(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】制御バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 11/085 20060101AFI20231226BHJP
F16K 5/04 20060101ALI20231226BHJP
F01P 7/16 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
F16K11/085 Z
F16K5/04 A
F01P7/16 503
(21)【出願番号】P 2020050179
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】大関 哲史
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-007614(JP,A)
【文献】特開2018-204744(JP,A)
【文献】特開2019-148341(JP,A)
【文献】実公昭37-005019(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00-11/24
F16K 5/00- 5/22
F16K 27/00-27/12
F01P 7/14- 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から液体が流入する流入口、内部に流入した液体を外部流路に流出させる流出口、及び、内部に流入した液体を緊急時に前記外部流路に流出させるフェール開口を有するケーシングと、
前記ケーシングの内部に回転可能に配置され、周壁部に弁孔が形成された弁体と、
軸方向の一端側が前記流出口内に配置され、軸方向の他端部が前記周壁部に当接して前記弁孔によって開閉されるシール筒部材と、
前記シール筒部材の外周面と前記流出口の間に介装された環状シール部材と、
前記ケーシングに取り付けられ、前記流出口と前記フェール開口から流出した液体を前記外部流路に流すジョイント部材と、を備え、
前記ジョイント部材は、
前記流出口と前記フェール開口に跨って開口する合流室と、
前記合流室と前記外部流路を接続する接続口と、を有し、
前記合流室を形成する前記ジョイント部材側のブロックには、前記流出口側の端面で前記環状シール部材の一部を支持する略C字状の支持壁が形成され、
前記環状シール部材の前記ジョイント部材側には、少なくとも前記支持壁の略C字状の円周上の欠損部において、前記環状シール部材を保持する硬質の保持部材が配置されていることを特徴とする制御バルブ。
【請求項2】
前記保持部材は、環状に形成されるとともに、前記支持壁の端面と前記環状シール部材の間に介装されていることを特徴とする請求項1に記載の制御バルブ。
【請求項3】
前記保持部材は、前記環状シール部材と別体部品として構成されていることを特徴とする請求項2に記載の制御バルブ。
【請求項4】
前記保持部材は、前記環状シール部材と一体部品として構成されていることを特徴とする請求項2に記載の制御バルブ。
【請求項5】
前記保持部材は、略円弧形状に形成されるとともに、前記支持壁の略C字状の円周上の欠損部を補うように前記支持壁に取り付けられ、
前記保持部材の前記流出口側の端面は、前記支持壁の前記流出口側の端面と面一とされていることを特徴とする請求項1に記載の制御バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用冷却水の流路切換等に用いられる制御バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷却水を用いてエンジンを冷却する冷却システムでは、ラジエータとエンジンの間を循環するラジエータ流路とは別に、ラジエータをバイパスするバイパス流路や空調空気を加熱する空調流路等が併設されることがある。この種の冷却システムでは、流路の分岐部に制御バルブが介装され、その制御バルブによって適宜流路が切り換えられるようになっている。制御バルブとしては、周壁部(円筒壁)を有する弁体がケーシング内に回転可能に配置され、弁体の回転位置に応じて任意の流路が開閉されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の制御バルブは、ケーシングに、冷却液等の液体が流入する流入口と、その流入した液体を外部に吐出するための設定数の流出口が設けられている。弁体の周壁部には、内外を連通する弁孔が流出口と対応して複数形成されている。また、ケーシングの各流出口には、円筒状のシール筒部材の一端部側が保持されている。各シール筒部材の他端部側には、弁体の周壁部の外周面に摺動自在に当接する弁摺接面が設けられている。各シール筒部材の弁摺接面は、弁体の対応する弁孔の回転経路とラップする位置において周壁部の外周面に摺接する。各シール筒部材は、弁体上の対応する弁孔によって開閉される。
【0004】
弁体は、シール筒部材が対応する弁孔と連通する回転位置にあるときには、周壁部の内側領域から対応する流出口への液体の流出を許容し、シール筒部材が対応する弁孔と連通しない回転位置にあるときには、周壁部の内側領域から対応する流出口への液体の流出を遮断する。なお、弁体は、電動モータ等のアクチュエータによって回転位置を操作される。
【0005】
また、特許文献1に記載の制御バルブでは、ケーシングのラジエータ流出口に隣接してフェール開口が形成され、フェール開口にサーモスタッドが取り付けられている。サーモスタッドは、通常時には、フェール開口を閉じており、ケーシング内の液体の温度が規定の温度よりも上昇すると、フェール開口を開いてケーシング内の液体を外部に流出させる。
【0006】
特許文献1に記載の制御バルブの場合、ケーシングのラジエータ流出口とフェール開口に跨るように、ジョイント部材(ラジエータジョント)が取り付けられている。ジョイント部材には、外部流路(ラジエータ流路)に接続される接続口と、ケーシング側のラジエータ流出口と接続口を連通させる主連通路と、ケーシング側のフェール開口と主連通路の中途部を連通させる合流通路と、が形成されている。また、主連通路の上流側の端部に突き合わされるケーシング側のラジエータ流出口には、シール筒部材の軸方向の一端部が挿入状態で保持されている。そして、シール筒部材の外周面とラジエータ流出口の間には、両者の間を密閉するための環状シール部材が介装されている。環状シール部材のジョイント部材側は、ジョイント部材に形成された筒状壁の端面によって支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在、この種の制御バルブでは、ジョイント部材の内部に主連通路と合流通路を個別に形成するのではなく、ケーシング側の流出口とフェール開口とに跨って開口する合流室を形成することにより、ジョイント部材の構造の簡素化と小型化を図ることが検討されている。
【0009】
しかし、ジョイント部材に、ケーシング側の流出口とフェール開口とに跨って開口する合流室を形成すると、ジョイント部材の筒状壁の周上の一部が合流室によって分断されることになる。そして、こうして筒状壁の一部が周上の一部で分断されると、筒状壁の端面によって支持される環状シール部材の一部が液体の圧力を受けて変形することが懸念される。
【0010】
そこで本発明は、ジョイント部材の構造の簡素化と小型化を図りつつも、環状シール部材の変形を抑制することができる制御バルブを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る制御バルブは、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
即ち、本発明に係る制御バルブは、外部から液体が流入する流入口、内部に流入した液体を外部流路に流出させる流出口、及び、内部に流入した液体を緊急時に前記外部流路に流出させるフェール開口を有するケーシングと、前記ケーシングの内部に回転可能に配置され、周壁部に弁孔が形成された弁体と、軸方向の一端側が前記流出口内に配置され、軸方向の他端部が前記周壁部に当接して前記弁孔によって開閉されるシール筒部材と、前記シール筒部材の外周面と前記流出口の間に介装された環状シール部材と、前記ケーシングに取り付けられ、前記流出口と前記フェール開口から流出した液体を前記外部流路に流すジョイント部材と、を備え、前記ジョイント部材は、前記流出口と前記フェール開口に跨って開口する合流室と、前記合流室と前記外部流路を接続する接続口と、を有し、前記合流室を形成する前記ジョイント部材のブロックには、前記流出口側の端面で前記環状シール部材の一部を支持する略C字状の支持壁が形成され、前記環状シール部材の前記ジョイント部材側には、少なくとも前記支持壁の略C字状の円周上の欠損部において、前記環状シール部材を保持する硬質の保持部材が配置されていることを特徴とする。
【0012】
上記の構成の場合、流出口に配置されたシール筒部材が弁体の弁孔によって開かれると、ケーシングの内部の液体は、シール筒部材とジョイント部材の合流室を通って、ジョイント部材の接続口から外部流路に流出する。このとき、シール筒部材の外周面と流出口の間は環状シール部材によって密閉される。環状シール部材のジョイント部材側は、ジョイント部材の略C字状の支持壁の端面と、硬質の保持部材とによって保持される。このため、環状シール部材が略C字状の支持壁の円周上の欠損部において、ジョイント部材側に変形するのを抑制することができる。
また、緊急時にフェール開口が開くと、ケーシング内の液体は、ジョイント部材の合流室を通って、ジョイント部材の接続口から外部流路に流出する。
【0013】
前記保持部材は、環状に形成されるとともに、前記支持壁の端面と前記環状シール部材の間に介装されるようにしても良い。
【0014】
この場合、環状の保持部材が、環状シール部材の周方向のほぼ全域を一様に安定して支持できるようになる。
【0015】
前記保持部材は、前記環状シール部材と別体部品として構成されるようにしても良い。
【0016】
この場合、環状シール部材と別体の保持部材を追加するだけで、環状シール部材の変形抑制効果を容易に得ることができる。このため、製品コストの低減を図ることができる。
【0017】
前記保持部材は、前記環状シール部材と一体部品として構成されるようにしても良い。
【0018】
この場合、シール筒部材の外周面と流出口の間に、環状シール部材を保持部材とともに容易に組付けることが可能になる。また、組付けられた環状シール部材は、保持部材によって安定姿勢を維持することができる。
【0019】
前記保持部材は、略円弧形状に形成されるとともに、前記支持壁の略C字状の円周上の欠損部を補うように前記支持壁に取り付けられ、前記保持部材の前記流出口側の端面は、前記支持壁の前記流出口側の端面と面一とされるようにしても良い。
【0020】
この場合、略円弧形状の保持部材が支持壁の略C字状の円周上の欠損部に配置され、保持部材の流出口側の端面が支持壁の流出口側の端面と面一とされるため、保持部材が流出口の軸方向でスペースを占有しなくなる。このため、装置全体の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る制御バルブでは、少なくとも支持壁の略C字状の円周上の欠損部において、環状シール部材を保持する硬質の保持部材が環状シール部材のジョイント部材側に配置されている。このため、本発明に係る制御バルブは、ジョイント部材のブロックに、ケーシング側の流出口とフェール開口に跨って開口する合流室を持つ構造でありながら、環状シール部材のジョイント部材側を、ジョイント部材の略C字状の支持壁の端面と、硬質の保持部材とによって安定して保持することができる。本発明に係る制御バルブを採用した場合には、ジョイント部材の構造の簡素化と小型化を図りつつも、環状シール部材の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図4】実施形態の制御バルブの
図2のIV-IV線に沿う断面図。
【
図5】実施形態の制御バルブの
図2のV-V線に沿う断面図。
【
図6】実施形態の制御バルブの
図2のVI-VI線に沿う断面図。
【
図7】実施形態のラジエータジョイントとシール機構の組付体を示す斜視図
【
図9】他の実施形態のシール機構の一部の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、エンジン冷却用の冷却液をラジエータその他の機器に分配供給する車両の液体分配システムに制御バルブが採用されている。
【0024】
[液体分配システム]
図1は、液体分配システム1のブロック図である。
図1に示すように、液体分配システム1は、車両駆動源に少なくともエンジンを具備する車両に搭載される。なお、車両としては、エンジンのみを有する車両の他、ハイブリッド車両やプラグインハイブリッド車両等であっても構わない。
【0025】
液体分配システム1は、エンジン2(ENG)、ウォータポンプ3(W/P)、ラジエータ4(RAD)、ヒータコア6(HTR)、EGRクーラ7(EGR)及び制御バルブ8(EWV)が各種流路10~14により接続されて構成されている。
ウォータポンプ3、エンジン2及び制御バルブ8は、メイン流路10上で上流から下流にかけて順に接続されている。メイン流路10では、ウォータポンプ3の動作により冷却液(液体)がエンジン2及び制御バルブ8を順に通過する。
【0026】
メイン流路10には、ラジエータ流路11、バイパス流路12、空調流路13及びEGR流路14がそれぞれ接続されている。これらラジエータ流路11、バイパス流路12、空調流路13及びEGR流路14は、メイン流路10のうちウォータポンプ3の上流部分と制御バルブ8とを接続している。
【0027】
ラジエータ流路11には、ラジエータ4が接続されている。ラジエータ流路11では、ラジエータ4において、冷却液と外気との熱交換が行われる。バイパス流路12は、制御バルブ8を通過した冷却液を、ラジエータ4(ラジエータ流路11)を迂回してウォータポンプ3の上流部分に戻す。
【0028】
空調流路13には、ヒータコア6が接続されている。ヒータコア6は、例えば空調装置のダクト(不図示)内に設けられている。空調流路13では、ヒータコア6において、冷却液とダクト内を流通する空調空気との熱交換が行われる。
【0029】
EGR流路14には、EGRクーラ7が接続されている。EGR流路14では、EGRクーラ7において、冷却液とEGRガスとの熱交換が行われる。
【0030】
上述した液体分配システム1では、メイン流路10においてエンジン2を通過した冷却液が、制御バルブ8内に流入した後、制御バルブ8の動作によって各種流路11~13に選択的に分配される。
【0031】
[制御バルブ]
図2は、制御バルブ8の斜視図であり、
図3は、制御バルブ8の分解斜視図である。
図4は、
図2のIV-IV線に沿う制御バルブ8の断面図であり、
図5は、
図2のV-V線に沿う制御バルブ8の断面図である。また、
図6は、
図2のVI-VI線に沿う制御バルブ8の断面図である。
これらの図に示すように、制御バルブ8は、ケーシング21と、弁体22と、駆動ユニット23と、を主に備えている。
【0032】
[ケーシング]
ケーシング21は、有底筒状のケーシング本体25と、ケーシング本体25の開口側の端部に取り付けられる端部カバー26と、を有している。ケーシング21の内部には、弁体22が回転可能に収容されている。ケーシング21のうちの、弁体22の回転中心軸線と合致する軸線をケーシング21の軸線O1と言う。また、以下の説明では、ケーシング21の軸線O1に沿う方向を単にケース軸方向と言う。また、ケース軸方向において、ケーシング本体25のケース周壁31に対してケーシング本体25の底壁である端部壁32に向かう側をケース軸方向の一端側と言い、ケーシング本体25のケース周壁31に対して端部カバー26に向かう側をケース軸方向の他端側と言う。さらに、ケーシング21の軸線O1に直交する方向をケース径方向と言う。
【0033】
ケーシング本体25は、樹脂材料によって一体に形成されている。ケーシング本体25の略円筒状のケース周壁31のケース軸方向の他端側の端部には、複数の取付片33が延設されている。制御バルブ8は、取付片33を介して図示しないエンジンブロック等に固定される。
【0034】
ケーシング21の端部カバー26は、円環状のフレーム枠26aの軸心位置にボス部26Cが配置されている。ボス部26Cは、複数のスポーク部26bによってフレーム枠26aに支持されている。ボス部26Cには、円筒状の滑り軸受16が取り付けられている。端部カバー26のうちの、フレーム枠26aと、ボス部26Cと、隣接するスポーク部26bとに囲まれた開口部分は、ケーシング21の内部に冷却液を流入させる流入口17とされている。流入口17は、液体分配システム1のメイン流路10(
図1参照)のエンジン2の下流側に接続されている。端部カバー26は、ケーシング本体25と同様に樹脂材料によって形成されている。
【0035】
ケーシング本体25のケース周壁31には、ケース径方向の外側に膨出するラジエータポート41(
図4~
図6参照)が形成されている。ラジエータポート41には、フェール開口18(
図5,
図6参照)とラジエータ流出口60(流出口)がケース軸方向と交差する方向に並んで形成されている。フェール開口18とラジエータ流出口60は、互いに並列に並んだ状態で、夫々がラジエータポート41を貫通している。ラジエータ流出口60は、ケース周壁31のケース軸方向の他端側に偏った位置に形成され、フェール開口18は、ラジエータ流出口60よりもケース周壁31のケース軸方向の一端側に形成されている。ラジエータ流出口60とフェール開口18の形成されるラジエータポート41は正面視がオーバル形状に形成されている。
【0036】
ラジエータポート41の開口側の端面には、ラジエータジョイント42(ジョイント部材)が接続されている。ラジエータジョイント42は、オーバル形状のラジエータポート41の端面に重ね合わせられる正面視がオーバル形状のジョイント基部42aと、ジョイント基部42aの長手方向の一端部側(ラジエータ流出口60の配置される側)からケース径方向外側に向かって突出するジョイント筒部42bと、を有している。ジョイント筒部42bの内周部は、後述する合流室85と外部のラジエータ流路11(外部流路)を接続する接続口86を構成している。ラジエータポート41とジョイント基部42aの間はシールリング40によって密閉されている。
【0037】
図7は、ラジエータジョイント42とシール機構36の組付体を示す斜視図である。
図7にも示すように、ジョイント基部42a(ジョイント部材のブロック)には、ラジエータポート41のラジエータ流出口60とフェール開口18に跨って開口する合流室85が形成されている。合流室85は、オーバル形状のジョイント基部42aの長手方向の一端部側から他端部側に亘って形成されている。合流室85のうちの、ジョイント基部42aの長手方向の一端部側領域は、ラジエータ流出口60から流入した冷却液をジョイント筒部42b(接続口86)に流す主通路部80を構成している。ジョイント筒部42b(接続口86)は、主通路部80を挟んで、ケース径方向においてラジエータ流出口60に対向している。また、合流室85のうちの、ジョイント基部42aの長手方向の他端部側から一端部側の主通路部80に至る領域は、フェール開口18から流入した冷却液を、主通路部80を介してジョイント筒部42b(接続口86)に流す合流通路部81を構成している。本実施形態では、フェール開口18と合流通路部81とがフェール通路50を構成している。
【0038】
フェール開口18には、その一部が合流通路部81内に跨るように、サーモスタット61が取り付けられている。
サーモスタット61は、ケーシング21内を流れる冷却液の温度に応じてフェール通路50を開閉する。サーモスタット61は、通常時には、フェール通路50を閉じており、周囲の冷却液の温度が規定の温度よりも上昇すると、その温度を感知してフェール通路50を開く。フェール通路50が開かれると、フェール開口18に流入した冷却液がジョイント基部42a内の合流室85(合流通路部81及び主通路部80)を介してジョイント筒部42bから外部に流出する。ジョイント筒部42bは、ラジエータ流路11(
図1参照)の上流端部に接続される。したがって、フェール通路50からジョイント筒部42bに流れ込んだ冷却液は、ラジエータ流路11に流出する。
【0039】
また、ラジエータ流出口60には、シール機構36が設けられている。シール機構36は、シール筒部材37と、付勢部材38と、環状シール部材39と、を備えている。シール筒部材37は、軸方向の一端部がラジエータジョイント42内の主通路部80に連通するとともに、軸方向の他端部が、後述する弁体22によって開閉される。
シール筒部材37は、小径の第1筒部56と大径の第2筒部57を有する段付き円筒状に形成されている。シール筒部材37は、第1筒部56側が主通路部80に連通し、第2筒部57の環状の端面が後述する弁体22の周壁部44の外周面に摺動可能に当接する。第2筒部57の端面は、弁体22の周壁部44の外周面の形状に沿う湾曲形状に形成されている。第2筒部57の端面は弁摺接面59を構成している。
ラジエータ流出口60に配置されるシール筒部材37については、他の部分に配置されるシール筒部材37と区別する場合には、第3のシール筒部材37Cと言う。
【0040】
付勢部材38は、ウェーブスプリング等によって構成されている。付勢部材38は、シール筒部材37の軸方向の一端部とラジエータ基部42aの間に介装され、シール筒部材37を弁体22方向に付勢している。
【0041】
環状シール部材39は、環状のXシールやYシール等によって構成されている。環状シール部材39は、ラジエータポート41のラジエータ流出口60とシール筒部材37(第1筒部56)の外周面の間に介装され、ラジエータ流出口60とシール筒部材37の間を密閉する。環状シール部材39のラジエータジョイント42側は、ジョイント基部42aに突設された略円筒状の支持壁82の端面によって変位を規制されている。しかし、ジョイント基部42aには、ラジエータポート41側に向かって開口するように長手方向に亘って合流室85が形成されているため、略円筒状の支持壁82の円周方向の一部は、合流室85によって分断されている。つまり、支持壁82は、合流室85によって周方向の一部が分断されることにより、略C字状の断面形状に形成されている。このため、ラジエータ流出口60で用いられるシール機構36では、環状シール部材39の背部側(ラジエータジョイント42側)に保持リング83が配置されている。保持リング83は、例えば、金属や硬質樹脂等から成る円環状のプレート材によって構成されている。
【0042】
ところで、前述したシール筒部材37の第1筒部56の外周面は、第2筒部57の外周面に対して段差面49を介して連なっている。前述した環状シール部材39は、シール筒部材37の第1筒部56の外周面と、ラジエータ流出口60の内周面の間で、シール筒部材37の段差面49と、ラジエータジョイント42側の支持壁82の端面とに挟まれた隙間に介装されている。そして、この隙間内の環状シール部材39を挟んで段差面49側の空間部には、シール筒部材37の第2筒部57とラジエータ流出口60の間の隙間を通してケーシング21内の冷却液の液圧が導入される。段差面49は、ケーシング21内の冷却液の液圧を受けてポート軸方向の内側に押圧される受圧面を構成している。
【0043】
シール筒部材37において、段差面49の面積S1と、弁摺接面59の面積S2とは、以下の式(1),(2)を満たすように設定されている。
S1<S2≦S1/k …(1)
α≦k<1 …(2)
k:弁摺接面59と弁体22の周壁部44との間の微少隙間を流れる冷却液の圧力減少定数
α:冷却液の物性によって決まる圧力減少定数の下限値
なお、段差面49の面積S1と弁摺接面59の面積S2は、シール筒部材37の軸方向に投影したときの面積を意味する。
【0044】
式(2)におけるαは、冷却液の種類や、使用環境(例えば、温度)等によって決まる圧力減少定数の標準値である。例えば、通常使用条件下において、水の場合にはα=1/2となる。使用する冷却液の物性が変化した場合には、α=1/3等に変化する。
また、式(2)における圧力減少定数kは、弁摺接面59が径方向外側の端縁から内側の端縁にかけて均一に周壁部44に接しているときには、圧力減少定数の標準値であるα(例えば、1/2)となる。但し、シール筒部材37の製造誤差や組付け誤差等によって、弁摺接面59の外周部分と周壁部44との間の隙間が弁摺接面59の内周部分に対して僅かに増大することがある。この場合、式(2)における圧力減少定数kは、次第にk=1に近づくことになる。
【0045】
本実施形態では、シール筒部材37の弁摺接面59と周壁部44の外周面との間に、摺動を許容するための微小な隙間があることを前提として、段差面49と弁摺接面59の各面積S1,S2の関係が式(1),(2)によって決められている。
すなわち、シール筒部材37の段差面49には、上述したようにケーシング21内の冷却液の圧力がそのまま作用する。一方で、弁摺接面59には、ケーシング21内の冷却液の圧力がそのまま作用しない。具体的には、冷却液の圧力は、弁摺接面59と周壁部44の間の微小な隙間を冷却液が弁摺接面59の径方向の外側端縁から内側端縁に向かって流れるときに圧力減少を伴いつつ作用する。このとき、冷却液の圧力は、弁摺接面59の径方向内側に向かって漸減しつつ、シール筒部材37を周壁部44から離間する方向に押し上げようとする。
【0046】
その結果、シール筒部材37の段差面49には、段差面49の面積S1にケーシング21内の圧力Pを乗じた力がそのまま作用する。一方、シール筒部材37の弁摺接面59には、弁摺接面59の面積S2にケーシング21内の圧力Pと圧力減少定数kとを乗じた力が作用する。
【0047】
本実施形態の制御バルブ8は、式(1)からも明らかなようにk×S2≦S1が成り立つように面積S1,S2が設定されている。このため、P×k×S2≦P×S1の関係も成り立つ。
したがって、シール筒部材37の段差面49に作用する押し付け方向の力F1(F1=P×S1)は、シール筒部材37の弁摺接面59に作用する浮き上がり方向の力F2(F2=P×k×S2)以上に大きくなる。よって、本実施形態の制御バルブ8においては、ケーシング21内の冷却液の圧力の関係のみによっても、シール筒部材37と周壁部44との間をシールすることができる。
【0048】
一方、本実施形態では、上述したようにシール筒部材37の段差面49の面積S1が弁摺接面59の面積S2よりも小さい。そのため、ケーシング21内の冷却液の圧力が大きくなっても、シール筒部材37の弁摺接面59が過剰な力で周壁部44に押し付けられるのを抑制できる。したがって、本実施形態の制御バルブ8を採用した場合には、弁体22を回転駆動する駆動ユニット23の大型化及び高出力化を回避することができる上、シール筒部材37や駆動部のブッシュ類の早期摩耗を抑制できる。
【0049】
図2,
図6に示すように、ケース周壁31のうちの、ラジエータポート41と周方向で隣接する位置(サーモスタット61の収容部に近接する位置)には、EGRポート62が形成されている。EGRポート62は、ケース周壁31にケース径方向の外側に膨出して形成されている。EGRポート62には、サーモスタット61の収容部内(フェール開口18)のサーモスタット61よりも上流側部分に連通するEGR流出口63が形成されている。EGR流出口63には、ケーシング21内の冷却液が、フェール開口18のサーモスタット61の上流側近傍部を経由して流出する。フェール開口18のサーモスタット61よりも上流側の構造については後に詳述する。EGRポート62の開口端面には、EGRジョイント52が接続されている。EGRジョイント52は、EGR流出口63とEGR流路14(
図1参照)の上流端部との間を接続している。
【0050】
また、ケース周壁31のうちの、ラジエータポート41と対向する外周位置には、ケース径方向の外側に膨出するバイパスポート64が形成されている。バイパスポート64には、バイパスポート64をケース径方向に貫通するバイパス流出口65(流出口)が形成されている。バイパス流出口65は、ケーシング21の軸線O1を間に挟んで、ラジエータ流出口60と対向する位置に形成されている。また、バイパス流出口65は、ラジエータ流出口60と同様にケース周壁31のケース軸方向の他端側に偏った位置に形成されている。
【0051】
バイパスポート64の開口端面には、バイパスジョイント66が接続されている。バイパスジョイント66は、バイパス流出口65とバイパス流路12(
図1参照)の上流端部とを接続している。バイパス流出口65には、ラジエータ流出口60に設けられるものと同様のシール機構36が設けられている。ただし、バイパス流出口65に設けられるシール機構36は、環状シール部材39を保持するため保持リング83を備えていない。バイパス流出口65に設けられるシール機構36のシール筒部材37は、軸方向の一端部がバイパス流出口65内(バイパス流出口65の下流側)に連通するとともに、軸方向の他端部が弁体22によって開閉される。
バイパス流出口65に配置されるシール筒部材37については、他の部分に配置されるシール筒部材37と区別する場合には、第2のシール筒部材37Bと言う。
【0052】
ケース周壁31のうちの、ラジエータポート41とバイパスポート64に挟まれた外周位置には、ケース径方向の外側に膨出する空調ポート67が形成されている。空調ポート67には、空調ポート67をケース径方向に貫通する空調流出口68が形成されている。空調ポート67の開口端面には、空調ジョイント69が接続されている。空調ジョイント69は、空調流出口68と空調流路13(
図1参照)の上流端部とを接続している。空調流出口68には、バイパス流出口65に設けられるものと同様のシール機構36が設けられている。このシール機構36のシール筒部材37は、軸方向の一端部が空調流出口68内(空調流出口68の下流側)に連通するとともに、軸方向の他端部が弁体22によって開閉される。
空調流出口68に配置されるシール筒部材37については、他の部分に配置されるシール筒部材37と区別する場合には、第1のシール筒部材37Aと言う。
【0053】
[駆動ユニット]
駆動ユニット23は、ケーシング本体25の端部壁32に取り付けられている。
図4に示すように、端部壁32は、ケース周壁31のケース軸方向の一端側の端面を閉塞する端部壁本体32aと、端部壁本体32aの外周縁部からケース軸方向の一端側に突出する囲み壁32bと、を有している。駆動ユニット23は、一部が囲み壁32bの内側に収容され、その状態で端部壁32にボルト締結等によって固定されている。
【0054】
駆動ユニット23は、モータや減速機構、制御基板等から成るユニット本体23Aと、ユニット本体23Aを収容するユニットケース23Bと、を備えている。ユニット本体23Aの出力軸23Aaは、ユニットケース23Bを貫通して外部に突出している。出力軸23Aaには、別体の駆動軸27が一体に連結されている。駆動軸27は、ケーシング21の端部壁本体32aに形成された軸孔28を貫通し、後述する弁体22の軸心部に連結されている。駆動軸27は、ケーシング21の軸線O1と同軸に配置される。
【0055】
ケーシング21の端部壁本体32aは、ケース周壁31内に臨む側の肉厚が、周縁部から中心領域(軸孔28の形成される領域)に向かって増大している。即ち、端部壁本体32aのケース周壁31内に臨む側には、弁体22の周壁部44の内側方向に向かって膨出する膨出部分が形成されている。軸孔28は、端部壁本体32aの肉厚の最も厚い部分をケース軸方向に貫通するように形成されている。軸孔28の内部には、駆動軸27の外周面を摺動自在に支持するための円筒状の滑り軸受29が保持されている。また、軸孔28の弁体22側の端縁には、軸孔28の他の部位の内周面よりも内径の大きい拡径溝30が形成されている。拡径溝30の内部には、駆動軸27の外周面に摺動自在に密接して、ケーシング本体25の内部から駆動ユニット23側への冷却液の漏出を防止するシールリング35が取り付けられている。
【0056】
[弁体]
弁体22は、ケーシング21の内部に回転可能に配置されている。弁体22は、有底円筒状の本体ブロック22Aと、本体ブロック22Aの開口側の軸方向の端部に取り付けられる端部プレート22Bと、を備えている。本体ブロック22Aは、円筒形状の周壁部44と、周壁部44のケース軸方向の一端部寄り位置から径方向内側に向かって延設された連結壁45と、連結壁45の径方向内側の端部に連設された略筒状の連結筒部46と、を備えている。これらの周壁部44、連結壁45、及び、連結筒部46は、樹脂材料によって一体に形成されている。
【0057】
端部プレート22Bは、円環状のフレーム枠22Baと、フレーム枠22Baの軸心位置に配置された枢支軸22BCと、フレーム枠22Baに連結された複数のスポーク部22Bbと、を有し、枢支軸22BCが複数のスポーク部22Bbに支持されている。これらフレーム枠22Ba、スポーク部22Bb、及び、枢支軸22BCは、樹脂材料によって一体に形成されている。フレーム枠22Baの円周方向に離間した二位置には、一対の回り止め片84が突設されている。端部プレート22Bは、フレーム枠22Baが本体ブロック22A側の周壁部44の内周面に嵌合され、その状態で接着やビス止め等によって本体ブロック22Aに固定されている。一対の回り止め片84は、このとき周壁部44の内周面に形成された図示しない平坦な係止面に係合される。端部プレート22Bは、これによって本体ブロック22Aに対して回り止めされている。端部プレート22Bの枢支軸22BCは、ケーシング21の端部カバー26に保持された滑り軸受16に回転自在に支持されている。
【0058】
本体ブロック22Aの連結筒部46は、駆動軸27に一体に連結されている。本体ブロック22Aの周壁部44には、上述した空調流出口68、バイパス流出口65及びラジエータ流出口60に夫々連通可能な複数の弁孔47が形成されている。各弁孔47は、周壁部44をケース径方向に貫通している。
以下、空調流出口68に連通可能な弁孔47を第1弁孔47Aと言い、バイパス流出口65に連通可能な弁孔47を第2弁孔47B、ラジエータ流出口60に連通可能な弁孔47を第3弁孔47Cと言う。
【0059】
第1弁孔47Aは、周壁部44のケース軸方向の一端側(周壁部44の軸方向の一端部寄り)の領域に一つのみ形成されている。第1弁孔47Aは、周壁部44の周方向に沿う長孔形状に形成されている。第1弁孔47Aは、弁体22が所定の回動範囲にあるときに、弁体22の周壁部44の内側空間と空調流出口68とを連通可能とする。また、第1弁孔47Aは、周壁部44の軸方向に沿う方向の幅が、第2弁孔47Bや第3弁孔47Cよりも狭く設定されている。
【0060】
第2弁孔47Bは、周壁部44のケース軸方向の他端側(周壁部44の軸方向の他端部寄り)の領域に周方向に離間して二つ形成されている。第3弁孔47Cは、周壁部44のケース軸方向の他端側(周壁部44の軸方向の他端部寄り)の領域に周方向に離間して二つ形成されている。第2弁孔47Bと第3弁孔47Cは、周壁部44上の軸方向で相互にほぼラップする領域に形成されている。また、第2弁孔47Bと第3弁孔47Cは、周壁部44上の第1弁孔47Aと軸方向でラップしない領域(軸方向に離間した領域)に形成されている。第2弁孔47Bと第3弁孔47Cの形状は、真円形状や長円形状、矩形形状等任意であるが、周壁部44の軸方向に沿う方向の幅は、ラジエータ流出口60に連通可能な第3弁孔47Cの方が第2弁孔47Bよりも広くなっている。
【0061】
[フェール用の液体流通部]
図6に示すように、ケーシング21のケース周壁31の内周面のうちの、フェール開口18の径方向内側の端部に連続する位置には、径方向外側に向かって凹状に窪む連通溝20が形成されている。連通溝20は、フェール開口18に連通する位置から、流入口17に臨む側の軸方向の端部まで連続して延びている。ケース周壁31の周方向における連通溝20の幅は、軸方向の全域に亘って一定幅とされている。この連通溝20の幅は、ケース周壁31の円周方向の角度換算で、30°以上、45°以下の幅であることが望ましい。連通溝20は、弁体22(周壁部44)の外周面との間の隙間を部分的に拡大して、フェール通路50に向かう(サーモスタット61の上流部に向かう)ケーシンク21内の冷却液の流通容積を増大させる。
【0062】
また、周壁部44に二つある第3弁孔47Cのうちの一方は、周壁部44が第1のシール筒部材37A、第2のシール筒部材37B、第3のシール筒部材37Cのすべてを閉じている状態のときに、
図6に示すように、連通溝20と対向するように形成されている。このため、すべてのシール筒部材37が弁体22によって閉じられているときには、連通溝20に対向する第3弁孔47Cを通して、冷却液が周壁部44の内側から連通溝20内に効率良く流入する。
【0063】
[制御バルブの動作]
次に、上述した制御バルブ8の動作について説明する。
図1に示すように、メイン流路10において、ウォータポンプ3により送出される冷却液は、エンジン2で熱交換された後、制御バルブ8に向けて流通する。メイン流路10においてエンジン2を通過した冷却液は、流入口17を通して制御バルブ8のケーシング21内に流入する。
【0064】
制御バルブ8のケーシング21内に流入した冷却液のうち、一部の冷却液はEGR流出口63内に流入する。EGR流出口63内に流入した冷却液は、EGRジョイント52を通ってEGR流路14内に供給される。EGR流路14内に供給された冷却液は、EGRクーラ7において、冷却液とEGRガスとの熱交換が行われた後、メイン流路10に戻される。
【0065】
一方、制御バルブ8のケーシング21内に流入した冷却液のうち、EGR流出口63内に流入しなかった冷却液は、ケーシング21内の弁体22の回転位置に応じて、弁体22によって開かれているいずれかの流出口(ラジエータ流出口60、バイパス流出口65、空調流出口68)を通して各流路11~13に分配される。
【0066】
制御バルブ8において、弁孔と流出口との連通パターンを切り替えるには、駆動ユニット23によって弁体22を軸線O1回りに回転させる。そして、設定したい連通パターンに対応する位置で弁体22の回転を停止させることで、弁体22の停止位置に応じた連通パターンで弁孔と流出口とが連通する。
【0067】
また、ラジエータ流出口60のシール筒部材37(第3のシール筒部材37C)が弁体22によって閉じられた状態で、ケーシング21内のサーモスタット61の近傍の冷却液の温度が規定の温度よりも上昇すると、サーモスタット61がフェール通路50を開き、ケーシング21内の冷却液がラジエータ流路11に流出する。これにより、制御バルブ8から分配される冷却液の必要以上の温度上昇が抑制される。
【0068】
[実施形態の効果]
以上のように、本実施形態の制御バルブ8では、ラジエータジョイント42のジョイント基部42aにケーシング21側のラジエータ流出口60とフェール開口18に跨って開口する合流室85が形成され、ラジエータ流出口60からの冷却液の流れと、フェール開口18からの冷却液の流れが合流室85を経由するように構成されている。このため、本構成を採用した場合には、ラジエータジョイント42の構造の簡素化と小型化を図ることができる。
【0069】
また、本実施形態の制御バルブ8は、上記のようにジョイント基部42aにラジエータ流出口60とフェール開口18に跨って開口する合流室85が形成されることにより、環状シール部材39を支持するジョイント基部42a側の支持壁82が略C字状の断面形状部となる。しかし、本実施形態の制御バルブ8では、環状シール部材39の背部側に硬質材料から成る保持リング83が配置され、環状シール部材39の背部側の全域を保持リング83によって均一に支持できるようになっている。このため、環状シール部材39が冷却液の圧力を受けても、ジョイント基部42a側の支持壁82の欠損部分で、環状シール部材39に変形が生じるのを抑制することができる。
したがって、本実施形態の制御バルブ8を採用した場合には、ラジエータジョイント42の構造の簡素化と小型化を図りつつも、冷却液の液圧による環状シール部材39の変形を抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態の制御バルブ8は、環状シール部材39を保持する硬質の保持部材が環状の保持リング83によって形成され、保持リング83が支持壁82の端面と環状シール部材39の間に介装されている。したがって、本構成を採用した場合には、極めて簡単な構成でありながら、保持リング83によって環状シール部材39の周方向のほぼ全域を一様に安定支持することができる。
【0071】
さらに、本実施形態の制御バルブ8は、保持リング83(保持部材)が環状シール部材39と別体部品として構成されているため、環状シール部材39と別体の保持リング83を追加するだけで、環状シール部材39の変形抑制効果を容易に得ることができる。したがって、本構成を採用した場合には、製品コストの低減を図ることができる。
【0072】
ただし、保持部材(保持リング83)は、環状シール部材39と一体部品によって構成することも可能である。この場合、シール筒部材37の外周面とラジエータ流出口60の間に、環状シール部材39を保持部材(保持リング83)とともに容易に組付けることが可能になるとともに、部品の管理も容易になる。また、本構成を採用した場合、組付けられた環状シール部材39が保持部材(保持リング83)によって安定姿勢を維持されるようになる。
また、保持部材(保持リング83)は、C字状断面の支持壁82の端面に接着等によって固定しても良い。
【0073】
<他の実施形態>
図9は、他の実施形態のシール機構の一部の分解斜視図である。
上記の実施形態では、環状シール部材39を保持する保持部材が環状の保持リング83によって構成されていたが、本実施形態では、環状シール部材39を保持する保持部材183が略円弧形状に形成されている。この保持部材183は、支持壁82の略C字状の円周上の欠損部を補うような円弧形状に形成され、円弧方向の両側の端部が、支持壁82の欠損部に臨む両側の端縁に接合されている。保持部材183の流出口側の端面と支持壁82の流出口側の端面とは面一とされている。環状シール部材39は、保持部材183の端面と支持壁82の端面とに跨って支持されている。
【0074】
本実施形態の制御バルブでは、略円弧形状の保持部材183が支持壁の略C字状の円周上の欠損部に配置され、保持部材183の流出口側の端面が支持壁82の流出口側の端面と面一とされるため、保持部材183が流出口の軸方向でスペースを占有しなくなる。したがって、本実施形態の制御バルブを採用した場合には、装置全体の小型化を図ることができる。
【0075】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
8…制御バルブ
17…流入口
18…フェール開口
21…ケーシング
22…弁体
37…シール筒部材
39…環状シール部材
42…ラジエータジョイント(ジョイント部材)
42a…ジョイント基部(ジョイント部材のブロック)
47C…第3弁孔(弁孔)
60…ラジエータ流出口(流出口)
82…支持壁
83…保持リング(保持部材)
85…合流室
86…接続口
183…保持部材