(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】乗物用シート用バックフレーム
(51)【国際特許分類】
B60N 2/28 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
B60N2/28
(21)【出願番号】P 2020082005
(22)【出願日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴生
(72)【発明者】
【氏名】石川 朗
(72)【発明者】
【氏名】村上 俊男
(72)【発明者】
【氏名】石橋 松男
(72)【発明者】
【氏名】新福 健一郎
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-133051(JP,A)
【文献】特開2001-122005(JP,A)
【文献】特開2003-48467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャイルドシートが装着可能な乗物用シートに適用され、当該チャイルドシートのテザーストラップが係止可能なバックフレームにおいて、
上下方向に延びる第1サイドフレームと、
前記第1サイドフレームに対してシート幅方向にずれた位置に配置され、上下方向に延びる第2サイドフレームと、
シート幅方向に延びて前記第1サイドフレーム及び前記第2サイドフレームそれぞれに連結された連結フレームであって、円筒状のパイプ材で構成された連結フレームと、
テザーストラップが係止されるテザーアンカーを構成するとともに、ワイヤー状の部材にて構成されたアンカー部材であって、少なくとも2箇所で前記連結フレームに連結されて当該連結フレームと共に閉曲線を描く金属製のアンカー部材と、
前記アンカー部材に固定され、前記テザーアンカーを覆うテザーキャップが装着される金属製の支持部材とを備え、
前記アンカー部材は、
シート幅方向に延びて前記テザーアンカーを構成する部分、
前記テザーアンカーの延び方向一端側及び他端側から略上下方向に延びて前記支持部材に溶接された2つの溶接部、及び
前記2つの溶接部それぞれの延び方向端部側から前記連結フレー
ム側に延びた2つのアーム部であって、それぞれの延び方向先端側がJ字状に構成されて、円筒状のパイプ材で構成された前記連結フレームに巻き付いた状態で当該連結フレームに溶接されている2つのアーム部
を有して構成されている乗物用シート用バックフレーム。
【請求項2】
前記支持部材の外形寸法のうちシート幅方向と平行な部位の寸法は、前記アンカー部材の外形寸法のうちシート幅方向と平行な部位の寸法より大きい請求項1に記載の乗物用シート用バックフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チャイルドシートが装着可能な乗物用シート用のバックフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
チャイルドシートが装着可能なバックフレームは、例えば、特許文献1に示されるように、チャイルドシートのテザーストラップが係止可能なテザーアンカーを有する。なお、テザーストラップは、チャイルドシートの上部に設けられた固定用ベルトである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テザーストラップが係止されていない状態では、通常、テザーアンカーはテザーキャップにより覆われている。本開示は、テザーキャップを装着可能なバックフレームにおいて、当該バックフレームの構造を簡素化することが可能な乗物用シート用バックフレームの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
チャイルドシートが装着可能な乗物用シートに適用され、当該チャイルドシートのテザーストラップが係止可能なバックフレームは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0006】
すなわち、当該構成要件は、上下方向に延びる第1サイドフレーム(2)と、第1サイドフレーム(2)に対してシート幅方向にずれた位置に配置され、上下方向に延びる第2サイドフレーム(3)と、シート幅方向に延びて第1サイドフレーム(2)及び第2サイドフレーム(3)それぞれに連結された連結フレーム(4)と、テザーストラップが係止されるテザーアンカー(5A)を構成するとともに、ワイヤー状の部材にて構成されたアンカー部材(5)であって、少なくとも2箇所で連結フレーム(4)に連結されて当該連結フレーム(4)と共に閉曲線を描くアンカー部材(5)と、アンカー部材(5)に固定され、テザーアンカー(5A)を覆うテザーキャップ(7)が装着される支持部材(6)とである。
【0007】
これにより、当該バックフレームでは、テザーアンカー(5A)に作用する荷重の略全ては、アンカー部材(5)にて受ける構成となり、テザーキャップ(7)が装着される支持部材(6)には、当該荷重が殆ど作用しない。
【0008】
したがって、支持部材(6)は、テザーキャップ(7)を支持するために必要な強度及び構成を備えれば十分である。このため、支持部材(6)の形状が簡素な形状となり得る。延いては、バックフレームの構造が簡素化され得る。
【0009】
なお、当該バックフレームは、例えば、以下の構成であってもよい。
【0010】
支持部材(6)の外形寸法のうちシート幅方向と平行な部位の寸法(W1)は、アンカー部材(5)の外形寸法のうちシート幅方向と平行な部位の寸法(W2)より大きいことが望ましい。これにより、当該バックフレームは、テザーアンカー(5A)に求められる要件を満たすとともに、支持部材(6)の形状が簡素に成り得る。
【0011】
支持部材(6)及びアンカー部材(5)は、金属であり、さらに、アンカー部材(5)は、シート幅方向に延びてテザーアンカー(5A)を構成する部分、及び略上下方向に延びて支持部材(6)に溶接された溶接部(5B、5C)を有して構成されていることが望ましい。これにより、溶接長さが容易に確保され得る。
【0012】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係るバックフレームを示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るバックフレームを示す図である。
【
図3】第1実施形態に係るテザーアンカー及びアンカー部材等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0015】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係るバックフレームが適用された例である。各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載されたものである。
【0016】
したがって、当該バックフレームは、各図に付された方向に限定されない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示さない。
【0017】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示されたバックフレームは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0018】
(第1実施形態)
<1.バックフレームの概要>
図1に示されるバックフレーム1は、単座式の乗物用シートに適用されるバックフレームである。なお、バックフレーム1は、シートバックの骨格を構成するものである。シートバックは、着席者の背部を支持するための部位である。
【0019】
<2.バックフレームの構成>
バックフレーム1は、
図1及び
図2に示されるように、第1サイドフレーム2、第2サイドフレーム3、連結フレーム4、アンカー部材5及び支持部材6等を少なくとも備える。
【0020】
<サイドフレーム>
第1サイドフレーム2は、上下方向に延びる強度部材である。第2サイドフレーム3は、第1サイドフレーム2に対してシート幅方向にずれた位置に配置されて上下方向に延びる強度部材である。
【0021】
<連結フレーム>
連結フレーム4は、シート幅方向に延びて第1サイドフレーム2及び第2サイドフレーム3それぞれに連結された連結材である。当該連結フレーム4は、第1サイドフレーム2及び第2サイドフレーム3の上端と下端との間の部位に配置されている。
【0022】
本実施形態では、第1サイドフレーム2の上端と第2サイドフレーム3の上端とはアッパフレーム8により連結されている。つまり、連結フレーム4は、アッパフレーム8より下方側に配置された連結材である。なお、本実施形態に係る連結フレーム4は、円筒状のパイプ材で構成されている。
【0023】
<アンカー部材及び支持部材>
アンカー部材5は、
図3に示されるように、中実金属丸棒がフック形状に構成されたものである。当該アンカー部材5は、テザーアンカー5A、溶接部5B、5C、及びアーム部5D、5E等を有する。
【0024】
テザーアンカー5Aは、シート幅方向に延びてテザーストラップが係止される被係止部を構成する。溶接部5B、5Cそれぞれは、テザーアンカー5Aの延び方向一端側及び他端側から略上下方向(本実施形態では、下方)に延びて支持部材6の板面6Aに溶接された部位である。
【0025】
アーム部5D、5Eそれぞれは、溶接部5B、5Cそれぞれの延び方向端部(本実施形態では、下端)側から連結フレーム4側に延びた部分である。そして、アーム部5D、5Eそれぞれの延び方向先端側は、フック状(J字状)に構成されて連結フレーム4に巻き付いた状態で当該連結フレーム4に溶接されている。
【0026】
このため、アンカー部材5は、2箇所で連結フレーム4に連結されて当該連結フレーム4と共に略矩形状の閉曲線を描くように構成されている。なお、本実施形態に係るアンカー部材5は、テザーアンカー5A、溶接部5B、5C、及びアーム部5D、5Eが1本のワイヤー材、つまり中実金属丸棒が折り曲げられて構成された一体部品である。
【0027】
支持部材6は、テザーアンカー5Aを覆うテザーキャップ7(
図2参照)が装着される金属製のブラケットである。当該テザーキャップ7は、テザーアンカー5Aを挟み込むようにして支持部材6に固定されている。
【0028】
なお、テザーキャップ7は、樹脂製である。本実施形態に係るバックフレーム1では、テザーキャップ7は、バックフレーム1の完成後に当該バックフレーム1に装着される。つまり、本実施形態では、テザーキャップ7はバックフレーム1の構成要件ではない。
【0029】
そして、支持部材6の外形寸法のうちシート幅方向と平行な部位の寸法W1は、アンカー部材5の外形寸法のうちシート幅方向と平行な部位の寸法W2より大きい。つまり、テザーアンカー5A、溶接部5B、5Cは、支持部材6の外形端より内側に位置している。
【0030】
<3.本実施形態に係るバックフレームの特徴>
本実施形態に係るバックフレーム1では、テザーアンカー5Aがワイヤー状のアンカー部材5で構成され、かつ、当該アンカー部材5が2箇所で連結フレーム4に連結されて当該連結フレーム4と共に閉曲線を描いているとともに、テザーキャップ7が装着される支持部材6がアンカー部材5に固定されている。
【0031】
これにより、当該バックフレーム1では、テザーアンカー5Aに作用する荷重の略全ては、アンカー部材5にて受ける構成となるので、テザーキャップ7が装着される支持部材6には、当該荷重が殆ど作用しない。
【0032】
したがって、支持部材6は、テザーキャップ7を支持するために必要な強度及び構成を備えれば十分である。このため、支持部材6の形状が簡素な形状となり得る。延いては、バックフレームの構造が簡素化され得る。
【0033】
支持部材6の外形寸法のうちシート幅方向と平行な部位の寸法W1は、アンカー部材5の外形寸法のうちシート幅方向と平行な部位の寸法W2より大きい。これにより、当該バックフレーム1は、テザーアンカー5Aに求められる要件を満たすとともに、支持部材6の形状が簡素に成り得る。
【0034】
アンカー部材5は、シート幅方向に延びてテザーアンカー5Aを構成する部分、及び略上下方向に延びて支持部材6に溶接された溶接部5B、5Cを有して構成されている。これにより、確実に、溶接長さが容易に確保され得る。
【0035】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、アンカー部材5は、連結フレーム4と共に略矩形状の閉曲線を描くように構成されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、例えば、アンカー部材5は、連結フレーム4と共に略三角形状や台形形状の閉曲線を描くように構成されていてもよい。
【0036】
上述の実施形態では、支持部材6の外形寸法のうちシート幅方向と平行な部位の寸法W1は、アンカー部材5の外形寸法のうちシート幅方向と平行な部位の寸法W2より大きい構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0037】
上述の実施形態では、テザーキャップ7はバックフレーム1の構成要件ではなかった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、例えば、テザーキャップ7がバックフレーム1の構成要件であってもよい。
【0038】
上述の実施形態に係るアンカー部材5は、略上下方向に延びて支持部材6の板面6Aに溶接された溶接部5B、5Cを有していた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、例えば、溶接部5B、5Cが略シート幅方向に延びて板面6Aに溶接された構成であってもよい。
【0039】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0040】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1… バックフレーム
2… 第1サイドフレーム
3… 第2サイドフレーム
4… 連結フレーム
5… アンカー部材
5A… テザーアンカー
5B… 溶接部
5D… アーム部
6… 支持部材
6A… 板面
7… テザーキャップ