(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】電力線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 3/54 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
H04B3/54
(21)【出願番号】P 2019225261
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】594178147
【氏名又は名称】山本 公義
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 公義
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-170369(JP,A)
【文献】特開2011-082802(JP,A)
【文献】特開2013-125642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源からの電力供給に用いられる電力線を利用した通信(PLC)システムであって、
変圧器により降圧された商用電力を宅内に供給する引込み電力線と、
前記引込み電力線に接続された電力量計と、
前記電力量計の2次側に接続され、交流電力を直流電力に変換するAC/DC電力変換装置と、
前記AC/DC電力変換装置からの電力線が1次側に接続された主幹ブレーカーと、前記主幹ブレーカーの2次側に接続された複数の分岐ブレーカーとを備え、前記AC/DC電力変換装置から供給される直流電力を
前記複数の分岐ブレーカーの2次側に接続された複数の宅内電力線に配電する配分電盤と、
前記複数の宅内電力線にPLCモデムを介して接続された複数の端末機と、
前記複数の分岐ブレーカーの各々の宅内電力線側に設けられ、直流電力信号にPLC信号を重畳する及び/又は直流電力信号からPLC信号を分離する複数の第1カプラーと、
前記複数の第1カプラーのうち所定の第1カプラーによって直流電力信号から分離されたPLC信号を他の第1カプラーによって直流電力信号に重畳してPLCを制御する制御部と、
を備え、
前記AC/DC電力変換装置が、前記電力量計を内部に備える筐体内に設けられ、
PLC信号が直流電力信号に重畳されて通信が行われることを特徴とするPLCシステム。
【請求項2】
前記電力量計が電力量の計測機能と通信機能とを有するものである請求項1記載のPLCシステム。
【請求項3】
前記主幹ブレーカーの1次側に設けられ、直流電力信号にPLC信号を重畳する及び/又は直流電力信号からPLC信号を分離する第2カプラーをさらに有し、
前記制御部は、前記第2カプラーによって直流電力信号から分離されたPLC信号を第1カプラーによって直流電力信号に重畳し、又は前記第1カプラーによって直流電力信号から分離されたPLC信号を第2カプラーによって直流電力信号に重畳してPLCを制御する請求項
1又は2記載のPLCシステム。
【請求項4】
前記制御部が前記筐体内に設けられている請求項
1~3のいずれかに記載のPLCシステム。
【請求項5】
蓄電池をさらに有し、
前記制御部は、商用電源からの電力供給が停止したとき、前記蓄電池から前記複数の分岐ブレーカーを介して宅内に電力を供給させる請求項
1~
4のいずれかに記載のPLCシステム。
【請求項6】
前記端末機は電力供給を受けるための差込プラグを有し、
前記宅内電力線の端部に前記差込プラグが接続可能な差込部を有するコンセントが設けられ、
前記コンセントは、直流電力を交流電力に変換するDC/AC電力変換装置及び/又は
直流電力の電圧を変換するDC/DC電力変換装置を備える請求項1~
5のいずれかに記載のPLCシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力線通信(PLC:Power Line Communication)システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
PLCは、AC100V、AC200Vなどの各家庭内に引き込まれている電力線に搬送波を重畳してデータ通信を行う技術である。
図5に示すように、家庭内の各部屋に配設されているコンセント92にPLCモデム91を接続することによってネットワークが構築される。PLCモデム91に設けられているプラグをコンセント92に差し込むとPLCモデム91に給電が行われて、通信信号としてのPLC信号が電力信号に重畳して送り出されると共に、電力信号に重畳されたPLC信号が電力信号から分離されて受け取られる。
【0003】
PLCモデム91によって電力信号に重畳されて電力線に出力されるPLC信号は家庭内に配設された宅内電力線PLを通って他のコンセント92に接続されたPLCモデム91により受信されるか、あるいは、電力量計WM及び引込み電力線11を通って屋外の変圧器TFの2次側に設けられた親PLCモデム(不図示)を経由して既設の光ファイバーなどの公衆回線94を介してインターネットに接続されサーバー96やデータベース97、携帯端末98などに送信される。
【0004】
一方、光ファイバーなどの公衆回線94から送られてきた通信信号は、変圧器TFの2次側に設けられた親PLCモデム(不図示)によって電力信号に重畳されて引込み電力線11及び電力量計WMを通って家庭内に送られ、コンセント92に接続されたPLCモデム91によって宅内電力線PLから取り出されパソコン等の家電機器で受信される。これにより、例えば、外出先からスマートフォンなどのSNS端末から自宅の家電製品のオンオフなどを行うことが可能となる。
【0005】
このようにPLCシステムは、一般家庭に既に設けられている引込み電力線11及び宅内に配設されている宅内電力線PLを通信回線として利用するものであり、需要者の負担の少ない通信回線を提供できる利点がある。
【0006】
変圧器TFから引込み電力線11によって家庭内に引き込まれた電力は配分電盤Dにおいて複数に分岐されてそれぞれコンセント92あるいは各種の宅内電気機器(端末機)に供給される。電気容量のチェックや屋内配線の安全確保などの観点から、配分電盤DにはリミッターLi、主幹ブレーカーBr及び複数個の分岐ブレーカー5が設置されており、宅内電力線PLはこれらのブレーカー5に接続している。なお、地域によっては配分電盤DにリミッターLiが設置されていない所もある。PLC信号はこれらの主幹ブレーカーBr及び分岐ブレーカー5を通る毎に減衰するので、PLCシステムでは信号電圧を増幅するための中継装置などを配分電盤等に配置する必要がある場合があった。
【0007】
そこで、PLC信号の減衰を抑制するために主幹ブレーカーBr及び分岐ブレーカー5を迂回してPLC信号の送受信を行う技術も提案されている(例えば特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-23505号公報
【文献】特開2010-62887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、主幹ブレーカーBr及び分岐ブレーカー5を迂回してPLC信号の送受信を行う場合であっても交流電力信号から分離したPLC信号には依然として多くのノイズが含まれるという問題があった。
【0010】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電力信号から分離したPLC信号に含まれるノイズをより低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成する本発明に係るPLCシステムは、商用電源からの電力供給に用いられる電力線を利用した通信(PLC)システムであって、変圧器により降圧された商用電力を宅内に供給する引込み電力線と、前記引込み電力線に接続された電力量計と、前記電力量計の2次側に接続され、交流電力を直流電力に変換するAC/DC電力変換装置と、前記AC/DC電力変換装置から供給される直流電力を複数の宅内電力線に配電する配分電盤と、前記複数の宅内電力線にPLCモデムを介して接続された複数の端末機とを備え、前記AC/DC電力変換装置が、前記電力量計を内部に備える筐体内に設けられ、PLC信号が直流電力信号に重畳されて通信が行われることを特徴とする。
【0012】
前記構成のPLCシステムにおいて、前記電力量計が電力量の計測機能と通信機能とを有するものであるのが好ましい。
【0013】
前記構成のPLCシステムにおいて、前記配分電盤が、前記AC/DC電力変換装置からの電力線が1次側に接続された主幹ブレーカーと、前記主幹ブレーカーの2次側に接続された複数の分岐ブレーカーとを備え、前記複数の分岐ブレーカーの2次側に前記複数の宅内電力線が接続されている構成としてもよい。
【0014】
前記構成のPLCシステムにおいて、前記複数の分岐ブレーカーの各々の宅内電力線側に設けられ、直流電力信号にPLC信号を重畳する及び/又は直流電力信号からPLC信号を分離する複数の第1カプラーと、前記複数の第1カプラーのうち所定の第1カプラーによって直流電力信号から分離されたPLC信号を他の第1カプラーによって直流電力信号に重畳してPLCを制御する制御部をさらに有する構成としてもよい。
【0015】
前記構成のPLCシステムにおいて、前記主幹ブレーカーの1次側に設けられ、直流電力信号にPLC信号を重畳する及び/又は直流電力信号からPLC信号を分離する第2カプラーをさらに有し、前記制御部は、前記第2カプラーによって直流電力信号から分離されたPLC信号を第1カプラーによって直流電力信号に重畳し、又は前記第1カプラーによって直流電力信号から分離されたPLC信号を第2カプラーによって直流電力信号に重畳してPLCを制御する構成としてもよい。
【0016】
前記構成のPLCシステムにおいて、前記制御部が前記筐体内に設けられている構成としてもよい。
【0017】
前記構成のPLCシステムにおいて、蓄電池をさらに有し、前記制御部は、商用電源からの電力供給が停止したとき、前記蓄電池から前記複数の分岐ブレーカーを介して宅内に電力を供給させる構成としてもよい。
【0018】
前記構成のPLCシステムにおいて、前記端末機は電力供給を受けるための差込プラグを有し、前記宅内電力線の端部に前記差込プラグが接続可能な差込部を有するコンセントが設けられ、前記コンセントは、直流電力を交流電力に変換するDC/AC電力変換装置及び/又は直流電力の電圧を変換するDC/DC電力変換装置を備える構成としてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のPLCシステムでは、電力量計の2次側に接続されたAC/DC電力変換装置によって交流電力から直流電力に変換された電力信号にPLC信号が重畳されて通信されるので、交流電力にPLC信号を重畳していた従来のシステムに比べて電力信号から分離したPLC信号に含まれるノイズをより低減させることが可能となる。
【0020】
また電力量計が電力量計測と無線通信による通信機能とを併せ持つ所謂スマートメーターである場合、スマートメーターの通信機能を利用することによって宅外の通信網と接続可能となり、PLC信号は交流電力に重畳されることなく通信することができ低ノイズ通信が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係るPLCシステムの一実施形態を示す概略回路図である。
【
図2】本発明で使用可能なカプラーの一例を示す回路図である。
【
図3】本発明に係るPLCシステムで使用可能なコンセント3の一例を示す斜視図である。
【
図4】本発明に係るPLCシステムで使用可能な差込プラグ4の一例を示す斜視図である。
【
図5】従来のPLCシステムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るPLCシステムについて図に基づいてさらに詳しく説明するが本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0023】
図1は本発明に係るPLCシステムの一実施形態を示す概略回路図である。
図1に示すように、変圧器TF(
図5を参照)で低電圧化された商用電力は引込み電力線11により電力量計WMを通ってAC/DC電力変換装置6に送られる。そしてAC/DC電力変換装置6において交流電力が直流電力に変換されて宅内の所定位置に設けられた配分電盤Dに供給される。
【0024】
本発明で使用する電力量計WMに特に限定はなく従来公知のものが使用できるが、電力量の計測の外に通信機能を備えたスマートメーターであるのが好ましい。宅内と宅外との信号通信がスマートメーターの通信機能を利用して行うことができるようになるからである。スマートメーターの通信方式は今のところ3つの方式、すなわち無線マルチホップ通信方式、N通信方式(携帯電話やWiMAXなどの通信キャリアを利用)、PLC方式があり、これらの通信方式の中から使用環境に合った方式が適宜選択され使用される。
【0025】
AC/DC電力変換装置6としては従来公知のものが使用できる。AC/DC電力変換装置6は例えばAC(交流)100VをDC(直流)48Vに変換する。そして後述するようにコンセント3の電力変換装置33においてさらにDC/AC変換あるいはDC/DC変換されて端末機の使用可能な電力及び電圧とされる。
【0026】
配分電盤Dには、リミッターLiと、主幹ブレーカーBrと、切替部21と、複数個の分岐ブレーカー5a,5b,5c・・・(総称して「分岐ブレーカー5」と記すことがある。)とが設けられている。そして切替部21には蓄電池Bが接続され、蓄電池Bには太陽電池SCが接続されている。
【0027】
リミッターLiは、電力会社との契約により定められたアンペア以上の電流が流れると電力供給を遮断する装置である。本発明で使用するリミッターLiとしては従来公知ものが使用できる。なお、電力会社によってリミッターLiが不要であることがある。
【0028】
主幹ブレーカーBrは、家庭内全体の電流を検出して定格電流を超えると回路を遮断するものである。本発明で使用する主幹ブレーカーBrとしては従来公知ものが使用できる。
【0029】
切替器21は、通常時は、AC/DC電力変換装置6によって交流から直流に変換された電力を分岐ブレーカー5を介して各端末機に供給すると共に蓄電池Bにも供給する。蓄電池Bに供給された電力は蓄電池Bに蓄積される。また蓄電池Bは太陽光発電SCに接続しており、太陽光発電SCで発電された電力は蓄電池Bに蓄積される。一方、停電時は、蓄電池Bは蓄積されている電力が切替部21及び分岐ブレーカー5を介して端末機に供給される。
【0030】
分岐ブレーカー5は、例えば「2階照明器具」、「1階居間コンセント」など用途によって分けられており、その使用電流が定格電流を超えると回路を遮断するものである。本発明で使用する分岐ブレーカー5としては従来公知ものが使用できる。
【0031】
図1の回路図に示すように、AC/DC電力変換装置6の1次側には、電力量計WMを経由して変圧器TF(
図5を参照)に接続された、1本の中性線Nと2本の電力線L1,L2の計3本からなる引込み電力線11が接続されている。そして、AC/DC電力変換装置6で交流電力が直流電力に変換されて、AC/DC電力変換装置6から2本の幹線からなる接続線12が延出しリミッターLiの1次側に接続されている。リミッターLiと主幹ブレーカーBrとは接続線13で接続されている。リミッターLiから接続線14が延出し、切替部21を経た後、接続線14に複数の分岐ブレーカー5が接続している。
【0032】
そして、各分岐ブレーカー5の2次側には宅内電力線PLが接続される。宅内電力線PLは屋内に配線されてそれぞれ所定位置に配設されたコンセント3あるいは端末機に接続される。コンセント3は、差込部31と、電力信号とPLC信号との重畳及び分離を行うPLCモデム32と、電力変換装置33とを有する。なお、電力変換装置33は、直流電力を交流電力に変換するDC/AC電力変換装置と直流電力を所定電圧を変換するDC/DC電力変換装置とを有する。
【0033】
エアコンディショナーAcや照明器具LE、パーソナルコンピューターPCなどの端末機は電力供給を受けるための差込プラグ4を有し、この差込プラグ4がコンセント3の差込部31に接続されることによって端末機に電力が供給されると共に、PLC通信が可能となる。
【0034】
以上のような直流電力信号にPLC信号を重畳し、直流電力信号からPLC信号を分離する本発明のPLCシステムによれば、交流電力信号にPLC信号を重畳・分離していた従来のPLCシステムに比べて、電力信号から分離したPLC信号に含まれるノイズが格段に減少し通信精度が向上する。
【0035】
またPLC信号の減衰及びノイズを抑制する観点から主幹ブレーカーBr及び分岐ブレーカー5を迂回してPLC信号を送受信するのが望ましい。
図1に示すように、各分岐ブレーカー5の2次側には第1カプラー7a~7cがそれぞれ取り付けられている。また、リミッターLiの1次側に接続する接続線12には第2カプラー8が取り付けられている。第1カプラー7a~7c及び第2カプラー8は直流電力信号にPLC信号を重畳する及び/又は直流電力信号からPLC信号を分離する装置であって、誘導性結合器や容量性結合器から構成される。
【0036】
図2に、本発明で使用可能なカプラーの一例を示す回路図を示す。この図に示すカプラーは、結合回路部71と、PLC信号を増幅して直流電力信号に重畳して送出する送信回路部72と、結合回路部71を通じて取り込んだ直流電力信号からPLC信号を分離する受信回路部73とを有する。受信回路部73によって直流電力信号から分離されたPLC信号は制御部Cに送られる一方、制御部Cから送られてきたPLC信号は送信回路部72によって直流電力信号の重畳されて送り出される。
【0037】
制御部Cは、第1カプラー7a~7c及び第2カプラー8から送られてくるPLC信号を、いずれの第1カプラー7a~7c又は第2カプラー8によって直流電力信号に重畳するかを制御する。例えば
図1に示したPLCシステムにおいて、パーソナルコンピューターPCからエアーコンディショナーAcの入切信号や設定温度信号などの動作信号(PLC信号)が出力されると、動作信号はPLCモデム32によって直流電力信号に重畳され、コンセント3、宅内電力線PLを通って分岐ブレーカー5cに向かって送られる。そして、分岐ブレーカー5cに向かって送られた動作信号は、分岐ブレーカー5cの2次側に取り付けられた第1カプラー7cによって直流電力信号から分離されて制御部Cに送られる。制御部Cは、エアーコンディショナーAcに電力を送る宅内電力線PLが接続されている分岐ブレーカー5bの2次側に取り付けられた第1カプラー7bによってPCからの動作信号を直流電力信号に重畳する。直流電力信号に重畳された動作信号は、宅内電力線PLを通りコンセント3のPLCモデム32によって直流電力信号から分離されてエアーコンディショナーAcに至りエアーコンディショナーAcの動作が制御される。
【0038】
また電力量計(スマートメーター)WMの通信機能を利用してエアーコンディショナーAcの動作信号が宅外から送られてきた場合、動作信号は、電力量計WM内のPLCモデム(不図示)によってAC/DC電力変換装置6で交流から直流に変換された後の直流電力信号に重畳されて接続線12を介してリミッターLiに向かって送られる。そして
図1に示すように、動作信号は、リミッターLiの1次側に設けられた第2カプラー8によって直流電力信号から分離されて制御部Cに送られる。制御部Cは、前記と同様に、エアーコンディショナーAcに電力を送る宅内電力線PLが接続されている分岐ブレーカー5bの2次側に取り付けられた第1カプラー7bによってPCからの動作信号を直流電力信号に重畳する。直流電力信号に重畳された動作信号は、宅内電力線PLを通りコンセント3のPLCモデム32によって直流電力信号から分離されてエアーコンディショナーAcに至りエアーコンディショナーAcの動作が制御される。
【0039】
このようなシステムによれば、動作信号(PLC信号)は主幹ブレーカーBr及び分岐ブレーカー5を迂回して送信されるので、送信途中における信号の減衰が抑制される。
【0040】
ここで、AC/DC電力変換装置6は、電力量計WMが収納されているハウジング(筐体)H内に設けられている。これにより、電力量計WMがスマートメーターである場合に、スマートメーターの通信機能を利用して宅外の通信網と接続することが可能となる。特にスマートメーターの通信方式が無線通信である無線マルチホップ通信方式とN通信方式の場合には、電力量計WM内のPLCモデム(不図示)によって、宅内から宅外に送信されるPLC信号は直流電力信号から分離され無線によって送信される一方、宅外から宅内に送信されてきたPLC信号は直流電力信号に重畳されて接続線12を介して宅内電力線PLに送られる。つまり、宅内と宅外との間で通信されるPLC信号についても交流電力に重畳されることがないので交流電圧信号に重畳していた従来に比べて低ノイズ通信が可能となる。
【0041】
(コンセント)
近年の宅内電気機器などの端末機の多くは直流電力で駆動するが、従来の宅内電力供給は交流電力であったため、端末機の内部や端末機から延出した差込プラグなどにおいて交流電力を直流電力に電力変換していた。一方、本発明のPLCシステムでは宅内電力供給は直流電力であるため、端末機の使用にあたって交流電力を直流電力に変換する必要がない。しかし、直流電力であっても端末機によって駆動電圧が異なるため、本発明のPLCシステムで使用するコンセント3は電力変換装置33を備える。電力変換装置33は、直流電力を交流電力に変換するDC/AC電力変換装置と、直流電力の電圧を変換するDC/DC電力変換装置とを有する。
【0042】
DC/AC電力変換装置では、AC/DC電力変換装置6において48Vの直流電圧に変換されコンセント3に送られてきた直流電圧を100Vや200Vの交流電力に変換し、交流電力を駆動電力する端末機に供給可能としている。またDC/DC電力変換装置では、例えばAC/DC電力変換装置6において48Vの直流電圧に変換されコンセント3に送られてきた直流電圧を0V,6V,12V,24V,48V,50V,100V,150Vなどの複数の直流電圧に変換し、端末機によって定められた使用電圧に合わせて選択使用可能としている。
【0043】
図3に本発明で使用するコンセント3の差込口31の一例を示す斜視図を示す。
図3に示す差込口31は交流電力用の差込部31aと直流電力用の差込部31bとを有する。交流電力用の差込部31aは従来と同様の形状及び構造であるのでここでは説明を省略する。
【0044】
直流電力用の差込部31bは、後述する差込プラグ4が嵌入可能な孔形状を有し、孔内に異なる供給電圧に対応する複数の供給電極を備える。具体的には直流電力用の差込部31bは、四角形状の開口を有し所定の奥行き方向長さを有する第1孔部311と、第1孔部311の奥側面の中央部に第1孔部311よりも小さい開口を有し所定の奥行き方向長さを有する第2孔部312とを有する。
【0045】
第1孔部311の4つの内側面の左右方向又は上下方向の中央部にはそれぞれ所定幅で奥行き方向に延在する溝313a~313d(
図3では溝313a,313bのみ図示)が形成され、各溝313a~313dの底面には供給電極34a~34d(
図3では供給電極34a,34bのみ図示)が形成されている。
【0046】
また第2孔部312の4つの内側面にも左右方向又は上下方向の中央部にそれぞれ所定幅で前後方向に延在する溝314a~314d(
図3では溝314a,314bのみ図示)が形成され、各溝314a~314dの底面には供給電極35a~35d(
図3では供給電極35a,35bのみ図示)が形成されている。このような構造によって差込部31bは8つの供給電極34a~34d,35a~35dを有し、各供給電極には例えば0V,6V,12V,24V,48V,50V,100V,150Vなど直流電力が供給される。なお、安全性の観点から、電圧の高い電力は第1孔部の開口から離れた位置の供給電極、すなわち第2孔部312の内側面に設けられている供給電極35a~35dに供給され、電圧の低い電圧は第1孔部の内周面に設けられている供給電極34a~34dに供給されるようにするのが望ましい。
【0047】
そしてまた、第2孔部312の奥側面の中央部にはUSBの第2コネクタ36が手前方向に向かって伸び出るように形成されており、USBの第2コネクタ36の先端は第1孔部311の奥側面にわずかに届かない所に位置する。
【0048】
(差込プラグ)
図4に、本発明に係る差込プラグ4の一例を示す斜視図を示す。
図4の差込プラグ4は、端末装置から延出する電源コード40の先端に設けられており、
図3に示すコンセント3の差込口31の差込部31bに差し込みが可能とされている。すなわち、差込プラグ4は、後面から電源コード40が延出する略直方体形状のプラグ本体41と、プラグ本体41の前面に形成された、前方(差込方向)に突出する突部42とを有する。突部42は、前方に突出する四角柱状の第1突部421と、第1突部421の前面の中央部において前方に突出する前後方向に垂直な断面形状が第1突部421よりも小さい四角柱状の第2突部422とを有する。第2突部422の前面には外周縁から内側に所定幅のフランジ部を残して後方に凹んだ四角形状の孔部43が形成され、孔部43の後面の略中央部にはUSBの第1コネクタ46が前方向に向かって伸び出るように形成されている。
【0049】
第1突部421及び第2突部422は、コンセント3の差込部31bの第1孔部311及び第2孔部312にそれぞれ嵌入可能な形状とされている。第1突部421及び第2突部422の上下及び左右の4つの外側面の左右方向及び上下方向の中央部にはそれぞれ所定幅で前後方向に延在する板状の受給電極423a~423d(
図4では受給電極423c,423dのみ図示)及び受給電極424a~424dが当該外側面から外方にわずかに突出するように設けられている。そして受給電極423a~423d及び受給電極424a~424dは前端側を中心として後端側が弾性的に揺動可能に設けられている。
【0050】
コンセント3の差込口31bに差込プラグ4の突部42を差し込むと、コンセント3の差込口31bの第1孔部311及び第2孔部312に差込プラグ4の第1突部421及び第2突部422が嵌入する。そして、差込口31の第1孔部311及び第2孔部312の内側面に形成された、底面に供給電極34a~34d及び35a~35dを有する溝313a~313d,溝314a~314dに、差込プラグ4の第1突部421及び第2突部422の外側面から外方にわずか突出する受給電極423a~423d及び受給電極424a~424dが接触しながら進入する。これにより、コンセント3の8つの供給電極34a~34d,35a~35dと差込プラグ4の8つの受給電極423a~423d,424a~424dとが面接触し接続する。また同時に、コンセント側のUSBの第2コネクタ36と差込プラグ側のUSBの第1コネクタ46とが接続する。なお、前述のように、受給電極423a~423d及び受給電極424a~424dは、供給電極34a~34d及び35a~35dとの摺接によって弾性変形可能となされている。
【0051】
差込プラグ4の8つの受給電極423a~423d,424a~424dのうち所望の2つの受給電極、すなわち端末機の使用直流電圧に対応する所定の2つの受給電極に端末機の電力線が接続されている。そして端末機に所望の直流電力が供給される。また同時にUSBによってPLC信号の送受信が可能となる。
【0052】
このようなコンセント3と差込プラグ4によれば、交流電力と直流電力とを供給可能で且つUSBによってPLC信号を送受信可能となるため、ノイズの代表的な発生源である交流電力駆動の電子レンジやモーターなどの動作ノイズがPLC信号に及ぼす影響を低く抑えることが可能となる。
【0053】
(その他)
以上説明したコンセント3の差込部31b及び差込プラグ4の突部42の差込方向に垂直な断面形状を四角形状としていたが、これに限定されるものではなく、例えば円柱状や多角柱状であっても構わない。また差込部31b及び突部42は1段であってもよいし、3段以上であってもよい。そしてまた、コンセント側に突部を設け、差込プラグ側に差込部を設けて差込プラグとコンセントとを接続するようにしてもよい。また供給電極及び受給電極は3つ以上、すなわち供給可能な直流電力の電圧が2種類以上であればよく、供給電極及び受給電極は9つ以上であってもよいし、7つ以下であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係るPLCシステムによれば、電力量計の2次側に接続されたAC/DC電力変換装置によって交流電力から直流電力に変換された電力信号にPLC信号が重畳されて通信されるので、交流電力にPLC信号を重畳していた従来のシステムに比べて電力信号から分離したPLC信号に含まれるノイズをより低減させることが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
3 コンセント
4 差込プラグ
5,5a~5c 分岐ブレーカー
6 AC/DC電力変換装置
7,7a~7c 第1カプラー
8 第2カプラー
B 蓄電池
C 制御部
D 配分電盤
H ハウジング(筐体)
11 引込み電力線
31 差込部
32 PLCモデム
33 電力変換装置
Br 主幹ブレーカー
Li リミッター
PL 宅内電力線
SC 太陽光発電
TF 変圧器
WM 電力量計
LE 照明器具(端末機)
Ac エアコンディショナー(端末機)
PC パーソナルコンピューター(端末機)