(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】物体検出装置
(51)【国際特許分類】
G01S 13/42 20060101AFI20231226BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231226BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20231226BHJP
【FI】
G01S13/42
G08G1/16 C
G01S13/931
(21)【出願番号】P 2020081222
(22)【出願日】2020-05-01
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】礒野 友輔
(72)【発明者】
【氏名】守永 光利
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】赤峰 悠介
(72)【発明者】
【氏名】池田 正和
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-167974(JP,A)
【文献】特開2011-196749(JP,A)
【文献】特開2020-008310(JP,A)
【文献】特開2017-129410(JP,A)
【文献】特開2009-204434(JP,A)
【文献】特開2012-088289(JP,A)
【文献】特開2006-234523(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0299557(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
G01S 3/80 - 3/86
G01S 5/18 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体(100)に搭載され、前記移動体の周囲の物体までの距離を少なくとも測定する1個以上のセンサ(2)から測定サイクル毎に取得する測定結果に基づいて、前記物体の位置を検出する物体検出装置(10、30)であって、
前記センサから前記測定結果を取得するように構成された情報取得部(12)と、
前記物体の位置を表す候補である複数の基準点を設定するように構成された基準点設定部(14)と、
これまでの測定サイクルと今回の測定サイクルとにおいて前記情報取得部から取得した前記測定結果に基づいて、前記基準点において前記物体が存在する確からしさを表す評価値を算出するように構成された評価部(16)と、
前記評価部が算出する前記評価値に基づいて、前記物体が存在すると推定される推定点を前記基準点から抽出するように構成された抽出部(20)と、
前回の測定サイクルにおいて前記基準点設定部が設定した前記基準点の位置および数と前記抽出部が抽出した前記推定点の位置とに基づいて、今回の測定サイクルにおいて前記基準点設定部が設定する前記基準点の位置および数を決定するように構成された基準点調整部(22)と、
前記推定点の前記評価値に基づいて、前記推定点に前記物体が存在するか否かを判定するように構成された物体検出部(24)と、
を備える物体検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物体検出装置であって、
前記基準点調整部は、今回の測定サイクルにおいて前記基準点設定部が設定する前記基準点の数を前回の測定サイクルよりも減少させるように構成されている、
物体検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の物体検出装置であって、
前記基準点調整部は、今回の測定サイクルにおいて前記基準点設定部が前記基準点を設定する設定範囲を前回の測定サイクルの設定範囲以下にするように構成されている、
物体検出装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の物体検出装置であって、
前記基準点調整部は、前回の測定サイクルの前記推定点の位置を中心として、今回の測定サイクルにおいて前記基準点設定部が前記基準点を設定する設定範囲を決定するように構成されている、
物体検出装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の物体検出装置であって、
前記センサは、前記物体までの距離に加え、前記物体が移動する方向と移動する速さとを測定し、
前回の測定サイクルにおいて抽出された前記推定点の位置と前記センサが測定する前記物体が移動する方向と前記物体が移動する速さと前記センサが移動する方向と前記センサが移動する速さとに基づいて、今回の測定サイクルにおいて前記物体が存在すると推定される前記推定点の位置を予測するように構成された位置予測部(32)をさらに備え、
前記基準点調整部は、前記位置予測部が予測する前記推定点の位置を中心として、前記基準点設定部が前記基準点を設定する設定範囲を決定するように構成されている、
物体検出装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の物体検出装置であって、
前記基準点調整部は、前回の測定サイクルにおいて抽出された前記推定点の位置と前記推定点までの距離と前記センサの分解能とに基づいて、今回のサイクルにおいて前記基準点設定部が設定する前記基準点の間隔を決定するように構成されている、
物体検出装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の物体検出装置であって、
前記基準点調整部は、今回の測定サイクルにおいて前記基準点設定部が設定する前記基準点の間隔を前回の測定サイクルの間隔よりも小さくし、かつ今回の測定サイクルで前記基準点設定部が設定する前記基準点の数を前回の測定サイクル
の前記基準点の数以下にするように構成されている、
物体検出装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の物体検出装置であって、
前記情報取得部は、前記移動体の外部のセンサから前記物体の位置を取得するように構成されており、
前記基準点調整部は、さらに、前記情報取得部が前記外部のセンサから取得する前記物体の位置に基づいて、前記基準点設定部が前記基準点を設定する設定範囲を決定するように構成されている、
物体検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の物体検出装置であって、
前記基準点調整部は、前記情報取得部が前記外部のセンサから取得する前記物体の位置の誤差に基づいて、前記基準点設定部が前記基準点を設定する設定範囲を決定するように構成されている、
物体検出装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の物体検出装置であって、
前記基準点調整部は、前回の測定サイクルで評価された前記基準点の前記評価値に基づいて、前回の測定サイクルで設定した前記基準点を今回の測定サイクルで前記基準点設定部が前記基準点として設定するか否かを判定するように構成されている、
物体検出装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の物体検出装置であって、
前回の測定サイクルで抽出された前記推定点の位置と前記推定点に対応する前記基準点の前記評価値とに基づいて、前記評価値の密度分布を算出ように構成されている密度算出部(18)をさらに備え、
前記基準点調整部は、前記密度算出部が算出する前記密度分布に基づいて前記基準点設定部が前記基準点を設定する設定範囲を決定するように構成されている、
物体検出装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の物体検出装置であって、
前記基準点調整部は、前回の測定サイクルにおいて抽出された前記推定点の位置から離れるにしたがい、前記基準点を設定する間隔を大きくするように構成されている、
物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体の周囲に存在する物体を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体の周囲に存在する物体までの距離をセンサで測定し、測定した距離に基づいて物体を検出する技術が知られている。
例えば、下記の特許文献1に記載の技術では、センサによる検出領域を複数の評価領域に分割し、複数のセンサが測定する物体までの距離情報に基づいて各評価領域に物体が存在する確からしさを表す評価値を算出している。そして、特許文献1に記載の技術では、周囲よりも物体が存在する確からしさが高い評価値を有する評価領域に、物体が存在すると判定している。
【0003】
測定した距離に基づいて物体を検出する場合、移動体に搭載するセンサの数が多いほど、複数のセンサのそれぞれから物体までの距離の交点が示す位置に物体が存在することを高精度に検出できる。しかしながら、多数のセンサを移動体に搭載するのは、搭載場所の制約などの点から困難である。
【0004】
そこで、移動体が移動するにしたがって、これまでの過去の測定サイクルと今回の測定サイクルとにおいて得られた複数の測定結果に基づいて物体が存在すると推定される位置を更新していき、あたかも多数のセンサで物体の位置を検出することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、測定サイクルにおいて、物体が存在する確からしさが高い評価値を有する評価領域を選択し、選択した評価領域をさらに分割した小領域について物体を検出することも記載されている。
【0007】
しかしながら、発明者の詳細な検討の結果、これまでの過去の測定サイクルと今回の測定サイクルとにおいて得られた複数の距離情報に基づいて物体を検出する場合、特許文献1に記載の技術では、各測定サイクルにおいて、固定の大きさで検出領域と評価領域とを設定するので、これまでの測定サイクルで推定された物体の位置情報に基づいて検出領域と評価領域とを設定できないという課題が見出された。
【0008】
本開示の1つの局面は、これまでの測定サイクルで推定された物体の位置情報に基づいて物体が存在する候補の位置と数とを決定し、今回とこれまでの測定サイクルとで得られた距離の測定結果に基づいて物体の位置を高精度に検出する技術を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の1つの態様による物体検出装置(10、30)は、移動体(100)に搭載され、移動体の周囲の物体までの距離を少なくとも測定する1個以上のセンサ(2)から測定サイクル毎に取得する測定結果に基づいて、物体の位置を検出する物体検出装置であって、情報取得部(12)と、基準点設定部(14)と、評価部(16)と、抽出部(20)と、基準点調整部(22)と、物体検出部(24)と、を備える。
【0010】
情報取得部は、センサから測定結果を取得する。基準点設定部は、物体の位置を表す候補である複数の基準点を設定する。評価部は、これまでの測定サイクルと今回の測定サイクルとにおいて情報取得部から取得した測定結果に基づいて、基準点において物体が存在する確からしさを表す評価値を算出する。抽出部は、評価部が算出する評価値に基づいて、物体が存在すると推定される推定点を基準点から抽出する。
【0011】
基準点調整部は、前回の測定サイクルにおいて基準点設定部が設定した基準点の位置および数と抽出部が抽出した推定点の位置とに基づいて、今回の測定サイクルにおいて基準点設定部が設定する基準点の位置および数を決定する。物体検出部は、推定点の評価値に基づいて、推定点に物体が存在するか否かを判定する。
【0012】
この構成によれば、今回の測定サイクルにおいて、これまでの測定サイクルと今回の測定サイクルとにおいて情報取得部が取得した複数のサイクルの測定結果に基づいて基準点の評価値が算出されるので、あたかも多くのセンサから測定結果を取得するのと同様に、基準点の評価値を極力少ない数のセンサで高精度に算出できる。これにより、極力少ない数のセンサで物体の位置を高精度に検出できる。
【0013】
さらに、各測定サイクルにおいて固定ではなく、前回の測定サイクルにおいて設定された基準点の位置および数と抽出された推定点の位置とに基づいて、今回の測定サイクルにおいて基準点の位置および数を可変に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の物体検出装置を示すブロック図。
【
図7】第2実施形態の物体検出装置を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態を図に基づいて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す第1実施形態の物体検出装置10は、例えば車両等の移動体に搭載され、移動体の周囲に存在する物体の位置を検出する。物体検出装置10は、物体の位置を測定するセンサとして少なくとも1個のミリ波レーダ2から、ミリ波レーダ2から物体までの距離を測定した距離情報を含む測定結果を取得する。
【0016】
物体検出装置10は、情報取得部12と、基準点設定部14と、評価部16と、密度算出部18と、抽出部20と、基準点調整部22と、物体検出部24と、を備える。
[1-2.処理]
以下、物体検出装置10による物体検出処理について説明する。
【0017】
(1)物体検出処理1
情報取得部12は、所定の時間間隔で実行される測定サイクル毎に、ミリ波レーダ2から物体までの距離を測定した距離情報を測定結果として取得する。
図2に示すように、車両100は移動しているので、車両100に搭載されたミリ波レーダ2の位置は移動する。
図2では、点線の三角がこれまでの過去の測定サイクルにおけるミリ波レーダ2の位置を表し、実線の三角が今回の測定サイクルにおけるミリ波レーダ2の位置を表している。
【0018】
過去の測定サイクルにおいてミリ波レーダ2から取得された距離情報と、今回の測定サイクルにおいてミリ波レーダ2から取得された距離情報とに基づいて、距離の交点に物体200は存在すると推定される。
【0019】
基準点設定部14は、
図3に示すように、(N-1)番目の測定サイクルにおいて、物体の位置を表す候補である複数の基準点302を設定する設定範囲300として決定されたミリ波レーダ2の検出領域をメッシュ状に分割する。例えば、設定範囲300の角度範囲は180°、距離範囲はミリ波レーダ2の測定範囲である。角度範囲は、例えば1°毎に分割され、距離範囲はミリ波レーダ2が距離を測定する距離分解能で分割されている。以下、N番目の測定サイクルを単にNサイクルとも言う。
基準点設定部14は、(N-1)サイクルにおいて、距離と角度との分割線が表すメッシュの交点を、物体200の位置を表す候補である基準点302として設定する。
【0020】
評価部16は、(N-1)サイクルにおいて、これまでの測定サイクルにおいてミリ波レーダ2から取得された距離情報と、今回の(N-1)サイクルにおいてミリ波レーダ2から取得された距離情報とに基づいて、基準点302のそれぞれについて、物体200が存在する確からしさを表す評価値を算出する。
【0021】
評価部16は、上記の特許文献1に記載された誤差評価値と分散評価値とを評価値として算出してもよい。また、評価部16は、複数のサイクルで測定された物体までの距離が交差する交点密度を評価値として算出してもよい。
【0022】
密度算出部18は、基準点302の位置と評価値との関係を密度分布として算出し、例えば設定範囲に300に対応する密度マップを作成する。
抽出部20は、評価部16によって算出された評価値に基づいて、物体200が存在する可能性の高い推定点304を基準点302から抽出する。抽出部20は、基準点302の評価値と、物体200が存在する可能性が高いと判断できる所定値との比較結果に基づいて、基準点302から推定点304を抽出する。
【0023】
また、抽出部20は、密度算出部18が算出する密度の高い領域の基準点302を推定点304として抽出してもよい。
図3では、推定点304は1個だけ図示されているが、複数の物体が存在する場合は、複数の推定点304が抽出される。
【0024】
基準点調整部22は、(N-1)サイクルにおいて抽出部20が抽出した推定点304の位置を中心として、今回のNサイクルにおいて基準点設定部14が設定し、評価部16が評価値を算出する基準点の設定範囲を決定する。これは、前回の(N-1)サイクルにおいて抽出部20が抽出した推定点304の位置の周囲に、実際に物体が存在する可能性が高いと考えられるからである。
【0025】
例えば、Nサイクルにおいて基準点調整部22は、角度範囲として(N-1)サイクルで抽出された推定点304の位置±5°、距離範囲として(N-1)サイクルで抽出された推定点304の位置±ミリ波レーダ2の距離分解能×5を、設定範囲310として決定する。つまり、基準点調整部22がNサイクルにおいて決定する設定範囲310は、前回の(N-1)サイクルの設定範囲300よりも小さくなっている。
【0026】
また、Nサイクルにおいて基準点調整部22は、(N-1)サイクルで密度算出部18が作成した密度マップに基づき、周囲よりも密度の高い領域を設定範囲310としてもよい。
【0027】
尚、Nサイクルにおいて基準点調整部22が決定する設定範囲310の座標系は、(N-1)サイクルからNサイクルへの車両の移動距離と移動方向とを考慮し、(N-1)サイクルの設定範囲300の座標系に換算したものを使用する。これに対し、(N-1)サイクルの設定範囲300の座標系をNサイクルの設定範囲310の座標系に換算してもよい。
【0028】
Nサイクルにおいて基準点設定部14は、基準点調整部22が決定した設定範囲310を、(N-1)サイクルと同じ角度分割幅と距離分割幅とによりメッシュ状に分割し、メッシュ状の距離と角度との分割線の交点を基準点312として設定する。Nサイクルにおいて設定される基準点の数は、(N-1)サイクルよりも減少している。
【0029】
Nサイクルにおいて評価部16は、これまでに情報取得部12が取得した距離情報と、今回のNサイクルにおいて情報取得部12が取得する距離情報とに基づいて、Nサイクルの設定範囲310の各基準点312について評価値を算出する。
【0030】
尚、これまでの測定サイクルと今回の測定サイクルとにおいて、測定サイクル毎に情報取得部12が取得した距離情報が不規則にばらつく場合、またはミリ波レーダ2の反射波の強度が小さい場合、検出対象ではない雨や雪等のクラッタを測定している可能性が高いので、評価値を算出する対象から除外することが望ましい。
【0031】
Nサイクルにおいて抽出部20は、評価値が算出された基準点312から、物体200が存在する可能性が高い基準点312を推定点314として抽出する。
図3では、(N-1)サイクルの推定点304の位置が、Nサイクルにおいて推定点314の位置に更新されている。
【0032】
物体検出部24は、今回のNサイクルにおいて抽出された推定点314に対応する基準点312の評価値に基づいて、推定点314に物体が存在するか否かを判定する。
(2)物体検出処理2
図4に示すように、物体検出処理2では、Nサイクルの設定範囲300は(N-1)サイクルの設定範囲300と同じ大きさである。
【0033】
ただし、Nサイクルでは、(N-1)サイクルで抽出された推定点304を中心とした所定の角度範囲内の角度分割幅は(N-1)サイクルの角度分割幅と同じであるが、所定の角度範囲の外側の角度分割幅は(N-1)サイクルの角度分割幅よりも大きくなっている。Nサイクルと(N-1)サイクルとで距離分割幅は同じである。
【0034】
Nサイクルでは、このように設定範囲300の角度分割幅を設定することにより、(N-1)サイクルよりも基準点を減少させ、さらに設定範囲300の外側から設定範囲300において推定点304を中心とした所定の角度範囲の外側に進入する物体を検出できる。
【0035】
(3)物体検出処理3
図5に示すように、物体検出処理3では、Nサイクルの設定範囲320の角度範囲は、(N-1)サイクルの設定範囲300の角度範囲よりも小さくなっている。
【0036】
ただし、Nサイクルでは、(N-1)サイクルで抽出された推定点304よりも近い距離範囲における角度分割幅は(N-1)サイクルの角度分割幅と同じであるが、推定点304よりも遠い距離範囲の角度分割幅は(N-1)サイクルの角度分割幅よりも小さくなっている。今回のNサイクルにおいてこのように角度分割幅を設定するのは、以下の理由による。
【0037】
(N-1)サイクルの設定範囲300のように、角度分割幅が同じ場合、ミリ波レーダ2から遠くなるほど、基準点302同士の角度方向の距離は長くなる。したがって、ミリ波レーダ2から遠くなるほど、評価値に基づいて基準点302から抽出される推定点304の角度方向の位置精度は低下する。
【0038】
そこで、今回のNサイクルにおいてこのように角度分割幅を設定することにより、推定点304よりも遠い距離範囲の基準点322同士の角度方向の距離は、推定点304までの距離範囲の基準点322同士の角度方向の距離と同程度か、あるいはより短くなる。
【0039】
これにより、Nサイクルにおいて、推定点304よりも遠い距離範囲で抽出される推定点324の位置精度が向上する。
(4)物体検出処理4
図6に示すように、物体検出処理4では、基準点調整部22は、(N-1)サイクルの設定範囲300において、角度分割幅と距離分割幅との両方を、上記の物体検出処理1~3よりも大きくしている。そして、基準点調整部22は、Nサイクルにおいて、物体検出処理1と同じ大きさの設定範囲310において物体検出処理1と同じ角度分割幅と距離分割幅とに設定している。
【0040】
これにより、前回の(N-1)サイクルにおいて、評価部16が評価値を算出する基準点302の数が物体検出処理1~3よりも減少するので、評価部16が評価値を算出する処理負荷を低減できる。
【0041】
そして、Nサイクルにおいては、物体検出処理1と同じ大きさ、かつ同じ角度分割幅、かつ同じ距離分割幅の設定範囲310で基準点312の評価値を算出するので、物体検出処理1と同程度の精度で物体の位置を検出できる。
【0042】
[1-3.効果]
以上説明した第1実施形態では、以下の効果を得ることができる。
(1a)今回の測定サイクルにおいて、これまでの測定サイクルと今回の測定サイクルとにおいて情報取得部12が取得した複数のサイクルの測定結果に基づいて基準点の評価値が算出されるので、基準点の評価値を極力少ない数のミリ波レーダ2で高精度に算出できる。これにより、極力少ない数のミリ波レーダ2で物体200の位置を高精度に検出できる。
【0043】
(1b)各測定サイクルにおいて固定ではなく、前回の測定サイクルにおいて設定された基準点の位置および数と抽出された推定点の位置とに基づいて、今回の測定サイクルにおいて基準点の位置および数と基準点を設定する設定範囲の大きさを可変に決定できる。
【0044】
(1c)今回の測定サイクルにおいて評価値を算出する基準点の数が前回の測定サイクルよりも減少するので、評価値を算出する処理負荷を低減できる。
[2.第2実施形態]
[2-1.第1実施形態との相違点]
第2実施形態の基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0045】
図7に示す第2実施形態の物体検出装置30では、位置予測部32を備えている点で、第1実施形態の物体検出装置10と異なる。
図8に示すように、位置予測部32は、(N-1)サイクルにおいて抽出された推定点304に存在すると推定された物体の移動方向と、物体の移動体に対する相対的な速さと、物体検出装置30を搭載した移動体の移動方向と、移動体の速さとに基づいて、(N-1)サイクルの推定点304に存在すると推定された物体がNサイクルにおいて存在すると予測される位置を予測する。
【0046】
そして、Nサイクルにおいて基準点調整部22は、位置予測部32が予測した物体の位置を中心として、(N-1)サイクルよりも小さい角度範囲の設定範囲330を決定する。そして、設定範囲330において、基準点設定部14は基準点332を設定し、抽出部20は推定点334を抽出する。
【0047】
[2-2.効果]
以上説明した第2実施形態では、第1実施形態の効果(1a)~(1c)に加え、以下の効果を得ることができる。
【0048】
(2a)物体が移動する場合、前回の測定サイクルから今回の測定サイクルまでに物体が移動している位置を予測して今回の測定サイクルにおいて物体が存在する設定範囲320を決定するので、移動する物体を設定範囲320内で検出できる。
【0049】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0050】
(3a)上記実施形態では、説明の都合上、前回の(N-1)サイクルにおいて、ミリ波レーダ2の検出領域を設定範囲300としたが、これに限るものではない。前回の(N-1)サイクルにおいて、それまでの測定サイクルの物体検出処理により決定されたミリ波レーダ2の検出領域よりも小さい範囲を設定範囲としてもよい。
【0051】
(3b)上記実施形態では、少なくとも物体までの距離を測定するセンサとしてミリ波レーダ2を1個使用したが、これに限定されるものではなく、ミリ波レーダ2を複数使用してもよい。
【0052】
(3c)上記実施形態では、少なくとも物体までの距離を測定するセンサとしてミリ波レーダ2を使用したが、これに限定されるものではない。例えば、少なくとも物体までの距離を測定するセンサとして、カメラ、LiDAR等を使用してもよい。LiDARは、Light Detection and Rangingの略である。
【0053】
また、移動体の外側のセンサから、移動体の周囲に存在する物体の位置情報を取得してもよい。例えば移動体が車両の場合、車車間通信で他車両の位置情報を取得してもよいし、VICS(登録商標)等の路側機から他車両の位置情報を取得してもよい。VICS(登録商標)は、Vehicle Information and Communication Systemの略である。
【0054】
(3d)移動体が上記実施形態のように車両である場合、車両に接近しており車両と衝突する可能性がある物体を検出する必要がある。
これに対し、車両から離れて行く物体については、前回の測定サイクルで推定点として抽出されても、今回の測定サイクルでは設定範囲を決定するときに推定点として採用しないことが望ましい。これにより、車両と衝突する可能性がきわめて低い物体を検出するために設定範囲を決定して基準点の評価値を算出する処理を省略できる。
【0055】
(3e)これまでの測定サイクルと今回の測定サイクルとを合わせた測定サイクルの合計が所定サイクル数に達すると、今回の測定サイクルで推定点の更新を終了してもよい。
これは、これまでの測定サイクルと今回の測定サイクルとを合わせた測定サイクルの合計が所定サイクル数に達すると、推定点が示す位置に物体が実際に存在する確率が高くなるので、この推定点の位置を評価値に基づいて更新する必要がないからである。
【0056】
(3f)これまでの測定サイクルと今回の測定サイクルとを合わせた測定サイクルの合計が所定サイクル数を越えると、一番古い測定サイクルの測定結果は信頼度が低いので、基準点の評価値の算出対象から除外してもよい。
【0057】
(3g)移動体が測位衛星からの測位信号に基づいて移動体の位置を測位する測位装置と周囲の地図情報とを備えている場合、移動体の位置と地図情報とに基づいて、基準点の設定範囲を決定してもよい。
【0058】
(3h)これまでの測定サイクルで物体が静止物であると判断できる場合、静止物に対応する推定点を中心とした設定範囲を決定しなくてもよい。地図情報以外でも、移動体に対する相対的な速さと、物体の移動方向と、移動体の速さと、移動体の移動方向とから、物体が静止物であると判定できる。この場合、静止物に対応する推定点の位置情報は記憶しておくことが望ましい。
【0059】
(3i)上記実施形態の物体検出装置10、30は、移動体の周囲の物体の位置を検出する以外にも、自動駐車における駐車スペースの検出、物体の形状認識、SLAMによる移動体の位置推定、移動体の周囲の物体の位置を表すグリッドマップの作成等の用途に使用できる。SLAMは、Simultaneous Localization and Mappingの略である。
【0060】
(3j)上記実施形態では、今回の測定サイクルにおいて評価値を算出する基準点の数を前回の測定サイクルよりも減少させたが、今回の測定サイクルにおいて評価値を算出する基準点の数を前回の測定サイクル以上にしてもよい。
【0061】
(3k)本開示に記載の物体検出装置10、30およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の物体検出装置10、30およびその手法は、1つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の物体検出装置10、30およびその手法は、1つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと1つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された1つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。物体検出装置10、30に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、1つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0062】
(3l)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0063】
(3m)上述した物体検出装置10、30の他、当該物体検出装置10、30を構成要素とするシステム、当該物体検出装置10、30としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実体的記録媒体、物体検出方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0064】
2:ミリ波レーダ(センサ)、10、30:物体検出装置、12:情報取得部、14:基準点設定部、16:評価部、18:密度算出部、20:抽出部、22:基準点調整部、24:物体検出部、32:位置予測部、100:車両(移動体)、200:物体、300、310、320、330:設定範囲、302、312、322、332:基準点、304、314、324、334:推定点