シートと、前記樹脂シートにコーティングされた金属層とを備え、前記金属層が、前記同軸ケーブルの横断面において閉じた形状を形成している、高周波用同軸ケーブル。
[5]上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の同軸ケーブルであって、前記樹脂シートが、前記ジャケット層よりも高耐熱性のシートである、同軸ケーブル。
[6]上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の同軸ケーブルであって、前記樹脂シートが、アラミド短繊維及び/又はアラミドファイブリッドを含むアラミド紙である、同軸ケーブル。
[7]上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の同軸ケーブルであって、前記樹脂シートが、導電性フィラーを含む、同軸ケーブル。
[8]上記[1]乃至[7]のいずれかに記載の同軸ケーブルであって、前記同軸ケーブルをとめ結びし、ジャケット層の引張強さの1/2の強さで前記同軸ケーブルを引っ張ったときのとめ結びの部分の外径が、前記同軸ケーブルの外径の4倍以下である、同軸ケーブル。
[9]上記[1]乃至[8]のいずれかに記載の同軸ケーブルであって、0.045~18GHzの範囲で周波数(GHz)―伝送減衰(dB)の傾きが、-0.8(dB/GHz)以上である、同軸ケーブル。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、伝送する信号の周波数が高い場合であっても、伝送損失を抑えることができる同軸ケーブルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る同軸ケーブルを模式的に示す横断面図である。
図2図2は、第1の実施形態のシールド層を模式的に示す横断面図である。
図3図3は、とめ結びされた同軸ケーブルを模式的に示す概略図である。
図4A図4Aは、第2の実施形態の一例に係るシールド層を模式的に示す横断面図である。
図4B図4Bは、第2の実施形態の他の一例に係るシールド層を模式的に示す横断面図である。
図5図5は、実施例及び比較例の伝送減衰特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
[第1の実施形態]
(同軸ケーブル)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る高周波用同軸ケーブル10を模式的に示す横断面図である。本実施形態に係る同軸ケーブル10は、図1に示すように、中心導体1と、絶縁被覆層2と、シールド層3と、ジャケット層4とを有している。中心導体1は、線状である。絶縁被覆層2は、中心導体1の全周を被覆している。シールド層3は、絶縁被覆層2の全周を被覆している。ジャケット層4は、シールド層3の全周を被覆している。
中心導体1と絶縁被覆層2との接着力、絶縁被覆層2とシールド層3との接着力、シールド層3とジャケット層4との接着力を強化するために、各部材間に接着層が設けられていてもよい。
【0011】
シールド層3は、0.100Ω・cm2以下の厚み方向抵抗値を有している。好ましくは、シールド層3の厚み方向抵抗値は、0.025Ω・cm2以下である。
図2は、シールド層3の構成の一例を示す模式図である。尚、図2において、シールド層3以外の構成要素の図示は省略されている。シールド層3は、金属層3-1と、樹脂シート3-2とを有している。樹脂シート3-2は、幅が絶縁被覆層2の外周長よりも長い細長い形状を有している。金属層3-1は、樹脂シート3-2上にコーティングされた層である。金属層3-1は、樹脂シート3-1の両面にコーティングされている。樹脂シート3-2の側端面(一端a、他端b)には、金属層3-1は設けられていない。シールド層3は、幅方向における一端部と他端部とがケーブル10の径方向において重なって、絶縁被覆層2の外周を覆うように、すなわち、縦添えで絶縁被覆層2に巻かれている。
【0012】
上記のような構成によれば、シールド層3が、0.100Ω・cm2以下の厚み方向抵抗値を有しているので、電磁波がシールド層3の内側から外側に漏れることが防止され、伝送損失が抑制される。すなわち、高い周波数の信号を伝送する場合であっても、伝送損失が大きくなりにくい。
例えば、本実施態様によれば、0.045~18GHzの範囲で周波数(GHz)―伝送減衰(dB)の傾きが、-0.8(dB/GHz)以上である、同軸ケーブル10を得ることができる。
【0013】
また、金属層3-1によりコーティングされた樹脂シート3-2は、加工性に優れている。例えば、金属シート単体によって形成されたシールド層3は、小径の同軸ケーブル10に用いられると、金属シートが割れてしまい、適切にシールド層3を形成できない場合がある。これに対して、本実施形態によれば、小径の同軸ケーブル10に用いられる場合であっても、適切にシールド層3を形成することができる。
更に、本実施形態によれば、シールド層3として、金属層3-1がコーティングされた樹脂シート3-2を用いることにより、柔軟で軽量な同軸ケーブル10を得ることができる。柔軟で軽量な同軸ケーブル10は、様々な用途に有用である。
例えば、本実施態様によれば、図3に示されるように、同軸ケーブル10をとめ結びし、ジャケット層4の引張強さの1/2の強さで同軸ケーブル10を引っ張ったときのとめ結びの部分の外径が、同軸ケーブル10の外径の4倍以下である、同軸ケーブル10を得ることができる。
【0014】
尚、シールド層3は、樹脂シート3-2及び金属層3-1を有し、0.100Ω・cm2以下の厚み方向抵抗値を有していればよく、必ずしも、図2に示したような形状で巻かれている必要はない。また、必ずしも縦添えで巻かれている必要はなく、例えば、表面に金属層3-1をコーティングした帯状の樹脂シート3-2が、隙間なく螺旋状に絶縁被覆層2に巻かれていてもよい。
また、図2に示される例では、樹脂シート3-2の側端面(一端a、他端b)には、金属層3-1は設けられていないが、端面に金属層3-1が設けられていてもよい。
更に、金属層3-1は、必ずしも樹脂シート3-1の両面に形成されている必要はなく、内面及び外面の少なくとも一方にコーティングされていればよい。好ましくは、金属層3-1は、樹脂シート3-1の少なくとも内面に形成される。
【0015】
以下に、同軸ケーブル10の各構成要素について、詳述する。
【0016】
(中心導体)
中心導体1は、円形導体(横断面が円形の導体)であることが好ましい。中心導体1は、繰り返し曲げ・捻りに対する耐久性(屈曲耐性)の観点から、複数の導体素線を撚り合わせた撚線導体からなることが好ましい。導体素線の直径は、信号ロス低減の観点から0.05mm以上が好ましく、屈曲耐性向上の観点から0.20mm以下が好ましい。また、撚線導体の撚りピッチは、導体素線の直径の20倍以上50倍以下が好ましい。撚りピッチが素線径の20倍以上であれば、素線長が長くなり過ぎて電気抵抗が増加することもなく、伝送減衰特性が低下することもない。一方、撚りピッチが素線径の50倍以下であれば、撚りが緩過ぎて繰り返し屈曲で撚り形状が崩れ易くなることもない。
撚線導体の素線本数(撚り本数)は、円形導体に近づける観点から7本撚りまたは19本撚りが好ましい。同軸ケーブル10の細径化要求に対応する観点からは、7本撚りがより好ましい。
中心導体1を構成する材料としては、導電性材料であれば特に限定されないが、銅、およびTA(Tin coated Annealed copper wires)等を用いることができる。
【0017】
(絶縁被覆層)
絶縁被覆層2は、中心導体1を被覆するように、中心導体1の外周面全体に形成される。絶縁被覆層2の材料は、絶縁性であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどのポリエチレン系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、およびテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系樹脂;およびこれらの発泡体等を用いることができる。低静電容量ケーブルを実現するため、比誘電率が低いフッ素樹脂を用いることが好ましい。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、およびテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)が好適である。
絶縁被覆層2は、中心導体1を固定しやすいことから、チューブ押し出し成形により形成されることが好ましい。
【0018】
(ジャケット層)
ジャケット層4の材料には特段の限定はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどのポリエチレン系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、およびテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系樹脂;およびこれらの発泡体等を用いることができる。耐摩耗性、低摩擦性、耐低温性、耐熱性などの観点から、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン(FEP)などのフッ素樹脂が好適である。
【0019】
(シールド層)
シールド層3は、既述のように、絶縁被覆層2とジャケット層4との間に設けられている。シールド層3は、金属層3-1がコーティングされた樹脂シート3-2により構成される。既述のように、金属層3-1は、樹脂シート3-2の両面にコーティングされていることが好ましい。ただし、金属層3-1は、樹脂シート3-2の内面にコーティングされていてもよい。また、金属層3-1は、樹脂シート3-2の内面及び外面の両方に加えて、樹脂シート3-2の端面にコーティングされていてもよい。
【0020】
樹脂シート3-2としては、高耐熱のシートを用いることが好ましい。「高耐熱のシート」とは、ジャケット層4を構成する材料よりも高い融点を有する材料によって構成されたシート、あるいは実質的に安定融点を示さない樹脂より構成されるシートである。このような樹脂シート3-2に、金、銀、銅、亜鉛、ニッケル、錫など、またはそれらの合金をコーティングし、金属層3-1を形成することが好ましい。これにより、導電性に優れるシールド層3を形成することが可能となる。
同軸ケーブル10の製造時には、絶縁被覆層2を覆うようにシールド層3を配置する。次いで、シールド層3を覆うように、ジャケット層4を構成する樹脂を溶融状態で配置する。さらに、ジャケット層4を構成する樹脂を固化させる。このようにした製造された同軸ケーブル10においては、絶縁被覆層2、シールド層3、およびジャケット層4の間の密着性が高くなる。密着性が高いと、伝送損失を抑制でき、高速伝送が可能となる。
【0021】
シールド層3は、0.01Ω/□以下の表面抵抗率を有していることが好ましい。
【0022】
シールド層3は、好適には、導電性アラミド紙により構成されていることが好ましい。以下、導電性アラミド紙について詳述する。
【0023】
(導電性アラミド紙)
導電性アラミド紙は、アラミド紙を樹脂シート3-2として使用し、このアラミド紙上に金属をコーティングして金属層3-1を形成したものである。
導電性アラミド紙は、(1)導電性を有していること、(2)ジャケット層4を構成する樹脂以上の耐熱性を備えていること、(3)形状安定性が高いこと、および(4)良好な加工性を有していることなどから、本実施形態の同軸ケーブル用の樹脂シート3-2として好適である。
【0024】
導電性アラミド紙を一方向に伸びる矩形状になるようにスリットし、絶縁被覆層2の外周に螺旋巻、あるいは縦添えで配置することにより、シールド層3を形成できる。生産性の観点からは、縦添えでシールド層3を形成することが好ましい。縦添えでシールド層3を形成した後、溶融させたジャケット層4用の材料を用いて、チューブ押し出し成形により、シールド層3を固定する。これにより、シールド層3の隙間が防がれる。また、このような方法で成形された同軸ケーブル10では、絶縁被覆層2とシールド層3との間の密着性、および、シールド層3とジャケット層4との間の密着性も向上する。既述のように、密着性を向上させることにより、特に高周波での伝送減衰特性が向上する。
さらに伝送減衰特性を向上させるために、ケーブルの柔軟性を阻害しない範囲でジャケット層4の内側にドレン線を配置することも可能である。ドレン線の材質は銅、TAが好ましいがこれらに限定されるものではない。
尚、螺旋巻きの場合、隣り合う2ターン間で導電性アラミド紙の幅の30%以上55%未満の一定の割合でオーバーラップするように導電性アラミド紙を巻回することが好ましく、45%以上50%未満をオーバーラップさせることがより好ましい。オーバーラップが導電性アラミド紙の幅の30%以上であれば、導電性アラミド紙の長手方向における1枚の部分と2枚の部分の差が小さくて済む。オーバーラップが55%未満であれば、導電性アラミド紙が長手方向で3枚以上重なる部分が生じることもなく、外径変動または空隙率変動が抑制され、同軸ケーブル10全体の特性インピーダンスのばらつきも抑えられる。
安定した特性インピーダンスを得るためには、縦添えによりシールド層3を配置することが好ましい。
【0025】
アラミド紙としては、アラミド短繊維及び/又はアラミドファイブリッドを有するものが好適に用いられる。より好適には、アラミド紙は、アラミド短繊維、アラミドファイブリッド、及び導電性フィラーを含む。
【0026】
アラミド紙(金属層3-1のコーティング前の材料)の全重量中に占めるアラミド短繊維の含量は、好ましくは5~60重量%、より好ましくは10~55重量%、さらに好ましくは20~50重量%であるが、これに限定されるものではない。アラミド短繊維の含量が5重量%以上であれば、導電性アラミド紙の機械的強度が維持される。アラミド短繊維の含量が60重量%以下であれば、アラミドファイブリッドの含量が確保され、やはり機械的強度が維持される。
【0027】
アラミド紙の全重量に占めるアラミドファイブリッドの含量は、好ましくは30~80重量%、より好ましくは35~70重量%、さらに好ましくは40~65重量%であるが、これに限定されるものではない。一般に、アラミドファイブリッドの含量が30重量%以上であれば、導電性アラミド紙の機械的強度が維持され、80重量%以下であれば、湿式法での製造(後述)において濾水性が低下することもなく、導電性アラミド紙の均一性不良などを防ぐことができる。
アラミド紙の全重量中に占める導電性フィラーの含量は、好ましくは1~30重量%、より好ましくは3~30重量%である。このような範囲であれば、導電性アラミド紙の導電性が十分に確保される。
【0028】
導電性アラミド紙の厚み方向抵抗値を小さくするために、金属層3-1のコーティング態様が工夫されていてもよい。
例えば、金属コーティングを実施する際に、導電性アラミド紙の端面もコーティングすると、厚み方向抵抗値を小さくすることができる。具体的には、アラミド紙をケーブルに装着する際の幅に切断した後、金属コーティングを行う。これにより、アラミド紙の端面にも金属をコーティングすることができる。その結果、厚み方向抵抗値を小さくすることができる。
あるいは、コーティング時に、金属がアラミド紙の一表面から他の表面まで連続的に含浸するように、厚みが小さい(例えば、50μm以下、好ましくは40μm以下)アラミド紙を用いる。このような手法によっても、厚み方向抵抗値を小さくすることができる。
シールド層3における厚み方向抵抗値を小さくすることにより、電磁波がシールド層3の高抵抗部分から漏れ、特に高周波での伝送減衰特性が低下することを防ぐことができる。
【0029】
金属層3-1に用いられる金属材料としては、例えば、金、銀、銅、亜鉛、ニッケル、錫など、及びそれらの合金等が挙げられる。導電性及び製造コストを考慮すると銅が好ましい。ただし、電磁波シールド性や耐久性を考慮して選択すればよく、特に限定されない。
導電性アラミド紙に形成される金属層3-1の含量(坪量)は、平均値で25g/m2以上であることが好ましい。金属層3-1の量がこの範囲であれば、十分な導電性を得ることができる。金属層3-1の坪量は、より好ましくは、25~100g/m2である。
【0030】
導電性アラミド紙において、金属層3-1が適切に形成されているか否かについては、表面低効率及び厚み方向抵抗値を測定することにより、確認できる。例えば、抵抗値計を用いて測定される表面抵抗率が0.01Ω/□以下であり、厚み方向抵抗値が0.100Ω・cm2以下であれば、金属層3-1が適切に形成されているといえる。
厚み方向抵抗値は、具体的には、抵抗値計測定で得られる実効抵抗値に、電極との接触面積を乗じた値を厚み方向の抵抗値として求めることができる。
【0031】
導電性アラミド紙の厚みについては特に制限はないが、10μm~100μmの範囲内の厚さを有していることが好ましく、より好ましくは20~80μmである。10μm以上であれば、機械的特性が低下し、製造工程での搬送等の取り扱い性に問題が生じることもない。他方、100μm以下であれば、ケーブルに装着する際に、絶縁被覆層2とシールド層3、および/または、シールド層3とジャケット層4の間に隙間が発生することもなく、高周波での伝送減衰特性が低下し難くなる。
導電性アラミド紙の坪量は、35~110g/m2であるのが好ましい。
【0032】
(アラミド)
本発明において、「アラミド」とは、アミド結合の60%以上が芳香環に直接結合した線状高分子化合物を意味する。このようなアラミドとしては、例えば、ポリメタフェニレンイソフタルアミドおよびその共重合体、ポリパラフェニレンテレフタルアミドおよびその共重合体、コポリパラフェニレン・3,4’-ジフェニルエーテルテレフタルアミドなどが挙げられる。これらのアラミドは、例えば、芳香族酸二塩化物および芳香族ジアミンとの縮合反応による溶液重合法、二段階界面重合法等により工業的に製造されており、市販品として入手することができるが、これに限定されるものではない。これらのアラミドの中では、実質的に安定した融点を示さないポリメタフェニレンイソフタルアミドが良好な成型加工性、難燃性、耐熱性などの特性を備えている点で好ましく用いられる。
【0033】
(アラミド短繊維)
「アラミド短繊維」としては、アラミドを原料とする繊維を所定の長さに切断したものが挙げられ、そのような繊維としては、例えば、帝人(株)の「テイジンコーネックス(登録商標)」、「テクノーラ(登録商標)」、デュポン社の「ノーメックス(登録商標)」、「ケブラー(登録商標)」、テイジンアラミド社の「トワロン(登録商標)」等の商品名で入手することができるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アラミド短繊維は、好ましくは、0.05dtex以上25dtex未満の範囲内の繊度を有することができる。繊度が0.05dtex以上の繊維であれば、湿式法での製造(後述)において凝集しやすくなることもない。また、繊度が25dtex未満の繊維であれば、繊維直径が大きくなり過ぎることもなく、例えば、真円形状で密度を1.4g/cm3としたとしても、直径45μm以上である場合に、アスペクト比の低下、力学的補強効果の低減、アラミド紙の均一性不良などの不都合が生じることもない。導電性アラミド紙の均一性不良が生じた場合、導電性アラミド紙の導電性にバラツキが生じ、それにより求められる電磁波シールド機能が十分に発現できない可能性があるため好ましくない。
アラミド短繊維の長さは、1mm以上25mm未満であることが好ましい。短繊維の長さが1mm以上であれば、導電性アラミド紙の力学特性が低下することもなく、他方、25mm未満であれば、後述する湿式法での導電性アラミド紙の製造に際して「からみ」「結束」などが発生しやすく欠陥の原因となることもない。
【0034】
(アラミドファイブリッド)
「アラミドファイブリッド」とは、アラミドからなるフィルム状微小粒子で、アラミドパルプとも称される。アラミドファイブリッドは、例えば特公昭35-11851号や特公昭37-5732号公報等に記載の方法により、製造することができる。アラミドファイブリッドは、通常の木材(セルロース)パルプと同じように抄紙性を有するため、水中分散した後、抄紙機にてシート状に成形することができる。この場合、抄紙に適した品質を保つ目的でいわゆる叩解処理を施すことができる。この叩解処理は、ディスクリファイナー、ビーター、その他の機械的切断作用を及ぼす抄紙原料処理機器によって実施することができる。この操作において、ファイブリッドの形態変化は、JIS P8121に規定の濾水度(フリーネス)でモニターすることができる。本発明において、叩解処理を施した後のアラミドファイブリッドの濾水度は、10~300cm3(カナディアンスタンダードフリーネス)の範囲内にあることが好ましい。この範囲であれば、それから成形されるシートの強度が低下することもない。10cm3以上の濾水度を得るのであれば、投入する機械動力の利用効率が小さくなることもなく、また、単位時間当たりの処理量が少なくなることもなく、さらに、ファイブリッドの微細化が進行しすぎ、いわゆるバインダー機能の低下を招くこともない。
【0035】
(導電性フィラー)
「導電性フィラー」としては、約10-1Ω・cm以下の体積抵抗を持つ導体から、約10-1~108Ω・cmの体積抵抗を持つ半導体まで、広範囲にわたる導電性を有する繊維状または微粒子(粉末またはフレーク)状物があげられる。このような導電性フィラーとしては、例えば金属繊維、炭素繊維、カーボンブラックなどの均質な導電性を有する材料、あるいは金属めっき繊維、金属粉末混合繊維、カーボンブラック混合繊維など、導電材料と非導電材料とが混合されて全体として導電性を示す材料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。この中で、本実施形態では、導電性フィラーとして、炭素繊維を使用することが好ましい。炭素繊維としては、繊維状有機物を不活性雰囲気にて高温焼成して炭化したものが好ましい。一般に炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維を焼成したものと、ピッチを紡糸した後に焼成したものに大別されるが、これ以外にもレーヨンやフェノールなどの樹脂を紡糸後、焼成して製造するものもあり、いずれも使用することができる。焼成に先立ち酸素等を使用して酸化架橋処理を行い、焼成時の融断を防止することも可能である。本発明で用いる炭素繊維の繊度は、0.5~10dtexの範囲が好ましい。また、繊維長は1mm~20mmであることが好ましい。
導電性フィラーの選択においては、導電性が高く、かつ、後述の湿式抄造法において良好な分散を示す材料を使用することがより好ましい。また、炭素繊維を選択する場合には、更に高強度、かつ脆化しにくいものを選択することが好ましい。そのような材料を選択することにより、本実施形態の特徴である、シールド層3に適した導電性、及び熱圧加工により特定の範囲に緻密化された導電性アラミド紙を得ることが可能となる。
【0036】
(導電性アラミド紙の製造方法)
導電性アラミド紙は、例えば、アラミド短繊維、アラミドファイブリッド及び導電性フィラーを混合した後、シート化し、一対の金属製ロール間にて熱圧加工し、その後、金属をコーティングすることにより、製造することができる。
具体的には、例えば、(i)アラミド短繊維、アラミドファイブリッド及び導電性フィラーを乾式でブレンドした後に、気流を利用してシートを形成し、一対の金属製ロール間にて熱圧加工した後で金属層3-1を形成する方法、(ii)アラミド短繊維、アラミドファイブリッド及び導電性フィラーを液体媒体中で分散混合した後、液体透過性の支持体、例えば網またはベルト上に吐出してシート化し、液体を除いて乾燥し、一対の金属製ロール間にて熱圧加工した後で金属層3-1を形成する方法などを適用することができる。これらの中でも水を媒体として使用する、いわゆる湿式抄造法でシート化し、一対の金属製ロール間にて熱圧加工した後で金属をコーティングする方法が好ましく選択される。
湿式抄造法では、少なくともアラミド短繊維、アラミドファイブリッド、及び導電性フィラーの単一または混合物の水性スラリーを抄紙機に送液し分散した後、脱水、搾水および乾燥操作を行うことによって、シートとして巻き取る方法が一般的である。抄紙機としては、例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、傾斜型抄紙機及びこれらを組み合わせたコンビネーション抄紙機などを利用することができる。コンビネーション抄紙機での製造の場合、配合比率の異なる水性スラリーをシート成形し合一することにより、複数の紙層からなる複合シートを得ることも可能である。湿式抄造の際に必要に応じて分散性向上剤、消泡剤、紙力増強剤などの添加剤を使用してもよい。導電性フィラーが粒子状物である場合には、アクリル系樹脂、定着剤、高分子凝集剤などを添加してもかまわない。導電性アラミド紙には、必要に応じて、その他の繊維状成分、例えば、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、セルロース系繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維などの有機繊維、ガラス繊維、ロックウール、ボロン繊維などの無機繊維を添加することもできる。尚、上記添加剤や他の繊維状成分を用いる場合には、導電性アラミド紙の金属層形成前の全重量の20重量%以下とするのが好ましい。
【0037】
このようにして得られるシートは、例えば、一対の平板間または金属製ロール間にて高温高圧で熱圧加工することにより、機械的強度を向上させることができる。熱圧加工の条件は、例えば、金属製ロールを使用する場合、温度100~400℃、線圧50~1000kg/cmの範囲内である。導電性アラミド紙の特徴である高いシールド特性を得るために、ロール温度は330℃以上とすることが好ましく、より好ましくは330℃~380℃である。又、線圧は50~500kg/cmであるのが好ましい。該温度はメタ型アラミドのガラス転移温度より高く、またメタ型アラミドの結晶化温度に近いことから、該温度で熱圧加工することにより機械的強度が向上する。また、導電性アラミド紙を構成する材料同士を強固に密着させることができ、厚み方向の抵抗を低減できる。上記の熱圧加工は複数回行ってもよい。また用途によっては、過度な省スペース化を必要とせず、100μmを超える厚みが必要になる場合もあり、その場合には、上述の方法により得たシート状物を複数枚重ね合わせて熱圧加工を行ってもよい。
このようにして得られたシートに、金属をコーティングする方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、無電解めっき法、電界めっき法等が挙げられる。形成される金属層の均一性、生産性の観点から、無電解めっき法の後に電界めっき法を実施し、金属量3-1を増加させることが特に好ましい。
【0038】
[第2の実施形態]
続いて、第2の実施形態に係る高周波用同軸ケーブル10について説明する。第1の実施形態においては、シールド層3が、0.100Ω・cm2以下の厚み方向抵抗値を有している例について説明した。これに対して、本実施形態では、必ずしも、シールド層3が0.100Ω・cm2以下の厚み方向抵抗値を有している必要はない。代わりに、本実施形態では、シールド層3の構造が工夫されている。その他の点については、第1の実施形態と同様の構成を採用することができる。
【0039】
詳細には、本実施形態では、金属層3-1が、同軸ケーブル10の横断面において閉じた形状を形成している。図4Aは、本実施形態の一例に係るシールド層3を模式的に示す断面図である。図4Aに示されるように、本実施形態においては、樹脂シート3-2の両面に金属層3-1がコーティングされている。加えて、樹脂シート3-2の端面にも、金属層3-1がコーティングされている。シールド層3は、縦添えで絶縁被覆層2を巻くように配置されている。シールド層3は、周方向において一端部分と他端部分とが重なるように巻かれている。
図4Aに示される構成によれば、樹脂シート3-2の端面にも金属層3-1が設けられているため、同軸ケーブル10の横断面において、金属層3-1によって閉じた形状(すなわち、シールド層3の内側が1枚の金属層3-1によって完全に覆われている形状)が形成されている。従って、シールド層3の内側から外側に向けて電磁波が漏洩する経路が形成されない。そのため、シールド層3が0.100Ω・cm2以下の厚み方向抵抗値を有していなくても、伝送損失の増大を抑えることができる。
なお、仮に、図2に示したように、樹脂シート3-2の端面に金属層3-1が設けられていない場合、シールド層3が0.100Ω・cm2以下の厚み方向抵抗値を有していないと、電磁波が、シールド層3の内側から、一端a、樹脂シート3-2、および他端bを介して外側に漏洩する可能性がある。すなわち、金属層3-1が、同軸ケーブル10の横断面において閉じた形状を形成しない場合には、伝送損失を抑えるため、第1の実施形態で述べたように、シールド層3が0.100Ω・cm2以下の厚み方向抵抗値を有している必要がある。
【0040】
図4Bは、本実施形態の他の一例に係るシールド層3を模式的に示す断面図である。この例に示されるシールド層3においては、樹脂シート3-2の内面にのみ、金属層3-1がコーティングされている。この例においても、シールド層3は、縦添えで形成されている。ただし、シールド層3は、周方向における一端部分と他端部分とが内面同士で向かい合うように、すなわち、金属層3-1同士が接触するように、絶縁被覆層2上に巻かれており、従って閉じた形状が形成されている。
このような構成を採用した場合であっても、図4Aに示した例と同様に、同軸ケーブル10の横断面において、金属層3-1によって閉じた形状が形成されるから、シールド層3が0.100Ω・cm2以下の厚み方向抵抗値を有していなくても、伝送損失を抑えることができる。
尚、この図4Bに記載される例の場合には、第1の実施形態に比べて、金属層3-1の坪量が少なくてもよい。例えば、金属層3-1の坪量は、10g/m2以上であればよい。
また、図4Bに記載される例においては、第1の実施形態に比べて、金属層3-1側で測定した表面抵抗率の上限が低くてもよい。例えば、表面抵抗率は、0.02Ω/□以下であればよい。
【実施例
【0041】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。なお、これらの実施例は、単なる例示であり、本発明の内容を何ら限定するためのものではない。
【0042】
(測定方法)
(1)シートの目付、厚み、密度
JIS C 2300-2に準じて実施し、密度は(目付/厚み)により算出した。
(2)表面抵抗率
JIS JIS K 7194に準じて実施し、ロレスターGP MCP-T610 ESPタイプ(三菱化学製)を用いて測定した。
(3)厚み方向抵抗値
一対の電極でシートを挟み、シートにかかる面圧(電極の重量も含む)が250g/cm2の状態で、ミリオームハイテスタ(日置電気製)を用いて測定した抵抗値に、電極の面積を乗じた。
(4)伝送減衰特性
試料長1mの同軸ケーブルを用意し、ネットワークアナライザー(MS2028B アンリツ)を用いて、0.045GHz~18GHzの高周波帯域において減衰特性を測定した。
(5)柔軟性
試料長1mの同軸ケーブルをとめ結びし、ジャケット層4の引張強さの1/2の強さで同軸ケーブルを引っ張ったときのとめ結びの部分の図3に示す外径を測定した。ポリ塩化ビニルの引張強さが60MPaであったので、ジャケット層4の断面積を計算し、30MPaを乗じた強さで引っ張り試験機で引っ張った。
【0043】
(原料調製)
特開昭52-15621号公報に記載の、ステーターとローターの組み合わせで構成されるパルプ粒子の製造装置(湿式沈殿機)を用いて、ポリメタフェニレンイソフタルアミドのファイブリッドを製造した。これを叩解機で処理し長さ加重平均繊維長を0.9mmに調節した(濾水度200cm3)。一方、デュポン社製メタアラミド繊維(ノーメックス(登録商標)、単糸繊度2.2dtex)を長さ6mmに切断(以下「アラミド短繊維」と記載)し、抄紙用原料とした。
【0044】
(実施例)
上記のとおり調製したメタアラミドファイブリッド、メタアラミド短繊維、及び炭素繊維(東邦テナックス株式会社製、繊維長3mm、単繊維径7μm、繊度0.67dtex、体積抵抗率1.6×10-3Ω・cm)を、それぞれ水中に分散して、スラリーを作製した。このスラリーを、メタアラミドファイブリッド、メタアラミド短繊維、及び炭素繊維が、表1に示す配合比率となるように混合し、円網式抄紙機(幅30cm)で処理してシート状物を作製した。次いで、得られたシートを1対の金属製カレンダーロールにより温度330℃、線圧150kg/cmで熱圧加工した。得られたシートを8mm幅にスリットした。スリットされたシートに、無電解めっき法と電界めっき法により金属(銅)層をコーティングし、導電性アラミド紙を得た。得られた導電性アラミド紙には、両面及び端面に、金属層が設けられていた。得られた導電性アラミド紙の主要特性値を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
(同軸ケーブルの作製)
中心導体として直径0.18mmの銅線を7本撚りにし、外径0.53mmとした。その直上に、チューブ押し出し成形により、厚さ0.52mmのポリエチレンの絶縁被覆層を形成し、外径1.59mmとした。その直上に、表1の導電性アラミド紙をシールド層として、たて添えに配置し、外径1.93mmとした。その直上に、チューブ押し出し成形により、厚さ0.4mmのポリ塩化ビニルのジャケット層4を形成し、外径2.62mmの同軸ケーブルを実施例として作製した。実施例に係る同軸ケーブルの伝送減衰特性を図5に示す。
0.045~18GHzの範囲で周波数(GHz)―伝送減衰(dB)の傾きは-0.71(dB/GHz)であった。
また、柔軟性を測定した結果、外径8mmであった。ケーブルの長さあたりの重量としは、7.0g/mであった。
【0047】
(比較例)
実施例において、シールド層を直径0.1mmの銅線の5本持ち16本打ちの編組(密度93.1%)に変更し、外径を2.04mmとした。その直上に、チューブ押し出し成形により、厚さ0.4mmのポリ塩化ビニルのジャケット層4を形成し、外径2.95mmの同軸ケーブルを比較例に係る同軸ケーブルとして作製した。比較例に係る同軸ケーブルの伝送減衰特性を図5に示す。
0.045~18GHzの範囲で周波数(GHz)―伝送減衰(dB)の傾きは-2.5(dB/GHz)であった。
また、柔軟性を測定した結果、外径13mmであった。ケーブルの長さあたりの重量としては11.6g/mであった。
【0048】
図5に示されるように、実施例に係る同軸ケーブルは、特に高周波伝送減衰特性について優れた特性を示した。
一方、比較例に係る同軸ケーブルでは、図5に示すように、10GHzを超える周波数で急激に伝送損失が増加し、高周波向けの同軸ケーブルとしては不十分であることが示唆された。比較例では、シールド層として編組を用いており、シールド層を構成する金属繊維の間に隙間が存在する。この隙間により、高周波特性が劣ることになるものと考えられる。
また、実施例に係る同軸ケーブルは、比較例よりも柔軟であり、軽量であった。このことから、本発明に係る同軸ケーブルは、高周波の電気電子機器、例えばハイブリッドカー、電気自動車中の電子機器などの同軸ケーブルとして有用であることが分かった。
【符号の説明】
【0049】
1:中心導体
2:絶縁被覆層
3:シールド層
3-1:金属層
3-2:樹脂シート
4:ジャケット層
10:高周波用同軸ケーブル
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5