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特許7409850電極カテーテル用導線及びそれを含む電極カテーテル
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  • 特許-電極カテーテル用導線及びそれを含む電極カテーテル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】電極カテーテル用導線及びそれを含む電極カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/271 20210101AFI20231226BHJP
   A61B 5/263 20210101ALI20231226BHJP
   A61B 5/283 20210101ALI20231226BHJP
【FI】
A61B5/271
A61B5/263
A61B5/283
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019221566
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021090501
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390005050
【氏名又は名称】ダイキンファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100190713
【弁理士】
【氏名又は名称】津村 祐子
(72)【発明者】
【氏名】松井 良平
(72)【発明者】
【氏名】山本 大介
(72)【発明者】
【氏名】川戸 進
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/156059(WO,A1)
【文献】特開2000-107296(JP,A)
【文献】米国特許第4810543(US,A)
【文献】実開昭50-093494(JP,U)
【文献】特開2016-137020(JP,A)
【文献】特開2016-137019(JP,A)
【文献】特開平09-000499(JP,A)
【文献】特開平09-253063(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0077687(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/25-5/297
A61B 18/12-18/16
A61M 25/00-25/18
A61N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体と、前記筒体の外側に配置される外部電極とを有する電極カテーテルの前記筒体の内部に配置され、前記外部電極に電気的に接続されて用いられる電極カテーテル用導線であって、
前記導線は、金属線と、金属線の外側を被覆する樹脂コーティングを含み、
前記金属線は、炭素鋼からなり、6.0~10.0N/mmの座屈強度を有し、
前記導線は、ポリテトラフルオロエチレンに対して0.094~0.163の静摩擦係数を有し、
前記導線の直径は、0.03~0.1mmであり、
前記樹脂コーティングは、フッ素系樹脂またはポリアミドイミド樹脂を含み、
前記樹脂コーティングの厚さは、3~10μmである、電極カテーテル用導線。
【請求項2】
前記金属線が、炭素を0.5~1.0質量%含む、請求項1に記載の電極カテーテル用導線。
【請求項3】
前記金属線が、メッキ処理されている、請求項1又は2に記載の電極カテーテル用導線。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の電極カテーテル用導線を有する、電極カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極カテーテル用導線に関し、さらに詳しくは、筒体と、前記筒体の外側に配置される外部電極とを有する電極カテーテルに用いられる電極カテーテル用導線に関する。
【背景技術】
【0002】
電極カテーテルは、血管を通して体内(例えば、心臓の内部)に入れられて、心臓内の電位測定を行い、不整脈の検査及び治療等に使用される、低侵襲の医療器具である。電極カテーテルは、一般に、内腔を有する筒体、その筒体の外側に配される先端電極や複数のリング電極等の外部電極、及び、それらの外部電極と電気的に接続される複数の導線を筒体の内腔に有し、それらの導線は、筒体の内腔を通って、電極カテーテル外部の心電図計に接続される。
【0003】
心臓内の様々な部分を検査できるように、先端のカーブ形状、外部電極の数及び位置、太さ等について種々の種類の電極カテーテルが製造されている。体内に入れられた電極カテーテルの先端(遠位端)付近の形状は、体外に配置される端部(近位端)に設けられた操作部による操作によって、変化(変形)するように形成されている(特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-96874号公報
【文献】特開2016-137019号公報
【文献】特開2016-137020号公報
【文献】特開2017-148472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、検査精度の向上や作業性向上を目的として、電極カテーテルの筒体の外側に、より多くの外部電極を組み込むことが行われている。従って、外部電極と電気的に接続される導線もより多く組み込むことが必要である。導線の数を増やすために電極カテーテルの外径を大きくすることは、低侵襲性を維持することから避けなければならないので、導線の直径を、細くすることが必要である。一方、それらの導線は、相互に絡み合うことなく筒体の内腔を近位端から遠位端まで通すことができること(真直性)が必要である。更に、導線同士が側方で電気的に短絡(ショート)しないこと(絶縁性)が必要である。
【0006】
従って、本発明は、真直性に優れ、側方での絶縁性に優れ、より細い直径を有することを可能とする、電極カテーテル用導線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、金属線と、金属線の外側を被覆する樹脂コーティングを含む、導線であって、前記金属線は、特定の破断強度を有し、前記導線は、特定の表面抵抗力を有する場合、真直性に優れ、側方での絶縁性に優れ、より細い直径を有することを可能とする、電極カテーテル用導線を提供可能なことを見出した。更に、そのような電極カテーテル用導線は、電極カテーテル用途に好適であることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本明細書は、筒体と、前記筒体の外側に配置される外部電極とを有する電極カテーテルの前記筒体の内部に配置され、前記外部電極に電気的に接続されて用いられる電極カテーテル用導線であって、前記導線は、金属線と、金属線の外側を被覆する樹脂コーティングを含み、前記金属線は、5.0~15.0N/mmの座屈強度を有し、前記導線は、0.3以下の静摩擦係数を有する、電極カテーテル用導線、及び当該電極カテーテル用導線を有する、電極カテーテルを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態の電極カテーテル用導線は、真直性に優れ、側方での絶縁性に優れ、より細い直径を有することができる。よって、本発明の実施形態の電極カテーテル用導線は、より多数の外部電極を配した電極カテーテルを製造するために好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態の電極カテーテルを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態の電極カテーテル用導線は、筒体と、前記筒体の外側に配置される外部電極とを有する電極カテーテルの前記筒体の内部に配置され、前記外部電極に電気的に接続されて用いられる電極カテーテル用導線であって、前記導線は、金属線と、金属線の外側を被覆する樹脂コーティングを含み、前記金属線は、5.0~15.0N/mmの座屈強度を有し、前記導線は、0.3以下の静摩擦係数を有する。
【0012】
本明細書において、電極カテーテルとは、一般に、血管を通して体内(例えば、心臓の内部)に入れられて、心臓内の電位測定を行い、不整脈の検査及び治療等に使用される、低侵襲の医療器具である。電極カテーテルは、一般に、内腔を有する筒体、その筒体の外側に配される先端電極及び複数のリング電極等の少なくともいずれかの外部電極、及び、筒体の内腔に位置する導線を備え、導線は、外部電極と電気的に接続され、また電極カテーテル外部の心電図計等に接続される。本発明の実施形態の導線を使用できる限り、電極カテーテルは、特に制限されることはない。
【0013】
電極カテーテルは、例えば、特許文献1~4に例示された電極カテーテルであってよく、具体的には、日本ライフライン株式会社製のアブレーションカテーテル(商品名)Ablazeシリーズ、EP電極カテーテル(商品名)EPstarシリーズ、JLL食道温モニタリングシステム(商品名)Esophastar、NRGRFトランスセプタニードル(商品名)、セント・ジュード・メディカル株式会社製のFlexAbilityイリゲーションカテーテル(商品名)、CoolFlexイリゲーションカテーテル(商品名)、IBIカーディアックアブレーションシステムII等を例示することができる。
【0014】
本発明の実施形態の電極カテーテル用導線は、電極カテーテルが有する筒体の内部に配置されて、前記外部電極に電気的に接続される。
本発明の実施形態において、筒体とは、遠位端側から患者の体内に挿入される部分である。筒体は内腔を有する筒状体であり、体腔内の形状に沿って屈曲する可撓性と、処置対象となる体内組織まで確実に到達する剛性の両方をバランス良く兼ね備えることが望ましい。筒体は、例えば単筒構造でもよいし、直径の異なる複数の同心円状の筒体から形成される多重筒構造であってもよい。
【0015】
筒体は、例えば、ポリウレタン樹脂、オレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂で形成することができる。また、筒体は、剛性の異なる樹脂を積層して形成してよいし、樹脂層と金属及び/又は樹脂製の素線を用いて形成されたコイル又は編組の補強層で形成してもよい。
【0016】
電極カテーテルは、血管、例えば、患者の静脈または動脈から心臓内に挿入される。従って、筒体の外径は0.5mm以上であることが好ましく、0.8mm以上であることがより好ましく、1.0mm以上であることがさらに好ましい。筒体の外径は、例えば3.0mm以下であることが好ましく、2.7 mm以下であることがより好ましく、2.4mm以下であることがさらに好ましい。
【0017】
一方、筒体の内腔に、導線が配置される。従って、筒体の可撓性及び剛性と、筒体内における導線が配置される空間を確保するために、筒体の内径は、 例えば0.3mm以上であることが好ましく、0.7mm以上であることがより好ましく、1.5 mm以上であることがさらに好ましい。また、筒体の内径は、2.2mm以下であることが好ましく、2.0mm以下であることがより好ましく、1.7mm以下であることがさらに好ましい。
【0018】
筒体の内腔表面は、導線をより配置し易くし、また導線との接触による電極カテーテルの先端部の可動阻害を低減するために、樹脂コーティングがされていてもよい。当該樹脂コーティングに用いられる樹脂は、後述する金属線の外側を被覆する樹脂コーティングと同種の樹脂を用いることができる。
【0019】
外部電極として、例えば、先端電極及びリング電極等が挙げられる。これらのすくなくともいずれかの外部電極を心内膜に接触させ、一時ペーシングを実施したり、心腔内電位を検出したりする。先端電極は、筒体の遠位端(先端)の外側に配置される。リング電極は、筒体の遠位端(先端)付近の外側外周に配置される。筒体の遠位端に中空円筒状の先端部を設けて、その外側にリング電極を設けることもできる。本明細書において、遠位端の外側とは、遠位端の先端に設けられた先端部の外側を含む。外部電極は、上述のように使用され、導線と電気的に接続される限り、特に制限されることはなく、その形状、大きさ等は、適宜選択することができる。
【0020】
外部電極は、導電性を有していればよく、例えば、金属、導電性樹脂、金属と導電性樹脂の混合物等から構成することができる。リング電極は、導電性樹脂、白金、白金イリジウム合金、ステンレス、タングステンを用いることが好ましい。導電性樹脂を用いる場合、X線透視下で目視可能とするために、硫酸バリウムや酸化ビスマス等の造影剤を導電性樹脂に混合することが好ましい。
【0021】
リング電極の個数は特に限定されないが、複数であることが好ましい。リング電極は筒体内に配置される導線と電気的に接続される。従って、リング電極の個数は筒体内に配置される導線の本数と、導線の外径に依存する。電極カテーテルが複数のリング電極を有する場合、各リング電極の電位を別々に測定するために、1つのリング電極と電気的に接続される導線の本数は、1本であることが好ましい。
【0022】
リング電極の幅は、例えば、1mm以上、4mm以下とすることができる。また、リ ング電極の厚みは、例えば0.3mm以上、0.7mm以下とすることができる。
【0023】
導線は、筒体の内部に配置されて、前記外部電極に電気的に接続される。導線は、外部電極と電極カテーテルの外部機器、例えば、心電図計等を電気的に接続する。
【0024】
導線は、金属線と、金属線の外側を被覆する樹脂コーティングを含み、両端部以外の部分は、隣接する部材と短絡しないようにされている。
金属線は、5.0~15.0N/mmの座屈強度を有することが好ましい。金属線は、5.5~12.0N/mmの座屈強度を有することがより好ましく、6.0~10.0N/mmの座屈強度を有することが更に好ましい。金属線は、5.0~15.0N/mmの座屈強度を有する導電性材料であれば、特に制限されることはない。そのような金属線として、例えば、ピアノ線、炭素鋼線、タングステン鋼線等を使用することができる。
金属線は、5.0~15.0N/mmの座屈強度を有する場合、筒体の内腔に導線を挿入することを容易にし、作業効率の改善と導線設置本数の増加ができるという有利な効果を奏する。
【0025】
金属線は、炭素を0.5~1.0質量%含むことが好ましく、0.6~0.95質量%含むことがより好ましく、0.65~0.90質量%含むことが更に好ましい。金属線は、炭素を0.5~1.0質量%含む場合、筒体の内腔に導線を挿入することを容易にし、作業効率の改善と導線設置本数の増加ができるという有利な効果を奏することができる。
【0026】
金属線は、めっき処理されていることが好ましい。めっき処理は、通常公知のめっき処理であれば特に制限されることはないが、例えば、溶融めっき処理、気相めっき処理、電気めっき処理、化学めっき処理等を例示することができる。金属線は、めっき処理されている場合、導線の電気抵抗値を低下させ、電気的応答速度を向上させ得るという有利な効果を奏する。
【0027】
金属線の外側を被覆する樹脂コーティングは、導線の側面が他の部材と短絡することを防止し、かつ、導線に滑り性を付与可能であり、本発明が目的とする電極カテーテルを得ることができれば、特に制限されることはない。そのような樹脂コーティングのための樹脂として、例えば、フッ素系樹脂、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)等を例示することができる。これらはそれぞれ樹脂被覆塗料として使用可能な通常の市販品を用いることができる。
【0028】
フッ素系樹脂として、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性ポリテトラフルオロエチレン(変性PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フルオロエチレン・ビニルエーテル(FEVE)およびポリフッ化ビニル(PVF)から選択される少なくとも1種を例示することができる。
【0029】
フッ素系樹脂として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性ポリテトラフルオロエチレン(変性PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フルオロエチレン・ビニルエーテル(FEVE)が好ましく、変性ポリテトラフルオロエチレン(変性PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フルオロエチレン・ビニルエーテル(FEVE)がより好ましい。
【0030】
樹脂は、それぞれ単独で又は二種以上を混合し若しくは積層して用いることができる。
【0031】
樹脂コーティングの厚さは、特に制限されることはないが、例えば、3~20μmであってよく、4~15μmであってよく、5~10μmであってよい。
【0032】
導線は、PTFEに対して0.3以下の静摩擦係数を有することが好ましく、0.01~0.2の静摩擦係数を有することがより好ましく、0.05~0.1の静摩擦係数を有することが更に好ましい。導線は、0.3以下の静摩擦係数を有する場合、筒体の内腔に導線を挿入することを容易にし、作業効率の改善と導線設置本数の増加ができるという有利な効果を奏する。
【0033】
導線は、0.01~0.5mmの直径を有することが好ましく、0.02~0.3mmの直径を有することがより好ましく、0.03~0.1mmの直径を有することが更に好ましい。導線は、0.01~0.5mmの直径を有する場合、より多くの導線を設置することができ、電極カテーテルをより多電極化することができるという有利な効果を奏する。
【0034】
本発明の実施形態において、上述の導線を有する、電極カテーテルを提供することができる。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態の電極カテーテル(電極カテーテル1)を模式的に示すが、図示した形態に制限されることはない。電極カテーテル1は、血管を通して体内(例えば、心臓の内部)に挿入され、不整脈の検査や治療等に用いられるものである。この電極 カテーテル1は、長尺状の筒体20(カテーテル本体、カテーテルチューブ、カテーテルシャフト)と、筒体20の近位端にハンドル30を有する。
【0036】
筒体20は、可撓性を有する管状構造(中空のチューブ状部材)からなり、自身の軸方向に沿って、伸びる。具体的には、筒体20の軸方向の長さは、ハンドル30の軸方向の長さと比べて数倍~数十倍程度、長くてよい。なお、筒体20は、その軸方向に向かって同じ 特性のチューブで構成されていてもよいが、比較的可撓性に優れた先端部分と、この先端部分に対して軸方向に一体に形成されると共に先端部分よりも比較的に剛性のある基端部分とを有してもよい。
【0037】
筒体20は、その軸方向に沿って延在するように内部に1つの内腔(ルーメン、内孔、貫通孔)が形成された、いわゆるシングルルーメン構造、あるいは複数(例えば4つ)の内腔が形成された、いわゆるマルチルーメン構造を有してよい。筒体20は、その内部に操作用ワイヤ(図示せず)を有することができる。
【0038】
筒体20は、その遠位端に先端部22を有する。筒体20は、先端部22を有さなくてもよい。先端部22は、円形状の形態を有するが、直線状であってもよく、適宜その形状を選択することができる。筒体20の遠位端の外側及び/又は先端部22に外部電極(図示せず)を有する。その外部電極に導線(図示せず)が電気的に接続される。
【0039】
ハンドル30は、電極カテーテルを操作するために使用されるハンドルであり、その形状及び大きさ等、特に制限されることはないが、例えば、図1に示すように、その軸方向に沿って伸びる把持部32(ハンドル本体、グリップ)と、この把持部32に対して軸方向にスライド可能に装着された操作部34(ノブ)とを有する。把持部32と操作部34を用いて、電極カテーテル1を操作することができる。把持部32及び操作部34の形状及び大きさ等、適宜選択することができる。
【実施例
【0040】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0041】
本実施例で使用した材料を以下に示す。
(A)金属線
(A1)0.069mmの直径を有する炭素鋼でできた金属線(ピアノ線)であって、表面に銅メッキが施されている金属線(株式会社SKKテクノロジー製銅めっきピアノ線)
(A2)0.064mmの直径を有するSUSでできた金属線であって、表面に銅メッキが施されている金属線(株式会社SKKテクノロジー製銅めっきSUS線)
(B)コーティング樹脂層
(B1)フッ素樹脂(AGC株式会社製のルミフロン(登録商標)(商品名)、FEVEに該当する)
(B2)ポリアミドイミド樹脂(日立化成株式会社社製のHPC-1000(商品名))
【0042】
実施例1
金属線(A1)の表面にフッ素樹脂(B1)を連続塗装法によりコーティングして、コーティング樹脂層(B1)を有する導線を製造した。得られた導線の外径は0.08mmであった。
【0043】
実施例2
実施例1において、(B1)の代わりに、ポリアミドイミド樹脂(B2)を使用した他は、実施例1と同様の方法を使用して、コーティング樹脂層(B2)を有する導線を製造した。得られた導線の外径は0.08mmであった。
【0044】
比較例1
実施例2において、(A1)の代わりに、金属線(A2)を使用した他は、実施例2と同様の方法を使用して、コーティング樹脂層(B2)を有する導線を製造した。得られた導線の外径は0.08mmであった。
【0045】
実施例1~2及び比較例1の導線を、下記の方法を使用して、評価した。
すべり性(静摩擦係数の測定)
摩擦摩耗試験機 FPR-2100(株式会社レスカ製)を用いてピンオンディスク試験を実施した。PTFEでコーティングした測定ピン(材質:SUJ2、形状:円柱形状、直径3.5mm、長さ250mm)の底面を、コーティング樹脂(B1)又は(B2)をコーティングした板状矩形サンプル(100mm×100mm)に接地後、荷重(100g)条件下、速度(1rpm)、回転半径15mmで当該サンプルを回転して、静摩擦係数を測定した。
【0046】
座屈強度
縦型電動計測スタンドMX2-500N(株式会社イマダ製)を用いて座屈強度を測定した。測定に用いる金属線又は導線(長さ34mm)の各々の3本を束ねた。各束の両端をカプトンテープ(12mm幅)で固定し、テープで固定されていない金属線又は導線の各束の露出部を10mmとした。測定機のチャックでサンプル両端のテープ固定部(12mm)を保持し、速度10mm/minで圧縮した際の最大荷重を座屈強度とした。
【0047】
充填可能本数
PTFE製チューブ(長さ450mm、内径0.3mm)を、直線状になるように卓上にテープで固定し、導線(500mm)を、導線の両端部が25mmずつ露出するようにPTFE製チューブに挿入した。挿入した導線は移動しないようにその両端部をテープで固定後、挿入不可になるまで逐次その導線を挿入して、充填できた本数を数えた。
評価結果を、表1に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例1及び2の導線は、金属線と、金属線の外側を被覆する樹脂コーティングを含み、 前記金属線は、5.0~15.0N/mmの座屈強度を有し、前記導線は、PTFEに対して、0.3以下の静摩擦係数を有するので、電極カテーテル用導線として、真直性に優れ、側方での絶縁性に優れ、より細い直径を有することができる。よって、本発明の実施形態の電極カテーテル用導線は、より多数の外部電極を配した電極カテーテルを製造するために好適に使用することができる。
【0050】
一方、比較例1の導線は、3.5N/mmの座屈強度を有する。よって、比較例1の導線は、電極カテーテル用導線として、真直性に劣るので、より多数の外部電極を配した電極カテーテルを製造するために使用することができない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の実施形態の電極カテーテル用導線は、真直性に優れ、側方での絶縁性に優れ、より細い直径を有することができる。よって、本発明の実施形態の電極カテーテル用導線は、より多数の外部電極を配した電極カテーテルを製造するために好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 電極カテーテル、
20 筒体、
22 先端部
30 ハンドル
32 把持部
34 操作部
図1