(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】杭頭接合構造および杭頭接合方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/12 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
(21)【出願番号】P 2019211293
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健
(72)【発明者】
【氏名】磯田 和彦
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-344388(JP,A)
【文献】特開2012-136880(JP,A)
【文献】特開2010-236187(JP,A)
【文献】特開2019-019503(JP,A)
【文献】特開昭55-145212(JP,A)
【文献】特開2002-138574(JP,A)
【文献】特開2008-082074(JP,A)
【文献】特開2005-256368(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0065233(US,A1)
【文献】特開2016-089443(JP,A)
【文献】特開2004-162374(JP,A)
【文献】特開2003-105775(JP,A)
【文献】登録実用新案第3058723(JP,U)
【文献】特開2002-242207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭と、
前記杭の上方に設けられる基礎部と、
上下方向に延び下
端部が前記杭に同軸に埋設され上
端部が前記基礎部に埋設される接続部と、を有する杭頭接合構造において、
前記接続部は、上下方向に延びる鋼管を有し、
前記鋼管の外径が杭径の1/6倍以上1/3倍以下であり、
前記鋼管は、前記杭および前記基礎部それぞれに該鋼管の外径の5倍程度ずつ埋設されており、
前記杭は、
杭本体と、
前記杭本体と同軸に設けられ前記杭本体の中央部から上方に突出する断面縮小部と、を有し、
前記基礎部は、前記断面縮小部と軸力伝達可能に接続され、前記杭本体の外周部と軸力伝達不能に絶縁され、
前記断面縮小部の外径は、前記杭径の0.6倍以上0.7倍以下であ
り、
前記接続部は、前記杭本体、前記断面縮小部、および前記基礎部に亘って配置されていることを特徴とする杭頭接合構造。
【請求項2】
前記接続部は、前記鋼管の内部に充填されたコンクリートを有することを特徴とする請求項1に記載の杭頭接合構造。
【請求項3】
前記鋼管には、前記杭に埋設される下部側における外周面に径方向外側に突出する第1突起部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の杭頭接合構造。
【請求項4】
前記鋼管には、前記基礎部に埋設される上部側における外周面に径方向外側に突出する第2突起部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の杭頭接合構造。
【請求項5】
前記杭の外周部と前記基礎部との間には、スタイロフォーム(登録商標)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の杭頭接合構造。
【請求項6】
請求項1に記載の杭頭接合構造を施工する杭頭接合方法において、
前記杭を打設する杭打設工程と、
前記鋼管を建て込む鋼管建て込み工程と、
前記基礎部を打設する基礎部打設工程と、を有し、
前記鋼管建て込み工程は、前記杭打設工程に先行して行うことを特徴とする杭頭接合方法。
【請求項7】
請求項1に記載の杭頭接合構造を施工する杭頭接合方法において、
前記杭を打設する杭打設工程と、
前記鋼管を建て込む鋼管建て込み工程と、
前記基礎部を打設する基礎部打設工程と、を有し、
前記杭打設工程は、前記杭のコンクリートを打設する杭コンクリート打設工程を有し、
前記鋼管建て込み工程は、前記杭コンクリート打設工程の後で前記杭のコンクリートが硬化する前に、前記杭のコンクリートに前記鋼管を建て込むことを特徴とする杭頭接合方法。
【請求項8】
前記鋼管建て込み工程では、前記鋼管の高さ方向の2か所それぞれにおいて、互いに直交する2つの水平方向の位置をジャッキで制御することを特徴とする請求項6または7のいずれか一項に記載の杭頭接合方法。
【請求項9】
前記基礎部を打設する基礎部打設工程の前に、
前記杭本体の上かつ前記断面縮小部が形成される断面縮小部形成領域の周囲にスタイロフォーム(登録商標)を敷設するスタイロフォーム設置工程と、
断面縮小部形成領域にコンクリートを打設する断面縮小部形成工程と、を有し、
前記基礎部打設工程では、
前記断面縮小部と前記スタイロフォームの上方に前記基礎部を打設することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の杭頭接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭頭接合構造および杭頭接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
場所打ちコンクリート杭は、先端部を拡底することで高軸力に対応できるため、多くの建物に適用されている。杭頭部を建物基礎と接合する際、一般的には剛接合されているため、杭体の曲げ応力は杭頭部で最大となり、これを杭頭部および建物基礎部で処理する必要がある。
この曲げ応力を軽減する手段として杭頭半剛接合があり、基礎に対する杭頭部の固定度を低下させることで杭頭部の曲げ応力を大きく低減し、杭や基礎の断面を合理化することができる。
具体的には、特許文献1に開示されているように、杭頭部に杭本体より小さい断面のRCの柱部(断面縮小部)を介して建物基礎と接合したり、特許文献2に開示されているように、杭内に挿入した構真柱を介して建物基礎と接合したりすることで、杭と基礎との接合部の固定度を低下させ半剛接合にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3058723号公報
【文献】特開2002-138574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された杭頭接合構造では、断面縮小部の曲げ・せん断耐力が小さく、断面縮小部の外周を鋼管や炭素繊維で被覆しても、杭体へのめりこみを生じたり、軸力が小さいとせん断耐力が低下したりする問題がある。
一方、特許文献2に開示された杭頭接合構造では、上記の問題の多くは解消できるが、構真柱のコストアップや芯鉄骨まわりの気中打設コンクリートにより杭コンクリートが打設しにくくなる問題がある。
【0005】
特許文献1に開示された杭頭接合構造の改良案として、鋼管巻きした断面縮小部に接する杭頭コンクリートをめりこみ防止のため高強度コンクリートとして気中で現場打ちすることが考えられるが、掘削深さが増したり杭頭鉄筋を養生しながら斫ったりすることから、施工性に課題がある。
また、杭頭接合構造として、柱鉄骨を杭内まで延長し、大地震時に杭頭でコンクリートが破壊しても柱鉄骨で健全性を維持しようとすることが考えられるが、柱鉄骨だけで杭に作用する曲げ・せん断力に加えて軸力を処理するのは力学的にも耐久性(防錆)の点からも不合理である。コンクリートの破壊を前提にするのではなく、大地震時も活用した方が無駄なく合理的といえる。なお、この場合、杭頭部は全断面が建物基礎と接触しており、軸力が十分あれば固定接合と同じになる。
【0006】
地震時に各杭に作用するせん断力は、基礎に作用するせん断力を各杭の水平剛性に応じて分配したものになる。均質地盤に埋設された杭(杭径D,曲げ剛性EI)の水平剛性kは、水平地盤反力係数kh(杭にとりつく単位長あたりの水平地盤ばね)を用いて下式(1)のChang式で表される。
【0007】
【0008】
建物基礎と杭頭は固定度によらず同一変位となることから、杭のせん断力は基礎に作用する全水平力Qを各杭の水平剛性kに比例して分配したものとなる。したがって、杭頭半剛接合にした場合でも杭頭剛接合にした場合の1/2以上のせん断力は負担することとなり、接合部には十分なせん断耐力を確保する必要がある。
【0009】
そこで、本発明は、杭頭接合部の固定度を低下させ半剛接合としつつ、接続部で基礎部からの圧縮軸力を負担することができる杭頭接合構造および杭頭接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る杭頭接合構造は、杭と、前記杭の上方に設けられる基礎部と、上下方向に延び下端部が前記杭に同軸に埋設され上端部が前記基礎部に埋設される接続部と、を有する杭頭接合構造において、前記接続部は、上下方向に延びる鋼管を有し、前記鋼管の外径が杭径の1/6倍以上1/3倍以下であり、前記鋼管は、前記杭および前記基礎部それぞれに該鋼管の外径の5倍程度ずつ埋設されており、前記杭は、杭本体と、前記杭本体と同軸に設けられ前記杭本体の中央部から上方に突出する断面縮小部と、を有し、前記基礎部は、前記断面縮小部と軸力伝達可能に接続され、前記杭本体の外周部と軸力伝達不能に絶縁され、前記断面縮小部の外径は、前記杭径の0.6倍以上0.7倍以下であり、前記接続部は、前記杭本体、前記断面縮小部、および前記基礎部に亘って配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明では、断面縮小部の外径が杭径の0.6倍以上0.7倍以下であり、鋼管の外径が杭径の1/6倍以上1/3倍以下であり、接続部の鋼管で基礎部からの圧縮軸力を負担する。これにより、杭の断面縮小部に作用する圧縮軸力が低減され、めりこみを防止するため杭頭部に高強度コンクリートを打設する必要が無く、合理的な構造を実現することができる。
その結果、杭頭部から下方に掘削して斫り、杭頭部に型枠を設置して気中で高強度コンクリートを打設するといった煩雑な作業がなくなり、施工性が大幅に向上する。
接続部の鋼管で圧縮軸力を負担することにより、杭頭部の断面縮小部に作用する圧縮軸力が低減され、コンクリート断面を小さくして固定度を低下することができる。
一般的な杭頭部で全断面が基礎に接する形態では、コンクリートの破損(圧壊)が生じず全断面圧縮状態であるかぎり、杭頭固定(剛接合)と同じになるが、本発明では、接触面積が縮小されているため杭頭半剛接合となる。
なお、本発明では、接続部の鋼管は、杭の中央部にあることから、杭頭曲げ剛性の増大にはほとんど寄与しない。
杭頭部の断面縮小部のコンクリートも圧縮軸力を負担することにより、接続部の鋼管が負担する圧縮軸力は杭軸力よりも小さくなる。
これにより、鋼材で全ての圧縮軸力を負担する構造と比べて、接続部の鋼管の断面を縮小でき合理的な構造となり、安価に施工することができる。
【0012】
また、本発明に係る杭頭接合構造では、前記接続部は、前記鋼管の内部に充填されたコンクリートを有することが望ましい。
このような構成とすることにより、鋼管下端で杭のコンクリートに対し、一般的な圧縮強度の2倍以上の支圧強度で圧縮力を伝達できる。
【0013】
また、本発明に係る杭頭接合構造では、前記鋼管には、前記杭に埋設される下部側における外周面に径方向外側に突出する第1突起部が設けられていてもよい。
このような構成とすることにより、鋼管から杭コンクリートに支圧を介して引張り軸力を伝達できる。
【0014】
また、本発明に係る杭頭接合構造では、前記鋼管には、前記基礎部に埋設される上部側における外周面に径方向外側に突出する第2突起部が設けられていてもよい。
このような構成とすることにより、鋼管から基礎コンクリートに支圧を介して引張り軸力を伝達できる。
【0015】
また、本発明に係る杭頭接合構造では、前記杭の外周部と前記基礎部との間には、スタイロフォームが設けられていてもよい。
このような構成とすることにより、容易かつ安価に杭の外周部と基礎部とを軸力が伝達しないように絶縁することができる。
【0016】
また、請求項6に記載の本発明に係る杭頭接合方法では、上記の杭頭接合構造を施工する杭頭接合方法において、前記杭を打設する杭打設工程と、前記鋼管を建て込む鋼管建て込み工程と、前記基礎部を打設する基礎部打設工程と、を有し、前記鋼管建て込み工程は、前記杭打設工程に先行して行うことを特徴とする。
このような構成とすることにより、鋼管を杭鉄筋で位置保持することできるため、鋼管および杭の施工を容易に行うことができる。
【0017】
また、請求項7に記載の本発明に係る杭頭接合方法では、上記の杭頭接合構造を施工する杭頭接合方法において、前記杭を打設する杭打設工程と、前記鋼管を建て込む鋼管建て込み工程と、前記基礎部を打設する基礎部打設工程と、を有し、前記杭打設工程は、前記杭のコンクリートを打設する杭コンクリート打設工程を有し、前記鋼管建て込み工程は、前記杭コンクリート打設工程の後で前記杭のコンクリートが硬化する前に、前記杭のコンクリートに前記鋼管を建て込むことを特徴とする。
このような構成とすることにより、杭コンクリートを打設する際のトレミー管と鋼管との干渉が生じないため、鋼管および杭の施工を容易に行うことができる。
【0018】
また、本発明に係る杭頭接合方法では、前記鋼管建て込み工程では、前記鋼管の高さ方向の2か所それぞれにおいて、互いに直交する2つの水平方向の位置をジャッキで制御してもよい。
このような構成とすることにより、鋼管の姿勢を容易に鉛直に保持することができ、鋼管の鉛直精度を確保することができる。
【0019】
また、本発明に係る杭頭接合方法では、前記基礎部を打設する基礎部打設工程の前に、前記杭本体の上かつ前記断面縮小部が形成される断面縮小部形成領域の周囲にスタイロフォームを敷設するスタイロフォーム設置工程と、断面縮小部形成領域にコンクリートを打設する断面縮小部形成工程と、を有し、前記基礎部打設工程では、前記断面縮小部と前記スタイロフォームの上方に前記基礎部を打設してもよい。
このような構成とすることにより、容易かつ安価に断面縮小部を形成できるとともに、杭の外周部と基礎部とを軸力が伝達しないように絶縁することができる。
断面縮小部のコンクリート強度と基礎部のコンクリート強度が同じであれば、断面縮小部のコンクリートの打設と基礎部のコンクリートの打設を同時に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、杭頭接合部の固定度を低下させ半剛接合としつつ、接続部で基礎部からの圧縮軸力を負担することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態による杭頭接合構造の一例を示す鉛直断面図である。
【
図2】
図1のA-A線断面に対応する杭頭接合構造の水平断面図である。
【
図3】
図1のB-B線断面に対応する杭頭接合構造の水平断面図である。
【
図4】
図1のC-C線断面に対応する杭頭接合構造の水平断面図である。
【
図5】
図1のD-D線断面に対応する杭頭接合構造の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態による杭頭接合構造および杭頭接合方法について、
図1-
図5に基づいて説明する。
(杭頭接合構造)
図1-
図5に示すように、本実施形態による杭頭接合構造1は、杭2と、杭2の杭頭部21の上部に設けられる基礎部3と、上下方向に延び、下部側が杭2に埋設され上部側が基礎部3に埋設される接続部4と、を有している。
【0023】
杭2は、上下方向に延びる円柱状の場所打ちコンクリート杭で、杭本体27と、杭本体27と同軸に設けられ杭本体27の中央部から上方に突出する断面縮小部26と、を有している。
杭本体27の外周部25には、杭主筋22および杭帯筋23が配筋されている。本実施形態では、杭径(杭2の径、杭本体27の径)は、2400mmに設定されている。
図1および
図3に示すように、杭2は、上下方向から見た平面視における中央部24の断面縮小部26が基礎部3と接触し、外周部25は、基礎部3と接触しないように構成されている。
本実施形態では、断面縮小部26の外径は、杭径の0.6倍以上0.7倍以下で、1600mmとしている。
【0024】
基礎部3は、鉄筋コンクリートの基礎で、水平断面形状が杭2の水平断面形状よりも大きい直方体状に形成されている。平面視において、基礎部3の中心は、杭2の中心の上方に位置している。
基礎部3は、杭2の断面縮小部26と接触している。基礎部3と杭本体27の外周部25との間には、板状のスタイロフォーム5が設けられ、基礎部3と杭本体27の外周部25とは絶縁されている。
基礎部3は、断面縮小部26と軸力伝達可能に接続され、杭本体27の外周部25と軸力伝達不能に絶縁されている。
杭主筋22は、杭2に留められ、基礎部3と接合されていない。
【0025】
接続部4は、外周部25に設けられ上下方向に延びる鋼管41と、鋼管41の内部に充填される接続部コンクリート42と、を有している。
鋼管41上端部には、鋼管41の外形よりも大きいトッププレート43(
図1参照)が設けられている。
鋼管41の外周面の下端部分には、鋼管41の周方向全体にわたって外側に突出する帯状の外周突起44(第1突起部、
図1および
図5参照)が設けられている。
鋼管41の外周面の下部側における外周突起44が設けられている部分よりも上方の部分には、頭付きスタッド45(第1突起部、
図1および
図4参照)が上下方向および鋼管41の周方向に間隔をあけて複数設けられている。
外周突起44や頭付きスタッド45は、杭2に想定される軸力(引張力や圧縮力)から数や形状を設定する。
鋼管41の外周面の上部側にも、外側に突出する外周突起や頭付きスタッド(第2突起部)が設けられていてもよい。
【0026】
本実施形態では、鋼管41の外径は、500mm(杭径の1/6倍以上1/3倍以下の長さ)に設定されている。
接続部4の水平断面形状は、断面縮小部26の平面形状よりも小さく設定されている。
鋼管41(接続部4)は、杭2および基礎部3それぞれに鋼管41の外径の5倍程度(本実施形態では2500mm程度)埋設されている。
【0027】
このような杭頭接合構造1では、基礎部3から杭2に伝達する圧縮軸力は、基礎部3と断面縮小部26とが接触する範囲のコンクリート、および接続部4の双方で処理し、引張り軸力は接続部4の鋼管41で処理するように構成されている。
【0028】
(杭頭接合方法)
上記の杭頭接合構造1は、杭2を打設し(杭打設工程)、鋼管41を建て込み(鋼管建て込み工程)、基礎部3を打設する(基礎部打設工程)。
本実施形態では、鋼管建て込み工程を、杭打設工程に先行して行い、鋼管41が建て込まれた後に杭2のコンクリートを打設する。鋼管41の外径が杭2径の1/3倍~1/6倍と小さいため、鋼管41が杭2のコンクリートを打設する際のトレミー管の障害とならない。
杭打設工程では、杭本体27の部分を打設し、断面縮小部26は形成しない。杭打設工程では、上端面が杭本体27の上端面よりも上方に位置するように杭2を打設し、杭2の上端を平坦面とする。
なお、鋼管建て込み工程は、杭打設工程の杭2のコンクリートが打設された後とし、杭2のコンクリートが硬化する前に杭2のコンクリート内に鋼管41を挿入するようにしてもよい。
【0029】
鋼管41の内部には、気中で接続部コンクリート42を充填する。
鋼管建て込み工程では、鋼管41の上端部のトッププレート43の上に仮設吊り込み鋼材を取り付けて行ってもよい。
鋼管41の外周部25に設けられる第1突起部(外周突起44および頭付きスタッド45)や第2突起部は、鋼管41を製作する際に予め取り付けてもよいし、鋼管41を建て込む前に現場にて取り付けてもよい。
鋼管建て込み工程では、鋼管41の高さ方向の2か所それぞれにおいて、互いに直交する2つの水平方向の位置をジャッキで制御して、鋼管41の姿勢を鉛直に保持し、鋼管41の鉛直精度を確保するようにしてもよい。
【0030】
上述しているように、本実施形態では、杭打設工程では、杭2の上端に断面縮小部26が形成されていない。このため、基礎部打設工程の前に、スタイロフォーム5を敷設するスタイロフォーム設置工程と、断面縮小部26を形成する断面縮小部形成工程と、を行う。
スタイロフォーム設置工程では、杭打設工程で打設された杭本体27の上かつ断面縮小部26が形成される断面縮小部形成領域の周囲にスタイロフォーム5を敷設する。スタイロフォーム5は、断面縮小部形成領域に穴(空隙)部を形成するように敷設される。すなわち、断面縮小部形成領域はスタイロフォーム5に周囲が囲まれている。
スタイロフォーム5は、杭本体27の外周よりも外側にはみ出してもよい。
本実施形態では、外形が1500mm角の板状のスタイロフォームに断面縮小部26に対応する切り欠き部を形成したスタイロフォーム5を、断面縮小部26が形成される断面縮小部形成領域を囲むように4つ並べる。これらの4つのスタイロフォーム5は、外形が3000mm角の正方形を形成している。
断面縮小部形成工程では、スタイロフォーム5に囲まれた断面縮小部形成領域にコンクリートを打設し、断面縮小部26を形成する。
【0031】
基礎部打設工程では、断面縮小部26およびスタイロフォーム5の上部に基礎部3のコンクリートを打設し、基礎部3を構築する。基礎部3には、接続部4の上部側を埋設する。なお、断面縮小部26のコンクリートの打設(断面縮小部形成工程)と、基礎部3のコンクリートの打設(基礎部打設工程)とを同時に行うことができる。
基礎部3は、杭2の断面縮小部26(中央部24)のみで軸力伝達可能に接続され、杭2の外周部25では接続されず軸力を伝達しないように構成されている。
【0032】
次に、上記の実施形態による杭頭接合構造1および杭頭接合方法の作用・効果について説明する。
上記の実施形態による杭頭接合構造1および杭頭接合方法では、断面縮小部26の外径が杭径の0.6倍以上0.7倍以下であり、鋼管41の外径が杭径の1/6倍以上1/3倍以下であり、接続部4の鋼管41で基礎部3からの圧縮軸力を負担する。
これにより、杭2の断面縮小部26に作用する圧縮軸力が低減され、めりこみを防止するため杭頭部21に高強度コンクリートを打設する必要が無く、合理的な構造を実現することができる。
【0033】
その結果、杭頭部21から下方に掘削して斫り、杭頭部21に型枠を設置して気中で高強度コンクリートを打設するといった煩雑な作業がなくなり、施工性が大幅に向上する。
接続部4の鋼管41で圧縮軸力を負担することにより、杭2の断面縮小部26に作用する圧縮軸力が低減され、コンクリート断面を小さくして固定度を低下することができる。
一般的な杭頭部で全断面が基礎に接する形態では、コンクリートの破損(圧壊)が生じず全断面圧縮状態であるかぎり、杭頭固定(剛接合)と同じになるが、上記の実施形態では、接触面積が縮小されているため杭頭半剛接合となる。
【0034】
断面縮小部26の外径が大きく、その値が杭径に近い値(杭径の1倍に近い値)となるほど、杭頭固定の杭頭接合構造に近づくことになる。このため、断面縮小部26の外径を杭体の0.7倍以下とすることで杭頭半剛接合の杭頭接合構造を実現することができる。更に、断面縮小部26の外径が小さすぎると、圧縮応力度が過大になり、断面縮小部26またはこれに接する杭本体27のコンクリートがもたなくなってしまう。このため、断面縮小部26の外径を杭体の0.6倍以上0.7倍以下に設定している。
また、接続部4の鋼管41を杭2の中央部に設けていることにより、鋼管41の周囲に杭2のコンクリート打設用のトレミー管を配置する場合には、断面縮小部26の外径を杭体の0.6倍程度とすることが好ましい。
【0035】
鋼管41の外径を杭径の1/6倍~1/3倍として、鋼管41の外径に幅があることにより、杭2に作用する軸力の変動幅(長期軸力と地震時変動軸力)や鋼管41の肉厚に対応させて所望の外径の鋼管41を選択することができる。例えば、鋼管41は、外径を大きくして肉厚を小さくした方が経済的となることもあるため、コストの面からも鋼管径を設定することができる。
【0036】
なお、上記の実施形態では、接続部4の鋼管41は、杭2の断面中央部にあることから、杭頭曲げ剛性の増大にはほとんど寄与しない。
杭2の断面縮小部26のコンクリートも圧縮軸力を負担することにより、接続部4の鋼管41が負担する圧縮軸力は杭2軸力よりも小さくなる。
これにより、鋼材で全て圧縮軸力を負担する構造と比べて、接続部4の鋼管41の断面を縮小でき合理的な構造となり、安価に施工することもできる。
【0037】
接続部4の鋼管41が引張り軸力を負担するので、杭2が基礎と離間してしまうことがない。
従来のように接続部4の鋼管41がなくコンクリート断面だけで接合した場合は、杭2に作用する軸力が小さくなると杭頭接合部のせん断耐力が小さくなる(引張りの場合はさらに低下)が、本実施形態では、接続部4の鋼管41のせん断耐力が大きいため杭2に作用する軸力が小さくなってもせん断耐力を保持できる。そのため、軸力によらずせん断耐力を確保できる。
【0038】
従来、接続部4の鋼管41のかわりに「ずれ止め筋」と称する両端にフックの付いた鉄筋を杭2と基礎との間に設置する形態が知られているが、鉄筋の断面積は接続部4の鋼管41の断面積と比べると圧倒的に小さく(ずれ止め筋が4本のD32で7.94×4=31.8cm2に対し、接続部4の鋼管41(φ500×22が330cm2)、現在多用されている場所打ち杭2に作用するせん断力が5000kN以上となることや引張り軸力が作用する場合もあることを考慮すると、この応力を鉄筋で処理することは許容応力度を大幅に超過することから不合理である。また、ずれ止め鉄筋の曲げ剛性は接続部4の鋼管41に比べると桁違いに小さく、杭2と基礎との接触面の近傍でわずかなひび割れがあると曲げ変形してしまう。結局、ずれ止め鉄筋は基礎と杭2との相対水平変位を完全に拘束することはできず、大きな相対変位を生じ難くするだけのものといえる。
従来のように杭頭から基礎にアンカーされる鉄筋がないため、基礎や基礎梁鉄筋と干渉するおそれがない。接続部4の鋼管41は断面寸法が小さいので、干渉しないように基礎配筋をずらすことは容易にできる。
【0039】
また、上記の実施形態による杭頭接合構造1では、接続部4は、鋼管41の内部に充填されたコンクリートを有していることにより、鋼管41下端で杭2のコンクリートに鋼管41径の円形断面に対し、一般的な圧縮強度の2倍以上の支圧強度で圧縮力を伝達できる。
【0040】
また、上記の実施形態による杭頭接合構造1では、鋼管41には、杭2に埋設される下部側における外周面に径方向外側に突出する第1突起部(外周突起44、頭付きスタッド45)が設けられていることにより、鋼管41から杭2に軸力を伝達できる。
鋼管41下部に外周突起44を設けることで、杭2に引張り軸力が作用しても外周突起44と杭主筋22との間にある杭2のコンクリートの圧縮を介して円滑に杭主筋22に応力伝達できる。
【0041】
また、上記の実施形態による杭頭接合構造1では、鋼管41には、基礎部3に埋設される上部側における外周面に径方向外側に突出する第2突起部が設けられていると、基礎部3から鋼管41に軸力を伝達できる。
【0042】
また、上記の実施形態による杭頭接合方法では、杭2の外周部25と基礎部3との間には、スタイロフォーム5が設けられていることにより、容易かつ安価に杭2の外周部25と基礎部3とを軸力伝達不能に絶縁することができる。
【0043】
また、上記の実施形態による杭頭接合方法では、鋼管建て込み工程を杭打設工程に先行して行うことにより、鋼管41および杭2の施工を容易に行うことができる。
【0044】
また、上記の実施形態による杭頭接合方法では、鋼管建て込み工程を杭2のコンクリートを打設した後で杭2のコンクリートが硬化する前に、杭2のコンクリート内に鋼管41を挿入するようにしても、鋼管41および杭2の施工を容易に行うことができる。
【0045】
また、上記の実施形態による杭頭接合方法では、鋼管建て込み工程では、鋼管41の高さ方向の2か所それぞれにおいて、互いに直交する2つの水平方向の位置をジャッキで制御することにより、鋼管41の姿勢を容易に鉛直に保持することができ、鋼管41の鉛直精度を確保することができる。
【0046】
また、上記の実施形態による杭頭接合方法では、杭打設工程では、断面縮小部26を形成せず、基礎部3を打設する基礎部打設工程の前に、杭本体27の上かつ断面縮小部26が形成される断面縮小部形成領域の周囲にスタイロフォーム5を敷設するスタイロフォーム設置工程と、断面縮小部形成領域にコンクリートを打設する断面縮小部形成工程と、を行い、基礎部打設工程では、断面縮小部26とスタイロフォーム5の上方に基礎部3を打設している。
このような構成とすることにより、容易かつ安価に断面縮小部26を形成できるとともに、杭2の外周部25と基礎部3とを軸力が伝達しないように絶縁することができる。
断面縮小部26のコンクリート強度と基礎部3のコンクリート強度が同じであれば、断面縮小部26のコンクリートの打設と基礎部3のコンクリートの打設を同時に行うことができる。
【0047】
以上、本発明による杭頭接合構造1および杭頭接合方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、接続部4の鋼管41の内部には接続部コンクリート42が充填されているが、接続部4の鋼管41の内部にコンクリートが充填されていなくてもよい。
上記の実施形態では、鋼管41には、杭2に埋設される下部側における外周面に径方向外側に突出する第1突起部が設けられているが、第1突起部が設けられていなくてもよい。
【0048】
上記の実施形態では、杭2の外周部25と基礎部3との間には、スタイロフォーム5が設けられているが、外周部25と基礎部3とを軸力が伝達しないように絶縁してあれば、スタイロフォーム5以外のものが設けられていてもよい。
【0049】
また、上記の実施形態では、鋼管建て込み工程では、鋼管41の高さ方向の2か所それぞれにおいて、互いに直交する2つの水平方向の位置をジャッキで制御して鋼管41の姿勢を制御しているが、鋼管41の姿勢の制御は必須ではなく上記以外でもよい。
【0050】
上記の実施形態による杭頭接合方法では、杭本体27の上かつ断面縮小部26が形成される断面縮小部形成領域の周囲にスタイロフォーム5を敷設し、断面縮小部形成領域にコンクリートを打設して断面縮小部を形成している。これに対し、断面縮小部26を形成する方法は上記以外であってもよい。
また、杭打設工程では、上面が杭本体27の上面よりも上側となるように杭を打設し、スタイロフォーム5を敷設する前に、上面が杭本体27の上面となるように杭打設工程で打設した杭の上部を斫ってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 杭頭接合構造
2 杭
3 基礎部
4 接続部
5 スタイロフォーム
21 杭頭部
24 中央部
25 外周部
26 断面縮小部
27 杭本体
41 鋼管
42 接続部コンクリート(コンクリート)
44 外周突起(第1突起部)
45 頭付きスタッド