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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】端子台
(51)【国際特許分類】
   H01R 9/22 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
H01R9/22
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020076000
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021174623
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】八木 徳之
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-199191(JP,A)
【文献】特開2011-081990(JP,A)
【文献】特開2013-058332(JP,A)
【文献】特開2011-065815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座と、前記台座に取り付けられた端子と、を有し、前記端子の固定面に相手側端子が重ね合わされて締結される端子台であって、
前記端子には、前記相手側端子が側方から近接されて配置可能とされ、
前記端子は、前記相手側端子が近接される近接側端部に、前記相手側端子の近接方向へ向かって次第に前記固定面側へ傾斜するガイド面を有し、
前記台座には、前記端子の前記固定面より低く、かつ前記端子の前記近接側端部の先端縁よりも高い保護壁が、前記端子における前記近接側端部の幅方向にわたって設けられており
前記端子の前記近接側端部は、前記固定面と反対側へ曲げられた曲げ部を有し、
前記台座は、複数の側壁によって区画されて溝状に形成された取付部と、前記曲げ部の先端縁が収容される凹部とを有し、
前記端子が前記取付部の上面の取付面に載置されて前記曲げ部の先端縁が前記凹部に収容され、且つ、前記相手側端子が前記端子の前記固定面に重ね合わされていない状態では、前記曲げ部の全体が上方に露出している、
ことを特徴とする端子台。
【請求項2】
前記保護壁は、前記相手側端子の近接方向へ向かって次第に前記固定面側へ傾斜するテーパ部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の端子台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子台に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のように、相手側端子が上面に締結される端子を備えた端子台として、上前角部が上面から前面にかけて斜めに切り落とされた一対のガイド壁が突設され、端子の幅方向の中央部分の端子先端がガイド壁の間に隠れるように、上面から前面に沿って湾曲しているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-58332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
端子台の端子の上面に相手側端子をボルト・ナットで締結する構造において、端子台に対して相手側端子を側方から配設する場合、端子台の端子の下に相手側端子が潜り込んだり、端子の端面に相手側端子が突き当てられて変形するおそれがある。
【0005】
上記特許文献1に記載の端子台によれば、端子の幅方向の中央部分が湾曲しつつガイド壁の間に入り込んでいるので、端子の裏側への相手側端子の潜り込を抑制し、また、相手側端子を適正な方向へ導いて端子の端面への突き当たりを抑制することが可能である。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の端子台は、端子台本体に一対のガイド壁を突出させ、このガイド壁の間隔に合わせて端子の幅方向の中央に幅狭な部分を形成して湾曲させてガイド壁の間に挿し込むという複雑構造を要する。このため、端子台のコストが嵩んでしまう。また、この端子台は、端子の中央の幅狭な部分の両側の端面がガイド壁よりも上方に配置されて前方側に露出されている。したがって、端子の幅狭な部分の両側で端面が露出した部分において、側方から配設される相手側端子が、端子と台座との間に潜り込んだり、突き当たるおそれがある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コストの嵩張りを抑えつつ、相手側端子を円滑に締結位置へ導いて締結させることが可能な端子台を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 台座と、前記台座に取り付けられた端子と、を有し、前記端子の固定面に相手側端子が重ね合わされて締結される端子台であって、
前記端子には、前記相手側端子が側方から近接されて配置可能とされ、
前記端子は、前記相手側端子が近接される近接側端部に、前記相手側端子の近接方向へ向かって次第に前記固定面側へ傾斜するガイド面を有し、
前記台座には、前記端子の前記固定面より低く、かつ前記端子の前記近接側端部の先端縁よりも高い保護壁が、前記端子における前記近接側端部の幅方向にわたって設けられており
前記端子の前記近接側端部は、前記固定面と反対側へ曲げられた曲げ部を有し、
前記台座は、複数の側壁によって区画されて溝状に形成された取付部と、前記曲げ部の先端縁が収容される凹部とを有し、
前記端子が前記取付部の取付面に載置されて前記曲げ部の先端縁が前記凹部に収容され、且つ、前記相手側端子が前記端子の前記固定面に重ね合わされていない状態では、前記曲げ部の全体が上方に露出している、ことを特徴とする端子台。
【0009】
上記(1)の構成の端子台によれば、端子の固定面に相手側端子を配置させて締結させることにより、相手側端子を端子に電気的に接続させることができる。ここで、台座には、端子の固定面より低く、かつ端子の近接側端部の先端縁よりも高い保護壁が、端子の近接側端部の幅方向にわたって設けられている。したがって、端子に対して相手側端子が側方から近接されて配置される場合に、相手側端子の高さ位置が端子よりも下方側であっても、相手側端子は、その先端が台座の保護壁に当接することとなる。したがって、相手側端子に面取り等を形成することによるコストアップを抑えつつ、端子における近接側端部に相手側端子が突き当たったり、端子と台座との間へ相手側端子が潜り込むような不具合を抑制し、端子を幅方向にわたって保護することができる。また、端子は、近接側端部にガイド面を有するので、保護壁を乗り越えた相手側端子をガイド面によって固定面の締結位置へ容易に導くことができる。
更に上記(1)の構成の端子台によれば、端子の近接側端部を固定面と反対側へ曲げた曲げ部を形成することにより、端子の近接側端部にガイド面を容易に設けることができる。しかも、この曲げ部の先端縁が台座の凹部に収容されて覆われるので、曲げ部の先端縁に加工時に生じたダレやバリがあっても、これらのダレやバリへの相手側端子の引っ掛かりを抑制できる。
【0010】
(2) 前記保護壁は、前記相手側端子の近接方向へ向かって次第に前記固定面側へ傾斜するテーパ部を有する、ことを特徴とする(1)に記載の端子台。
【0011】
上記(2)の構成の端子台によれば、相手側端子の先端が台座の保護壁のテーパ部に当接することにより、相手側端子をテーパ部に摺接させて容易に保護壁を乗り越えさせて端子の固定面へ円滑に導くことができ、締結作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コストの嵩張りを抑えつつ、相手側端子を円滑に締結位置へ導いて締結させることが可能な端子台を提供できる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態に係る端子台の斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係る端子台の分解斜視図である。
図3図3は、本実施形態に係る端子台の平面図である。
図4図4は、図3におけるA-A断面図及びその一部の拡大図である。
図5図5は、端子台に対して相手側端子を側方から近接させる配置例を説明する端子台の斜視図である。
図6図6は、相手側端子を側方から近接させる配置例を説明する端子台の平面図である。
図7図7は、図6におけるB-B断面図及びその一部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る端子台の斜視図である。図2は、本実施形態に係る端子台の分解斜視図である。図3は、本実施形態に係る端子台の平面図である。
【0018】
図1図3に示すように、本実施形態に係る端子台11は、台座13と、端子15とを備えている。この端子台11には、電線21の端部に接続された相手側端子である接続端子23が締結されて固定される。接続端子23は、板状に形成された締結部25と、電線21に加締められて接続される圧着部27とを有している。締結部25には、締結ボルト(図示略)が挿通される長孔からなる孔部29が形成されている。
なお、本発明に係る相手側端子は、電線21の端部に接続される本実施形態の接続端子23に限るものではなく、導電部と接続部が一体となったバスバーや、先端が端子状に形成された単芯線などの種々の形態を採ることができる。
【0019】
台座13は、絶縁性樹脂から成形されており、その上部に、複数の側壁31によって区画されて溝状に形成された二つの取付部33を有している。取付部33は、その上面が取付面35とされており、この取付面35に端子15が組付けられる。取付部33の内部には、ナット部材37が埋め込まれて固定されている。これらのナット部材37には、取付部33の貫通穴36を貫通した締結ボルト(図示略)が締結される。
【0020】
取付部33は、その一端側が端子装着側とされており、この取付部33における端子装着側に、保護壁41が形成されている。この保護壁41は、取付部33の幅方向にわたって形成されている。この保護壁41には、テーパ部43が形成されている。このテーパ部43は、取付部33へ向かって次第に上方へ傾斜されている。また、取付部33と保護壁41との間には、取付部33の幅方向にわたって凹部45が形成されている。
【0021】
端子15は、例えば、銅、銅合金等の導電性金属材料から形成されたもので、板状のバスバーとされている。これらの端子15は、台座13に対して、その上方側から組付けられる。端子15は、平板状に形成された固定板部51を有している。この端子15の固定板部51は、その上面が、接続端子23の締結部25が締結固定される固定面61とされている。この固定板部51は、台座13における取付部33に載置され、取付面35に当接した状態で取付部33に収容される。この固定板部51には、ボルト挿通孔53が形成されており、取付部33に固定板部51を収容させた状態で、ボルト挿通孔53が取付部33に設けられた貫通穴36及びナット部材37に連通される。
【0022】
端子15は、その固定板部51の一端側が、接続端子23を近接させて固定面61に配設させることが可能な近接側端部15aとされている。この近接側端部15aとされた固定板部51の端部には、曲げ部55が形成されており、この曲げ部55の外面は、ガイド面57とされている。この端子15の固定板部51は、曲げ部55を有する近接側端部15aの先端縁63が、接続端子23の締結部25が締結される固定面61よりも下方側に配置されている。
【0023】
図4は、図3におけるA-A断面図及びその一部の拡大図である。
図4に示すように、端子15を台座13に載置すると、端子15の固定板部51が取付面35に載せられてボルト挿通孔53が貫通穴36及びナット部材37に連通された状態で取付部33に配置される。すると、端子15の固定板部51は、曲げ部55の端部が台座13に形成された凹部45内に収容される。
【0024】
この状態において、保護壁41は、端子15の固定板部51の幅方向にわたって配置されるとともに、端子15の固定板部51の上面である固定面61より低く、かつ固定板部51の先端縁63より高い位置に配置される。
【0025】
そして、この端子台11の端子15における固定板部51の固定面61に、接続端子23の締結部25を配置させ、この接続端子23の締結部25に形成された孔部29に締結ボルトを挿し込んでナット部材37にねじ込む。すると、締結ボルトとナット部材37とによって端子15の固定板部51と接続端子23の締結部25とが共締めされて締結固定される。これにより、端子15と接続端子23とが電気的に接続される。
【0026】
次に、端子台11の端子15の固定板部51における締結位置への接続端子23の締結作業の一例について説明する。
図5は、端子台に対して接続端子を側方から近接させる配置例を説明する端子台の斜視図である。図6は、接続端子を側方から近接させる配置例を説明する端子台の平面図である。図7は、図6におけるB-B断面図及びその一部の拡大図である。
【0027】
図5図7に示すように、例えば、端子台11の上方にカバーが設けられている場合や、車両の狭隘なスペースに端子台11が設置されている場合などでは、端子台11に対して接続端子23を側方から近接させて挿し込んで配置せざるを得ない場合がある(図5図7中矢印X方向参照)。
【0028】
このように、端子台11に対して接続端子23を側方から近接させて挿し込む場合、接続端子23の締結部25の高さ位置が端子15の固定板部51よりも下方側であると、接続端子23は、締結部25の先端が台座13の保護壁41に形成されたテーパ部43に当接する。これにより、接続端子23は、このテーパ部43に沿って上方の固定面61側へ案内される。つまり、接続端子23の締結部25が端子15の固定板部51の先端面に突き当たったり、固定板部51と台座13の取付面35との間へ潜り込むような不具合が抑制される。
【0029】
さらに、接続端子23を挿し込むと、接続端子23の締結部25は、保護壁41を乗り越え、先端が端子15の固定板部51に形成された曲げ部55のガイド面57に接触する。これにより、接続端子23の締結部25は、このガイド面57に沿って上方の固定面61へ案内される。
【0030】
その後、接続端子23の締結部25は、端子15の固定板部51の固定面61に沿ってスライドされ、締結ボルトによる締結位置に導かれる。
【0031】
接続端子23の締結部25が締結位置に配置されたら、締結部25に形成された孔部29に締結ボルトを挿し込んでナット部材37にねじ込み、端子15の固定板部51と接続端子23の締結部25とを締結固定させる。
【0032】
以上、説明したように、本実施形態に係る端子台11によれば、端子15の固定板部51の固定面61に相手側端子である接続端子23の締結部25を配置させて締結させることにより、接続端子23を端子15に電気的に接続させることができる。ここで、台座13には、端子15の固定板部51の固定面61より低く、かつ端子15の近接側端部15aの先端縁63よりも高い保護壁41が、端子15の近接側端部15aの幅方向にわたって設けられている。したがって、端子15に対して接続端子23が側方から近接されて配置される場合に、接続端子23の高さ位置が端子15よりも下方側であっても、接続端子23は、その先端が台座13の保護壁41に当接することとなる。したがって、接続端子23に面取り等を形成することによるコストアップを抑えつつ、端子15における近接側端部15aに接続端子23の締結部25が突き当たったり、端子15と台座13との間へ接続端子23の締結部25が潜り込むような不具合を抑制し、端子15を幅方向にわたって保護することができる。また、端子15は、近接側端部15aにガイド面57を有するので、保護壁41を乗り越えた接続端子23の締結部25をガイド面57によって固定面61の締結位置へ容易に導くことができる。
【0033】
また、台座13の保護壁41は、接続端子23の近接方向へ向かって次第に固定面61側へ傾斜するテーパ部43を有する。これにより、接続端子23の締結部25の先端が台座13の保護壁41のテーパ部43に当接することにより、接続端子23の締結部25をテーパ部43に摺接させて容易に保護壁41を乗り越えさせて端子15の固定面61へ円滑に導くことができ、締結作業性を向上させることができる。
【0034】
しかも、端子15の近接側端部15aを固定面61と反対側へ曲げた曲げ部55を形成することにより、端子15の近接側端部15aにガイド面57を容易に設けることができる。しかも、この曲げ部55の先端縁63が台座13の凹部45に収容されて覆われるので、曲げ部55の先端縁63に加工時に生じたダレやバリがあっても、これらのダレやバリへの接続端子23の引っ掛かりを抑制できる。
【0035】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0036】
例えば、上記実施形態では、端子15の近接側端部15aに曲げ部55を形成して台座13の凹部45に収容させたが、曲げ部55は必ずしも端子15に形成しなくてもよい。端子15に曲げ部55を形成しない場合、端子15の近接側端部15aに面取り加工を施してガイド面57を形成すればよい。
【0037】
ここで、上述した本発明に係る端子台の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 台座(13)と、前記台座(13)に取り付けられた端子(15)と、を有し、前記端子(15)の固定面(61)に相手側端子(接続端子23)が重ね合わされて締結される端子台(11)であって、
前記端子(15)には、前記相手側端子(接続端子23)が側方から近接されて配置可能とされ、
前記端子(15)は、前記相手側端子(接続端子23)が近接される近接側端部(15a)に、前記相手側端子(接続端子23)の近接方向へ向かって次第に前記固定面(61)側へ傾斜するガイド面(57)を有し、
前記台座(13)には、前記端子(15)の前記固定面(61)より低く、かつ前記端子(15)の前記近接側端部(15a)の先端縁(63)よりも高い保護壁(41)が、前記端子(15)における前記近接側端部(15a)の幅方向にわたって設けられている、
ことを特徴とする端子台。
[2] 前記保護壁(41)は、前記相手側端子(接続端子23)の近接方向へ向かって次第に前記固定面(61)側へ傾斜するテーパ部(43)を有する、ことを特徴とする[1]に記載の端子台。
[3] 前記端子(15)の前記近接側端部(15a)は、前記固定面(61)と反対側へ曲げられた曲げ部(55)を有し、
前記台座(13)は、前記曲げ部(55)の先端縁(63)が収容される凹部(45)を有する、ことを特徴とする[1]または[2]に記載の端子台。
【符号の説明】
【0038】
11:端子台
13:台座
15:端子
15a:近接側端部
23:接続端子(相手側端子)
41:保護壁
43:テーパ部
45:凹部
55:曲げ部
57:ガイド面
61:固定面
63:先端縁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7