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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】抵抗体および制振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/023 20060101AFI20231226BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20231226BHJP
   F16F 9/10 20060101ALI20231226BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
F16F15/023 A
F16F15/02 C
F16F15/02 N
F16F9/10
E04H9/14 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020045452
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021148136
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】本間 真
(72)【発明者】
【氏名】岡田 潤
(72)【発明者】
【氏名】本浪 雅史
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-071095(JP,A)
【文献】特開2010-066139(JP,A)
【文献】特開2007-113700(JP,A)
【文献】実開昭52-126850(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0360471(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00- 15/36
F16F 9/00- 9/58
E04H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振り子式制振装置に用いられる抵抗体であって、
前記振り子式制振装置における振り子の軸から放射状に延びる複数の羽根部と、
前記複数の羽根部のそれぞれの先端側に設けられた第1の補助羽根部と、を備え、
前記第1の補助羽根部は、当該第1の補助羽根部が設けられている前記羽根部の延伸方向に対して、それぞれ共通の方向に傾いた角度を有し
前記複数の羽根部は、3つ以上の羽根部を含み、
前記第1の補助羽根部は前記羽根部の先端部から延びて形成されることを特徴とする抵抗体。
【請求項2】
前記角度は、0°より大きく90°以下であることを特徴とする請求項1に記載の抵抗体。
【請求項3】
前記複数の羽根部のそれぞれの先端に、前記延伸方向に対して前記第1の補助羽根部とは異なる方向に傾いて設けられた第2の補助羽根部をさらに備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の抵抗体。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の抵抗体と、
前記抵抗体の下方に配置され、液体を貯留することが可能な貯留部と、
前記貯留部に貯留された液体を外部に流出可能な流路と、
前記流路の途中に設けられ、該流路を開閉する開閉機構と、を備えることを特徴とする制振装置。
【請求項5】
振り子式制振装置に用いられる抵抗体であって、前記振り子式制振装置における振り子の軸から放射状に延びる複数の羽根部と、前記複数の羽根部のそれぞれの先端側に設けられた第1の補助羽根部と、を備え、前記第1の補助羽根部は、当該第1の補助羽根部が設けられている前記羽根部の延伸方向に対して、それぞれ共通の方向に傾いた角度を有している前記抵抗体と、
前記抵抗体の下方に配置され、液体を貯留することが可能な貯留部と、
前記貯留部に貯留された液体を外部に流出可能な流路と、
前記流路の途中に設けられ、該流路を開閉する開閉機構と、を備え、
前記貯留部には、前記流路に連通する開口部が形成されており、
前記開口部は、前記貯留部の最下部以外の位置に形成されていることを特徴とする制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振り子式制振装置に用いられる抵抗体、および該抵抗体を備える制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、煙突等の塔状構造物には、風等によって発生する振動を減衰させるための制振装置が取り付けられることがある。そのような制振装置として、例えば、吊り下げられた重錘の振り子振動によって塔状構造物に対し減衰作用を生じさせる振り子式制振装置が知られている。
【0003】
振り子式制振装置は、比較的簡単な装置構造とすることが可能であり、例えば、特許文献1には、流動性液体を収容した筒状の本体内部に平面視十字状の仕切板を設けた構造の振り子式制振装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-71095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、塔状構造物のような制振対象物に発生する振動の方向は様々であり、特許文献1に記載の技術において、平面視十字状の仕切板が流動性液体中を移動することにより発生する抵抗力(流体力学における抗力)の大きさは振動の方向によって異なり得る。例えば、上記仕切板の板面に対して垂直な方向に振動する場合と、該方向から45°傾いた方向に振動する場合とで、仕切板に生じる抗力の大きさが異なる。その結果、特許文献1に記載の振り子式制振装置では、制振対象物に発生した振動の方向に応じて制振性能が変動し得る。
【0006】
ところで、従来、円柱形状の抵抗体を用いる振り子式制振装置も知られている。この種の技術では、制振対象物に発生した振動の方向に依存することなく安定した制振性能を有する。一方で、より高い制振性能が要求される場合、例えば振り子式制振装置を大型化したとしても、単純な円柱形状の抵抗体では流動性液体から受ける抗力の大きさが不十分となり、所望の制振性能を得られないことがある。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、高い制振性能を有するとともに振動方向に応じた制振性能の変動が抑制された抵抗体、および該抵抗体を備える制振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る抵抗体は、振り子式制振装置に用いられる抵抗体であって、前記振り子式制振装置における振り子の軸から放射状に延びる複数の羽根部と、前記複数の羽根部のそれぞれの先端側に設けられた第1の補助羽根部と、を備え、前記第1の補助羽根部は、当該第1の補助羽根部が設けられている前記羽根部の延伸方向に対して、それぞれ共通の方向に傾いた角度を有している。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、高い制振性能を有するとともに振動方向に応じた制振性能の変動が抑制された抵抗体、および該抵抗体を備える制振装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態1における抵抗体を備える振り子式制振装置、および抵抗体の構成を概略的に示す図である。
図2】上記抵抗体が有する補助羽根部の作用について説明するための模式図である。
図3】上記抵抗体の一変形例について構成を概略的に示す図である。
図4】上記抵抗体の他の変形例について構成を概略的に示す図である。
図5】上記抵抗体のさらに他の変形例について構成を概略的に示す図である。
図6】本発明の実施形態2における抵抗体の構成を概略的に示す図である。
図7】本発明の実施形態3における制振装置の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について、図面に基づいて以下に説明する。なお、以下の記載は発明の趣旨をよりよく理解させるためのものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、本出願における各図面に記載した構成の形状および寸法(長さ、幅等)は、実際の形状および寸法を必ずしも反映させたものではなく、図面の明瞭化および簡略化のために適宜変更している。
【0012】
<制振装置>
先ず、図1における符号1001で示す図を参照して、本発明の一実施形態における抵抗体1Aを備える装置の一例である制振装置10Aの構成について概略的に説明する。図1における符号1001で示す図は、本実施形態における制振装置10Aの構成を概略的に示す断面図である。
【0013】
図1において符号1001で示すように、本実施形態における制振装置10Aは、フレーム11と、フレーム11の鉛直方向における上側に設置された重錘支持板12と、フレーム11および重錘支持板12の外側を覆うカバー15と、を備えている。また、制振装置10Aは、フレーム11の内部に設けられており液体21を貯留する貯留部20と、重錘支持板12から吊り下げられた重錘30と、重錘30に取り付けられた抵抗体1Aと、を備えている。
【0014】
ここで、図1中、3次元空間において互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸を以下のように規定する。すなわち、制振装置10Aの高さ方向でもある鉛直方向(紙面における上下方向)をZ軸とするとともに、重力方向をZ軸の負方向とする。また、図1において符号1001にて図示する断面において、制振装置10Aの横幅方向(紙面における左右方向)をX軸とするとともに、該断面(すなわち紙面)における左から右に向かう方向をX軸の正方向とする。また、上記Z軸およびX軸の両方に直交する、制振装置10Aの奥行方向(紙面に対して垂直な方向)をY軸とするとともに、紙面に対して垂直な方向における手前から奥に紙面を貫く方向をY軸の正方向とする。なお、図1以外の図面についても図中にXYZ軸を記載し、以下、同様にXYZ軸を規定して説明する。
【0015】
フレーム11は、例えばI型鋼を組み合わせて形成された高い剛性を有する構造体であって、Z軸の正方向側に向けて開口した形状を有している。フレーム11における開口した部分を覆うように重錘支持板12が配置されて、フレーム11に固定されている。
【0016】
なお、フレーム11は、例えば、Z軸の正方向側から平面視すると矩形状となるような、箱型の形状に形成されていてもよい。また、フレーム11は、例えば、Z軸の正方向側から平面視すると円形状となるような有底の筒状中空体として形成されていてもよい。フレーム11は、その内部に振り子式の制振構造を収容することが可能となっていればよく、具体的な形状は特に限定されない。
【0017】
重錘支持板12は、フレーム11における開口した部分を覆うように、フレーム11上に設置されている。重錘支持板12には、重錘30を吊り下げるための支持部13が設けられている。重錘支持板12は、重錘30をフレーム11内の空間に吊り下げ可能となるように支持部13が設けられていればよく、重錘支持板12の具体的な態様は特に限定されない。例えば、重錘支持板12に代替してフレーム11を構成する鋼材の一部が利用されてもよく、この場合、当該鋼材に支持部13が設けられていればよい。また、この場合、
フレーム11は、上述のような開口した部分を有していなくてもよい。
【0018】
支持部13には芯棒31が取り付けられている。芯棒31は、重錘30を保持しており、芯棒31における支持部13と反対側の端部には抵抗体1Aが取り付けられている。芯棒31および重錘30は、制振装置10Aにおける振り子となっている。この振り子の軸(すなわち芯棒31の中心軸)を軸35とする。抵抗体1Aについて詳しくは後述する。
【0019】
制振装置10Aは、芯棒31、重錘30、および抵抗体1Aが一体に揺動可能かつ回転可能となっている。支持部13は、そのような移動が可能となるように芯棒31を支持する構造を有していればよく、具体的な態様は特に限定されない。支持部13の具体的な構造としては、公知の構造を採用することができるため詳細な説明は省略するが、例えば、支持部13はユニバーサルジョイント(自在継手)である。支持部13は、例えば、上記XYZ軸のそれぞれを回転軸とする3つの支持部材が組み合わさった構造を有している。
【0020】
本明細書において、「揺動」、「回転」、および「振動」の用語は、以下の意味にて用いる。
【0021】
「揺動」とは、芯棒31、重錘30、および抵抗体1Aが、X軸方向およびY軸方向のいずれか一方または両方に、Z軸方向の変位を伴いつつ移動する振り子運動のことを意味している。また、「回転」とは、重錘30および抵抗体1Aが、芯棒31を回転軸として回転する運動のことを意味している。「振動」とは、上記「揺動」を含み、制振対象物または制振装置に生じた周期的または不規則な往復運動のことを意味している。
【0022】
重錘30は、上記のように、フレーム11と重錘支持板12とにより囲まれた内部空間内において揺動可能かつ回転可能となるように、芯棒31を介して支持部13から吊り下げられている。重錘30の重さは、例えば5トンである。重錘30の重さ(すなわち材質および大きさ)は、制振装置10Aの用途等に応じて適宜設定されてよく、特に限定されるものではない。
【0023】
芯棒31は、例えば、高い剛性を有する物質(金属等)によって形成された円柱状の部材である。芯棒31の具体的な態様は特に限定されない。また、制振装置10Aは、芯棒31に代替して、重錘30を吊り下げることができる吊り具を有していてもよい。そのような吊り具としては、例えば、柔軟性を有する鎖若しくはワイヤ等が挙げられる。吊り具によって重錘30が吊り下げられている場合、例えば、重錘30に抵抗体1Aが直接取り付けられていてもよく、重錘30と抵抗体1Aとの間に何らかの接続部材が用いられていてもよい。
【0024】
制振装置10Aを所定の固有振動数を有するように構成するためには、支持部13から重錘30の重心までの距離が一定であることを要する。上記吊り具は、上記距離の変化を比較的生じ易い。そのため、上記距離を一定に維持し易い芯棒31を用いることが好ましい。
【0025】
なお、制振装置10Aは、図示しない弾性部材(例えばバネ部材)を備えていてもよい。芯棒31の長さによって調整できる固有振動数の範囲には限界があるが、当該弾性部材を備えることにより、固有振動数をより広い範囲で調整することができる。上記弾性部材は、公知の材質、形状であってよい。上記弾性部材は、例えば一端が重錘30に取り付けられ、他端がフレーム11に取り付けられていてもよい。制振装置10Aには、複数の上記弾性部材が設けられていてもよい。
【0026】
貯留部20は、フレーム11の内部に設けられており、本実施形態では、半球状の形状を有する金属製の容器である。貯留部20には、液体21が貯留(保持)される。貯留部20は、液体21に抵抗体1Aの少なくとも一部が浸漬した状態にて、芯棒31、重錘30、および抵抗体1Aが一体に、任意の方向に揺動可能かつ回転可能となるような形状である。貯留部20は、液体21を貯留可能となっていればよく、具体的な態様(形状)は特に限定されない。例えば、貯留部20は、有底の円筒形状であってもよい。
【0027】
液体21は、典型的には粘性液体であって、例えば、シリコンオイルである。シリコンオイルは、温度依存性等の各種の性質において優れていることから、液体21として好ましい。
【0028】
フレーム11と貯留部20との間には断熱材16が封入されている。断熱材16は、例えば発泡断熱材である。また、フレーム11および重錘支持板12の外側を覆うようにカバー15が設けられている。カバー15は、具体的な態様は特に限定されないが、フレーム11を保護するとともに、フレーム11と重錘支持板12とにより囲まれた内部空間を、制振装置10Aの外部環境から遮蔽する。制振装置10Aは、断熱材16およびカバー15を備えることにより、フレーム11と重錘支持板12とにより囲まれた内部空間が断熱された構造を有している。
【0029】
制振装置10Aは、上記構造を有することにより、外気温度の影響を低減して上記内部空間の温度を一定に維持することができる。そのため、シリコンオイル等の液体21の粘性が変化することを抑制できる。また、急激な温度変化によって貯留部20に結露が発生することを抑制できる。
【0030】
なお、制振装置10Aは、断熱材16を備えていなくてもよく、この場合、フレーム11の底壁と貯留部20との間に空間があってもよい。貯留部20は、フレーム11の底壁上に載置されていてもよい。
【0031】
また、断熱材16は、例えば、木材のような調湿機能を有する材料であってもよく、木材および発泡材を用いて多重構造(例えば二重張り構造)を有するように形成されていてもよい。木材および発泡材の両方を用いて形成された断熱材16は、断熱効果に加えて結露の発生を低減する効果を奏する。
【0032】
<抵抗体>
次に、本実施形態における制振装置10Aが備える抵抗体1Aの構造について、図1における符号1002、1003で示す図、および図2を参照して以下に詳細に説明する。
【0033】
図1における符号1002で示す図は、芯棒31が鉛直方向に吊り下がっている状態(抵抗体1Aが静止した状態)において、Z軸の正方向側から抵抗体1Aを見た平面図である。この図では、フレーム11、重錘支持板12、重錘30、芯棒31等を透過して(省略して)示している。換言すれば、図1における符号1002で示す図は、芯棒31から取り外した状態の抵抗体1Aの平面図に相当する。また、図1における符号1003で示す図は、抵抗体1Aの斜視図である。この図においても、重錘30、芯棒31等を透過して(省略して)示している。
【0034】
図1において符号1002、1003で示すように、抵抗体1Aは、重錘30に対して取り付け可能な基部2、基部2から放射状に延びる複数の羽根部3、および、複数の羽根部3のそれぞれの先端側に設けられた複数の補助羽根部(第1の補助羽根部)4、を備えている。なお、抵抗体1Aは、制振装置10Aにおける振り子の軸35から放射状に延びる複数の羽根部3を備えていればよく、必ずしも基部2を備えていなくてもよい(後述の変形例(i)を参照)。
【0035】
基部2は、中空部を有する円筒形状であり、該中空部に対向する内面にネジ溝が形成されている。芯棒31の一方の端部に形成されたネジ山と上記中空部のネジ溝とを螺合することにより、基部2が芯棒31に取り付けられる。これにより、基部2は、芯棒31を介して重錘30に取り付けられる。基部2と芯棒31との間には、図示しないナット等が取り付けられていてもよい。
【0036】
なお、基部2は、軸35に取り付け可能となっていればよく、具体的な態様は特に限定されるものではない。例えば、基部2は、羽根部3よりもZ軸正方向側に長い中実の円柱形状となっていてもよく、この場合、基部2の一部がボルトとなっており、芯棒31の端部に基部2を挿入するためのネジ穴が形成されていればよい。或いは、制振装置10Aは、芯棒31の端部および基部2を結合して固定するための結合部材を備えていてもよい。
【0037】
基部2または芯棒31にネジ穴が形成されている場合、抵抗体1Aの交換を容易に行うことができ、メンテナンス性を高めることができるという点で有利である。一方、基部2および芯棒31を中実構造として、基部2を溶接等によって直接的に芯棒31または重錘30に接続する場合(一体構造とする場合)、ネジ接合部のような強度的に弱点となり得る部分が形成されない。そのため、強度の観点から有利である。
【0038】
羽根部3は、Z軸正方向側から見て、基部2から放射状に延びるように設けられており、本実施形態における抵抗体1Aは、4つの羽根部3を備えている。羽根部3は平板形状である。羽根部3をZ軸正方向側から見たとき、基部2の中心から羽根部3の延びる方向をD1とし、羽根部3の、方向D1における長さ(XY平面上の長さ)をα、Z軸方向における長さ(XZ平面上の長さ)をγ1とする。D1軸と4つの羽根部3は、それぞれ同一または略同一の形状を有する。すなわち、4つの羽根部3は、それぞれ、長さγ1が互いに同一または略同一であり、長さαが互いに同一または略同一の形状を有する。
【0039】
本明細書において、「略同一」とは、実質的に同一であることを意味し、抵抗体1Aを製造する過程において生じ得る製造誤差等に起因する形状の相違を許容することを意味する。
【0040】
羽根部3は、制振装置10Aの用途(所望の制振性能)に応じた長さα、長さγ1、および厚さ(板厚)となっていればよく、それらの具体的な値は特に限定されない。
【0041】
補助羽根部4は、羽根部3の先端側に設けられているとともに、Z軸正方向側から見て、上記方向D1に対して傾いた方向D2に延びるように設けられている。本実施形態における抵抗体1Aは、4つの羽根部3に対応して、合計4つの補助羽根部4を備えている。4つの補助羽根部4は、それぞれ共通の方向に傾いている。換言すれば、抵抗体1Aは、XY平面上において、上記方向D1に対して時計回りの方向に傾いた上記方向D2に延びる補助羽根部4を有している。
【0042】
上記方向D1の直線と上記方向D2の直線とが互いに交差してなす角の角度をθ、上記方向D1の直線と上記方向D2の直線との交点をPとする。角度θは、XY平面上において、交点Pを基準点とし、上記方向D1の直線から上記方向D2の直線まで時計回り方向に回転した場合の回転角度を指している。
【0043】
補助羽根部4は平板形状であり、補助羽根部4の、方向D2における長さ(XY平面上の長さ)をβ、Z軸方向における長さ(XZ平面上の長さ)をγ2とする。本実施形態における抵抗体1Aでは、補助羽根部4の長さγ2と、羽根部3の長さγ1とは互いに同一または略同一である。
【0044】
4つの補助羽根部4は、それぞれ同一または略同一の形状を有する。すなわち、4つの補助羽根部4は、それぞれ、長さγ2が互いに同一または略同一であり、長さβが互いに同一または略同一の形状を有する。
【0045】
補助羽根部4は、制振装置10Aの用途(所望の制振性能)に応じた長さβ、長さγ2、および厚さ(板厚)となっていればよく、それらの具体的な値は特に限定されない。
【0046】
補助羽根部4は、上記角度θが0°より大きくなるように、好ましくは、上記角度θが0°より大きく90°以下となるように、羽根部3の先端に設けられている。補助羽根部4は、上記角度θが90°を超えるように設けられていてもよく、この場合、上記角度θが例えば135°以下となるように設けられていてもよい。角度θが135°を超えると、補助羽根部4が有効に作用しないことがある。補助羽根部4の作用について詳しくは後述する。
【0047】
抵抗体1Aでは、4つの補助羽根部4における角度θが互いに同一または略同一となるように、4つの補助羽根部4が設けられている。
【0048】
抵抗体1Aは、羽根部3および補助羽根部4が互いに別の部材であって、羽根部3および補助羽根部4が溶接されて形成されていてもよい。或いは、抵抗体1Aは、羽根部3および補助羽根部4を一体の部材として備えていてもよく、この場合、例えば加工処理、鋳造処理等によって羽根部3および補助羽根部4が形成されていてもよい。
【0049】
抵抗体1Aは、羽根部3および補助羽根部4について上述したことと同様に、基部2と羽根部3とが溶接されていてもよく、基部2と羽根部3とを一体の部材として備えていてもよい。
【0050】
羽根部3および補助羽根部4は、例えば、セラミックス、金属、等の物質によって形成されている。金属としては、例えばステンレス(SS400等)が挙げられる。羽根部3および補助羽根部4は、互いに同じ物質により形成されていてもよく、互いに異なる物質により形成されていてもよい。
【0051】
羽根部3と補助羽根部4とが溶接部によって接合されている場合、または、羽根部3と補助羽根部4とが一体の部材である場合、のいずれにおいても、長さα、βは次のように規定される。すなわち、長さαは、XY平面上において、上記方向D1の直線上の、基部2に接合する羽根部3の端部の位置から、交点Pの位置までの長さである。また、長さβは、XY平面上において、上記方向D2の直線上の、交点Pの位置から、補助羽根部4の端部の位置までの長さである。
【0052】
また、XY平面上において、上記方向D1の直線上の、基部2の中心から基部2に接合する羽根部3の端部の位置までの長さをRとする。抵抗体1Aにおいて、抗力を主に受ける部分は、長さαおよび長さRに対応する部分(すなわち基部2および羽根部3)である。そのため、長さαおよび長さRの和は、長さβよりも長くなっていることが好ましい。
【0053】
(補助羽根部の作用)
本実施形態における抵抗体1Aは、補助羽根部4を有することにより、Z軸正方向側から見て、いわゆる風車状の形状を有している。補助羽根部4の作用について、図2を参照して以下に詳細に説明する。
【0054】
図2における符号2001で示す図は、参考例としての従来の抵抗体の構造を模式的に示す平面図である。図2における符号2002で示す図は、本実施形態における抵抗体1Aの構造を模式的に示す平面図である。なお、図2では、説明の平明化のために、抵抗体の基部を点として示している。また、図2においても、図1に対応するようにXYZ軸を規定している。
【0055】
先ず、従来の抵抗体100について説明する。図2において符号2001で示すように、抵抗体100は、平面視十字状の形状を有しており、基部110と4つの羽根部120とを備えている。
【0056】
ここで、4つの羽根部120は互いに同一形状であるとし、4つの羽根部120のXY平面上における長さを所定値L1とする。4つの羽根部120は、Z軸方向における長さが同一である。
【0057】
以下、抵抗体100が例えば制振装置10Aに取り付けられて、液体21中に浸漬した状態で揺動する場合に、抵抗体100が受ける抗力について考える。説明の平明化のために、羽根部120が全て液体21中に浸漬した状態で、抵抗体100が液体21中にて揺動すると仮定する。X軸とY軸との中間の方向(Y軸正方向を0°方向とすると45°方向)の揺動方向をD10とし、X軸に平行な揺動方向をD11とする。
【0058】
抵抗体100は、D10の方向に揺動する場合、実質的に、D10の方向に直交する2つの羽根部120が液体21から抵抗を受けることとなり、この場合の抵抗を受ける面積は2×[L1]×(羽根部120のZ軸方向の長さ)であると言える。
【0059】
一方で、抵抗体100は、D11の方向に揺動する場合、2つの羽根部120が液体21中を斜め向きの状態で移動して、液体21から抵抗を受けることとなる。この場合、一般に、D11の方向に対して直交する平面(この例ではYZ平面)上に、2つの羽根部120を投影することにより得られる仮想面の面積が、液体21から抵抗を受ける面積であるとみなすことができる。当該仮想面の面積は、(√2)×[L1]×(羽根部120のZ軸方向の長さ)である。
【0060】
上記のことから、抵抗体100では、D11の揺動方向における制振性能がD10の揺動方向における制振性能の約0.71倍であると言える。つまり、抵抗体100では、羽根部120に生じる抗力の大きさが、抵抗体100の揺動方向に応じて大きく変動し得る。
【0061】
次に、図2における符号2002で示す図を参照して、本実施形態の抵抗体1Aについて説明する。ここでは、抵抗体1Aは、羽根部3の長さαが[L2]であり、補助羽根部4の長さβが[L3]であるとする。抵抗体1Aは、4つの補助羽根部4における角度θが互いに同一である。また、羽根部3の長さγ1と補助羽根部4の長さγ2とは何れも同じ大きさγであるとする。
【0062】
抵抗体1AがD10の方向に揺動する場合、D10の方向に対して直交する平面上に抵抗体1Aを投影した仮想面の面積が液体21から抵抗を受ける面積であるとみなすことができ、当該仮想面の面積は2×([L2]+[L3]×cosθ)である。
【0063】
また、抵抗体1AがD11の方向に揺動する場合、D11の方向に対して直交する平面上に抵抗体1Aを投影した仮想面の面積が液体21から抵抗を受ける面積であるとみなすことができる。当該仮想面の面積は2×([L2]×cosθ+[L3])である。
【0064】
例えば、上記[L2]の値が上記[L3]の値の2倍である場合、D10の方向における仮想面の面積に対するD11の方向における仮想面の面積の比は、約0.89となる。この場合、抵抗体1Aは、D11の揺動方向における制振性能がD10の揺動方向における制振性能の約0.89倍であると言える。また、例えば、上記[L2]の値と上記[L3]の値とが同じ場合、D11の揺動方向における制振性能とD10の揺動方向における制振性能とを同等とすることができる。
【0065】
上記のことから、本実施形態における抵抗体1Aによれば、上述の抵抗体100よりも、D10の揺動方向における制振性能とD11の揺動方向における制振性能との差を小さくすることができる。
【0066】
また、D10とD11との間の揺動方向(D10の方向を0°方向、D11の方向を45°方向とすると、0°より大きく45°未満の方向)について考えると、揺動方向を0°方向から45°方向へと変化させるに伴って仮想面の面積は多少変動する。例えば、上記[L2]の値と上記[L3]の値とが同じであり、角度θが45°の場合について計算すると、22°付近の揺動方向のときに仮想面の面積は最大となる。ここで、揺動方向が45°方向である場合の仮想面の面積に対する、揺動方向が22°方向である場合の仮想面の面積の比は、約1.08である。D10とD11との間の揺動方向においては、D11の揺動方向よりも制振性能が増大し得る。
【0067】
したがって、抵抗体1Aは、揺動方向に応じた制振性能の変動が大きく抑制される。
【0068】
また、一般に、液体21中を移動する物体が受ける抗力Fは、以下の式(1)で表される。
【0069】
F=1/2×ρ×V×S×Cd ・・・(1)
ここで、ρは液体21の密度、Vは物体と液体21との相対速度、Sは物体の移動方向から見た投影面積(投射断面積)、Cdは物体の形状に依存した定数(抗力係数)、である。
【0070】
抵抗体1Aは、補助羽根部4を有することによって回転運動を生じ易くすることができる。そのため、上記式(1)に含まれる変数のうち、ρ、S、Cdが一定であるとして、抵抗体1Aの揺動運動の速度に加えて回転運動の速度が加算されて上記Vを高めることにより、抗力Fをより一層高めることができる。その結果、抵抗体1Aは、制振性能を向上させることができる。
【0071】
したがって、抵抗体1Aは、例えば平面視十字状の従来の抵抗体よりも振動方向に応じた制振性能の変動が大きく抑制されている。また、抵抗体1Aは、例えば円柱形状のような従来の抵抗体よりも高い制振性能を有する。
【0072】
抵抗体1Aの形状の効果について、さらに詳細に説明すれば以下のとおりである。すなわち、一般に、円柱状の抵抗体は、平面視十字状の抵抗体よりも抗力係数が小さい。そのため、円柱状の抵抗体は、平面視十字状の抵抗体と同じ抗力を有するには、比較的大型の形状とすることを要し、製造コストが増大し得る。
【0073】
例えば、円柱状の抵抗体について、円柱の直径と全長とが互いに等しい形状(基準形状)を有するとする。当該円柱状の抵抗体について、上記基準形状における抗力係数の2倍の性能(説明の便宜上、要求性能と称する)を求められる場合、単純には、上記基準形状に対して円柱の径を2倍にする必要がある。一方で、平面視十字状の抵抗体は、上記基準形状に対して全体の大きさが約1.1倍とすることによって、上記要求性能と同様の抗力係数を有する。つまり、平面視十字状の抵抗体は、比較的小型の形状であっても高い性能を有する。
【0074】
また、本実施形態における抵抗体1Aは、円柱状の抵抗体に比べて、比較的小型の形状であっても高い制振性能を有する。そして、抵抗体1Aは、補助羽根部4を有することによって、振動方向の変化に対応する投影面積の変化が低減されており、その結果、振動方向に応じた制振性能の変動が低減されている。その上、抵抗体1Aは、回転運動を生じ易くなっていることによって、より一層向上した制振性能を有する。
【0075】
(制振装置の具体例)
以上に説明した抵抗体1Aを備える制振装置10Aは、例えば、煙突等の塔状構造物の塔頂部、または塔状構造物の上部に設けられた踊り場等に設置されて、塔状構造物に生じる振動現象(渦励振等)を抑制する用途に用いられる。また、制振装置10Aは、地震動に対して制振性能を発揮することもできる。制振装置10Aは、制振対象物の大きさおよび目標とする制振性能等に応じて、複数設置されて用いられてよく、重錘30の重量および抵抗体1Aの具体的な大きさが適宜設定される。なお、後述する実施形態2および実施形態3における制振装置も、例えば、上記した制振装置10Aと同様の用途および設置態様であってよい。
【0076】
<確認実験>
本発明の一態様における抵抗体の効果について確認実験を行った結果を以下に説明する。
【0077】
比較例として平面視十字状の抵抗体、実施例として羽根部3および補助羽根部4を備える平面視風車状の抵抗体を用いた。支持部から吊り下げた重錘に抵抗体を取り付けるとともに、X方向およびY方向にそれぞれ対応するように2つの加速度計(共和電業製、ASW-1A)を重錘の上面に装着した。
【0078】
比較例の抵抗体として、平面視したときの十字形状において、1つの羽根部の一端から基部の中心をとおって反対側の羽根部の一端までの距離が40mmであり、羽根部の板厚が6mm、羽根部の板幅が30mmの形状のものを用いた。
【0079】
実施例の抵抗体として、角度θが45°であり、羽根部の長さをα、補助羽根部の長さをβ、基部の直径をDとして、2×(α+βcosθ)+Dが40mmであり、羽根部および補助羽根部の板厚が6mmである形状のものを用いた。実施例の抵抗体における、長さαは6mmであり、羽根部および補助羽根部のZ軸方向における長さγは30mmであった。
【0080】
シリコンオイルに抵抗体を、静止状態における浸漬量(浸漬深さ)が28mmとなるように浸漬させて、重錘に揺動を付与した。揺動方向は、前述のD10(0°方向)およびD11(45°方向)に対応する方向とした。加速度を計測することにより、揺動の減衰性能(制振性能)を評価した。試験中、K熱電対を用いてシリコンオイルの温度および気温を測定した。計測装置として、NR-500、NR-ST04、NR-TH08(キーエンス製)を用いた。計測周波数は100Hzとした。
【0081】
試験を3回行い、各試験において揺動波形の5周期について対数減衰率を算出した。
【0082】
結果を以下の表に示す。表中に示す減衰率は、3回の試験にて算出された対数減衰率の平均値である。
【0083】
【表1】
【0084】
上記表に示すように、本実施例における風車状の抵抗体は、揺動方向に関わらず、比較例の抵抗体よりも減衰率が高かった。
【0085】
また、比較例の抵抗体は、揺動方向に応じて減衰率が大きく変化した。対して、本実施例の抵抗体は、揺動方向による減衰率の違いが比較例の抵抗体に比べて大幅に小さかった。
【0086】
以上のように、本実施例の抵抗体では、揺動方向に応じた制振性能の変動が抑制されていることが確認された。
【0087】
(変形例)
(a)本実施形態の変形例について、図3および図4を用いて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、上記実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0088】
図3および図4は、それぞれ、上記実施形態1における抵抗体1Aの変形例である抵抗体1Bおよび抵抗体1Cの構造について模式的に示す図である。図3における符号3001~3003で示す図は、それぞれ、抵抗体1Bの構造について模式的に示す、正面図、平面図、および斜視図である。図4における符号4001~4003で示す図は、それぞれ、抵抗体1Cの構造について模式的に示す、正面図、平面図、および斜視図である。
【0089】
図3において符号3002で示すように、抵抗体1Bは、補助羽根部4が羽根部3に対して傾いている角度θが60°となっている。また、図4において符号4002で示すように、抵抗体1Cは、補助羽根部4が羽根部3に対して傾いている角度θが90°となっている。
【0090】
前述の抵抗体1Aと同様に、このような形状を有する抵抗体1Bおよび抵抗体1Cも、揺動方向に応じた制振性能の変動が大きく抑制されているとともに、高い制振性能を有する。
【0091】
(b)本実施形態の他の変形例について、図5を用いて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、上記実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0092】
図5における符号5001~5003で示す図は、それぞれ、上記実施形態1における抵抗体1Aの変形例である抵抗体1Dの構造について模式的に示す、正面図、平面図、および斜視図である。
【0093】
図5において符号5003で示すように、抵抗体1Dは、基部2と、6つの羽根部3と、6つの補助羽根部4とを備えており、角度θが45°である。抵抗体1Dは、前述の抵抗体1Aと同様に、揺動方向に応じた制振性能の変動が大きく抑制されているとともに、高い制振性能を有する。
【0094】
本発明の一態様における抵抗体は、基部2から放射状に延びる複数の羽根部3を備えているとともに、複数の羽根部3のそれぞれに対応して補助羽根部4を備えていればよく、羽根部3の個数は特に限定されない。例えば、羽根部3は、2つまたは3つであってもよく、5つ以上であってもよい。本発明の一態様における抵抗体は、XY平面上において、複数の羽根部3が、それぞれ互いに等間隔に基部2から放射状に延びるようになっていることが好ましい。
【0095】
(c)本発明の他の一態様における抵抗体は、XY平面において、羽根部3の延びる方向に対して反時計回りの方向に傾いた方向に延びる補助羽根部4を有していてもよく、この場合においても、上記抵抗体1Aと同様の効果を奏する。
【0096】
(d)本発明の他の一態様における抵抗体は、羽根部3の延びる方向D1に対する補助羽根部4の傾きの角度θが、複数の補助羽根部4のそれぞれで異なっていてもよい。この場合においても、上記抵抗体1Aと同様の効果を奏する。
【0097】
(e)本発明の他の一態様における抵抗体は、羽根部3および補助羽根部4の少なくとも一方について、板面(Z軸方向を面内方向に含む面)に表面加工が施されていてもよい。羽根部3は、両方または片方の板面に表面加工を施されていてもよく、補助羽根部4は、両方または片方の板面に表面加工を施されていてもよい。
【0098】
羽根部3および補助羽根部4は、板面に表面加工が施されていることにより、表面積を大きくすることができるとともに、摩擦力を高めることができる。その結果、抵抗体の抗力係数を高めることができ、制振性能を向上させることができる。
【0099】
(g)補助羽根部4は、平板以外の形状であってもよく、例えば、湾曲した形状となっていてもよい。湾曲した形状とは、例えば、図1を参照して説明すれば、平面視において、点Pを始点として補助羽根部4が延びるにつれて、方向D2から離隔する距離が大きくなる(角度θが大きくなる)形状である。或いは、補助羽根部4は、Z軸方向において湾曲した形状であってもよい。補助羽根部4を平板以外の形状とすることにより、抵抗体の制振性能をさらに高めることができる。
【0100】
また、補助羽根部4は、Z軸方向の長さγ2が比較的長い形状となっていてもよい。例えば、補助羽根部4は、羽根部3のZ軸方向の長さγ1よりも、長さγ2が大きくなっていてもよい。補助羽根部4をそのような形状とすることにより、抵抗体の制振性能をさらに高めることができる。
【0101】
(h)本発明の他の一態様における抵抗体は、羽根部3および補助羽根部4が、当該抵抗体の下端(Z軸の負方向側の端部)が曲線形状となるような形状を有していてもよい。羽根部3および補助羽根部4は、貯留部20の形状に対応するように、Z軸の負方向側の端部が曲線形状となっていてもよい。これにより、抵抗体の下端と貯留部20との間の隙間を低減することができる。その結果、抵抗体の制振性能を効果的に向上させることができる。
【0102】
(i)本発明の一態様における抵抗体は、制振装置10Aにおける振り子の軸35から放射状に延びる複数の羽根部3と、複数の羽根部3のそれぞれの先端側に設けられた複数の補助羽根部4と、を備えていればよい。
【0103】
本発明の一態様における抵抗体は、例えば、重錘30に直接取り付けられていてもよい。また、本発明の一態様における抵抗体は、制振装置における重錘としての機能を兼ね備えていてもよく、この場合、制振装置は重錘30を備えていなくてもよい。換言すれば、制振装置における重錘が、軸35から放射状に延びる複数の羽根部3と、複数の補助羽根部4とを備え、本発明の一態様における抵抗体となっていてもよい。
【0104】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0105】
本実施形態では、図6を参照して、複数の補助羽根部4に加えて更に複数の補助羽根部(第2の補助羽根部)5を備える抵抗体1Eについて説明する。図6における符号6001~6003で示す図は、それぞれ、本実施形態における抵抗体1Eの構造について模式的に示す、正面図、平面図、および斜視図である。
【0106】
図6に示すように、抵抗体1Eは、基部2、4つの羽根部3、4つの補助羽根部4、および、4つの補助羽根部5を備えている。前記実施形態1において説明した補助羽根部4の傾き角度θを、本実施形態では角度θ1と称する。
【0107】
補助羽根部5は、羽根部3の先端側に、羽根部3の延伸方向に対して補助羽根部4とは異なる方向(反対の方向)に角度θ2傾いた方向に延伸するように設けられている。補助羽根部5は、補助羽根部4と同一または略同一の形状であることが好ましく、この場合、XY平面上における長さが補助羽根部4と同じくβである。
【0108】
抵抗体1Eは、Z軸正方向側から見て、基部2の中心を基準として点対称となる形状となっていることが好ましい。これにより、揺動方向に応じた制振性能の変動が抑制される。
【0109】
抵抗体1Eは、補助羽根部4および補助羽根部5を備えていることにより、回転運動の発生が抑制される一方で、液体21から抵抗を受ける面積が増大している。その結果、高い制振性能を有する。
【0110】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態1、2にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0111】
本実施形態では、上記実施形態1における制振装置10Aの貯留部20とは以下の点で異なっている制振装置10Bについて説明する。制振装置10Bは、開口部40が形成された貯留部20B、開口部40に連通する流路41、流路41に接続する開閉機構42を備えている。なお、制振装置10Bは、抵抗体1を備えており、この抵抗体1は、例えば前述の抵抗体1A~1Eのいずれかである。
【0112】
図7における符号7001で示す図は、本発明の実施形態3における制振装置10Bの構成を概略的に示す断面図である。図7における符号7002で示す図は、Z軸正方向側から貯留部20Bを見た平面図である。この図では、重錘支持板12、重錘30、芯棒31、抵抗体1等を透過して(省略して)示している。
【0113】
図7に示すように、貯留部20Bは、平面視して(XY平面上において)円環状に開口部40が形成されている。一例では、開口部40はスリットである。制振装置10Bは、貯留部20Bとフレーム11との間の空間において、開口部40に連通する流路41が設けられている。流路41は、例えばパイプ等によって形成されており、例えば、円環状に形成された開口部40の一部に連通している。
【0114】
制振装置10Bは、貯留部20Bに貯留された液体を、開口部40および流路41を通じて、制振装置10Bの外部に流出可能となっている。この液体としては、シリコンオイル等の液体21に加えて、制振装置10Bの内部で発生し得る結露水が含まれる。
【0115】
貯留部20Bに液体21に加えて結露水が貯留されると、制振装置10Bの制振性能が低下するため好ましくない。
【0116】
開口部40は、貯留部20Bの最下部以外の位置に形成されていることが好ましい。これにより、抵抗体1の揺動速度が最大となる貯留部20Bの最下部位置において、液体21に乱流が生じることによって抵抗体1に生じる抗力が低下するという好ましくない現象の発生を抑制することができる。
【0117】
例えば、通常、制振装置10Bの設置環境において、例えば渦励振によって抵抗体1が揺動することにより貯留部20B内を液体21が移動する。その際、貯留部20B内における、液体21の移動する最大範囲(最大高さ)を特定することができる。開口部40は、そのような液体21の移動する最大範囲(最大高さ)よりも外側(液体21から遠ざかる、Z軸の正方向側)の位置に設けられていることが好ましい。これにより、開口部40は、貯留部20B内に外部から水が浸入することを防止しつつ、貯留部20B内から外部に液体21が流出することを防止できる。
【0118】
また、制振装置10Bは、貯留部20Bの最下部以外の位置に開口部40が形成されているとともに、以下の構成を有することが好ましい。すなわち、抵抗体1が静止している状態(芯棒31が鉛直方向に吊り下がっている状態)において、貯留部20Bの最下部と、抵抗体1の最下端(Z軸負方向側の端部)との距離をL10とする。制振装置10Bは、速度境界層の厚さ以下の距離L10となっていることが好ましい。これにより、圧力損失が増加することによって抵抗体1に生じる抗力を増大させることができる。
【0119】
開閉機構42は、例えばバルブであって、流路41の途中に設けられ、流路41を開閉する。制振装置10Bは、開閉機構42が閉状態において、流路41に水が溜まるようになっている。
【0120】
なお、開口部40の位置によっては、流路41に液体21が満たされていてもよい。シリコンオイル等の液体21は水よりも比重が軽いことから、この場合においても、水は流路41を通じて開閉機構42の位置まで流れることができる。
【0121】
上記距離L10を小さくするほど、補助羽根部4が貯留部20Bに接触しやすくなることから、抵抗体1は、補助羽根部4におけるZ軸方向の長さγ2が、羽根部3におけるZ軸方向の長さγ1よりも小さくなっていてもよい。或いは、抵抗体1は、羽根部3および補助羽根部4におけるZ軸の負方向側の端部が、貯留部20Bの形状に合わせて湾曲した形状を有していてもよい。
【0122】
これにより、上記距離L10を小さくした場合であっても、抵抗体1が揺動した際に補助羽根部4が貯留部20Bに接触する現象の発生を回避しつつ、抵抗体1に生じる抗力を効果的に増大させることができる。
【0123】
(附記事項)
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0124】
1、1A、1B、1C、1D、1E 抵抗体
2 基部
3 羽根部
4 補助羽根部(第1の補助羽根部)
5 補助羽根部(第2の補助羽根部)
10A、10B 制振装置(振り子式制振装置)
20、20B 貯留部
21 液体
30 重錘
35 軸(振り子の軸)
40 開口部
41 流路
42 開閉機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7