(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】感温性樹脂粘土
(51)【国際特許分類】
C08F 220/10 20060101AFI20231226BHJP
A63H 33/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C08F220/10
A63H33/00 F
(21)【出願番号】P 2019183554
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 卓
(72)【発明者】
【氏名】山下 幸志
(72)【発明者】
【氏名】山口 聡士
(72)【発明者】
【氏名】惠 隆史
(72)【発明者】
【氏名】丸谷 浩祐
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-235329(JP,A)
【文献】特開2005-320484(JP,A)
【文献】特開2005-270162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/10
A63H 33/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点未満の温度で結晶化し、且つ、前記融点以上の温度で流動性を示す側鎖結晶性ポリマーを含有する
感温性樹脂粘土であって、
前記側鎖結晶性ポリマーが、炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートをモノマー成分として含み、
前記モノマー成分には、反応性ポリシロキサン化合物がさらに含まれている、感温性樹脂粘土。
【請求項2】
前記融点以上の温度で柔らかくなり、前記融点未満の温度で固まる、請求項1に記載の感温性樹脂粘土。
【請求項3】
前記融点が、40℃未満である、請求項1または2に記載の感温性樹脂粘土。
【請求項4】
合成樹脂をさらに含有する、請求項1~
3のいずれかに記載の感温性樹脂粘土。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれかに記載の感温性樹脂粘土からなる、型取り材。
【請求項6】
請求項
5に記載の型取り材を前記融点以上の温度に加温する工程と、
前記型取り材で原型を型取りする工程と、
前記型取り材を前記融点未満の温度に冷却し、前記型取り材から前記原型を取り外す工程と、を備える、型取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感温性樹脂粘土に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱すると柔らかくなり、冷却すると固まる樹脂粘土が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
従来の樹脂粘土を柔らかくするためには、高温に加熱する必要があった。そのため、従来の樹脂粘土は作業時に熱く、作業しにくいという問題があった。また、従来の樹脂粘土は冷めるとすぐに固まるため、加工(作業)可能な時間が短く、急いで作業する必要があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】“イロプラ”、[online]、(株)シード、[令和1年9月18日検索]、インターネット<URL:http://www.seedr.co.jp/other/other2.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、安全な温度で作業が可能であり、且つ、加工可能時間が長い感温性樹脂粘土を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)融点未満の温度で結晶化し、且つ、前記融点以上の温度で流動性を示す側鎖結晶性ポリマーを含有する、感温性樹脂粘土。
(2)前記融点以上の温度で柔らかくなり、前記融点未満の温度で固まる、前記(1)に記載の感温性樹脂粘土。
(3)前記融点が、40℃未満である、前記(1)または(2)に記載の感温性樹脂粘土。
(4)前記側鎖結晶性ポリマーが、炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートをモノマー成分として含む、前記(1)~(3)のいずれかに記載の感温性樹脂粘土。
(5)合成樹脂をさらに含有する、前記(1)~(4)のいずれかに記載の感温性樹脂粘土。
(6)前記(1)~(5)のいずれかに記載の感温性樹脂粘土からなる、型取り材。
(7)前記(6)に記載の型取り材を前記融点以上の温度に加温する工程と、前記型取り材で原型を型取りする工程と、前記型取り材を前記融点未満の温度に冷却し、前記型取り材から前記原型を取り外す工程と、を備える、型取り方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安全な温度で作業が可能であり、且つ、加工可能時間が長いという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<感温性樹脂粘土>
以下、本発明の一実施形態に係る感温性樹脂粘土(以下、「樹脂粘土」ということがある。)について詳細に説明する。
本実施形態の樹脂粘土は、融点未満の温度で結晶化し、且つ、融点以上の温度で流動性を示す側鎖結晶性ポリマーを含有する。
【0009】
上述した構成によれば、安全な温度で作業が可能であり、且つ、加工可能時間が長いという効果が得られる。具体的に説明すると、上述した側鎖結晶性ポリマーは、融点を有するポリマーである。融点とは、ある平衡プロセスにより、最初は秩序ある配列に整合されていた重合体の特定部分が無秩序状態になる温度であり、示差熱走査熱量計(DSC)を使用して、10℃/分の測定条件で測定して得られる値のことである。側鎖結晶性ポリマーは、上述した融点未満の温度で結晶化し、且つ、融点以上の温度で相転移して流動性を示す。すなわち、側鎖結晶性ポリマーは、温度変化に対応して結晶状態と流動状態とを可逆的に起こす感温性を有する。本実施形態の樹脂粘土は、このような側鎖結晶性ポリマーを含有することから、側鎖結晶性ポリマーに由来する感温性を有し、融点以上の温度で柔らかくなり、融点未満の温度で固まる。
【0010】
ここで、側鎖結晶性ポリマーは、上述した融点を低く設定できる。また、側鎖結晶性ポリマーは、結晶状態から流動状態への変化が急峻であり、融点以上の温度では十分に柔らかくなる。それゆえ、このような側鎖結晶性ポリマーを含有する本実施形態の樹脂粘土は、軟化温度を低く設定でき、それに伴って加工可能時間の長時間化も可能となる。したがって、本実施形態の樹脂粘土によれば、安全な温度で作業が可能であり、且つ、加工可能時間も長いという効果が得られる。また、本実施形態の樹脂粘土は、側鎖結晶性ポリマーが温度変化に対応して結晶状態と流動状態とを可逆的に起こすことに起因して、繰り返し使用できる。このような機能を有する本実施形態の樹脂粘土は、例えば、型取り材として好適に使用できる。
【0011】
側鎖結晶性ポリマーの融点は、好ましくは40℃未満、より好ましくは20℃以上40℃未満である。この場合には、軟化温度が低くなり、安全な温度で作業ができる。また、これに伴って加工可能時間も長くなる。なお、融点は、用途に合わせて設定できる。融点は、例えば、側鎖結晶性ポリマーを構成するモノマー成分の組成などを変えることによって調整できる。
【0012】
側鎖結晶性ポリマーは、炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートをモノマー成分として含む。炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートは、その炭素数16以上の直鎖状アルキル基が側鎖結晶性ポリマーにおける側鎖結晶性部位として機能する。すなわち、側鎖結晶性ポリマーは、側鎖に炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する櫛形のポリマーであり、この側鎖が分子間力などによって秩序ある配列に整合されることにより結晶化する。なお、上述した(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートのことである。
【0013】
炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどの炭素数16~22の線状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。例示した(メタ)アクリレートは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートは、側鎖結晶性ポリマーを構成するモノマー成分中に好ましくは10~99重量%、より好ましくは20~99重量%の割合で含まれる。
【0014】
側鎖結晶性ポリマーを構成するモノマー成分には、炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートと共重合し得る他のモノマーが含まれてもよい。他のモノマーとしては、例えば、炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、極性モノマーなどが挙げられる。
【0015】
炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。例示した(メタ)アクリレートは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートは、側鎖結晶性ポリマーを構成するモノマー成分中に好ましくは70重量%以下、より好ましくは1~70重量%の割合で含まれる。
【0016】
極性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和単量体などが挙げられる。例示した極性モノマーは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。極性モノマーは、側鎖結晶性ポリマーを構成するモノマー成分中に好ましくは10重量%以下、より好ましくは1~10重量%の割合で含まれる。
【0017】
側鎖結晶性ポリマーを構成するモノマー成分には、反応性ポリシロキサン化合物(シリコーンモノマー)がさらに含まれてもよい。この場合には、樹脂粘土の離型性が高くなるため、樹脂粘土を型取り材として好適に使用できる。
【0018】
反応性ポリシロキサン化合物とは、反応性を示す官能基を有し、且つ、主鎖にシロキサン結合を有するポリシロキサン化合物のことである。反応性を示す官能基としては、例えば、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロキシ基などのエチレン性不飽和二重結合を有する基;エポキシ基(グリシジル基およびエポキシシクロアルキル基を含む)、メルカプト基、カルビノール基、カルボキシル基、シラノール基、フェノール基、アミノ基、ヒドロキシル基などが挙げられる。なお、上述した(メタ)アクリル基とは、アクリル基またはメタクリル基のことである。この点は、(メタ)アクリロイル基および(メタ)アクリロキシ基においても同様である。
【0019】
官能基は、主鎖が有する側鎖に導入されてもよいし、主鎖の両末端または片末端に導入されてもよい。反応性ポリシロキサン化合物は、導入される官能基の位置によって、側鎖型、両末端型、片末端型および側鎖両末端型に分類できる。
【0020】
片末端型の具体例としては、下記一般式(I)で表される変性ポリジメチルシロキサン化合物などが挙げられる。
【化1】
[式中、R
1はアルキル基を示す。R
2は基:CH
2=CHCOOR
3-またはCH
2=C(CH
3)COOR
3-(式中、R
3はアルキレン基を示す。)を示す。nは5~200の整数を示す。]
【0021】
一般式(I)中、R1が示すアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基などの炭素数1~6の直鎖または分岐したアルキル基が挙げられる。R3が示すアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などの炭素数1~6の直鎖または分枝したアルキレン基などが挙げられる。
【0022】
一般式(I)で表される変性ポリジメチルシロキサン化合物の具体例としては、下記一般式(II)で表される化合物などが挙げられる。
【化2】
[式中、R
1、nは、前記と同じである。]
【0023】
変性ポリジメチルシロキサン化合物は、市販品を使用することができる。市販の変性ポリジメチルシロキサン化合物としては、例えば、いずれも信越化学工業社製の片末端反応性シリコーンオイル「KF-2012」、「X-22-2475」、「X-24-8201」、「X-22-2426」などが挙げられる。
【0024】
変性ポリジメチルシロキサン化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。変性ポリジメチルシロキサン化合物は、モノマー成分中に好ましくは1~20重量%、より好ましくは1~10重量%の割合で含まれる。
【0025】
側鎖結晶性ポリマーの好ましい組成としては、炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが35~55重量%、炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートが39~50重量%、変性ポリジメチルシロキサン化合物が1~5重量%、および極性モノマーが5~10重量%である。
【0026】
モノマー成分の重合方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられる。溶液重合法を採用する場合には、モノマー成分と溶媒とを混合し、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤などを添加して、撹拌しながら40~90℃程度で2~10時間程度反応させればよい。
【0027】
側鎖結晶性ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは100000以上、より好ましくは300000~900000、さらに好ましくは400000~700000である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0028】
樹脂粘土は、融点以上の温度で側鎖結晶性ポリマーが流動性を示したときに柔らかくなり、且つ、融点未満の温度で側鎖結晶性ポリマーが結晶化したときに固まる割合で、側鎖結晶性ポリマーを含有すればよい。例えば、側鎖結晶性ポリマーの含有量は、10重量%以上であってもよい。また、側鎖結晶性ポリマーの含有量の上限値は、100重量%以下であってもよい。
【0029】
樹脂粘土は、側鎖結晶性ポリマー単体で構成されてもよい。言い換えれば、樹脂粘土は、側鎖結晶性ポリマー100重量%で構成されもよい。また、樹脂粘土は、側鎖結晶性ポリマーに加えて他の部材をさらに含有してもよい。他の部材としては、例えば、合成樹脂などが挙げられる。すなわち、樹脂粘土は、合成樹脂をさらに含有してもよい。本実施形態の樹脂粘土は、合成樹脂を含有しても側鎖結晶性ポリマーに起因して融点以上の温度では十分に柔らかくなるため、従来の樹脂粘土におけるベース樹脂単体と比べて加工性が高い。
【0030】
合成樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂などが挙げられる。オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂などが挙げられるが、これに限定されない。また、合成樹脂は、低密度であってもよい。この場合には、樹脂粘土が融点以上の温度で優れた柔軟性を発揮できる。合成樹脂が低密度の場合、その密度としては、例えば、0.86~0.92g/cm3である。すなわち、合成樹脂は、0.86~0.92g/cm3の密度を有する低密度合成樹脂であってもよい。また、合成樹脂は、市販品を使用することができる。市販の合成樹脂としては、例えば、三井化学社製の低密度オレフィン樹脂「タフマーDF810A-1085S」などが挙げられる。合成樹脂の含有量としては、例えば、0~90重量%である。合成樹脂と側鎖結晶性ポリマーとの比率は、重量比で、合成樹脂:側鎖結晶性ポリマー=9:1~1:9であってもよい。
【0031】
<型取り材>
次に、本発明の一実施形態に係る型取り材について詳細に説明する。
本実施形態の型取り材は、上述した感温性樹脂粘土からなる。そのため、本実施形態の型取り材によれば、原型を型取りする際に安全な温度で作業が可能であり、且つ、加工可能時間も長いという効果が得られる。
【0032】
<型取り方法>
次に、本発明の一実施形態に係る型取り方法について詳細に説明する。
本実施形態の型取り方法は、上述した型取り材を使用するとともに、以下の(i)~(iii)の工程を備える。
【0033】
(i)型取り材を融点以上の温度に加温する工程。
(ii)型取り材で原型を型取りする工程。
(iii)型取り材を融点未満の温度に冷却し、型取り材から原型を取り外す工程。
【0034】
本実施形態では、上述した型取り材を使用することから、急いで作業する必要がなく、安全に型取りを行うことができる。
【0035】
なお、(i)の工程では、融点+0~60℃に型取り材を加温してもよい。この場合には、加工可能時間が長くなる。
【0036】
(ii)の工程では、例えば、型取り材に原型を押し付けてもよいし、型取り材を2つに分けて原型をその間に挟み込んでもよい。
【0037】
以上、本発明に係る実施形態について例示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることは言うまでもない。
【0038】
例えば、上述した樹脂粘土は、成形材としても使用できる。すなわち、上述した樹脂粘土をそのまま成形してもよい。樹脂粘土を成形材として使用する場合には、樹脂粘土を融点以上の温度に加温して所望の形状に成形した後、融点未満の温度に冷却すればよい。
【0039】
以下、合成例および実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の合成例および実施例のみに限定されるものではない。
【0040】
(合成例:側鎖結晶性ポリマー)
まず、表1に示すモノマーを表1に示す割合で反応容器に加えた。表1に示すモノマーは、以下のとおりである。
C18A:ステアリルアクリレート
C16A:セチルアクリレート
C1A:メチルアクリレート
KF-2012:変性ポリジメチルシロキサン化合物である信越化学工業社製の片末端反応性シリコーンオイル
AA:アクリル酸
【0041】
次に、固形分濃度が30重量%になるように酢酸エチル:トルエン=75:25(重量比)の混合溶媒を反応容器に加え、混合液を得た。得られた混合液を55℃で4時間撹拌することによって各モノマーを共重合させ、側鎖結晶性ポリマーを得た。
【0042】
得られた側鎖結晶性ポリマーの重量平均分子量および融点を表1に示す。重量平均分子量は、GPCで測定して得られた測定値をポリスチレン換算した値である。融点は、DSCを用いて10℃/分の測定条件で測定した値である。
【0043】
【0044】
[実施例1]
<試験片の作製>
まず、合成樹脂と、合成例で得られた側鎖結晶性ポリマーとを、固形分重量比で、合成樹脂:側鎖結晶性ポリマー=7:3の比率で混合し、混合物を得た。次に、得られた混合物を110℃の熱風循環オーブン中で5分間加熱乾燥した後、厚さ1cmの板状に成形して試験片を得た。
【0045】
使用した合成樹脂は、以下のとおりである。
合成樹脂:密度が0.89g/cm3である三井化学社製の低密度オレフィン樹脂「タフマーDF810A-1085S」(表2中、「LDPO」として示す。)
【0046】
<評価>
得られた試験片について、伸縮性および加工可能時間を評価した。各評価方法を以下に示すとともに、その結果を表2に示す。
【0047】
(伸縮性)
まず、熱風循環オーブンで試験片を以下の条件で加熱した。
加熱温度:40℃
加熱時間:10分
【0048】
次に、試験片を熱風循環オーブンから取り出し、23℃の雰囲気温度で伸縮させた。そして、このときの状態を評価した。なお、試験片の伸縮は手で行った。評価基準は以下のように設定した。
〇:伸縮した。
×:伸縮しなかった。
【0049】
(加工可能時間)
まず、熱風循環オーブンで試験片を以下の条件で加熱した。
加熱温度:40℃または80℃
加熱時間:10分
【0050】
次に、試験片を熱風循環オーブンから取り出し、23℃の雰囲気温度で試験片が軟化している時間を測定した。なお、試験片が軟化しているか否かの確認は、手で行った。
【0051】
[実施例2]
合成例で得られた側鎖結晶性ポリマー単体を厚さ1cmの板状に成形して試験片を得た。そして、この試験片の伸縮性および加工可能時間を実施例1と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0052】
[比較例1~2]
市販の樹脂粘土を厚さ1cmの板状に成形して試験片を得た。使用した樹脂粘土は、以下のとおりである。
比較例1:主にポリエチレン樹脂で構成されたシード社製の「イロプラ」(表2中、「PE」として示す。)
比較例2:主にポリカプロラクトンで構成されたミアドリームトレーディング社製の「プラフレンド」(表2中、「PCL」として示す。)
【0053】
得られた試験片について、伸縮性および加工可能時間を評価した。伸縮性および加工可能時間は、加熱温度を表2に示す温度にした以外は、実施例1と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0054】
[比較例3]
実施例1で使用した合成樹脂単体を厚さ1cmの板状に成形して試験片を得た。そして、この試験片の伸縮性および加工可能時間を評価した。伸縮性および加工可能時間は、加熱温度を表2に示す温度にした以外は、実施例1と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0055】
【0056】
表2から明らかなように、実施例1~2は、伸縮性に優れ、加工可能時間も長いことがわかる。