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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】固体酸化物形燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0612 20160101AFI20231226BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20231226BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20231226BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20231226BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20231226BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20231226BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20231226BHJP
【FI】
H01M8/0612
H01M8/12 101
H01M8/04 J
H01M8/0432
H01M8/0438
H01M8/04537
H01M8/04746
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020098165
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021190408
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 稔
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-047400(JP,A)
【文献】特開2011-207706(JP,A)
【文献】特開2013-187118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0612
H01M 8/12
H01M 8/04
H01M 8/0432
H01M 8/0438
H01M 8/04537
H01M 8/04746
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを水蒸気改質するための改質器と、前記改質器にて改質された改質燃料ガス及び酸化剤ガスの電気化学反応によって発電を行うセルスタックと、前記酸化剤ガスを前記セルスタックに供給するための酸化剤ガス供給手段と、前記燃料ガスを前記改質器に供給するための燃料ガス供給手段と、水蒸気改質に用いる改質用水を供給するための水供給手段と、前記改質器に関連して設けられた燃焼器と、前記セルスタックからの燃料オフガスに含まれる水蒸気を凝縮させる水蒸気凝縮部と、前記燃料オフガスの一部を前記燃料ガス供給手段の上流側に戻すためのリサイクル流路と、前記燃料ガス供給手段、前記酸化剤ガス供給手段及び前記水供給手段を作動制御するためのコントローラとを備え、前記改質器からの前記改質燃料ガスが前記セルスタックの燃料極側に送給され、前記酸化剤ガス供給手段からの前記酸化剤ガスが前記セルスタックの酸素極側に送給され、前記セルスタックの前記燃料極側からの前記燃料オフガスに含まれる水蒸気が前記水蒸気凝縮部にて冷却されて凝縮除去され、前記水蒸気が除去された前記燃料オフガスの一部が前記リサイクル流路を通して前記燃料ガス供給手段の上流側に戻され、その残部が前記燃焼器に送給され、前記セルスタックの前記酸素極側からの酸化剤オフガスにより燃焼される固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記コントローラは、前記リサイクル流路での炭素析出を防止するためのS/C条件である第1目標S/Cを演算する第1目標S/C演算手段と、システムの稼働S/Cを設定する稼働S/C設定手段と、前記水供給手段を作動制御するための制御手段とを含み、前記第1目標S/C演算手段は、前記リサイクル流路を通して戻される前記燃料オフガスの割合であるリサイクル率を用いて前記第1目標S/Cを演算し、前記稼働S/C設定手段は、前記第1目標S/C演算手段により演算された前記第1目標S/C以上となるように前記稼働S/Cを設定し、前記制御手段は、前記稼働S/Cとなるように前記水供給手段を作動制御することを特徴とする固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項2】
前記セルスタックの燃料極出口温度を検知するための第1温度検知手段を更に備え、前記コントローラの前記第1目標S/C演算手段は、前記リサイクル率、前記燃料ガスの供給流量と前記セルスタックの発電電流又は発電出力とによって決定される燃料利用率及び前記セルスタックの前記燃料極出口温度に基づいて前記第1目標S/Cを演算することを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項3】
前記第1目標S/C演算手段により演算される前記第1目標S/Cは、ブドワール反応を利用した炭素析出実験による炭素析出値K、
K=PCO/(PCO)(分圧:MPa)
を算出し、前記炭素析出値Kに安全率をのせた安全炭素析出値K’を算出し、更に前記燃料利用率、前記リサイクル率及び前記セルスタックの前記燃料極出口温度を変数としてガス組成を平衡計算し、平衡計算したガス組成における前記安全炭素析出値K’について、
K’=PCO (PCO) (分圧:MPa)
となるためのS/Cを算出し、前記安全炭素析出値K’を用いて前記燃料利用率、前記リサイクル率及び前記セルスタックの前記燃料極出口温度に基づいて算出されたS/C値であることを特徴とする請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記改質器での炭素析出を防止するためのS/C条件である第2目標S/Cを演算する第2目標S/C演算手段と、システムの目標S/Cを判定選択する目標S/C判定選択手段とを更に含み、前記目標S/C判定選択手段は、前記第1目標S/C及び前記第2目標S/Cのうち大きい方を判定選択し、前記稼働S/C設定手段は、前記第1目標S/Cが選択されたときに前記第1目標S/C以上となるように前記稼働S/Cを設定し、また前記第2目標S/Cが選択されたときに前記第2目標S/C以上となるように前記稼働S/Cを設定し、前記制御手段は、前記稼働S/Cとなるように前記水供給手段を作動制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項5】
前記改質器の改質器入口温度を検知するための第2温度検知手段を更に備え、前記第2目標S/C演算手段は、前記改質器入口温度に基づいて前記第2目標S/Cを演算することを特徴とする請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスを改質した改質燃料ガス及び酸化剤ガスの電気化学反応によって発電を行うセルスタックを備えた固体酸化物形燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物イオンを伝導する膜として固体電解質を用いた固体酸化物形のセルスタックを収納容器内に収納した固体酸化物形燃料電池システムが知られている。この固体酸化物形燃料電池システムにおいては、セルスタックは複数の燃料電池セルを積層して構成され、各燃料電池セルにおける固体電解質の片面側に燃料ガスを酸化するための燃料極が設けられ、その他面側に空気(酸化剤ガス)中の酸素を還元するための酸素極が設けられている。この固体酸化物形燃料電池システムの燃料電池セルの作動温度は約700~900℃と高く、このような高温下において、燃料ガス(改質燃料ガス)中の水素や一酸化炭素、炭化水素と空気中の酸素とが電気化学反応を起こすことによって発電が行われる。
【0003】
このような固体酸化物形燃料電池システムとして、燃料ガス(原燃料ガス)を水蒸気改質するための改質器と、改質器にて改質された改質燃料ガス及び酸化剤ガスの電気化学反応によって発電を行うセルスタックと、セルスタックの酸素極(空気極)側に酸化剤ガスとしての空気を供給するための空気供給手段と、改質器に燃料ガス(原燃料ガス)を供給するための燃料ガス供給手段とを備え、セルスタック及び改質器が高温状態に保たれる高温空間に収容されているものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この固体酸化物形燃料電池システムでは、セルスタックの上側に燃焼域(燃焼空間)が設けられ、この燃焼域の上方に改質器が配設されている。そして、改質器からの改質燃料ガスがセルスタックの燃料極側に送給され、空気供給手段からの空気がセルスタックの空気極側に送給され、このセルスタックにおける電気化学反応により発電が行われる。セルスタックの燃料極側からの燃料オフガス(即ち、アノードオフガス)及び空気極側からの空気オフガス(即ち、カソードオフガス)は燃焼域に送給されて燃焼され、この燃焼熱を利用して高温空間が高温状態に保たれるとともに、改質器などが加熱される。
【0005】
固体酸化物形燃料電池システムとして、セルスタックの上側に燃焼域を設けることに代えて、専用の燃焼器を備えたものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。この固体酸化物形燃料電池システムでは、セルスタックの燃料極側からの燃料オフガス(アノードオフガス)が燃料オフガス送給流路を通して燃焼器に送給され、またセルスタックの空気極側からの空気オフガス(カソードオフガス)が空気オフガス送給流路を通して燃焼器に送給され、この燃焼器において燃料オフガスが空気オフガスにより燃焼され、この燃焼熱を利用して高温空間が高温状態に保たれるとともに、改質器などが加熱される。
【0006】
近年、このような固体酸化物形燃料電池システムにおいて、発電効率を高めるようにしたものも提案されている(例えば、特許文献3参照)。この固体酸化物形燃料電池システムでは、セルスタックからの燃料オフガス(アノードオフガス)が高温空間から導出されて排熱回収用熱交換器に送給され、この排熱回収用熱交換器にて貯湯装置からの水との熱交換により冷却され、この冷却により燃料オフガスに含まれている水分が凝縮され、凝縮水は気液分離器で分離される。そして、水分が除去された燃料オフガス(アノードオフガス)の一部(10~40%程度)が燃料ガス供給ポンプの上流側の減圧領域(燃料ガス供給系)に戻され、この戻された燃料オフガスが燃料ガス供給源からの燃料ガス(例えば、都市ガス)に混合されて改質器に供給される。一方、残りの燃料オフガス(燃料ガス供給系に戻されないもの)は、高温空間内の燃焼器に送給され、この燃焼器にて空気オフガス(カソードオフガス)により燃焼される。
【0007】
このように燃料オフガスの一部を燃料ガス供給系に戻すことにより、燃料電池システムの発電効率を高めることができる。一般的にセルスタックの燃料利用率が通常82~83%程度であるのが、燃料オフガスを戻すことにより、この燃料利用率を87~90%程度まで高めることができ、5~7ポイント程度の改善をすることが可能になり、これにより、発電効率の嵩上げをすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-285340号公報
【文献】特開2008-21596号公報
【文献】特開2018-198116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
家庭用コージェネレーション用といった発電出力(発電電力)が数百W程度と小さい固体酸化物形燃料電池システムでは、セルスタックを格納する高温ハウジングからの放熱損失がある。セルスタックの発電出力が定格よりも小さい発電状態(即ち、部分負荷の発電状態)では、発電出力に対する放熱損失の割合が増加し、この燃料電池システムを高発電効率条件で作動させるのが難しくなる。このような場合、燃料電池システムの動作条件としては燃料利用率を下げることが行われる。
【0010】
高発電効率を狙う上述した固体酸化物形燃料電池システムでは、部分負荷の発電状態で燃料利用率が低くなったときに、セルスタックからの燃料オフガス(アノードオフガス)を燃焼器に送給する燃料オフガス送給流路、またこの燃料オフガス送給流路から分岐するリサイクル流路に炭素が析出することがあり、この炭素析出が発生すると、燃料オフガス送給流路及び/又はリサイクル流路の閉塞といったトラブルにつながる。特に、リサイクル流路に炭素析出が発生すると、リサイクル流路の流路抵抗が大きくなり、燃料オフガスのリサイクル流路を通しての燃料ガス供給系へのリサイクル流量が少なくなり、燃料電池システムを高発電効率で運転することが難しくなる。
【0011】
本発明の目的は、セルスタックの燃料極側からの燃料オフガスの一部を燃料ガス供給系に戻すリサイクル流路での炭素析出を抑えることができる固体酸化物形燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システムは、燃料ガスを水蒸気改質するための改質器と、前記改質器にて改質された改質燃料ガス及び酸化剤ガスの電気化学反応によって発電を行うセルスタックと、前記酸化剤ガスを前記セルスタックに供給するための酸化剤ガス供給手段と、前記燃料ガスを前記改質器に供給するための燃料ガス供給手段と、水蒸気改質に用いる改質用水を供給するための水供給手段と、前記改質器に関連して設けられた燃焼器と、前記セルスタックからの燃料オフガスに含まれる水蒸気を凝縮させる水蒸気凝縮部と、前記燃料オフガスの一部を前記燃料ガス供給手段の上流側に戻すためのリサイクル流路と、前記燃料ガス供給手段、前記酸化剤ガス供給手段及び前記水供給手段を作動制御するためのコントローラとを備え、前記改質器からの前記改質燃料ガスが前記セルスタックの燃料極側に送給され、前記酸化剤ガス供給手段からの前記酸化剤ガスが前記セルスタックの酸素極側に送給され、前記セルスタックの前記燃料極側からの前記燃料オフガスに含まれる水蒸気が前記水蒸気凝縮部にて冷却されて凝縮除去され、前記水蒸気が除去された前記燃料オフガスの一部が前記リサイクル流路を通して前記燃料ガス供給手段の上流側に戻され、その残部が前記燃焼器に送給され、前記セルスタックの前記酸素極側からの酸化剤オフガスにより燃焼される固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記コントローラは、前記リサイクル流路での炭素析出を防止するためのS/C条件である第1目標S/Cを演算する第1目標S/C演算手段と、システムの稼働S/Cを設定する稼働S/C設定手段と、前記水供給手段を作動制御するための制御手段とを含み、前記第1目標S/C演算手段は、前記リサイクル流路を通して戻される前記燃料オフガスの割合であるリサイクル率を用いて前記第1目標S/Cを演算し、前記稼働S/C設定手段は、前記第1目標S/C演算手段により演算された前記第1目標S/C以上となるように前記稼働S/Cを設定し、前記制御手段は、前記稼働S/Cとなるように前記水供給手段を作動制御することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、前記セルスタックの燃料極出口温度を検知するための第1温度検知手段を更に備え、前記コントローラの前記第1目標S/C演算手段は、前記リサイクル率、前記燃料ガスの供給流量と前記セルスタックの発電電流又は発電出力とによって決定される燃料利用率及び前記セルスタックの前記燃料極出口温度に基づいて前記第1目標S/Cを演算することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、前記第1目標S/C演算手段により演算される前記第1目標S/Cは、ブドワール反応を利用した炭素析出試験による炭素析出値K、
K=PCO/(PCO)(分圧:MPa)
を算出し、前記炭素析出値Kに安全率をのせた安全炭素析出値Ksを算出し、更に前記燃料利用率、前記リサイクル率及び前記セルスタックの前記燃料極出口温度を変数としてガス組成を平衡計算し、平衡計算したガス組成における前記安全炭素析出値Ksについて、
Ks=PCO/(PCO)(分圧:MPa)
となるためのS/Cを算出し、前記安全炭素析出値Ksを用いて前記燃料利用率、前記リサイクル率及び前記セルスタックの前記燃料極出口温度に基づいて算出されたS/C値であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、前記コントローラは、前記改質器での炭素析出を防止するためのS/C条件である第2目標S/Cを演算する第2目標S/C演算手段と、システムの目標S/Cを判定選択する目標S/C判定選択手段とを更に含み、前記目標S/C判定選択手段は、前記第1目標S/C及び前記第2目標S/Cのうち大きい方を判定選択し、前記稼働S/C設定手段は、前記第1目標S/Cが選択されたときに前記第1目標S/C以上となるように前記稼働S/Cを設定し、また前記第2目標S/Cが選択されたときに前記第2目標S/C以上となるように前記稼働S/Cを設定し、前記制御手段は、前記稼働S/Cとなるように前記水供給手段を作動制御することを特徴とする。
【0016】
更に、本発明の請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、前記改質器の改質器入口温度を検知するための第2温度検知手段を更に備え、前記第2目標S/C演算手段は、前記改質器入口温度に基づいて前記第2目標S/Cを演算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、燃料ガスを水蒸気改質するための改質器と、改質燃料ガス及び酸化剤ガスの電気化学反応によって発電を行うセルスタックと、酸化剤ガスをセルスタックに供給するための酸化剤ガス供給手段と、燃料ガスを改質器に供給するための燃料ガス供給手段と、改質用水を供給するための水供給手段と、セルスタックからの燃料オフガスに含まれる水蒸気を凝縮させる水蒸気凝縮部と、燃料オフガスの一部を燃料ガス供給手段の上流側に戻すためのリサイクル流路と、燃料ガス供給手段、酸化剤ガス供給手段及び水供給手段を作動制御するためのコントローラとを備えている。そして、コントローラは、リサイクル流路での炭素析出を防止するためのS/C条件である第1目標S/Cを演算する第1目標S/C演算手段と、システムの稼働S/Cを設定する稼働S/C設定手段とを含み、第1目標S/C演算手段は、リサイクル流路を通して戻される燃料オフガスの割合であるリサイクル率を用いて第1目標S/Cを演算し、稼働S/C設定手段は、第1目標S/C演算手段により演算された第1目標S/C以上となるように稼働S/Cを設定するので、水供給手段はこの第1目標S/C以上となるように改質用水を供給し、これによって、燃料オフガスを燃料ガス供給系に戻すリサイクル流路での炭素析出が抑えられ、析出炭素によりリサイクル流路が閉塞されるのを防ぐことできる。従って、セルスタックの燃料極側からの燃料オフガス(アノードオフガス)の一部がリサイクル流路を通して燃料ガス供給系に安定して流れ、高発電効率の運転を長期にわたって行うことができるとともに、炭素析出によるシステムの信頼性低下を避けることができる。
【0018】
また、本発明の請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、コントローラの第1目標S/C演算手段は、燃料利用率、リサイクル率及びセルスタックの燃料極出口温度に基づいて第1目標S/Cを演算するので、リサイクル流路で炭素析出が発生しない第1目標S/Cを算出することができる。
【0019】
また、本発明の請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、第1目標S/C演算手段により演算される第1目標S/Cは、ブドワール反応を利用した炭素析出試験による炭素析出値K、
K=PCO/(PCO)(分圧:MPa)
を算出し、これに安全率をのせた安全炭素析出値Ksを算出し、更に燃料利用率、リサイクル率及びセルスタックの燃料極出口温度を変数としてガス組成を平衡計算し、平衡計算したガス組成における安全炭素析出値Ksについて、
Ks=PCO/(PCO)(分圧:MPa)
となるためのS/Cを算出したS/C値であるので、リサイクル流路で炭素析出が発生しない第1目標S/Cを所要の通りに算出することができる。
【0020】
また、本発明の請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、コントローラは、改質器での炭素析出を防止するためのS/C条件である第2目標S/Cを演算する第2目標S/C演算手段と、システムの目標S/Cを判定選択する目標S/C判定選択手段とを更に含み、目標S/C判定選択手段は、第1目標S/C及び第2目標S/Cのうち大きい方を判定選択し、稼働S/C設定手段は、第1目標S/Cが選択されたときに第1目標S/C以上となるように稼働S/Cを設定し、また第2目標S/Cが選択されたときに第2目標S/C以上となるように稼働S/Cを設定するので、改質器及びリサイクル流路での炭素析出を抑えることができる。
【0021】
更に、本発明の請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、第2目標S/C演算手段は、改質器入口温度に基づいて第2目標S/Cを演算するので、改質器にて炭素析出が発生しない第2目標S/Cを演算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの第1の実施形態を簡略的に示す全体図。
図2】セルスタックの発電電流と燃料利用率との関係を示す図。
図3】セルスタックの発電電流とリサイクル率との関係を示す図。
図4図1の固体酸化物形燃料電池システムの制御系を簡略的に示すブロック図。
図5】本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの第2の実施形態を簡略的に示す全体図。
図6】改質器の入口温度とS/Cとの関係を示す図。
図7図5の固体酸化物形燃料電池システムの制御系を簡略的に示すブロック図。
図8図7の制御系による稼働S/Cの設定の流れを示すフローチャート。
図9】本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの第3の実施形態の制御系を簡略的に示すブロック図。
図10図9の制御系による稼働S/Cの設定の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの各種実施形態について説明する。まず、図1図4を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの第1の実施形態について説明する。
【0024】
図1において、図示の固体酸化物形燃料電池システム2は、原燃料ガスとして都市ガス、LPガスなどの燃料ガスを用いて発電を行うものであり、燃料ガス(原燃料ガス)を改質するための改質器4と、この改質器4にて改質された改質燃料ガス及び酸化剤ガスとしての空気の電気化学反応によって発電(所謂、発電反応)を行う固体酸化物形のセルスタック6と、を備えている。
【0025】
セルスタック6は、発電反応によって発電を行うための複数の固体酸化物形の燃料電池セルを集電部材を介して積層して構成されており、図示していないが、酸素イオンを伝導する固体電解質と、この固体電解質の片側に設けられた燃料極と、固体電解質の他側に設けられた酸素極(空気極)とを備え、固体電解質として例えばイットリアをドープしたジルコニアが用いられる。
【0026】
このセルスタック6の燃料極側8は、改質燃料ガス送給流路10介して改質器4に接続され、この形態では、改質器4は、改質用水を気化するための気化器12と一体的に改質ユニットとして構成されている。尚、気化器12は、改質器4と別体に構成し、気化器12にて気化された水蒸気を水蒸気送給流路(図示せず)を介して改質器4に送給するようにしてもよい。
【0027】
気化器12は、燃料ガス供給流路14を介して燃料ガスを供給するための燃料ガス供給源(図示せず)(例えば、埋設管や貯蔵タンクなどから構成される)に接続され、燃料ガス供給源からの燃料ガス(原燃料ガス)が燃料ガス供給流路14を通して気化器12に供給される。尚、この燃料ガス供給流路14を改質器4に接続し、燃料ガス供給源からの燃料ガスを改質器4に直接的に供給するようにしてもよい。
【0028】
また、この気化器12は水供給流路18を通して改質用水が供給される。改質器4には改質触媒が収容され、改質触媒として例えばアルミナにルテニウムを担持させたものが用いられ、この改質触媒によって、燃料ガス供給流路14を通して供給される燃料ガスが気化器12にて気化された水蒸気でもって水蒸気改質される。
【0029】
この燃料ガス供給流路14には、気化器12から上流側に向けて順に脱硫器20、第1絞り部材22、燃料ガス供給ポンプ24(燃料ガス供給手段を構成する)、第2絞り部材26、圧力調整部材としてのゼロガバナ28、燃料流量センサ30及び遮断弁32が配設されている。脱硫器20は、燃料ガスに含まれる硫黄成分(付臭剤中の硫黄成分)を除去し、燃料ガス供給ポンプ24は、燃料ガス供給流路14を流れる燃料ガスを昇圧して気化器12に供給し、この燃料ガス供給ポンプ24の回転数を制御することによって燃料ガスの供給流量が調整され、燃料ガス供給ポンプ24の回転数を大きくする(又は小さくする)と、燃料ガス供給流路14を通して供給される燃料ガスの供給流量が多くなる(又は少なくなる)。
【0030】
また、ゼロガバナ28は、燃料ガス供給源(図示せず)から燃料ガス供給流路14を通して供給される燃料ガスを所定圧力(即ち、大気圧)に調整し、燃料ガス流量センサ30は、燃料ガス供給流路14を通して供給される燃料ガスの流量を測定し、遮断弁32は、閉状態になると燃料ガス供給流路14を遮断して燃料ガスの供給を停止する。また、燃料ガスポンプ24の両側(即ち、下流側及び上流側)に位置する第1及び第2絞り部材22,26は、燃料ガス供給流路14を流れる燃料ガスの流量を安定させるために設けられ、第1絞り部材22は例えばキャピラリー管から構成され、第2絞り部材26は、例えば小さいオリフィスを有する絞り部材から構成される。また、燃料ガス流量センサ30は、例えば熱式流量センサから構成することができる。尚、燃料ガスを安定的して供給することができるときには、第1絞り部材22を省略するようにしてもよく、また第2絞り部材26に代えて例えばバッファ-タンクを用いるようにしてもよい。
【0031】
水供給流路18には水供給ポンプ34(水供給手段を構成する)が配設され、この水供給ポンプ34によって、改質用水が後述するように水供給流路18を通して気化器12に供給される。この水供給ポンプ34の回転数を制御することによって改質用水の供給流量が調整され、水供給ポンプ34の回転数を大きくする(又は小さくする)と、水供給流路18を通して供給される改質用水の供給流量が多くなり(又は少なくなり)、この水供給ポンプ34を作動制御することによって、スチームカーボン比(「S/C」とも称する)が後述する如く調整される。
【0032】
スチームカーボン比(S/C)とは、改質器4に供給される燃料ガス(原燃料ガス)中の炭素のモル数に対する改質器4に供給される改質用水のモル数の比率であり、このS/C、原燃料ガスの供給流量及び改質用水の供給流量とは、
S/C=(22.4X(改質用水の供給流量)/18)/(1.2X(燃料ガスの供給流量)) ・・・(1)
の関係があり、この(1)式において、「22.4」は、標準状態における気体の体積であり、「18」は、水の分子量であり、「1.2」は、燃料ガスの供給流量(単位時間当たりの流量)からカーボンのモル数を算出するための係数であり、燃料ガスが天然ガスベースのものである場合の代表値であり、燃料ガス(原燃料ガス)の組成に依存する。
【0033】
このセルスタック6の酸素極(空気極)側36は、空気供給流路38を介して空気供給手段としての空気ブロア40に接続されている。空気ブロア40は、空気(酸化剤ガス)を空気供給流路38を通してセルスタック6の酸素極側36(空気極側)に供給する。この空気ブロア40の回転数を制御することによって空気の供給流量が調整され、空気ブロア40の回転数を大きくする(又は小さくする)と、空気供給流路38を通して供給される空気(酸化剤ガス)の供給流量が多くなる(又は少なくなる)。
【0034】
セルスタック6の燃料極側8から排出される燃料オフガス(即ち、アノードオフガス)は、燃料オフガス導出流路44を通して水蒸気凝縮部46に送給され、この水蒸気凝縮部46にて燃料オフガスに含まれている水蒸気が凝縮されて除去され、水蒸気が除去された燃料オフガスは、燃料オフガス送給流路48を通して燃焼器50に送給される。また、セルスタック6の酸素極側36から排出される空気オフガス(酸化剤オフガス)(即ち、カソードオフガス)は、空気オフガス送給流路52(酸化剤オフガス送給流路)を通して燃焼器50に送給され、この燃焼器50において、セルスタック6の燃料極側8からの燃料オフガス(燃料ガスを含んでいる)と酸素極側36(空気極側)からの空気オフガス(酸素を含んでいる)とが燃焼される。
【0035】
気化器12及び改質器4は、この燃焼器50に接触乃至近接して配置されており、この燃料オフガスの燃焼熱を利用して気化器12及び改質器4などが加熱されるとともに、後述する高温空間64が高温状態に保たれる。燃焼器50からの燃焼排気ガスは排気ガス排出流路54を通して大気に排出される。
【0036】
更に、燃料オフガス送給流路48から分岐してリサイクル流路56が設けられ、このリサイクル流路56の下流側は、燃料ガス供給流路14、具体的には燃料ガス供給ポンプ24の配設部位と第2絞り部材26の配設部位との間の部位に接続されている。このようにリサイクル流路56が設けられているので、燃料オフガス送給流路48を流れる燃料オフガス(アノードオフガス)の一部はリサイクル流路56を通して燃料ガス供給系に、具体的には燃料ガス供給流路14における燃料ガス供給ポンプ24の配設部位の上流側に戻され、その残部は、燃料オフガス送給流路48を通して燃焼器50に送給される。
【0037】
この実施形態では、改質ユニット(改質器4及び気化器12)、セルスタック6及び燃焼器50が高温ハウジング62に収容されている。高温ハウジング62は、金属製(例えば、ステンレス鋼製)であり、その内面は断熱部材(図示せず)で覆われており、その内側に高温空間64を規定し、改質ユニット(改質器4及び気化器12)、セルスタック6及び燃焼器50がこの高温空間64内で高温状態に保たれる。
【0038】
この固体酸化物形燃料電池システム2では、燃料オフガス導出流路44の一部が高温ハウジング62(高温空間64)外に導出されて水蒸気凝縮部46に接続され、この水蒸気凝縮部46からの燃料オフガス送給流路48の一部が高温ハウジング62(高温空間64)外からその内側に導入されて燃焼器50に接続されている。この実施形態では、水蒸気凝縮部46は、排熱回収用の第1熱交換器66と、燃料オフガスから凝縮水を分離するための気液分離器68と、凝縮水に含まれる不純物を除去するためのイオン交換器70と、凝縮水を溜めるための水回収容器72とを含んでいる。気液分離器68は例えばドレンセパレータから構成され、第1熱交換器66は、例えば、燃料オフガスの熱を温水として貯湯するためのコ-ジェネレーションシステム用の貯湯装置74と組み合わせて用いられている。
【0039】
この貯湯装置74は、温水として貯湯するための貯湯タンク76と、第1熱交換器66を通して循環する循環流路78と、循環流路78に配設された循環ポンプ80とを備えている。この貯湯装置74と組み合わせて用いると、循環ポンプ80によって貯湯タンク76内の水が循環流路66を通して循環され、この第1熱交換器66にて循環流路78を流れる水と燃料オフガス導出流路44を流れる燃料オフガスとの間で熱交換が行われ、熱交換により加温された温水が貯湯タンク76に貯えられる。また、この熱交換により燃料オフガスが冷却されてそれに含まれた水蒸気が凝縮され、燃料オフガス及び凝縮された水(凝縮水)が下流側の気液分離器68に流れる。
【0040】
気液分離器68は、凝縮水と燃料オフガスとを分離し、分離された凝縮水は、下側のイオン交換器70に流れ、これに内蔵されたイオン交換樹脂によってイオン成分などの不純物が除去された後に水回収タンク72に蓄えられる。この水回収タンク72に回収された水(凝縮水)は改質用水として用いられ、水供給ポンプ34の作用によって水供給流路18を通して気化器12に送給される。
【0041】
また、空気供給流路38(酸化剤ガス供給流路)に関連して、空気予熱用の第2熱交換器82が配設され、この第2熱交換器82は、空気供給流路38を流れる空気(酸化剤ガス)と排気ガス排出流路54を通して排出される燃焼排気ガスとの間で熱交換を行い、この熱交換により加温された空気(酸化剤ガス)がセルスタック6の酸素極側36に送給される。
【0042】
更に、燃料オフガス送給流路48に関連して、燃料オフガス余熱用の第3熱交換器84が配設され、この第3熱交換器84は、燃料オフガス送給流路48を流れる燃料オフガスと燃料オフガス導出流路44を流れる燃料オフガスとの間で熱交換を行い、この熱交換により加温された燃料オフガスが燃焼器50に送給される。尚、第2及び第3熱交換器82.84は、高温ハウジング62(高温空間64)内に収容されて高温状態に保たれる。
【0043】
この固体酸化物形燃料電池システム2では、電力負荷の大きさに応じてセルスタック6の発電出力(発電電流)が変動するように構成され、例えば電力負荷が大きくなる(又は小さくなる)と、それに追従してセルスタック6の発電出力(発電電流)も大きくなる(又は小さくなる)ように構成されている。固体酸化物形燃料電池システム2をこのように制御する場合、セルスタック6の発電電流とセルスタック6での燃料利用率との関係は、例えば、図2に示すような関係となり、発電電流が上昇するにつれて燃料利用率も大きくなり、例えば発電電流が10Aのときには燃料利用率が55%前後であるが、発電電流が定格の30Aまで上昇すると、燃料利用率は82%前後まで上昇する。尚、この燃料利用率とは、セルスタック6に供給される燃料ガスの供給量に対するセルスタック6での発電反応で消費される燃料ガスの消費量、即ち(燃料利用率=燃料ガスの消費量/燃料ガスの供給量)の比率である。
【0044】
また、リサイクル流路56を備えた固体酸化物形燃料電池システム2では、セルスタック6の発電電流とリサイクル率との関係は、例えば、図3に示す関係となり、発電電流が上昇するにつれてリサイクル率は小さくなり、例えば、発電電流が10Aのときにはリサイクル率は0.33前後であるが、発電電流が30Aになるとリサイクル率は、0.3程度に低下する。尚、このリサイクル率とは、セルスタック6の燃料極側8から送給される燃料オフガスの送給量に対するリサイクル流路56を通して燃料ガス供給系に戻されるリサイクル送給量、即ち(リサイクル率=リサイクル送給量/燃料オフガスの送給量)の比率である。
【0045】
このリサイクル率の評価方法であるが、例えば、燃料ガス供給ポンプ24の出口の燃料ガスを少量抜き出し、抜き出した燃料ガスのガス組成をガスクロマトグラフィーで求め、燃料利用率(燃料ガス流量と発電電流からわかる)を合わせて計算すると、リサイクル率を求めることができる。発電電流の条件を変えてリサイクル率をあらかじめ求めておくことにより、図3に示すデータ(即ち、セルスタック6の発電電流とリサイクル率との関係)を得ることができる。図3では発電電流が少ないところでリサイクル率が高くなっているが、これは燃料ガス供給ポンプ24の周辺の部品構成(第2絞り部材26等)によるものであり、この部品構成によって、発電電流の少ないときのリサイクル率も変わる。尚、この固体酸化物形燃料電池システム2でリサイクル率を常時測定することは難しいが、燃料ガス供給ポンプのデューディ比と燃料ガス流量センサ30の検知流量を比較することによって、本来の稼働状態かどうかについては把握することは可能である。
【0046】
図2を参照して、セルスタック6の発電電流と燃料利用率との関係について説明したが、セルスタック6の発電出力と燃料利用率との関係は図2と同様になり、またセルスタック6の発電出力とリサイクル率の関係は図3と同様になる。それ故に、図2及び図3におけるセルスタック6の発電電流はセルスタック6の発電出力と置き換えることができる。
【0047】
このような固体酸化物形燃料電池システム2では、燃料利用率が低い部分負荷の発電状態においては、燃料オフガス送給流路から分岐するリサイクル流路56で炭素析出が発生するおそれがあり、この炭素析出を抑えるために、S/Cを次のように設定して改質用水の供給量を制御するように構成されている。
【0048】
ここで、リサイクル流路56で炭素析出が生じないためのS/Cの算出方法について説明する。この固体酸化物形燃料電池システム2においては、燃料オフガスのリサイクル率が高い、燃料ガスの燃料利用率が低い、またセルスタック6の燃料極出口温度が高い場合に、リサイクル経路56を流れる燃料オフガス(水蒸気凝縮部46を流れることによって温度が低下している)で炭素析出が起こりやすくなる。この炭素析出のメカニズムとしては、ブドワール反応(CO不均化反応)として知られている反応であり、
2CO→C+CO ・・・(a)
で表せる。この反応式(a)の平衡では、温度が高いとCOが高濃度で安定に存在できるが、その組成で温度が下がると、反応が右に行き、炭素が析出するようになる。
【0049】
この固体酸化物形燃料電池システム2においては、燃料オフガスはセルスタック6の燃料極出口温度(通常、例えば700℃前後)から例えば100℃前後まで下がるため、反応式(a)の平衡計算上は炭素析出となり、この固体酸化物形燃料電池システム2の構成が成立しなくなる。
【0050】
そこで、本発明者は炭素析出試験によって、燃料オフガス(アノードオフが得)の組成が550~600℃を通る際の炭素析出を調べればよく、それ以下の温度(平衡上はさらに炭素析出側となる温度)については考慮する必要がないことを確認した。
【0051】
〈炭素析出試験方法〉
この炭素析出試験は、燃料オフガス(アノードオフガス)の組成で行ったものではなく、天然ガスベースの都市ガス(13A)をS/Cが1.0~2.0となるように改質し、改質器4における代表的な改質出口温度を650℃となるように、また改質触媒としてのアルミナやニッケル触媒の温度を550~600℃の温度領域となるように設定し、このような温度状態を5時間以上保持して炭素析出を調べるという方法で試験をした。
【0052】
改質触媒の能力・ガス流速から改質器4の改質触媒出口でのガス組成は平衡組成になることから、この試験で炭素析出が認められた条件を整理した。その上で、反応式(a)に従って、改質器4の改質出口段階の平衡組成から、炭素が析出しだす条件の炭素析出値K、
K=PCO/(PCO) ・・・(2)
を求めた。この(2)式における分圧は、MPaである。この炭素析出値Kは小さいほど炭素析出が発生し易くなる。この(2)式を用いることにより、実際に炭素析出が発生し始める炭素析出値Kがこの試験で求めることができる。
【0053】
〈燃料オフガス条件・システム動作条件〉
この固体酸化物形燃料電池システム2のセルスタック6の燃料オフガス(アノードオフガス)の組成を規定するものとして、S/C、燃料利用率、リサイクル率及び燃料オフガスの温度(具体的には、セルスタック6の燃料極出口温度)の4つのパラメータを抽出した。この4つのパラメータが決まれば燃料オフガスの平衡組成が決まることになる。セルスタック6の燃料極側はニッケルが多量に存在すること、温度が高いことから、その出口温度での平衡組成とすることができる(平衡組成ということは、量論、熱力学計算から平衡組成を計算することができることになる)。
【0054】
そこで、燃料利用率、リサイクル率及びセルスタック6の燃料極出口温度の3つを変数にし、燃料オフガスのガス組成を平衡計算し、上記(2)式を用いて、

K’=PCO/(PCO) ・・・(3)
を満たすS/Cを求める。このとき、値K’は、上述の炭素析出試験方法において(2)式を用いて求めた値Kでもよいが、安全率S(S>1)を掛けた安全炭素析出値(Ks=S×K)を用いるようにしてもよい。このようにしてリサイクル流路56にて炭素析出が生じないS/Cを求めることができる。
【0055】
〈具体的な炭素析出試験〉
触媒反応実験装置を用いて上述の炭素析出試験方法を行ってリサイクル流路56にて酸素析出が発生しないS/Cを求めると、次のようになった。この触媒反応実験装置による試験では、燃料オフガス(アノードオフガス)の組成で行ったものではなく、天然ガスベースの都市ガス(13A)をS/Cが1.0~2.0となるように改質し、改質触媒の出口温度を650℃に制御し、改質ガスを下流側に設置したα-アルミナを通しながら冷却し、550~600℃の温度領域で5時間保持して炭素析出の有無を調べた。この試験では、S/Cが1.0、1.2、1.5及び2.0である4種類の改質ガスを用いて炭素析出試験を行った。この試験結果、S/Cが1.5である改質ガスでは、炭素は全く析出しなかったが、S/Cが1.2である改質ガスでは、炭素が微量析出した。
【0056】
この触媒反応実験装置を用いた同様の炭素析出試験を、改質触媒としてα―アルミナに代えて金属ニッケルを主成分とする多孔体で行った。上述したと同様に、S/Cが1.0、1.2、1.5及び2.0である4種類の改質ガスを用いて行った。この試験の結果、炭素の析出量は顕著に増えたが、S/Cが1.2の改質ガスでは、炭素は析出したが、S/Cが1.5の改質ガスでは、炭素の析出なく、炭素析出の有無については共通の結果であった。
【0057】
この試験結果から、S/Cが1.5で、改質出口温度が650℃である改質ガスの平衡組成から上記(2)式を用いて炭素析出値Kを算出したところ、この炭素析出値Kは38(K=38)であった。触媒に関する文献「Catalysis Science and
Technology(Edited by John R.
Anderson and Michel Bouda,Volume 5, 1984」によると、上記(2)式の平衡定数は、600℃で107であり、また550℃で450である。炭素析出値Kがこれらの値より低いと、平衡上は炭素析出側となる。ただし、今回の試験結果から、K=38に相当するガス組成であれば炭素析出が回避できることになる。
【0058】
ここで、燃料利用率、リサイクル率、セルスタック6の燃料極出口温度の3つを変数にし、ガス組成を平衡計算し、上記(2)式における炭素析出値Kが上記(3)式における値K'になるためのS/Cを求める。安全率Sを掛け、例えば安全炭素析出値Ksを100とした(Ks=100)場合、次のようになり、この計算結果を整理すると、表1に示すようになる。
【0059】
即ち、スチームカーボン比S/Cを求める関数は、
S/C=f(燃料利用率、リサイクル率、燃料極出口温度) ・・・(4)
となり、この(4)式を用いてS/Cを求めると、表1の結果が得られる。
【0060】
【表1】
上述したことから理解されるように、リサイクル流路56を通してのリサイクル率、燃料ガスの燃料利用率及びセルスタック6の燃料極出口温度の3つのパラメータの値が判れば、これらの値に基づいて、リサイクル流路56での炭素析出が生じないS/Cを求めることができる。
【0061】
この表1の結果を近似式にすることができ、この近似式では、S/Cは、次の数式で表すことができる。
【0062】
【数1】
【0063】
この実施形態では、炭素析出が生じないS/Cが、この近似式を用いて求めているが、この近似式ではなく、上記表1のようにしても求めることができる。
【0064】
図1及び図4を参照して、この固体酸化物形燃料電池システム2では、上述のS/Cの算出方法を実現するために、次のように構成されている。セルスタック6の燃料極出口温度を検出するために温度センサ92(第1温度検知手段を構成する)が設けられている。この燃料極出口温度を直接測定するのが望ましいが、測定困難なときには、セルスタック6を代表する別の温度から燃料極側出口部の温度を推定してもよい。セルスタック6の別の温度及び動作条件とその燃料極出口温度との相関を予め測定しておくことにより、相応の精度でセルスタック6の燃料極出口温度を推定可能となり、このような温度を燃料極出口温度として用いるようにしてもよい。
【0065】
この固体酸化物形燃料電池システム2は、システムを制御するためのコントローラ94を備え、温度センサ92からの検知信号がコントローラ94に送給される。コントローラ94はマイクロプロセッサなどから構成され、燃料利用率演算手段96、リサイクル率演算手段98、目標S/C演算手段100、稼働S/C設定手段102及び制御手段104を備えている。
【0066】
燃料利用率演算手段96は、後述するように燃料利用率を演算し、リサイクル率演算手段98は、後述するようにリサイクル率を演算し、目標S/C演算手段100(第1目標S/C演算手段として機能する)は、後述する如くして目標S/C(第1目標S/Cとなる)を演算し、稼働S/C設定手段102は、後述する如く稼働S/Cを設定し、制御手段104は、設定稼働S/Cとなるように水供給ポンプ34を作動制御する。
【0067】
このコントローラ94は、更に、メモリ手段106を含んでおり、このメモリ手段106には、例えば図2に示すような発電電流-燃料利用率マップ、例えば図3に示すような発電電流-リサイクル率マップ及び目標S/C算出データ(即ち、上記(5)式の近似式データ)が登録されている。
【0068】
この固体酸化物燃料電池システム2では、電力負荷の変動に追従してセルスタック6の発電電流(発電出力)が変動するように構成され、例えば、図2に示すように、電力負荷の変動に追従してセルスタックの6の発電出力(発電出力)が、例えば4~30A(400~3000W)の範囲で変動するように構成されている。
【0069】
この固体酸化物形燃料電池システム2の制御は、例えば、次のように行われる。電力負荷に追従してセルスタック6の発電出力(発電出力)が決まると、燃料利用率演算手段96は、メモリ手段106に登録された発電電流-燃料利用率マップ(例えば、図2参照)に基づいて、発電電流に対応する燃料利用率を演算し、この燃料利用率でシステムが運転される。即ち、この燃料利用率となるように、制御手段104は燃料ガス供給ポンプ24、空気ブロア40及び水供給ポンプ34を作動制御し、セルスタック6はこの燃料利用率となるように発電運転される。
【0070】
そして、リサイクル流路56にて炭素析出が発生しないように、次のようにして稼働S/Cが設定される。即ち、リサイクル率演算手段98は、メモリ手段106に登録された発電電流-リサイクル率マップ(例えば、図3参照)に基づいて、発電電流に対応するリサイクル率を演算する。次に、目標S/C演算手段100(第1目標S/C演算手段)は、メモリ手段106に登録された目標S/C算出データを読み出し、燃料利用率演算手段96により演算された燃料利用率、リサイクル率演算手段98により演算されたリサイクル率、及び温度センサ92(第1温度検知手段)により検知されたセルスタック6の燃料極出口温度を用いて目標S/Cを演算する。
【0071】
このようにして目標S/Cが求められると、稼働S/C設定手段102は、例えばこの目標S/Cがシステムの稼働S/Cとなるように設定し、制御手段104は、この稼働S/Cとなるように水供給ポンプ34を作動制御し、これによって、リサイクル流路56での炭素析出を抑える量の改質用水が供給され、リサイクル流路の閉塞といったトラブルの発生を防ぐことができる。
【0072】
尚、この第1の実施形態では、目標S/C演算手段100により演算した目標S/Cを稼働S/Cに設定しているが、この目標S/Cより大きい値を設定することにより、リサイクル流路56での炭素析出を抑えることができ、稼働S/Cとしてこの目標S/Cの例えば1.1~1.3倍程度の値に設定するようにしてもよい。
【0073】
次に、図5図8を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの第2の実施形態について説明する。この第2の実施形態においては、リサイクル流路での炭素析出と改質器での炭素析出とを抑えるように稼働S/Cが設定されるように構成されている。尚、以下の実施形態において、上述した第1の実施形態と実質上同一のものには同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0074】
図5及び図7において、この第2の実施形態の固体酸化物形燃料電池システム2Aにおいては、セルスタック6の燃料極出口温度を検知する温度センサ、即ち第1温度センサ92(第1温度検知手段を構成する)に加えて、改質器4の入口温度を検知する温度センサ、即ち第2温度センサ102(第2温度検知手段を構成する)が設けられ、第1及び第2温度センサ92,112からの検知信号がコントローラ94Aに送給される。
【0075】
また、コントローラ94Aは、燃料利用率演算手段96、リサイクル率演算手段98、第1目標S/C演算手段100、稼働S/C設定手段102A及び制御手段104に加えて、第2目標S/C演算手段114及び目標S/C判定選択手段116を備えている。第2目標S/C演算手段114は、改質器4にて炭素析出が生じないS/C条件である第2目標S/Cを後述する如くして演算し、目標S/C判定選択手段116は、第1目標S/Cと第2目標S/Cとの大きい方を判定して選択し、稼働S/C設定手段102Aは、第1目標S/Cが大きいときにはこの第1目標S/Cを稼働S/Cとして設定し、第2目標S/Cが大きいときにはこの第2目標S/Cを稼働S/Cとして設定する。
【0076】
更に、メモリ手段106Aには、発電電流-燃料利用率マップ、発電電流-リサイクル率マップ及び第1目標S/C算出データに加えて、改質器入口温度-S/Cマップが登録される。この第2の実施形態におけるその他の構成は、上述した第1の実施形態と実質上同一である。
【0077】
この第2の実施形態の固体酸化物形燃料電池システム2Aでは、リサイクル流路56及び改質器4の双方にて炭素析出が発生しないように、次のようにして稼働S/Cが設定される。主として図7及び図8を参照して、まず、上述したと同様にして、第1目標S/Cの演算が行われる。即ち、燃料利用率演算手段96は、発電電流-燃料利用率マップ(例えば図2参照)に基づいて、セルスタック6の発電電流に対応する燃料利用率を演算し(ステップS1)、リサイクル率演算手段98は、メモリ手段106に登録された発電電流-リサイクル率マップ(例えば、図3参照)に基づいて、発電電流に対応するリサイクル率を演算する(ステップS2)。そして、第1目標S/C演算手段100は、メモリ手段106に登録された目標S/C算出データを読み出し、上記燃料利用率、上記リサイクル率及び第1温度センサ92(第1温度検知手段)の検知温度(セルスタック6の燃料極出口温度)を用いて第1目標S/Cを演算する(ステップS3)。
【0078】
次に、第2目標S/Cの演算が行われる。即ち、第2目標S/C演算手段114は、改質器入口温度-S/Cマップ(例えば図6参照)に基づいて、改質器4の入口温度(即ち、第2温度センサ112の検知温度)に対応するS/Cを演算し(ステップS4)、このS/Cが第2目標S/Cとなる。第2目標S/Cとなるように改質用水の供給量を制御すると、改質器4での炭素析出が抑えられることになる。
【0079】
このようにして第1目標S/C及び第2目標S/Cが求められると、次に、目標S/C判定選択手段116は、第1目標S/Cと第2目標S/Cとを対比して大きい方を判定選択する(ステップS5)。そして、第2目標S/Cが第1目標S/C以上であるときには、ステップS6からステップS7に進み、稼働S/C設定手段102Aは、第2目標S/Cを稼働S/Cとして設定し、制御手段104は、この稼働S/C(第2目標S/C)となるように水供給ポンプ34を作動制御し(ステップS8)、これによって、改質器4での炭素析出を抑える量の改質用水が供給される。尚、このときの改質用水の供給量は、リサイクル流路56で炭素析出が発生する量よりも多く、従ってリサイクル流路56で炭素析出が発生することはない。
【0080】
また、第1目標S/Cが第2目標S/Cより大きいときには、ステップS6からステップS9に進み、稼働S/C設定手段102Aは、第1目標S/Cを稼働S/Cとして設定し、制御手段104は、この稼働S/C(第1目標S/C)となるように水供給ポンプ34を作動制御し(ステップS10)、これによって、リサイクル流路56での炭素析出を抑える量の改質用水が供給される。尚、このときの改質用水の供給量は、改質器4で炭素析出が発生する量よりも多く、従って改質器4で炭素析出が発生することはない。
【0081】
尚、この第2の実施形態では、第1目標S/C演算手段100により演算した第1目標S/Cが選択された場合、この第1目標S/Cを稼働S/Cに設定しているが、この第1目標S/Cより大きい値を設定することにより、リサイクル流路56での炭素析出を抑えることができ、稼働S/Cとして第1目標S/Cの例えば1.1~1.3倍程度の値に設定するようにしてもよい。また、第2目標S/C演算手段114により演算した第2目標S/Cが選択された場合、この第2目標S/Cを稼働S/Cに設定しているが、この第2目標S/Cより大きい値を設定することにより、改質器4での炭素析出を抑えることができ、稼働S/Cとして第2目標S/Cの例えば1.1~1.3倍程度の値に設定するようにしてもよい。
【0082】
次に、図9及び図10を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの第3の実施形態について説明する。この第3の実施形態では、第2目標S/Cは改質器入口温度及びセルスタック温度に基づき補正するように構成されている。
【0083】
この第3の実施形態では、セルスタック6の温度を検知する温度センサ、即ち第1温度センサ92(第1温度検知手段を構成する)及び改質器4の入口温度を検知する温度センサ、即ち第2温度センサ102(第2温度検知手段を構成する)に加えて、セルスタック6の温度を検知する温度センサ、即ち第3温度センサ(第3温度検知手段を構成する)が設けられ、第1~第3温度センサ92,112,122からの検知信号はコントローラ94Bに送給される。
【0084】
また、コントローラ94Bは、燃料利用率演算手段96、リサイクル率演算手段98、第1目標S/C演算手段100、第2目標S/C演算手段114、目標S/C判定選択手段116、稼働S/C設定手段102B及び制御手段104に加えて、第1補正値演算手段124及び第2補正値演算手段126を更に備えている。第1補正値演算手段124は、改質器4の入口温度に基づいて後述する如くして第1補正値を演算し、第2補正値演算手段は、セルスタック6の温度に基づいて後述の如くして第2補正値を演算し、第2目標S/C演算手段114Bは、基準S/Cデータ、第1補正値及び第2補正値に基づき第2目標S/Cを演算し、この実施形態では、第2目標S/Cは、これらの値を加算することにより求められ(第2目標S/C=基礎S/C+第1補正値+第2補正値)、その具体的構成については、特開2013-187118号公報に開示されている構成と実質上同一であり、この公報を参照されたい。
【0085】
更に、メモリ手段106Bには、発電電流-燃料利用率マップ、発電電流-リサイクル率マップ及び第1目標S/C算出データに加えて、第2目標S/Cを演算するときに用いる基準S/Cデータ、第1補正マップ(即ち、改質器入口温度と第1補正値との関係を示すマップ)、第2補正マップ(即ち、セルスタック温度と第2補正値との関係を示すマップ)及び第2目標S/C算出データが登録されている。この第3の実施形態におけるその他の構成は、上述した第2の実施形態と実質上同一である。
【0086】
この第3の実施形態では、上述した第2の実施形態と略同様に、次のようにして稼働S/Cが設定される。まず、上述したと同様にして、第1目標S/Cの演算が行われる。即ち、ステップS21~ステップS23では、第2の実施形態におけるステップ1~ステップS3と同様に実行される。
【0087】
次に、第2目標S/Cの演算が行われる。この第3の実施形態においては、第1補正値演算手段124は、メモリ手段106Bに登録された第1補正マップ(改質器入口温度と第1補正値との関係を示すマップ)に基づき、改質器4の入口温度(即ち、第2温度センサ112の検知温度)に対応する第1補正値を演算する(ステップS24)。また、第2補正値演算手段126は、メモリ手段106Bに登録された第2補正マップ(セルスタック温度と第2補正値との関係を示すマップ)に基づき、セルスタック6の温度(即ち、第3温度センサ122の検知温度)に対応する第2補正値を演算する(ステップS25)。
【0088】
そして、第2目標S/C演算手段114Bは、第2目標S/C算出データを用い、基準S/Cデータ、第1補正値演算手段124により演算された第1補正値及び第2補正値演算手段126により演算された第2補正値を加算して第2目標S/Cを演算する(ステップS26)。
【0089】
このようにして第1目標S/C及び第2目標S/Cが求められると、第2の実施形態と同様に、目標S/C判定選択手段116は、第1目標S/Cと第2目標S/Cとを対比して大きい方を判定選択する(ステップS27)。第2目標S/Cが第1目標S/C以上であるときには、ステップS28からステップS29に進み、稼働S/C設定手段102Bは、第2目標S/Cを稼働S/Cとして設定し、制御手段104は、この稼働S/C(第2目標S/C)となるように水供給ポンプ34を作動制御する(ステップS30)。
【0090】
また、第1目標S/Cが第2目標S/Cより大きいときには、ステップS28からステップS31に進み、稼働S/C設定手段102Aは、第1目標S/Cを稼働S/Cとして設定し、制御手段104は、この稼働S/C(第1目標S/C)となるように水供給ポンプ34を作動制御する(ステップS32)。
【0091】
以上、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの各種実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【符号の説明】
【0092】
2,2A 固体酸化物燃料電池システム
4 改質器
6 セルスタック
8 燃料極側
12 気化器
24 燃料ガス供給ポンプ(燃料ガス供給手段)
34 水供給ポンプ(水供給手段)
36 空気極側(酸素極側)
40 空気ブロア(空気供給手段)
46 水蒸気凝縮部
48 燃料オフガス送給流路
50 燃焼器
56 リサイクル流路
62 高温ハウジング
92 第1温度センサ(第1温度検知手段)
94,94A,94B コントローラ
96 燃料利用率演算手段
98 リサイクル率演算手段
100 目標S/C演算手段(第1目標S/C演算手段)
102,102A,102B 稼働S/C設定手段
104 制御手段
112 第2温度センサ(第2温度検知手段)
114 第2S/C演算手段
116 目標S/C判定選択手段

図1
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