(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】殺菌システム
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20231226BHJP
A61L 2/24 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A61L2/10
A61L2/24
(21)【出願番号】P 2020130814
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】古賀 渚紗
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-248759(JP,A)
【文献】国際公開第2019/186880(WO,A1)
【文献】特開2003-347070(JP,A)
【文献】特開2020-63049(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0030195(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L2/00-12/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射対象領域毎に設けられ、前記照射対象領域に紫外線を照射可能な光源と;
前記照射対象領域に存在する人体を検出する検出手段と;
前記照射対象領域毎に紫外線の照射時間または照射線量が設定され、前記検出手段が人体を検出していない前記照射対象領域に対して紫外線が照射される照射時間または照射線量が、設定された照射時間または照射線量となるように前記光源を制御する制御手段と;
を備え、
前記制御手段は、前記光源の点灯を開始した後、設定された照射時間または照射線量までに前記検出手段が人体の存在を検出したときに前記光源を消灯または減光し、前記検出手段が人体の存在を検出しなくなったときに前記光源を再度点灯させ、前記検出手段が人体の存在を検出してから人体の存在を検出しなくなるまでの時間が所定時間未満の場合には、前記光源を点灯させてから消灯または減光するまでと前記光源を再度点灯させてからとを合わせた照射時間または照射線量が、設定された照射時間または照射線量となるように前記光源を制御する
ことを特徴とする殺菌システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検出手段が人体の存在を検出してから人体の存在を検出しなくなるまでの時間が所定時間以上の場合には、前記光源を再度点灯させてからの照射時間または照射線量が、設定された照射時間または照射線量となるように前記光源を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の殺菌システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記検出手段が人体の存在を検出してから第2の所定時間が経過した後に人体の存在を検出しなくなったときに、前記光源を点灯する
ことを特徴とする請求項1または2記載の殺菌システム。
【請求項4】
前記照射対象領域は、移動体内の所定の領域であり、
前記制御手段は、前記移動体が移動を開始または停止したときに前記光源を点灯する
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の殺菌システム。
【請求項5】
前記照射対象領域は、前記移動体内に設置された座席であり、
前記光源は、少なくとも前記座席の前方下方位置から前記座席に向かって紫外線を照射可能に配設され、
前記検出手段は、前記照射対象領域近傍において人体の前記座席の前方または後方への移動を検出可能であり、
前記制御手段は、前記光源を点灯しているときに、前記検出手段によって人体が前記座席の前方に移動することを検出したときは前記光源を消灯または減光し、前記検出手段によって人体が前記座席の後方に移動することを検出したときは前記光源を消灯または減光させない
ことを特徴とする請求項4記載の殺菌システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記移動体が移動しているときは、前記検出手段による検出結果にかかわらず前記光源を点灯させない
ことを特徴とする請求項4記載の殺菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、照射対象領域毎に紫外線を照射して殺菌する殺菌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定領域に対応して紫外線を照射可能とする光源を設け、人が存在しない領域の光源を点灯させて紫外線により殺菌するシステムが知られている。
【0003】
このシステムでは、人がいない間、常に光源を点灯させるため、既に除菌が十分であるにもかかわらず、紫外線を照射することになり、光源の寿命が短くなるとともに、照射対象領域の殺菌物の劣化を早めることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、不要な紫外線の照射を抑制し、人が利用した照射対象領域を適切に殺菌することができる殺菌システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の殺菌システムは、照射対象領域毎に設けられ、照射対象領域に紫外線を照射可能な光源と、照射対象領域に存在する人体を検出する検出手段と、照射対象領域毎に紫外線の照射時間または照射線量が設定され、検出手段が人体を検出していない照射対象領域に対して紫外線が照射される照射時間または照射線量が、設定された照射時間または照射線量となるように光源を制御する制御手段と、を備える。制御手段は、光源の点灯を開始した後、設定された照射時間または照射線量までに検出手段が人体の存在を検出したときに光源を消灯または減光し、検出手段が人体の存在を検出しなくなったときに光源を再度点灯させる。制御手段は、検出手段が人体の存在を検出してから人体の存在を検出しなくなるまでの時間が所定時間未満の場合、光源を点灯させてから消灯または減光するまでと光源を再度点灯させてからとを合わせた照射時間または照射線量が、設定された照射時間または照射線量となるように光源を制御する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の殺菌システムによれば、不要な紫外線の照射を抑制し、人が利用した照射対象領域を適切に殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態を示す殺菌システムにより紫外線を照射した鉄道車両内の側面図である。
【
図2】同上殺菌システムにより紫外線を照射した鉄道車両内の正面図である。
【
図3】同上殺菌システムにより紫外線を照射した鉄道車両内のイメージ図である。
【
図5】同上殺菌システムの殺菌処理動作を示すフローチャートである。
【
図6】同上殺菌システムの人体を検出しない場合の紫外線の照射時間と殺菌効果との関係を示すグラフである。
【
図7】同上殺菌システムの人体を検出した場合であって検出時間が所定時間未満の場合の紫外線の照射時間と殺菌効果との関係を示すグラフである。
【
図8】同上殺菌システムの人体を検出した場合であって検出時間が所定時間以上の場合の紫外線の照射時間と殺菌効果との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0010】
図1および
図2に殺菌システム10を移動体11に適用した例を示す。移動体11は、人を載せて移動する例えば鉄道車両12である。
【0011】
鉄道車両12は、移動方向に沿って長く設けられている。鉄道車両12内は、床面13、天井部14、窓が設けられる左右の側壁部15などによって囲まれて構成されている。
【0012】
鉄道車両12内には、複数の座席16が設置されている。座席16は、鉄道車両12内の左右両側に通路17を挟んで設置されているとともに、移動方向に沿って所定の間隔をあけて設置されている。通路17を挟んだ一側には3列の座席16が一体的に設けられた座席ブロック18が設置され、他側には2列の座席16が一体的に設けられた座席ブロック19が設置されている。座席16は、座面部20、背もたれ部21、肘掛け部22を有し、脚部23により床面13に設置されている。通路17は、鉄道車両12の移動方向に沿って設けられている。
【0013】
鉄道車両12内には、座席16よりも上方で、左右の側壁部15の上部側に荷物棚24が設置されている。
【0014】
そして、殺菌システム10は、人が利用した移動体11内の所定の領域である照射対象領域30毎に紫外線を照射して殺菌する。殺菌システム10により紫外線を照射する照射対象領域30は、鉄道車両12の座席16である。
【0015】
殺菌システム10は、人体の不在時に紫外線による表面殺菌を行うとき、設定された照射線量、または、照射対象と紫外線光源との距離によって決まる放射照度を照射線量で除した値である設定された照射時間まで、紫外線を照射する。
【0016】
殺菌システム10は、紫外線を照射可能な光源31,32(以下、第1の光源31、第2の光源32ともいう)を備えている。これら光源31,32は、例えば紫外線LEDや紫外線ランプなどの紫外線光源と、この紫外線光源から放射される紫外線の配光を制御する反射板などの光学部品と、これら紫外線光源および光学部品を収容する筐体などを備え、紫外線光源からの殺菌作用を有する波長域の紫外線を所定の領域に向けて照射可能とする。紫外線には、例えば人体への影響が少ない222nmを主波長とする紫外線を用いることが好ましい。
【0017】
第1の光源31および第2の光源32は、照射対象領域30である座席16毎にそれぞれ1つずつ設置されている。
【0018】
第1の光源31は、照射対象領域30の座席16に対して、前方下方位置に設置されている。例えば、第1の光源31は、照射対象領域30の座席16に対して、前方の座席16の下方の床面13に設置されている。なお、第1の光源31は、前方の座席16の下部に設置されていてもよい。第1の光源31は、肘掛け部22の下面側に紫外線を照射できるように座席16の少なくとも肘掛け部22よりも低い位置に設置されていればよく、本実施形態では座面部20よりも低い位置に設置されている。第1の光源31は、紫外線の照射方向を上向きとなるように設置されている。そして、第1の光源31は、照射対象領域30の座席16に対して、前方下方位置から紫外線(図にはUV1と記す)を照射する。これにより、座面部20の下面側、肘掛け部22の下面側、背もたれ部21の前面側から、紫外線を照射して殺菌する。
【0019】
第2の光源32は、照射対象領域30である座席16に対して、上方または側方に設置されている。座席16よりも上方に設置される第2の光源32は、荷物棚24に設置され、紫外線の照射方向を下向きとしている。なお、第2の光源32は、天井部14に設置されていてもよい。また、座席16の側方に設置される第2の光源32は、3列の座席ブロック18の最も通路17側の座席16を照射対象領域30とし、座席16の肘掛け部22よりも高い位置で側壁部15に設置され、紫外線の照射方向を略水平方向としている。3列の座席ブロック18の最も通路17側の座席16は、荷物棚24や天井部14に第2の光源32を設置して紫外線を照射するよりも、側壁部15に設置した第2の光源32から紫外線を照射した方が効果的に殺菌できる。そして、第2の光源32は、照射対象領域30の座席16に対して紫外線(図にはUV2と記す)を照射する。これにより、座面部20の上面側、肘掛け部22の上面側、背もたれ部21の前面側から、紫外線を照射して殺菌する。
【0020】
図3には、殺菌システム10により紫外線を照射した鉄道車両12内のイメージ図を示し、座席16毎に、第1の光源31および第2の光源32を点灯させ、紫外線を照射して殺菌する。
【0021】
また、殺菌システム10は、照射対象領域30に存在する人体を検出する検出手段33(
図4参照)を備えている。検出手段33は、例えば人感センサや画像センサなどが用いられる。検出手段33は、照射対象領域30毎に対応して設け、照射対象領域30毎に人体を検出してもよいし、複数の照射対象領域30に対応して1つ設け、照射対象領域30毎に存在する人体を検出してもよい。例えば、検出手段33は、座席ブロック18,19毎に設け、各座席ブロック18,19の照射対象領域30に存在する人体を検出してもよい。
【0022】
検出手段33は、例えば、天井部14、荷物棚24、側壁部15、前方の座席16などに設置してもよい。あるいは、検出手段33は、光源31,32と一体的に設けてもよい。
【0023】
検出手段33は、通路17に隣接する照射対象領域30の近傍において、通路17を人体が座席16の後方から前方または前方から後方へ移動するのも検出可能とする。この場合、照射対象領域30に存在する人体を検出する検出手段33と兼用してもよいし、通路17を人体が座席16の後方から前方または前方から後方へ移動するのを検出するための検出手段33を用いてもよい。
【0024】
次に、
図4に殺菌システム10のブロック図を示す。殺菌システム10は、この殺菌システム10を制御する制御部40を備えている。制御部40は、検出手段33による検出に基づいて光源31,32を制御する制御手段41と、照射時間などの時間を計時する計時部42と、照射対象領域30毎に予め設定された照射時間または照射線量や、照射対象領域30毎に紫外線を照射した照射時間または照射線量などを記憶する記憶部43とを備えている。
【0025】
制御手段41は、鉄道車両12側から移動の開始または停止に関する移動情報を取得する。なお、移動情報は、加速度センサ、GPSセンサ、振動センサなどを用いて取得してもよい。
【0026】
そして、制御手段41は、検出手段33が人体を検出していない照射対象領域30に対して紫外線が照射される照射時間または照射線量が、設定された照射時間または照射線量となるように光源31,32を制御する。
【0027】
制御手段41は、紫外線の所定の照射開始条件を満たしたときに、光源31,32を点灯させて殺菌を開始するように制御する。例えば、検出手段33が人体の存在を検出してから第2の所定時間(例えば10分)が経過した後に人体の存在を検出しなくなったとき、あるいは、人体の存在を検出していた検出手段33が人体の存在を検出しなくなり、移動体11である鉄道車両12が移動を開始または停止したときなどに、光源31,32を点灯させて殺菌を開始する。
【0028】
なお、座席16が指定席などの場合、鉄道車両12が移動しているときには、座席16を一旦離れた人が再び戻ってくるため、検出手段33による検出結果にかかわらず光源31,32を点灯させて殺菌を開始させないようにする。
【0029】
また、制御手段41は、光源31,32の点灯を開始した後、設定された照射時間または照射線量までに検出手段33が人体の存在を検出したときに光源31,32を消灯または減光し、検出手段33が人体の存在を検出しなくなったときに光源31,32を再度点灯させ、検出手段33が人体の存在を検出してから人体の存在を検出しなくなるまでの時間が所定時間(第1の所定時間であり、例えば3分)未満の場合には、光源31,32を点灯させてから消灯または減光するまでと光源31,32を再度点灯させてからとを合わせた照射時間または照射線量が、設定された照射時間または照射線量となるように光源31,32を制御する。
【0030】
制御手段41は、検出手段33が人体の存在を検出してから人体の存在を検出しなくなるまでの時間が所定時間(第1の所定時間であり、例えば3分)以上の場合には、光源31,32を再度点灯させてからの照射時間または照射線量が、設定された照射時間または照射線量となるように光源31,32を制御する。
【0031】
さらに、制御手段41は、光源31,32を点灯しているときに、検出手段33によって人体が座席16の前方に移動することを検出したときは少なくとも第1の光源31を消灯または減光し、検出手段33によって人体が座席16の後方に移動することを検出したときは第1の光源31を消灯または減光させないように制御する。
【0032】
次に、殺菌システム10の殺菌処理動作について説明する。
【0033】
図5に殺菌システム10の殺菌処理動作のフローチャートを示す。
【0034】
照射対象領域30である座席16は、例えば、設定された照射線量が3mJ/cm2、照射時間が約6分で、99.9%のウイルスが減少するものとする。
【0035】
制御手段41は、紫外線の所定の照射開始条件を満たしたか否かを監視し(ステップS1)、所定の照射開始条件を満たしたとき(ステップS1のYES)、光源31,32を点灯し(ステップS2)、照射対象領域30に紫外線を照射し、殺菌を開始する。例えば、座席16に滞在していた人が移動したときなどには、検出手段33が人体の存在を検出してから第2の所定時間(例えば10分)が経過した後に人体の存在を検出しなくなることにより、照射開始条件を満たすことになる。あるいは、座席16に滞在していた人が鉄道車両12を降りるときなどには、人体の存在を検出していた検出手段33が人体の存在を検出しなくなり、移動体11である鉄道車両12が移動を開始または停止することにより、照射開始条件を満たすことになる。
【0036】
制御手段41は、光源31,32の点灯中は、検出手段33が人体を検出したか否か(ステップS3)、殺菌を完了したか否か(ステップS4)を監視する。
【0037】
図6に示すように、上述の設定された照射線量が3mJ/cm
2、照射時間が約6分で、99.9%のウイルスが減少する照射対象領域30において、紫外線の照射を開始してから、途中に、検出手段33が人体の存在を検出しなかった場合(ステップS3のNO)、約6分間の紫外線の照射により殺菌を完了し(ステップS4のYES)、光源31,32を消灯する(ステップS5)。
【0038】
また、
図7に示すように、光源31,32を点灯して紫外線の照射を開始してから例えば2分後に、検出手段33が人体の存在を検出した場合(ステップS3のYES)、制御手段41は、光源31,32を消灯(または減光)し(ステップS6)、紫外線の照射による殺菌を中断する。制御手段41は、既に照射した紫外線の照射時間または照射線量を記憶部43に記憶し、また、検出手段33が人体を検出しなくなるのを監視する(ステップS7)。
【0039】
検出手段33が人体を検出しなくなると(ステップS7のNO)、制御手段41は、光源31,32を再度点灯し(ステップS8)、紫外線の照射による殺菌を再開する。
【0040】
このとき、例えば、照射対象領域30の座席16に人体が一時的に近付いたり一時的に滞在するなどしただけで、検出手段33が人体の存在を検出してから人体の存在を検出しなくなるまでの時間が所定時間未満、例えば3分未満の場合には(ステップS9のYES)、人体の存在の検出前の照射時間または照射線量を維持したまま、残りの照射時間または照射線量だけ光源31,32を点灯して紫外線を照射するように、照射時間または照射線量の継続を設定する(ステップS10)。
【0041】
光源31,32を再度点灯後、途中で検出手段33が人体の存在を検出せず、光源31,32を点灯させてから消灯(または減光)するまでと光源31,32を再度点灯させてからとを合わせた照射時間または照射線量が、設定された照射時間または照射線量となり、すなわちトータル約6分間の紫外線の照射により、殺菌を完了すると(ステップS4のYES)、光源31,32を消灯する(ステップS5)。
【0042】
なお、光源31,32を再度点灯後、途中で検出手段33が人体の存在を再度検出した場合には、上述したように、再び光源31,32を消灯(または減光)し、人体の存在を検出しなくなったら光源31,32を再点灯し、検出手段33が人体の存在を検出してから人体の存在を検出しなくなるまでの時間が所定時間未満であれば、照射時間または照射線量の継続を設定する。
【0043】
また、
図8に示すように、光源31,32を点灯して紫外線の照射を開始してから例えば2分後に、検出手段33が人体の存在を検出した場合(ステップS3のYES)、制御手段41は、光源31,32を消灯(または減光)し(ステップS6)、紫外線の照射による殺菌を中断する。制御手段41は、既に照射した紫外線の照射時間または照射線量を記憶部43に記憶し、また、検出手段33が人体を検出しなくなるのを監視する(ステップS7)。
【0044】
検出手段33が人体を検出しなくなると(ステップS7のNO)、制御手段41は、光源31,32を再度点灯し(ステップS8)、紫外線の照射による殺菌を再開する。
【0045】
このとき、例えば、照射対象領域30の座席16に人が滞在した後に離れたために、検出手段33が人体の存在を検出してから人体の存在を検出しなくなるまでの時間が所定時間以上、例えば3分以上であって、例えば10分の場合には(ステップS9のNO)、人体の存在を検出前の照射時間または照射線量を0にリセットし(ステップS11)、設定された照射時間または照射線量だけ紫外線を照射するように設定する。
【0046】
光源31,32を再度点灯後、途中で検出手段33が人体の存在を検出せず、光源31,32を再度点灯させてからの照射時間または照射線量が、設定された照射時間または照射線量となり、すなわち約6分間の紫外線の照射により、殺菌を完了すると(ステップS4のYES)、光源31,32を消灯する(ステップS5)。
【0047】
なお、光源31,32を再度点灯後、途中で検出手段33が人体の存在を再度検出した場合には、上述したように、再び光源31,32を消灯(または減光)し、人体の存在を検出しなくなったら光源31,32を再点灯し、検出手段33が人体の存在を検出してから人体の存在を検出しなくなるまでの時間が所定時間以上であれば、検出前の照射時間または照射線量を0にリセットし、設定された照射時間または照射線量だけ紫外線を照射するように設定し、また、所定時間未満であれば、照射時間または照射線量の継続を設定する。
【0048】
また、
図5のフローチャートには記載されていないが、制御手段41は、少なくとも通路17に隣接する照射対象領域30の座席16の光源31,32を点灯しているとき、その照射対象領域30の座席16に存在する人体を検出する検出手段33により、照射対象領域30の座席16の前方または後方への人体の移動を監視する。
【0049】
制御手段41は、照射対象領域30の座席16の後方から前方に向って通路17を人体が移動することを検出手段33によって検出したときには、照射対象領域30の座席16の前方下方位置にあって後方の座席16に向けて紫外線を照射する少なくとも第1の光源31を消灯(または減光)し、照射対象領域30の座席16の後方から前方に移動する人体の目に紫外線が入らないようにする。
【0050】
制御手段41は、照射対象領域30の座席16の前方から後方に移動することを検出手段33によって検出したときには、第1の光源31を消灯(または減光)させず、紫外線の照射による殺菌を継続する。
【0051】
以上のように、本実施形態の除菌システム10では、紫外線の照射の途中に、照射対象領域30の人体の存在を検出すると、光源31,32を消灯または減光し、人体の存在を検出しなくなったときに光源31,32を再度点灯し、人体の存在を検出してから人体の存在を検出しなくなるまでの時間が所定時間未満の場合には、光源31,32を点灯させてから消灯または減光するまでと光源31,32を再度点灯させてからとを合わせた照射時間または照射線量が、設定された照射時間または照射線量となるように光源31,32を制御するため、不要な紫外線の照射を抑制し、人が利用した照射対象領域30を適切に殺菌することができる。
【0052】
さらに、照射対象領域30の人体の存在を検出してから人体の存在を検出しなくなるまでの時間が所定時間以上の場合には、光源31,32を再度点灯させてからの照射時間または照射線量が、設定された照射時間または照射線量となるように光源31,32を制御するため、人が利用した照射対象領域30を確実に殺菌することができる。
【0053】
また、照射対象領域30に人体の存在を検出した後、人体の存在を検出しなくなるまでの時間が第2の所定時間以上である場合、光源31,32を点灯するため、人が利用した照射対象領域30の殺菌を適切に開始することができる。
【0054】
また、人体の存在を検出してから検出しなくなり、移動体11が移動を開始または停止したときに、光源31,32を点灯するため、人が利用した照射対象領域30の殺菌を適切に開始することができる。
【0055】
また、移動体11内に設置された座席16において、座席16の前方下方位置に設置された第1の光源31から、座席16に向かって紫外線を照射する場合、照射対象領域30の近傍における人体の移動を検出し、この人体が座席16の後方から前方に移動する際には、第1の光源31を消灯または減光することにより、人体の目に紫外線が入るのを防止し、また、人体が座席16の前方から後方に移動する際には、第1の光源31を消灯または減光しないことにより、殺菌を継続し、殺菌を早く完了させることができる。
【0056】
また、座席16が指定席などの場合、鉄道車両12が移動しているときには、座席16を一旦離れた人が再び戻ってくるため、検出手段33による検出結果にかかわらず光源31,32を点灯させないため、不要な紫外線の照射を防止できる。
【0057】
なお、鉄道車両12の移動方向に対応して座席ブロック18,19が回転する場合には、第1の光源31は、鉄道車両12の移動方向のいずれにも対応して設けることにより、あるいは座席16と一緒に回転するように座席16に設けることにより、座席ブロック18,19の回転位置に応じて照射対象領域30の座席16に紫外線を照射可能な第1の光源31を点灯させてもよい。
【0058】
また、移動体11は、鉄道車両12に限らす、バスやタクシーなどの自動車、あるいは船舶などでもよい。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
10 殺菌システム
11 移動体
16 座席
30 照射対象領域
31,32 光源
33 検出手段
41 制御手段