(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】チャイルドシート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/28 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
B60N2/28
(21)【出願番号】P 2020080234
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】508189474
【氏名又は名称】ニューウェルブランズ・ジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 治生
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-301965(JP,A)
【文献】特開2012-030625(JP,A)
【文献】特開2006-335267(JP,A)
【文献】特開2001-180349(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0054695(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座部と、前記台座部の端部から上方に立ち上がる起立部とを含み、前記起立部を後方側に位置させて、自動車の座席上に取り付けられるベース部材と、
前記台座部上に回転可能に取り付けられ、背もたれ部の背面を前記起立部に対面させる前向き状態、および、前記背もたれ部の前面を前記起立部に対面させる後ろ向き状態に切り換え可能な座席本体と、
前記ベース部材に対する前記座席本体の回転位置を固定する回転位置固定機構と、
前記前向き状態にある前記座席本体が前方に向かって倒れることを防止するものであり、前記座席本体の背もたれ部に沿って、第1の位置と第2の位置との間を変位可能な係止部材と、前記起立部に設けられ、前記起立部から前記座席本体に向かって突出し、前記第1の位置にある係止部材と係合する突出位置と、前記起立部から突出しない収納位置とを取り得る被係止部材とを含む前倒れ防止機構と、
前記座席本体の回転位置に応じて前記被係止部材の位置を切り換えるものであり、前記座席本体が前向き状態にあるときに前記被係止部材を突出位置にもたらし、前記座席本体が前向き状態以外にあるときに前記被係止部材を収納位置にもたらす連動機構とを備える、チャイルドシート。
【請求項2】
前記被係止部材は、上下方向に延びる係合孔を有し、
前記係止部材は、前記第1の位置と前記第2の位置との間を上下方向に変位可能な係合ピンを含み、
前記係合ピンは、上方の前記第1の位置にあるときに、前記係合孔に嵌る、請求項1に記載のチャイルドシート。
【請求項3】
前記連動機構は、一端が前記座席本体の回転部分の外周面に接し、他端が前記被係止部材に接する動作伝達部材を含む、請求項1または2に記載のチャイルドシート。
【請求項4】
前記座席本体の回転部分の外周面は、回転軸心からの距離が異なるカム面を形成している、請求項3に記載のチャイルドシート。
【請求項5】
前記連動機構は、前記動作伝達部材の一端を前記カム面に当接するように付勢する付勢部材を含む、請求項4に記載のチャイルドシート。
【請求項6】
前記動作伝達部材は、その中央部分が軸を介して前記ベース部材にシーソー運動可能に支持されている、請求項3~5のいずれかに記載のチャイルドシート。
【請求項7】
前記回転位置固定機構は、前記ベース部材に設けられたロック穴と、前記座席本体に上下動可能に設けられ、下方位置にあるときに前記ロック穴に係合するロックピンと、前記ロックピンと前記係止部材とを動作可能に連結するロック動作連動部材とを含む、請求項1~6のいずれかに記載のチャイルドシート。
【請求項8】
前記ロック動作連動部材は、前方位置および後方位置に変位可能であり、
前記ロック動作連動部材が前方位置にあるときに、前記ロックピンを
上方位置にもたらし、前記係止部材を
下方位置にもたらすように構成されている、請求項7に記載のチャイルドシート。
【請求項9】
前記ロック動作連動部材を前方位置に移動させるための操作部を備える、請求項7または8に記載のチャイルドシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、チャイルドシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ベース部材と座席本体とが回転可能に設けられているチャイルドシートにおいて、ベース部材と座席本体の背面とをロックする背面ロック機構が知られている。そのようなチャイルドシートとして、たとえば特開2000-108739号公報(特許文献1)および特開2003-291698号公報(特許文献2)などがある。
【0003】
特許文献1には、基台の起立部において、着座部の背面に設けられる孔に挿通されるロックピンが設けられることが開示されている。ロックハンドルを用いて、ロックピンのロック状態とロック解除状態とを切り換えることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、シート体の背面に係合フックが設けられ、背もたれ支持部の係止部と係合することが開示されている。係合フックは、シート本体が回転することで、シート台座に設けられる係合案内部に当接し、次第に起こされて、係止部と係合できる高さまで立ち上がることが開示されている。シート台座に設けられる係止部に、シート本体に設けられる係合フックを係合させることで、車両が衝突した場合の衝撃を抑制できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-108739号公報
【文献】特開2003-291698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のチャイルドシートは、ロックピンのロックとロック解除を行うために、ロックハンドルで操作する必要があり、誤作動が生じるおそれがある。特許文献2の係止部は、シート台座から常に露出しているため、着座してる子供の邪魔になり、安全性に問題がある。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、安全性に優れ、操作性が良好なチャイルドシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため本発明によるチャイルドシートは、台座部と、台座部の端部から上方に立ち上がる起立部とを含み、起立部を後方側に位置させて、自動車の座席上に取り付けられるベース部材と、台座部上に回転可能に取り付けられ、背もたれ部の背面を起立部に対面させる前向き状態、および、背もたれ部の前面を起立部に対面させる後ろ向き状態に切り換え可能な座席本体と、ベース部材に対する座席本体の回転位置を固定する回転位置固定機構と、前向き状態にある座席本体が前方に向かって倒れることを防止するものであり、座席本体の背もたれ部に沿って、第1の位置と第2の位置との間を変位可能な係止部材と、起立部に設けられ、起立部から座席本体に向かって突出し、第1の位置にある係止部材と係合する突出位置と、起立部から突出しない収納位置とを取り得る被係止部材とを含む前倒れ防止機構と、座席本体の回転位置に応じて被係止部材の位置を切り換えるものであり、座席本体が前向き状態にあるときに被係止部材を突出位置にもたらし、座席本体が前向き状態以外にあるときに被係止部材を収納位置にもたらす連動機構とを備える。
【0009】
好ましくは、被係止部材は、上下方向に延びる係合孔を有し、係止部材は、第1の位置と第2の位置との間を上下方向に変位可能な係合ピンを含み、係合ピンは、上方の第1の位置にあるときに、係合孔に嵌る。
【0010】
好ましくは、連動機構は、一端が座席本体の回転部分の外周面に接し、他端が被係止部材に接する動作伝達部材を含む。
【0011】
好ましくは、座席本体の回転部分の外周面は、回転軸心からの距離が異なるカム面を形成している。
【0012】
好ましくは、連動機構は、好ましくは、動作伝達部材の一端をカム面に当接するように付勢する付勢部材を含む。
【0013】
好ましくは、動作伝達部材は、その中央部分が軸を介してベース部材にシーソー運動可能に支持されている。
【0014】
好ましくは、回転位置固定機構は、ベース部材に設けられたロック穴と、座席本体に上下動可能に設けられ、下方位置にあるときにロック穴に係合するロックピンと、ロックピンと係止部材とを動作可能に連結するロック動作連動部材とを含む。
【0015】
好ましくは、ロック動作連動部材は、前方位置および後方位置に変位可能であり、ロック動作連動部材が前方位置にあるときに、ロックピンを下方位置にもたらし、係止部材を上方位置にもたらすように構成されている。
【0016】
好ましくは、ロック動作連動部材を前方位置に移動させるための操作部を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、安全性に優れ、操作性が良好なチャイルドシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施の形態に係るチャイルドシートの模式図であり、(A)は前倒れ防止機構および回転位置固定機構がロックしている状態を示し、(B)は前倒れ防止機構および回転位置固定機構がロック解除している状態を示している。
【
図2】本実施の形態に係るチャイルドシートのベース部材の一部分を取り出して示す部分斜視図であり、(A)は前倒れ防止機構の被係止部材が突出位置にある状態を示し、(B)は前倒れ防止機構の被係止部材が収納位置にある状態を示している。
【
図3】
図2に対応する部分断面図であり、(A)は前倒れ防止機構の被係止部材が突出位置にある状態を示し、(B)は前倒れ防止機構の被係止部材が収納位置にある状態を示している。
【
図4】ベース部材と座席本体との関係を示す模式的な平面図であり、(A)は座席本体が前向き状態であることを示し、(B)は座席本体が後ろ向き状態であることを示す。
【
図5】ベース部材を示す図であり、(A)はベース部材のレール部を示す平面図であり、(B)は
図5(A)のB-B線の模式断面図であり、(
C)は
図5(A)のC-C線の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
<チャイルドシートの概要>
図1~5を参照して、本発明の実施の形態に係るチャイルドシート1について説明する。チャイルドシート1の説明において、前方は
図1,4,5の矢印A1で示す方向であり、後方はその反対方向である。前後方向は、チャイルドシート1の前後方向に対応する。左右方向は、
図4,5の矢印A2で示す方向であり、チャイルドシート1の前方から見た左右方向に対応している。
【0021】
本実施形態に係るチャイルドシート1は、自動車の座席の上に配置され、乳児や幼児などの子供を安全に乗車させるための装置である。チャイルドシート1は、概略的には、ベース部材2および座席本体3を備える。
【0022】
(ベース部材について)
ベース部材2は自動車の座席上に取り付けられ、座席本体3を下方から支持する。ベース部材2は、台座部20と、台座部20の端部から上方に立ち上がる起立部21とを含む。ベース部材2は、起立部21を自動車の後方側に位置させている。つまり、起立部21は、自動車の背もたれ部側に位置する。
図1(B)に示すように、台座部20の底面(ベース部材2が自動車のシートと接する面)から起立部21の上端までの高さ寸法H1は、たとえば310mm以上であることが好ましい。
図3に示すように、起立部21には、被係止部材61および動作伝達部材70が設けられるが、これらの説明は後述する。
【0023】
図1~3に示すように、ベース部材2の台座部20の上面の略中央部分は凹部を構成し、凸部を構成する座席本体3の底部と対応する。ベース部材2の凹部は、環状の側壁面23で形成されており、その下方部には、ベース部材2の凹部の中央に向かって突出するレール部24が設けられる。レール部24は後述する座席本体3と回転可能に当接する部分である。
図5(A)は、レール部24の模式的な平面図である。
図5(A)に示すように、レール部24は、平面視ドーナツ形状であり、ロック穴25および仮ロック穴26が交互に設けられる。具体的には、前方および後方にロック穴25が設けられ、右方および左方に仮ロック穴26が設けられる。ロック穴25および仮ロック穴26は、典型的には上方開口の凹部であるが、貫通孔であってもよい。
【0024】
図5(B)に示すように、ロック穴25は、断面視略四角形状の穴であり、底部25aと、底部25aとレール部24をつなぐ一対の側部25bとで形成される角度がたとえば90度程度である。
図5(C)に示すように、仮ロック穴26は、断面視略台形形状の穴であり、底部26aと、底部26aとレール部24をつなぐ一対の側部26bとで形成される角度が鈍角であり、たとえば100度以上である。ロック穴25および仮ロック穴26には、後述するロックピン44が上方から係合する。
【0025】
(座席本体について)
図1を参照して、座席本体3は、ベース部材2の台座部20上に取り付けられる。座席本体3には、子供が着座する。このため、座席本体3は、子供のお尻を支持する座面部30と、座面部30の後方から立ち上がり、子供の背部を支持する背もたれ部31とを有する(
図1(B)において破線で示している)。さらに、座席本体3の底部は、ベース部材2と係合するために、くびれ部34と、くびれ部34よりも下方に設けられ、くびれ部34よりも円周が大きい下方部35とを含む。くびれ部34には、上述したベース部材2のレール部24が位置する。このような構成により、座席本体3が回転可能に設けられ、ベース部材2から外れることを防止することができる。
【0026】
座席本体3は、ベース部材2に回転可能に取り付けられ、前向き状態および後ろ向き状態に切り換え可能である。前向き状態とは、背もたれ部31の背面を起立部21に対面させる状態であり、子供が自動車の前方を向いて座ることをいう。前向き状態は、
図1に示す状態である。後ろ向き状態とは、背もたれ部31の前面を起立部21に対面させる状態であり、子供が自動車の後方を向いて座ることをいう。後ろ向き状態の図示は省略する。座席本体3は、前向き状態および後ろ向き状態でロックされる。ロックは、一定の操作(たとえば、操作部5で操作することなど)を行わなければ回転しないことである。このロックは、ベース部材2に設けられるロック穴25と座席本体3に設けられるロックピン44で行われる。
【0027】
座席本体3は、横向き状態で仮ロックされてもよい。横向き状態とは、前向き状態および後ろ向き状態の間の状態であり、具体的には、前向き状態および後ろ向き状態から略90°回転させた状態であり、子供が自動車の側方(たとえば、ドアなど)を向いて座ることをいう。仮ロックとは、一定の操作を必要とせず、一定以上の力を加えることで回転することを意図する。仮ロックは、ベース部材2に設けられる仮ロック穴26と座席本体3に設けられるロックピン44で行われる。詳細は後述する。
【0028】
図4は、ベース部材2と座席本体3の関係を示す模式的な平面図である。
図4(A)は、座席本体3が前向き状態であることを示し、
図4(B)は座席本体3が後ろ向き状態であることを示す。
図4(A)を参照して、座席本体3の回転部分の外周面32は、その一部に回転軸心Cからの距離が異なるカム面33を形成している。具体的には、回転軸心Cからカム面33までの寸法L1までの寸法は、回転軸心Cから外周面32までの寸法L2よりも大きい。カム面33は、外周面32からベース部材2に向かって膨出する膨出部である。カム面33は、座席本体3の後方、つまり背もたれ部31の下方に形成される。これにより、
図3(A)および
図4(A)に示すように、前向き状態では、カム面33は後方に位置し、ベース部材2に設けられる動作伝達部材70の当接部73を押圧する。
図3(B)および
図4(B)に示すように、後ろ向き状態では、カム面33は前方に位置するため、ベース部材2に設けられる連動機構7を押圧しない。詳細は後述する。
【0029】
(回転位置固定機構について)
上述のように、チャイルドシート1は、座席本体3がベース部材2に対して回転可能に設けられている。ただし、子供を座席本体3に乗せて使用する際には、座席本体3をベース部材2に対して固定する必要がある。本実施の形態のチャイルドシート1には、ベース部材2に対する座席本体3の回転位置を固定する回転位置固定機構4が設けられている。
【0030】
図1に示すように、回転位置固定機構4は、ベース部材2に設けられたロック穴25と、座席本体3に上下動可能に設けられ、下方位置にあるときにロック穴25に係合するロックピン44と、ロックピン44と係止部材60とを動作可能に連結するロック動作連動部材40とを含む。上述のように、ロック穴25は、
図5(A)に示すように、前方および後方の2箇所設けられており、座席本体3が前向き状態および後ろ向き状態でロックされる。
【0031】
図1に示すように、ロック動作連動部材40は、前方位置および後方位置に変位可能な部材である。具体的には、ロック動作連動部材40は、全体として側面視略L字状であり、縦材41および横材42とから形成される。横材42には、縦材41と接続する角部において、前方に向かって下方に傾斜する長穴43が設けられている。この長穴43には、ベース部材2に設けられるロック穴25に係合するロックピン44が貫通している。
図1(B)に示すように、ロック動作連動部材40が前方位置に移動することで、ロックピン44がロック穴25から引き抜かれ、
図1(A)に示すように、ロック動作連動部材40が後方位置に移動することで、ロックピン44がロック穴25に貫通する。
【0032】
ロック動作連動部材40の縦材41の上端には、係止部材60が取り付けられている。これにより、ロック動作連動部材40は、ロックピン44が下方位置にあるときに係止部材60を上方位置にもたらし(
図1(A))、ロックピン44が上方位置にあるときに係止部材60を下方位置にもたらすように構成されている(
図1(A))。つまり、ロック動作連動部材40により、ベース部材2と座席本体3との回転をロックすること(回転位置固定機構4をロックすること)と、前向き状態の座席本体3が前方に倒れないようにロックすること(前倒れ防止機構6をロックすること)とを連動することができ、それらのロックの解除も連動することができる。前倒れ防止機構6については後述する。
【0033】
ロック動作連動部材40は、たとえばバネなどの付勢部材により後方位置に付勢されており、具体的には、ロックピン44が下方位置にある方向、および、係止部材60が上方位置にある方向に付勢されている。そのため、ロックピン44を上方位置にし、係止部材60を下方位置にするためには、操作部5で操作する必要がある。
【0034】
操作部5は、座席本体3の両側部に一対設けられ、上方に向かって押圧可能なレバー51を含む。レバー51は、ロック動作連動部材40の横材42の端部と、たとえばリンク、ワイヤなどの連結部材45を介して連結されている。これにより、レバー51を上方に押圧して
図1(A)の状態から
図1(B)の状態にすることで、連結部材45が引っ張られ、横材42が前方に移動し、長穴43に沿ってロックピン44が上方に移動し、ロックピン44がロック穴25から引き抜かれる。このようにして、操作部5を操作することで、ロックを解除することができ、座席本体3をベース部材2に対して回転することができる。
【0035】
なお、操作部5は、座席本体3の両側部にそれぞれ設けられているが、いずれか一方を操作することで、ロック動作連動部材40が動作するように設けることが好ましい。このようにすることで、チャイルドシート1を前向き状態にした場合に、奥側に位置する操作部5にまでわざわざ手を伸ばす必要がなく、手前に位置する操作部5だけを操作するだけでよい。また、操作部5を一対設けるのではなく、座席本体3の前方または方向に一箇所設けてもよい。
【0036】
(前倒れ防止機構について)
本実施の形態のチャイルドシート1は、前向き状態にある座席本体3が前方に向かって倒れることを防止するために前倒れ防止機構6が設けられている。
図1に示すように、前倒れ防止機構6は、係止部材60と、被係止部材61とを含む。上述のように、係止部材60は、座席本体3の背もたれ部31に沿って設けられている。具体的には、係止部材60は、背もたれ部31に沿って上下に延びている。係止部材60は、ロック動作連動部材40の上端に取り付けられている。係止部材60は、典型的には上下方向に延びるロックピンであるが、たとえば端部が屈曲するフックなどであってもよいし、左右方向に延びる部材であってもよい。
【0037】
係止部材60の上下方向の動作は、ロック動作連動部材40の前後方向の動作と連動する。すなわち、ロック動作連動部材40が後方位置に移動すると係止部材60も上方位置に移動し、ロック動作連動部材40が前方位置に移動すると、係止部材60も下方位置に移動する。本実施の形態では、係止部材60が第1の位置にある状態は、
図1(A)に示す上方位置であり、第2の位置にある状態は、
図1(B)に示す下方位置である。以下の説明において、第1の位置を上方位置、第2の位置を下方位置という。
図1では、係止部材60は、座席本体3の裏面から露出しているが、上方位置で座席本体3から突出し、下方位置で座席本体3内に完全に収納されるように設けてもよい。
【0038】
被係止部材61は、上方位置にある係止部材60と係合する部材である。被係止部材61は、典型的には貫通孔であるが、貫通していない凹部であってもよい。また、被係止部材61は、典型的には上下方向に延びているが、たとえば左右方向に延びていてもよいし、開口している方向は限定されない。
【0039】
図1(B)に示すように、被係止部材61は、ベース部材2の起立部21に設けられる。台座部20の底面から被係止部材61までの高さ寸法H1が300mm以上であることが好ましい。また、座席本体3の座面部30の上端面(子供のお尻と接する面)から被係止部材61までの高さ寸法H3が100mm以上であることが好ましい。
【0040】
図2,3に示すように、被係止部材61は、ベース部材2の起立部21に設けられ、起立部21から座席本体3に向かって突出する突出位置(
図2(A),
図3(A))と、ベース部材2から突出しない収納位置(
図2(B),
図3(B))とを取り得る。
図2(B),
図3(B)では、被係止部材61の先端部は、起立部21から若干突出しているように見えるが、起立部21内に完全に収納されることが望ましい。
図1(A)に示すように、被係止部材61は、突出位置にある場合に、第1の位置(上方位置)にある係止部材60と係合する。
【0041】
このように、被係止部材61の位置を起立部21の比較的高い位置に設けることで、前向き状態にある座席本体3が前方に向かって倒れることを効果的に防止することができる。さらに、被係止部材61が上下方向に延びる係合孔であり、係止部材60が上下方向に変位可能な係合ピンであり、係合孔に係合ピンが嵌ることで、係止部材60の四方が被係止部材61で囲まれることになるため、自動車の前突および後突だけでなく側突にも対応することができる。
【0042】
(連動機構について)
被係止部材61は、突出位置と収納位置とを取り得るが、その位置変更は、座席本体3の回転位置に応じて切り換えられる。本実施の形態のチャイルドシート1には、座席本体3の回転位置に応じて被係止部材61の位置を切り換える機構として、連動機構7が設けられる。
【0043】
連動機構7は、座席本体3が前向き状態にあるときに被係止部材61を突出位置にもたらし、座席本体3が前向き状態以外にあるときに被係止部材61を収納位置にもたらす。前向き状態以外とは、後ろ向き状態および横向き状態だけではなく、背もたれ部31の背面と起立部21とが対面しておらず、それらが平行に配置されている状態以外をいう。連動機構7は、少なくとも座席本体3が後ろ向き状態および横向き状態にある場合に被係止部材61を収納位置にもたらすことが好ましい。
【0044】
図3,4に示すように、連動機構7は、動作伝達部材70と、座席本体3の外周面32とを含む。動作伝達部材70は、ベース部材2に設けられ上下方向に延びるリンク部材71を含む。リンク部材71は、その中央部分に設けられる軸72を介してシーソー運動可能に支持されている。リンク部材71の上端は、被係止部材61に接している。リンク部材71の下端は、座席本体3の回転部分の外周面32に接する当接部73が設けられる。つまり、動作伝達部材70は、当接部73がベース部材2内に収納されると、被係止部材61が突出し、当接部73がベース部材2から突出すると、被係止部材61がベース部材2内に収納される。
【0045】
動作伝達部材70の当接部73は、座席本体3に当接するように付勢部材(図示せず)により付勢されている。付勢部材は、たとえばバネなどの弾性部材である。当接部73は、
図3(B)に示すように、ベース部材2から突出するように付勢されている。ベース部材2には座席本体3が回転自在に設けられているため、当接部73の位置は、座席本体3の外周面32の形状に左右される。このように、
図3(A)および
図4(A)に示すように、座席本体3を回転させると、座席本体3が前向き状態になった場合にだけ、当接部73がベース部材2内に入り込み、被係止部材61が突出位置に変位する。このように、連動機構7を設けることで、座席本体3を回転させるだけで、突出位置にある被係止部材61を収納位置にすることができる。
【0046】
<チャイルドシートの動作>
次に、本実施の形態のチャイルドシート1の動作について説明する。
【0047】
チャイルドシート1の座席本体3に子供を乗せるときは、チャイルドシート1を横向き状態にする。横向き状態では、座席本体3のロックピン44はベース部材2の仮ロック穴26(
図5(A),
図5(C))に係合し、座席本体3の回転が仮ロックされる。子供を座席本体3に乗せてベルトを締めた後、座席本体3を回転させて前向き状態にするために、若干強い力で座席本体3を回転させる。この場合、仮ロック穴26の側部26bは傾斜しているため、座席本体3を通常の力より若干強い力で押すだけで、仮ロック穴26からロックピン44が抜け、仮ロックが解除される。
【0048】
座席本体3が前向き状態に差し掛かると、
図4(A)に示すように、座席本体3の外周面32に形成されるカム面33が動作伝達部材70の当接部73に当接する。
図2(A),3(A)に示すように、動作伝達部材70は、シーソー運動をして、当接部73が起立部21内に収納されると、被係止部材61が起立部21から突出して、突出位置に変位する。ここで、ロックピン44は、常に下方に向かって付勢されているため、レール部24に当接しながら回転している。そのため、座席本体3が前向き状態に差し掛かると、
図1(A)に示すように、ロックピン44はロック穴25に自動的に係合する。それと同時に、ロック動作連動部材40が前方位置に移動し、突出位置の被係止部材61に係止部材60が係合する。
【0049】
チャイルドシート1から子供を下す場合には、チャイルドシート1を横向きにする必要がある。操作部5のレバー51を上方に押して、
図1(A)の状態から
図1(B)の状態に変位させる。すなわち、操作部5のレバーを上方に押すと、レバー51に連結されているロック動作連動部材40が前方位置に移動し、ロックピン44がロック穴25から引き抜かれ、係止部材60が下方に移動して、係止部材60と被係止部材61の係合が解除される。
【0050】
座席本体3を回転させると、
図3(A),4(A)に示す状態から
図3(B),4(B)の状態に変位する。すなわち、動作伝達部材70の当接部73は座席本体3に向かうように付勢されているため、カム面33に当接していた当接部73は、座席本体3の回転に合わせて外周面32に当接するようになり、被係止部材61は収納位置に変位する。このように、座席本体3が前向き状態以外の場合には、被係止部材61が収納位置になる。
【0051】
さらに、座席本体3を回転させて横向き状態にする。上述のように、ロックピン44は、常に下方に向かって付勢されているため、仮ロック穴26に自動的に係合する。これにより、座席本体3は横向き状態で仮ロックされる。この状態で、子供に装着されたベルトを外して、チャイルドシート1から子供を下すことができる。
【0052】
本実施の形態の前倒れ防止機構6は、被係止部材61が起立部21のような高い位置に設けられているため、台座部20のような低い位置に設けられている構成と比較して、座席本体3の前倒れを効果的に防止することができる。しかし、被係止部材61が高い位置に設けられていることで、前向き状態以外で使用している場合には、作業者の邪魔になるとともに、子供にとっても危険である。本実施の形態では、被係止部材61は、前向き状態の場合にだけ突出し、前向き状態以外では起立部21内に収納されているため、そのような不利益がない。
【0053】
また、本実施の形態のチャイルドシート1は、座席本体3の回転と連動して、起立部21に設けられる被係止部材61が収納位置と突出位置とに変位し、前向き状態の場合に係止部材60と被係止部材61が係合する。そのため、座席本体3を回転させるという作業だけで座席本体3の前倒れを防止することができるため、作業性に優れている。さらに、座席本体3の回転と連動して、座席本体3を前向き状態または後ろ向き状態にした場合に、自動的にロックピン44がロック穴25に嵌る。このように、座席本体3を前向き状態にする際に、座席本体3の回転と連動して、座席本体3の前倒れを防止することができ、座席本体3とベース部材2との回転をロックすることができるため、それらの動作を行うために、作業者は座席本体3を回転させるだけですむため、誤作動を起こすことを低減させることができ、操作性に優れている。
【0054】
座席本体3をベース部材2に対して回転させると、座席本体3が前向き状態および後ろ向き状態では、ロックピン44がロック穴25に係合し、操作部5を操作することでその係合は解除される。操作部5を操作した後で座席本体3を回転させ、座席本体3が横向き状態になると、ロックピン44が仮ロック穴26に係合する。横向き状態では仮ロックなので、操作部5を操作する必要はなく、通常回転させる力よりやや強い力で座席本体3を回転させると、ロックピン44と仮ロック穴26との係合は解除される。このように、座席本体が前向き状態および後ろ向き状態では操作部5で操作する必要があるが、横向き状態では操作部5で操作する必要がなく、この点でも操作性に優れている。
【0055】
なお、上記実施の形態では、座席本体3の回転に伴って、回転位置固定機構4と前倒れ防止機構6とが機能していたが、少なくとも、座席本体3の回転に伴って前倒れ防止機構6が機能すればよい。すなわち、座席本体3の回転に合わせて、前倒れ防止機構6の被係止部材61が、収納位置と突出位置とに変位すればよい。
【0056】
また、上記実施の形態では、動作伝達部材70は、被係止部材61と連結するリンク部材71を含んでいたが、被係止部材61に接していて、間接的に座席本体3の動きを被係止部材61に伝えるものであってもよい。
【0057】
また、上記実施の形態では、ロック動作連動部材40は、縦材41と横材42とそれに形成された長穴43とで構成され、その長穴43にロックピン44がスライド可能に設けられており、全体として前後方向に動くものであったが、ロックピン44が下方位置にあるときに係止部材60を上方位置にもたらすものであれば、たとえば左右方向または上下方向などに動くものであってもよい。
【0058】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 チャイルドシート、2 ベース部材、3 座席本体、4 回転位置固定機構、5 操作部、6 前倒れ防止機構、7 連動機構、20 台座部、21 起立部、25 ロック穴、32 外周面、40 ロック動作連動部材、44 ロックピン、45 連結部材、60 係止部材、61 被係止部材、70 動作伝達部材。