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特許7409990遺留分侵害予測装置、遺留分侵害予測方法および遺留分侵害予測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】遺留分侵害予測装置、遺留分侵害予測方法および遺留分侵害予測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/18 20120101AFI20231226BHJP
【FI】
G06Q50/18 320
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020129502
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022026165
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】398040527
【氏名又は名称】株式会社オービック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田原 淳
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛光
【審査官】中野 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-018266(JP,A)
【文献】特開2004-303103(JP,A)
【文献】特開2017-111769(JP,A)
【文献】特開2019-212233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を備える遺留分侵害予測装置であって、
前記制御部は、
相続財産の将来の時期での予想価格および前記相続財産についての各相続人の相続割合に基づいて、前記相続財産の前記将来の前記時期での各相続人の相続価格を計算する価格計算手段と、
前記相続価格の全相続財産分かつ全相続人分の総額および各相続人の遺留分割合に基づいて、前記将来の前記時期での各相続人の遺留分を計算する遺留分計算手段と、
前記相続価格と前記遺留分を相続人別に比較して、前記将来の前記時期での各相続人の前記遺留分の侵害状況を確認する確認手段と、
を備え、
前記確認手段は、確認結果として、前記将来の前記時期及び相続人毎に、前記相続価格と前記遺留分を比較して、「相続価格<遺留分」の場合は遺留分侵害有と判定し、「相続価格≧遺留分」の場合は遺留分侵害無と判定するものであり、
前記制御部は、前記確認手段による前記確認結果を出力装置に出力する出力制御手段をさらに備え、
前記出力制御手段は、前記確認結果を、前記確認結果に対応する前記時期、前記価格計算手段で計算した前記相続価格および前記遺留分計算手段で計算した前記遺留分と対応付けて出力して、侵害状況が確認された場合に、前記将来の前記時期及び相続人を特定可能に出力すること、
を特徴とする遺留分侵害予測装置。
【請求項2】
前記価格計算手段は、前記予想価格、前記相続割合、前記相続財産が前記将来の前記時期までに生み出すキャッシュフローおよび前記キャッシュフローについての各相続人の相続割合に基づいて、前記キャッシュフローを加味した前記相続価格を計算すること、
を特徴とする請求項1に記載の遺留分侵害予測装置。
【請求項3】
前記価格計算手段は、前記キャッシュフローを、前記相続財産による所定期間あたりの収入および支出を基に、所定の変動基準に従って計算すること、
を特徴とする請求項2に記載の遺留分侵害予測装置。
【請求項4】
前記所定の変動基準は、前記収入および前記支出のそれぞれに設定されること、
を特徴とする請求項3に記載の遺留分侵害予測装置。
【請求項5】
前記価格計算手段は、前記予想価格を、前記相続財産の現在の時期での価格を基に、所定の変動基準に従って計算すること、
を特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の遺留分侵害予測装置。
【請求項6】
前記所定の変動基準は、所定期間あたりの変動率で定義されるものであること、
を特徴とする請求項3または5に記載の遺留分侵害予測装置。
【請求項7】
前記所定期間は、1年であること、
を特徴とする請求項3または6に記載の遺留分侵害予測装置。
【請求項8】
前記将来の前記時期は、複数設定されており、
前記価格計算手段は、各々の前記将来の前記時期での前記相続価格を計算し、
前記遺留分計算手段は、各々の前記将来の前記時期での前記遺留分を計算し、
前記確認手段は、各々の前記将来の前記時期での前記侵害状況を確認すること、
を特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の遺留分侵害予測装置。
【請求項9】
前記相続財産は、複数設定されていること、
を特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の遺留分侵害予測装置。
【請求項10】
前記将来の前記時期は、現在の時期からの経過期間で定義されるものであること、
を特徴とする請求項1から9のいずれか1つに記載の遺留分侵害予測装置。
【請求項11】
前記経過期間は、1年を単位とするものであること、
を特徴とする請求項10に記載の遺留分侵害予測装置。
【請求項12】
前記価格計算手段は、前記相続財産の現在の時期での価格および前記相続財産についての各相続人の前記相続割合に基づいて、前記相続財産の前記現在の前記時期での各相続人の相続価格を計算すること、
を特徴とする請求項1から11のいずれか1つに記載の遺留分侵害予測装置。
【請求項13】
前記現在の前記時期での前記価格は、前記現在の前記時期での評価額であること、
を特徴とする請求項5または12に記載の遺留分侵害予測装置。
【請求項14】
前記現在の前記時期は、本遺留分侵害予測装置が使用される時期に相当すること、
を特徴とする請求項5、10または12に記載の遺留分侵害予測装置。
【請求項15】
前記出力制御手段は、前記確認結果を、リスト形式で出力すること、
を特徴とする請求項に記載の遺留分侵害予測装置。
【請求項16】
制御部を備える情報処理装置で実行される遺留分侵害予測方法であって、
前記制御部で実行される、
相続財産の将来の時期での予想価格および前記相続財産についての各相続人の相続割合に基づいて、前記相続財産の前記将来の前記時期での各相続人の相続価格を計算する価格計算ステップと、
前記相続価格の全相続財産分かつ全相続人分の総額および各相続人の遺留分割合に基づいて、前記将来の前記時期での各相続人の遺留分を計算する遺留分計算ステップと、
前記相続価格と前記遺留分を相続人別に比較して、前記将来の前記時期での各相続人の前記遺留分の侵害状況を確認する確認ステップと、
を含み、
前記確認ステップは、確認結果として、前記将来の前記時期及び相続人毎に、前記相続価格と前記遺留分を比較して、「相続価格<遺留分」の場合は遺留分侵害有と判定し、「相続価格≧遺留分」の場合は遺留分侵害無と判定するものであり、
前記制御部で実行される、前記確認ステップによる前記確認結果を出力装置に出力する出力制御ステップを、さらに、含み、
前記出力制御ステップは、前記確認結果を、前記確認結果に対応する前記時期、前記価格計算ステップで計算した前記相続価格および前記遺留分計算ステップで計算した前記遺留分と対応付けて出力して、侵害状況が確認された場合に、前記将来の前記時期及び相続人を特定可能に出力すること、
を特徴とする遺留分侵害予測方法。
【請求項17】
制御部を備える情報処理装置に実行させるための遺留分侵害予測プログラムであって、
前記制御部に実行させるための、
相続財産の将来の時期での予想価格および前記相続財産についての各相続人の相続割合に基づいて、前記相続財産の前記将来の前記時期での各相続人の相続価格を計算する価格計算ステップと、
前記相続価格の全相続財産分かつ全相続人分の総額および各相続人の遺留分割合に基づいて、前記将来の前記時期での各相続人の遺留分を計算する遺留分計算ステップと、
前記相続価格と前記遺留分を相続人別に比較して、前記将来の前記時期での各相続人の前記遺留分の侵害状況を確認する確認ステップと、
を含み、 前記確認ステップは、確認結果として、前記将来の前記時期及び相続人毎に、前記相続価格と前記遺留分を比較して、「相続価格<遺留分」の場合は遺留分侵害有と判定し、「相続価格≧遺留分」の場合は遺留分侵害無と判定するものであり、
前記制御部で実行させるための、前記確認ステップによる前記確認結果を出力装置に出力する出力制御ステップを、さらに、含み、
前記出力制御ステップは、前記確認結果を、前記確認結果に対応する前記時期、前記価格計算ステップで計算した前記相続価格および前記遺留分計算ステップで計算した前記遺留分と対応付けて出力して、侵害状況が確認された場合に、前記将来の前記時期及び相続人を特定可能に出力すること、
を特徴とする遺留分侵害予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺留分侵害予測装置、遺留分侵害予測方法および遺留分侵害予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
遺留分侵害の有無の審査は、遺言信託の受託時における相続人構成、財産台帳および遺言書を基に行われている。特許文献1には、遺言作成を適切に支援することができる情報処理装置等について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-212233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、遺言の執行は、遺言信託の受託時から数年単位の期間が経過して行われることが多いため、当該期間において財産台帳の内容が大きく変わり、その結果、遺留分侵害の有無の判定が遺言の執行時に覆ることが現実に起こり得る。このように、遺留分侵害の有無を遺言信託の受託時の情報のみで判定することで、将来の遺留分侵害の有無について誤った判定をしてしまう虞がある。
【0005】
しかしながら、これまで、将来の時期(具体的には、現在から数年後または十数年後など)での遺留分侵害の有無を判定する技術は存在しなかった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、将来の時期(具体的には、現在から数年後または十数年後など)での遺留分侵害の有無を予測することができる遺留分侵害予測装置、遺留分侵害予測方法および遺留分侵害予測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る遺留分侵害予測装置は、制御部を備える遺留分侵害予測装置であって、前記制御部は、相続財産の将来の時期での予想価格および前記相続財産についての各相続人の相続割合に基づいて、前記相続財産の前記将来の前記時期での各相続人の相続価格を計算する価格計算手段と、前記相続価格の全相続財産分かつ全相続人分の総額および各相続人の遺留分割合に基づいて、前記将来の前記時期での各相続人の遺留分を計算する遺留分計算手段と、前記相続価格と前記遺留分を相続人別に比較して、前記将来の前記時期での各相続人の前記遺留分の侵害状況を確認する確認手段と、を備えること、を特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る遺留分侵害予測装置は、前記遺留分侵害予測装置において、前記価格計算手段は、前記予想価格、前記相続割合、前記相続財産が前記将来の前記時期までに生み出すキャッシュフローおよび前記キャッシュフローについての各相続人の相続割合に基づいて、前記キャッシュフローを加味した前記相続価格を計算すること、を特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る遺留分侵害予測装置は、前記遺留分侵害予測装置において、前記価格計算手段は、前記キャッシュフローを、前記相続財産による所定期間あたりの収入および支出を基に、所定の変動基準に従って計算すること、を特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る遺留分侵害予測装置は、前記遺留分侵害予測装置において、前記所定の変動基準は、前記収入および前記支出のそれぞれに設定されること、を特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る遺留分侵害予測装置は、前記遺留分侵害予測装置において、前記価格計算手段は、前記予想価格を、前記相続財産の現在の時期での価格を基に、所定の変動基準に従って計算すること、を特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る遺留分侵害予測装置は、前記遺留分侵害予測装置において、前記所定の変動基準は、所定期間あたりの変動率で定義されるものであること、を特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る遺留分侵害予測装置は、前記遺留分侵害予測装置において、前記所定期間は、1年であること、を特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る遺留分侵害予測装置は、前記遺留分侵害予測装置において、前記将来の前記時期は、複数設定されており、前記価格計算手段は、各々の前記将来の前記時期での前記相続価格を計算し、前記遺留分計算手段は、各々の前記将来の前記時期での前記遺留分を計算し、前記確認手段は、各々の前記将来の前記時期での前記侵害状況を確認すること、を特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る遺留分侵害予測装置は、前記遺留分侵害予測装置において、前記相続財産は、複数設定されていること、を特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る遺留分侵害予測装置は、前記遺留分侵害予測装置において、前記将来の前記時期は、現在の時期からの経過期間で定義されるものであること、を特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る遺留分侵害予測装置は、前記遺留分侵害予測装置において、前記経過期間は、1年を単位とするものであること、を特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る遺留分侵害予測装置は、前記遺留分侵害予測装置において、前記価格計算手段は、前記相続財産の現在の時期での価格および前記相続財産についての各相続人の前記相続割合に基づいて、前記相続財産の前記現在の前記時期での各相続人の相続価格を計算すること、を特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る遺留分侵害予測装置は、前記遺留分侵害予測装置において、前記現在の前記時期での前記価格は、前記現在の前記時期での評価額であること、を特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る遺留分侵害予測装置は、前記遺留分侵害予測装置において、前記現在の前記時期は、本遺留分侵害予測装置が使用される時期に相当すること、を特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る遺留分侵害予測装置は、前記遺留分侵害予測装置において、前記制御部は、前記確認手段による確認結果を出力装置に出力する出力制御手段さらに備えること、を特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る遺留分侵害予測装置は、前記遺留分侵害予測装置において、前記出力制御手段は、前記確認結果を、前記確認結果に対応する前記時期、前記価格計算手段で計算した前記相続価格および前記遺留分計算手段で計算した前記遺留分と対応付けて出力すること、を特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る遺留分侵害予測装置は、前記遺留分侵害予測装置において、前記出力制御手段は、前記確認結果を、リスト形式で出力すること、を特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る遺留分侵害予測方法は、制御部を備える情報処理装置で実行される遺留分侵害予測方法であって、前記制御部で実行される、相続財産の将来の時期での予想価格および前記相続財産についての各相続人の相続割合に基づいて、前記相続財産の前記将来の前記時期での各相続人の相続価格を計算する価格計算ステップと、前記相続価格の全相続財産分かつ全相続人分の総額および各相続人の遺留分割合に基づいて、前記将来の前記時期での各相続人の遺留分を計算する遺留分計算ステップと、前記相続価格と前記遺留分を相続人別に比較して、前記将来の前記時期での各相続人の前記遺留分の侵害状況を確認する確認ステップと、を含むこと、を特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る遺留分侵害予測プログラムは、制御部を備える情報処理装置に実行させるための遺留分侵害予測プログラムであって、前記制御部に実行させるための、相続財産の将来の時期での予想価格および前記相続財産についての各相続人の相続割合に基づいて、前記相続財産の前記将来の前記時期での各相続人の相続価格を計算する価格計算ステップと、前記相続価格の全相続財産分かつ全相続人分の総額および各相続人の遺留分割合に基づいて、前記将来の前記時期での各相続人の遺留分を計算する遺留分計算ステップと、前記相続価格と前記遺留分を相続人別に比較して、前記将来の前記時期での各相続人の前記遺留分の侵害状況を確認する確認ステップと、を含むこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、将来の時期(具体的には、現在から数年後または十数年後など)での遺留分侵害の有無を予測することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、遺留分侵害予測装置100の構成の一例を示す図である。
図2図2は、相続関連情報記憶部106aに格納される情報の一例を示す図である。
図3図3は、相続関連情報記憶部106aに格納される情報の一例を示す図である。
図4図4は、相続関連情報記憶部106aに格納される情報の一例およびキャッシュフローの計算の一例を示す図である。
図5図5は、確認結果等記憶部106bに格納される情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係る遺留分侵害予測装置、遺留分侵害予測方法および遺留分侵害予測プログラムの実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0029】
[1.構成]
本実施形態に係る遺留分侵害予測装置100の構成の一例について、図1等を参照して説明する。図1は、遺留分侵害予測装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0030】
遺留分侵害予測装置100は、主に、金融機関における遺言信託または遺産整理の業務における受託審査業務において使用されるものである。
【0031】
遺留分侵害予測装置100は、市販のデスクトップ型パーソナルコンピュータを基に構築したものである。なお、遺留分侵害予測装置100は、デスクトップ型パーソナルコンピュータのような据置型情報処理装置を基に構築したものに限らず、市販のノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)、スマートフォンまたはタブレット型パーソナルコンピュータなどの携帯型情報処理装置を基に構築したものであってもよい。
【0032】
遺留分侵害予測装置100は、制御部102と通信インタフェース部104と記憶部106と入出力インタフェース部108と、を備えている。遺留分侵害予測装置100が備えている各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0033】
通信インタフェース部104は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して、遺留分侵害予測装置100をネットワーク300に通信可能に接続する。通信インタフェース部104は、他の装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。ここで、ネットワーク300は、遺留分侵害予測装置100とサーバ200とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)等である。なお、記憶部106に格納されるデータは、例えばサーバ200に格納されてもよい。
【0034】
入出力インタフェース部108には、入力装置112および出力装置114が接続されている。出力装置114には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる。入力装置112には、キーボード、マウス、及びマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。なお、以下では、出力装置114をモニタ114とし、入力装置112をキーボード112またはマウス112として記載する場合がある。
【0035】
記憶部106には、各種のデータベース、テーブルおよびファイルなどが格納される。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPU(Central Processing Unit)に命令を与えて各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録される。記憶部106として、例えば、RAM(Random Access Memory)・ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および光ディスク等を用いることができる。
【0036】
記憶部106は、相続関連情報記憶部106a(図2~4参照)および確認結果等記憶部106b(図5参照)などを備える。図2~4には、相続関連情報記憶部106aに格納される情報の一例が示されている。図5には、確認結果等記憶部106bに格納される情報の一例が示されている。
【0037】
図1に戻り、制御部102は、遺留分侵害予測装置100を統括的に制御するCPU等である。制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、格納されているこれらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。
【0038】
制御部102は、機能概念的に、価格計算部102a、遺留分計算部102b、確認部102cおよび出力制御部102dなどを備える。
【0039】
価格計算部102aは、相続財産(例えば、土地、建物など)の将来の時期での予想価格(シミュレーション価格)および相続財産についての各相続人の相続割合(例えば、法定相続割合または任意割合でもよい)に基づいて、相続財産の将来の時期での各相続人の相続価格を計算する。なお、将来の時期は、例えば、現在の時期からの経過期間(例えば、1年を単位とするものなど)で定義されるものなどでもよい(以下同じ)。また、現在の時期は、例えば、遺留分侵害予測装置100が使用される時期などでもよい(以下同じ)。
【0040】
また、価格計算部102aは、相続財産の将来の時期での予想価格、相続財産についての各相続人の相続割合、相続財産が現在の時期から将来の時期までの期間に生み出すキャッシュフロー(累計キャッシュフロー)およびキャッシュフローについての各相続人の相続割合(例えば、法定相続割合または任意割合でもよい)に基づいて、キャッシュフローを加味した、相続財産の将来の時期での各相続人の相続価格を計算してもよい。
【0041】
また、価格計算部102aは、キャッシュフローを、相続財産による所定期間あたりの収入および支出を基に、所定の変動基準に従って計算してもよい。なお、所定の変動基準は、収入(例えば、建物により発生する賃料や駐車料など)および支出(例えば、建物により発生する固定資産税や修繕費など)のそれぞれに設定されてもよい。また、所定の変動基準は、例えば、所定期間あたりの変動率で定義されるものなどでもよい(以下同じ)。また、所定期間は、例えば、1年などでもよい。
【0042】
また、価格計算部102aは、相続財産の将来の時期での予想価格を、相続財産の現在の時期での価格を基に、所定の変動基準に従って計算してもよい。なお、相続財産の現在の時期での価格は、例えば、評価額(相続税評価額)などでもよい(以下同じ)。
【0043】
また、将来の時期が複数設定されている場合、価格計算部102aは、相続財産の各々の将来の時期での各相続人の相続価格を計算してもよい。また、相続財産は、複数設定されていてもよい。
【0044】
また、価格計算部102aは、相続財産の現在の時期での価格および相続財産についての各相続人の相続割合に基づいて、相続財産の現在の時期での各相続人の相続価格を計算してもよい。
【0045】
遺留分計算部102bは、相続価格の全相続財産分かつ全相続人分の総額および各相続人の遺留分割合に基づいて、将来の時期での各相続人の遺留分を計算する。なお、将来の時期が複数設定されている場合、遺留分計算部102bは、各々の将来の時期での遺留分を計算してもよい。
【0046】
確認部102cは、相続価格と遺留分を相続人別に比較して、将来の時期での各相続人の遺留分の侵害状況(例えば、侵害の有無など)を確認する。なお、将来の時期が複数設定されている場合、確認部102cは、各々の将来の時期での侵害状況を確認してもよい。
【0047】
出力制御部102dは、確認部102cによる確認結果を出力装置114に出力する。なお、出力制御部102dは、確認結果を、確認結果に対応する時期(例えば、現在の時期や将来の時期など)、価格計算部102aで計算した相続価格(確認結果の基となる相続価格)および遺留分計算部102bで計算した遺留分(確認結果の基となる遺留分)と対応付けて出力してもよい。また、出力制御部102dは、確認結果を、リスト形式で出力してもよい。
【0048】
[2.処理の具体例]
遺留分侵害予測装置100で実行される処理の具体例について説明する。なお、本説明では、図2に示すテーブル、図3に示すテーブル、および、図4の最上段に示すテーブル(ただし、左から3つの列に示されているデータのみが登録されている状態のもの)が、相続関連情報記憶部106aに予め格納されているものとする。
【0049】
価格計算部102aは、図4の最上段に示すテーブルに登録されているデータを基に、2年後以降の各年の収入、支出、課税所得、所得税・住民税およびキャッシュフローを計算し、当該テーブルの左から4つ目以降の全列にデータを登録する(ステップSA1)。
【0050】
価格計算部102aは、ステップSA1によりデータ登録された後の、図4の最上段に示すテーブル、および、図2に示すテーブルを基に、図4の中段に示すテーブルおよび図4の最下段に示すテーブルを順に作成する(ステップSA2)。
【0051】
価格計算部102aは、図2に示すテーブル、図3に示すテーブルおよび図4の最下段に示すテーブルを基に、現在の時期での各相続人の相続価格(図5に示すリスト中の「相続財産(CF加味)」と題した列中の「現在」と題した行に示すデータ)、および、キャッシュフローを加味した、各将来の時期での各相続人の相続価格(図5に示すリスト中の「相続財産(CF加味)」と題した列中の「N年後」と題した各行に示すデータ)を計算する(ステップSA3)。なお、本説明では、Nは、1以上20以下の整数とする。
【0052】
なお、図5に示す、キャッシュフローを加味したN年後での○○花子、○○一郎および○○二郎の相続価格は、以下の式で計算される。
「○○花子が1/1の相続割合で相続する土地Aの現在の時期での価格(300,000(千円)、図3参照)」×「土地Aに対する変動率(0.99、図3参照)のN乗」+「○○花子に相続されるN年後の累計キャッシュフロー(図4参照)」
「○○一郎が1/1の相続割合で相続する建物Cの現在の時期での価格(70,000(千円)、図3参照)」×「建物Cに対する変動率(0.95、図3参照)のN乗」+「○○一郎に相続されるN年後の累計キャッシュフロー(図4参照)」
「○○二郎が1/1の相続割合で相続する土地Bの現在の時期での価格(100,000(千円)、図3参照)」×「土地Bに対する変動率(0.95、図3参照)のN乗」+「○○二郎に相続されるN年後の累計キャッシュフロー(図4参照)」
【0053】
価格計算部102aは、時期ごとに、相続価格の全相続財産分かつ全相続人分の総額(図5に示すリスト中の「相続財産(総額)」と題した列に示すデータ)を計算する(ステップSA4)。
【0054】
遺留分計算部102bは、時期ごとに、ステップSA4で計算した総額および図2に示すテーブルに登録されている遺留分割合を基に、各相続人の遺留分(図5に示すリスト中の「遺留分」と題した列に示すデータ)を計算する(ステップSA5)。
【0055】
確認部102cは、時期ごとおよび相続人ごとに、ステップSA3で計算した相続価格とステップSA5で計算した遺留分を比較して、「相続価格<遺留分」の場合は遺留分侵害有(図5に示すリスト中の「遺留分判定」と題した列に示されている「NG」)と判定し、「相続価格≧遺留分」の場合は遺留分侵害無(図5に示すリスト中の「遺留分判定」と題した列に示されている「OK」)と判定する(ステップSA6)。
【0056】
出力制御部102dは、図5に示すリストをモニタ114に出力する(ステップSA7)。
【0057】
[3.本実施形態のまとめ]
以上、本実施形態では、相談顧客の財産情報と遺言の財産配分案より現在および将来の遺留分侵害の有無を可視化する、遺言信託・遺産整理の業務を行っている金融機関(地銀など)向けの仕組みについて説明した。遺言信託・遺産整理の業務を行っている金融機関では、現在において遺留分侵害が有りの遺言については、遺言の執行時に問題となることが多いことから、原則、受託しない運用を行っている。本実施形態によれば、現在の遺留分侵害の有無を分析するだけでなく、将来に亘って遺留分侵害の有無の可能性を分析することができる。
【0058】
また、遺言信託・遺産整理の業務を行っている金融機関では、受託時点の相続人構成、財産台帳および遺言書により、遺留分侵害の有無を審査しているが、遺言の執行は受託時点から数年単位の一定期間先に行われるため、この期間において財産台帳の内容が大きく変わり、その結果、遺留分侵害の有無の判定が執行時に覆るケースがあった。すなわち、現時点での情報のみで判定することで将来の遺留分侵害の有無の判定を誤ってしまうという審査上の課題があった。
【0059】
そこで、本実施形態では、遺留分侵害の有無の判定において、現在の財産台帳の相続税評価額だけでなく、財産を保有することによって生まれる将来キャッシュフローも加味する仕組みとした。具体的には、“資産評価額の増減率”と“累計キャッシュフローの増減率”をパラメータとすることで、年単位で“資産評価額”と“累計キャッシュフロー”を予測できるようになった。その結果、これらの和となる相続財産(総額)が予測可能となった。また、年単位での相続財産(総額)の将来予測が可能となったことで、遺留分侵害の有無の判定が可能となった。
【0060】
[4.他の実施形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0061】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0062】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0063】
また、遺留分侵害予測装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0064】
例えば、遺留分侵害予測装置100が備える処理機能、特に制御部にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて遺留分侵害予測装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部などには、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0065】
また、このコンピュータプログラムは、遺留分侵害予測装置100に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0066】
また、本実施形態で説明した処理を実行するためのプログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、および、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0067】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0068】
記憶部に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0069】
また、遺留分侵害予測装置100は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、遺留分侵害予測装置100は、当該装置に本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラムまたはデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0070】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、金融機関における遺言信託または遺産整理の業務における受託審査業務において特に有用である。
【符号の説明】
【0072】
100 遺留分侵害予測装置
102 制御部
102a 価格計算部
102b 遺留分計算部
102c 確認部
102d 出力制御部
104 通信インタフェース部
106 記憶部
106a 相続関連情報記憶部
106b 確認結果等記憶部
108 入出力インタフェース部
112 入力装置
114 出力装置
200 サーバ装置
300 ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5