IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<図1>
  • -磁界発生装置、及び、磁気歯車 図1
  • -磁界発生装置、及び、磁気歯車 図2
  • -磁界発生装置、及び、磁気歯車 図3
  • -磁界発生装置、及び、磁気歯車 図4
  • -磁界発生装置、及び、磁気歯車 図5
  • -磁界発生装置、及び、磁気歯車 図6
  • -磁界発生装置、及び、磁気歯車 図7
  • -磁界発生装置、及び、磁気歯車 図8
  • -磁界発生装置、及び、磁気歯車 図9
  • -磁界発生装置、及び、磁気歯車 図10
  • -磁界発生装置、及び、磁気歯車 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】磁界発生装置、及び、磁気歯車
(51)【国際特許分類】
   H02K 49/10 20060101AFI20231226BHJP
   H02K 7/10 20060101ALI20231226BHJP
   F16H 49/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H02K49/10 A
H02K7/10 A
F16H49/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020005414
(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2021114816
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 幹人
(72)【発明者】
【氏名】松下 崇俊
(72)【発明者】
【氏名】梅田 彰彦
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/178111(WO,A1)
【文献】特開2015-061423(JP,A)
【文献】特開2012-050179(JP,A)
【文献】国際公開第2016/204238(WO,A1)
【文献】特開平09-173890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 49/10
H02K 7/10
F16H 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隙間に対向配置される支持部材上に複数の磁石を備える磁界発生装置であって、
前記複数の磁石は、
前記支持部材の支持面に対して直交する磁化方向を有する第1磁石と、
前記支持面に対して平行な磁化方向を有する第2磁石と、
を含み、
前記第1磁石及び前記第2磁石は、前記支持面に沿って交互に配置されるハルバッハ磁石配列を構成し、
前記第1磁石又は前記第2磁石の一方は、前記支持面に直交する第1寸法が前記第1磁石又は第2磁石の一方の他方より小さく、前記隙間側から見て凹状に形成され
前記隙間に供給された冷却媒体が、前記第1磁石及び前記第2磁石に対して前記隙間側から接触するように構成される、磁界発生装置。
【請求項2】
記第2磁石は、前記支持面に平行な第2寸法が前記第1磁石より大きい、請求項1に記載の磁界発生装置。
【請求項3】
前記第2磁石は、前記支持面に直交する第1寸法が前記第1磁石より小さく形成される、請求項1又は2に記載の磁界発生装置。
【請求項4】
前記第1磁石は、前記支持面に直交する第1寸法が前記第2磁石より小さく形成される、請求項1又は2に記載の磁界発生装置。
【請求項5】
前記第2磁石の前記第2寸法の前記第1磁石の前記第2寸法に対する寸法比が1.5である、請求項2に記載の磁界発生装置。
【請求項6】
前記第1磁石及び前記2磁石は、前記支持面に接触するように配置される、請求項1から5のいずれか一項に記載の磁界発生装置。
【請求項7】
前記第1磁石又は前記第2磁石の一方は、前記支持面上に接触するように配置され、
前記第1磁石又は前記第2磁石の他方は、前記支持面から離れるように配置される、請求項1から5のいずれか一項に記載の磁界発生装置。
【請求項8】
前記第1磁石又は前記第2磁石の他方と前記支持面との間に前記冷却媒体を供給可能に構成される、請求項7に記載の磁界発生装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の磁界発生装置を備える、磁気歯車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁界発生装置、及び、当該磁界発生装置を備える磁気歯車に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車装置の一種として、磁石の吸引力及び反発力を利用し、非接触でトルクや運動を伝達することにより、歯の接触により生じる摩耗、振動、騒音等の問題を回避できるようにした磁気歯車がある。この磁気歯車のうち磁束変調型(高調波型)磁気歯車は、同心円状(同軸)に配置された内周側の磁石界磁及び外周側の磁石界磁と、これら2つの磁石界磁の間にそれぞれ隙間(エアギャップ)を設けつつ配置され、周方向に交互に配列される複数の磁極片(ポールピース)及び複数の非磁性体を有する磁極片装置を備える。そして、上記の2つの磁石界磁の有する磁石の磁束が上記の各磁極片により変調されることで高調波磁束が生じ、この高調波磁束に上記の2つの磁石界磁がそれぞれ同期することで、磁束変調型磁気歯車は動作する。
【0003】
このような磁気歯車では、トルク密度を高めるために、これら2つの磁石界磁にハルバッハ磁石配列を採用することで、漏れ磁束を低減することが有効である。ハルバッハ磁石配列は、隙間に対向配置される支持部材の支持面上に、支持面に直交する磁化方向を有する第1磁石(径方向磁化磁石)と、支持面に平行な磁化方向を有する第2磁石(周方向磁化磁石)とを、支持面に沿って交互に配置することによって構成される。
【0004】
ハルバッハ磁石配列では、磁化方向が異なる磁石同士が隣接配置されるため、外部減磁界によって動作点が下がってしまう。またコイルの発熱や雰囲気温度上昇などの影響によって磁石の保磁力が低下する熱減磁が生じることがある。このような熱減磁は、減磁量を増加させ、外部減磁界によって下がった動作点を更に下げてしまう。これに対して特許文献1では、支持面に平行な磁化方向を有する磁化磁石(周方向磁化磁石)が熱減磁の影響を受けやすいことに着目して、当該磁化磁石のギャップ近傍に、重希土類のDy(ジスプロシウム)、Tb(テルビウム)のいずれかを添加することで、保磁力(熱減磁特性)を向上することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5370912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、熱減磁しやすい周方向磁化磁石のギャップ近傍に重希土類Dy(ジスプロシウム)、Tb(テルビウム)を添加することで減磁量を抑制している。しかしながら、このような重希土類は高価な材料であり、生産コストが高くなってしまう。
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みてなされたものであり、低コストで、減磁量を抑制することで磁界を高めることが可能な磁界発生装置、及び、当該磁界発生装置を備える磁気歯車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態に係る磁界発生装置は、上記課題を解決するために、
隙間に対向配置される支持部材上に複数の磁石を備える磁界発生装置であって、
前記複数の磁石は、
前記支持部材の支持面に対して直交する磁化方向を有する第1磁石と、
前記支持面に対して平行な磁化方向を有する第2磁石と、
を含み、
前記第1磁石及び前記第2磁石は、前記支持面に沿って交互に配置されるハルバッハ磁石配列を構成し、
前記第1磁石又は前記第2磁石の一方は、前記支持面に直交する第1寸法が前記第1磁石又は第2磁石の一方の他方より小さく、前記隙間側から見て凹状に形成される。
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態に係る磁界発生装置は、上記課題を解決するために、
隙間に対向配置される支持部材上に複数の磁石を備える磁界発生装置であって、
前記複数の磁石は、
前記支持部材の支持面に対して直交する磁化方向を有する第1磁石と、
前記支持面に対して平行な磁化方向を有する第2磁石と、
を含み、
前記第1磁石及び前記第2磁石は、前記支持面に沿って交互に配置されるハルバッハ磁石配列を構成し、
前記第2磁石は、前記支持面に平行な第2寸法が前記第1磁石より大きい。
【発明の効果】
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、低コストで、減磁量を抑制することで磁界を高めることが可能な磁界発生装置、及び、当該磁界発生装置を備える磁気歯車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る磁気歯車の径方向に沿った断面の模式図である。
図2図1に示す磁気歯車の断面の一部を概略的に示す拡大断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る磁気歯車の軸方向に沿った断面の模式図である。
図4図2の外径側磁石界磁が有する磁界発生装置について、各磁石の磁化方向を示す模式図である。
図5図4の比較例である。
図6図4の第1磁石の第1寸法に対する第2磁石の第1寸法の寸法比と、減磁率との関係の検証結果である。
図7図4の第1変形例である。
図8図4の第2変形例である。
図9図4の第3変形例である。
図10図9の第1磁石の第2寸法に対する第2磁石の第2寸法の寸法比と、磁気歯車の最大伝達トルクとの関係の検証結果である。
図11図4の第4変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0013】
(磁気歯車9の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る磁気歯車9の径方向cに沿った断面の模式図である。図2は、図1に示す磁気歯車9の断面の一部を概略的に示す拡大断面図である。図3は、本発明の一実施形態に係る磁気歯車9の軸方向bに沿った断面の模式図である。
【0014】
磁気歯車9は、磁石による吸引力および反発力を利用して、非接触でトルクを伝達する機構を有する装置である。図1図3に示す磁気歯車9は、磁束変調型(高調波型)であり、図示されるように、全体として円筒状(環状。以下同様)の形状を有する外径側磁石界磁5(アウターロータ)と、全体として円筒状あるいは円柱状の形状を有する内径側磁石界磁7(インナーロータ)と、全体として円筒状の形状を有する磁極片装置10(センターロータ)とが同軸上に、互いに径方向c(半径方向)に一定距離の隙間G(エアギャップ)を空けて配置された構造を有する。すなわち、外径側磁石界磁5は、内径側磁石界磁7に対して径方向外側(外径側)に配置される。また、磁極片装置10は、外径側磁石界磁5と内径側磁石界磁7との間に配置される。そして、これらの外径側磁石界磁5、内径側磁石界磁7及び磁極片装置10は同心状に配置される。
【0015】
また、上記の外径側磁石界磁5及び内径側磁石界磁7は、図2に示すように、磁気歯車9の径方向cに沿って切断した断面(以下、径方向断面)において周方向aに沿って配置された複数の磁石2を有する磁界発生装置1を備える。磁界発生装置1の詳細構造については後述するが、磁界発生装置1を構成する各磁石2は、所定の隙間G(エアギャップ)を介して対向配置される支持部材4、11の支持面4a、11a上にそれぞれ配置され、ハルバッハ磁石配列を構成する。外径側磁石界磁5及び内径側磁石界磁7は、このような磁界発生装置1を備えることにより磁気回路を構成する。
【0016】
磁極片装置10は、周方向aの全周に渡って互いに間隔(等間隔)を置いて配置された複数の磁極片41(ポールピース)を有する。そして、例えば内径側磁石界磁7を回転させると、内径側磁石界磁7の磁束が磁極片装置10の磁極片41により変調され、変調された磁場と外径側磁石界磁5の作用により磁極片装置10に回転トルクが生じる。尚、隣り合う磁極片41の間には、非磁性体42が交互に配置される。
【0017】
図1図3に示す実施形態では、磁気歯車9(磁束変調型磁気歯車)の一例として、モータと一体化された磁気ギアードモータが示されている。より詳細には、この磁気ギアードモータにおいては、外径側磁石界磁5は複数のコイル6(図2参照)が設置されたステータ(固定子)であり、コイル6の起磁力により内径側磁石界磁7(高速ロータ)を回転させることで、内径側磁石界磁7の有する磁石2の極対数に対する外径側磁石界磁5の有する磁石2の極対数の比で定まる減速比に従って、磁極片装置10(低速ロータ)が回転するようになっている。
【0018】
また、磁気ギアードモータには、動作時に生じる熱から上記の構成要素を保護するために、例えば空気や水などの冷却媒体Dが供給される。具体的には、図3に示すように、内径側磁石界磁7と磁極片装置10との間、及び、外径側磁石界磁5と磁極片装置10との間にそれぞれ円筒状の隙間Gが形成されており、これらの円筒状の隙間Gに対して、それぞれ、一端側から他端側に向かって流れるように冷却媒体Dが供給されるように構成される。また、外径側磁石界磁5とその外周側に位置するハウジングHとの間に形成される間隙に対しても冷却媒体Dが同様に供給さるようになっている。
尚、上記の外径側磁石界磁5とハウジングHとの間の間隙には、空気などの気体を供給してもよいし、例えば水冷管を設置し、この水冷管に冷却水などを流通させてもよい。
【0019】
(磁界発生装置1の構成)
以下、磁界発生装置1について、詳細に説明する。図4図2の外径側磁石界磁5が有する磁界発生装置1について、各磁石2の磁化方向を示す模式図である。図4では、磁気歯車9の径方向cに沿ったサイズが十分に大きく、各磁石2が配置される支持部材4の支持面4aが平面的(断面図上で直線的)であるとみなして示している。また以下の説明では外径側磁石界磁5が有する磁界発生装置1について述べるが、特段の記載がない限りにおいて、内径側磁石界磁7が有する磁界発生装置1も同様である。
【0020】
磁界発生装置1は、支持面4aに対して直交する磁化方向を有する第1磁石2aと、支持面4aに対して平行な磁化方向を有する第2磁石2bと、を備える。第1磁石2a及び第2磁石2bは、周方向aに沿って交互に配置され、ハルバッハ磁石配列を構成する。第1磁石2aは、支持面4aに直交する(径方向cに沿った)第1寸法L1a、及び、支持面4aに平行な(周方向aに沿った)第2寸法L2aの略矩形断面を有する。第2磁石2bは、支持面4aに直交する(径方向cに沿った)第1寸法L1b、及び、支持面4aに平行な(周方向aに沿った)第2寸法L2bの略矩形断面を有する。
【0021】
ここで図5図4の比較例である。この比較例では、第1磁石2a及び第2磁石2bが同じ寸法の断面形状を有する点において、図4と異なっている。すなわち比較例では、第1磁石2aの第1寸法L1a及び第2寸法L2aと、第2磁石2bの第1寸法L1b及び第2寸法L2bとが等しい。このようなハルバッハ磁石配列では、磁化方向が異なる磁石同士が隣接配置されるため、外部減磁界Bによって動作点が下がってしまう。またコイル6(図2を参照)の発熱や雰囲気温度上昇などの影響によって磁石2の保磁力が低下する熱減磁が生じることがある。このような熱減磁は、減磁量を増加させ、外部減磁界Bによって下がった動作点を更に下げる要因となる。
【0022】
このような課題を解決するために、第1磁石2a又は第2磁石2bの一方は、支持面4aに直交する第1寸法が第1磁石2a又は第2磁石2bの他方より小さく、隙間G側から見て凹状に形成される。図4に示す実施形態では、第2磁石2bの第1寸法L1bが、第1磁石2aの第1寸法L1aより小さくなるように設計されており、隙間G側から見て、第2磁石2bが第1磁石2aに対して凹状に設けられる(換言すると、第1磁石2aが第2磁石2bに対して凸状に設けられる)。これにより、図5の比較例に比べて、動作点の低い磁石部位を減少させることができる。
【0023】
図6図4の第1磁石2aの第1寸法L1aに対する第2磁石2bの第1寸法L1bの寸法比R1(=L1b/L1a)と、減磁率との関係の検証結果である。この検証結果によれば、寸法比R1が大きくなると(第2磁石2bの第1寸法L1bが第1磁石2aの第1寸法L1aより大きくなるに従って)、減磁率が増加し、外部減磁界Bが大きくなることが示された。一方で寸法比R1が小さくなると(第2磁石2bの第1寸法L1bが第1磁石2aの第1寸法L1aより小さくなるに従って)、減磁率が減少し、外部減磁界Bが小さくなることが示された。これにより、前述のように第2磁石2bの第1寸法L1bが、第1磁石2aの第1寸法L1aより小さくなるように設計することで、外部減磁界Bを抑制し、磁力が高い磁界発生装置1を実現できる。
【0024】
また隙間Gから見て、第2磁石2bが第1磁石2aに対して凹状に設けられることで、隙間Gを流れる冷却媒体D(図3を参照)に対する磁石2の接触面積を増加することができる。これにより、コイル6(図2を参照)の発熱や雰囲気温度上昇などの影響によって磁石2の保磁力が低下する熱減磁も抑制し、より効果的に減磁量を減少させることができる。
【0025】
また第1磁石2a及び第2磁石2bは、支持面4aに接触するように配置される。これにより、支持面4a上に第1磁石2a及び第2磁石2bの両者を良好な強度で固定することができ、優れた構造的安定性や剛性を得ることができる。
【0026】
図7図4の第1変形例である。第1変形例では、第1磁石2aは隙間Gの反対側の面が支持面4a上に接触するように配置される一方で、第2磁石2bは隙間Gの反対側の面が支持面4aから離れるように配置される。このように第2磁石2bが隙間Gから離れた位置に配置されることにより、第2磁石2bと支持面4aとの間にはスペースSが形成され、周囲との接触面積が増加する。その結果、冷却性能が向上し、コイル6の発熱や雰囲気温度上昇などの影響によって磁石2の保磁力が低下する熱減磁を、より効果的に抑制できる。この場合、第2磁石2bは径方向外側にある隙間Gと、径方向内側にあるスペースSとの両方から冷却封を送り込むことができ、第2磁石2bと隙間G及びスペースSとの間の伝熱面積が多く、優れた冷却性能を得ることができる。
【0027】
第1変形例の磁界発生装置1は、図7に示すように、当該スペースSに冷却媒体Dを供給するための冷却媒体供給部50を備えてもよい。冷却媒体供給部50は、冷却媒体Dを各スペースSに対して供給可能に構成される。図7では、冷却媒体供給部50は各スペースSに冷却媒体Dを並列的に供給可能な流路を有するが、直列的に供給可能な流路であってもよい。また流路上には、冷却媒体Dの供給量や流路を切り替えるためのバルブが配置されていてもよい。また冷却媒体Dは、例えば図3を参照して前述したように隙間Gに対して供給される冷却媒体Dであり、例えば空気や水などであるが、隙間Gを流れる冷却媒体Dとは独立した別の冷却媒体であってもよい。第1変形例では、このような冷却媒体供給部50を備えることにより、スペースSにおける冷却性能を更に向上できるので、コイル6の発熱や雰囲気温度上昇などの影響によって磁石の保磁力が低下する熱減磁を抑制し、より効果的に減磁量を減少させることができる。
【0028】
図8図4の第2変形例である。第2変形例では、図4に示す実施形態とは逆に、第1磁石2aの第1寸法L1aが、第2磁石2bの第1寸法L1bより小さくなるように設計されており、隙間G側から見て、第1磁石2aが第2磁石2bに対して凹状に設けられる(換言すると、第2磁石2bが第1磁石2aに対して凸状に設けられる)。この場合は、外部減磁界の強い部位が残るものの、第2磁石2bの体積増加により、動作点を上げることができる。
【0029】
図9図4の第3変形例である。第3変形例では、第2磁石2bの第2寸法L2bが第1磁石2aの第2寸法L2aより大きくなるように設計されている(尚、第2磁石2bの第1寸法L1bは、図5の比較例と同様に、第1磁石2aの第1寸法L1aと等しい)。
【0030】
ここで図10図9の第1磁石2aの第2寸法L2aに対する第2磁石2bの第2寸法L2bの寸法比R2(=L2b/L2a)と、磁気歯車9の最大伝達トルクとの関係の検証結果である。この検証結果によれば、寸法比R2が大きくなると(第2磁石2bの第2寸法L2bが第1磁石2aの第2寸法L2aより大きくなるに従って)、磁気歯車9の最大伝達トルクは増加してピークを示した後、減少する傾向が確認された。そして、最大伝達トルクは寸法比R2が約1.5のときに最大値を示すことが確認された。これにより、寸法比R2が約1.5になるように、第1磁石2aの第2寸法L2a、及び、第2磁石2bの第2寸法L2bを設計することで、第2磁石2bの第2寸法L2bを増加させることで磁石の動作点が向上し、磁束密度が増加することにより、より効果的に最大伝達トルクを増加させることができる。
【0031】
図11図4の第4変形例である。第4変形例では、第2磁石2bの第1寸法L1bが第1磁石2aの第1寸法L1aより小さく、且つ、第2磁石2bの第2寸法L2bが第1磁石2aの第2寸法L2aより大きくなるように設計されている。すなわち、第1寸法L1に関しては、図4図7図8に示す実施形態と同様に第2磁石2bが第1磁石2aより小さく、第2寸法L2に関しては図9に示す実施形態と同様に第2磁石2bが第1磁石2aより大きくなるように(好ましくは寸法比R1が約1.5になるように)設計されている。これにより、図5の比較例に比べて、外部減磁界Bをより効果的に減少させるとともに、最大伝達トルクを増加させることができる。
【0032】
以上説明したように上述の各実施形態によれば、低コストで、減磁量を抑制することで磁界を高めることが可能な磁界発生装置1、及び、当該磁界発生装置1を備える磁気歯車9を提供することができる。
【0033】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0034】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0035】
(1)一態様に係る磁界発生装置は、
隙間(例えば上記実施形態の隙間G)に対向配置される支持部材(例えば上記実施形態の支持部材4、11)上に複数の磁石(例えば上記実施形態の磁石2)を備える磁界発生装置(例えば上記実施形態の磁界発生装置1)であって、
前記複数の磁石は、
前記支持部材の支持面に対して直交する磁化方向を有する第1磁石(例えば上記実施形態の第1磁石2a)と、
前記支持面に対して平行な磁化方向を有する第2磁石(例えば上記実施形態の第2磁石2b)と、
を含み、
前記第1磁石及び前記第2磁石は、前記支持面に沿って交互に配置されるハルバッハ磁石配列を構成し、
前記第1磁石又は前記第2磁石の一方は、前記支持面に直交する第1寸法が前記第1磁石又は第2磁石の一方の他方より小さく、前記隙間側から見て凹状に形成される。
【0036】
上記(1)の態様によれば、ハルバッハ磁石配列を構成する第1磁石及び第2磁石を備える。第1磁石又は第2磁石の一方は他方に比べて支持面に直交する第1寸法が小さく形成される。これにより、外部減磁界を抑制することができる。また第1磁石及び第2磁石の第1寸法が異なることで隙間側から見て複数の磁石にわたる表面に凹凸が形成される。これにより隙間との接触面積が増加し、複数の磁石の冷却性能が向上することで、コイルの発熱や雰囲気温度上昇などの影響によって磁石の保磁力が低下する熱減磁を抑制できる。その結果、特段高価な材料を用いることなく、ハルバッハ磁石配列における減磁量を減少することができ、磁界が高い磁界発生装置を実現できる。
【0037】
(2)一態様に係る磁界発生装置は、
隙間(例えば上記実施形態の隙間G)に対向配置される支持部材(例えば上記実施形態の支持部材4、11)上に複数の磁石(例えば上記実施形態の磁石2)を備える磁界発生装置(例えば上記実施形態の磁界発生装置1)であって、
前記複数の磁石は、
前記支持部材の支持面に対して直交する磁化方向を有する第1磁石(例えば上記実施形態の第1磁石2a)と、
前記支持面に対して平行な磁化方向を有する第2磁石(例えば上記実施形態の第2磁石2b)と、
を含み、
前記第1磁石及び前記第2磁石は、前記支持面に沿って交互に配置されるハルバッハ磁石配列を構成し、
前記第2磁石は、前記支持面に平行な第2寸法が前記第1磁石より大きい。
【0038】
上記(2)の態様によれば、ハルバッハ磁石配列を構成する第1磁石及び第2磁石を備える。第2磁石はヨーク対向面の平行方向における第1寸法が第1磁石より大きく形成される。このように第2磁石の体積を増加させることで、磁界発生装置を磁気歯車に適用した際に、磁気歯車における最大伝達トルクを効果的に向上できる。
【0039】
(3)他の態様では上記(1)又は(2)の態様において、
前記第2磁石は、前記支持面に直交する第1寸法が前記第1磁石より小さく形成される。
【0040】
上記(3)の態様によれば、第2磁石の第1寸法を第1磁石より小さく形成することで、特段高価な材料を用いることなく、ハルバッハ磁石配列における減磁量を減少することができ、磁界が高い磁界発生装置を実現できる。
【0041】
(4)他の態様では上記(1)又は(2)の態様において、
前記第1磁石は、前記支持面に直交する第1寸法が前記第2磁石より小さく形成される。
【0042】
上記(4)の態様によれば、第1磁石の第1寸法を第2磁石より小さく形成することで、特段高価な材料を用いることなく、隙間との接触面積を増加させることで冷却性能を向上させつつ、ハルバッハ磁石配列における減磁量を減少することができ、磁界が高い磁界発生装置を実現できる。
【0043】
(5)他の態様では上記(2)の態様において、
前記第2磁石の前記第2寸法の前記第1磁石の前記第2寸法に対する寸法比(例えば上記実施形態の寸法比R2)が1.5である。
【0044】
上記(5)の態様によれば、ヨーク対向面の平行方向における寸法比を上記数値とすることで、磁界発生装置を磁気歯車に適用した際に、磁気歯車における最大伝達トルクをより効果的に向上できる。
【0045】
(6)他の態様では上記(1)から(5)のいずれか一態様において、
前記第1磁石及び前記2磁石は、前記支持面に接触するように配置される。
【0046】
上記(6)の態様によれば、支持面上に第1磁石及び第2磁石の両者が接触するように配置される。これにより、支持面上に第1磁石及び第2磁石を良好な強度で固定することができ、優れた構造的安定性や剛性を得ることができる。
【0047】
(7)他の態様では上記(1)から(5)のいずれか一態様において、
前記第1磁石又は前記第2磁石の一方は、前記支持面上に接触するように配置され、
前記第1磁石又は前記第2磁石の他方は、前記支持面から離れるように配置される。
【0048】
上記(7)の態様によれば、第1磁石及び第2磁石の一方が支持面上に接触するように配置される一方で、他方は離れるように配置される。これにより、支持面から離れて配置される磁石と支持面との間にスペースが形成され、磁石の外部に対する接触面積が増加する。その結果、磁石の冷却性能を向上し、コイルの発熱や雰囲気温度上昇などの影響によって磁石の保磁力が低下する熱減磁を、より効果的に抑制できる。
【0049】
(8)他の態様では上記(7)の態様において、
前記第1磁石又は前記第2磁石の他方と前記支持面との間に冷却媒体(例えば上記実施形態の冷却媒体D)を供給可能に構成される。
【0050】
上記(8)の態様によれば、磁石と支持面との間に形成されるスペースに対して、例えば空気や水などの冷却媒体が供給されるように構成される。これにより、磁石の冷却性能を更に向上し、コイルの発熱や雰囲気温度上昇などの影響によって磁石の保磁力が低下する熱減磁を、より効果的に抑制できる。
【0051】
(9)一態様に係る磁気歯車は、
上記(1)から(8)のいずれか一態様の磁界発生装置(例えば上記実施形態の磁界発生装置1)を備える。
【0052】
上記(9)の態様によれば、上記各態様の磁界発生装置を備えることで、コストを抑えつつ、より強力な磁界を利用することで、より大きな最大伝達トルクを有する磁気歯車を実現できる。
【符号の説明】
【0053】
1 磁界発生装置
2 磁石
2a 第1磁石
2b 第2磁石
4 支持部材
4a 支持面
5 外径側磁石界磁
6 コイル
7 内径側磁石界磁
9 磁気歯車
10 磁極片装置
41 磁極片
42 非磁性体
50 冷却媒体供給部
B 外部減磁界
D 冷却媒体
G 隙間
H ハウジング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11