(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】車両処理装置
(51)【国際特許分類】
B60S 3/06 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
B60S3/06
(21)【出願番号】P 2020069415
(22)【出願日】2020-04-07
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000103138
【氏名又は名称】エムケー精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伝田 健
(72)【発明者】
【氏名】酒井 陽三
(72)【発明者】
【氏名】松村 義郎
(72)【発明者】
【氏名】湯本 康
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-335633(JP,A)
【文献】特開2003-011794(JP,A)
【文献】特開2012-148733(JP,A)
【文献】特開2012-096598(JP,A)
【文献】特開2015-066973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに吊り下げられた回転ブラシと、
前記回転ブラシの鉛直方向に対する揺動角度を検出可能なセンサと、
前記センサを介して前記回転ブラシの揺動角度を時系列に検出し、前記回転ブラシの揺動角度が基準角度以上で変化するパターンから、前記回転ブラシが車両に接触していることを判断する判断部と、を備え
、
前記判断部は、前記パターンから山谷を有する部分の頂点から底までの角度差が基準角度差以上の傾斜パターンを複数抽出したときに、前記回転ブラシの回転速度を調整する処理、または前記回転ブラシを車両から離す処理の少なくともいずれか一方の処理を行う、
車両処理装置。
【請求項2】
前記判断部は、前記パターンが前記基準角度より大きい制限角度を越えたときに、前記回転ブラシが車両に強接触していると判断する、
請求項1記載の車両処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2012-201251号公報(特許文献1)には、回転可能なブラシ(回転ブラシ)で車両をブラッシング洗浄する際に、車両との接触度合いをブラシモータの電流値により監視する洗車装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のような洗車装置では、ブラシの使用の他にも例えばブロー乾燥するための送風機を使用することによっても電圧低下が生じる場合がある。このような場合、ブラシを回転させるモータから抽出したデータでは、ブラシと車両との接触を安定して検出することができないおそれがある。
【0005】
本発明の一目的は、ブラシと車両との接触状況を検出することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一解決手段に係る車両処理装置は、フレームと、前記フレームに吊り下げられた回転ブラシと、前記回転ブラシの鉛直方向に対する揺動角度を検出可能なセンサと備える。そして、前記車両処理装置は、前記センサを介して前記回転ブラシの揺動角度を時系列に検出し、前記回転ブラシの揺動角度が基準角度以上で変化するパターンから、前記回転ブラシが車両に接触していることを判断する判断部を、更に備える。
【発明の効果】
【0007】
一解決手段によれば、ブラシと車両との接触状況を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両処理装置の正面視からの模式図である。
【
図3】車両処理装置が備える回転ブラシの正面視からの模式図である。
【
図5】車両処理装置の制御系を示すブロック図である。
【
図6】車両処理装置の正面視からの回転ブラシと車両との接触状況を示す模式図であり、(a)第1制御角度の場合、(b)第2制御角度の場合、(c)第3制御角度の場合である。
【
図7】車両側面に対応させた回転ブラシの制御角度の説明図であり、(a)車両がセダンタイプの自動車の場合、(b)車両がワゴンタイプの自動車の場合である。
【
図8】目視による車両に対する回転ブラシの状態と、回転ブラシの揺動角度の時系列変化を示すパターンとを対応させた説明図であり、(a)第1状態の場合、(b)第2状態の場合である。
【
図9】回転ブラシの回転状態と、回転ブラシの揺動角度の時系列変化を示すパターンとを対応させた説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態では、車両処理装置として、車両を洗浄する処理機能を備える洗車装置に適用した場合について図面を参照して説明する。まず、洗車装置90の概略を説明する。
図1および
図2は、それぞれ洗車装置90の正面視および側面視からの模式図である。
【0010】
洗車装置90は洗車機本体1を備えている。洗車機本体1は地面Gから起立する一対の脚フレーム1Aと、その間にかかる梁フレーム1Bとを備え、門型に構成されている。洗車機本体1は、地面Gに設けられた左右一対のレール2,2上を往復走行し、レール2,2間に停車される車両を跨ぐように移動する。
【0011】
また、洗車装置90は回転ブラシ3,4,4を備えている。回転ブラシ3,4,4は、洗車機本体1に設けられ、車両をブラッシングする機能を有する。回転ブラシ3は洗車機本体1のトップ(梁フレーム1B)側に設けられ、車両面に沿って昇降動作し主に車両上面を洗浄するトップブラシである。回転ブラシ4,4は洗車機本体1の両サイド(一対の脚部レーム1A)側に設けられ、車両面に沿って開閉動作し車両の側面および前後面を洗浄する左右一対のサイドブラシである。
【0012】
また、洗車装置90はブロワノズル5,6,6を備えている。ブロワノズル5,6,6は洗車機本体1に設けられ、洗浄後の車両の乾燥をはかる機能を有する。ブロワノズル5は洗車機本体1のトップ(梁フレーム1B)側に設けられ、車両面に沿って昇降動作するトップノズルである。ブロワノズル6,6は洗車機本体1の両サイド(一対の脚部レーム1A)側に設けられ、車両面に沿って出没動作する左右一対のサイドノズルである。
【0013】
また、洗車装置90は、車形検出装置7を備えている。車形検出装置7は、洗車機本体1の前方に配置され、本体1の走行に伴い車両の上面位置を読み取る機能を備えている。車形検出装置7は、車両を幅方向に挾むようにして上下に複数の発光素子を配列した発光部7aと受光素子を配列した受光部7bを対向させ、発光部7aと受光部7bの対となる発光素子・受光素子間で形成される光軸が車両によって遮られたのを検知して車両を検出し、車両の上面位置を検知するものである。
【0014】
また、洗車装置90は、走行エンコーダ8を備えている。走行エンコーダ8は、洗車機本体1が単位距離走行する毎にパルス出力する機能を備えている。また、洗車装置90は走行モータ9,9を備えている。走行モータ9,9は洗車機本体1を走行させる機能を備えている。
【0015】
次に、洗車装置90が備えるサイドブラシ4(回転ブラシ)、ブラシ開閉装置14およびブラシ揺動装置15について詳細に説明する。
図3および
図4は、それぞれサイドブラシ4の正面視および側面視からの模式図である。
【0016】
サイドブラシ4は、洗車機本体1内の後方上部(梁フレーム1B)に水平に横架されたガイドレール10に挟持するキャリア11と、該キャリア11から吊り下げされる回転軸12と、該回転軸12の周囲に植毛される布製又は樹脂製のブラシ体13とから構成されている。このため、サイドブラシ4は、本体1(フレーム)に吊り下げられており、自然な状態では鉛直方向に回転軸12が延在することとなる。
【0017】
また、サイドブラシ4は、ブラシ開閉装置14を介してキャリア11をガイドレール10に沿って走行し車両の側面に対して左右別々に開閉可能(水平移動可能)にされるとともに、ブラシ揺動装置15を介して左右方向に揺動自在にされる。洗車装置90は、キャリア11に取り付けられた正逆転可能なブラシ回転モータ16を備えている。このブラシ回転モータ16は、プーリ、ベルト等からなる連係装置17を介して回転軸12と連係され、サイドブラシ4(ブラシ体13)を正転・逆転させる。
【0018】
また、ブラシ開閉装置14は、サイドブラシ4を左右に開閉する機能を備えている。ブラシ開閉装置14は、キャリア11の両側面に先端が接続されスプロケット18,18間に懸架されたチェーン19と、一方のスプロケット18を回転駆動するブラシ開閉モータ20と、モータの駆動軸先端に接続されるブラシ開閉位置検出用のエンコーダ21とを備えて構成される。
【0019】
また、ブラシ揺動装置15は、サイドブラシ4を鉛直位置から下方が外側に開く位置に揺動させる機能を備えている。ブラシ揺動装置15は、キャリア11の上面において回転軸12の上端を連結固定する支持板22と、該支持板22を一方向に揺動支持する支軸23とを備えて構成される。
【0020】
洗車装置90は揺動角度センサ24を備えており、支持板22の上面に揺動角度センサ24が取り付けられている。揺動角度センサ24は、サイドブラシ4の鉛直方向に対する傾き(揺動角度θs)を検出する機能を備えている。洗車装置90では、揺動角度θsは、洗車機本体1を正面視したときの鉛直方向からなす角度をいう。この揺動角度θsでは、後述の制御角度θc(
図6参照)と同様に、サイドブラシ4が鉛直方向に延在する状態で0°とし、サイドブラシ4が車両100に対して俯せに倒れる方向を+、仰向けに倒れる方向を-としている。
【0021】
車両の側面洗浄は、左右のサイドブラシ4,4を車両側面に押し付けて、車両側面の形状に適した角度に傾斜させた状態で行われる。この傾斜角度は、車高や車両部位に応じて設定されるもので、揺動角度センサ24で揺動角度θsを検出しながらブラシ開閉モータ20を駆動することで、所定角度範囲に保持される。
【0022】
次に、洗車装置90が備える制御部35について詳細に説明する。
図5は、洗車装置90の制御系を示すブロック図である。なお、制御部35は、例えば、CPU、メモリなどが搭載された基板から構成され、種々の機能を発揮するためのプログラムが実行されることで、種々の機能部を備えることとなる。
【0023】
制御部35は、車形検出装置7と、走行エンコーダ8と、ブラシ開閉装置14のエンコーダ22,22と、揺動角度センサ24と、洗車駆動部36と、操作部37と電気的に接続されている。また、制御部35は、走行位置検出部38と、車形検出部39と、側面位置検出部40と、パターン判断部41と、洗車制御部42と、データ記憶部43とを備えている。
【0024】
洗車駆動部36は、制御部35で検出した車両の上面形状・側面位置に基づいて洗車機本体1、トップブラシ3、サイドブラシ4、トップノズル5、サイドノズル6を駆動する機能を備えている。洗車駆動部36は、洗車機本体1の走行モータ9と、サイドブラシ4、4のブラシ回転モータ16と、サイドブラシ4、4のブラシ開閉モータ20と、サイドノズル6、6のノズル進退用モータと電気的に接続されている。このほか、洗車駆動部36は、トップブラシ3、トップノズル5の駆動系と電気的に接続されている。
【0025】
また、操作部37は、洗車内容の選択や洗車の開始入力を行う他、操作する人に対し表示や音声で注意事項や操作手順等を案内出力する機能を備えている。操作部37は、通常、洗車機本体1前面に設けられるが、運転者が乗車したままドライブスルー形式で洗車を行う場合等には、洗車機本体1と別体とし洗車エリアの入口に設置されてもよい。
【0026】
また、走行位置検出部38は、走行エンコーダ8からの情報に基づいて洗車機本体1の走行位置を検出する機能を備えている。この走行位置検出部38は、走行モータ9の駆動に伴い洗車機本体1が単位距離走行する毎にエンコーダ8が出力するパルス信号をカウントすることで洗車機本体1の走行位置を検知することができる。
【0027】
また、車形検出部39は、車形検出装置7と走行エンコーダ8からの情報に基づいて車両の上面形状を検出する機能を備えている。この車形検出部39は、車形検出装置7の発光部7aに信号出力して発光素子を上から順に発光させ、これと同期して受光部7bにおける受光素子での受光レベルを取得して車両の上面位置を検知することができる。この上面位置を洗車機本体1の単位距離走行毎に蓄積して、上面形状データを形成することができる。
【0028】
また、側面位置検出部40は、車形検出装置7とブラシ開閉装置14のエンコーダ21、21と揺動角度センサ24からの信号に基づいて車両100の側面位置を検出する機能を備えている。この側面位置検出部40は、開閉装置14の開閉用モータ20の駆動に伴いエンコーダ21、21が出力するパルス信号をカウントしていき、揺動角度センサ24でサイドブラシ4が所定角度揺動したことを検出した時点のパルス数で車両側面までの距離を検出することができる。
【0029】
また、パターン判断部41は、揺動角度センサ24を介してサイドブラシ4の揺動角度θsを時系列に検出し、サイドブラシ4の揺動角度θsが基準角度以上で変化するパターンから、サイドブラシ4が車両100に接触していることを判断する機能を備えている。このパターン判断部41は、サイドブラシ4の揺動角度センサ24からの信号に基づいて時系列パターンを形成し、これからサイドブラシ4の挙動を判断することができる。
【0030】
また、洗車制御部42は、各検出部38~41での検出結果に基づいて洗車駆動部36を介して洗車機本体1、トップブラシ3、サイドブラシ4、トップノズル5、サイドノズル6に動作指令を与える機能を備えている。そして、データ記憶部43は、各種データを記憶する機能を備えている。
【0031】
次に、洗車装置90の動作(車両処理方法)について説明する。まず、洗車装置90は、ユーザーに対して誘導し、洗車する車両100を洗車機本体1の前方より進入させ、洗車機本体1の車形検出装置7よりも手前に設定される停車位置に停車させる。停車位置は、洗車装置90が備えるタイヤ検知板やビームセンサ等の公知の停車検知手段(不図示)によって与えられる。
【0032】
次いで、洗車装置90は、洗車コース(例えば、一往復洗車)の選択を操作部37で受け付け、洗車を開始する。これにより、洗車機本体1の一往行が開始され、先行する車形検出装置7で車両100の上面輪郭を読み取り、検出した上面輪郭に沿って後行するブラシ3、4、4を制御して車両面のブラッシング洗浄が行われる。
【0033】
ここで、洗車機本体1のサイドブラシ4、4の動作について詳細に説明する。
図6は、洗車機本体1を正面視したときのサイドブラシ4と車両100との接触状況を示す模式図であり、(a)制御角度θc1の場合、(b)制御角度θc2の場合、(c)制御角度θc3の場合である。制御角度θcは、洗車装置90(制御部35)で設定される角度であり、洗車機本体1を正面視したときの鉛直方向からなす角度をいう。制御角度θcでは、サイドブラシ4が鉛直方向に延在する状態で0°とし、サイドブラシ4が車両100に対して俯せに倒れる方向を+、仰向けに倒れる方向を-としている。
図6では、θc1>θc2>θc3>0°の関係にある。また、
図7は、サイドブラシ4の制御角度θcを車両100の側面に対応させて示す説明図であり、(a)車両100がセダンタイプの自動車の場合、(b)車両100がワゴンタイプの自動車の場合である。
【0034】
サイドブラシ4、4は、車形検出装置7で検出する車両100の前端に対し、洗車機本体1の左右にある位置(離間位置)から閉じた位置(近接位置)にある状態でアプローチしていく。洗車装置90は、車形検出装置7が車両100の前端を検出してから、洗車機本体1が車形検出装置7とサイドブラシ4、4との距離S(
図2参照)分走行すると、サイドブラシ4、4が車両100の前端に達したと判断する。そして、洗車装置90は、洗車機本体1の往行を一旦停止させて左右のサイドブラシ4、4を回転させながら左右に開いていくことで、車両100の前面をブラッシング洗浄する。
【0035】
次いで、洗車装置90は、サイドブラシ4、4を本体1(脚フレーム1A)側に開き、洗車機本体1の往行を再開する。そして、洗車装置90は、左右のサイドブラシ4、4を閉じていくことで、車両100の側面に押し付け、左右のサイドブラシ4、4がハの字姿勢(
図6参照)になるように傾斜させ、車両100の側面をブラッシング洗浄する。この側面洗浄では、揺動角度センサ24で検出される揺動角度θsが制御角度θc±αに保持されるように、開閉装置14(ブラシ開閉モータ20)が制御される。なお、後述するが、ブラシ回転モータ16によるブラシ4の回転速度を制御することでも、揺動角度θsに影響が及ぶ。
【0036】
制御角度θcは、
図7に示すように、車形検出装置7で検出される上面高さに応じて適宜設定される。例えば、地上高H1までは、制御角度θcをθc1に設定し、地上高H2までは、制御角度θcをθc2(<θc1)に設定し、それ以上の高さは制御角度θcをθc3(<θc2)に設定される。すなわち、車高が低い車両100の側面では、サイドブラシ4の接触面積が小さく、揺動作動点が低くなるので、サイドブラシ4の制御角度θcを大きく設定してサイドブラシ4への押付力を高める。また、車高の高い車両側面では、サイドブラシ4の接触面積が大きく、揺動作動点が高くなるので、サイドブラシ4の制御角度θcを小さくして、車両側面に均一に作用するようにしている。
【0037】
より具体的には、
図6(a)に示すように、セダンタイプのボンネット部等の低車高部を洗浄するときには、揺動角度θsを制御角度θc1±αに保持するように開閉装置14を制御する。
図6(b)に示すように、セダンタイプのキャビン部等の中車高部を洗浄するときには、揺動角度θsを制御角度θc2±αに保持するように開閉装置14を制御する。
図6(c)に示すように、ワゴンタイプのキャビン部等の高車高部を洗浄するときには、揺動角度θsが制御角度θc3±αに保持されるように開閉装置14を制御する。なお、±αとは、サイドブラシ4が開閉するときの一時的な反動や車両100に接触したときの回転反力を捉えて開閉装置14が頻繁に作動するのを防ぐために設定される許容変化角度である。
【0038】
このように、洗浄する車両100の高さに応じて、制御するサイドブラシ4の揺動角度θsを変えることで、車両100に対するサイドブラシ4の接触度合いを各位で均一化し、洗い残しや過接触を防止することができる。ところで、サイドブラシ4、4のブラシ体13に使用される素材によって、サイドブラシ4の制御角度の設定が選択される。すなわち、ブラシ体13の素材がスポンジである場合と布である場合とでは、揺動角度センサ24で検出される揺動角度θsが同じであっても車両100への接触度合いが若干変化するので、スポンジブラシ用の制御角度データと布ブラシ用の制御角度データを記憶しておき、使用するブラシ体13によって選択するようにしている。
【0039】
また、洗車装置90は、パターン判断部41によってサイドブラシ4が車両100に接触していることを認識することができる。
図8は、目視(ビデオ解析も含む)による車両100に対するサイドブラシ4の状態(接触、非接触)と、サイドブラシ4の揺動角度θsの時系列変化を示すパターンとを対応させた説明図であり、(a)パターンPθ1の場合、(b)パターンPθ2の場合である。なお、サイドブラシ4が車両100の側面に接触している状態では、洗車機本体1が走行しながらサイドブラシ4が回転して、車両100をブラッシング洗浄している。
【0040】
図8(a)に示すパターンPθ1には、目視により観察した、サイドブラシ4が車両100に接触する前(非接触)、接触している間(接触)、接触した後(非接触)の状態に対応させて、それぞれ時間t1前、時間t1から時間t2まで、時間t2後を示している。
【0041】
パターンPθ1において時間t1前では、揺動角度センサ24で検出されるサイドブラシ4の揺動角度θsが0°付近にあり、サイドブラシ4(回転軸12)が鉛直方向に延在した状態(吊り下げられた自然な状態)にある。
【0042】
また、実際にサイドブラシ4が車両100に接触している時間t1と時間t2の間ではサイドブラシ4の揺動角度θsが+側に大きくなり、設定された制御角度θc(
図8ではラインCLで示す)付近にある。また、時間t1から時間t2までの間は、揺動角度θsが所定の基準角度(
図8ではラインLLで示す)以上にある。なお、時間t1直後にはピークP1が出現しているが、サイドブラシ4が車両100に接触始めした状態(オーバーシュートした状態)を示している。
【0043】
そして、時間t2後では揺動角度センサ24で検出されるサイドブラシ4の揺動角度θsが0°付近に収束し、サイドブラシ4(回転軸12)が鉛直方向に延在した状態(吊り下げられた自然な状態)となる。なお、時間t2直後にはピークP2が出現しているが、サイドブラシ4が車両100との接触から解放されたときの状態を示しており、実際の観察によればサイドブラシ4は車両100に接触していない。
【0044】
このように、パターン判断部41は、パターンPθ1のように、揺動角度センサ24を介してサイドブラシ4の揺動角度θsを時系列に検出することができる。また、パターン判断部41は、サイドブラシ4の揺動角度θsが基準角度(ラインLL)以上で変化する時間t1から時間t2までの間のパターンPθ1から、サイドブラシ4が車両100に接触していると判断することができる。したがって、特許文献1に記載のようなサイドブラシ4と車両100との接触度合いをブラシ回転モータ16の電流値から検出する技術の他に、パターン判断部41によってもサイドブラシ4と車両100との接触状況を検出することができる。
【0045】
また、パターン判断部41は、時間t1から時間t2までの間のパターンPθ1が基準角度より大きい制限角度(
図8ではラインHL)を越えたとき(ピークP1のとき)に、サイドブラシ4が車両10に強接触していると判断することができる。なお、強接触と判断された場合には、開閉装置14(ブラシ開閉モータ20)によってサイドブラシ4を車両100から離すよう処理することができる。
【0046】
図8(a)に示すパターンθ1とは異なるパターンPθ2が
図8(b)に示されている。
図8(b)には、目視により観察した、サイドブラシ4が車両100に接触する前(非接触)、接触している間(接触)、接触した後(非接触)の状態に対応させて、それぞれ時間t3前、時間t3から時間t4まで、時間t4後を示している。そして、パターンPθ2において時間t3前では揺動角度センサ24で検出されるサイドブラシ4の揺動角度θsが0°付近にあり、サイドブラシ4(回転軸12)が鉛直方向に延在した状態(吊り下げられた自然な状態)にある。
【0047】
また、実際にサイドブラシ4が車両100に接触している時間t3と時間t4の間ではサイドブラシ4の揺動角度θsが+側に大きくなり、設定された制御角度θc(
図8ではラインCLで示す)付近にある。また、時間t3から時間t4までの間は、揺動角度θsが所定角度(
図8ではラインLLで示す)以上にある。なお、時間t3から時間t4までの間にピークP3が出現しているが、実際の観察によれば回転しているサイドブラシ4が暴れている状態(例えば、サイドブラシ4が大きく揺動している状態や車両100に叩き付けられている状態)のものが示されている。
【0048】
そして、時間t4後では揺動角度センサ24で検出されるサイドブラシ4の揺動角度θsが0°付近に収束し、サイドブラシ4(回転軸12)が鉛直方向に延在した状態(吊り下げられた自然な状態)となる。なお、時間t4直後にはピークP4が出現しているが、サイドブラシ4が車両100との接触から解放されたときの状態を示しており、実際の観察によればサイドブラシ4は車両100に接触していない。
【0049】
このように、パターン判断部41は、パターンPθ2のように、揺動角度センサ24を介してサイドブラシ4の揺動角度θsを時系列に検出することができる。また、パターン判断部41は、サイドブラシ4の揺動角度θsが基準角度(ラインLL)以上で変化する時間t3から時間t4までの間のパターンPθ2から、サイドブラシ4が車両100に接触していると判断することができる。サイドブラシ4が暴れることによるピークP3については、基準角度(ラインLL)より小さいがその時間が短いため、パターン判断部41はピークP3を除外し、サイドブラシ4が車両100に接触していると判断することができる。
【0050】
すなわち、洗車装置90は、パターン判断部41によってサイドブラシが車両100に暴れた状態で接触していることも認識することができる。
図9は、サイドブラシ4の回転状態(回転速度ω)を示すパターンPωと、サイドブラシ4の揺動角度θsの時系列変化を示すパターンPθ3とを対応させた説明図である。
図9には、目視により観察した、サイドブラシ4が車両100に接触している間に対応させて、時間t5から時間t6までの間を示している。
【0051】
パターン判断部41は、サイドブラシ4の揺動角度θが0°付近から+側へ大きくなり、基準角度(
図9ではラインLLで示す)となったところで(パターンPθ3の点p1)、時間を計測し始める。パターン判断部41は、点p1の時点から所定の開始判断時間T1経過する間、揺動角度θsが基準角度(ラインLL)以上であれば、サイドノズル4が車両100に接触していると判断する。また、パターン判断部41は、開始判断時間T1経過したときに、サイドノズル4を回転させるよう指示することができる。なお、
図9では、サイドブラシ4が車両100に接触したときに回転速度ω1であることを示している。
【0052】
また、パターン判断部41は、パターンPθ3から山谷を有する部分(例えば、山が点p2、谷が点p3の傾斜パターンpi1)を抽出することができる。
図9の囲み枠中には所定の基準角度差Dを示しているが、パターン判断部41は、抽出した部分の頂点から底までの角度差が基準角度差D以上のときに、サイドブラシ4が暴れていると判断することができる。このように、サイドブラシ4と車両100との接触状況において、サイドブラシ4の暴れを検出することで、サイドブラシ4のメンテナンスなどの対応を行うことを洗車装置90の管理者に発報させることもできる。また、パターン判断部41は、サイドブラシ4が暴れていると判断した場合ときに、サイドブラシ4の回転速度を調整する処理、またはサイドブラシ4を車両100から離す処理の少なくともいずれか一方の処理を行うことで、サイドブラシ4の暴れを抑制することもできる。
【0053】
また、パターン判断部41は、基準角度LLより大きい制限角度HLを越えたときにも(パターンPθ3の点p4)、そこから時間を計測し始める。パターン判断部41は、点p4の時点から所定の終了判断時間T2経過する間、揺動角度θsが基準角度LLより小さい状態が維持されるか観測する。パターンPθ3の点p5では揺動角度θが基準角度LLより小さくなるが点p6では基準角度LL以上となり、また点p7では基準角度LLより小さくなるが点p8では基準角度LL以上となっている。
【0054】
このように終了判断時間T2の間において、基準角度LLより小さい状態が観測されるがその後基準角度LL以上の状態が観測される。このため、パターン判断部41は、基準角度LLより小さい状態が維持されていると判断せず、サイドブラシ4が車両100に接触している状態であると判断することができる。なお、点p5から点p6まで、また点p7から点p8までが谷底となる山谷を有する部分は、揺動角度θsが基準角度LLよりも低く、サイドブラシ4が車両100に接触していない可能性があるとし、基準角度差Dであるか判断する部分から除くこととしている。
【0055】
また、パターン判断部41は、パターンPθ3から基準角度差D以上の傾斜パターンpiを複数抽出した場合には、サイドブラシ4の回転速度を下げる処理を行うこともできる。
図9では、基準角度差D以上の傾斜パターンpiを5回抽出(pi1~5)したときに(点p9)、パターンPωに示すように、サイドブラシ4の回転速度ω1からω2へ下げている。これにより、サイドブラシ4の揺動を安定(暴れを抑制)させ、設定された制御角度θc(
図9ではラインCLで示す)に収束させることができる。この回転速度ωの調整は、サイドブラシ4が設定された制御角度θcに安定して収束させることができれば、パターンPωの点線で示すように、徐々に(あるいは段階的に)下げてもよいし、上げたり、下げたりしてもよい。
【0056】
また、パターン判断部41は、基準角度LLより大きい制限角度HLを越えたパターンPθ3の点p11の時点から終了判断時間T2経過する間、揺動角度θsが基準角度LLより小さい状態が維持されるか観測する。ここでは、点p12の時点以降、揺動角度θsが基準角度LLより小さい状態が維持されているので、パターン判断部41は、点p11よりも前の谷底の点p10までサイドブラシ4が車両100に接触していたと判断することができる。したがって、パターン判断部41によれば、パターンPθ3において点p1となった時間t5から点p10となった時間t6までの間でサイドブラシ4と車両100とが接触していたことを検出することができる。
【0057】
次いで、車形検出装置7が車両の後端を検出し、本体1が車形検出装置7とサイドブラシ4、4との距離S分走行すると、再び洗車機本体1の往行を一旦停止し、サイドブラシ4、4を閉じていき、そこから更に左右に開いていくことで行われる。その後、本体1を走行停止位置まで走行させて停止し、一往行のブラシ工程が終了となる。
【0058】
そして、続く本体1の一復行では、検出した上面輪郭に沿ってブロワノズル5、6、6を位置制御し、ブロワノズル5、6、6から送風して車両の水滴を除去する乾燥工程が行われる。このとき、ブロワノズル6、6を車両側面に進退自在に設けておけば、サイドブラシ4による車両側面のブラッシングを行った際、側面位置検出部40で車両側面距離が検出されるので、このデータを基にブロワノズル6、6を車両側面に進退させることができる。
【0059】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0060】
前記実施形態では、地面に停車した車両に対して本体部が移動する車両処理装置を説明した。これに限らず、例えば、車両の車長方向に移動可能なキャリア(コンベヤ)に車両を搭乗させて、地面に固定された本体部に対して車両が移動する場合や、車両および本体部が共に移動する場合であってもよい。このため、本発明には、処理対象となる車両に対して本体部が相対移動する関係が含まれる。
【0061】
また、前記実施形態では、回転ブラシ(サイドブラシ)が車両の側面に接触する場合について説明した。これに限らず、回転ブラシが車両の前後面に接触する場合であってもよい。車両の側面をブラッシングする場合の回転ブラシは、走行モータによって移動したが、車両の前後面をブラッシングする場合の回転ブラシは、ブラシ開閉モータによって移動する。また、車両の側面に接触する回転ブラシの制御角度は、ブラシ開閉モータによって制御されたが、車両の前後面に接触する回転ブラシの制御角度は、走行モータによって制御される。このため、パターン判断部は、車両の前後面に対する回転ブラシの揺動角度が基準角度以上で変化するパターンから、回転ブラシが車両の前後面に接触していることを判断することができる。
【符号の説明】
【0062】
1B フレーム、 4 回転ブラシ、 24 センサ、 41 判断部、 90 車両処理装置