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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】操舵システム
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/24 20060101AFI20231226BHJP
   B63H 25/30 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B63H25/24 Z
B63H25/30 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020032697
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021133843
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 辰喜
(72)【発明者】
【氏名】田中 英紀
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203372387(CN,U)
【文献】特開2005-090732(JP,A)
【文献】特開2013-107447(JP,A)
【文献】特開平06-156386(JP,A)
【文献】米国特許第05857488(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/24
B63H 25/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に搭載される操舵システムであって、
船底を貫通する舵軸を介して舵板を揺動させる、第1作動室および第2作動室を含む油圧アクチュエータと、
作動油を吐出するポンプと、
一対の給排ラインにより前記第1作動室および前記第2作動室と接続されるとともに、ポンプラインにより前記ポンプと接続された、スプールを含む切換弁と、
前記スプールを移動させる、前記スプールの移動速度が電気的に変更可能に構成された移動機構と、
前記移動機構を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記舵板を揺動させる操舵指令を受けたときに、前記スプールの移動速度が徐々に増加した後に徐々に減少する曲線上を推移するように前記移動機構を制御する、操舵システム。
【請求項2】
前記第1作動室または前記第2作動室の圧力を検出する圧力センサを備え、
前記制御装置は、前記圧力センサで検出される圧力に応じて前記曲線を補正する、請求項に記載の操舵システム。
【請求項3】
船舶に搭載される操舵システムであって、
船底を貫通する舵軸を介して舵板を揺動させる、第1作動室および第2作動室を含む油圧アクチュエータと、
作動油を吐出するポンプと、
一対の給排ラインにより前記第1作動室および前記第2作動室と接続されるとともに、ポンプラインにより前記ポンプと接続された、スプールを含む切換弁と、
前記スプールを移動させる、前記スプールの移動速度が電気的に変更可能に構成された移動機構と、
前記移動機構を制御する制御装置と、
前記スプールの位置を検出する位置検出器と、を備え、
前記移動機構は、前記スプールと連結されたナット、前記ナットと螺合するねじ軸、および前記ねじ軸を回転させる電動モータを含む直動機構であり、
前記位置検出器は、前記スプールの位置として前記電動モータの回転量を検出するロータリーエンコーダであり、
前記制御装置は、前記舵板を揺動させる操舵指令を受けたときに、検出された前記スプールの位置および前記電動モータの電流に基づいて前記スプールがスティックしたか否かを判定する、操舵システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記スプールがスティックしたと判定したときに、エラー信号を出力する、請求項に記載の操舵システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記スプールがスティックしたと判定したときに、前記スプールが前記操舵指令に対応する方向と逆方向に移動した後に前記操舵指令に対応する方向に移動するように前記移動機構を制御する、請求項またはに記載の操舵システム。
【請求項6】
船舶に搭載される操舵システムであって、
船底を貫通する舵軸を介して舵板を揺動させる、第1作動室および第2作動室を含む油圧アクチュエータと、
作動油を吐出するポンプと、
一対の給排ラインにより前記第1作動室および前記第2作動室と接続されるとともに、ポンプラインにより前記ポンプと接続された、スプールを含む切換弁と、
前記スプールを移動させる、前記スプールの移動速度が電気的に変更可能に構成された移動機構と、
前記移動機構を制御する制御装置と、
前記スプールの位置を検出する位置検出器と、を備え、
前記制御装置は、検出された前記スプールの位置に基づいて前記第1作動室または前記第2作動室への作動油の供給流量を算出し、算出された供給流量に基づいて前記舵板の角度を算出する、操舵システム。
【請求項7】
前記制御装置は、算出された前記舵板の角度が許容範囲外にあるとき、エラー信号を出力する、請求項に記載の操舵システム。
【請求項8】
船舶に搭載される操舵システムであって、
船底を貫通する舵軸を介して舵板を揺動させる、第1作動室および第2作動室を含む油圧アクチュエータと、
作動油を吐出する第1ポンプと、
一対の給排ラインにより前記第1作動室および前記第2作動室と接続されるとともに、ポンプラインにより前記第1ポンプと接続された、第1スプールを含む第1切換弁と、
前記第1スプールを移動させる、前記第1スプールの移動速度が電気的に変更可能に構成された第1移動機構と、
前記第1移動機構を制御する第1制御装置と、
前記第1スプールの位置を検出する第1位置検出器と、
作動油を吐出する第2ポンプと、
一対の給排ラインにより前記第1作動室および前記第2作動室と接続されるとともに、ポンプラインにより前記第2ポンプと接続された、第2スプールを含む第2切換弁と、
前記第2スプールを移動させる、前記第2スプールの移動速度が電気的に変更可能に構成された第2移動機構と、
前記第2移動機構を制御する、前記第1制御装置と通信可能な第2制御装置と、
前記第2スプールの位置を検出する第2位置検出器と、を備え、
前記第1制御装置または前記第2制御装置は、前記第1位置検出器で検出される前記第1スプールの位置と、前記第2位置検出器で検出される前記第2スプールの位置との間の位置関係に不整合が生じたとき、エラー信号を出力する、操舵システム。
【請求項9】
船舶に搭載される操舵システムであって、
船底を貫通する舵軸を介して舵板を揺動させる、第1作動室および第2作動室を含む油圧アクチュエータと、
作動油を吐出する第1ポンプと、
一対の給排ラインにより前記第1作動室および前記第2作動室と接続されるとともに、ポンプラインにより前記第1ポンプと接続された、第1スプールを含む第1切換弁と、
前記第1スプールを移動させる、前記第1スプールの移動速度が電気的に変更可能に構成された第1移動機構と、
前記第1移動機構を制御する第1制御装置と、
作動油を吐出する第2ポンプと、
一対の給排ラインにより前記第1作動室および前記第2作動室と接続されるとともに、ポンプラインにより前記第2ポンプと接続された、第2スプールを含む第2切換弁と、
前記第2スプールを移動させる、前記第2スプールの移動速度が電気的に変更可能に構成された第2移動機構と、
前記第2移動機構を制御する、前記第1制御装置と通信可能な第2制御装置と、を備え、
前記第1制御装置または前記第2制御装置は、前記第1制御装置が受けた操舵指令と前記第2制御装置が受けた操舵指令が異なるときに、エラー信号を出力する、操舵システム。
【請求項10】
前記切換弁は、回収ラインにより前記ポンプと接続されている、請求項1~の何れか一項に記載の操舵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に搭載される操舵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、船舶には、油圧により舵板を操作する操舵システムが搭載されている。このような操舵システムは、船板を貫通する舵軸を介して舵板を揺動させる油圧アクチュエータを含む。油圧アクチュエータは第1作動室および第2作動室を含み、第1作動室と第2作動室の一方へ作動油が供給されたときに舵板を左舷方向へ揺動させ、第1作動室と第2作動室の他方へ作動油が供給されたときに舵板を右舷方向へ揺動させる。
【0003】
例えば、特許文献1には、油圧アクチュエータとしてラムの両側に第1作動室および第2作動室が形成された油圧シリンダが採用された操舵システムが開示されている。この操舵システムでは、油圧シリンダの第1作動室および第2作動室が一対の給排ラインにより切換弁と接続されている。切換弁は、ポンプラインによりポンプと接続されるとともに、タンクラインによりタンクと接続されている。切換弁は、中立位置では一対の給排ラインをブロックし、舵板を揺動させる際に一対の給排ラインの一方をポンプラインと連通させるとともに他方をタンクラインと連通させる。
【0004】
より詳しくは、切換弁はスプールを含み、このスプールは一対の電磁弁により駆動される。切換弁には、スプールの両端面にパイロット圧を作用させるための一対のパイロット室が形成されており、各電磁弁は、対応するパイロット室へパイロット圧を導入するか否かを切り換える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-76997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された操舵システムでは、電磁弁が単なるオンオフ弁であるので、電磁弁の電磁コイルが励磁されるとスプールが瞬時に移動する。従って、フレキシブルな運転が困難である。
【0007】
そこで、本発明は、フレキシブルな運転が可能な操舵システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の操舵システムは、船舶に搭載される操舵システムであって、船底を貫通する舵軸を介して舵板を揺動させる、第1作動室および第2作動室を含む油圧アクチュエータと、作動油を吐出するポンプと、一対の給排ラインにより前記第1作動室および前記第2作動室と接続されるとともに、ポンプラインにより前記ポンプと接続された、スプールを含む切換弁と、前記スプールを移動させる、前記スプールの移動速度が電気的に変更可能に構成された移動機構と、を備える、ことを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、スプールを移動させる移動機構がスプールの移動速度が電気的に変更可能に構成されているので、フレキシブルな運転が可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フレキシブルな運転が可能な操舵システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る操舵システムの概略構成図である。
図2】直動機構の断面図である。
図3】(a)は操舵指令の一例を示す図であり、(b)はその操舵指令に応じたスプール位置を示す図である。
図4図1に示す操舵システムが搭載された船舶の一部の断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る操舵システムの概略構成図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る操舵システムの概略構成図である。
図7】その他の実施形態に係る操舵システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態に係る操舵システム1Aを示す。この操舵システム1Aは、図4に示すように、船舶に搭載されるものである。
【0013】
具体的に、操舵システム1Aは、船底10を鉛直方向に貫通する舵軸12を介して舵板11を揺動させる油圧アクチュエータ2を含む。本実施形態では、油圧アクチュエータ2が、舵軸12だけでなく船内に配置された舵柄13をも介して舵板11を揺動させる。
【0014】
油圧アクチュエータ2は、図1に示すように、第1作動室22および第2作動室23を含み、第1作動室22と第2作動室23の一方(本実施形態では第2作動室23)へ作動油が供給されたときに舵板11を左舷方向(図1では右方向)へ揺動させ、第1作動室22と第2作動室23の他方(本実施形態では第1作動室22)へ作動油が供給されたときに舵板を右舷方向(図1では左方向)へ揺動させる。
【0015】
本実施形態では、油圧アクチュエータ2が、ラム21の両側に第1作動室22および第2作動室23が形成された油圧シリンダである。このため、第1作動室22と第2作動室23の一方への作動油の供給流量と他方からの作動油の排出流量は等しい。
【0016】
ラム21は、舵軸12の軸方向と直交する方向に延びる棒状のものである。ラム21の中央にはピン24が設けられており、このピン24が舵柄13と係合している。より詳しくは、舵柄13には、舵軸12から遠ざかる方向に開口する溝が設けられており、この溝にピン24が挿入されている。
【0017】
なお、油圧アクチュエータ2の数は必ずしも1つである必要はなく、油圧シリンダが舵軸12を挟んで互いに平行となるように2つであってもよい。また、油圧アクチュエータ2は、必ずしもラム21の両側に第1作動室22および第2作動室23が形成された油圧シリンダである必要はなく、両端が閉塞されたチューブ内にピストンが配置され、そのピストンからロッドが延びる単ロッドの油圧シリンダであってもよい。
【0018】
油圧アクチュエータ2が単ロッドの油圧シリンダである場合、チューブの内部がピストンにより第1作動室22と第2作動室23とに仕切られる。また、油圧アクチュエータ2が単ロッドの油圧シリンダである場合、チューブが揺動可能に支持されるとともに、ロッドの先端が舵柄13とピン連結されることもある。
【0019】
さらに、油圧アクチュエータ2は、第1作動室22と第2作動室23とがベーンで仕切られた油圧モータであってもよい。この場合、第1作動室22および第2作動室23がそれぞれ複数設けられてもよい。また、油圧アクチュエータ2が油圧モータの場合、油圧モータの回転軸が連結器により舵軸12と連結される。なお、油圧アクチュエータ2が油圧モータの場合も、第1作動室22と第2作動室23の一方への作動油の供給流量と他方からの作動油の排出流量は等しい。
【0020】
油圧アクチュエータ2の第1作動室22および第2作動室23は、一対の給排ライン44,45により切換弁3と接続されている。切換弁3は、ポンプライン42により作動油を吐出するポンプ41の吐出口と接続さている。本実施形態では、切換弁3が回収ライン43によりポンプ41の吸入口と接続されている。
【0021】
ただし、図示は省略するが、切換弁3はタンクラインによりタンクと接続されてもよい。この場合、ポンプ41の吸入口も吸入ラインによりタンクと接続される。なお、この構成は、上述したように油圧アクチュエータ2が単ロッドの油圧シリンダである場合によく採用される。
【0022】
本実施形態では、ポンプ41が固定容量型のポンプである。ポンプ41は、図略の電動モータにより一定の回転数で駆動される。ただし、ポンプ41の回転数は必ずしも一定である必要はなく、変更されてもよい。また、ポンプ41は、必ずしも固定容量型のポンプである必要はなく、例えば傾転角が変更可能な可変容量型のポンプ(例えば、斜板ポンプまたは斜軸ポンプ)であってもよい。
【0023】
図1および図2に示すように、切換弁3は、ハウジング32と、このハウジング32に摺動可能に保持されたスプール31を含む。スプール31が中立位置に位置するとき、切換弁3は給排ライン44,45をブロックするとともに、ポンプライン42を回収ライン43と連通させる。一方、スプール31が中立位置から軸方向の一方または他方へ移動すると、切換弁3は、給排ライン44,45の一方をポンプライン42と連通させるとともに、他方を回収ライン43と連通させる。
【0024】
スプール31は、移動機構5により移動される。移動機構5は、スプール31の移動速度が電気的に変更可能に構成されている。移動機構5は、制御装置6により制御される。
【0025】
本実施形態では、移動機構5が直動機構5Aである。具体的に、直動機構5Aは、スプール31の軸方向に延びる棒状の連結部材51と、連結部材51を介してスプール31と連結されたナット52と、ナット52と螺合するねじ軸53と、ねじ軸53を回転させる電動モータ54を含む。連結部材51、ナット52、ねじ軸53および電動モータ54は、スプール31と同軸上に配置されている。また、ハウジング32と電動モータ54の間には筒状のケーシング55が介在しており、このケーシング55内に連結部材51、ナット52およびねじ軸53が収容されている。
【0026】
例えば、電動モータ54はサーボモータである。電動モータ54がねじ軸53を一方向に回転させると、ナット52、連結部材51およびスプール31がスプール31の軸方向の一方に移動し、電動モータ54がねじ軸53を逆方向に回転させると、ナット52、連結部材51およびスプール31がスプール31の軸方向の他方に移動する。
【0027】
以下、図2を参照して、直動機構5Aの構成を詳細に説明する。なお、以下では、説明の便宜上、スプール31の軸方向の一方(図2の右側)を右方、他方(図2の左側)を左方という。
【0028】
本実施形態では、ボールジョイントにより、スプール31の右端と連結部材51の左端とが連結されている。具体的には、連結部材51の左端に溝51aが設けられており、この溝51aにボール35が保持されている。一方、スプール31の右端には、溝51a内に挿入される板状の突起31aが設けられており、この突起31aにボール35と嵌合する穴が設けられている。
【0029】
ただし、本実施形態とは逆に、スプール31の右端にボール35を保持する溝51aが設けられ、連結部材51の左端に溝51a内に挿入される突起31aが設けられてもよい。あるいは、スプール31の右端と連結部材51の左端とは、ボールジョイント以外のジョイントにより連結されてもよい。
【0030】
連結部材51の中心線上には、右方に開口する穴51bが設けられており、ナット52はその穴51b内に挿入された状態で連結部材51に固定されている。なお、連結部材51は、図略のガイド機構により、左右方向にのみ移動可能となる(すなわち、回転が禁止される)ようにガイドされている。
【0031】
さらに、本実施形態では、連結部材51とケーシング55との間に、電動モータ54に電力が供給されていないときにスプール31を中立位置に維持するための機構が設けられている。この機構は、連結部材51に挿通されたコイルばね56と、コイルばね56の両端部を支持する一対のばね受け57,58を含む。
【0032】
コイルばね56は、スプール31を中立位置に維持するための付勢力を連結部材51を介してスプール31に与える。ばね受け57,58のそれぞれは、リング状であり、連結部材51と摺動可能に嵌合している。
【0033】
連結部材51の右端には、ばね受け58との当接用のフランジ51cが設けられている。また、フランジ51cから左側に離間する位置では、ばね受け57との当接用のストッパー59が連結部材51に取り付けられている。
【0034】
さらに、ケーシング55の内側面には、フランジ51cと対応する位置に段差部55bが設けられているとともに、ストッパー59と対応する位置に段差部55aが設けられている。
【0035】
このような構造により、電動モータ54に電力が供給されていないときは、コイルばね56の付勢力によってばね受け58がフランジ51cと段差部55bの双方に当接するとともにばね受け57がストッパー59と段差部55aの双方に当接する。これにより、スプール31が中立位置に維持される。
【0036】
スプール31が中立位置に位置する状態から連結部材51が左方に移動したときは、ばね受け58がフランジ51cに押されて段差部55bから離間するとともに、ストッパー59がばね受け57から離間する。逆に、スプール31が中立位置に位置する状態から連結部材51が右方に移動したときは、フランジ51cがばね受け58から離間するとともに、ばね受け57がストッパー59に押されて段差部55aから離間する。
【0037】
ただし、スプール31に当該スプール31を中立位置に維持するための付勢力を与えるコイルばね56は、スプール31を挟んで直動機構5Aと反対側に設けられてもよい。
【0038】
次に、制御装置6が行う制御について詳細に説明する。制御装置6は、例えば、ROMやRAMなどのメモリと、HDDやSSDなどのストレージと、CPUを有するコンピュータであり、ROMまたはストレージに記憶されたプログラムがCPUにより実行される。
【0039】
制御装置6には、図3(a)に示すように操舵指令が入力される。操舵指令は、舵板11を左舷方向へ揺動させる左舷方向操舵指令と、舵板11を停止させる停止操舵指令と、舵板11を右舷方向へ揺動させる右舷方向操舵指令である。ただし、操舵指令は、必ずしもこれらの3つである必要はなく、それらの中間的な操舵指令を含んでもよい。すなわち、操舵指令の波形は、必ずしも直角パルス状である必要はなく、滑らかな曲線であってもよい。
【0040】
制御装置6は、左舷方向操舵指令を受けたとき、換言すれば操舵指令が停止操舵指令から左舷方向操舵指令に変わったときに、図3(b)に示すように、スプール31の移動速度が曲線C1上を推移するように、直動機構5Aを制御する。これにより、スプール31が、中立位置から、ポンプライン42と給排ライン45との間の開口面積が最大となる最大開口位置まで移動する。曲線C1は、スプール31の移動速度が徐々に増加した後に徐々に減少するS字曲線である。
【0041】
その後、操舵指令が左舷方向操舵指令から停止操舵指令に変わったときに、制御装置6は、スプール31の移動速度が曲線C2上を推移するように、直動機構5Aを制御する。これにより、スプール31が最大開口位置から中立位置まで移動する。曲線C2は、スプール31の移動速度が徐々に増加した後に徐々に減少するS字曲線である。
【0042】
逆に、制御装置6は、右舷方向操舵指令を受けたとき、換言すれば操舵指令が停止操舵指令から右舷方向操舵指令に変わったときに、スプール31の移動速度が曲線C3上を推移するように、直動機構5Aを制御する。これにより、スプール31が、中立位置から、ポンプライン42と給排ライン44との間の開口面積が最大となる最大開口位置まで移動する。曲線C3は、スプール31の移動速度が徐々に増加した後に徐々に減少するS字曲線である。
【0043】
その後、操舵指令が右舷方向操舵指令から停止操舵指令に変わったときに、制御装置6は、スプール31の移動速度が曲線C4上を推移するように、直動機構5Aを制御する。これにより、スプール31が最大開口位置から中立位置まで移動する。曲線C4は、スプール31の移動速度が徐々に増加した後に徐々に減少するS字曲線である。
【0044】
また、制御装置6は、スプール31の位置を検出する位置検出器7と電気的に接続されている。本実施形態では、位置検出器7が、スプール31の位置として電動モータ54の回転量を検出するロータリーエンコーダ7Aである。
【0045】
そして、制御装置6は、左舷方向操舵指令または右舷方向操舵指令を受けたときに、位置検出器7で検出されたスプール31の位置(本実施形態では、ロータリーエンコーダ7Aで検出された電動モータ54の回転量)および電動モータ54の電流に基づいて、スプール31がスティックしたか否かを判定する。これにより、特別なセンサを用いることなく、スプール31のスティックを検知することができる。直動機構5Aには電動モータ54の制御のためにロータリーエンコーダ7Aが通常用いられるからである。
【0046】
スプール31がスティックしていない正常時は、スプール31が目標位置へ移動するために必要となる推力に相当する電流が電動モータ54に流れる。一方、スティックが発生すると、スプール31が目標位置へ到達しないため、制御装置6がスプール31を目標位置へ到達させるべく電動モータ54に流れる電流を最大化する(すなわち、電流値がリミットに張り付く状態となる)。従って、制御装置6は、スプール31の位置が変化せず、かつ、電動モータ54の電流値が1秒程度リミットに張り付いていれば、スプール31がスティックしたと判定する。一方、上記の条件を満たさなければ、制御装置6はスプール31がスティックしていないと判定する。
【0047】
制御装置6は、スプール31がスティックしたと判定したときに、エラー信号を出力してもよい。例えば、制御装置6は、操船室に配置された図略の表示装置にエラー信号を出力し、表示装置の画面上にスプール31がスティックしたことを表示してもよい。これにより、スプール31がスティックしたことを操船者に報知することができる。
【0048】
あるいは、制御装置6は、スプール31がスティックしたと判定したときに、制御装置6が左舷方向操舵指令を受けた場合はスプール31が右舷方向操舵指令に対応する方向に移動した後に左舷方向操舵指令に対応する方向に移動し、制御装置6が右舷方向操舵指令を受けた場合はスプール31が左舷方向操舵指令に対応する方向に移動した後に右舷方向操舵指令に対応する方向に移動するように直動機構5Aを制御してもよい。このような制御が行われれば、スプール31のスティックが解除され得る。なお、スプール31が振動するように逆方向の移動および正規方向の移動が複数回行われてもよい。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の操舵システム1Aでは、スプール31を移動させる移動機構5がスプール31の移動速度が電気的に変更可能に構成されているので、フレキシブルな運転が可能である。
【0050】
ところで、従来の操舵システムのように電磁弁の電磁コイルの励磁によってスプール31を瞬時に移動した場合には、舵軸12や舵板11の運動に急激な変化が発生し、大きな衝撃が発生する。これに対し、本実施形態のように、スプール31の移動速度が徐々に増加した後に徐々に減少する曲線(C1またはC3)上を推移すれば、そのような衝撃を緩和することができる。
【0051】
なお、制御装置6は、位置検出器7で検出されたスプール31の位置に基づいて第1作動室22または第2作動室23への作動油の供給流量を算出し、算出された供給流量に基づいて舵板11の角度を算出してもよい。これにより、角度センサを用いることなく舵板11の角度を把握することができる。例えば、制御装置6は、算出された供給流量を積分して、第1作動室22または第2作動室23への作動油の総供給量を算出し、この総供給量から舵板11の角度を算出してもよい。
【0052】
さらに、制御装置6は、算出された舵板11の角度が許容範囲外にあるとき、エラー信号を出力してもよい。例えば、制御装置6は、操船室に配置された図略の表示装置にエラー信号を出力し、表示装置の画面上に舵板が操縦通りに揺動していないことを表示してもよい。これにより、舵板11が操縦通りに揺動していないことを操船者に報知することができる。
【0053】
上記の許容範囲は、例えば、目標舵角から算出可能である。目標舵角は、制御装置6が左舷方向操作指令または右舷方向操作指令を受けている時間から算出可能である。例えば、許容範囲の下限は、目標舵角から所定値を差し引いて算出してもよいし、目標舵角に所定割合(例えば、50~90%)を掛け合わせて算出してもよい。また、許容範囲の上限は、目標舵角に所定値を足し合わせて算出してもよいし、目標舵角に所定割合(例えば、110~150%)を掛け合わせて算出してもよい。
【0054】
(第2実施形態)
図5に、本発明の第2実施形態に係る操舵システム1Bを示す。なお、本実施形態および後述する第3実施形態において、第1実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0055】
本実施形態では、第2作動室23につながる給排ライン45に、第2作動室23の圧力を検出する圧力センサ8が設けられている。ただし、圧力センサ8は、第2作動室23に設けられてもよい。あるいは、圧力センサ8が、第1作動室22または給排ライン44に設けられて、第1作動室22の圧力を検出してもよい。
【0056】
制御装置6は、第1実施形態と同様に、左舷方向操舵指令または右舷方向操舵指令を受けたときに、スプール31の移動速度が図3(b)に示す曲線C1または曲線C3上を推移するように、直動機構5Aを制御する。さらに、本実施形態では、制御装置6が、圧力センサ8で検出される圧力に応じて、曲線C1,C3を補正する。
【0057】
例えば、制御装置6は、圧力センサ8で検出される圧力が規定値よりも低い場合に曲線C1,C3の傾きを大きく(急峻に)し、逆に高い場合に曲線C1,C3の傾きを小さく(滑らかに)する。これにより、圧力変動に起因する作動油の流速の変動幅を小さく抑えることができる。
【0058】
本実施形態の操舵システム1Bでは、曲線C1,C3が圧力に応じて補正されるので、曲線C1,C3が一定である場合に比べて、スプール31の位置と切換弁3を通過する作動油の流速との関係をより安定化させることができる。
【0059】
なお、制御装置6は、舵板11の揺動を停止する際に、圧力センサ8で検出される圧力に応じて、図3(b)に示す曲線C2,C4を補正してもよい。
【0060】
(第3実施形態)
図6に、本発明の第3実施形態に係る操舵システム1Cを示す。この操舵システム1Cは、第1実施形態で説明したポンプ41、ポンプライン42、回収ライン43、切換弁3および給排ライン44,45からなる第1回路を含むとともに、さらに第1回路と同様に構成された第2回路を含む。
【0061】
すなわち、本実施形態では、第1実施形態で説明したポンプ41、切換弁3、移動機構5、位置検出器7および制御装置6が、それぞれ第1ポンプ41、第1切換弁3、第1移動機構5、第1位置検出器7および第1制御装置6である。また、本実施形態では、第1実施形態で説明した切換弁3のハウジング32およびスプール31がそれぞれ第1ハウジング32および第1スプール31である。
【0062】
第2回路は、第1回路と同様に、第2ポンプ41’、ポンプライン42’、回収ライン43’、第2切換弁3’および一対の給排ライン44’,45’からなる。第2切換弁3’は、給排ライン44’,45’により油圧アクチュエータ2の第1作動室22および第2作動室23と接続されている。また、第2切換弁3’は、ポンプライン42’および回収ライン43’により第2ポンプ41’と接続されている。
【0063】
第2ポンプ41’は、第1ポンプ41と同様に、固定容量型のポンプであり、図略の電動モータにより一定の回転数で駆動される。なお、第1実施形態で説明した第1ポンプ41の変形例は第2ポンプ41’にも適用可能である。
【0064】
第2切換弁3’は、第1切換弁3と同様に、第2ハウジング32’と、この第2ハウジング32’に摺動可能に保持された第2スプール31’を含む。第2スプール31’は、第2移動機構5’により移動される。
【0065】
第2移動機構5’は、第1移動機構5と同様に、第2スプール31’の移動速度が電気的に変更可能に構成されている。第2移動機構5’は、第2制御装置6’により制御される。本実施形態では、第2移動機構5’が第1移動機構5と同様に直動機構5Aである。
【0066】
第2制御装置6’は、第2スプール31’の位置を検出する第2位置検出器7’と電気的に接続されている。本実施形態では、第2位置検出器7’が、第1位置検出器7と同様に、第2スプール31’の位置として直動機構5Aの電動モータ54の回転量を検出するロータリーエンコーダ7Aである。
【0067】
第2制御装置6’は、第1制御装置6と同様に構成されている。また、第2制御装置6’は、第1制御装置6と通信可能である。
【0068】
本実施形態では、第1制御装置6または第2制御装置6’が、第1位置検出器7で検出された第1スプール31の位置(本実施形態では、ロータリーエンコーダ7Aで検出された、第1移動機構5である直動機構5Aの電動モータ54の回転量)と、第2位置検出器7’で検出された第2スプール31’の位置(本実施形態では、ロータリーエンコーダ7Aで検出された、第2移動機構5’である直動機構5Aの電動モータ54の回転量)との間の位置関係に不整合が生じたとき、エラー信号を出力する。これにより、第1切換弁3の第1スプール31と第2切換弁3’の第2スプール31’とが互いに異なるように作動していることを検知することができる。
【0069】
例えば、第1制御装置6または第2制御装置6’は、操船室に配置された図略の表示装置にエラー信号を出力し、表示装置の画面上に第1切換弁3の第1スプール31と第2切換弁3’の第2スプール31’とが互いに異なるように作動していることを表示してもよい。
【0070】
第1スプール31の位置と第2スプール31’の位置との間の位置関係に不整合が生じる例としては、第1スプール31の位置と第2スプール31’の位置とが異なる場合や、第1スプール31と第2スプール31’とが互いに逆方向に移動する場合がある。特に、第1スプール31と第2スプール31’とが互いに逆方向に移動する場合にエラー信号が出力されれば、第1移動機構5および第2移動機構5’が第1制御装置6および第2制御装置6’から異なる指令を受けていることを検知することができる。
【0071】
従って、第1制御装置6または第2制御装置6’は、第1スプール31の位置と第2スプール31’の位置とが異なる場合、または第1スプール31の移動方向と第2スプール31’の移動方向が異なる場合(一方が移動して他方が移動しない場合を含む)に、第1スプール31の位置と第2スプール31’の位置との間の位置関係に不整合が生じたと判定する。
【0072】
ただし、第1制御装置6または第2制御装置6’は、第1制御装置6が受けた操舵指令と第2制御装置6’が受けた操舵指令とが異なるときに、エラー信号を出力してもよい。この構成によれば、第1スプール31または第2スプール31’の誤作動を防止することができる。
【0073】
なお、第1制御装置6は、第1実施形態および第2実施形態と同様の制御を第1回路に対して行ってもよい。さらに、第2制御装置6’は、第1実施形態および第2実施形態と同様の制御を第2回路に対して行ってもよい。
【0074】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0075】
例えば、第1~第3実施形態における移動機構5(第3実施形態における第2移動機構5’も)は、必ずしも直動機構5Aである必要はなく、図7に示す変形例の操舵システム1Dのように、一対の電磁比例弁61,62であってもよい。この場合、切換弁3には一対のパイロット室33,34が形成され、これらのパイロット室33,34に電磁比例弁61,62が接続される。また、電磁比例弁61,62は、一次圧ライン63によりサブポンプ64と接続される。
【0076】
電磁比例弁61,62には、制御装置6から指令電流が送給される。電磁比例弁61,62は、指令電流に応じた二次圧をパイロット室33,34へそれぞれ出力する。図例では、電磁比例弁61,62が指令電流と二次圧が正の相関を示す正比例型であるが、電磁比例弁61,62は、指令電流と二次圧が負の相関を示す逆比例型であってもよい。
【0077】
図7に示すように移動機構5が一対の電磁比例弁61,62である場合には、スプール31の位置を検出する位置検出器7として例えばストロークセンサ7Bなどを切換弁3に設ける必要がある。これに対し、移動機構5が直動機構5Aであって位置検出器7が直動機構5Aに含まれる電動モータ54の回転量を検出するロータリーエンコーダ7Aであれば、切換弁3にセンサを設ける必要がない。
【0078】
(まとめ)
本発明の操舵システムは、船舶に搭載される操舵システムであって、船底を貫通する舵軸を介して舵板を揺動させる、第1作動室および第2作動室を含む油圧アクチュエータと、作動油を吐出するポンプと、一対の給排ラインにより前記第1作動室および前記第2作動室と接続されるとともに、ポンプラインにより前記ポンプと接続された、スプールを含む切換弁と、前記スプールを移動させる、前記スプールの移動速度が電気的に変更可能に構成された移動機構と、を備える、ことを特徴とする。
【0079】
上記の構成によれば、スプールを移動させる移動機構がスプールの移動速度が電気的に変更可能に構成されているので、フレキシブルな運転が可能である。
【0080】
上記の操舵システムは、前記移動機構を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記舵板を揺動させる操舵指令を受けたときに、前記スプールの移動速度が徐々に増加した後に徐々に減少する曲線上を推移するように前記移動機構を制御してもよい。従来の操舵システムのように電磁弁の電磁コイルの励磁によってスプールを瞬時に移動した場合には、舵軸や舵板の運動に急激な変化が発生し、大きな衝撃が発生する。これに対し、前記の構成のように、スプールの移動速度が徐々に増加した後に徐々に減少する曲線上を推移すれば、そのような衝撃を緩和することができる。
【0081】
上記の操舵システムは、前記第1作動室または前記第2作動室の圧力を検出する圧力センサを備え、前記制御装置は、前記圧力センサで検出される圧力に応じて前記曲線を補正してもよい。この構成によれば、曲線が一定である場合に比べて、スプールの位置と切換弁を通過する作動油の流速との関係をより安定化させることができる。
【0082】
例えば、上記の操舵システムは、前記移動機構を制御する制御装置と、前記スプールの位置を検出する位置検出器と、を備えてもよい。
【0083】
前記移動機構は、前記スプールと連結されたナット、前記ナットと螺合するねじ軸、および前記ねじ軸を回転させる電動モータを含む直動機構であり、前記位置検出器は、前記スプールの位置として前記電動モータの回転量を検出するロータリーエンコーダであってもよい。移動機構が一対の電磁比例弁である場合には、スプールの位置を検出する位置検出器として例えばストロークセンサなどを切換弁に設ける必要がある。これに対し、移動機構が直動機構であって位置検出器が直動機構に含まれる電動モータの回転量を検出するロータリーエンコーダであれば、切換弁にセンサを設ける必要がない。
【0084】
前記制御装置は、前記舵板を揺動させる操舵指令を受けたときに、検出された前記スプールの位置および前記電動モータの電流に基づいて前記スプールがスティックしたか否かを判定してもよい。この構成によれば、特別なセンサを用いることなく、スプールのスティックを検知することができる。
【0085】
前記制御装置は、前記スプールがスティックしたと判定したときに、エラー信号を出力してもよい。この構成によれば、スプールがスティックしたことを操船者に報知することができる。
【0086】
前記制御装置は、前記スプールがスティックしたと判定したときに、前記スプールが前記操舵指令に対応する方向と逆方向に移動した後に前記操舵指令に対応する方向に移動するように前記移動機構を制御してもよい。この構成によれば、スプールのスティックが解除され得る。
【0087】
前記制御装置は、検出された前記スプールの位置に基づいて前記第1作動室または前記第2作動室への作動油の供給流量を算出し、算出された供給流量に基づいて前記舵板の角度を算出してもよい。この構成によれば、角度センサを用いることなく舵板の角度を把握することができる。
【0088】
前記制御装置は、算出された前記舵板の角度が許容範囲外にあるとき、エラー信号を出力してもよい。この構成によれば、舵板が操縦通りに揺動していないことを操船者に報知することができる。
【0089】
前記ポンプは第1ポンプ、前記スプールは第1スプール、前記切換弁は第1切換弁、前記移動機構は第1移動機構、前記位置検出器は第1位置検出器、前記制御装置は第1制御装置であり、上記の操舵システムは、作動油を吐出する第2ポンプと、一対の給排ラインにより前記第1作動室および前記第2作動室と接続されるとともに、ポンプラインにより前記第2ポンプと接続された、第2スプールを含む第2切換弁と、前記第2スプールを移動させる、前記第2スプールの移動速度が電気的に変更可能に構成された第2移動機構と、前記第2移動機構を制御する、前記第1制御装置と通信可能な第2制御装置と、前記第2スプールの位置を検出する第2位置検出器と、を備え、前記第1制御装置または前記第2制御装置は、前記第1位置検出器で検出される前記第1スプールの位置と、前記第2位置検出器で検出される前記第2スプールの位置との間の位置関係に不整合が生じたとき、エラー信号を出力してもよい。この構成によれば、第1切換弁の第1スプールと第2切換弁の第2スプールとが互いに異なるように作動していることを検知することができる。
【0090】
前記ポンプは第1ポンプ、前記スプールは第1スプール、前記切換弁は第1切換弁、前記移動機構は第1移動機構であり、上記の操舵システムは、前記第1移動機構を制御する第1制御装置と、作動油を吐出する第2ポンプと、一対の給排ラインにより前記第1作動室および前記第2作動室と接続されるとともに、ポンプラインにより前記第2ポンプと接続された、第2スプールを含む第2切換弁と、前記第2スプールを移動させる、前記第2スプールの移動速度が電気的に変更可能に構成された第2移動機構と、前記第2移動機構を制御する、前記第1制御装置と通信可能な第2制御装置と、を備え、前記第1制御装置または前記第2制御装置は、前記第1制御装置が受けた操舵指令と前記第2制御装置が受けた操舵指令が異なるときに、エラー信号を出力してもよい。この構成によれば、第1スプールまたは第2スプールの誤作動を防止することができる。
【0091】
例えば、前記切換弁は、回収ラインにより前記ポンプと接続されてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1A~1D 操舵システム
10 船底
11 舵板
2 油圧アクチュエータ
22 第1作動室
23 第2作動室
3 切換弁
31 スプール(第1スプール)
31’第2スプール
41 ポンプ(第1ポンプ)
41’ 第2ポンプ
42,42’ポンプライン
43,43’ 回収ライン
44,45,44’,45’ 給排ライン
5 移動機構(第1移動機構)
5’ 第2移動機構
5A 直動機構
52 ナット
53 ねじ軸
54 電動モータ
6 制御装置(第1制御装置)
6’ 第2制御装置
7 位置検出器(第1位置検出器)
7’ 第2位置検出器
7A ロータリーエンコーダ
8 圧力センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7