(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】電力機器用の簡易減震装置
(51)【国際特許分類】
H01F 27/06 20060101AFI20231226BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20231226BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H01F27/06
H01F30/10 T
F16F15/08 X
(21)【出願番号】P 2020074018
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000224994
【氏名又は名称】特許機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 純司
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-251842(JP,A)
【文献】特開2014-218788(JP,A)
【文献】特開2015-55322(JP,A)
【文献】実開昭55-55644(JP,U)
【文献】特開2018-67710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/06
H01F 30/10
F16F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に複数の脚部を備え、ベース部材の上に前記脚部を介し支持される電力機器に適用される簡易減震装置であって、
前記ベース部材における前記脚部の取り付け部分の上面に設置され、前記ベース部材に対し固定金具により固定される基台フレームと、該基台フレームの前記ベース部材に対する取付状態において水平に配置されるように前記基台フレームに一体化された支持基板と、該支持基板の上面に着脱自在に装着された調整プレートと、前記支持基板の一部に前記調整プレートと離間させて立設され、前記電力機器の底部又は脚部に当接して該底部を支えるロッド状の緩衝部材を備え、前記支持基板あるいは前記調整プレートを介し前記電力機器の前記脚部が支持されたことを特徴とする電力機器用の簡易減震装置。
【請求項2】
前記調整プレートに所定の間隔をあけて形成した2個1組の透孔からなる組孔が複数組形成され、前記複数の組孔における前記2個1組の透孔どうしの間隔が前記複数の組孔毎に異なる間隔に形成され、前記間隔の異なる組孔のいずれかを挿通した取付金具により前記電力機器用の防振部材の底部が前記調整プレートの上に固定され、前記防振部材の上部が前記脚部に固定され、前記防振部材を介して前記電力機器が支持されたことを特徴とする請求項1に記載の電力機器用の簡易減震装置。
【請求項3】
前記調整プレートに長孔が形成され、前記支持基板に挿通孔が形成されるとともに、前記長孔と前記挿通孔に挿通した取付金具を介し前記調整プレートを前記支持基板に対し着脱自在に、かつ、前記長孔に対する前記取付金具の挿通位置の変更により前記支持基板に対する前記調整プレートの取付位置を変更自在に構成したことを特徴とする請求項2に記載の電力機器用の簡易減震装置。
【請求項4】
前記防振部材がゴムまたはコイルバネからなる弾性部材と、前記弾性部材の底部に装着され前記弾性部材の両側方に突出する突出部を備えた底板を具備し、前記両方の突出部に透孔が形成されるとともに、前記調整プレートに形成した複数の組孔のいずれかに、前記両方の突出部に形成した透孔が位置合わせ自在に形成されたことを特徴とする請求項3に記載の電力機器用の簡易減震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器などの電力機器を地震動から保護する簡易減震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器はトランスや変成器とも称され、電力会社から供給された6600V等の高電圧に対し電磁誘導コイルを利用し、100Vあるいは200V等に降圧するための電力機器であり、ビルや工場等に数多く設置されている。
従来、前記変圧器から発生する振動の伝搬を防止するため、防振ゴム等の防振材を用いて変圧器を弾性支持することがなされている。(特許文献1、2等参照)
例えば、
図11(a)に示すように架台100上に変圧器101を設置し、架台100に組み込まれた防振ゴムあるいはスプリングダンパーなどの防振材102により変圧器101を弾性支持し、架台100を床103に設置している。この支持構造により変圧器101は床103上に弾性支持され、変圧器101の振動が防振材102で吸収される結果、周囲に変圧器101の振動騒音が伝達されないようになっている。
【0003】
この種の一般的な防振機能を備えた架台100は、変圧器101を設置するための上部架台100aと、床103に設置するための下部架台100bと、両架台間に介装された防振材102を備えており、変圧器101の稼動により発生する振動を防振材102で吸収することができる。
しかし、大きな地震などが発生した場合、変圧器101が想定以上の振幅で揺れるおそれがある。例えば、
図11(b)に示すようにキャビネット105の内部に収容されている変圧器101が想定以上の振幅で横揺れした場合、キャビネット105の側壁に変圧器101の上部が激突してキャビネット105に損傷を与えるか、変圧器101の配線などに問題を発生させるおそれがある。
そこで、本願出願人は先に以下の特許文献3、4において変圧器の上部を水平方向に延在するボルトアームによって支持し、該ボルトアームを弾性材によって支持した構成の変圧器用減震装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-8122号公報
【文献】特開2005-251842号公報
【文献】特開2013-211510号公報
【文献】特開2016-1656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先の特許文献3、4に記載した減震装置は、鋼材で組み付けた矩形枠状の耐震フレームの内側に変圧器を収容し、耐震フレームの内側に弾性材を介し複数のボルトアームを設け、複数のボルトアームで変圧器上部を弾性支持した構造となっている。
先の特許文献3、4に記載した減震装置によって変圧器上部の想定外の横揺れを抑えることができ、地震の振動による変圧器上部の断線やショートなどを防止できる減震装置を提供することができた。
【0006】
しかし、特許文献3、4に記載した減震装置では、変圧器などの電力機器を収容する耐震フレームを構成し、この耐震フレームで支持したボルトアームを用いて変圧器上部を弾性支持する必要があり、減震装置自体が大がかりな構造となり、設備コストが嵩む問題があった。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みなされたものであり、電力機器を支持した構造において設備コストを削減できる簡易な構造であり、地震による横揺れなどが作用しても電力機器に伝わる変位量を低減できる電力機器用の簡易減震装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するため、本発明に係る電力機器用の簡易減震装置は、底部に複数の脚部を備え、ベース部材上に前記脚部を介し支持される電力機器に適用される簡易減震装置であって、前記ベース部材における前記脚部の取り付け部分の上面に設置され、前記ベース部材に対し固定金具により固定される基台フレームと、該基台フレームの前記ベース部材に対する取付状態において水平に配置されるように前記基台フレームに一体化された支持基板と、該支持基板の上面に着脱自在に装着された調整プレートと、前記支持基板の一部に前記調整プレートと離間させて立設され、前記電力機器の底部又は脚部に当接して該底部を支えるロッド状の緩衝部材を備え、前記支持基板あるいは前記調整プレートを介し前記電力機器の前記脚部が支持されたことを特徴とする。
【0009】
電力機器の脚部を支持基板あるいは調整プレートが支持した上に、ロッド状の緩衝部材が電力機器の底部又は脚部を支持するので、地震等の揺れによって電力機器が揺れた場合、緩衝部材が地震による揺れを抑制する。支持基板あるいは調整プレートにおいて電力機器の脚部を固定した位置と緩衝部材により電力機器の底部を支持した位置が水平方向に若干ずれた位置となるので、緩衝部材による減震効果を得ることができる。
電力機器の減震ができるので、地震により電力機器が揺れたとしても、揺れの変位量を小さく抑えることができる結果、電力機器に接続される配線の断線を防止でき、配線接続部の断裂などを防止できる。また、本形態の簡易減震装置は、構造が簡単なので低コストで実施できるとともに、実施が容易な特徴を有する。
【0010】
(2)本発明に係る電力機器用の簡易減震装置において、前記調整プレートに所定の間隔をあけて形成した2個1組の透孔からなる組孔が複数組形成され、前記複数の組孔における前記2個1組の透孔どうしの間隔が前記複数の組孔毎に異なる間隔に形成され、前記間隔の異なる組孔のいずれかを挿通した取付金具により前記電力機器用の防振部材の底部が前記調整プレート上に固定され、前記防振部材の上部が前記脚部に固定され、前記防振部材を介して前記電力機器が支持されたことが好ましい。
【0011】
防振部材を介し電力機器を支持することにより、通電中の電力機器が発生させる振動を防振部材が吸収する。よって、床や地盤等に設置したベース部材上に電力機器を設置した場合、電力機器の振動を床や地盤に伝達し難い構造とすることができ、電力機器を収容した建屋や床に電力機器の振動が伝わり難い構造を提供できる。
調整プレートに設けた複数組の組孔において、透孔どうしの間隔を異ならせたので、電
力機器に適用する防振部材のサイズが異なる場合であっても、複数組の組孔のうち、いずれかを用いて防振部材の取り付けが可能となる。よって、異なるサイズの防振部材を備えた多種多様な変圧器に適用が可能な簡易減震装置を提供できる。
【0012】
(3)本発明に係る(2)に記載の電力機器用の簡易減震装置において、前記調整プレートに長孔が形成され、前記支持基板に挿通孔が形成されるとともに、前記長孔と前記挿通孔に挿通した取付金具を介し前記調整プレートを前記支持基板に対し着脱自在に、かつ、前記長孔に対する前記取付金具の挿通位置の変更により前記支持基板に対する前記調整プレートの取付位置を変更自在に構成した構成を採用できる。
【0013】
防振部材を備えた既設の電力機器に対し、本形態の簡易減震装置を取り付ける場合、電力機器の規模によって防振部材のサイズが異なる。この場合、調整プレートに透孔間隔の異なる複数の組孔を設けておき、調整プレートの長孔に対する取付金具の挿通位置を変更して調整プレートの位置を調整し、これら組孔のいずれかを用いて防振部材の取り付けが可能となる。よって、多種多様な防振部材を備えた種々の電力機器に適用可能になるとともに、既設電力機器に取り付ける場合に取り付け作業が確実にできる簡易減震装置を提供できる。
【0014】
(4)本発明に係る電力機器用の簡易減震装置において、前記防振部材がゴムまたはコイルバネからなる弾性部材と、前記弾性部材の底部に装着され前記弾性部材の両側方に突出する突出部を備えた底板を具備し、前記両方の突出部に透孔が形成されるとともに、前記調整プレートに形成した複数の組孔のいずれかに、前記両方の突出部に形成した透孔が位置合わせ自在に形成されたことが好ましい。
【0015】
防振部材を備えた既設の電力機器に対し、本形態の簡易減震装置を取り付ける場合、電力機器の規模によって防振部材のサイズが異なり、防振部材を支持する底板の透孔間隔が異なる。この場合、調整プレートに透孔間隔の異なる複数の組孔を設けておき、調整プレートの位置を調整し、これら組孔のいずれかを用いて底板の透孔に位置合わせが可能となる。よって、多種多様な防振部材を備えた種々の電力機器に適用可能になるとともに、既設電力機器に取り付ける場合に取り付け作業が容易にできる簡易減震装置を提供できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電力機器用の簡易減震装置は、電力機器の脚部を支持した上に、電力機器の底部又は脚部を緩衝部材により支持した構造となるので、電力機器に地震などにより大きな揺れが加わった場合、揺れの変位量を小さく抑えることができる。その結果、大きな地震が発生した場合であっても電力機器に接続されている配線の断線を防止でき、配線接続部の断裂などを防止できる簡易減震装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の簡易減震装置を適用した変圧器を示す斜視図。
【
図2】同簡易減震装置を示すもので、
図2(a)は正面図、
図2(b)は側面図、
図2(c)は平面図、
図2(d)は斜視図。
【
図3】同簡易減震装置において調整プレートを外した状態で防振部材とともに変圧器に適用した場合の取付構造を示す斜視図。
【
図7】同取付構造において防振部材と脚部を接続して固定した後の状態を示す斜視図。
【
図8】同簡易減震装置において調整プレートを利用した状態で小型の防振部材とともに電力機器に適用した場合の第1の例を示す斜視図。
【
図9】同簡易減震装置において調整プレートを利用した状態で中型の防振部材とともに電力機器に適用した場合の第2の例を示す斜視図。
【
図10】同簡易減震装置において調整プレートを利用した状態で大型の防振部材とともに電力機器に適用した場合の第3の例を示す斜視図。
【
図11】本発明に係る第2実施形態の簡易減震装置を適用した変圧器を示す斜視図。
【
図12】同簡易減震装置を変圧器に適用した取付構造を示す部分拡大斜視図。
【
図15】
図12に示すように変圧器に適用した簡易減震装置の分解斜視図。
【
図16】従来の一般的な電力機器の設置構造を示すもので、
図16(a)は側面図、
図16(b)は地震時の電力機器の揺れを示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1実施形態に係る電力機器用の簡易減震装置について、
図1~
図10を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。
【0019】
「第1実施形態」
図1は、本発明の第1実施形態に係る簡易減震装置Aを適用した変圧器(電力機器)1の設置構造を示す。変圧器1を設置する建屋の床あるいはキャビネットなどの収容庫の床に溝形鋼からなる2本のベース部材2が所定の間隔をあけて水平かつ平行に設置され、それらの上に変圧器1が設置されている。
図1に示す例において、ベース部材2は、平板状のウエブ2Aの幅方向両側にフランジ2Bが形成された断面コ字型の所定長さの溝形鋼からなる。ベース部材2は、ウエブ2Aを水平に、フランジ2B、2Bを下向きとして床上や地盤上に設置されている。
【0020】
なお、
図1では示されていないが、変圧器1が設置される環境は、建屋の任意の階または屋上階もしくは地下室など、あるいは、屋外の地盤にコンクリートなどで土台や床を構築して変圧器の収容庫やキャビネットなどを構成する場合など様々である。
何れの設置環境である場合も変圧器1は鋼材などからなる複数のベース部材に支持された状態でベース部材上に固定される。
図1では設置場所は描いておらず、ベース部材2、2の上に変圧器1が設置されている状態のみを描いている。なお、ベース部材2は、コ字型鋼材からなるもの、L型鋼材からなるもの、H型鋼材からなるもの等、特に制限されるものではない。
【0021】
2本のベース部材2の上に設置されているのは、4つの側壁1Aを有する略直方体状の背の高い変圧器1であり、
図1の変圧器1では4つの縦長の側壁1Aの上方に設けられている配線部分などは記載を略し、側壁1Aの上に平型の天井部1Bが存在している形状のみを略図として示している。変圧器1は、電力会社から供給された6600V等の高電圧に対し内部に設けた電磁誘導コイルを利用し、100Vあるいは200V等に降圧するための電力機器である。
【0022】
図1に示す変圧器1は、2本のベース部材2、2に跨がることができる程度の横幅を有する大きさであり、変圧器1の底部にはベース部材2の上方にベース部材2の長さ方向に沿うように鋼材からなる脚部3が取り付けられている。脚部3は底板3Aと側板3BからなるL型鋼材からなり、脚部3においてベース部材2の長さ方向に沿う長さは、変圧器の同方向に沿う横幅と同等の長さにより形成されている。脚部3、3の長さ方向一端側の端部3Dは変圧器1の側方に若干突出され、他側の端部は変圧器1の他側の底部下方に配置されている。これら脚部3の端部3Dとベース部材2の間に以下に説明する簡易減震装置Aが取り付けられている。
図1の例では脚部3、3の両端側に簡易減震装置Aが取り付けられているので、変圧器1は4個の簡易減衰装置Aを介しベース部材2、2に支持されている。
【0023】
簡易減震装置Aは、ベース部材2のウエブ2A上に設置されている基台フレーム5と、基台フレーム5の上に溶接などにより一体化されている支持基板6と、支持基板6の端部上に立設されているロッド状の緩衝部材7と、支持基板6の上面に取り付けられた円板状の調整プレート8を有する。
【0024】
基台フレーム5は、
図1、
図2に示すような短冊板状の平板部5Aと平板部5Aの幅方向両側(平板部5Aの長さ方向に直交する方向に沿う幅方向両側)に立設されたフランジ状の側板5Bからなるコ字状の溝形鋼からなる。平板部5Aの長さ方向一端側よりの位置であって、平板部5Aの幅方向中央部に貫通孔5aが形成されている(
図2(d)参照)。基台フレーム5の平板部5Aは、側板5Bを上向きとしてウエブ2Aの上面幅方向中央に沿うように配置され、ウエブ2Aの幅方向中央部に形成されている貫通孔2aと平板部5Aの貫通孔5aが位置合わせされている(
図6参照)。基台フレーム5は、ウエブ2Aの貫通孔2aと平板部5Aの貫通孔5aを挿通する固定ボルト(固定金具)9と該固定ボルト9に螺合されるナット(固定金具)9Aによりベース部材2に固定されている(
図4参照)。
なお、
図4、
図6は後に説明する簡易減震装置Aの他の使用形態を示す図であるが、基台フレーム5とその他主要部の構造は同一であるため、以下の説明について適宜
図4、
図6等を参照しつつ説明する。
【0025】
支持基板6は、
図2(a)、(b)、(d)に示す如く、基台フレーム5の上を覆うように一体化された鋼板製の基板本体6Aと基台フレーム5の長さ方向他端側(
図2(b)の左側、
図2(d)の奥側)を上面側から側面側にかけて覆うように基板本体6Aの一端側から延出された側板部6Bを有する。側板部6Bは基板本体6Aと同一の厚さに形成され、基板本体6Aと側板部6Bの境界部分の内側には厚肉部6Eが形成され、厚肉部6Eにより境界部分が補強されている。
基板本体6Aは基台フレーム5の幅に対し、2倍程度の横幅を有する平面視略長方形状の鋼板からなり、基台フレーム5における側板5Bの先端側に対し溶接などの接合手段により一体化されている。支持基板6は、基台フレーム5をウエブ2Aの上面に沿わせて固定した場合、ほぼ水平向きに設置される。基板本体6Aにおいて基台フレーム5の長さ方向一端側に近い位置に挿通孔6aが形成されている(
図6参照)。挿通孔6aは基台フレーム5の長さ方向一端側幅方向中央に対応する位置に形成され、挿通孔6aは基台フレーム5における側板5B、5Bの間隔よりも若干内径の小さな丸孔状に形成されている。
【0026】
図6にも示すように基板本体6Aの上面において挿通孔6aを挟む両側位置にボルト螺合用のねじ孔からなる取付孔6b、6bが形成されている。取付孔6b、6bの形成位置は挿通孔6aの中心を挿通孔6aの両側から挟む位置であって、基板本体6Aのコーナー部分から若干内側よりの位置に形成されている。
基板本体6Aにおいて、側板部6Bを形成したコーナー側の一部であって、基板本体6Aのコーナー端部より内側位置にボルト螺合用のねじ孔からなる取付孔6c、6cが形成されている。2つの取付孔6cの一方には、取付孔6cに螺合するとともに取付孔6cを上下に挿通した支持ボルト7Aが螺合されている。支持ボルト7Aの上端部には支持ボルト7Aの軸径より4~6倍程度大きな外径を有する円板状のヘッド部7Bが固定され、このヘッド部7Bの上面にゴムなどの弾性体からなる円板状の緩衝層7Cが固定されている。また、取付孔6cを貫通して基板本体6Aの下方に突出した支持ボルト7Aの下端側には、ナット7Dが螺合されている。
本実施形態において、支持ボルト7Aとヘッド部7Bと緩衝層7Cとナット7Dを備えて緩衝部材7が構成されている。
【0027】
調整プレート8は、基板本体6Aの幅(基台フレーム5の長さ方向に直交する方向の幅)より若干小さい直径を有する円板状の鋼板からなる。調整プレート8の外周縁より若干内側の部分には、円弧状の長孔8a、8aが調整プレート8の中心をその両側から挟む対象位置に形成されている。長孔8aは、円板状の調整プレート8の表面において、20~40°程度の円周角を有する円弧状に形成されている。調整プレート8の中心にはボルト挿通用の中心孔8bが形成されている。
【0028】
調整プレート8において、長孔8a、8aが形成されていない領域であって、調整プレート8の中心を通過する
図2(c)に示す第1の中心線L
1に沿う位置であり、中心孔8bから等しい第1の距離離れた位置に、ねじ孔型の固定孔8cと固定孔8dが形成されている。これらの固定孔8cと固定孔8dにより、2個1組の固定孔からなる第1の組孔8eが構成されている。また、調整プレート8において、長孔8a、8aが形成されていない領域であって、調整プレート8の中心を通過する第2の直径L
2に沿う位置であり、中心孔8bから等しい第2の距離離れた位置にねじ孔型の固定孔8fと固定孔8gが形成されている。これらの固定孔8fと固定孔8gにより、2個1組の固定孔からなる第2の組孔8hが構成されている。
本実施形態では、第1の中心線L
1に沿う固定孔8c、8d間の第1の距離よりも、第2の中心線L
2に沿う固定孔8f、8d間の第2の距離の方が若干長く形成されている。また、第1の中心線L
1と第2の中心線L
2はいずれも調整プレート8の中心(中心孔8bの中心)を通過し、30°程度の角度で交差されている。本実施形態では、第1の組孔8eと第2の組孔8hを合わせて2組の組孔が調整プレート8に設けられている。
【0029】
調整プレート8は、その中心を支持基板6に設けた挿通孔6aの中心と位置合わせして支持基板6上に設置され、この状態で支持基板6の取付孔6b、6bと調整プレート8の長孔8a、8aが位置合わせされている。調整プレート8は、位置合わせされた各長孔8aを挿通して取付孔6bに螺合された取付ボルト(取付金具)12により支持基板6上に固定されている。
【0030】
以上説明のように構成された簡易減震装置Aは、
図1に示すように、脚部3の端部3Dとベース部材2との間に組み込まれ、変圧器1の底部1Dが4つの簡易減震装置Aを介しベース部材2、2により支持されている。
より詳細には、
図6にも示されるように、基台フレーム5は、ウエブ2Aの貫通孔2aと平板部5Aの貫通孔5aを挿通する固定ボルト9と該固定ボルト9に螺合されるナット9A(
図4参照)によりベース部材2に固定されている。また、変圧器1の脚部3の端部3Dが
図1に示すように調整プレート8の上面中央部に載置され、端部3Dに形成されている透孔3eと調整プレート8の中心孔8bを貫通した固定ボルト10とこの固定ボルト10に螺合された図示略の固定ナットにより変圧器1がベース部材2に支持され、固定されている。また、簡易減震装置Aの緩衝部材7はその上端の緩衝層7Cを変圧器1の底面に当接(接触)させた状態で変圧器1を弾性支持している。
【0031】
変圧器1は、電力会社から供給された6600V等の高電圧に対し、内部に設けた電磁誘導コイルなどを利用し、100Vあるいは200V等の電圧に降圧するための電力機器である。
地震の震動により変圧器1に大きな横揺れを生じようとした場合、ベース部材2、2が変圧器1を支持すると同時に、緩衝部材7が緩衝層7Cを介し変圧器1の底部1Dを弾性支持しているので、変圧器1の横揺れを抑制できる。
【0032】
地震の震動により、変圧器1を設置している地盤、建屋、床、収納庫、キャビネットなども揺れるので、変圧器1を支持しているベース部材2、2にも地震動に応じて揺れが作用し、捻れなども生じる。この結果、変圧器1を4つの簡易減震装置Aを介しベース部材2、2にボルト止めしているとしても、各ボルト止め部分が一様に同じ方向に揺れるわけではなく、ボルト止め部分が不均一に上下方向または左右方向に移動し、捻れや撓みを生じる。ここで、各緩衝部材7は、変圧器1をボルト止めした部分から水平方向に位置ずれした部分を弾性支持している。このため、各緩衝部材7は、変圧器1のボルト止めした部分と若干の位相ずれを有しつつ地震動により揺れたり、捻れたりしながら緩衝層7Cを介し変圧器1を弾性支持する。このため、地震動による変圧器1の横揺れを抑制することができる。
【0033】
図3~
図7は、先に説明した簡易減震装置Aを変圧器1に対し、防振部材13とともに適用する場合の実施形態を示す。防振部材13は、変圧器1の通常稼働に伴う振動を外部に伝達させないために設けられる。変圧器1の内部には図示しない降圧用の電磁誘導トランスが設けられており、電磁誘導トランスへの通電により変圧器1には振動が発生する。
図3~
図7に示す構成において、ベース部材2に対し基台フレーム5を固定する構成は先の実施形態と同等である。
図3~
図7に示す実施形態では、取付ボルト12を取り外して支持基板6上の調整プレート8が取り外され、代わりに、支持基板6上に変圧器用の防振部材13が取り付けられている。調整プレート8は、先に説明したように取付ボルト12により支持基板6に対し取り付けられているので、取付ボルト12の螺合を解除することにより支持基板6から容易に取り外すことができる。
防振部材13は、肉厚のリング状ゴムなどの弾性部材13Aと、この弾性部材13Aの底部に一体化された底板13Bと、弾性部材13Aの上部に一体化された天板13Cと、天板13Cの上面中央部から上方に突出されたボルト状の接続軸13Dを有している。
【0034】
底板13Bは、平面視長円形状の金属板からなり、底板13Bの両端部は弾性部材13Aの側方に所定長さ突出されている。この底板13Bの両端の突出部13eにはボルト挿通用の挿通孔13fが形成されている。底板13Bの両端部に形成されている挿通孔13f、13fの中心どうしの間隔は、支持基板6における取付孔6b、6bの中心どうしの間隔と同一に形成されている。底板13Bと天板13Cは弾性部材13Aの下面と上面に装着され、接着等の接合手段により固定されている。
なお、本実施形態では、1つの例としてリング状ゴムからなる弾性部材13Aを例示したが、弾性部材13Aは、コイルバネ(コイルスプリング)など、他の弾性体から構成されていても差し支えない。例えば、コイルスプリングの下面と上面に溶接などの方法により底板13Bと天板13Cを一体化した構造とすることができる。
【0035】
防振部材13は、底板13Bを支持基板6の上面に設置し、底板13Bの挿通孔13f、13fを支持基板6の取付孔6b、6bに位置合わせし、位置合わせした挿通孔13fを介し取付孔6bに取付ボルト12を螺合することで支持基板6上に固定されている。挿通孔13fは取付ボルト12を遊挿可能な内径に形成され、取付孔6bは取付ボルト12を螺合可能な内径に形成されている。
また、防振部材13の接続軸13Dはその上方の脚部3に形成されている透孔3eに挿通され、接続軸13Dの上端側にナット16を螺合することで
図7に示すように変圧器1の脚部3に接続されている。これらの構造により、変圧器1の脚部3が簡易減震装置Aを介しベース部材2に支持されている。
また、支持基板6に立設された支持ボルト7Aには高ナット17が螺合されている。高ナット17は支持基板6の上面に接するように支持ボルト7Aに螺合され、支持ボルト7Aの支持基板6に対する接合部分を補強している。
【0036】
図3~
図7に示す実施形態では、防振部材13を支持基板6上に設置したので、
図1、
図2に示す構成に対比し、脚部3の底板3Aと支持基板6との間隔が大きくされている。このため、
図3~
図7に示す構成では、
図1、
図2に示す構成に対比し、支持基板6の上に突出する支持ボルト7Aの長さが長くされている。
変圧器1が地震の震動により大きく揺れた場合、揺れの状態によっては変圧器1の底部が支持ボルト7Aの上端に相当大きな圧力を作用させ、場合によっては支持ボルト7Aの上端に変圧器の1の底部1Dが繰り返し大きな荷重を付加するおそれがある。このため、支持ボルト7Aの下端側に高ナット17を螺合し、支持ボルト7Aの接合部分を補強することが望ましい。高ナット17を設けることで、支持ボルト7Aを補強し、大きな地震の際に作用する荷重による支持ボルト7Aの座屈や折れ曲りなどを抑制することができる。
【0037】
ところで、一般に、変圧器1の規模や形状は大小様々であり、変圧器1の規模や形状に合わせて複数種類の防振部材が適用されている。
図8、
図9、
図10に大きさの異なる防振部材に適用した場合の簡易減震装置Aの適用例を示す。
図8は小型の防振部材18を適用した場合の構成例を示し、
図9は中型の防振部材19を適用した場合の構成例を示し、
図10は大型の防振部材13を適用した場合の構成例を示す。
図10は、
図3~
図7を基に先に示した実施形態と同等構造であり、調整プレート8を取り外して大型の防振部材13を支持基板6に直接固定した場合の構造例を示している。
図10に示す構造では、支持ボルト7Aに高ナット17に代えて背の低いナット21が螺合されている点のみが異なる。
図10に示すように大型の防振部材13を設ける場合、底板13Bにおける挿通孔13f、13fの間隔aが支持基板6の取付孔6b、6bの間隔と同一であるので、調整プレート8を取り外した支持基板6に防振部材13を直接取り付けることができる。
【0038】
これに対し、
図8に示す小型の防振部材18と
図9に示す中型の防振部材19は、大型の防振部材13と構造は類似であるが、各部のサイズが小さく形成されている。
防振部材18は、弾性部材18Aと底板18Bと天板18Cと接続軸13Dを備えている。弾性部材18Aは、防振部材13の弾性部材13Aと対比し同等の肉厚を有するが、外径は半分程度に形成されている。防振部材18の底板18Bと天板18Cは、防振部材13の底板13Bと天板13Cよりそれぞれ小さく形成されている。ただし、防振部材18の接続軸18Dの長さと径は防振部材13の接続軸13Dと同等である。
防振部材19は、弾性部材19Aと底板19Bと天板19Cと接続軸19Dを備えている。弾性部材19Aは、防振部材13の弾性部材13Aと対比し同等の肉厚を有するが、外径は70%程度に形成されている。防振部材19の底板19Bと天板19Cは、防振部材13の底板13Bと天板13Cよりもそれぞれ若干小さく形成されている。ただし、接続軸19Dの長さと径は接続軸13Dと同等である。
【0039】
上述の構成のため、中型の防振部材19において透孔19f、19fの中心間隔bは、大型の防振部材13の挿通孔13f、13fの中心間隔aよりも小さい。また、小型の防振部材18において透孔18f、18fの中心間隔cは、中型の防振部材19の中心間隔bよりも小さく形成されている。
このようにサイズの異なる防振部材13、18、19の何れに対しても簡易減震装置Aを適用することができる。
【0040】
簡易減震装置Aは、大型の防振部材13を取り付ける場合、
図3~
図7あるいは
図10に示す構造のように調整プレート8を取り外して取付孔6b、6bを用い、防振部材13を取り付ける。
簡易減震装置Aは、中型の防振部材19を取り付ける場合、
図9に示すように調整プレート8を支持基板6上に固定し、調整プレート8に形成した第2の組孔8hの固定孔8fと固定孔8gを用いて防振部材19を固定することができる。即ち、防振部材19の底板19Bに形成した透孔19f、19fを固定孔8fと固定孔8gに位置合わせし、取付ボルト12、12をこれら固定孔8f、8gに螺合することで防振部材19を調整プレート8に固定できる。
【0041】
簡易減震装置Aは、小型の防振部材18を適用する場合、
図8に示すように調整プレート8を支持基板6上に固定し、調整プレート8に形成した第1の組孔8eの固定孔8cと固定孔8dを用いて防振部材18を固定することができる。即ち、防振部材18の底板18Bに形成した透孔18f、18fを固定孔8cと固定孔8dに位置合わせし、取付ボルト12、12をこれら固定孔8c、8dに螺合することで防振部材18を調整プレート8に固定できる。
【0042】
なお、調整プレート8の下方に設置されている基台フレーム5は、平板部5Aと側板5B、5Bを有する溝形鋼からなる。このため、調整プレート8の固定孔8c、8d、8f、8gのいずれかに取付ボルト12が螺合され、取付ボルト12の先端部が調整プレート8の下方に突出される場合、取付ボルト12と側板5B、5Bの干渉を回避する必要がある。調整プレート8は、円弧状の長孔8aを挿通して取付孔6bに螺合された取付ボルト12を介し支持基板6上に固定されている。これら取付ボルト12を緩めることで調整プレート8を支持基板6上で所定角度回転させることができる。
【0043】
調整プレート8の回転角度を
図8に示すように調整することにより、第1の組孔8eの固定孔8cと固定孔8dを基台フレーム5の側板5B、5Bの中間位置に位置合わせすることができる。この状態で調整プレート8に形成した第1の組孔8eの固定孔8cと固定孔8dを用いて防振部材18を固定することができる。
図8の構造では、取付ボルト12の下端が固定孔8c、8dを挿通して支持基板6の下方に突出されるが、取付ボルト12の下端は支持基板6の挿通孔6aを通過し、基台フレーム5の側板5B、5Bの間に位置する。
【0044】
調整プレート8の回転角度を
図9に示すように調整することにより、第2の組孔8hの固定孔8fと固定孔8gを基台フレーム5の側板5B、5Bの中間位置に位置合わせすることができる。この状態で調整プレート8に形成した第2の組孔8hの固定孔8fと固定孔8gを用いて防振部材18を固定することができる。
図9の構造では、取付ボルト12の下端が固定孔8f、8gを挿通して支持基板6の下方に突出されるが、取付ボルト12の下端は支持基板6の挿通孔6aを通過し、基台フレーム5の側板5B、5Bの間に位置する。
図8に示す調整プレート8の取付位置と
図9に示す調整プレート9の取付位置の変更は、長孔8aに対する取付ボルト12の位置を変更するように調整プレート8を回転させることで容易に変更することができる。
【0045】
図8に示すように、手前側の長孔8aの奥側に手前側の取付ボルト12が位置するように、奥側の長孔8aの手前側に奥側の取付ボルト12が位置するように調整プレート8を配置すると、第1の組孔8eの固定孔8c、8dは
図2(c)、(d)にも示すように、基台フレーム5の側板5B、5B間の中央位置に並ぶようになっている。
図9に示すように、手前側の長孔8aの手前側に手前側の取付ボルト12が位置するように、奥側の長孔8aの奥側に奥側の取付ボルト12が位置するように調整プレート8を配置すると、第2の組孔8hの固定孔8f、8gは基台フレーム5の側板5B、5B間の中央位置に並ぶようになっている。
このため、
図8に示すように小型の防振部材18を取り付けた場合であっても、
図9に示す中型の防振部材19を取り付けた場合であっても、各防振部材18、19の長さ方向を基台フレーム5の長さ方向に揃えて正確に取り付けることができる。
【0046】
本実施形態の簡易減震装置Aは、
図8~
図10に示すように大きさの異なる3種の防振部材18、19、13の何れに対しても対応することができる。このため、簡易減震装置Aは、防振部材の大きさが異なる種々のサイズの変圧器に合わせた使い回しができるので、汎用性に優れた特徴を有する。
なお、ここまで説明した実施形態に示した第1の組孔8e、第2の組孔8hは1つの例であって、調整プレート8に設ける組孔の数は任意である。調整プレート8の大きさにもよるが、第3の組孔、第4の組孔を更に設けても良い。
調整プレート8に設ける組孔の数を増やした場合は、調整プレート8をより大きな角度回転できるように、円弧状の長孔8aをより長く形成し、組孔の数に併せて調整プレート8の回転角度を変更して各透孔の位置合わせができるように構成すればよい。
【0047】
「荷重計算」
一例として、油入変圧器は75kVA~500kVAの定格容量のものが広く用いられている。この中で500kVAの油入変圧器について検討すると、外形寸法:1150mm(X)×680mm(Y)×1290mm(Z)、質量1810kg程度と見積もることができる。この変圧器に対し水平地震度2Gの地震が作用する場合を考慮する。この変圧器の場合、
図11(a)に示す変圧器において、据付寸法Xs:600mm、Ys:600mmとする。
【0048】
変圧器の重心Gに作用する荷重Maは以下のように計算できる。
F=Ma=1810kg×2G=3620kg
転倒モーメントFにより変圧器脚部に作用する荷重Tは重心Gの高さをh
Gとすると以下のように計算できる。
T=(F×h
G)/Xs={3620kg×(1290mm/2)}/600mm
≒3900kg
変圧器の脚部により
図1に示すように4箇所支持する場合、片側2箇所で荷重を受けるため、1箇所の脚部に作用する荷重Tは以下の式のように計算できる。
T=(3900kg/2)=1950kg
【0049】
安全余裕を考慮すると、2000kgと推定できる。この計算結果から、簡易減震装置Aにおいて、基板本体6Aの側板部6B近くのコーナー部分に2000kgの荷重をかけた場合、基板本体6Aに問題を生じなければ、基板本体6Aは強度的には問題がないことがわかる。
図2(c)に示す平面図において鋼材製の支持基板の幅185mm×奥行170mm、高さ55mmとして3Dモデル計算により「Dassault Systemes SolidWorks Corporationより提供される機械設計用途の3次元・CADソフトウェアを用いて静解析を行った。
【0050】
静解析の結果、基板本体6Aの側板部6B近くのコーナー部分に最大192N/mm2の応力が作用し、コーナー部分変位の最大値は0.07mmとなることがわかった。この静解析の結果から、簡易減震装置Aの支持基板6は500kVAの油入変圧器に適用した場合、2Gの水平地震度が作用しても問題がないことがわかる。
【0051】
「第1の地震応答計算」
上述の500kVA変圧器に対し、減震を行わない場合と、本願出願人が先に特開2013-211510号公報において特許出願している減震装置(TTR装置)と、
図3~
図7に示す構造の簡易減震装置の地震応答計算を行った。
JMA神戸(1995年兵庫県南部地震における神戸中央区中山手強震波形)においてEW成分の加速度617Gal、UD成分の加速度332Galとする。この地震波が変圧器に作用した場合、変圧器天井部に設けられる2次端子部における変位に関し、MathWorks社の数値解析ソフトウェアを用いて動解析した。
この結果、簡易減震装置を設けていない場合、変圧器の長手方向EW成分変位:43.8mm、長手方向UD成分変位9.9mm、変圧器の短手方向EW成分変位:63.3mm、短手方向UD成分変位11.9mmとなる。
【0052】
これに対し、特開2013-211510号明細書において特許出願している減震装置(TTR装置)を設けた場合、変圧器の長手方向EW成分変位:7.6mm、長手方向UD成分変位2.0mm、変圧器の短手方向EW成分変位:7.6mm、短手方向UD成分変位1.9mmとなる。本発明の簡易減震装置は、減震装置(TTR装置)の50%程度の減震効果を発揮できることがわかる。
【0053】
これに対し、
図3~
図7に示す構成の簡易減震装置を設けた場合、変圧器の長手方向EW成分変位:21.0mm、長手方向UD成分変位9.9mm、変圧器の短手方向EW成分変位:29.3mm、長手方向UD成分変位9.9mm、短手方向UD成分変位8.6mm、となる。
【0054】
本発明に係る簡易減震装置を設けた場合、減震装置を設けていない場合に比較し、2次端子部における変位量を50%程度に抑えることができた。特開2013-211510合明細書において特許出願している減震装置(TTR装置)は、2次端子部における変位量を10%程度に抑えることができる優れた性能を示すが、遙かに簡易な構造の本発明に係る簡易減震装置であっても、確実な減震効果を得られることがわかる。
【0055】
「第2の地震応答計算」
上述のサイズの500kVA変圧器に対し、減震を行わない場合と、本願出願人が先に特開2013-211510号明細書において特許出願している減震装置(TTR装置)と、
図3~
図7に示す構造の減震装置の地震応答計算を行った。
2011年東北地方太平洋地震における3.11芳賀波において、EW成分の加速度1197Gal、UD成分の加速度808Galとする。この地震波が変圧器に作用した場合、変圧器天井部に設けられる2字端子部における変位をMathWorks社の数値解析ソフトウェアを用いて動解析した。
【0056】
この結果、簡易減震装置を設けていない場合、変圧器の長手方向EW成分変位:55.6mm、長手方向UD成分加速度:9065Gal、変位14.6mm、変圧器の短手方向EW成分加速度:12659Gal、変位:82.7mm、短手方向UD成分加速度:5855Gal、変位16.9mmとなる。
【0057】
これに対し、特開2013-211510号明細書において特許出願している減震装置(TTR装置)を設けた場合、変圧器の長手方向EW成分変位:15.0mm、長手方向UD成分変位3.7mm、変圧器の短手方向EW成分変位:15.0mm、短手方向UD成分変位3.7mmとなる。減震装置(TTR装置)を設けた場合、大きな減震効果を発揮できることがわかる。
【0058】
これに対し、
図3~
図7に示す構成の簡易減震装置を設けた場合、変圧器の長手方向EW成分変位:34.0mm、長手方向UD成分変位17.6mm、変圧器の短手方向EW成分変位:69.8mm、短手方向UD成分変位19.4mmとなる。
本発明に係る簡易減震装置を設けた場合、減震装置を設けていない場合に比較し、2次端子部における変位量を30~40%程度に抑えることができた。
【0059】
特開2013-211510号明細書において特許出願している減震装置(TTR装置)は、2次端子部における変位量を10%程度に抑えることができる優れた性能を示すが、遙かに簡易な構造の本発明に係る簡易減震装置であっても、確実な減震効果を得られることがわかる。
【0060】
「第2実施形態」
図11は、本発明の第2実施形態に係る簡易減震装置Bを適用した変圧器(電力機器)1の設置構造を示す。変圧器1を設置する建屋の床あるいはキャビネットなどの収容庫の床に溝形鋼からなる2本のベース部材2が所定の間隔をあけて水平かつ平行に設置され、それらの上に変圧器1が設置されている。先の第1実施形態において説明した通り変圧器1は、電力会社から供給された6600V等の高電圧に対し内部に設けた電磁誘導コイルを利用し、100Vあるいは200V等に降圧するための電力機器である。
図11に示す実施形態では脚部3、3の両端側に簡易減震装置Bが取り付けられ、変圧器1は4個の簡易減衰装置Bを介しベース部材2、2に支持されている。
【0061】
簡易減震装置Bは、ベース部材2のウエブ2A上に設置されている基台フレーム25と、基台フレーム25の上に溶接などにより一体化されている支持基板26と、支持基板26の端部上に立設されているロッド状の緩衝部材27と、支持基板26の上面に取り付けられた矩形板状の調整プレート28を有する。
【0062】
基台フレーム25は、
図11~
図15に示すような短冊板状の平板部25Aと平板部25Aの幅方向両側に立設されたフランジ状の側板25Bからなるコ字状の溝形鋼からなる。平板部25Aの長さ方向一端側よりの位置であって、平板部25Aの幅方向中央に位置するようにスリット部25aが形成されている(
図12、
図13参照)。基台フレーム25の平板部25Aは、側板25Bを上向きとしてウエブ2Aの上面幅方向中央に沿うように配置され、ウエブ2Aの幅方向中央部に形成されている貫通孔2aと平板部25Aのスリット部25aが位置合わせされる。基台フレーム25は、ウエブ2Aの貫通孔2aと平板部25Aのスリット部25aを挿通する固定ボルト(固定金具)29と該固定ボルト29に螺合される図示略のナット(固定金具)によりベース部材2に固定されている(
図12、
図15参照)。
【0063】
基台フレーム25の側板25B、25Bを
図12~
図15に示すように上向きとした状態で側板25B、25Bの先端側に支持基板26が溶接等の接合方法により一体化されている。基台フレーム25の長さ方向一端側にその端部を延長するようにL字鋼片からなる延長フレーム25Dが設けられ、延長フレーム25Dが基台フレーム25の端部と支持基板26の端部に沿うように溶接などの接合方法により一体化されている。
図12~
図14に示すように延長フレーム25Dの底面は平板部25Aの底面と面一に形成されているので、
図12に示すように基台フレーム25をウエブ2Aの上面に設置した場合に延長フレーム25Dの底面もウエブ2Aの上面に接する。これにより、基台フレーム25の取付安定性が向上する。
基台フレーム25の幅方向に沿う支持基板26の長さは、基台フレーム25の幅よりも若干長く、ベース部材2の幅と同程度の長さに形成されている。
【0064】
支持基板26の上には支持基板26の平面視形状と同等形状の調整プレート28が設置され、支持基板26と調整プレート28は、これらの4つのコーナー部分を貫通するボルト30により一体化されている。調整プレート28のコーナー部分にはねじ孔28aが形成され、これらのねじ孔28aに支持基板26のコーナー部分の貫通孔26aを貫通したボルト30を螺合することで支持基板26と調整プレート28が重ねられた状態で一体化されている。支持基板26の中央部には透孔26bが形成され、この透孔26bを介し固定ボルト29がウエブ2Aの貫通孔2aに挿通される。
【0065】
調整プレート28の長さ方向両端部かつ調整プレート28の幅方向中央部には、第1実施形態において用いた防振部材13、18、19の何れかを取り付けるためのねじ孔28cが形成されている。防振部材13を取り付ける場合は、防振部材13の底板13Bに形成されている透孔13fを挿通してねじ孔28cに取付ボルト12を螺合することにより防振部材13が取り付けられる。防振部材18を取り付ける場合は底板18Bに形成されている透孔18fを挿通してねじ孔28cに取付ボルト12を螺合することにより防振部材18が取り付けられる。防振部材19を取り付ける場合は底板19Bに形成されている透孔19fを挿通してねじ孔28cに取付ボルト12を螺合することにより防振部材19が取り付けられる。
防振部材13、18、19の各透孔間のサイズは異なるので、防振部材13、18、19に合わせた長さ(幅)の調整プレート28を用意し、取付替えることで調整プレート28の交換により何れのサイズの防振部材13、18、19であっても対応することができる。
【0066】
延長フレーム25Dの上面側中央部にねじ筒35が一体化され、このねじ筒35の内周に形成されているねじ孔に螺合するように第1実施形態と同様の支持ボルト7Aが螺合されている。支持ボルト7Aはヘッド部7Bと緩衝層7Cを備え、ねじ筒35から上方に突出されている。また、支持ボルト7Aには補強用のナット36が螺合されている。
第2実施形態においては、ねじ筒35と支持ボルト7Aとヘッド部7Bと緩衝層7Cを備えて緩衝部材7が構成される。また、延長フレーム25Dの上面にはねじ筒35を挟む位置に2本の補強リブ37が溶接等により一体化され、延長フレームが補強されている。
【0067】
以上説明のように構成された簡易減震装置Bは、
図11に示すように、脚部3の端部3Dとベース部材2との間に取り付けられ、変圧器1の底部1Dが4つの簡易減震装置Bを介しベース部材2、2により支持されている。
より詳細には、
図12、
図15に示されるように、基台フレーム25が、ウエブ2Aの貫通孔2aと平板部25Aのスリット部25aを挿通する固定ボルト9と該固定ボルト9に螺合される図示略のナットによりベース部材2に固定されている。また、変圧器1の脚部3の端部3Dが
図11に示すように調整プレート28の上面中央部に防振部材13を介し支持されている。防振部材13は接続軸13Dを脚部3の底板3Aに形成されている。透孔3eに挿通し、この接続軸13Dにナット16を螺合することで
図11、
図12に示すように変圧器1の脚部3に接続されている。
また、簡易減震装置Bの緩衝部材7はその上端の緩衝層7Cを脚部3における底板3Aの底面に当接(接触)させた状態で変圧器1を弾性支持している。
【0068】
簡易減震装置Bを設けた構造において、地震の震動により変圧器1に大きな横揺れを生じようとした場合、ベース部材2、2が変圧器1を支持すると同時に、緩衝部材7が緩衝層7Cを介し変圧器1の底部1Dを弾性支持しているので、第1実施形態の構造と同様に変圧器1の横揺れを抑制できる。
【0069】
地震の震動により、変圧器1を設置している地盤、建屋、床、収納庫、キャビネットなども揺れるので、変圧器1を支持しているベース部材2、2にも地震動に応じて揺れが作用し、捻れなども生じる。この結果、変圧器1を4つの簡易減震装置Bを介しベース部材2、2にボルト止めしているとしても、各ボルト止め部分が一様に同じ方向に揺れるわけではなく、ボルト止め部分が不均一に上下方向または左右方向に移動し、捻れや撓みを生じる。ここで、各簡易減震装置Bの緩衝部材7は、変圧器1をボルト止めした部分から脚部3に沿って水平方向に位置ずれした部分を弾性支持している。このため、各緩衝部材7は、変圧器1のボルト止めした部分と若干の位相ずれを有しつつ地震動により揺れたり、捻れたりしながら緩衝層7Cを介し変圧器1を弾性支持する。このため、地震動による変圧器1の横揺れを抑制することができる。
【0070】
図11~
図15に示す構造の簡易減震装置Bでは長さの異なる複数の調整プレート28を用意しておき、調整プレート28の使い分けを行うならば、異なる大きさの防振部材18、19のいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
A、B…簡易減震装置、1…変圧器(電力機器)、2…ベース部材、3…脚部、3A…底板、3B…側板、3e…透孔、5…基台フレーム、6…支持基板、7…緩衝部材、7A…支持ボルト、7B…ヘッド部、7C…緩衝層、7D…ナット、8…調整プレート、8a…長孔、8c、8d…固定孔、8e…第1の組孔、8f、8g…固定孔、8h…第2の組孔、9…固定ボルト(固定金具)、9A…ナット(固定金具)、12…取付ボルト(取付金具)、13…防振部材、13A…弾性部材、13B…底板、13C…天板、13D…接続軸。