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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】CMP組成物およびこれを用いた方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20231226BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20231226BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20231226BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C09K3/14 550Z
C09G1/02
B24B37/00 H
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020044228
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2020164816
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】16/369,193
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/539,600
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム フーイ-スン
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ プータッセ
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-528835(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0011361(US,A1)
【文献】国際公開第2014/132641(WO,A1)
【文献】特表2017-527654(JP,A)
【文献】特表2011-515023(JP,A)
【文献】特開2003-124160(JP,A)
【文献】特表2018-530909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/14
H01L21/304
B24B37/00
C09G1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルトおよびLow-k材料を含む層を有する対象物を研磨するための化学機械研磨(CMP)組成物であり、錯化剤、酸化剤、研磨剤、コバルト腐食防止剤およびILD抑制剤を含むCMP組成物であって、
前記ILD抑制剤が以下の式の化合物であり、
【化1】

式中、
mは、プロピレンオキシド(PO)の繰り返し単位数を表す4~51の整数であり、
nは、エチレンオキシド(EO)の繰り返し単位数を表す5~204の整数であり、
RはC2-7アルキルであり、
EOとPOとの重量比(EO:PO)は2:3~4:1であるCMP組成物。
【請求項2】
RがC2-4アルキルである、請求項1に記載のCMP組成物。
【請求項3】
前記ILD抑制剤の分子量が1,000よりも大きい、請求項1または2に記載のCMP組成物。
【請求項4】
前記CMP組成物中のILD抑制剤の濃度が0.07重量%よりも大きい、請求項1~3のいずれか1項に記載のCMP組成物。
【請求項5】
前記ILD抑制剤の分子量が1,400よりも大きい、請求項1~4のいずれか1項に記載のCMP組成物。
【請求項6】
EOとPOとの前記重量比が1:1~3:1である、請求項1~5のいずれか1項に記載のCMP組成物。
【請求項7】
mが10~33の整数であり、nが13~44の整数である、請求項1~6のいずれか1項に記載のCMP組成物。
【請求項8】
化学機械研磨(CMP)プロセス中に1つ以上のLow-k材料の存在下で表面からコバルトを選択的に除去する方法であり、前記表面を研磨パッドと接触させることと、請求項1~7のいずれか1項に記載のCMP組成物を前記表面に供給することと、前記CMP組成物によって前記表面を研磨することとを含む方法。
【請求項9】
コバルト除去速度が1000Å/分よりも大きく、Low-k材料除去速度が5Å/分よりも小さい、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
選択性(Low-k材料除去速度に対するコバルト除去速度)が2000よりも大きい、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
(1)金属および/または酸化ケイ素ならびに(2)Low-k材料を含む層を有する対象物を研磨するための化学機械研磨(CMP)組成物であり、錯化剤、酸化剤、研磨剤、腐食防止剤およびエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドまたはそれらの組み合わせのポリアルキレングリコール基を含む非イオン性界面活性剤を含むCMP組成物であって、前記非イオン性界面活性剤の分子量は、1000~12000g/molであり、
前記非イオン性界面活性剤が以下の式の化合物であり、
【化2】

式中、
mは、プロピレンオキシド(PO)の繰り返し単位数を表す4~51の整数であり、
nは、エチレンオキシド(EO)の繰り返し単位数を表す5~204の整数であり、
RはC 2-7 アルキルであり、
EOとPOとの重量比(EO:PO)は2:3~4:1である、CMP組成物。
【請求項12】
前記非イオン性界面活性剤がポリアルキレングリコールアルキルエーテルである、請求項11に記載のCMP組成物。
【請求項13】
pHが9~11である、請求項11または12に記載のCMP組成物。
【請求項14】
前記腐食防止剤がアゾール化合物を含む、請求項11~13のいずれか1項に記載のCMP組成物。
【請求項15】
RがC2-4アルキルである、請求項14に記載のCMP組成物。
【請求項16】
前記非イオン性界面活性剤の分子量が2,000g/molよりも大きい、請求項11~15のいずれか1項に記載のCMP組成物。
【請求項17】
前記非イオン性界面活性剤の分子量が2,600g/molよりも大きい、請求項11~16のいずれか1項に記載のCMP組成物。
【請求項18】
前記金属および/または酸化ケイ素が、タンタル、銅、TEOS-SiOおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11~16のいずれか1項に記載のCMP組成物。
【請求項19】
化学機械研磨(CMP)プロセス中に1つ以上のLow-k材料の存在下で表面からタンタル、銅および/またはTEOS-SiOを選択的に除去する方法であり、前記表面を研磨パッドと接触させることと、請求項11~17のいずれか1項に記載のCMP組成物を前記表面に供給することと、前記CMP組成物によって前記表面を研磨することとを含む方法。
【請求項20】
タンタル、銅および/またはTEOS-SiO除去速度が200Å/分よりも大きく、Low-k材料除去速度が70Å/分よりも小さい、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記表面がタンタルを含み、前記タンタルの除去速度が400Å/分よりも大きい、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記表面が銅を含み、前記銅の除去速度が200Å/分よりも大きい、請求項1921のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記表面がTEOS-SiOを含み、前記TEOS-SiOの除去速度が200Å/分よりも大きい、請求項1922のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
タンタル、銅および/またはTEOS-SiOならびにLow-k材料を含む層を有する対象物をさらに研磨する化学機械研磨(CMP)組成物である、請求項1~7のいずれか1項に記載のCMP組成物。
【請求項25】
化学機械研磨(CMP)プロセス中に1つ以上のLow-k材料が存在する表面からタンタル、銅および/またはTEOS-SiOを選択的に除去することをさらに含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、一般に、例えば、コバルトおよびLow-k材料を含む表面を研磨するための組成物および方法に関する。本技術は、また、金属および/または酸化ケイ素ならびにLow-k材料を含む表面を研磨するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造のための化学機械研磨(CMP)の主要な課題の一つは、特定の材料の選択的研磨である。半導体装置の製造では、コバルト(Co)が広く使用されるようになっている。同様に、半導体装置の製造では、銅およびタンタルなどの金属やTEOS-SiOなどの酸化ケイ素が広く使用されるようになっている。同様に、半導体装置の層間絶縁膜(ILD)には、Black Diamond(登録商標)(BD、low-k、SiOC:H)またはSiNなどのLow-k材料が一般的に使用されている。Low-k材料などのILDの除去速度が高いため、Co研磨用途に現在のCMP組成物を使用することは困難である。
【0003】
特許文献1では、Triton(登録商標)DF 16などの非イオン性界面活性剤がコバルト研磨用組成物に使用されている。しかし、この組成物はILD除去速度を効果的に抑制しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2017/0158913号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ILDの除去を増加させることなく、Coを効果的かつ効率的に選択的に除去することができる新規のCMP組成物が必要とされている。また、ILDの除去を増加させることなく、金属および/または酸化ケイ素(例えば、Cu、Taおよび/またはTEOS-SiO)を効果的かつ効率的に除去できる新規のCMP組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書では、例えば半導体装置の製造において、コバルトと、Low-k材料とを含む表面を研磨するための組成物および方法が提供される。すなわち、本発明の一形態によると、コバルトおよびLow-k材料を含む層を有する対象物を研磨するための化学機械研磨(CMP)組成物であり、錯化剤、酸化剤、研磨剤、コバルト腐食防止剤およびILD抑制剤を含むCMP組成物であって、前記ILD抑制剤が以下の式の化合物であり、
【0007】
【化1】
【0008】
式中、mは、プロピレンオキシド(PO)の繰り返し単位数を表す4~51の整数であり、nは、エチレンオキシド(EO)の繰り返し単位数を表す5~204の整数であり、RはC2-7アルキルであり、EOとPOとの重量比(EO:PO)は2:3~4:1であるCMP組成物が提供される。また、化学機械研磨(CMP)プロセス中に1つ以上のLow-k材料の存在下で表面からコバルトを選択的に除去する方法であり、前記表面を研磨パッドと接触させることと、上記CMP組成物を前記表面に供給することと、前記CMP組成物によって前記表面を研磨することとを含む方法が提供される。
【0009】
また、本明細書では、例えば半導体装置の製造において、(1)銅、タンタルおよび/またはTEOS-SiOなどの、金属および/または酸化ケイ素と、(2)1つ以上のLow-k材料とを含む表面を研磨するための組成物および方法が提供される。すなわち、本発明の他の一形態によると、(1)金属および/または酸化ケイ素ならびに(2)Low-k材料を含む層を有する対象物を研磨するための化学機械研磨(CMP)組成物であり、錯化剤、酸化剤、研磨剤、腐食防止剤およびエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドまたはそれらの組み合わせのポリアルキレングリコール基を含む非イオン性界面活性剤を含むCMP組成物であって、前記非イオン性界面活性剤の分子量は、1000~12000g/molであるCMP組成物が提供される。また、化学機械研磨(CMP)プロセス中に1つ以上のLow-k材料の存在下で表面からタンタル、銅および/またはTEOS-SiOを選択的に除去する方法であり、前記表面を研磨パッドと接触させることと、上記CMP組成物を前記表面に供給することと、前記CMP組成物によって前記表面を研磨することとを含む方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ILDの除去を増加させることなく、Coを効果的かつ効率的に選択的に除去する組成物および方法が提供される。また、本発明によると、ILDの除去を増加させることなく、金属および/または酸化ケイ素(例えば、Cu、Taおよび/またはTEOS-SiO)を効果的かつ効率的に除去する組成物および方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】BD除去速度の抑制に対する分子量の依存性を示す。分子量500の化学物質(CAS番号9038-95-3)を加えた際にBD除去速度の抑制が達成された。界面活性剤(CAS番号9038-95-3)の分子量が増加すると、この化学物質の分子量が2660の場合、BDの除去速度は0Å/分まで抑制された。図1に記載したように、分子量980の界面活性剤(CAS番号9003-11-6)からも同様の傾向が観察された。この化学物質(CAS番号9003-11-6)では、CAS番号9003-11-6を分子量6000で使用すると、1Å/分で最も低いBD抑制が観察された。
図2】0.074重量%までの界面活性剤濃度の効果を示す。0.074重量%のUCON50-HB-2000(CAS番号9038-95-3)界面活性剤を加えた際に、BD除去速度が0Å/分に達した。0.0029重量%超の界面活性剤では、わずかなBD除去速度の抑制が観察された。
図3】異なる分子量のUCON50-HB界面活性剤を0.03重量%含むスラリーの研磨トポグラフィーに対する効果を示す。UCON50-HB界面活性剤の3つの高分子量バージョンでは、バリア研磨プロセス中のトポグラフィー補正の量が実質的に大きくなる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書では、例えば半導体装置の製造において、コバルトと、Low-k材料とを含む表面を研磨するためのCMP組成物および方法が提供される。すなわち、本発明の一形態によると、コバルトおよびLow-k材料を含む層を有する対象物を研磨するための化学機械研磨(CMP)組成物であり、錯化剤、酸化剤、研磨剤、コバルト腐食防止剤およびILD抑制剤を含むCMP組成物であって、前記ILD抑制剤が以下の式の化合物であり、
【0013】
【化2】
【0014】
式中、mは、プロピレンオキシド(PO)の繰り返し単位数を表す4~51の整数であり、nは、エチレンオキシド(EO)の繰り返し単位数を表す5~204の整数であり、RはC2-7アルキルであり、EOとPOとの重量比(EO:PO)は2:3~4:1であるCMP組成物が提供される(以下、「第一形態」とも称する)。当該CMP組成物は、タンタル、銅および/またはTEOS-SiOならびにLow-k材料を含む層を有する対象物をさらに研磨する化学機械研磨(CMP)組成物でありうる。
【0015】
また、本明細書では、例えば半導体装置の製造において、(1)銅、タンタルおよび/またはTEOS-SiOなどの、金属および/または酸化ケイ素と、(2)1つ以上のLow-k材料とを含む表面を研磨するための組成物および方法が提供される。すなわち、本発明の他の一形態によると、(1)金属および/または酸化ケイ素ならびに(2)Low-k材料を含む層を有する対象物を研磨するための化学機械研磨(CMP)組成物であり、錯化剤、酸化剤、研磨剤、腐食防止剤およびエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドまたはそれらの組み合わせのポリアルキレングリコール基を含む非イオン性界面活性剤を含むCMP組成物であって、前記非イオン性界面活性剤の分子量は、1000~12000g/molであるCMP組成物が提供される(以下、「第二形態」とも称する)。前記金属および/または酸化ケイ素は、タンタル、銅、TEOS-SiOおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されうる。
【0016】
本明細書で使用される「化学機械研磨」または「平坦化」という用語は、表面の化学反応と機械的研磨とを組み合わせて表面を平坦化(研磨)するプロセスを指す。いくつかの実施形態では、化学反応は、表面材料と反応することができる組成物(「研磨用スラリー」、「研磨用組成物」、「スラリー組成物」または単に「スラリー」と区別なく呼ばれる)を表面に塗布することによって開始され、それによって表面材料が、同時の機械的研磨によってさらに容易に除去することができる製品に変化する。いくつかの実施形態では、機械的研磨は、研磨パッドを表面に接触させ、研磨パッドを表面に対して移動させることによって実行される。本明細書で使用される用語「Low-k材料」は、当技術分野で一般に理解されているように使用される。Low-k材料または「low-κ材料」は、二酸化ケイ素に比べて比誘電率が小さい材料である。Low-k材料の例には、SiNおよび炭素ドープ酸化物、例えば、Black Diamond(登録商標)(Applied Materials)、Black Diamond(登録商標)2(Applied Materials)、Black Diamond(登録商標)3(Applied Materials)、Aurora(登録商標)2.7(ASM International N.V.)、Aurora(登録商標)ULK(ASM International N.V.)などが挙げられる。本明細書で使用される「金属材料」、「酸化ケイ素」または「金属および/または酸化ケイ素」という用語は、当技術分野で一般に理解されているように使用される。金属および/または酸化ケイ素の例には、銅(Cu)、タンタル(Ta)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)由来の酸化ケイ素(TEOS-SiO)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行う。
【0017】
組成物
本明細書に開示されるCMP研磨用組成物は、以下の成分をそれぞれ1つ以上含有する混合物を含むか、当該混合物から本質的になるか、当該混合物からなることができる。
【0018】
ILD抑制剤
本発明の第一形態によると、本明細書に開示されるCMP組成物は、以下の式の1つ以上のILD抑制剤(層間絶縁層の研磨の抑制剤)を含む。
【0019】
【化3】
【0020】
式中、mは、プロピレンオキシド(PO)の繰り返し単位数を表す4~51の整数であり、nは、エチレンオキシド(EO)の繰り返し単位数を表す5~204の整数であり、RはC2-7アルキル(炭素数2~7のアルキル)であり、EOとPOとの重量比(EO:PO)は2:3~4:1である。
【0021】
いくつかの実施形態では、mは、10~33の整数、13~29の整数、22~29の整数である。いくつかの実施形態では、nは、13~44の整数、17~38の整数、30~38の整数である。いくつかの実施形態では、mは10~33の整数であり、nは13~44の整数である。いくつかの実施形態では、mは13~29の整数であり、nは17~38の整数である。いくつかの実施形態では、mは22~29の整数であり、nは30~38の整数である。いくつかの実施形態では、EOとPOとの重量比(EO:PO)は、2:3、1:1、4:3、5:3、2:1、7:3、8:3、3:1、10:3、11:3もしくは4:1またはそれらの間の範囲である。いくつかの実施形態では、EOとPOとの重量比(EO:PO)は、2:3~4:1、2:3~11:3、2:3~10:3、1:1~3:1である。いくつかの実施形態では、Rは、分岐状または直鎖状であってよく、任意に置換されていてもよいC2、C3、C4、C5、C6またはC7アルキル(炭素数2、3、4、5、6または7のアルキル)である。いくつかの実施形態では、Rは、炭素数2~4、炭素数3~4のアルキルである。このようなアルキル基としては、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソアミル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、3-メチルペンタン-2-イル基、3-メチルペンタン-3-イル基、4-メチルペンチル基、4-メチルペンタン-2-イル基、1,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブタン-2-イル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、1-(n-プロピル)ブチル基、1,1-ジメチルペンチル基、1,4-ジメチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,3,3-トリメチルブチル基、1-エチル-2,2-ジメチルプロピル基などが挙げられる。
【0022】
いくつかの実施形態では、式(I)のILD抑制剤は、約500、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、8500、9000、9500、10000、11000、12000(またはそれらの間の範囲)の分子量を有する。いくつかの実施形態では、式(I)のILD抑制剤は、約1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、8500、9000、9500、10000、11000、12000を超える分子量を有する。いくつかの実施形態では、式(I)のILD抑制剤は、500~12000、500~10000、1000~7000、1000~6000、2000~6000、2000~4000、2500~3500の分子量を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、CMP組成物は、0.002重量%、0.007重量%または0.07重量%を超える式(I)のILD抑制剤の濃度を有する。いくつかの実施形態では、CMP組成物は、約0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.015、0.02、0.025、0.03、0.035、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1重量%(またはそれらの間の範囲)の式(I)のILD抑制剤の濃度を有する。いくつかの実施形態では、CMP組成物は、0.002~0.1重量%、0.003~0.09重量%、0.007~0.080重量%、0.01~0.08重量%、0.03~0.08重量%、0.05~0.08重量%のILD抑制剤の濃度を有する。
【0024】
錯化剤(Complexor)
本開示のCMP組成物は、少なくとも1つの錯化剤も含有する。本明細書で使用される用語「錯化剤」は、CMPプロセス中に研磨される金属の表面と相互作用する化合物を指す。いくつかの実施形態では、錯化剤は、酸性部分を1つだけ有するアミノ酸(α-アミノ酸)、アミノカルボン酸、およびホスホン酸からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、錯化剤は窒素(N-)含有化合物である。特に、いくつかの実施形態では、錯化剤は、少なくとも1つのアミノ基を含むか、少なくとも1つのアミノ基からなる。いくつかの実施形態では、錯化剤は、グリシン、α-アラニン、β-アラニン、Nメチルグリシン、N,N-ジメチルグリシン、2-アミノ酪酸、ノルバリン、バリン、ロイシン、ノルロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、サルコシン、オルニチン、リジン、タウリン、セリン、スレオニン、ホモセリン、チロシン、ビシン、トリシン、3,5-ジヨードチロシン、β-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-アラニン、チロキシン、4-ヒドロキシプロリン、システイン、メチオニン、エチオニン、ランチオニン、シスタチオニン、シスチン、システイン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、S-(カルボキシメチル)-システイン、4-アミノ酪酸、アスパラギン、アザセリン、アルギニン、カナバニン、シトルリン、δ-ヒドロキシリジン、クレアチン、ヒスチジン、1-メチルヒスチジン、3-メチルヒスチジンおよびトリプトファンである。いくつかの実施形態では、錯化剤はグリシンである。これらの錯化剤は、単独で使用してもよく、それらの2種以上を混合物として使用してもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.1重量%~約5重量%の錯化剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.1重量%の錯化剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.2重量%の錯化剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.3重量%の錯化剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.4重量%の錯化剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.5重量%の錯化剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.6重量%の錯化剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.7重量%の錯化剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.8重量%の錯化剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.9重量%の錯化剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約1重量%の錯化剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約2重量%の錯化剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約3重量%の錯化剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約4重量%の錯化剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約5重量%の錯化剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、0.1~5重量%、0.5~2重量%の錯化剤を含む。
【0026】
研磨剤
本開示のCMP組成物は、少なくとも1つの研磨剤も含有する。CMP組成物中の研磨剤は、CMPプロセス中に機械的研磨効果をもたらすか、増強する。本開示に関連して使用することができる研磨剤の例には、限定するものではないが、アルミナ研磨剤、シリカ研磨剤、セリア研磨剤、酸化チタン、ジルコニアまたはそれらの混合物が挙げられる。好ましい研磨剤は、アルミナおよびシリカである。スクラッチ欠陥を減らすために、研磨剤の平均粒径を制御することが好ましい。いくつかの実施形態では、粒子の90%の粒径が特徴的な数値よりも小さいことを示すために粒径測定器によって表される特徴的な数値であるD90によって、研磨剤の粒径プロファイルが測定される。いくつかの実施形態では、平均粒径は0.3ミクロン未満であり、研磨剤のD90は1ミクロン未満である。特に、いくつかの実施形態では、平均粒径は0.01~0.30ミクロンであり、D90は0.5ミクロン未満である。
【0027】
いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.01重量%~約10重量%の研磨剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、10重量%未満の研磨剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、9重量%未満の研磨剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、8重量%未満の研磨剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、7重量%未満の研磨剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、6重量%未満の研磨剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、5重量%未満の研磨剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、4重量%未満の研磨剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、3重量%未満の研磨剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、2重量%未満の研磨剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、1重量%未満の研磨剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、0.5重量%未満の研磨剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、0.2重量%未満の研磨剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、0.01~10重量%、0.02~5重量%、0.03~1重量%の研磨剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、10~60重量%、20~50重量%、30~45重量%の研磨剤を含む。
【0028】
酸化剤
本開示のCMP組成物はまた、少なくとも1つの酸化剤を含有する。本CMP組成物に酸化剤を加えて、研磨対象物の金属表面を酸化することにより、CMPプロセスの金属除去速度を高めることができる。いくつかの実施形態では、酸化剤は、使用前にのみCMP組成物に加えられる。他の実施形態では、酸化剤は、製造手順中にほぼ同時にCMP組成物の他の成分と混合される。いくつかの実施形態では、本組成物は原料組成物として製造および販売され、最終顧客が、必要に応じて原料組成物を希釈すること、および/または使用前に好適な量の酸化剤を加えることを選択することができる。
【0029】
使用され得る酸化剤の例には、限定するものではないが、過酸化物、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、有機酸化剤、オゾン水、銀(II)塩、鉄(III)塩、過マンガン酸(permanganese acid)、クロム酸、二クロム酸、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過硫酸、ジクロロイソシアヌル酸およびそれらの塩が挙げられる。酸化剤は、単独で、または2種以上の混合物として使用してもよい。なかでも、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過ヨウ素酸、次亜塩素酸およびジクロロイソシアヌル酸ナトリウムが好ましい。
【0030】
酸化剤の好適な含有量は、特定の必要性に基づいて決定することができる。例えば、金属除去速度は、酸化剤の濃度が増加するにつれて増加すると予測され得る。いくつかの実施形態では、CMP組成物中の酸化剤の含有量は0.1g/L以上である。いくつかの実施形態では、CMP組成物中の酸化剤の含有量は1g/L以上である。いくつかの実施形態では、CMP組成物中の酸化剤の含有量は3g/L以上である。
【0031】
いくつかの実施形態では、CMP組成物中の酸化剤の含有量は、0よりも大きく、50g/L以下である。いくつかの実施形態では、CMP組成物中の酸化剤の含有量は、0よりも大きく、30g/L以下である。いくつかの実施形態では、CMP組成物中の酸化剤の含有量は、0よりも大きく、10g/L以下である。いくつかの実施形態では、CMP組成物中の酸化剤の含有量は、0.001~10重量%、0.01~5重量%、0.1~1重量%である。酸化剤の含有量が減少するにつれて、CMP組成物の材料に伴う費用を節約することができ、研磨使用後のCMP組成物の処理に伴う負荷、すなわち廃棄物処理に伴う負荷を低減することができる。酸化剤の含有量を減少させることにより、表面の過剰な酸化の可能性を低下させることも可能である。
【0032】
腐食防止剤
本発明の第二形態によると、本開示のCMP組成物はまた、少なくとも1つの腐食防止剤を含有する。腐食防止剤は、一方ではCMP条件下で腐食(例えば、Co、Cu、Ta、Niなどの腐食)を効果的に抑制し、他方ではLow-k材料以外の材料(例えば、金属および/または酸化ケイ素)に対して高い除去速度を可能にする任意の化合物であってよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、カプリレス(capryleth)-4カルボン酸、カプリレス-6カルボン酸、ラウレス-6カルボン酸、オレス-9カルボン酸、オレス-6カルボン酸、オレス-10カルボン酸、ラウリン酸、ラウリン酸カリウム、ベンゾトリアゾール、5-カルボキシベンゾトリアゾール、5-ベンズイミダゾールカルボン酸、5-メチルベンゾトリアゾール、ラウリン酸トリエタノールアミン、オレイン酸カリウム、ラウリルエーテルカルボン酸、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリン酸アンモニウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレントリデシルエーテルホスフェートおよび任意のラウリン酸誘導体から選択される1つ以上の腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、上記化合物のうちの1つ以上からなる腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、ラウリン酸およびその誘導体から選択される1つ以上の腐食防止剤を含む。好ましい実施形態では、腐食防止剤はラウリン酸カリウムである。米国特許第10,059,860号明細書に記載されるような成分も含まれ得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.0005~約1重量%の腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95または1.0重量%よりも多い腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95または1.0重量%の腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、0.0005~1重量%、0.0005~0.1重量%、0.0005~0.01重量%、0.001~0.005重量%の腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、0.01~1重量%、0.05~0.5重量%、0.1~0.3重量%の腐食防止剤を含む。
【0035】
本CMP組成物のいくつかの実施形態では、腐食防止剤は、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、イミダゾール、トリルトリアゾールおよびそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない1つ以上のアゾール化合物を含む。具体例には、1-(1,2-ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)ベンゾトリアゾール、および1-(ヒドロキシメチル)ベンゾトリアゾールが挙げられる。一部の実施形態では、腐食防止剤は、上記化合物の1つ以上からなる。
【0036】
コバルト腐食防止剤
本発明の第一形態によると、本開示のCMP組成物は、また、少なくとも1つのコバルト腐食防止剤を含有する。コバルト腐食防止剤は、一方ではCMP条件下でCo腐食を効果的に抑制し、他方では高いCo除去速度を可能にする任意の化合物であってよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、カプリレス(capryleth)-4カルボン酸、カプリレス-6カルボン酸、ラウレス-6カルボン酸、オレス-9カルボン酸、オレス-6カルボン酸、オレス-10カルボン酸、ラウリン酸、ラウリン酸カリウム、ベンゾトリアゾール、5-カルボキシベンゾトリアゾール、5-ベンズイミダゾールカルボン酸、5-メチルベンゾトリアゾール、ラウリン酸トリエタノールアミン、オレイン酸カリウム、ラウリルエーテルカルボン酸、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリン酸アンモニウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレントリデシルエーテルホスフェートおよび任意のラウリン酸誘導体から選択される1つ以上のコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、上記化合物のうちの1つ以上からなるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、ラウリン酸およびその誘導体から選択される1つ以上のコバルト腐食防止剤を含む。好ましい実施形態では、コバルト腐食防止剤はラウリン酸カリウムである。米国特許第10,059,860号明細書に記載されるような成分も含まれ得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.0005重量%~約1重量%のコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.01重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.02重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.03重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.04重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.05重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.06重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.07重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.08重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.09重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.1重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.15重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.2重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.25重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.3重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.35重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.4重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.45重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.5重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.6重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.7重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.8重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約0.9重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、約1.0重量%を超えるコバルト腐食防止剤を含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、0.0005~1重量%、0.0005~0.1重量%、0.0005~0.01重量%、0.001~0.005重量%の腐食防止剤を含む。
【0039】
非イオン性界面活性剤
本発明の第二形態によると、本明細書に開示されるCMP組成物は、1つ以上の非イオン性界面活性剤を含有する。いくつかの実施形態では、1つ以上の非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレングリコール界面活性剤およびポリアルキレングリコールアルキルエーテルからなる群から選択されうる。いくつかの実施形態では、1つ以上の非イオン性界面活性剤は、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド単位のブロックコポリマーであるポリアルキレングリコールモノブチルエーテルである。いくつかの実施形態では、非イオン性界面活性剤は以下の式(I)を有する:
【0040】
【化4】
【0041】
式中、mは、プロピレンオキシド(PO)の繰り返し単位数を表す4~51の整数であり、nは、エチレンオキシド(EO)の繰り返し単位数を表す5~204の整数であり、RはC2-7アルキル(炭素数2~7のアルキル)であり、EOとPOとの重量比(EO:PO)は2:3~4:1である。
【0042】
いくつかの実施形態では、mは、10~33の整数、13~29の整数、22~29の整数である。いくつかの実施形態では、nは、13~44の整数、17~38の整数、30~38の整数である。いくつかの実施形態では、mは10~33の整数であり、nは13~44の整数である。いくつかの実施形態では、mは13~29の整数であり、nは17~38の整数である。いくつかの実施形態では、mは22~29の整数であり、nは30~38の整数である。いくつかの実施形態では、EOとPOの重量比(EO:PO)は2:3、1:1、4:3、5:3、2:1、7:3、8:3、3:1、10:3、11:3もしくは4:1またはそれらの間の範囲である。いくつかの実施形態では、EOとPOとの重量比(EO:PO)は、2:3~4:1、2:3~11:3、2:3~10:3、1:1~3:1である。いくつかの実施形態では、Rは、分岐状または直鎖状であってよく、任意に置換されていてもよいC2、C3、C4、C5、C6またはC7アルキル(炭素数2、3、4、5、6または7のアルキル)である。いくつかの実施形態では、Rは、C2-6アルキル、C2-5アルキル、C2-4アルキルまたはC2-3アルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、炭素数2~4、炭素数3~4のアルキルである。このようなアルキル基としては、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソアミル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、3-メチルペンタン-2-イル基、3-メチルペンタン-3-イル基、4-メチルペンチル基、4-メチルペンタン-2-イル基、1,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブタン-2-イル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、1-(n-プロピル)ブチル基、1,1-ジメチルペンチル基、1,4-ジメチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,3,3-トリメチルブチル基、1-エチル-2,2-ジメチルプロピル基などが挙げられる。いくつかの実施形態では、非イオン性界面活性剤は、一方の末端にアルコール基を有し、他の官能基を有さない。
【0043】
いくつかの実施形態では、非イオン性界面活性剤は、UCON(登録商標)界面活性剤から選択される。いくつかの実施形態では、非イオン性界面活性剤は、UCON50界面活性剤もしくはUCON75界面活性剤またはそれらの組み合わせである。
【0044】
いくつかの実施形態では、式(I)の1つ以上の非イオン性界面活性剤は、約500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10000、10500、11000、11500または12000(またはそれらの間の範囲)の分子量(g/モル)を有する。いくつかの実施形態では、式(I)の1つ以上の非イオン性界面活性剤は、約500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10000、10500、11000、11500または12000を超える分子量(g/モル)を有する。いくつかの実施形態では、式(I)の1つ以上の非イオン性界面活性剤は、約12000、11500、11000、10500、10000、9500、9000、8500、8000、7500、7000、6500、6000、5500、5000、4500、4000、3500、3000、2900、2800、2700、2600、2500、2400、2300、2200、2100、2000、1900、1800、1700、1600、1500、1400、1300、1200、1100、1000、900、800、700、600または500以下の分子量(g/mol)を有する。いくつかの実施形態では、式(I)のILD抑制剤は、500~12000、500~10000、1000~7000、1000~6000、2000~6000、2000~4000、2500~3500の分子量を有する。
【0045】
いくつかの実施形態では、CMP組成物は、約0.010、0.015、0.020、0.025、0.030、0.035、0.040、0.045、0.050、0.055、0.060、0.065、0.070、0.075、0.080、0.085、0.090、0.095、0.10、0.11、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45または0.50重量%を超える式(I)の非イオン性界面活性剤の濃度(重量%)を有する。いくつかの実施形態では、CMP組成物は、約0.010、0.015、0.020、0.025、0.030、0.035、0.040、0.045、0.050、0.055、0.060、0.065、0.070、0.075、0.080、0.085、0.090、0.095、0.10、0.11、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45または0.50重量%(またはそれらの間の範囲)の式(I)の1つ以上のイオン性界面活性剤の濃度を有する。いくつかの実施形態では、CMP組成物は、0.010~0.50重量%、0.050~0.45重量%、0.10~0.40重量%の界面活性剤の濃度を有する。
【0046】
pH調整剤
いくつかの実施形態では、本CMP組成物は、少なくとも1つのpH調整剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、本CMP組成物のpHは、特に限定するものではないが、終点を含めて約1~約13の範囲にある。いくつかの実施形態では、本CMP組成物のpHは、終点を含めて約1.5~約12.5の範囲にある。いくつかの実施形態では、本CMP組成物のpHは、終点を含めて約2~約12の範囲にある。いくつかの実施形態では、本CMP組成物のpHは、終点を含めて約2.5~約11.5の範囲にある。いくつかの実施形態では、本CMP組成物のpHは、終点を含めて約3~約11の範囲にある。いくつかの実施形態では、本CMP組成物のpHは、終点を含めて約3.5~約10.5の範囲にある。いくつかの実施形態では、本CMP組成物のpHは、終点を含めて約4~約10の範囲にある。いくつかの実施形態では、本CMP組成物のpHは、終点を含めて約4.5~約9.5の範囲にある。いくつかの実施形態では、本CMP組成物のpHは、終点を含めて約5~約9の範囲にある。いくつかの実施形態では、本CMP組成物のpHは、終点を含めて約6~約9の範囲にある。いくつかの実施形態では、本CMP組成物のpHは、終点を含めて約5.5~約8.5の範囲にある。いくつかの実施形態では、本CMP組成物のpHは、終点を含めて約6~約8の範囲にある。いくつかの実施形態では、本CMP組成物のpHは約7である。いくつかの実施形態では、本CMP組成物のpHは約7.5である。
【0047】
いくつかの実施形態では、本CMP組成物のpHは、終点を含めて約6~約9の範囲にある。いくつかの実施形態では、本CMP組成物のpHは、終点を含めて約6~約10の範囲にある。いくつかの実施形態では、本CMP組成物のpHは、終点を含めて約6~約11の範囲にある。いくつかの実施形態では、本CMP組成物のpHは、終点を含めて約6~約12の範囲にある。
【0048】
CMP組成物のいくつかの実施形態では、pHは、終点を含めて約9~約11の間である。CMP組成物のいくつかの実施形態では、pHは約9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7、10.8、10.9または11.0(またはそれらの間の範囲)である。
【0049】
いくつかの実施形態では、酸またはアルカリがpH調整剤として使用される。本発明に関連して使用される酸またはアルカリは、有機または無機化合物であり得る。酸の例には、無機酸、例えば、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸およびリン酸;ならびに有機酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸および乳酸を含むカルボン酸、およびメタンスルホン酸、エタンスルホン酸およびイセチオン酸を含む有機硫酸が挙げられる。アルカリの例には、アルカリ金属の水酸化物、例えば、水酸化カリウム;水酸化アンモニウム、エチレンジアミンおよびピペラジン;ならびに四級アンモニウム塩、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウムおよび水酸化テトラエチルアンモニウムが挙げられる。これらの酸またはアルカリは、単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
CMP組成物中の酸またはアルカリの含有量は、CMP組成物を上記のpH範囲内とすることができる量であれば特に限定されない。
【0051】
その他の成分
本発明のCMP組成物は、必要に応じて、他の成分、例えば、防腐剤、殺生物剤、還元剤、ポリマー、界面活性剤(ただし、上記ILD抑制剤および上記非イオン界面活性剤を除く)などを含有してもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、研磨される表面の親水性を高めるため、または研磨剤の分散安定性を高めるために、本CMP組成物に水溶性ポリマーを加えてもよい。水溶性ポリマーの例には、セルロース誘導体、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロース;イミン誘導体、例えば、ポリ(N-アシルアルキレンイミン);ポリビニルアルコール;変性(カチオン変性または非イオン変性)ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリビニルカプロラクタム;ポリオキシアルキレン、例えば、ポリオキシエチレン;およびそれらの構成単位を含有するコポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーは、プルランを含んでもよい。水溶性ポリマーは、単独で、または2種以上の混合物として使用してもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、本開示によるCMP組成物はまた、殺生物剤または他の防腐剤を含んでもよい。本発明に関連して使用され得る防腐剤および殺生物剤の例には、イソチアゾリン系防腐剤、例えば、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(メチルイソチアゾロン)または5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、パラオキシベンゾエートエステルおよびフェノキシエタノールなどが挙げられる。これらの防腐剤および殺生物剤は、単独で、またはそれらの2種以上を混合して使用してもよい。
【0054】
方法および組成物
本開示の別の態様では、本明細書に提供されるのは、少なくとも1つの表面を有する対象物の化学機械研磨(CMP)のための方法である。該方法は、表面を研磨パッドと接触させることと、本開示によるCMP組成物を表面に供給することと、CMP組成物によって上記表面を研磨することとを含む。いくつかの実施形態では、表面は、コバルトと、1つ以上のLow-k材料とを含む。すなわち、本発明の他の一形態によると、化学機械研磨(CMP)プロセス中に1つ以上のLow-k材料の存在下で表面からコバルトを選択的に除去する方法であり、前記表面を研磨パッドと接触させることと、上記CMP組成物を前記表面に供給することと、前記CMP組成物によって前記表面を研磨することとを含む方法が提供される。当該方法は、化学機械研磨(CMP)プロセス中に1つ以上のLow-k材料が存在する表面からタンタル、銅および/またはTEOS-SiOを選択的に除去する方法でありうる。
【0055】
本開示の別の態様では、本明細書に提供されるのは、少なくとも1つの表面を有する対象物の化学機械研磨(CMP)のための方法である。該方法は、表面を研磨パッドと接触させることと、本開示によるCMP組成物を表面に供給することと、CMP組成物によって上記表面を研磨することとを含む。いくつかの実施形態では、表面は、1つ以上の金属および/または酸化ケイ素(例えば、Cu、Taおよび/またはTEOS-SiO)と、1つ以上のLow-k材料とを含む。一実施形態では、本開示の組成物は、タンタル、銅および/またはTEOS-SiOと、Low-k材料とを含む層を有する対象物を研磨する。すなわち、本発明の他の一形態によると、化学機械研磨(CMP)プロセス中に1つ以上のLow-k材料の存在下で表面からタンタル、銅および/またはTEOS-SiOを選択的に除去する方法であり、前記表面を研磨パッドと接触させることと、上記CMP組成物を前記表面に供給することと、前記CMP組成物によって前記表面を研磨することとを含む方法が提供される。
【0056】
本開示の別の態様では、本明細書に提供されるのは、化学機械研磨(CMP)プロセス中に1つ以上のLow-k材料の存在下でコバルトを選択的に除去する方法である。該方法は、本開示によるCMP組成物を使用することを含む。
【0057】
本開示の別の態様では、本明細書で提供されるのは、化学機械研磨(CMP)プロセス中に1つ以上のLow-k材料の存在下で1つ以上の金属および/または酸化ケイ素(例えば、Cu、Taおよび/またはTEOS-SiO)を選択的に除去する方法である。該方法は、本開示によるCMP組成物に使用することを含む。
【0058】
本開示の別の態様では、本明細書に提供されるのは、化学機械研磨(CMP)のためのシステムである。該システムは、コバルトと、1つ以上のLow-k材料とを有する少なくとも1つの表面を含む基板、研磨パッド、および本開示によるCMP組成物を含む。
【0059】
本開示の別の態様では、本明細書で提供されるのは、化学機械研磨(CMP)のためのシステムである。該システムは、1つ以上の金属および/または酸化ケイ素(例えば、Cu、Taおよび/またはTEOS-SiO)と、1つ以上のLow-k材料とを有する少なくとも1つの表面を含む基板、研磨パッド、および本開示によるCMP組成物を含む。
【0060】
本開示のさらに別の態様では、本明細書に提供されるのは、コバルトと、1つ以上のLow-k材料とを有する少なくとも1つの表面を含む基板であり、基板は、本開示による化学機械研磨(CMP)組成物と接触している。
【0061】
本開示のさらに別の態様では、本明細書に提供されるのは、1つ以上の金属および/または酸化ケイ素(例えば、Cu、Taおよび/またはTEOS-SiO)と、1つ以上のLow-k材料とを有する少なくとも1つの表面を含む基板であり、基材は、本開示による化学機械研磨(CMP)組成物と接触している。
【0062】
いくつかの実施形態では、本方法および組成物は、Co表面を研磨するのに適している。Co研磨に一般に使用される装置または条件は、特定の必要性に応じて採用および変更することができる。本方法を実施するための好適な装置および/または条件の選択は、当業者の知識の範囲内である。
【0063】
いくつかの実施形態では、本方法は、500Å/分超、例えば、約500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900または4000Å/分のコバルト除去速度をもたらす。いくつかの実施形態では、本方法は、15Å/分未満、例えば、約15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.1または0Å/分未満のLow-k材料除去速度をもたらす。いくつかの実施形態では、本方法は、500超、例えば、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900または4000超の選択性(Low-k材料除去速度に対するコバルト除去速度)をもたらす。
【0064】
いくつかの実施形態では、本方法および組成物は、金属および/または酸化ケイ素(例えば、Cu、Taおよび/またはTEOS-SiO)と、1つ以上のLow-k材料とを含む表面を研磨するのに適している。金属、ケイ酸塩および/またはLow-k材料の研磨に一般に使用される装置または条件は、特定の必要性に応じて採用および変更することができる。本方法を実施するための好適な装置および/または条件の選択は、当業者の知識の範囲内である。
【0065】
いくつかの実施形態では、本方法は、70Å/分超、例えば、約70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900または4000Å/分の銅、タンタルおよび/またはTEOS-SiO除去速度をもたらす。いくつかの実施形態では、本方法は、200Å/分未満、例えば、約200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.1または0Å/分未満のLow-k材料除去速度をもたらす。いくつかの実施形態では、本方法は、10超、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900または4000超の選択性(Low-k材料除去速度に対する金属および/または酸化ケイ素除去速度)をもたらす。一実施形態では、銅、タンタルおよび/またはTEOS-SiO除去速度は200Å/分より大きく、Low-k材料除去速度は70Å/分未満である。
【0066】
いくつかの実施形態では、表面はタンタルを含み、本方法は、200Å/分超のタンタル除去速度、例えば、約200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900または4000Å/分をもたらす。一実施形態では、タンタル除去速度は400Å/分より大きい。
【0067】
いくつかの実施形態では、表面は銅を含み、本方法は、70Å/分超の銅除去速度、例えば、約70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900または4000Å/分をもたらす。一実施形態では、銅除去速度は200Å/分より大きい。
【0068】
いくつかの実施形態では、表面はTEOS-SiOを含み、本方法は、70Å/分超のTEOS-SiO除去速度、例えば、約70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900または4000Å/分をもたらす。一実施形態では、TEOS-SiO除去速度は200Å/分より大きい。
【0069】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の参照対象を含むことに留意されたい。特許請求の範囲は、任意選択の要素を除外するように起草され得ることにさらに留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の範囲における要素の列挙、または「否定的な」制限の使用に関連して、「単独で」、「のみ」などのような排他的用語の使用の先行詞としての役割を果たすことを意図する。
【0070】
用語「約」は、当業者によって理解され、使用される文脈に応じてある程度変化するであろう。それが使用される文脈を考慮して、当業者には明らかでないこの用語の使用があった場合、「約」は、その特定の用語のプラスまたはマイナス10%までを意味する。本明細書では、用語「約」が先行する数値を用いて特定の範囲が提示される。本明細書では、用語「約」は、それが先行する正確な数、ならびにその用語が先行する数に近いまたは近似する数に対して文字通りの支援を提供するために使用される。数が具体的に列挙された数に近いまたは近似するかどうかを決定する場合、近いまたは近似する列挙されない数が、それが提示される文脈で、具体的に列挙された数の実質的な同等物を提供する数であってよい。
【0071】
範囲の値が提供される場合、文脈上明らかに別段の指示がない限り下限の単位の10分の1まで、その範囲の上限と下限との間にある介在値、およびその記載された範囲内の任意の他の記載された値または介在値のそれぞれが、本発明内に包含されると理解される。これらの小さい方の範囲の上限および下限は、独立して小さい方の範囲に含まれ得、同様に本発明内に包含され、記載された範囲内の任意の具体的に除外される限界に従属する。記載された範囲が限界のうち一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれかまたは両方を除く範囲も本発明に含まれる。
【0072】
本開示は、記載された特定の実施形態に限定されず、したがって、当然ながら変化し得る。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定を意図するものではないことも理解されたい。
【0073】
本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に記載および例示される個々の実施形態の各々は、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴と容易に分離し得るまたはそれと組み合わせ得る別個の構成要素および特徴を有する。任意の列挙された方法は、列挙された事象の順序で、または論理的に可能な任意の他の順序で行われ得る。
【0074】
本明細書で引用されるあらゆる文献および特許は、個々の文献または特許が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているように参照により本明細書に組み込まれ、引用されたそれらの文献と関連して方法および/または材料を開示および説明するために参照により本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、出願日以前のその開示に関するものであり、先行発明によって本発明がそのような文献に先行する権利がないことを認めたものとして解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行日は実際の刊行日とは異なることがあり、実際の刊行日は独立して確認する必要があることがある。
【0075】
以下の実施例は、本開示の様々な実施形態を例示する目的で示されており、本開示をいかなる形でも限定することを意図するものではない。当業者であれば、本開示が目的を実行し、言及された目的および利点、ならびに本明細書に固有の目的および利点を得るために十分に適合していることを容易に理解するであろう。本実施例は、本明細書に記載の方法とともに、実施形態を現在代表するものであり、例示的なものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。請求項の範囲によって定義される本開示の趣旨内に包含される変更および他の使用が、当業者に思い浮かぶであろう。
【実施例
【0076】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、以下において「%」は、特に断りがない限り「重量%」を表す。
【0077】
【表1】
【0078】
典型的なCMP組成物の製剤を表2に記載する。スラリーAはベース製剤である。スラリーRに記載されているように、ベース製剤Aにx%のILD抑制剤を加えた。その製剤をスラリーXXとした。
【0079】
【表2】
【0080】
研磨条件
ベンチトップ研磨機
・研磨機:Allied TechPrepベンチトップ研磨機(1.5インチx1.5インチの試験片)
・パッド:VP6000パッド
・流量:90mL/分
・プラテン速度:250rpm
・研磨時間:BDでは3分、Coでは30秒
・ダウンフォース:1psi
・希釈率:3.3倍
・H(POU):0.68重量%
Westech研磨機
・研磨機:Westech 372M研磨機(200mmウエハー)
・プラテン速度:93/87rpm
・パッド:VP6000パッド
・流量:200mL/分
・プラテン速度:93/87rpm
研磨時間:BDおよびSiNでは1分、Coでは15秒
・ダウンフォース:1.5psi
・希釈率:3.3倍
・H(POU):0.68重量%
Reflexion LK研磨機
・研磨機:Reflexion LK(300mmウエハー)
・パッド:VP6000パッド
・流量:200mL/分
・プラテン速度:90rpm
研磨時間:BDおよびSiNでは1分、Coでは10秒
・ダウンフォース:1.5psi
・希釈率:3.3倍
・H(POU):0.68重量%。
【0081】
表3に記載されている様々な界面活性剤による初期スクリーニング結果。UCON-50-HB-2000を含有する製剤は、高いPVD Co除去速度で完全なBD抑制をもたらしたことが示されている。具体的には、スラリーNは、先行技術の米国特許出願公開第2017/0158913 A1号明細書で良好なBD抑制剤であると主張されたTriton DF-16界面活性剤を含有する。この界面活性剤のBD除去速度は、スラリーNでは3Å/分であった。化学物質9038-95-3を含む製剤と比較してCo除去速度はかなり低かったが、これは8~10個の炭素原子を含有するTriton DF-16由来の疎水性の高い尾部基によるものであると考えられる。
【0082】
【表3】
【0083】
図1は、BD除去速度の抑制に対する分子量の依存性を示す。分子量500の化学物質(CAS番号9038-95-3)を加えた際にBD除去速度の抑制が達成された。界面活性剤(CAS番号9038-95-3)の分子量が増加すると、この化学物質の分子量が2660超の場合、BDの除去速度は0Å/分まで抑制された。図1に記載したように、分子量980の界面活性剤(CAS番号9003-11-6)からも同様の傾向が観察された。この化学物質(CAS番号9003-11-6)では、CAS番号9003-11-6を分子量6000で使用すると、1Å/分で最も低いBD抑制が観察された。
【0084】
図2は、0.074重量%までの界面活性剤濃度の効果を示す。0.074重量%のUCON50-HB-2000(CAS番号9038-95-3)界面活性剤を加えた際に、BD除去速度が0Å/分に達した。0.0029重量%超の界面活性剤では、わずかなBD除去速度の抑制が観察された。
【0085】
これらの結果は、CAS番号9038-95-3またはCAS番号9003-11-6を含む界面活性剤では、0.0029重量%を超える界面活性剤をスラリー製剤に加えると、分子量が増加し、BDが抑制され得るため、BD除去速度がさらに抑制されることを示した。表3に、この試験に使用したスラリー全種を要約した。
【0086】
図1のデータから、BD除去速度の抑制が、EO/PO繰り返し単位の比の影響を受けることが分かる。表4の分子量1000付近の分子では、スラリーR(分子量2660)のBD除去速度は0Å/分であったのに対して、スラリーV(分子量2500)のBD除去速度は4Å/分であった。この結果は、EO/POの重量比が、BD除去速度の抑制に重要な役割を果たすことを示している。EO/PO比が低下すると、BDの抑制が高まる。また、1~3のEO/PO比の範囲が、選択性を高めるための効率的なBD除去速度の抑制に適していることも示されている。これまでに、本発明者らは、様々な分子量のこれら2つの化学物質を試験してきた。EO/PO比が1未満の化学物質は、これらの化学物質よりも良好なBDの抑制と高いCo/BD選択性とをもたらす可能性がある。
【0087】
さらに、CAS番号9038-95-3の分子量3930超およびCAS番号9003-11-6の分子量12000超の化学物質を含むスラリーでは、Co除去速度が低下し始め、これは、分子量が高い大きすぎる分子は、高Co除去速度およびBD停止用途に使用するには適していないことを示している。
【0088】
【表4】
【0089】
表5は、CAS番号9038-95-3を0.0029%含有するスラリーZを使用した300mm研磨機の除去速度を示している。ベンチトップ研磨機(Co除去速度:2100Å/分、BD除去速度:7Å/分)から得られたデータと比較して、実際の選択性(1923)は、Co除去速度(3387Å/分)が高く、BD除去速度(2Å/分)が低いことから、はるかに高かった。これは、この化学物質を含有するスラリーが大型の研磨機で使用された場合、実際のBD除去速度がさらに抑制される可能性があることを示している。スラリーYでさえPOU製剤中に0.00074重量%のこの化学物質を含有していることから、BDに対してもはるかに低いBD除去速度が期待され得る。
【0090】
【表5】
【0091】
表6は、CMPスラリーの異なるセットの組成を示している。表は、スラリー組成物が0.03重量%のUCON50-HB界面活性剤を含み、その分子量が変化し得ることを示している。
【0092】
【表6】
【0093】
表7は、界面活性剤の量が少ない場合(0.03重量%)の、2枚の誘電体基板ウエハーの除去速度に対する界面活性剤分子量の増加の効果を示している。分子量が2000g/molを超えると、BD除去速度は低分子量の界面活性剤で観察される除去速度の約3分の1になる。BDまたはブラックダイヤモンド材料は低いK値を有するため、通過する電流に対する抵抗が大きくなり、小型で新しい世代のチップに適している。古い世代のTEOS-SiO基板の除去速度は分子量の増加の影響をあまり受けないが、新しいBD材料は分子量の増加に伴い研磨速度が大幅に低下する。
【0094】
【表7】
【0095】
図3は、同じスラリーのセットの研磨トポグラフィーに対する効果を示している。3つの高分子量UCON50-HB界面活性剤を使用すると、バリア研磨プロセス中のトポグラフィー補正の量が大幅に増加する。
【0096】
表8は、CMPスラリーの異なるセットの組成データを示し、界面活性剤の量は、表6に示される組成物よりも一桁多い。このように調製されたCMP組成物は、0.32重量%を含むことを示す。表は、こうして調製されたCMP組成物が0.32重量%のUCON界面活性剤を含み、その分子量およびポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン比が変化し得ることを示している。
【0097】
【表8】
【0098】
表9は、この研究の結果を示しており、界面活性剤の量は表7で試験した組成物よりも一桁大きい。この場合、低分子量であってもブラックダイヤモンド除去速度が影響を受け、低分子量の界面活性剤を使用しても、より小さな界面活性剤は、より大きな界面活性剤ほど除去速度を低下させる効果がない。UCON75-Hタイプの界面活性剤を使用した試験も同様の傾向を示していますが、このグループの界面活性剤は、HB-50UCON材料と同じくらい効果的であるためには、より高い分子量が必要である。これら2種類の界面活性剤の違いは、界面活性剤鎖のポリオキシエチレン単位とポリオキシプロピレン単位の比率にある。UCON50-HB界面活性剤には2種類のユニットが同量含まれているが、UCON75-H界面活性剤には75%のポリオキシエチレン単位と25%のポリオキシプロピレン単位が含まれている。
【0099】
【表9】
【0100】
特定の実施形態を図示し、説明してきたが、以下の特許請求の範囲で定義されるそのさらに広い態様において、本技術から逸脱することなく、当技術分野の通常の技術に従って変更および修正を加えることができることを理解されたい。他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に記載されている。
【0101】
本願は、2019年3月29日に出願された米国特許出願第16/369,193号および2019年8月13日に出願された米国特許出願16/539,600号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
図1
図2
図3