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特許7409972伝熱管パネル中間構造体及びボイラ建設方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】伝熱管パネル中間構造体及びボイラ建設方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/20 20060101AFI20231226BHJP
   F22B 1/18 20060101ALI20231226BHJP
   F22B 37/24 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
F22B37/20 Z
F22B1/18 K
F22B37/24 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020100170
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021196067
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(73)【特許権者】
【識別番号】592009281
【氏名又は名称】株式会社IHIプラント
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】野村 欣央
(72)【発明者】
【氏名】内田 修
(72)【発明者】
【氏名】郡山 浩朗
(72)【発明者】
【氏名】中井 賢司
(72)【発明者】
【氏名】藤原 光輝
(72)【発明者】
【氏名】市川 揮章
(72)【発明者】
【氏名】高橋 優介
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-315732(JP,A)
【文献】特開昭60-171305(JP,A)
【文献】実開昭59-081907(JP,U)
【文献】特開昭60-164103(JP,A)
【文献】特開2010-101542(JP,A)
【文献】実開平02-021407(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/20
F22B 1/18
F22B 37/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接配置された複数の伝熱管パネルと、
前記複数の伝熱管パネルの一面に、前記複数の伝熱管パネルに接触するように設けられた補強部材と、
前記複数の伝熱管パネルの一端部側において、前記複数の伝熱管パネルと前記補強部材とを連結させる連結部材と
を備えることを特徴とする伝熱管パネル中間構造体。
【請求項2】
前記補強部材において、互いに隣り合う前記伝熱管パネルの突合部に符合する部分は着脱自在であることを特徴とする請求項1に記載の伝熱管パネル中間構造体。
【請求項3】
前記補強部材は、
前記複数の伝熱管パネルに差し渡すように複数設けられた第1の補強部材と、
該第1の補強部材に対して交差するように複数設けられた第2の補強部材と
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の伝熱管パネル中間構造体。
【請求項4】
前記第1の補強部材は、前記複数の伝熱管パネルに接触するように設けられ、
前記第2の補強部材は、前記第1の補強部材に対して前記複数の伝熱管パネルの反対側に設けられることを特徴とする請求項3に記載の伝熱管パネル中間構造体。
【請求項5】
前記補強部材の一端には吊具が設けられることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の伝熱管パネル中間構造体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の伝熱管パネル中間構造体を組み立てる第1工程と、
前記伝熱管パネル中間構造体を搬送装置で吊上げて敷設する第2工程と
を有することを特徴とするボイラ建設方法。
【請求項7】
前記第1工程は、
前記伝熱管パネル及び前記補強部材を地上で仮組することにより仮組構造体を組み立てる仮組工程と、
前記仮組構造体を複数の仮組ユニットに分割する分割工程と、
前記仮組ユニットを架構内に搬送して本組する本組工程と
を有することを特徴とする請求項6に記載のボイラ建設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱管パネル中間構造体及びボイラ建設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、排熱回収ボイラの建設方法が開示されている。この排熱回収ボイラの建設方法は、伝熱管群と該伝熱管群の管寄せとからなる伝熱管パネル等の部材を工場でブロックとして予め製造し、このブロックを建設現場に搬送して吊上げることにより架構の所定箇所に付設するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-222302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記背景技術は、ブロック毎つまり伝熱管パネル毎にクレーンで吊上げて敷設するものであり、クレーンによる吊上げ回数が伝熱管パネルの枚数分必要となる。また、架構に付設された伝熱管パネルは隣り合う者同士が溶接によって接合され、またこの溶接作業は高所作業となるので煩雑である。したがって、上記背景技術は、伝熱管パネルの吊上げ回数が多いと共に高所での溶接回数が多いので、工期の長期化と建設コスト高を招くものである。また、上記溶接作業は、空中作業となるため特殊足場の建設が必要であり、合わせ作業が困難である。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、伝熱管パネルの吊上げ回数及び高所での溶接回数の削減を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、伝熱管パネル中間構造体に係る第1の解決手段として、隣接配置された複数の伝熱管パネルと、前記複数の伝熱管パネルの一面に設けられた補強部材と、前記複数の伝熱管パネルと前記補強部材とを連結させる連結部材とを備える、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、伝熱管パネル中間構造体に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記補強部材において、互いに隣り合う前記伝熱管パネルの突合部に符合する部分は着脱自在である、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、伝熱管パネル中間構造体に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記補強部材は、前記複数の伝熱管パネルに差し渡すように複数設けられた第1の補強部材と、該第1の補強部材に対して交差するように複数設けられた第2の補強部材とを備える、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、伝熱管パネル中間構造体に係る第4の解決手段として、上記第3の解決手段において、前記第1の補強部材は、前記複数の伝熱管パネルに接触するように設けられ、前記第2の補強部材は、前記第1の補強部材に対して前記複数の伝熱管パネルの反対側に設けられる、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、伝熱管パネル中間構造体に係る第5の解決手段として、上記第1~第3のいずれかの解決手段において、前記補強部材の一端には吊具が設けられる、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、ボイラ建設方法に係る第1の解決手段として、上記第1~第4のいずれかの解決手段に係る伝熱管パネル中間構造体を組み立てる第1工程と、前記伝熱管パネル中間構造体を搬送装置で吊上げて敷設する第2工程とを有する、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、ボイラ建設方法に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記第1工程は、前記伝熱管パネル及び前記補強部材を地上で仮組することにより仮組構造体を組み立てる仮組工程と、前記仮組構造体を複数の仮組ユニットに分割する分割工程と、前記仮組ユニットを架構内に搬送して本組する本組工程とを有する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、伝熱管パネルの吊上げ回数及び高所での溶接回数を削減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態におけるボイラの概略構造を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る伝熱管パネル中間構造体の構成を示す正面図(a)、側面図(b)及び底面図(c)である。
図3】本発明の一実施形態における伝熱管パネルの突合部を示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係るボイラ建設方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
最初に、本実施形態に係る伝熱管パネル中間構造体及びボイラ建設方法が適用されるボイラの概略構造を図1を参照して説明する。
【0016】
このボイラは、図1に示すように、ボイラ架構Kにボイラ本体Hが支持された構造を備える。ボイラ架構Kは、鋼材等の強度部材を組み合わせた大型構造物であり、地上に所定面積かつ所定高さに構築されている。このボイラ架構Kは、ボイラ本体Hを吊持するための十分な強度を確保するために、図示するように長尺状の強度部材を縦横に組み合わせた構造を備える。
【0017】
ボイラ本体Hは、このようなボイラ架構Kに支持された吊り構造物であり、複数の伝熱管パネルを側面に付設することにより外形が形成される。このボイラ本体Hは、微粉炭やバイオマス等の燃料を燃焼させることによって水蒸気を発生させ、当該水蒸気を成果物として出力する。このボイラ本体Hは、複数の伝熱管パネルや内部に設けられた多数の水熱管を用いて燃焼ガスから熱を回収することにより、各水熱管内を流れる水を気化させて水蒸気を発生させる。
【0018】
図2は、このようなボイラ本体Hの側面に複数の伝熱管パネルを付設する際に用いられる伝熱管パネル中間構造体Aを示している。この伝熱管パネル中間構造体Aは、図示するように複数の伝熱管パネル1A~1D、複数の横補強部材2、複数の縦補強部材3、複数のローラ4、複数のチルタンク5、複数の吊板6、複数の係合部材7及び複数の連結部材8を備えている。
【0019】
複数の伝熱管パネル1A~1Dは、略同一に構成された4枚の板状部材である。各々の伝熱管パネル1A~1Dは、図3に示すように、隣接する複数の伝熱管1aを相互に接合した板状部材であり、伝熱管1aの配列方向が同一となるように隣接配置されていると共に隣り合う物同士が相互に接合されている。
【0020】
すなわち、4枚の伝熱管パネル1A~1Dは、伝熱管パネル1Aの隣に伝熱管パネル1Bが面一に配置され、伝熱管パネル1Bの隣に伝熱管パネル1Cが面一に配置され、伝熱管パネル1Cの隣に伝熱管パネル1Dが面一に配置されている。
【0021】
また、伝熱管パネル1Aにおいて伝熱管パネル1Bに隣接する伝熱管1aは、伝熱管パネル1Bにおいて伝熱管パネル1Aに隣接する伝熱管1aと接合されている。また、伝熱管パネル1Bにおいて伝熱管パネル1Cに隣接する伝熱管1aは、伝熱管パネル1Cにおいて伝熱管パネル1Bに隣接する伝熱管1aと接合されている。また、伝熱管パネル1Cにおいて伝熱管パネル1Dに隣接する伝熱管1aは、伝熱管パネル1Dにおいて伝熱管パネル1Cに隣接する伝熱管1aと接合されている。すなわち、互いに隣り合う伝熱管パネル1A~1Dの突合部Pは、相互に接合されている。
【0022】
このような複数(4枚)の伝熱管パネル1A~1Dは、全体として複数の伝熱管が同一方向に延在すると共に同一方向に配列し、かつ互いに隣り合う伝熱管が相互に接合された平板状の伝熱管接合体である。このような伝熱管接合体は、厚さに対して外形が極端に大きな膜状体である。ボイラの規模にも依るが、伝熱管接合体の厚さつまり伝熱管の管径は例えば数cm、また1辺の長さは例えば20mにも及ぶ。
【0023】
複数の横補強部材2は、複数の伝熱管パネル1A~1D(伝熱管接合体)に差し渡すように複数(4本)設けられた第1の補強部材である。これら複数の横補強部材2は、4枚の伝熱管パネル1A~1D(伝熱管接合体)の一面に接触するように設けられている。各々の横補強部材2は、図示するように長尺状の角棒であり、断面形状がI型形状である。このような横補強部材2は、4枚の伝熱管パネル1A~1D(伝熱管接合体)の一面において、伝熱管の延在方向に所定間隔を空けて、また延在方向が伝熱管の延在方向に対して直交するように配置されている。
【0024】
また、この横補強部材2は、互いに隣り合う伝熱管パネル1A~1Dの突合部Pに符合する部分(部位)が着脱自在である。すなわち、図3に示すように長尺状の横補強部材2には、所定長さの着脱部2aが部分的に設けられている。この着脱部2aの伝熱管パネル1A~1Dに対する位置は、互いに隣り合う伝熱管パネル1A~1Dの突合部P(当接部)に一致している。
【0025】
複数の縦補強部材3は、このような複数の横補強部材2(第1の補強部材)に対して交差するように複数(8本)設けられた第2の補強部材である。これら複数の縦補強部材3は、複数(4本)の横補強部材2に対して4枚の伝熱管パネル1A~1D(伝熱管接合体)の反対側に設けられた8本の補強部材である。
【0026】
各々の縦補強部材3は、図示するように長尺状の角棒であり、断面形状がI型形状である。このような縦補強部材3は、4本の横補強部材2を挟んた状態で4枚の伝熱管パネル1A~1D(伝熱管接合体)に対向しており、伝熱管の配列方向に所定間隔を空けて、また延在方向が伝熱管の延在方向に対して平行になるように配置されている。
【0027】
ここで、各々の横補強部材2は、図示するように、両端部の位置が伝熱管パネル1A~1D(伝熱管接合体)の端部の位置と略同一に設定されている。これに対して、各々の縦補強部材3は、両端部の位置が伝熱管パネル1A~1D(伝熱管接合体)の端部の位置よりも外方に突出した位置に設定されており、また突出長さが一端と他端とで異なるように設定されている。すなわち、一端の突出長さは、他端突出長さよりも大幅に小さい。
【0028】
このような4本の横補強部材2及び8本の縦補強部材3は、相互に接合された一体の補強部材を構成している。すなわち、各々の横補強部材2及び縦補強部材3は、複数(4枚)の伝熱管パネル1A~1D(伝熱管接合体)の一面に設けられ、当該伝熱管パネル1A~1D(伝熱管接合体)を補強するものである。このような4本の横補強部材2及び8本の縦補強部材3は、本発明の補強部材に相当する。
【0029】
複数のローラ4は、8本の縦補強部材3の一端に設けられている。すなわち、各々のローラ4は、各縦補強部材3の両端のうち、同一側の一端にそれぞれ設けられている。すなわち、ローラ4は、合計で8個設けられている。このようなローラ4は、回転軸の延在方向が横補強部材2の延在方向と同一となるように各縦補強部材3の一端に装着されている。
【0030】
複数のチルタンク5は、8本の縦補強部材3の途中部位に離散的に設けられている。すなわち、各々のチルタンク5は、各縦補強部材3の両端間において所定間隔を空けて配置されている。1本の縦補強部材3に対するチルタンク5の個数は、例えば11個(11箇所)である。このようなチルタンク5は、回転軸の延在方向が横補強部材2の延在方向と同一つまり複数のローラ4の回転軸と同一となるように各縦補強部材3に装着されている。
【0031】
複数の接続板6は、8本の縦補強部材3の他端に設けられた4枚の板状部材である。各々の接続板6は、各縦補強部材3の両端のうち、突出長さが大きい方の端部に互いに隣り合う一対の縦補強部材3間に差し渡すように設けられている。なお、このような吊板6の縦補強部材3に対する取付位置は、図示するように縦補強部材3の他端よりも若干内側(伝熱管パネル1A~1D側)である。
【0032】
複数の係合部材7は、4枚の接続板6の中間位置に設けられている。すなわち、これら係合部材7は、接続板6の枚数(4枚)と同様な数つまり4個設けられている。各係合部材7は、クレーン(搬送装置)のフックをワイヤロープやシャックルを介して係合させるための係合穴を備えている。本実施形態に係る伝熱管パネル中間構造体Aは、係合部材7にクレーンのフックが係合することによって吊上げられる。なお、上述した複数の接続板6及び係合部材7は、本発明の吊具を構成している。
【0033】
複数の連結部材8は、伝熱管パネル1A~1Dの枚数(4枚)に対応して4つ設けられており、一端が係合部材7に係合し、他端が4枚の伝熱管パネル1A~1Dの端部に係合する。4枚の伝熱管パネル1A~1D(伝熱管接合体)は、連結部材8を介して係合部材7に連結されているので、4本の横補強部材2及び8本の縦補強部材3からなる補強部材と一体にクレーンによって吊上げられる。
【0034】
次に、本実施形態に係る伝熱管パネル中間構造体Aを用いたボイラ建設方法について、図4をも参照して説明する。
【0035】
伝熱管パネル中間構造体Aは、図4に示すように、ボイラ建設用地において4枚の伝熱管パネル1A~1D及び4本の横補強部材2及び8本の縦補強部材3からなる補強部材を地上で仮組することにより仮組構造体A0を組み立てる(仮組工程)。
【0036】
ボイラ建設用地は、1辺の長さが20mにもなる比較的大型な補強部材を組み立てるのに十分な広さを有している。すなわち、仮組工程では、8本の縦補強部材3が図2に示したようにボイラ建設用地の地表に載置されるが、この際に8本の縦補強部材3は複数のローラ4及び複数のチルタンク5が地表と対峙する姿勢で地表に載置される。
【0037】
そして、このような8本の縦補強部材3の上に4本の横補強部材2が図2に示したように井桁状に配置され、交差部において8本の縦補強部材3と接合される。また、8本の縦補強部材3には、係合部材7が予め固定された4本の接続板6が図2に示したように接合される。この結果、ボイラ建設用地の地表には、横倒し状態の補強部材が一体として組み上げられる。
【0038】
そして、この補強部材上つまり4本の横補強部材2上には、4枚の伝熱管パネル1A~1Dが図2に示したように配置される。すなわち、4枚の伝熱管パネル1A~1Dは、お互いに隣接する状態、かつ、一方の面(下面)の一部が4本の横補強部材2の上面に接触する状態で4本の横補強部材2上に載置される。
【0039】
この状態では、4枚の伝熱管パネル1A~1Dの上面は完全に開放されているが、4枚の伝熱管パネル1A~1Dの下面は、横補強部材2が部分的に接触した状態である。このような4枚の伝熱管パネル1A~1Dに対して、図3に示すように伝熱管パネル1Aと伝熱管パネル1Bとの突合部Pは、矢印R1で示すように上面側から溶接接合される。また、図示しないが、伝熱管パネル1Bと伝熱管パネル1Cとの突合部及び伝熱管パネル1Cと伝熱管パネル1Dとの突合部は、上面側から溶接接合される。
【0040】
一方、4枚の伝熱管パネル1A~1Dの下面については、着脱部2aが取り外されることによって解放される。そして、図3に示すように、伝熱管パネル1Aと伝熱管パネル1Bとの突合部Pは、矢印R2で示すように下面側から溶接接合される。そして、伝熱管パネル1Bと伝熱管パネル1Cとの突合部及び伝熱管パネル1Cと伝熱管パネル1Dとの突合部についても、同様にして下面側から溶接接合される。
【0041】
すなわち、本実施形態では、横補強部材2に着脱部2aを設けることにより、4枚の伝熱管パネル1A~1Dにおける各突合部の下面側を開放可能にしている。そして、この結果として、4枚の伝熱管パネル1A~1Dにおける各突合部の両面溶接を可能としている。このような本実施形態によれば、各伝熱管パネル1A~1Dの突合部について、より確かな接合を実現できる。
【0042】
また、このような各伝熱管パネル1A~1Dの突合部の溶接作業では、補強部材が定盤として機能するので、一対の伝熱管1aの延在方向の各所において良好な突合せ状態を実現することができる。したがって、一対の伝熱管1aを延在方向の全領域に亘って良好な突合せ溶接を実現することができる。
【0043】
この仮組工程では、さらに4枚の伝熱管パネル1A~1D(伝熱管接合体)と係合部材7との間に連結部材8を設ける。この結果、4枚の伝熱管パネル1A~1D(伝熱管接合体)は、連結部材8を介して係合部材7に連結される。以上によって仮組構造体A0が完成する。
【0044】
このような仮組工程が完了すると、図4に示すように仮組構造体A0を複数の仮組ユニットA1、A2に分割する(分割工程)。この分割工程は、仮組構造体A0をボイラ架構K内に移動させることが困難なためである。すなわち、仮組ユニットA1、A2は、ボイラ架構Kへの移動が可能な大きさを有する。本実施形態では、一例として仮組構造体A0を2つの仮組ユニットA1、A2に分割する。
【0045】
ここで、ボイラ建設用地の地表と接している8本の縦補強部材3には複数のチルタンク5が設けられているので、分割工程における仮組構造体A0あるいは/及び仮組ユニットA1、A2の地表上での移動が容易である。
【0046】
本実施形態に係るボイラ建設方法では、続いて上記仮組ユニットA1、A2をボイラ架構K内に搬送して本組する(本組工程)。すなわち、この本組工程では、2つの仮組ユニットA1、A2を連結することによって、上述した伝熱管パネル中間構造体Aを最終的に完成させる。この本組工程においても、8本の縦補強部材3には複数のチルタンク5が設けられているので、仮組ユニットA1、A2あるいは/及び伝熱管パネル中間構造体Aの地表上での移動が容易である。
【0047】
上述した仮組工程、分割工程及び本組工程は、本発明の第1工程に相当する。すなわち、この第1工程は、伝熱管パネル中間構造体Aを最終的に組み立てる工程である。本実施形態に係るボイラ建設方法では、第1工程の後工程として、伝熱管パネル中間構造体Aをクレーンで吊上げることによって4枚の伝熱管パネル1A~1Dを所定位置に敷設する(第2工程)。
【0048】
この第2工程では、伝熱管パネル中間構造体Aをクレーンで吊上げてボイラ架構Kから吊り下げるが、この吊上げは、クレーンのフックが係合した係合部材7が上方に引き上げられることによって行われる。すなわち、伝熱管パネル中間構造体Aは、複数の係合部材7が設けられている側がクレーンによって上方に引き上げられることによって平置き状態から起こされて縦置き状態となる。
【0049】
そして、このような伝熱管パネル中間構造体Aの立て起こしは、伝熱管パネル中間構造体Aにおいて複数の係合部材7の反対側に一列に設けられている複数のローラ4を基点として行われる。すなわち、本実施形態によれば、配列方向を回転軸の軸心とすると共に回転自在な複数のローラ4を基点として伝熱管パネル中間構造体Aを立て起こすので、伝熱管パネル中間構造体Aの横姿勢から縦姿勢への姿勢変化が容易である。なお、伝熱管パネル中間構造体Aを立て起こした後,周囲の構造物(バックスティ等)と干渉する部材が伝熱管パネル中間構造体Aから取外される。
【0050】
このような本実施形態によれば、伝熱管パネル中間構造体Aをクレーンで吊上げることによって4枚の伝熱管パネル1A~1Dを敷設するので、従来のように伝熱管パネルを1枚づつクレーンで吊上げて敷設する場合に比較して、伝熱管パネル1A~1Dの吊上げ回数及び高所での溶接回数を削減することが可能である。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、4枚の伝熱管パネル1A~1Dを備える伝熱管パネル中間構造体Aを採用したが、本発明はこれに限定されない。伝熱管パネル中間構造体を構成する伝熱管パネルの枚数は、2枚以上であれば期待する効果を得ることができる。
【0052】
(2)上記実施形態では、4本の横補強部材2及び8本の縦補強部材3からなる補強部材を採用したが、本発明はこれに限定されない。補強部材の構造については種々の変形例が考えられる。すなわち、補強部材は、クレーンで吊り下げる際に過度の機械的ストレスが伝熱管パネル1A~1Dに作用しないようにできるものであれば良い。
【0053】
(3)上記実施形態では、第1工程を仮組工程、分割工程及び本組工程から構成したが、本発明はこれに限定されない。ボイラ建設用地の大きさ等にも依るが、仮組を省略して伝熱管パネル中間構造体Aを直接本組してもよい。
【0054】
(4)上記実施形態では、搬送装置としてクレーンを用いたが、本発明はこれに限定されない。搬送装置として、クレーンに代えて例えばウインチやジャッキ等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0055】
A 伝熱管パネル中間構造体
H ボイラ本体
K ボイラ架構
P 突合部
1A~1D 伝熱管パネル
2 横補強部材(第1の補強部材)
2a 着脱部
3 縦補強部材(第2の補強部材)
4 ローラ
5 チルタンク
6 接続板
7 係合部材
8 連結部材

図1
図2
図3
図4