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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】水潤滑式コンプレッサ
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/10 20060101AFI20231226BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
F04B49/10 311
F04B49/06 311
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020051879
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021148114
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000174987
【氏名又は名称】三井精機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098279
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 聖
(72)【発明者】
【氏名】青木 拓也
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-218209(JP,A)
【文献】国際公開第2007/113915(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/10
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入空気を潤滑水と共に圧縮する圧縮機本体と、前記圧縮機本体の吐出口と連通し、圧縮機本体より吐出された圧縮空気と潤滑水とを導入して圧縮空気と潤滑水とに分離・貯溜するレシーバタンクと、純水装置と、循環する潤滑水の電気伝導率を計測するセンサを備え、前記圧縮機本体とレシーバタンク間で前記潤滑水を循環させる水潤滑式コンプレッサにおいて、
水を供給可能な外部給水源と前記圧縮機本体及びレシーバタンクと
を連通する第1の給水回路と、前記外部給水源から上水を前記純水装置を介して前記レシーバタンクに給水する第2の給水回路と、
前記レシーバタンクに連通された排水回路と、
前記第1の給水回路の開閉手段、前記第2の給水回路の開閉手段、及び前記排水回路の開閉手段をそれぞれ動作させて前記レシーバタンク内の水位が上限に達するまで給水、下限に達するまで排水を行う制御手段を備え、
前記制御手段は、所定の時間間隔で水交換を実行し、該水交換では、前記センサの検出する電気伝導率が所定の閾値を下回る場合は前記第1の給水回路を介して前記上水の供給と前記レシーバタンクからの排水を実行し、前記センサの検出する電気伝導率が前記所定の閾値を下回らない場合は前記第2の給水回路を介して前記純水装置にて生成した純水の供給と前記レシーバタンクからの排水を実行することで、前記レシーバタンク内の潤滑水を交換することを特徴とする水潤滑式コンプレッサ。
【請求項2】
請求項1記載の水潤滑式コンプレッサにおいて、所定の時間間隔で潤滑水を希釈交換する場合に、電気伝導率の値が所定の閾値を下回る場合は上水の供給とレシーバタンクからの排水を実行し、所定の閾値を下回らない場合は純水の供給とレシーバタンクからの排水を実行することを特徴とする水潤滑式コンプレッサ。
【請求項3】
請求項1記載の水潤滑式コンプレッサにおいて、所定の時間間隔で潤滑水を全量交換する場合に、電気伝導率の値が所定の閾値を下回る場合は上水の供給とレシーバタンクからの排水を実行し、所定の閾値を下回らない場合は純水の供給とレシーバタンクからの排水を実行することを特徴とする水潤滑式コンプレッサ。
【請求項4】
請求項1記載の水潤滑式コンプレッサにおいて、所定の時間間隔で潤滑水を希釈交換する場合と、上記時間間隔とは別個の時間間隔で潤滑水を全量交換する場合の双方の場合に、電気伝導率の値が所定の閾値を下回る場合は上水の供給とレシーバタンクからの排水を実行し、所定の閾値を下回らない場合は純水の供給とレシーバタンクからの排水を実行することを特徴とする水潤滑式コンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水潤滑式コンプレッサに関し、特に、水潤滑式コンプレッサの潤滑水の水質を安定して維持することが可能な水潤滑式コンプレッサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水潤滑式コンプレッサにおいて、外部給水源より導入された水に含まれている金属イオン等の不純物の析出等による配管詰まり等の弊害を防止するために、イオン交換樹脂等を用いた純水装置を通過させた純水を潤滑水として導入し、コンプレッサの累積運転時間が所定時間に達する毎に、純水により潤滑水を浄化して潤滑水の水質を改善する方法が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-218209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、コンプレッサ潤滑水経路内に銅系の材料を使用している場合に、イオン交換樹脂などの純水装置を通過した高純度の水を長時間使用していると、銅イオンが溶け出し、酸と反応して緑青が発生することによる機器の故障を招くことがあった。また水質が悪化し、潤滑水が濃縮することによるスケールの発生による機器への影響もあった。上述したようにコンプレッサの累積運転時間が所定時間に達する毎に、純水により潤滑水を浄化する方法では、かかる弊害の発生により機器が故障してしまう虞がある。
【0005】
かかる問題を解決するために、所定の時間間隔で潤滑水を純水により部分交換することで潤滑水の水質を安定して維持することも提案されている。しかしながら、特定の条件下によっては、純水装置を通過した高純度の水を使用し続けることにより、図1に示すように、水質が高純度で安定してしまう場合があった。図1は、従来の水潤滑式コンプレッサにおいて、所定の時間間隔で潤滑水を純水により部分交換するサイクルを特定の条件下で実行した場合の水質の変化を電気伝導率センサにて計測した結果を示すグラフである。即ち、従来の方法では、センサが付いていない簡易な構成のため、季節性を含む湿度が高い等の周囲環境によっては、潤滑水の純度が高くなり過ぎて、緑青が発生する場合も考えられる。一方、吸込み空気に含まれる不純物によって潤滑水の純度が下がる傾向があるため、純度を下げる手段として給水間隔を比較的長くする方策が採られることがあった。しかしながら、潤滑水の純度が下がるよりも早く水が蒸発してしまい、運転を継続するために給水を行うため、潤滑水の純度が高いまま維持される場合も生じた。更に、季節性を含む環境変化に応じて設定を変更する必要にも迫られる。
【0006】
本発明は以上のような事情から為されたものであり、その目的は、季節性を含む周囲環境の変化に影響を受けることなく、水潤滑式コンプレッサの潤滑水の水質を安定して維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、季節性を含む周囲環境の変化に影響を受けることなく、水潤滑式コンプレッサの潤滑水の水質を安定して維持する構成或いは制御方法について鋭意研究を重ねた結果、潤滑水の純度を制御するための方策として、能動的に潤滑水の純度を下げる手段が無いことが問題であることに着眼した。
【0008】
即ち、上記目的を達成するため、本発明は、吸入空気を潤滑水と共に圧縮する圧縮機本体と、前記圧縮機本体の吐出口と連通し、圧縮機本体より吐出された圧縮空気と潤滑水とを導入して圧縮空気と潤滑水とに分離・貯溜するレシーバタンクと、純水装置と、循環する潤滑水の電気伝導率を計測するセンサを備え、前記圧縮機本体とレシーバタンク間で前記潤滑水を循環させる水潤滑式コンプレッサにおいて、上水を供給可能な外部給水源と前記圧縮機本体及びレシーバタンクとを連通する第1の給水回路と、前記外部給水源から上水を前記純水装置を介して前記レシーバタンクに給水する第2の給水回路と、前記レシーバタンクに連通された排水回路と、前記第1の給水回路の開閉手段、前記第2の給水回路の開閉手段、及び前記排水回路の開閉手段をそれぞれ動作させて前記レシーバタンク内の水位が上限に達するまで給水、下限に達するまで排水を行う制御手段を備え、前記制御手段は、所定の時間間隔で水交換を実行し、該水交換では、前記センサの検出する電気伝導率が所定の閾値を下回る場合は前記第1の給水回路を介して前記上水の供給と前記レシーバタンクからの排水を実行し、前記センサの検出する電気伝導率が前記所定の閾値を下回らない場合は前記第2の給水回路を介して前記純水装置にて生成した純水の供給と前記レシーバタンクからの排水を実行することで、前記レシーバタンク内の潤滑水を交換することを特徴とする。
【0009】
このように、従来の制御方法では純水のみ、もしくは上水のみを給水していたが、本発明では、純水と上水の両方を供給可能な構成とし、水交換時に、電気伝導率に応じて純水又は上水を選択的に給水することを本質としている。ここで言う「上水」は一般的な水道の水、「純水」は上水をイオン交換樹脂や逆浸透膜で処理した水のことである。即ち、電気伝導率センサで潤滑水の純度を監視し、水交換時間において、目標とする純度よりも純度が低ければ純水を給水し、純度が高ければ上水を給水可能なように電磁弁を設ける構成とした。即ち、上水を能動的に潤滑水の純度を下げる手段として活用する制御を行うわけである。潤滑水の純度の管理は、吸い込む空気の影響を受けるため厳密には行わず、例えば、目標を70μS/cmと設定すると、潤滑水の純度は、60~80μS/cm程度の範囲で推移し、きっかり70μS/cmとはならない。これは、制御したい純度の範囲に幅があるため、この範囲内で推移させることを目標とした制御を行うためである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電気伝導率の値が所定の閾値を下回る場合は上水の供給とレシーバタンクからの排水を実行し、所定の閾値を下回らない場合は純水の供給とレシーバタンクからの排水を実行することで、レシーバタンク内の潤滑水を交換するので、水潤滑式コンプレッサの潤滑水の水質を安定して維持することができ、上述した緑青が生じる問題を有効に防止することが可能になる。 尚、本発明によれば、所定の時間間隔で潤滑水を希釈交換する場合、又は所定の時間間隔で潤滑水を全量交換する場合に、電気伝導率の値が所定の閾値を下回る場合は上水の供給とレシーバタンクからの排水を実行し、所定の閾値を下回らない場合は純水の供給とレシーバタンクからの排水を実行するようにしても良い。更に、本発明によれば、所定の時間間隔で潤滑水を希釈交換する場合と、上記時間間隔とは別個の時間間隔で潤滑水を全量交換する場合の双方の場合に、電気伝導率の値が所定の閾値を下回る場合は上水の供給とレシーバタンクからの排水を実行し、所定の閾値を下回らない場合は純水の供給とレシーバタンクからの排水を実行するので、上述したスケールの発生による機器への影響を抑止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来の水潤滑式コンプレッサにおいて、所定の時間間隔で潤滑水を交換するサイクルを特定の条件下で実行した場合の水質の変化を電気伝導率センサにて計測した結果を示すグラフである。
図2】本発明の第1の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサの構成を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態とその変形例に係る水潤滑式コンプレッサの配管系統の要部を示す図であり、(A)は、第1の実施形態の配管系統の要部、(B) は、変形例の配管系統の要部を示す。
図4】本発明の第1の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサの水交換(希釈交換)を示すフローチャートである。
図5】本発明の第1の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサにおいて図4に示した水交換(希釈交換)サイクルを実行した場合の水質を電気伝導率センサにて計測した結果を示すグラフである。
図6】本発明の第2の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサの水交換(全量交換)を示すフローチャートである。
図7】本発明の第2の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサにおいて、図6に示した水交換(全量交換)サイクルを実行した場合の水質を電気伝導率センサにて計測した結果を示すグラフである。
図8】本発明の第3の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサの希釈交換と全量交換双方のサイクルを示すタイムチャートである。
図9】本発明の第3の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサにおいて図4に示した水交換(希釈交換)サイクルを図6に示した水交換(全量交換)サイクルと共に実行した場合の水質を電気伝導率センサにて計測した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施の形態について詳細に説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサの構成を示す図(配管系統図)である。図2に示すように、本実施形態の水潤滑式コンプレッサ10は、吸入空気を潤滑水と共に圧縮する圧縮機本体12と、圧縮機本体12の吐出口12aと連通し、圧縮機本体12より吐出された圧縮空気と潤滑水とを導入して圧縮空気と潤滑水とに分離・貯溜するレシーバタンク14を備え、圧縮機本体12とレシーバタンク14間で潤滑水を循環させている。また、水潤滑式コンプレッサ10は、純水装置(水を純水化する装置)16を備え、外部給水源と純水装置(水を純水化する装置)16を介して圧縮機本体12及びレシーバタンク14とを連通し、外部給水源から供給される水を純水装置(水を純水化する装置)16により純水と成し、この純水を圧縮機本体12に供給する第1の給水回路18と、外部給水源と純水装置(水を純水化する装置)16を介さずに圧縮機本体12及びレシーバタンク14とを連通し、外部給水源から供給される水をそのまま圧縮機本体12に供給する第2の給水回路19と、レシーバタンク14に連通された排水回路20と、第1の給水回路18の開閉手段としての給水電磁弁SV1、第2の給水回路19の開閉手段としての給水電磁弁SV2、及び排水回路20の開閉手段としての排水電磁弁SV3をそれぞれ設けている。
【0013】
本実施形態の水潤滑式コンプレッサ10は、更に、レシーバタンク14内の水位を制御するレベルセンサ(フロート)32と、給水電磁弁SV1、SV2及び排水電磁弁SV3をそれぞれ動作させてレシーバタンク14内の水位が上限(H)に達するまで給水、上限(H)を解除するまで排水を行う制御装置40を備えている。制御装置40は、タイマ42を有し、このタイマ42により所定の時間(例えば、1時間又は4時間等の任意の時間間隔)が経過した時は、第1の給水回路18の給水電磁弁SV1又は第2の給水回路19の給水電磁弁SV2、及び排水回路20の排水電磁弁SV3をそれぞれ動作させてレシーバタンク14内の水位が上限に達するまで純水又は上水を選択的に給水し、上限を解除するまで排水を行う。尚、タイマ42は、水交換のトリガとなる所定の時間(例えば、1時間又は4時間等の任意の時間間隔)の経過を計測するだけではなく、例えば、コンプレッサの容量により予め設定された給水時間、給水延長時間、及び排水時間等も計測する。
【0014】
更に、本実施形態の水潤滑式コンプレッサの各部の構成について詳説する。図2に示すように、水潤滑式コンプレッサ10は、潤滑水と共に圧縮空気を圧縮する圧縮機本体12と、圧縮機本体12の吐出口12aに吐出回路12bを介して連通され、圧縮機本体10より潤滑水との気液混合流体として吐出された圧縮空気を導入するレシーバタンク14を備えている。レシーバタンク14には、レシーバタンク14内で圧縮空気と分離された潤滑水を圧縮機本体10の給水口12cに導入する復帰回路14bが設けられ、吐出回路12b及び復帰回路14bを介して圧縮機本体10とレシーバタンク14間で潤滑水を循環させている。また、水潤滑式コンプレッサ10は、復帰回路14b中にクーラ62、フィルタ64、復水電磁弁SV4を有しており、レシーバタンク14から圧縮機本体10
に復帰する潤滑水をクーラ62により冷却すると共に、フィルタ64により濾過してから、復水電磁弁SV4を介して圧縮機本体10に復帰させている。更に、水潤滑式コンプレッサ10は、復帰回路14b中に電気伝導率センサ22を有しており、この電気伝導率センサ22は、クーラ62、フィルタ64、復水電磁弁SV4を介して圧縮機本体10に復帰する潤滑水の純度を計測する。即ち、圧縮機本体10に復帰する潤滑水の電気伝導率を測定し、測定結果を電気信号として制御装置40に出力する。
【0015】
また、水潤滑式コンプレッサ10は、外部給水源からの供給水を圧縮機本体12とレシーバタンク14に導入するための第1及び第2の給水回路18及び19を有している。第1の給水回路18には、ストレーナ17Aと純水装置16が設けられており、外部給水源からの供給水をストレーナ17Aによりクリーン化(不純物を除去)してから給水電磁弁SV1を介して、純水装置16により純水と成した後、圧縮機本体12内に給水することができる。尚、給水電磁弁SV1は、第1の給水回路18の開閉手段として設けられ、制御装置40からの電気信号によって給水電磁弁SV1の開閉を制御することにより第1の給水回路18を開閉して圧縮機本体12内への純水の供給開始又は停止を行うことができる。一方、第2の給水回路19には、ストレーナ17Bが設けられており、外部給水源からの供給水をストレーナ17Bによりクリーン化(不純物を除去)してから給水電磁弁SV2を介して、上水のまま圧縮機本体12内に給水することができる。尚、給水電磁弁SV2は、第2の給水回路19の開閉手段として設けられ、制御装置40からの電気信号によって給水電磁弁SV2の開閉を制御することにより第2の給水回路19を開閉して圧縮機本体12内への上水の供給開始又は停止を行うことができる。
【0016】
更に、水潤滑式コンプレッサ10は、潤滑水を機外に排水するためにレシーバタンク14に連結された排水回路20を有し、レシーバタンク14内に貯溜された潤滑水はレシーバタンク14内の圧力によって排水回路20を介して排水可能になっている。排水回路20には、この排水回路20を開閉する手段として排水電磁弁SV3が設けられ、制御装置40からの電気信号によって排水電磁弁SV3の開閉を制御することにより排水回路20を開閉してレシーバタンク14からの潤滑水の排水を開始又は停止することができる。
【0017】
また、水潤滑式コンプレッサ10は、第1、第2の給水回路18、19の給水電磁弁SV1、SV2と排水回路20の排水電磁弁SV3を開閉制御して圧縮機本体12及びレシーバタンク14に対する給排水、更に、レシーバタンク14内の水位を検知するレベルセンサ(フロート)32、レベルセンサ32からの信号に基づいて、給水電磁弁SV1、SV2及び排水電磁弁SV3を所定の段階ごとに開閉制御する制御装置40を有している。尚、制御装置40は、後述する電気伝導率センサ22の検出する値(電気伝導率)を監視しており、上述した所定の時間間隔での水交換時において、その検出する電気伝導率が所定の閾値を下回らない場合は、第1の給水回路18を介して純水の供給を実行すると共に排水回路20を介して排水を実行し、一方、その検出する電気伝導率が所定の閾値を下回る場合は、第2の給水回路19を介して上水の供給を実行すると共に排水回路20を介して排水を実行することで、レシーバタンク14内の潤滑水を交換する。この2通りの水交換が選択的に行われる。即ち、それぞれ第1、第2の給水回路18、19の給水電磁弁SV1、SV2を介した純水、上水を供給すると共に排水回路20の排水電磁弁SV3を動作させてレシーバタンク14内の水位が上限に達するまで給水、上限を解除するまで排水を行う。
【0018】
レベルセンサ(フロート)32は、図2に示すように、レシーバタンク14内の水位を、水位上限H、水位下限Lの2位置で検知可能であり、レシーバタンク14内の水位レベルを検知して制御装置40に出力する。制御装置40は、制御装置40は、電気伝導率センサ22の検出する値(電気伝導率)を監視しており、上述した所定の時間間隔での水交換時において、その電気伝導率が所定の閾値を下回らない場合は、第1の給水回路18の給水電磁弁SV1及び排水回路20の排水電磁弁SV3をそれぞれ動作させてレシーバタンク14内の水位が上限に達するまで純水の供給、上限を解除するまで排水を行うと共に、レベルセンサ32からの信号に基づいて、給水電磁弁SV1及び排水電磁弁SV3を開閉制御する。一方、その電気伝導率が所定の閾値を下回る場合は、第2の給水回路19の給水電磁弁SV2及び排水回路20の排水電磁弁SV3をそれぞれ動作させてレシーバタンク14内の水位が上限に達するまで上水の供給、上限を解除するまで排水を行うと共に、レベルセンサ32からの信号に基づいて、給水電磁弁SV2及び排水電磁弁SV3を開閉制御する。尚、以上のように、本実施形態の水潤滑式コンプレッサは、純水と上水の両方を供給可能な構成を有し、水交換時に、電気伝導率に応じて純水又は上水を選択的に給水することが特徴であるが、その純水と上水の配管系統としては、他の変形例も考えられる。図3は、本発明の第1の実施形態とその変形例に係る水潤滑式コンプレッサの配管系統の要部を示す図であり、(A)は、第1の実施形態の配管系統の要部、(B)は、変形例の配管系統の要部を示す。上述した第1の実施形態では、配管系統の概略図としては、図3(A)に示すように、上水の配管から電磁弁SV1が開くことにより上水を純水装置にて浄化して圧縮機に供給するように配管系統を構成した。これに対し、変形例として、図3(B)に示すように、上水の配管から直接上水を純水装置にて浄化し、その浄化した純水を電磁弁SV1の開成により圧縮機に供給するように構成しても良い。
【0019】
以下、図4を参照して、本実施形態に係る水潤滑式コンプレッサにおける潤滑水浄化の制御方法の概略を説明する。図4は、本発明の第1の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサの水交換(希釈交換)を示すフローチャートである。図4に示すように、本実施形態に係る水潤滑式コンプレッサでは、所定の時間間隔(例えば、1時間又は4時間等の任意の時間間隔)で潤滑水を交換するのは従来例と同様であるが、従来例のように純水のみ又は上水のみを供給するのではなく、純水を供給することが必要な場合と、上水を供給することが必要な場合とで場合分けしている。即ち、水交換が開始されると(S401)、上述した電気伝導率センサ22の検出する潤滑水の電気伝導率が閾値を下回るか否かを判定し(S402)、閾値を下回る場合には(S402でYes)、上水が給水される(S403)ことにより、水交換が実施される。即ち、給水電磁弁SV2が開になり、この給水は規定時間給水が満了するまで継続する(S405)。また、給水時間中、一度でもタンク内高(H)位置のレベルセンサがONになれば(S406でYes)、給水が終了し(S407)、排水電磁弁SV3が開になり、排水が開始され(S408)、この排水は、タンク内高(H)位置のレベルセンサがOFFにならない限り(S409でNo)継続される。タンク内高(H)位置のレベルセンサがOFFになれば(S409でYes)、排水が終了する(S410)ことで、水交換が終了する(S411)。一方、閾値を下回らない場合には(S402でNo)、純水が給水される(S404)ことにより、水交換が実施される。即ち、給水電磁弁SV1が開になり、この給水は規定時間給水が満了するまで継続する(S405)。また、給水時間中、一度でもタンク内高(H)位置のレベルセンサがONになれば(S406でYes)、給水が終了し(S407)、排水電磁弁SV3が開になり、排水が開始され(S408)、この排水は、タンク内高(H)位置のレベルセンサがOFFにならない限り(S409でNo)継続される。タンク内高(H)位置のレベルセンサがOFFになれば(S409でYes)、排水が終了する(S410)ことで、水交換が終了する(S411)。
【0020】
本発明者は、以上の水交換制御方法の効果を検証するため、約200時間に亘って、図4のサイクルを繰り返して実行する実験を行い、その間の潤滑水の電気伝導率の変化を実験室に設けた電気伝導率センサを用いて測定し、記録した。図5は、本発明の第1の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサにおいて図4に示した水交換サイクルを上記200時間に亘って実行した場合の水質の変化を電気伝導率センサにて計測した結果を示すグラフである。本実施形態に係る水潤滑式コンプレッサでは、図5に示すように、実験期間の全ての日時を通して、潤滑水の電気伝導率は、略一定幅の帯域の値に安定して維持された。
【0021】
次に、本発明の第2の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサについて説明する。本発明の第2の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサの構成は、図2及び図3に示した第1の実施形態のものと同様であるので、その説明は省略する。本発明の第2の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサでは、所定のフローにて潤滑水の全量交換の制御を行うことを特徴としている。以下、図6及び図7を参照して、本実施形態に係る水潤滑式コンプレッサにおける潤滑水浄化の制御方法の概略を説明する。図6は、本発明の第2の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサの水交換(全量交換)を示すフローチャートである。即ち、本発明の第2の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサでは、所定の時間間隔(例えば、200時間毎の時間間隔等)で純水又は上水により潤滑水の全量交換を行う。この全量交換において、従来例のように純水のみ又は上水のみを供給するのではなく、純水を供給することが必要な場合と、上水を供給することが必要な場合とで場合分けしている。即ち、水交換が開始されると(S601)、全量交換のためタンク内の循環水の排水を開始し(S602)、この排水は、タンク内低(L)位置のレベルセンサがONにならない限り(S603でNo)継続され、タンク内低(L)位置のレベルセンサがONになれば(S603でYes)、排水が終了する(S604)。そして、上述した電気伝導率センサ22の検出する潤滑水の電気伝導率が閾値を下回るか否かを判定し(S605)、閾値を下回る場合には(S605でYes)、上水が給水される(S606)ことにより、水交換が実施される。即ち、給水電磁弁SV2が開になり、給水時間中、一度でもタンク内高(H)位置のレベルセンサがONになれば(S608でYes)、給水が終了し(S609)、排水電磁弁SV3が開になり、排水が開始され(S610)、この排水は、タンク内高(H)位置のレベルセンサがOFFにならない限り(S611でNo)継続される。タンク内高(H)位置のレベルセンサがOFFになれば(S611でYes)、排水が終了する(S612)。このタンク内の循環水の排水と上水又は純水の給水は予め設定した規定回数(例えば、7回等)繰り返して行われ(S613でNo)、規定回数完了した場合には(S613でYes)、水交換が終了する(S614)。一方、閾値を下回らない場合には(S605でNo)、純水が給水される(S607)ことにより、以下、同様の全量交換が実施される。即ち、給水電磁弁SV2が開になり、給水時間中、一度でもタンク内高(H)位置のレベルセンサがONになれば(S608でYes)、給水が終了し(S609)、排水電磁弁SV3が開になり、排水が開始され(S610)、この排水は、タンク内高(H)位置のレベルセンサがOFFにならない限り(S611でNo)継続される。タンク内高(H)位置のレベルセンサがOFFになれば(S611でYes)、排水が終了する(S612)。このタンク内の循環水の排水と純水又は上水の給水は予め設定した規定回数(例えば、7回等)繰り返して行われ(S613でNo)、規定回数完了した場合には(S613でYes)、水交換が終了する(S614)。尚、この規定回数の繰り返しにおいては、毎回、潤滑水の電気伝導率が閾値を下回るか否かを判定し(S605)、都度、上水又は純水の選択を切り替えることは言うまでもない。
【0022】
以上のように、本発明の第2の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサでは、所定の時間間隔(例えば、200時間毎の時間間隔等)で潤滑水を純水又は上水により選択的に全量交換するが、この制御方法を実行した場合の水質データを、純水のみにより全量交換した場合、上水のみにより全量交換した場合のそれぞれと比較して示す。図7は、それらの水質データを示すグラフである。図7に示すように、上水のみで全量交換した場合は、目標とする水質(狙い値)を大きく上回って推移してしまう一方、純水のみで全量交換した場合には、その目標とする水質(狙い値)を下回って推移してしまうことが分かった。これに対して、純水又は上水により選択的に全量交換する(選択式)本実施形態では、目標とする水質(狙い値)の上下一定範囲内の水質に維持し易いことが分かった。
【0023】
更に、本発明の第3の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサについて説明する。本発明の第3の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサの構成も、図2及び図3に示した第1の実施形態のものと同様であるので、その説明は省略する。本発明の第3の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサでは、上述した第1の実施形態における希釈交換(図4参照)に加えて、第2の実施形態における全量交換(図6参照)の制御をも行う、いわばハイブリッドの水交換制御を行うことを特徴としている。以下、図8及び図9を参照して、本実施形態に係る水潤滑式コンプレッサにおける潤滑水浄化の制御方法の概略を説明する。図8は、本発明の第3の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサの水交換(希釈交換と全量交換のハイブリッド制御)を示すタイムチャートである。即ち、本発明の第3の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサでは、所定の時間間隔(例えば、200時間毎の時間間隔)で潤滑水を純水又は上水により選択的に全量交換すると共に、適宜(例えば、4時間毎)に潤滑水を純水又は上水により選択的に希釈交換する。この全量交換と希釈交換の双方の場合において、従来例のように純水のみ又は上水のみを供給するのではなく、純水を供給することが必要な場合と、上水を供給することが必要な場合とで場合分けしている。
【0024】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る水潤滑式コンプレッサにおいて図4に示した希釈交換サイクルを図6に示した全量交換サイクルと共に実行した場合の水質を電気伝導率センサにて計測した結果を示すグラフである。即ち、本発明者は、以上の第3の実施形態の水交換制御方法の効果を検証するため、約200時間に亘って、図8のサイクルを繰り返して実行する実験を行い、その間の潤滑水の電気伝導率の変化を実験室に設けた電気伝導率センサを用いて測定し、記録した。本実施形態に係る水潤滑式コンプレッサでは、図9に示すように、実験期間の全ての日時を通して、潤滑水の電気伝導率は、略一定幅の帯域の値に安定して維持された。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、潤滑水の浄化を行う水潤滑式コンプレッサに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0026】
10 水潤滑式コンプレッサ、 12 圧縮機本体、 14 レシーバタンク、16 純水装置、18 第1の給水回路、 19 第2の給水回路、20 排水回路、 22 電気伝導率センサ、 SV1、SV2 給水電磁弁、SV3 排水電磁弁、 40 制御装置、 42 タイマ
図1
図2
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図5
図6
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図8
図9