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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ハンド装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/12 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
B25J15/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019204447
(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公開番号】P2021074838
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】西川 武志
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-211986(JP,A)
【文献】特開2019-166589(JP,A)
【文献】特開昭57-144687(JP,A)
【文献】特開2002-370188(JP,A)
【文献】特開2019-018305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0114482(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の指を有し該複数の指の変形によって開閉するハンドであって、該ハンドに流体を供給または前記ハンドから流体を吸引する動力源と接続され、前記流体の供給または吸引による前記複数の指の変形によって閉じるハンドと、
該ハンドの閉動作中に前記ハンドと前記動力源との間を流れる流体の流量を計測する流量計と、
前記ハンドの閉動作中の前記流量計による計測結果に基づいて前記ハンドの開閉状態を判断する判断部と、を備え
前記判断部は、
前記ハンドの閉動作中に前記流量計によって計測された前記流量から、前記閉動作中に前記ハンドに供給または前記ハンドから吸引された前記流体の総量を算出し、
前記総量が所定の閾値未満である場合、前記ハンドが部分的に閉じ前記複数の指の間にワークを把持していると判断し、
前記総量が前記所定の閾値以上である場合、前記ハンドが完全に閉じ前記ワークを把持していないと判断すハンド装置。
【請求項2】
複数の指を有し該複数の指の変形によって開閉するハンドであって、該ハンドに流体を供給または前記ハンドから流体を吸引する動力源と接続され、前記流体の供給または吸引による前記複数の指の変形によって閉じるハンドと、
該ハンドの閉動作中に前記ハンドと前記動力源との間を流れる流体の圧力を計測する圧力計と、
前記ハンドの閉動作中の前記圧力計による計測結果に基づいて前記ハンドの開閉状態を判断する判断部と、を備え
前記判断部は、
前記閉動作中、前記圧力計によって計測される前記圧力が所定の設定圧力に達するまでの所要時間の長さを計測し、
前記所要時間の長さが所定の閾値以下である場合、前記ハンドが部分的に閉じ前記複数の指の間にワークを把持していると判断し、
前記所要時間の長さが前記所定の閾値よりも長い場合、前記ハンドが完全に閉じ前記ワークを把持していないと判断すハンド装置。
【請求項3】
前記複数の指の各々が、中空であり、内圧の変化に従って内部容積の変化を伴いながら変形する、請求項1または請求項に記載のハンド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物体を搬送する搬送装置のハンドには、ハンドの動作を検出するために、磁気センサ、圧力センサまたは流量センサ等のセンサが取り付けられている(例えば、特許文献1,2参照。)。例えば、特許文献1において、ハンドを動作させるエアシリンダには、伸縮するロッドの位置を検出するために、一般にオートスイッチと呼ばれる磁気センサが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-018304号公報
【文献】国際公開第2014/118820号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、食品等の柔らか物体の把持用に、ゴム等の弾性材料から形成された中空の柔らかい指を有するハンドが開発されている。このハンドの開閉は、指の内部へのエアの供給および排出による指の変形によって達成される。したがって、オートスイッチ等のエアシリンダ用のセンサによってハンドの動作を検出することは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、複数の指を有し該複数の指の変形によって開閉するハンドであって、該ハンドに流体を供給または前記ハンドから流体を吸引する動力源と接続され、前記流体の供給または吸引による前記複数の指の変形によって閉じるハンドと、該ハンドの閉動作中に前記ハンドと前記動力源との間を流れる流体の流量または圧力を計測する計測器と、前記ハンドの閉動作中の前記計測器による計測結果に基づいて前記ハンドの開閉状態を判断する判断部と、を備えるハンド装置である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態に係るハンド装置の全体構成を示すブロック図である。
図2図1のハンド装置のハンドの開閉動作を説明する図であり、(a)ハンドが開いた状態、(b)ハンドが部分的に閉じてワークを把持している状態、および(c)ハンドが完全に閉じた状態を示している。
図3】第2の実施形態に係るハンド装置の全体構成を示すブロック図である。
図4】ハンドの閉動作中の指の内圧の時間変化を示すグラフである。
図5】第3の実施形態に係るハンド装置の全体構成を示すブロック図である。
図6図5のハンド装置のハンドの開閉動作を説明する図であり、(a)ハンドが開いた状態、(b)ハンドが部分的に閉じてワークを把持している状態、および(c)ハンドが完全に閉じた状態を示している。
図7図5のハンド装置の変形例の全体構成図を示すブロック図である。
図8図7のハンド装置のハンドの開閉動作を説明する図であり、(a)ハンドが開いた状態、(b)ハンドが部分的に閉じてワークを把持している状態、および(c)ハンドが完全に閉じた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係るハンド装置10について図面を参照して説明する。
ハンド装置10は、図1に示されるように、ハンド1と、ハンド1の開閉動作を制御する制御部2と、ハンド1をエア源(動力源)6と接続するエアホース3と、エアホース3に設けられた流量計(計測器)4と、ハンド1の開閉状態を判断する判断部5とを備える。
【0008】
ハンド1は、ワークWを搬送する任意の種類の搬送装置に接続される。搬送装置は、例えば、垂直多関節ロボット、水平多関節ロボットまたはパラレルリンクロボット等の産業用ロボットである。ハンド1の閉動作は、エアコンプレッサのようなエア源6からエアホース3を経由して供給される圧縮エア(流体)の正圧によって駆動される。
【0009】
ハンド1は、図2(a)~(c)に示されるように、搬送装置に接続されるベース1aと、ベース1aに連結された複数の指1bとを有する。複数の指1bは、ベース1aの中心軸A回りの周方向に配列し、各指1bの基端がベース1aに接続されている。参照する図面において、指1bの数は4本であるが、指1bの数は2本、3本、または5本以上であってもよい。
【0010】
各指1bは、ゴムまたはシリコーン等の弾性材料から形成された中空の部材である。各指1bの内部空間は、エアホース3の先端の開口を通じてエアホース3の内部と連通しており、エアホース3の開口を除いて閉じている。
図2(a)~(c)に示されるように、複数の指1bが各々の内圧に応じて開形状と閉形状との間で変形することによって、ハンド1は開閉する。図2(a)は、ハンド1が開いた状態を示し、図2(b)は、ハンド1が部分的に閉じた状態を示し、図2(c)は、ハンド1が完全に閉じた状態を示している。開形状と閉形状との間の変形において、例えば弾性材料の伸縮によって、各指1bの内部容積は変化する。
【0011】
具体的には、エアホース3を経由してエア源6から複数の指1bの各々の内部にエアが供給されることによって、ハンド1の閉動作が実行される。エアの供給によって指1bの内圧が上昇し、内圧の上昇によって複数の指1bは、内部容積の増大を伴いながら開形状から閉形状に向かって変形する。これにより、複数の指1bの先端部が、中心軸Aに直交する径方向に相互に近付き、ハンド1が閉じる。
【0012】
一方、エアホース3を経由して複数の指1bの内部からエアが排出されることによって、ハンド1の開動作が実行される。エアの排出によって指1bの内圧が低下し、内圧の低下によって複数の指1bは、内部容積の減少を伴いながら閉形状から開形状に向かって変形する。これにより、複数の指1bの先端部が径方向に相互に離間し、ハンド1が開く。
【0013】
図2(c)に示されるように、ハンド1を完全に閉じるためには、閉動作において所定の設定量のエアがエア源6からハンド1へ供給される必要がある。
図2(b)に示されるように、閉動作によって複数の指1bの間にワークWが把持された場合、指1bが閉形状まで変形する前に、ワークWの把持によって指1bの変形が停止し、ハンド1が部分的に閉じた状態でハンド1の閉動作が終了する。この場合、エア源6からハンド1へのエアの総供給量は、所定の設定量未満となり、例えば所定の設定量の80%となる。
【0014】
制御部2は、指1bへのエアの供給および指1bからのエアの排出を制御することによって、ハンド1の開閉動作を制御する。
一例において、制御部2は、エアホース3に設けられた三方弁のような切替弁(図示略)を第1の状態に切り替えることによって指1bへエアを供給させ、ハンド1に閉動作を実行させる。エア源6から指1bへのエアの供給は、指1bの内圧が所定の設定圧力に達したときに停止する。また、制御部2は、切替弁を第2の状態に切り替えることによって指1bからエアを排出させ、ハンド1に開動作を実行させる。
【0015】
流量計4は、エア源6とハンド1との間の位置においてエアホース3に設けられ、エアホース3内をエア源6からハンド1へ向かって流れるエアの流量を計測する。計測された流量の情報は、流量計4から判断部5に送られる。
【0016】
判断部5は、ハンド1の閉動作中に流量計4によって計測された流量から、閉動作中にハンド1に供給されたエアの総供給量を算出する。例えば、判断部5は、制御部2から発信される信号に基づいてハンド1の閉動作の開始および終了のタイミングを判断し、閉動作の開始から終了まで流量計4によって計測された流量を積算することによって、総供給量を算出する。
【0017】
次に、判断部5は、閉動作中のエアの総供給量に基づいてハンド1の開閉状態を判断する。閉動作中のエアの総供給量とハンド1の開閉状態との間には一定の関係が存在し、エアの総供給量が多い程、指1bの形状は閉形状に近付く。すなわち、前述したように、総供給量が所定の設定量と等しい場合、ハンド1は完全に閉じている。総供給量が所定の設定量未満である場合、ハンド1はワークWの把持によって部分的に閉じている。
例えば、判断部5は、所定の設定量に対する総供給量の割合が所定の閾値Th1以上である場合、ハンド1が完全に閉じワークWを把持していない判断する。判断部5は、所定の設定量に対する総供給量の割合が所定の閾値Th1未満である場合、ハンド1が部分的に閉じワークWを把持したと判断する。
【0018】
次に、ハンド装置10の作用について説明する。
開いた状態のハンド1が、搬送装置の動作によってワークWに上方から接近し、指1bの間にワークWが配置される。次に、制御部2が、指1bの内部へのエアの供給を開始することによって、ワークWを指1bの間に把持するためにハンド1に閉動作を実行させる。
【0019】
ハンド1の閉動作中、エア源6からハンド1へ流れるエアの流量が流量計4によって計測される。そして、判断部5によって、ハンド1の閉動作中にハンド1に供給されたエアの総供給量が算出され、総供給量からハンド1の開閉状態が判断される。例えば、総供給量が所定の設定量と等しいまたは略等しい場合、ハンド1は完全に閉じておりワークWを把持していない判断される。総供給量が所定の設定量に満たない場合、ハンド1は部分的に閉じておりワークWを把持していると判断される。
【0020】
このように、本実施形態によれば、ハンド1の閉動作中のエアの総供給量に基づいてハンド1の開閉状態を判断し、開閉状態からハンド1がワークWを把持したか否かを判断することができる。
また、本実施形態によれば、ハンド1とエア源6との間を流れるエアの計測結果を利用することによって、ハンド1の使用環境に関わらず、開閉状態を正確に判断することができる。すなわち、ハンド1の開閉状態またはハンド1がワークWを把持したか否かを検出するためのセンサとして、光電センサ等の電子機器を使用することもできる。しかし、食品等の分野において、ハンド1に取り付けられた電子機器は、食品からの飛散物等の異物の付着よって誤検出したり故障したりしやすい。これに対し、流量計4はハンド1から離れた位置に設置されるので、流量計4はワークWおよびワークWの周辺環境に影響されるなくエアの流量を正確かつ安定的に計測することができる。
【0021】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るハンド装置20について図面を参照して説明する。
本実施形態においては、第1の実施形態と異なる構成について説明し、第1の実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
ハンド装置20は、図3に示されるように、ハンド1と、制御部2と、エアホース3と、エアホース3に設けられた圧力計7と、ハンド1の開閉状態を判断する判断部51とを備える。
【0022】
圧力計7は、エア源6とハンド1との間の位置においてエアホース3に設けられ、エアホース3内をエア源6からハンド1へ向かって流れるエアの圧力を計測する。エアホース3の内部は指1bの内部空間と連通しているので、圧力計7は、指1bの内圧をエアホース3の内部のエア圧として計測する。計測されたエア圧の情報は、圧力計7から判断部51に送られる。
【0023】
判断部51は、ハンド1の閉動作中に圧力計7によって計測されたエア圧の時間変化に基づいて、ハンド1の開閉状態を判断する。
具体的には、ハンド1の閉動作中、判断部51は、閉動作の開始から圧力計7によって計測されるエア圧が所定の設定圧力P0に達するまでの所要時間の長さを計測する。例えば、判断部51は、制御部2から発信される信号に基づいてハンド1の閉動作の開始を判断する。所要時間の長さが所定の閾値Th2以下である場合、判断部51は、ハンド1が部分的に閉じワークWを把持したと判断する。所要時間の長さが所定の閾値Th2よりも長い場合、判断部51は、ハンド1が完全に閉じワークWを把持していないと判断する。
【0024】
図4は、ハンド1の閉動作中に圧力計7によって計測されるエア圧の時間変化を示している。
ハンド1がワークWを把持することなく完全に閉じた場合、所要時間の長さはt0である(図4の実線参照。)。
一方、ハンド1がワークWの把持によって部分的に閉じた場合、所要時間の長さt1はt0よりも短くなる(図4の鎖線参照。)。これは、指1bのワークWとの接触後、エア圧の増加速度が増すからである。
【0025】
次に、ハンド装置20の作用について説明する。
第1の実施形態と同様にして、ワークWを指1bの間に把持するためのハンド1の閉動作が実行される。
ハンド1の閉動作中、エア源6からハンド1へ流れるエアの圧力が圧力計7によって計測される。そして、判断部51によって、エア圧が所定の設定圧力P0に達するまでの所要時間の長さが計測され、所要時間の長さからハンド1の開閉状態が判断される。所要時間の長さが所定の閾値Th2よりも長い場合、ハンド1は完全に閉じておりワークWを把持していないと判断される。所要時間の長さが所定の閾値Th2以下である場合、ハンド1は部分的に閉じておりワークWを把持していると判断される。
【0026】
このように、本実施形態によれば、ハンド1の閉動作中のエア圧の時間変化に基づいてハンド1の開閉状態を判断し、開閉状態からハンド1がワークWを把持したか否かを判断することができる。
また、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、ハンド1とエア源6との間を流れるエアの計測結果を利用することによって、ハンド1の使用環境に関わらず、開閉状態を正確に判断することができる。
【0027】
本実施形態において、判断部51が、所要時間の長さに基づいてハンド1の開閉状態を判断することとしたが、これに代えて、圧力計7によって計測されたエア圧の時間変化の波形に基づいて、ハンド1の開閉状態を判断してもよい。
図4に示されるように、ハンド1が完全に閉じたときと部分的に閉じたときとで、エア圧の時間変化の波形は異なる。したがって、エア圧の時間変化の波形に基づいて、ハンド1の開閉状態を判断することができる。
【0028】
本実施形態において、第1の実施形態の流量計4がエアホース3に設けられていてもよい。この場合、判断部51は、閉動作中にハンド1に供給されたエアの総供給量と、エア圧が所定の設定圧力P0に達するまでの所要時間の長さとの両方に基づいて、ハンド1の開閉状態を判断してもよい。
例えば、判断部51は、エアの総供給量が閾値Th1未満であり、かつ、所要時間の長さが所定の閾値Th2以下である場合にのみ、ハンド1が部分的に閉じておりワークWを把持していると判断してもよい。
【0029】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るハンド装置30について図面を参照して説明する。
本実施形態においては、第1および第2の実施形態と異なる構成について説明し、第1および第2の実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0030】
ハンド装置30は、図5に示されるように、ハンド11と、ハンド11の開閉動作を制御する制御部2と、エアホース3とを備える。ハンド装置30は、第1の実施形態において説明した流量計4および判断部5をさらに備えていてもよく、第2の実施形態において説明した圧力計7および判断部51をさらに備えていてもよい。
【0031】
さらに、ハンド装置30は、ハンド11の通気口1cをエアコンプレッサのようなエア源(送気装置)61と接続するエアホース31と、エアホース31に設けられた流量計41と、ハンド11がワークを把持したか否かを判断する判断部52とを備える。
図6に示されるように、ハンド11は、ベース1aと、複数の指1bと、通気口1cとを有する。
【0032】
通気口1cは、複数の指1bの間に把持されたワークWによって塞がれる位置に開口している。図6の例において、ベース1aには、中心軸Aに沿ってベース1aから指1bの先端側に向かって延びる筒状の伸縮部材1dが設けられている。伸縮部材1dは、中心軸Aに沿って弾性的に収縮可能であり、伸縮部材1dの先端面に通気口1cが開口している。例えば、伸縮部材1dは、蛇腹構造を有するか、または、弾性材料から形成されている。指1bの間にワークWが把持された状態で、伸縮部材1dはワークWによって押圧されることで収縮し、伸縮部材1dの先端面がワークWの表面に押し付けられる。この状態において、通気口1cの少なくとも一部分が、ワークWの表面によって塞がれる。
【0033】
エアホース31は、エアホース3とは別体である。したがって、ハンド11を閉じるためのエアとは独立に、ワークWの検出用のエアがエア源61からハンド11の通気口1cに供給される。
流量計41は、エア源61とハンド11との間の位置においてエアホース31に設けられ、エアホース31内をエア源61からハンド11へ向かって流れるエアの流量を計測する。計測された流量の情報は、流量計41から判断部52に送られる。
【0034】
判断部52は、ハンド11の閉動作中に流量計41によって計測された流量に基づいて、ハンド11がワークWを把持したか否かを判断する。通気口1cが塞がれていない状態において、エアホース31内を流れるエアの流量は、所定の流量である。一方、通気口1cの少なくとも一部分が塞がれている状態において、エアホース31内を流れるエアの流量は、所定量よりも少なくなる。
例えば、判断部52は、所定の流量に対する計測された流量の割合が所定の閾値以上である場合、ハンド11がワークWを把持していないと判断する。判断部52は、所定の流量に対する計測された流量の割合が所定の閾値未満である場合、ハンド11がワークWを把持したと判断する。
【0035】
次に、ハンド装置30の作用について説明する。
開いた状態のハンド11が、搬送装置の動作によってワークWに上方から接近し、指1bの間にワークWが配置される。ハンド11のワークWへの接近の過程において、伸縮部材1dの先端面がワークWの上面に接触して伸縮部材1dが収縮し、通気口1cの少なくとも一部分がワークWによって塞がれる。次に、制御部2が、指1bの内部へのエアの供給を開始することによって、ワークWを指1bの間に把持するためにハンド11に閉動作を実行させる。
【0036】
ハンド11の閉動作中、エア源61からハンド11の通気口1cへ流れるエアの流量が流量計41によって計測される。そして、判断部52によって、エアの計測された流量からハンド11がワークWを把持したか否かが判断される。例えば、計測された流量が所定の流量と等しいまたは略等しい場合、ハンド11はワークWを把持していない判断される。計測された流量が所定の流量よりも少ない場合、ハンド11はワークWを把持していると判断される。
【0037】
このように、本実施形態によれば、ハンド11の閉動作中に通気口1cへ流れるエアの流量に基づいて、ハンド11がワークWを把持しているか否かを判断することができる。
また、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、ハンド11とエア源61との間を流れるエアの計測結果を利用することによって、ハンド11の使用環境に関わらず、ハンド11がワークWを把持しているか否かを正確に判断することができる。
【0038】
本実施形態において、判断部52は、図7および図8に示されるように、ハンド11がワークWを把持しているかを、エアの流量に代えて、エアの圧力に基づいて判断してもよい。
図7および図8のハンド装置40は、流量計41に代えて、エアホース31に設けられた圧力計71を備える。ハンド装置40は、第1の実施形態において説明した流量計4および判断部5をさらに備えていてもよく、第2の実施形態において説明した圧力計7および判断部51をさらに備えていてもよい。
【0039】
エアホース31は、エア源61に代えて、真空ポンプのような負圧源(送気装置)62と接続され、負圧源62が発生する負圧によって、通気口1cからエアホース31内へエアが吸引される。ハンド11には、伸縮部材1dに代えて吸着パッド1eが設けられ、吸着パッド1eの先端面に通気口1cが開口している。指1bの間にワークWが把持された状態において、ワークWが吸着パッド1eの先端面に吸着され、通気口1cがワークWの表面によって塞がれる。
【0040】
圧力計71は、エアホース31内を通気口1cから負圧源62へ向かって流れるエアの圧力を計測する。
判断部52は、ハンド11の閉動作中に圧力計71によって計測されたエアの圧力に基づいて、ハンド11がワークWを把持したか否かを判断する。
通気口1cが塞がれている状態において、エアホース31の内部は真空になる。一方、通気口1cが塞がれていない状態において、エアホース31の内部は真空にはならない。判断部52は、計測された圧力が真空である場合、ハンド11がワークWを把持したと判断し、計測された圧力が真空ではない場合、ハンド11が完全に閉じワークWを把持していないと判断する。
【0041】
上記第1および第2の実施形態において、判断部5,51は、ハンド1の開閉状態に加えて、ハンド1によって把持されたワークWのサイズを判断してもよい。
エアの総供給量または所要時間から、ワークWを把持している指1bの形状および位置を検出することができる。したがって、例えば、エアの総供給量または所要時間から、中心軸Aを間に挟み相互に対向する2本の指1bの先端部間の距離を算出し、算出された距離をワークWのサイズとして判断してもよい。
【0042】
上記各実施形態において、ハンド1,11がエアの正圧によって閉じることとしたが、これに代えて、ハンド1,11がエアの負圧によって閉じてもよい。この場合、動力源として、真空ポンプのような負圧を発生する負圧源が使用される。指1bの内部のエアがエアホース3を経由して負圧源によって吸引されることで、ハンド1,11は閉じる。
この場合、流量計4は、エアホース3内をハンド1,11から負圧源へ向かって流れるエアの流量を計測し、判断部5は、閉動作中にハンド1,11から吸引されたエアの総吸引量に基づいて開閉状態を判断する。圧力計7は、エアホース3内をハンド1,11から負圧源へ向かって流れるエアの圧力を計測し、判断部51は、エア圧が所定の設定圧力まで低下するまでの所要時間に基づいて開閉状態を判断する。
【0043】
上記各実施形態において、ハンド1,11を閉じるための動力源としてエアの圧力を使用することとしたが、これに代えて、他の種類の流体の圧力を使用してもよい。例えば、エア以外の種類の気体の圧力、または油圧を動力源として使用してもよい。
上記各実施形態において、ハンド1,11が中空の指1bを備えることとしたが、これに代えて、ハンド1,11が、中実の指を備え、ハンド1,11への流体の供給またはハンド1,11からの流体の吸引によって中実の指が開形状から閉形状へ変形するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1,11 ハンド
1a ベース
1b 指
1c 通気口
1d 伸縮部材
1e 吸着パッド
2 制御部
3,31 エアホース
4,41 流量計(計測器)
5,51,52 判断部
6 エア源(動力源)
61 エア源(送気装置)
62 負圧源(送気装置)
7,71 圧力計(計測器)
10,20,30,40 ハンド装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8