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特許7409860混合装置、コンクリート材料の製造方法および打設方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】混合装置、コンクリート材料の製造方法および打設方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20231226BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20231226BHJP
   B28C 5/14 20060101ALI20231226BHJP
   B28C 7/12 20060101ALI20231226BHJP
   B28C 7/14 20060101ALI20231226BHJP
   E04G 21/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B24/26 E
C04B24/26 F
B28C5/14
B28C7/12
B28C7/14
E04G21/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019228110
(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公開番号】P2021095309
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515217454
【氏名又は名称】ジオマシンエンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】弁理士法人MIP
(72)【発明者】
【氏名】椎名 貴快
(72)【発明者】
【氏名】山本 悟
(72)【発明者】
【氏名】山下 雅之
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 至
(72)【発明者】
【氏名】内田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】塚田 純一
(72)【発明者】
【氏名】三島 俊一
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】室川 貴光
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-041509(JP,A)
【文献】特開2007-217212(JP,A)
【文献】特開2008-169055(JP,A)
【文献】特開2004-300008(JP,A)
【文献】特開2004-148560(JP,A)
【文献】特開平02-062205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
B28C 5/00 - 5/48
B28C 7/00 - 7/16
E04G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと骨材とを含む第1の材料が流入する入口と出口とを有する通路と、コンクリートの硬化を促進させる硬化促進材と凝結を調整する凝結調整剤とを一緒に、もしくは別々に第2の材料として注入するための第1の注入口と、前記第1の注入口より出口側に、アルカリ雰囲気下で増粘し、コンクリートの流動性を失わせるポリマーエマルジョンからなる可塑剤を注入するための第2の注入口とを備え、前記通路の一部を構成する、一端に前記出口を有する直管部および前記入口に向けて前記直管部に対して斜め方向に延びる斜め管部を有する混合管と、
前記直管部の他端から前記出口を有する一端へ向けて該直管部内を延びる棒状部材と、
前記直管部の他端に取り付けられ、該直管部の他端側の前記棒状部材の末端に連結され、該棒状部材を回転させる回転手段と、
前記通路内の前記第2の注入口より出口側の前記棒状部材の先端部に設けられ、前記第1の材料と前記第2の材料と前記第2の注入口から注入された前記可塑剤とを撹拌混合する撹拌羽根と
を含み、
撹拌混合により製造されたコンクリート材料を前記出口から流出させる、混合装置。
【請求項2】
前記混合管は、前記直管部および前記斜め管部を有するY字管と、前記Y字管に接続される接続管とから構成され、前記接続管が、前記入口と前記第1の注入口とを有し、前記Y字管が、前記第2の注入口を有する、請求項1に記載の混合装置。
【請求項3】
セメントと骨材とを含む第1の材料が流入する入口と出口とを有する通路と、コンクリートの硬化を促進させる硬化促進材と凝結を調整する凝結調整剤とを一緒に、もしくは別々に第2の材料として注入するための第3の注入口とを備え、2つの短管の間に一定の曲率を有する短管が接合された混合管と、
前記混合管に設けられた穴を通して該混合管の一端に有する前記出口へ向けて延び、前記第3の注入口より出口側に、アルカリ雰囲気下で増粘し、コンクリートの流動性を失わせるポリマーエマルジョンからなる可塑剤を注入するための第4の注入口を備える注入管と、
前記混合管の外部において、前記注入管を回転可能に支持する支持手段と、
前記支持手段により支持された前記注入管の末端に連結され、前記注入管を回転させる回転手段と、
前記通路内の前記第4の注入口より出口側の前記注入管の先端部に設けられ、前記第1の材料と前記第2の材料と前記第4の注入口から注入された前記可塑剤とを撹拌混合する撹拌羽根と
を含み、
撹拌混合により製造されたコンクリート材料を前記出口から流出させる、混合装置。
【請求項4】
請求項1に記載の混合装置を用いたコンクリート材料の製造方法であって、
セメントと骨材と水と減水剤とを含み、前記混合管の前記入口から流入する第1の材料に、コンクリートの硬化を促進させる硬化促進材と凝結を調整する凝結調整剤とを一緒に、もしくは別々に第2の材料として、前記混合管の前記第1の注入口から注入する段階と、
前記混合管内を圧送される前記第2の材料が注入された前記第1の材料に、アルカリ雰囲気下で増粘し、コンクリートの流動性を失わせるポリマーエマルジョンからなる可塑剤を、前記第1の注入口より前記混合管の出口側にある前記第2の注入口から注入する段階と、
前記混合管の前記出口に向けて延び、前記回転手段により回転される前記棒状部材の、前記第2の注入口より該混合管の出口側の先端部に設けられる前記撹拌羽根により、前記第1の材料と、前記第2の材料と、前記可塑剤とを混合する段階と
を含む、コンクリート材料の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の混合装置を用いたコンクリート材料の打設方法であって、
型枠を設置する段階と、
セメントと骨材と水と減水剤とを含み、前記混合管の前記入口から流入する第1の材料に、コンクリートの硬化を促進させる硬化促進材と凝結を調整する凝結調整剤とを一緒に、もしくは別々に第2の材料として、前記混合管の前記第3の注入口から注入する段階と、
前記混合管内を圧送される前記第2の材料が注入された前記第1の材料に、アルカリ雰囲気下で増粘し、コンクリートの流動性を失わせるポリマーエマルジョンからなる可塑剤を、前記混合管の前記第3の注入口より出口側にある前記第4の注入口から注入する段階と、
前記混合管の前記出口に向けて延び、前記回転手段により回転される前記注入管の、前記第4の注入口より該混合管の出口側の先端部に設けられる前記撹拌羽根により、前記第1の材料と、前記第2の材料と、前記可塑剤とを混合する段階と、
混合して得られたコンクリート材料を、前記混合管の前記出口から流出させ、前記型枠内に打設する段階と
を含む、打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート材料、コンクリート材料を得るための混合装置およびコンクリート材料の製造方法、コンクリート材料の打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル工事では、掘削して露出した面が緩んで崩壊しないように、掘削面に対してコンクリートを打設して覆う。従来、コンクリートの打設には、掘削面に付着したコンクリートが短時間で凝結に達して硬化するように、急結剤(粉体や液体、またはこれらを併用)を添加したコンクリートを用い、そのコンクリートを高圧の圧縮空気により吹き付ける吹付工が採用されている。
【0003】
吹付工は、施工上、粉塵が少なからず発生し、吹き付け時のコンクリートの跳ね返り(リバウンド)の量も多い。このため、コンクリートの損失(ロス)率が高くなり、コスト増になる。また、吹付工は、吹き付けて硬化したコンクリート中に空隙が多く存在するため、コンクリートの強度や充填性といった品質にばらつきが生じることがある。さらに、吹付工は、圧縮空気でコンクリートを吹き飛ばして施工するため、コンクリート表面が凸凹に仕上がり、吹付けた厚さが不均質となることがあるため、吹付け施工後、コンクリート表面を専用の治具で削ったりして、設計通りの仕上りに調整する作業が必要になることがある。
【0004】
そこで、型枠を用い、専用のコンクリート材料を型枠内に打ち込む方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。これらの方法は、(1)コンクリートに瞬結性を付与する材料(急結剤またはそのスラリー)と凝結遅延剤、そしてコンクリートとを混合し型枠内に吹き込んで施工する方法や、(2)コンクリートに急硬性を付与する材料(急硬材またはそのスラリー、凝結調整剤等)と、コンクリートを別々にポンプで圧送して混合し、型枠内に流し込んで施工する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-316849号公報
【文献】特開2007-217212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の上記(1)および(2)に記載した方法では、凝結遅延剤または凝結調整剤の使用量が少ない場合、コンクリートが比較的短時間で硬化するため、型枠の隙間からの漏れを防止することはできるが、型枠内の隅々まで充填できるほどの初期流動性はなく、仕上りが悪くなる。これに対し、凝結遅延剤または凝結調整剤の使用量が多い場合、コンクリートが硬化する前に型枠の隙間から漏れ出たり、凝結始発時間が遅いために型枠の脱型までにかなりの時間を要する。
【0007】
そのほか、スランプが大きく流動性の高いベースとなるコンクリート(ベースコンクリート)に対して、急結剤や急硬材のスラリーを添加して均質に混ぜ合わせるための装置やその機構(方法)について明確にはなっていない。
【0008】
そこで、型枠からの漏れを防止しつつ、型枠内の隅々まで充填することが可能となるコンクリート材料、材料(ベースコンクリートと剤)の混合装置およびコンクリート材料の製造方法等の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
セメントと骨材と水と減水剤とを含むベースコンクリートに、硬化促進材と凝縮調整剤とを含むスラリーを、または硬化促進材を含むスラリーと凝縮調整剤を含むスラリーを別々に添加・混合し、さらに、コンクリートの流動性を制御する可塑剤を添加・混合すると、コンクリートが静止するまでは流動性が保持され、型枠内の隅々まで充填することができ、静止すると流動性が失われ、形状が保持されるため、型枠からの漏れも防止できることを見出した。
【0010】
本発明は、上記のことを見出すことによりなされたものであり、上記課題は、本発明のコンクリート材料、コンクリート材料の製造装置、製造方法および打設方法を提供することにより解決することができる。
【0011】
すなわち、コンクリート材料は、セメントと、骨材と、水と、減水剤と、コンクリートの硬化を促進させる硬化促進材と、凝結を調整する凝結調整剤と、アルカリ雰囲気下で増粘し、コンクリートの流動性を失わせるポリマーエマルジョンからなる可塑剤とを含む、コンクリート材料が提供される。
【0012】
また、セメントと骨材とを含む第1の材料が流入する入口と出口とを有する通路と、コンクリートの硬化を促進させる硬化促進材と凝結を調整する凝結調整剤とを一緒に、もしくは別々に第2の材料として注入するための第1の注入口と、第1の注入口より出口側で、アルカリ雰囲気下で増粘し、コンクリートの流動性を失わせるポリマーエマルジョンからなる可塑剤を注入するための第2の注入口とを備える混合管と、
通路内の前記第2の注入口より出口側に設置され、第1の材料と第2の材料と第2の注入口から注入された可塑剤とを撹拌混合する撹拌手段と
を含み、
撹拌混合により製造されたコンクリート材料を出口から流出させる、混合装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、型枠からの漏れを防止しつつ、型枠内の隅々まで充填することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】コンクリート材料の配合例と圧縮強度試験結果を示した図。
図2】コンクリート材料を型枠内に打設している様子を示した図。
図3】脱型したコンクリートおよびそのコンクリートを割った様子を示した図。
図4】コンクリート材料を製造するための混合装置の第1の構成例を示した図。
図5】混合装置を使用したコンクリート材料の製造の流れを示したフローチャート。
図6】混合装置の第2の構成例を示した図。
図7】混合装置の第3の構成例を示した図。
図8】混合装置を使用したコンクリート材料の打設の流れを示したフローチャート。
図9】混合装置を使用して型枠内にコンクリートを打設している様子を例示した図。
図10】混合装置内を洗浄する洗浄機構の一例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のコンクリート材料は、セメントと、骨材と、水と、減水剤と、コンクリートの硬化を促進させる硬化促進材と、凝結を調整する凝結調整剤と、コンクリートの流動性を制御する可塑剤とを含む。セメントには、ポルトランドセメント、混合セメント、特殊セメントがあり、いずれのセメントでも使用することができる。ポルトランドセメントは、クリンカと、石膏とから構成される灰色の粉末であり、クリンカは、石灰石や粘土等をロータリキルン等の焼成窯で焼成してできる塊である。
【0016】
混合セメントは、ポルトランドセメントと、高炉スラグやフライアッシュ等の混合材料とから構成されるセメントであり、特殊セメントは、ボーキサイトと、石灰石とから構成されるアルミナセメント等である。
【0017】
骨材は、砂や砂利等であり、その大きさにより細骨材と粗骨材に分けられる。細骨材は、目の大きさ(メッシュサイズ)が10mmの篩を全部が通過し、メッシュサイズが5mmの篩を85%以上が通過する骨材であり、上記の砂が該当する。粗骨材は、メッシュサイズが5mmの篩を85%以上通過できない骨材であり、上記の砂利が該当する。
【0018】
ベースコンクリートは、セメントと骨材をミキサーに投入し、水を加えて混練することにより製造される。なお、ベースコンクリートには、減水剤等の混和剤を含んでいてもよい。混和剤は、使用量が少なく、練り上がり容積に算入されない添加剤であり、コンクリートの品質、性能、経済性等を向上させるために添加されるものである。
【0019】
混和剤としては、空気連行剤(AE剤)、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等が挙げられる。AE剤は、コンクリート内の気泡を小さくし、コンクリートを割れにくくする混和剤である。減水剤は、単位水量を減少させる混和剤である。AE減水剤は、AE剤と減水剤の両方の作用を併せ持つ混和剤である。高性能減水剤は、減水剤より減水率が高い混和剤である。高性能AE減水剤は、高性能減水剤と同様、高い減水率を有し、スランプロスが小さい混和剤である。スランプは、コンクリートの軟らかさや流動性の程度を示す指標である。
【0020】
ベースコンクリートの配合は、スランプが15~23cmの範囲となるように調整される。コンクリートの練り上がりの温度は、20℃を標準とし、10℃を下回らないように管理される。
【0021】
硬化促進材は、コンクリートに対して早期に急硬性を発揮させる混和材料であり、塩化物、亜硝酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、珪酸ソーダ、アミン類、無水マレイン酸等が挙げられる。凝結調整剤は、凝結時間を調整する混和剤で、接着剤やバインダー用途に適するように変性(疎水基変性)を加えたポリマー等が用いられる。
【0022】
硬化促進材は、水等に分散させ、スラリーとして供給し、ベースコンクリートに添加される。硬化促進材および凝結調整剤は、コンクリートの硬化を調整する材料のため、打設直前に添加される。
【0023】
硬化促進材は、ベースコンクリートのセメントの量に対して20%を標準とし、施工条件に応じて添加量が調整される。以下、%は、特にことわりがない限り、重量%を意味する。施工条件は、例えば施工時期、施工方法、場所、コンクリートの厚さ等である。
【0024】
凝結調整剤は、ベースコンクリートの硬化促進材の量に対して1.3~2.0%を標準とし、施工条件に応じて添加量が調整される。混和材料(硬化促進材と凝結調整剤)を水に添加してスラリーを作製する際の水混和材料比(水/混和材料)は、0.5(50%)を標準とすることができる。
【0025】
可塑剤は、混和剤の1つであり、コンクリートに上記スラリーを注入した後に添加され、静止するまでは流動性を保持し、静止すると流動性を失い、形状を保持するように作用する。
【0026】
可塑剤としては、アルカリ雰囲気下で増粘してコンクリートの流動性を失わせるポリマーエマルジョン(アルカリ増粘型ポリマーエマルジョン)が挙げられる。なお、流動性を制御することが可能な材料であれば、アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンに限定されるものではない。
【0027】
アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンは、アクリル酸もしくはメタクリル酸等の不飽和カルボン酸またはその不飽和カルボン酸塩と、アクリル酸エステルモノマーもしくはメタクリル酸エステルモノマー等のエチレン性不飽和化合物との共重合により得ることができる。
【0028】
不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。エチレン性不飽和化合物としては、例えばエチレン、アクリロニトリル、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、酢酸ビニル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。
【0029】
不飽和カルボン酸もしくは不飽和カルボン酸塩と、エチレン性不飽和化合物との配合割合は、特に限定はなく、例えばモル比換算で95:5~5:95とされる。また、不飽和カルボン酸もしくは不飽和カルボン酸塩と、エチレン性不飽和化合物との重合方法は、これまでに知られたいかなる方法でも用いることができ、例えば乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等の方法を用いることができる。不飽和カルボン酸もしくは不飽和カルボン酸塩と、エチレン性不飽和化合物との重合の際、公知の重合開始剤、レドックス触媒等の重合溶媒、連鎖移動剤、界面活性剤等を使用することができる。
【0030】
共重合により得られるエマルジョンの成分濃度は、特に限定されるものではないが、0.1~50%が好ましく、1~40%がより好ましい。成分濃度が0.1%未満であると、増粘効果が少ない場合があり、50%を超えると、エマルジョンの製造が技術的に難しくなり、安定性が損なわれるからである。エマルジョンの使用量は、セメントの使用量を100部とした場合、セメント100部に対して、成分換算で0.01~10部が好ましく、0.05~5部がより好ましい。0.01部未満であると、増粘効果が認められず、例えば型枠から漏洩する場合があるからである。また、10部を超えると、増粘効果が強すぎ、型枠への充填性が損なわれるからである。
【0031】
可塑剤の効果には、温度依存性があるため、可塑剤の添加量は、事前に施工試験を行う等して決定することが望ましい。施工試験は、例えばベースコンクリートのセメントの量に対して0.1~0.4%の範囲を可塑剤の添加量として実施することができる。
【0032】
図1に、コンクリートの配合例と、施工試験として圧縮強度試験を行った結果とを示す。図1(a)は、コンクリートの配合例を示した表で、図1(b)は、圧縮強度試験結果を示した表である。図1(a)中、Wは水、Cはセメント、Sは細骨材、Gは粗骨材、s/aは細骨材率を示す。s/aは、全骨材中に占める細骨材の容積割合である。高性能減水剤は、ベースコンクリートのセメントCの量に対して1.0~1.2%としている。また、細骨材Sは、表乾密度が2.61g/cmのものを使用し、粗骨材Gは、表乾密度が2.68g/cmのものを使用した。表乾密度は、表面に水がなく、内部の空隙が全て水で満たされた状態(表面乾燥飽和水状態)の骨材の質量を、内部の空隙を含む骨材の体積で除して得られる値である。
【0033】
圧縮強度試験は、径100mm、高さ200mmの円柱形の供試体に、強度試験機により一様な速度で荷重を加え、供試体が破壊するまで続けることにより行った。ベースコンクリートは、図1(a)、(b)に示した配合で、セメント、骨材、水、高性能減水剤を混練したものとし、図1(b)に示すようにスランプが21cm、空気量が4.4体積%で、コンクリート温度は15.0℃であった。このベースコンクリートに、図1(b)に示す配合で、硬化促進材、凝結調整剤、可塑剤を添加し、撹拌混合してコンクリート材料を得た。そのコンクリート材料を、供試体用の型枠であるモールドに詰め、封緘状態で気中に在置し、所定材齡で脱型して試験を行った。
【0034】
圧縮強度試験の結果は、コンクリート材料を打設してからの養生期間を示す材齢が7日、28日の圧縮強度である。図1(b)に示す結果から、コンクリートの圧縮強度は高強度配合(設計基準強度36N/mm)の基準を満足する結果が得られることがわかった。
【0035】
図2は、コンクリート材料を型枠内に打設している様子を示した図である。型枠10は、コンクリートを打設する対象の表面から一定距離ほど離間して配置される面板11を有する。型枠10は、トンネル掘削面を覆工するために使用する場合、トンネル掘削面を支持し、トンネル方向に一定間隔で設置されるアーチ状の支保工の隣り合うフランジ面に跨るように配置される。支保工には、例えば断面がH形状をしたH形鋼が使用される。H形状の略平行な2本線の部分がフランジであり、互いに外側へ向く面を有し、その面がフランジ面である。ここで、型枠10内とは、トンネル掘削面と、トンネル掘削面に隣接し、一定間隔で配置される2つの支保工と、面板11とにより囲まれた内部の領域を意味する。
【0036】
図2に示す例では、隣り合う2つの支保工を2つの側板12、13とし、底板14を設け、内部を確認しやすくするため、トンネル掘削面を透明なアクリル板とし、面板11、アクリル板、2つの側板12、13、底板14で囲まれた内部の領域を型枠10内として、その型枠10内にコンクリート材料を打設している。
【0037】
コンクリート材料は、面板11の上方から型枠10内に流し込まれる。なお、面板11には、面板11の鉛直方向の上端に近い位置に打設穴や切欠部等が設けられていてもよい。図2に示す例では、面板11の上方からコンクリート材料が流し込まれ、底板14上に隅々まで充填されている。このため、底板14と2つの側板12、13の角部15、側板12、13とコンクリートの境界16、コンクリート中には、目視した限り、数cmといった一定以上の大きな隙間や空隙は確認できなかった。このことから、このコンクリート材料は、コンクリートの充填性が改善されることが分かった。
【0038】
また、コンクリートの仕上がり面がほぼ平滑であった。このことから、このコンクリート材料を使用することで、作業者の技量や経験に左右されにくくなることが分かった。
【0039】
図3は、型枠10から脱型したコンクリートおよびそのコンクリートを割った様子を示した図である。図3(a)は、脱型後、地面に落下させた様子を示した図で、図3(b)は、脱型後のコンクリート17に力を加え、2つに割った様子を示した図である。図3(a)に示すように、脱型したコンクリート17は、略直方体で、表面に穴やひび割れがほとんどなく、地面に落下しても割れることはなかった。また、図3(b)に示すように、脱型したコンクリート17は、その断面18において、空洞部分がほとんどなく、密にコンクリート材料が充填されていることが確認できた。このことから、コンクリート自体の品質や耐久性が向上していることが見出された。
【0040】
コンクリート材料は、セメントと、骨材と、水と、減水剤と、硬化促進材と、凝結調整剤と、可塑剤とを含むが、混合装置を用いてこれらの材料を混合することにより得られる。図4は、混合装置の第1の構成例を示した図である。混合装置20は、内部が中空の混合管21と、混合管21内を延びる棒状部材22と、棒状部材22の一方の端部である末端と連結され、棒状部材22を一定方向に回転させる回転手段23と、棒状部材22の他方の端部である先端に近い位置(先端部)に設けられ、混合管21内に流入した材料を撹拌混合する撹拌羽根24とを含む。
【0041】
混合管21は、Y字管21aと、Y字管21aに接続される接続管21bとから構成される。Y字管21aは、直管部と、直管部に対して斜め方向に延びる斜め管部とを有する。直管部と斜め管部のなす角は、いかなる角度であってもよいが、ベースコンクリートが斜め管部を滑り落ちて直管部内へ入り、直管部の一端(コンクリート材料の出口)へ向けて適切に流れるように30°~60°とすることが好ましい。
【0042】
混合管21を構成するY字管21aおよび接続管21bの内径は、同じ内径とすることができ、ベースコンクリートの供給量に応じて決定することができる。混合管21の内径は、例えば100mmを標準とし、75~150mmの範囲で調整される。
【0043】
回転手段23は、例えばモータであり、Y字管21aの直管部の一端とは反対側の他端に取り付けられる。モータの回転数は、例えば100~500rpmとされる。
【0044】
棒状部材22は、Y字管21aの直管部内を、当該直管部の他端から一端へ向けて延びるように配置される。棒状部材22の径は、10~20mmを標準とし、差し換えることで交換することができる。
【0045】
撹拌羽根24は、棒状部材22の先端部に設けられ、棒状部材22の一方の側面からその裏側の他方の側面へ貫通する孔に挿嵌される棒とされ、その棒は1本以上とされ、2本以上が配置される場合、棒状部材22の長手方向への配置間隔は、20~150mmとされる。なお、撹拌羽根24は、棒に限られるものではなく、板状のもの等であってもよい。また、撹拌羽根24を取り付ける方法は、孔に挿嵌する方法に限定されるものではなく、棒状部材22に溶接する方法等を採用してもよい。
【0046】
ベースコンクリートは、接続管21b内へ供給され、接続管21bが接続されるY字管21aの斜め管部内を通して直管部内へ供給される。そして、ベースコンクリートは、直管部の一端へ向けて移動する間、撹拌羽根24の回転により撹拌される。直管部は、直管部の一端の開口が型枠10の面板11に設けられた打設穴等に連続するように、面板11に接続される。
【0047】
Y字管21aは、直管部の側面に可塑剤を添加するための注入口25を備える。注入口25は、突出したノズル等とされ、可塑剤を供給するホース等の管が接続され、注入口25の穴の部分には逆止弁を配してコンクリートペースト分の侵入(逆流)を防止する。接続管21bは、ベースコンクリートが流入する入口26を有し、側面に急硬剤を含むスラリーを注入するための注入口27を備える。入口26は、ベースコンクリートを供給する管が接続され、注入口27は、スラリーを供給する管が接続される。これらの接続は、フランジ、ボルトおよびナットを使用したものであってもよいし、継手を使用したものであってもよい。
【0048】
ベースコンクリートは、接続管21bにおいてスラリーが注入された後、Y字管21a内へ入る。ベースコンクリートとスラリーは、Y字管21aの斜め管部を通して直管部へ入り、直管部において可塑剤が添加され、直管部の一端へ向けて移動する。
【0049】
ベースコンクリート、スラリー、可塑剤は、直管部の一端へ近づくと、直管部の一端に近い位置に配置された撹拌羽根24により撹拌混合される。撹拌混合して得られたコンクリート材料は、直ちに直管部の一端から排出され、型枠10に設けられた面板11の打設穴等から型枠10内に打設される。このように、混合後、直ぐに打設されるため、混合装置20内へ各材料が連続的に供給され、撹拌混合している間は、混合管21内でコンクリート材料が硬化することはない。
【0050】
型枠10内に打設されるコンクリート材料は、打設穴等を通り抜けると、下方へ向けて落下し、落下した点に積み重なっていく。なお、硬化促進材のみでは、硬化が始まるまでの微妙な時間を調整することは困難である。したがって、硬化が早いと、型枠10内に広がる前に固まり、型枠10内の隅々まで充填することはできない。一方、硬化が遅いと、型枠10と支保工との間の隙間等からコンクリート材料が漏れ出てしまい、型枠10内に充填することはできない。そこで、凝結調整剤を併用する必要がある。
【0051】
可塑剤を添加すると、ベースコンクリートは、可塑剤の効果により瞬時に増粘する。その一方で、ベースコンクリートは、圧送により付与されたエネルギーにより流動性を有している。
【0052】
コンクリート材料は、型枠10内へ流し込まれると、型枠10内においてはそれ程抵抗を受けることなく広がるように流れる。一方、型枠10や支保工へ到達すると、型枠10と支保工との間に隙間があるとは言え、幅が狭いことから、そこに滞留し、静止した状態になる。すると、コンクリート材料は、可塑剤により流動性が失われ、その形状を維持するようになる。そして、コンクリート材料は、急硬剤を含むため、その形状のまま凝結し、硬化が進んでいく。
【0053】
Y字管21aは、直管部の他端に、例えばフランジを備え、回転手段23もフランジを備え、ボルトおよびナットを用いて接続することができる。このような構成とすることで、棒状部材22を接続した回転手段23を混合管21から容易に取り外すことができ、取り外した後、混合管21内に水を噴射する等して残留物を押し出し、内部を洗浄することができる。
【0054】
注入口25は、直管部に限られるものではなく、斜め管部や接続管21bに設けてもよい。ただし、注入口25は、接続管21bの入口26と注入口27との間ではなく、注入口27より斜め管部側とされる。入口26側に設け、先に可塑剤を添加するようにすると、瞬時にベースコンクリートを増粘させるため、後から注入したスラリーが混ざりにくくなり、しかも、撹拌羽根24までの距離が長くなるので、粘性が高くなり、撹拌羽根24による撹拌も難しくなり、撹拌羽根24が破損するおそれもあるからである。
【0055】
図5を参照して、ベースコンクリート、スラリー、可塑剤の混合方法について説明する。ステップ100から開始し、ステップ101では、回転手段23により棒状部材22を回転させ、撹拌羽根24による撹拌を開始させる。ここでは、先に撹拌を開始させているが、各材料を供給した後に撹拌を開始させてもよい。
【0056】
ステップ102では、入口26から接続管21b内へベースコンクリートを一定の流量で圧入する。ステップ103では、ベースコンクリートに対し、注入口27から一定の流量でスラリーを注入する。スラリーは、圧送されるベースコンクリートの圧力より高い圧力で注入される。ベースコンクリートとスラリーは、連続して圧入されるベースコンクリートによりY字管21aの斜め管部内を移動し、直管部内へ入る。
【0057】
ステップ104では、注入口25から一定の流量で可塑剤を添加する。可塑剤は、圧送されるベースコンクリートおよびスラリーより高い圧力で注入される。可塑剤は、ベースコンクリートとスラリーとともに、直管部の一端へ向けて移動する。ステップ105では、各材料が、撹拌羽根24が配置された位置に到達したところで、撹拌羽根24の回転により各材料を撹拌混合する。これにより、打設するためのコンクリート材料が得られる。コンクリート材料が直管部の一端から排出されたところで、ステップ106へ進み、各材料の混合を終了する。
【0058】
各材料の混合を終了した際、そのままにしておくと、混合管21の内部でベースコンクリート等の残留物が硬化し、混合管21内を塞いでしまう。残留物は、混合管21内に硬化して付着すると、除去することが難しくなる。このため、残留物が硬化する前に、混合管21内に高圧の水を噴射する等して残留物を押し出し、内部を洗浄する。
【0059】
混合装置20は、図4に示した構成に限られるものではなく、例えば図6に示すような接続管21bの注入口27に、切替弁28を備える分岐管29を取り付けた構成としてもよい。分岐管29の1つは、注入口27と接続し、1つはスラリーを供給する管と接続し、残りの1つは水を供給する管と接続することができる。これにより、切替弁28を切り替えるだけで、施工後、スラリーの供給を停止し、水を供給して、混合管21内を簡単に洗浄することができる。
【0060】
また、混合装置20は、図4図6に示すようなY字管21aを用いるのではなく、2つの短管の間に一定の曲率を有する短管を溶接して作製された曲管30を使用し、棒状部材22を中空のものとし、スイベル機構31を設けた構成としてもよい。曲管30は、棒状部材22が回転可能に挿通する穴を有する。棒状部材22は、側面に開口部を有し、その末端が回転手段23と接続される。混合装置20は、棒状部材22に設けられた開口部を覆うようにスイベル機構31を設け、スイベル機構31は、棒状部材22内へ可塑剤を添加するための注入口32を備えている。
【0061】
スイベル機構31は、内部の棒状部材22を回転可能に支持し、注入口32に接続された管から可塑剤を、開口部を通して中空の棒状部材22内へ供給する。例えば、スイベル機構31は、棒状部材22の周囲に隣接する複数の球体を有し、複数の球体が自在に回転することで、内部の棒状部材22を回転可能に支持する。なお、このような構造は一例であり、スイベル機構31はこのような構造に限定されるものではない。
【0062】
棒状部材22は、先端部に撹拌羽根24が設けられ、撹拌羽根24の取り付け位置より末端側に内部に連通する噴射穴33を少なくとも1つ備えている。図7に示す例では、棒状部材22は2つの噴射穴33を備えている。曲管30内には、スラリーが注入されたベースコンクリートが圧送され、そのベースコンクリートに対して噴射穴33から可塑剤が噴射される。その後、ベースコンクリート、スラリー、可塑剤は、撹拌羽根24により撹拌混合される。
【0063】
ここでは、棒状部材22の噴射穴33から可塑剤を噴射する構成を例示したが、これに限られるものではなく、曲管30に可塑剤を添加するための注入口25を備え、注入口25よりスイベル機構31や回転手段23側に噴射穴33を設け、その噴射穴33からスラリーを噴射させる構成としてもよい。
【0064】
図8および図9を参照して、混合装置20を使用し、製造されたコンクリート材料を打設する方法について説明する。ここでは、コンクリート材料をトンネル掘削面に型枠10を配置し、型枠10内に打設するものとして説明する。コンクリート材料は、型枠10内に流し込んで打設する工事であれば、トンネル工事以外の工事にも使用することができる。
【0065】
図8に示すステップ200から開始し、ステップ201では、ベースコンクリートの圧送の準備を行う。具体的には、図9に示すように、ベースコンクリートは、バッチャープラント40においてセメント、骨材、減水剤等の混和剤をミキサー41で混練して製造される。ベースコンクリートは、生コンとして、ミキサー車42により施工現場まで搬送される。この準備では、ミキサー車42を、コンクリートを圧送する圧送手段としての圧送ポンプ43に近隣して設置し、圧送ポンプ43を、混合装置20の入口26と耐圧ホース等の管44を使用して接続する。
【0066】
ステップ202では、スラリー供給の準備を行う。硬化促進材と凝結調整剤を水に分散させてスラリーを作製し、スラリーを貯留する容器45に、作製したスラリーを入れる。また、容器45を、供給手段としての液体ポンプ46を介し、ホース等の管47を使用して混合装置20の注入口27と接続する。なお、硬化促進材と凝結調整剤は、別々の水に分散させ、2つのスラリーを作製し、別々の容器に各スラリーを貯留させてもよい。この場合、各スラリーは別々に注入されることになる。
【0067】
ステップ203では、可塑剤供給の準備を行う。可塑剤を貯留する容器48に、可塑剤を入れ、容器48を、供給手段としての液体ポンプ49を介し、ホース等の管50を使用して混合装置20の注入口25と接続する。
【0068】
ステップ204では、図9に示すように型枠10に混合装置20を取り付け、隣り合う2つの支保工に跨るようにトンネル内面60から離間させて型枠10を設置する。
【0069】
型枠10は、コンクリート吹付機に取り付けられ、支保工を建て込む際に使用されるエレクターに取り付けられていてもよい。これにより、型枠10内へのコンクリート材料の打設が完了した後、次の位置へ型枠10を移動させ、同様にしてコンクリート材料の打設を行い、これを繰り返すことで、2つの支保工上をトンネルの周方向へ移動させ、2つの支保工の間であって、その周方向全体にコンクリート材料を打設することができる。
【0070】
ステップ201~ステップ204の作業は、この順序に限られるものではなく、また、同時に行ってもよい。
【0071】
ステップ205では、回転手段23を起動させ、撹拌羽根24の回転を開始させる。ここでも、各材料の供給より先に撹拌を開始させているが、各材料を供給した後に撹拌を開始させてもよい。ステップ206では、ミキサー車42からベースコンクリートを圧送ポンプ43へ投入し、圧送ポンプ43により管44を介して混合装置20へベースコンクリートを圧送する。また、液体ポンプ46、49を起動し、スラリーおよび可塑剤を、管47、50を介して混合装置20へ供給する。
【0072】
圧送ポンプ43は、従来の吹付工による仕事量を参考にし、圧送量を6m/hを標準とし、2~15m/hの範囲で調整される。液体ポンプ46は、ベースコンクリート6m/h時、毎分8リットルを標準とし、毎分2~15リットルの範囲で調整される。液体ポンプ49は、ベースコンクリート6m3/h時、毎分1リットルを標準とし、毎分0.5~3リットルの範囲で調整される。
【0073】
ステップ207では、圧送されるベースコンクリートへスラリーを注入し、ステップ208では、ベースコンクリートおよびスラリーへ可塑剤を添加する。ステップ209では、撹拌羽根24によりベースコンクリート、スラリー、可塑剤を撹拌混合し、コンクリート材料を得る。
【0074】
ステップ210では、混合装置20から型枠10内へコンクリート材料を流し込み、打設する。コンクリート材料の打設は、型枠10に設けられた打設穴等の高さ位置より低い、所定の高さ位置まで行われる。所定の高さ位置まで充填されたところで、ステップ211へ進み、コンクリート材料の打設作業を終了する。
【0075】
エレクターを使用して続けて打設を行う場合は、コンクリートが凝結に達し、自立した後、型枠10を移動させ、コンクリート材料を打設することができる。この場合、型枠10を移動する毎に混合管21内を水で洗浄してもよいし、続けて使用するので、数回移動した後等に水で洗浄してもよい。
【0076】
エレクターを使用して続けて打設を行う場合、型枠10を、2つの支保工上を周方向へスライドさせて移動させることができる。
【0077】
図10は、混合管21内を水で洗浄するための洗浄機構の一例を示した図である。洗浄機構70は、混合管21と型枠10との間に配設され、コンクリート材料を供給する際は打設穴等を開き、水で洗浄する際は打設穴等を閉じるように動作する。
【0078】
洗浄機構70は、混合管21と型枠10とを連結する中空の連結部材71と、連結部材71から下方に延びる排出管72と、シャッター73と、打設穴等または排出管72の開口部を閉じるようにシャッター73を移動させるシリンダ74とを含む。
【0079】
排出管72は、一部が伸縮可能な蛇腹管とされている。シャッター73は、打設穴等と排出管72の開口部を閉じることができる大きさの板部材で、一端にヒンジが設けられ、一端を中心として回動可能に構成されている。シリンダ74は、シャッター73の一端と一定の角度で連結されている排出管72と接続され、シャッター73の他端を型枠側へ、または排出管側へ移動させることにより、打設穴等または排出管72の開口部を閉鎖する。このとき、ヒンジを中心としたシャッター73の回動に伴って、排出管72もヒンジを中心として回動する。シリンダ74は、油圧、空気圧、水圧、電動のいずれによって伸縮駆動するものであってもよい。
【0080】
型枠10を使用してコンクリート材料を打設する際は、図10(a)に示すように、シリンダ74によりシャッター73の他端を下側へ倒すように移動し、連結部材71の下側に設けられた排出管72の開口部を閉鎖する。これにより、コンクリート材料は、排出管72へは流れず、打設穴等を通して矢線に示すように型枠10内へ打設される。
【0081】
一方、混合管21に水を供給し、混合管21内を洗浄する際は、図10(b)に示すように、シリンダ74によりシャッター73の他端を上側に起き上がらせるように移動し、型枠10の打設穴等を閉鎖する。これにより、混合管21内へ供給された水は、排出管72を通して排出することが可能となる。
【0082】
以上に説明してきたように、可塑剤と硬化促進材と凝結調整剤とを併用したコンクリート材料を提供することで、型枠内へのコンクリート充填性を改善し、コンクリート自体の品質や耐久性を向上させることができる。また、コンクリートの硬化が促進され、初期強度の発現性が良好で、型枠の早期脱型が可能となる。
【0083】
また、上記構成の混合装置を用いて混合を行うことで、ベースコンクリートと各混和剤とを効率的に撹拌混合することができる。撹拌混合して得られたコンクリート材料は、型枠内に流し込むことで打設されるため、粉塵の発生やリバウンドによるロスの発生を抑制することができる。
【0084】
これまで本発明のコンクリート材料、混合装置、混合方法およびコンクリート材料の打設方法を上述した実施形態をもって詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0085】
10…型枠
11…面板
12、13…側板
14…底板
15…角部
16…境界
17…コンクリート
18…断面
20…混合装置
21…混合管
21a…Y字管
21b…接続管
22…棒状部材
23…回転手段
24…撹拌羽根
25…注入口
26…入口
27…注入口
28…切替弁
29…分岐管
30…曲管
31…スイベル機構
32…注入口
33…穴
40…バッチャープラント
41…ミキサー
42…ミキサー車
43…圧送ポンプ
44、47、50…管
45、48…容器
46、49…液体ポンプ
60…トンネル内面
70…洗浄機構
71…連結部材
72…排出管
73…シャッター
74…シリンダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10