(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】回転機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20231226BHJP
H02K 1/278 20220101ALI20231226BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K1/278
(21)【出願番号】P 2020160786
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2021-09-13
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「次世代自動車向け高効率モーター用磁性材料技術開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三箇 義仁
(72)【発明者】
【氏名】浅野 能成
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】窪田 治彦
【審判官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-271722(JP,A)
【文献】特開2013-51763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(30)を中心にして回転可能に設けられる回転子(20)と、
前記回転子(20)の周面(21)と空隙を介して径方向に対向する対向面(15)を有する固定子(10)と、
を備え、
前記回転子(20)は、
前記固定子(10)の前記対向面(15)から径方向に第1距離以遠の箇所に埋め込まれる第1磁石(23)と、
前記固定子(10)の前記対向面(15)に対して前記第1磁石(23)よりも深くに埋め込まれる第2磁石(24)と、
を有する磁石埋込型の回転機(1)であって、
前記第1磁石(23)の回転機始動時の温度に対応する第1温度範囲(R1)における保磁力をHco(A)、前記第1温度範囲(R1)よりも高い回転機定常駆動時の温度に対応する第2温度範囲(R2)における保磁力をHco(B)と表し、かつ、
前記第2磁石(24)の前記第1温度範囲(R1)における保磁力をHci(A)、前記第2温度範囲(R2)における保磁力をHci(B)と表したとき、
a)Hco(A)>Hco(B)
b)Hci(A)>Hci(B)
c)Hco(A)>Hci(A)
d){Hco(A)/Hci(A)}>{Hco(B)/Hci(B)}
が成り立
ち、
温度をt1とt0とで表したとき、
Hco(t1)=Hco(t0){1-βo(t1-t0)}
Hci(t1)=Hci(t0){1-βi(t1-t0)}
とすると、
e)βo>βi>0
が成り立ち、
f)Hco(B)>Hci(B)
が成り立つことを特徴とする磁石埋込型の回転機(1)。
【請求項2】
請求項
1の磁石埋込型の回転機(1)において、
前記第1温度範囲(R1)は-20℃以上かつ40℃以下であり、
前記第2温度範囲(R2)は100℃以上かつ200℃以下である
ことを特徴とする磁石埋込型の回転機(1)。
【請求項3】
請求項1
又は2の磁石埋込型の回転機(1)において、
前記第1磁石(23)は、その中央に近づくほど前記固定子(10)の前記対向面(15)から遠ざかるように直線状、折れ線状又は曲線状に配列される第1磁石スロットに埋め込まれ、
前記第2磁石(24)は、その中央に近づくほど前記固定子(10)の前記対向面(15)から遠ざかるように折れ線状又は曲線状に配列され、かつ前記第1磁石スロットよりも前記固定子(10)の前記対向面(15)から遠ざかる側に位置する第2磁石スロットに埋め込まれる
ことを特徴とする磁石埋込型の回転機(1)。
【請求項4】
請求項1
又は2の磁石埋込型の回転機(1)において、
前記第1磁石(23)は、その中央に近づくほど前記固定子(10)の前記対向面(15)から遠ざかるように直線状、折れ線状又は曲線状に配列される第3磁石スロットに部分的に埋め込まれ、
前記第2磁石(24)は、前記第1磁石(23)よりも前記第3磁石スロットの中央寄りの位置に埋め込まれる
ことを特徴とする磁石埋込型の回転機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁石の埋込位置に応じて、磁石の保磁力を異ならせた磁石埋込型の回転機が知られている。この種の回転機のロータは、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1の永久磁石埋込みロータは、ロータ半径方向に1極当たり2層以上多層に間隔をおいて配置された複数組の永久磁石を埋設してなるロータであって、各永久磁石がロータの求心方向へ凸型をなす形状をなし、多層構造をとる永久磁石のロータ外周側に位置する永久磁石の保磁力をロータ内周側に位置する永久磁石の保磁力よりも大きくしている。
【0004】
特許文献1の磁石埋込みロータでは、ステータよりロータに逆磁界が加わった場合、各永久磁石の逆磁界による内部の磁束密度の低下が大きい部分を保磁力の高い磁性材料にて構成するため、減磁が起こりにくく、かつ、永久磁石の逆磁界による内部の磁束密度の低下が大きい部分についてのみ保磁力の高い磁性材料を使用するため特性低下が少ない、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-271722号公報(特に段落0012,0016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、磁石の温度については考慮されていないため、以下に示すような温度による減磁のメカニズムの違いが考慮されていない。そのため、回転機の定常駆動時には、ロータ外周側に位置する磁石も、ロータ内周側に位置する磁石も、同程度の高温に曝されるので、当該温度領域においては、定常電流が流れたとしても、ロータ外周側に位置する磁石とロータ内周側に位置する磁石とは同程度の保磁力、または、ロータ外周側に位置する磁石がロータ内周側に位置する磁石よりも若干高い保磁力を有していれば足りる。一方で、回転機の始動時には、同期運転に引き込むまでは、定常運転時よりも大きな電流が流れ、また、起動のため静止摩擦係数の影響や潤滑剤の粘度、流体駆動用モータの場合は流体の粘度が大きい事などにより、大きなトルクが必要となる。そのため、ロータ内周側に位置する磁石は、ロータ外周側に位置する磁石よりも、逆磁界に曝され難く、減磁し難い。これは、裏を返すと、ロータ内周側に位置する磁石は、ロータ外周側に位置する磁石よりも、着磁し難いということである。以上のような点を踏まえて、磁石の選定をより最適化して、ロータ外周側に位置する磁石とロータ内周側に位置する磁石との両方において、必要な保磁力を確保しつつ、ロータ内周側の磁石における着磁のし難さを軽減することが望まれていた。
【0007】
本開示の目的は、必要な保磁力を確保しつつ、着磁のし難さを軽減することが可能な、磁石埋込型の回転機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様は、回転軸(30)を中心にして回転可能に設けられる回転子(20)と、
前記回転子(20)の周面(21)と空隙を介して径方向に対向する対向面(15)を有する固定子(10)と、を備え、前記回転子(20)は、前記固定子(10)の前記対向面(15)から径方向に第1距離以遠の箇所に埋め込まれる第1磁石(23)と、前記固定子(10)の前記対向面(15)から径方向に前記第1距離よりも長い第2距離以遠の箇所に埋め込まれる第2磁石(24)と、を有する磁石埋込型の回転機(1)を対象とする。この磁石埋込型の回転機(1)において、前記第1磁石(23)の回転機始動時の温度に対応する第1温度範囲(R1)における保磁力をHco(A)、回転機定常駆動時の温度に対応する第2温度範囲(R2)における保磁力をHco(B)と表し、かつ、前記第2磁石(24)の前記第1温度範囲(R1)における保磁力をHci(A)、前記第2温度範囲(R2)における保磁力をHci(B)と表したとき、
a)Hco(A)>Hco(B)
b)Hci(A)>Hci(B)
c)Hco(A)>Hci(A)
d){Hco(A)/Hci(A)}>{Hco(B)/Hci(B)}
が成り立つ。
【0009】
一般的に、固定子(10)の対向面(15)に対して第1磁石(23)よりも深くに埋め込まれた第2磁石(24)は、回転機始動時に逆磁界に曝され難く減磁し難い反面、着磁し難い。一方、回転機定常駆動時、特に、磁石温度が高温になる高負荷運転時には、第1磁石(23)も第2磁石(24)も高温に曝される中で一定以上の保磁力を保持することが必要である。第1の態様では、a)~d)が成り立つ磁石を第1磁石(23)、第2磁石(24)として採用することで、必要な保磁力を確保しつつ、第2磁石(24)における着磁のし難さを軽減することができる。
【0010】
本開示の第2の態様は、上記第1の態様の磁石埋込型の回転機(1)において、温度をt1とt0とで表したとき、
Hco(t1)=Hco(t0){1-βo(t1-t0)}
Hci(t1)=Hci(t0){1-βi(t1-t0)}
とすると、
e)βo>βi>0
が成り立つ。
【0011】
一般的に、磁石の着磁作業は、回転機定常駆動時に磁石が曝される温度と比べて、はるかに低温で行われる。第2の態様では、a)~e)が成り立つ磁石を第1磁石(23)、第2磁石(24)として採用することで、回転機定常駆動時に必要な保磁力を確保しつつ、第2磁石(24)における着磁のし難さを大幅に軽減することができる。
【0012】
本開示の第3の態様は、上記第1又は第2の態様の磁石埋込型の回転機(1)において、
f)Hco(B)>Hci(B)
が成り立つ。
【0013】
第3の態様では、回転機定常駆動時の第1磁石(23)の保磁力を、回転機定常駆動時の第2磁石(24)の保磁力よりも大きくすることができる。そのため、回転機定常駆動時に第1磁石(23)及び第2磁石(24)が高温に曝されてもそれぞれの磁石の位置に応じて保磁力を適正に保つことができる。
【0014】
本開示の第4の態様は、上記第1~第3の態様のいずれか1つの磁石埋込型の回転機(1)において、前記第1温度範囲(R1)は-20℃以上かつ40℃以下であり、前記第2温度範囲(R2)は100℃以上かつ200℃以下である。
【0015】
第4の態様では、着磁作業時(通常、低温~常温)においては深く埋め込まれた第2磁石(24)を着磁し易くし、かつ、回転機定常駆動時に第1磁石(23)及び第2磁石(24)が高温に曝されても保磁力を適正に保つことを可能とする、磁石埋込型の回転機が提供される。
【0016】
本開示の第5の態様は、上記第1~第4の態様のいずれか1つの磁石埋込型の回転機(1)において、前記第1磁石(23)は、中央寄りになるほど前記固定子(10)の前記対向面(15)から遠ざかるように直線状、折れ線状又は曲線状に配列される第1パターン上に埋め込まれる。前記第2磁石(24)は、中央寄りになるほど前記固定子(10)の前記対向面(15)から遠ざかるように折れ線状又は曲線状に配列され、かつ前記第1パターンよりも前記固定子(10)の前記対向面(15)から遠ざかる側に位置する第2パターン上に埋め込まれる。
【0017】
第5の態様では、回転子(20)上における磁石(23, 24)の配列パターンに応じて、各磁石(23, 24)に適正な保磁力を持たせることができる。その結果、減磁耐力と着磁性の両立を図ることができる。
【0018】
本開示の第6の態様は、上記第1~第4の態様のいずれか1つの磁石埋込型の回転機(1)において、前記第1磁石(23)は、中央寄りになるほど前記固定子(10)の前記対向面(15)から遠ざかるように直線状、折れ線状又は曲線状に配列される第3パターン上に部分的に埋め込まれる。前記第2磁石(24)は、前記第1磁石(23)よりも前記第3パターン上の中央寄りに埋め込まれる。
【0019】
第6の態様では、回転子(20)上における磁石(23, 24)の配列パターンに応じて、各磁石(23, 24)に適正な保磁力を持たせることができる。その結果、減磁耐力と着磁性の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)を軸方向に対して垂直に切ったときの断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)の1極分の構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1磁石及び第2磁石の、磁石の温度と保磁力との相関関係を示すグラフである。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)の1極分の構成を示す断面図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)の1極分の構成を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第4実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)の1極分の構成を示す断面図である。
【
図7】
図7は、第5実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)の1極分の構成を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第6実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)の1極分の構成を示す断面図である。
【
図9】
図9は、第7実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)の1極分の構成を示す断面図である。
【
図10】
図10は、第8実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)の1極分の構成を示す断面図である。
【
図11】
図11は、第9実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)の1極分の構成を示す断面図である。
【
図12】
図12は、第10実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)の1極分の構成を示す断面図である。
【
図13】
図13は、第11実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)の1極分の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、或いはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0022】
≪実施形態≫
<1.第1実施形態>
<1-1.回転機の全体構成>
以下では、
図1から
図3までを参照して、本実施形態に係る回転機(1)の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る回転機(1)を後述する回転軸(30)に垂直な平面で切ったときの断面図である。回転機(1)は、例えば、空気調和機の圧縮機等に搭載される。
図1に示すように、回転機(1)は、固定子(10)と、回転子(20)と、回転軸(30)とを含む。
【0023】
固定子(10)は、回転機(1)の外周側に配置され、図示しない筐体に固定される。固定子(10)は、固定子鉄心(11)と、巻線(図示省略)とを含む。
【0024】
固定子鉄心(11)は、例えば、電磁鋼板を軸方向に複数枚積層することによって形成される。固定子鉄心(11)は、軸方向に視たときに略円環状のバックヨーク部(12)と、バックヨーク部(12)の内周面から径方向内側(後述する回転子(20)側)に向かって突出する複数のティース部(13)とを含む。
【0025】
複数のティース部(13)は、バックヨーク部(12)の内周面に、周方向に略等間隔に配置される。周方向に隣接する2つのティース部(13)の間には、上記巻線が収容されるスロット(14)が形成される。
【0026】
上記巻線は、分布巻方式によって、複数のティース部(13)を跨ぐように巻き回される。上記巻線とティース部(13)との間には、絶縁フィルム等の絶縁部材が介在する。
【0027】
なお、上記巻線は、集中巻方式によって、複数のティース部(13)のそれぞれに巻き付けられてもよい。また、ティース部(13)の数及びスロット(14)の数は、図示したものに限定されるものではなく、図示された数以下であってもよく、図示された数以上であってもよい。
【0028】
回転子(20)は、固定子(10)の径方向内側に位置する。回転子(20)は、回転軸(30)を中心にして回転可能に設けられる。回転子(20)は、外周面に周面(21)を有する。固定子(10)は、回転子(20)の周面(21)と空隙を介して径方向に対向する対向面(15)を有する。対向面(15)は、ティース部(13)の先端の周面(内周面)同士を接続して構成される、仮想的な円筒の内周面である。
【0029】
回転子(20)は、回転子鉄心(22)と、回転子鉄心(22)に埋め込まれる永久磁石(23, 24)とを有する。回転子鉄心(22)は、回転子(20)の構成部分のうち、固定子(10)の上記巻線に流れる電流による磁束における磁路、及び永久磁石(23, 24)の磁束における磁路を構成する構成要素である。固定子鉄心(11)は、例えば電磁鋼板を軸方向に複数枚積層することによって形成される。回転子鉄心(22)には、永久磁石(23, 24)を埋め込むための空間である磁石スロット(25)が設けられる。
【0030】
磁石スロット(25)と、そこに埋め込まれる永久磁石(23, 24)とによって、周方向に並ぶ8つの磁極が形成される。これらの磁石スロット(25)及びそこに埋め込まれる永久磁石(23, 24)は、全ての磁極において同形状となっている。
【0031】
図2に示すように、第1実施形態においては、磁石スロット(25)は、第1磁石スロット(25A)と、第2磁石スロット(25B)とを有する。
図2は、
図1のうちの1極分の拡大図である。第1磁石スロット(25A)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面(15)から遠ざかる曲線状の溝である。別の言い方をすれば、第1磁石スロット(25A)は、回転軸(30)側に向かって凸となる円弧状の溝である。
【0032】
第2磁石スロット(25B)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面から遠ざかる曲線状の溝である。第2磁石スロット(25B)は、第1磁石スロット(25A)よりも固定子(10)の対向面(15)から遠ざかる側に位置する。別の言い方をすれば、第2磁石スロット(25A)は、回転軸(30)側に向かって凸となる円弧状の溝であり、第1磁石スロット(25A)よりも回転軸(30)寄りに配置される。
【0033】
第1磁石スロット(25A)には、第1磁石(23)が埋め込まれる。第2磁石スロット(25B)には、第2磁石(24)が埋め込まれる。第1磁石(23)と第2磁石(24)との間では、上記式(1)~式(8)の関係が成り立つ。これにより、第1磁石(23)は、固定子(10)の対向面(15)から径方向に第1距離又はそれ以遠の箇所に埋め込まれる。一方で、第2磁石(24)は、固定子(10)の対向面(15)から径方向に第1距離よりも長い第2距離又はそれ以遠の箇所に埋め込まれる。
【0034】
<1-2.磁石の特性>
以下では、第1磁石(23)及び第2磁石(24)の特性について、詳細に説明する。
【0035】
磁石の温度(t)を横軸に、保磁力(H)を縦軸に取ってグラフ化すると、
図3のようになる。
図3は磁石の温度-保磁力特性を示すグラフである。
【0036】
図3のように、第1磁石(23)の回転機始動時の温度に対応する第1温度範囲(R1)における保磁力をHco(A)、第1磁石(23)の回転機定常駆動時の温度に対応する第2温度範囲(R2)における保磁力をHco(B)と表し、かつ、第2磁石(24)の第1温度範囲(R1)における保磁力をHci(A)、第2磁石(24)の第2温度範囲(R2)における保磁力をHci(B)と表したとき、以下の式が成り立つ。
【0037】
Hco(A)>Hco(B) ・・・(1)
Hci(A)>Hci(B) ・・・(2)
Hco(A)>Hci(A) ・・・(3)
{Hco(A)/Hci(A)}>{Hco(B)/Hci(B)} ・・・(4)
【0038】
すなわち、式(1)のように、第1磁石(23)の第1温度範囲(R1)における保磁力Hco(A)は、第1磁石(23)の第2温度範囲(R2)における保磁力Hco(B)よりも大きい。式(2)のように、第2磁石(24)の第1温度範囲(R1)における保磁力Hci(A)は、第2磁石(24)の第2温度範囲(R2)における保磁力Hci(B)よりも大きい。
【0039】
また、式(3)のように、第1磁石(23)の第1温度範囲(R1)における保磁力Hco(A)は、第2磁石(24)の第1温度範囲(R1)における保磁力Hci(A)よりも大きい。本実施形態では、保磁力Hco(A)と保磁力Hci(A)との差は、保磁力Hco(B)と保磁力Hci(B)との差に比べて、大幅に広がっている。
【0040】
さらに、式(4)のように、保磁力Hco(A)の保磁力Hci(A)に対する比率は、保磁力Hco(B)の保磁力Hci(B)に対する比率と比べて、大きくなっている。
【0041】
ここで、第1温度範囲(R1)は例えば-20℃以上かつ40℃以下であり、第2温度範囲(R2)は例えば100℃以上かつ200℃以下である。ただし、第2温度範囲は、回転機始動時の温度範囲を除くより広い範囲に設定してもよく、最大で、温度リミッタにより制限される温度までを含むとしてもよい。
【0042】
以上のような特性を有する第1磁石(23)及び第2磁石(24)を、回転機(1)に用いることにより、回転機定常駆動時には、第1磁石(23)も第2磁石(24)も高温に曝される中で一定以上の保磁力を確保することが可能である。また、固定子(10)の対向面(15)に対して第1磁石(23)よりも深くに埋め込まれた第2磁石(24)は、回転機始動時に第1磁石(23)よりも逆磁界に曝され難く減磁し難い反面、着磁し難いところ、本実施形態では、式(1)~式(4)が成り立つ第1磁石(23)及び第2磁石(24)を採用することで、第2磁石(24)における着磁のし難さを軽減することができる。
【0043】
第1磁石(23)における磁石の温度(t)と、保磁力(Hco)との、相関関係は、温度をt1とt0とで表したとき、以下の式で近似される。
Hco(t1)=Hco(t0){1-βo(t1-t0)} ・・・(5)
【0044】
第2磁石(24)における磁石の温度(t)と、保磁力(Hci)との、相関関係は、温度をt1とt0とで表したとき、以下の式で近似される。
Hci(t1)=Hci(t0){1-βi(t1-t0)} ・・・(6)
【0045】
さらに、本実施形態では、式(5)及び式(6)に関し、以下の式が成り立つ。
βo>βi>0 ・・・(7)
【0046】
すなわち、
図3に示すように、第1磁石(23)の温度と保磁力との相対関係をグラフ化したものの傾きの絶対値は、第2磁石(24)の温度と保磁力との相対関係をグラフ化したものの傾きの絶対値よりも大きい。別の言い方をすれば、式(5)の温度係数の絶対値の方が、式(6)の温度係数の絶対値よりも大きい。
【0047】
ここで、一般的に、磁石の着磁作業は、回転機定常駆動時に磁石が曝される温度と比べて、はるかに低温で行われる。本実施形態では、式(1)~式(7)が成り立つ永久磁石を第1磁石(23)、第2磁石(24)として採用することで、回転機定常駆動時に必要な保磁力を確保しつつ、第2磁石(24)における着磁のし難さを大幅に軽減することができる。なお、着磁作業は固定子(10)又は専用の着磁ヨークに通電することで行う。
【0048】
加えて、本実施形態の第1磁石(23)及び第2磁石(24)では、以下の式が成り立つ。
Hco(B)>Hci(B) ・・・(8)
【0049】
これにより、回転機定常駆動時の第1磁石(23)の保磁力を、回転機定常駆動時の第2磁石(24)の保磁力よりも大きくすることができる。そのため、回転機定常駆動時に第1磁石(23)及び第2磁石(24)が高温に曝されても、それぞれの磁石の位置に応じて保磁力を適正に保つことができる。
【0050】
以上に示したように、本実施形態では、第1磁石(23)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面(15)から遠ざかるように曲線状に配列される第1磁石スロット(第1パターン)(25A)に埋め込まれる。第2磁石(24)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面(15)から遠ざかるように曲線状に配列され、かつ第1磁石スロット(25A)よりも固定子(10)の対向面(15)から遠ざかる側に位置する第2磁石スロット(第2パターン)(25B)に埋め込まれる。この構成により、第1磁石(23)は固定子(10)の対向面(15)から径方向に第1距離又はそれ以遠の箇所に埋め込まれ、第2磁石(24)は固定子(10)の対向面(15)から径方向に第1距離よりも長い第2距離又はそれ以遠の箇所に埋め込まれる。第1磁石(23)と第2磁石(24)との間では、上記式(1)~式(8)の関係が成り立つ。これにより、回転子(20)における永久磁石(23, 24)の配列パターンに応じて、各永久磁石(23, 24)に適正な保磁力を持たせることができる。その結果、減磁耐力と着磁性の両立を図ることができる。
【0051】
<1-3.磁石の具体例>
なお、第1磁石(23)及び第2磁石(24)としては、公知の種々の磁石を採用し得るが、例えば第1磁石(23)としてネオジム磁石を、第2磁石(24)としてサマリウムコバルト磁石を用いてもよい。あるいは、第1磁石(23)としてネオジム磁石を、第2磁石(24)として、ネオジム磁石のネオジムの一部を、ランタンやセリウムに置換した磁石を用いてもよい。高価な希土類であるネオジムを、希土類の中でも安価かつ容易に入手できるランタンやセリウムに置換することで、耐熱性及び保磁力をある程度保持しつつ、コストダウンすることが可能である。
【0052】
第1磁石(23)として、ネオジムからランタンやセリウムへの置換量の比較的少ないものを用い、第2磁石(24)として、ネオジムからランタンやセリウムへの置換量の比較的多いものを用いてもよい。
【0053】
あるいは、第1磁石(23)として、ネオジムの一部をランタンやセリウムへ置換した磁石を用い、第2磁石(24)として、サマリウムコバルト磁石を用いてもよい。
【0054】
<2.第2実施形態>
以下では、
図4を参照して、第2実施形態に係る回転機(1)の構成について説明する。
図4は、第2実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)の1極分の構成を示す断面図である。
【0055】
第2実施形態に係る回転機(1)は、回転子(20)の第1磁石スロット(25A)及び第2磁石スロット(25B)がそれぞれ、リブにより複数に分割されている点で、第1実施形態に係る回転機(1)とは相違する。
【0056】
第2実施形態に係る第1磁石スロット(25A)の周方向中途部には、第1磁石スロット(25A)よりも外周側の回転子鉄心(22)の部位と、第1磁石スロット(25A)よりも内周側の回転子鉄心(22)の部位と、を接続する第1リブ(25AL)が、3つ設けられる。3つの第1リブ(25AL)は、周方向に間隔をおいて配置される。第1磁石スロット(25A)の第1リブ(25AL)で区画された各領域(4つの領域)には、第1磁石(23)が配置される。
【0057】
第2実施形態に係る第2磁石スロット(25B)の周方向中途部には、第2磁石スロット(25B)よりも外周側の回転子鉄心(22)の部位と第2磁石スロット(25B)よりも内周側の回転子鉄心(22)の部位とを、接続する第2リブ(25BL)が、3つ設けられる。3つの第2リブ(25BL)は、周方向に間隔をおいて配置される。第2磁石スロット(25B)の第2リブ(25BL)で区画された各領域(4つの領域)には、第2磁石(24)が配置される。
【0058】
言い換えると、回転子鉄心(22)には第1パターン及び第2パターンが設けられ、これらのパターンのそれぞれに複数の孔と薄肉状の鋼板(リブ)が交互に設けられ、第1パターン上の孔には第1磁石(23)が、第2パターン上の孔には第2磁石(24)が、埋め込まれる。
【0059】
以上に示したように、第2実施形態では、第1磁石(23)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面(15)から遠ざかるように略曲線状に配列される第1磁石スロット(第1パターン)(25A)に埋め込まれる。第2磁石(24)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面(15)から遠ざかるように略曲線状に配列され、かつ第1磁石スロット(25A)よりも固定子(10)の対向面(15)から遠ざかる側に位置する第2磁石スロット(第2パターン)(25B)に埋め込まれる。この構成により、第1磁石(23)は固定子(10)の対向面(15)から径方向に第1距離又はそれ以遠の箇所に埋め込まれ、第2磁石(24)は固定子(10)の対向面(15)から径方向に第2距離又はそれ以遠の箇所に埋め込まれる。第1磁石(23)と第2磁石(24)との間では、上記式(1)~式(8)の関係が成り立つ。これにより、回転子(20)における永久磁石(23, 24)の配列パターンに応じて、各永久磁石(23, 24)に適正な保磁力を持たせることができる。その結果、減磁耐力と着磁性の両立を図ることができる。
【0060】
<3.第3実施形態>
以下では、
図5を参照して、第3実施形態に係る回転機(1)の構成について説明する。
図5は、第3実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)の1極分の構成を示す断面図である。
【0061】
第3実施形態に係る回転機(1)は、第1リブ(25AL)により複数に分割された各分割スロット(25A1, 25A2, 25A3, 25A4)が、長手方向に直線的な形状を有すると共に、第2リブ(25BL)により分割された各分割スロット(25B1, 25B2, 25B3, 25B4)が、長手方向に直線的な形状を有する点で、第2実施形態に係る回転機(1)とは相違する。
【0062】
第1磁石スロット(25A)の各分割スロット(25A1, 25A2, 25A3, 25A4)には、第1磁石(23)が配置される。第3実施形態に係る第1磁石(23)は、軸方向に切ったときの断面が矩形状であり、各分割スロットと第1磁石(23)との間には隙間が形成される。
【0063】
第2磁石スロット(25B)の各分割スロット(25B1, 25B2, 25B3, 25B4)には、第2磁石(24)が配置される。第3実施形態に係る第2磁石(24)は、軸方向に切ったときの断面が矩形状であり、各分割スロットと第2磁石(24)との間には隙間が形成される。
【0064】
以上に示したように、第3実施形態では、第1磁石(23)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面(15)から遠ざかるように略曲線状に配列される第1磁石スロット(第1パターン)(25A)に埋め込まれる。第2磁石(24)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面(15)から遠ざかるように略曲線状に配列され、かつ第1磁石スロット(25A)よりも固定子(10)の対向面(15)から遠ざかる側に位置する第2磁石スロット(第2パターン)(25B)に埋め込まれる。第1磁石(23)と第2磁石(24)との間では、上記式(1)~式(8)の関係が成り立つ。これにより、回転子(20)における永久磁石(23, 24)の配列パターンに応じて、各永久磁石(23, 24)に適正な保磁力を持たせることができる。その結果、減磁耐力と着磁性の両立を図ることができる。
【0065】
<4.第4実施形態>
以下では、
図6を参照して、第4実施形態に係る回転機(1)の構成について説明する。
図6は、第4実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)の1極分の構成を示す断面図である。
【0066】
第4実施形態に係る回転機(1)は、1つのリブ(25AL)により第1磁石スロット(25A)が2つに分割されている点で、第3実施形態に係る回転機(1)とは相違する。また、第2磁石スロット(25B)のうちの周方向の両端に位置する分割スロット(25B1, 25B4)のそれぞれに、第1磁石(23)及び第2磁石(24)の両方が配置されている点で、第3実施形態に係る回転機(1)とは相違する。
【0067】
第2磁石スロット(25B)の周方向の両端に位置する分割スロット(25B1, 25B4)には、第1磁石(23)及び第2磁石(24)が周方向に隣接して配置される。詳細には、分割スロット(25B1, 25B4)のうちの第2磁石スロット(25B)の両端寄りの位置には第1磁石(23)が配置され、当該第1磁石(23)よりも中央寄りの位置には第2磁石(24)が配置される。
【0068】
以上に示したように、第4実施形態では、回転子(20)には、固定子(10)の対向面(15)から径方向に第1距離又はそれ以遠の箇所に第1磁石(23)が埋め込まれ、固定子(10)の対向面(15)から径方向に第2距離又はそれ以遠の箇所に第2磁石(24)が埋め込まれる。
【0069】
すなわち、第4実施形態において、固定子(10)の対向面(15)から第1磁石(23)までの距離は第1距離以上第2距離未満である。また、固定子(10)の対向面(15)から第2磁石(24)までの距離は第2距離以上である。第2距離は第1距離よりも長い。
【0070】
これにより、回転子(20)上における永久磁石(23, 24)の配列パターンに応じて、各永久磁石(23, 24)に適正な保磁力を持たせることができる。その結果、減磁耐力と着磁性の両立を図ることができる。
【0071】
<5.第5実施形態>
以下では、
図7を参照して、第5実施形態に係る回転機(1)の構成について説明する。
図7は、第5実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)の1極分の構成を示す断面図である。
【0072】
第5実施形態に係る回転機(1)は、磁石スロット(25)として、第3磁石スロット(25C)と第4磁石スロット(25D)とを有する点において、第1実施形態に係る回転機(1)とは相違する。
【0073】
第3磁石スロット(25C)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面(15)から遠ざかるように折れ線状に配列される。別の言い方をすれば、第3磁石スロット(25C)は、軸方向に視たときに、回転軸(30)側に向かって尖ったV字状の溝である。このV字の各辺に沿うように、2つの第1磁石(23)が配置される。第5実施形態では、V字の頂点は、空隙となっている。
【0074】
第4磁石スロット(25D)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面(15)から遠ざかるように折れ線状に配列される。別の言い方をすれば、第4磁石スロット(25D)は、軸方向に視たときに、回転軸(30)側に向かって尖ったV字状の溝である。このV字の各辺に沿うように、2つの第2磁石(24)が配置される。第5実施形態では、V字の頂点は、空隙となっている。
【0075】
以上に示したように、第5実施形態では、第1磁石(23)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面(15)から遠ざかるように折れ線状に配列される第3磁石スロット(第1パターン)(25C)に埋め込まれる。第2磁石(24)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面(15)から遠ざかるように折れ線状に配列され、かつ第3磁石スロット(25C)よりも固定子(10)の対向面(15)から遠ざかる側に位置する第4磁石スロット(第2パターン)(25D)に埋め込まれる。この構成により、第1磁石(23)は固定子(10)の対向面(15)から径方向に第1距離又はそれ以遠の箇所に埋め込まれ、第2磁石(24)は固定子(10)の対向面(15)から径方向に第2距離又はそれ以遠の箇所に埋め込まれる。第1磁石(23)と第2磁石(24)との間では、上記式(1)~式(8)の関係が成り立つ。これにより、回転子(20)上における永久磁石(23, 24)の配列パターンに応じて、各永久磁石(23, 24)に適正な保磁力を持たせることができる。その結果、減磁耐力と着磁性の両立を図ることができる。
【0076】
<6.第6実施形態>
以下では、
図8を参照して、第6実施形態に係る回転機(1)の構成について説明する。
図8は、第6実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)の1極分の構成を示す断面図である。
【0077】
第6実施形態に係る回転機(1)は、磁石スロット(25)として、第5磁石スロット(25E)と第6磁石スロット(25F)とを有する点において、第1実施形態に係る回転機(1)とは相違する。
【0078】
第5磁石スロット(25E)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面(15)から遠ざかるように直線状に配列される。別の言い方をすれば、第5磁石スロット(25E)は、周面(21)のうちの1極分の角度範囲の円弧の弦に沿うように延びている。この弦に沿うように、第5磁石スロット(25E)内に第1磁石(23)が配置される。
【0079】
第6磁石スロット(25F)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面(15)から遠ざかるように折れ線状に配列される。より具体的には、第6磁石スロット(25F)は、軸方向に視たときに、回転軸(30)側に向かって尖ったV字状の溝の各辺に沿うように、2箇所に分離して設けられる。第6磁石スロット(25F)のこの2箇所のそれぞれに、第2磁石(24)が配置される。
【0080】
以上に示したように、第6実施形態では、第1磁石(23)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面(15)から遠ざかるように直線状に配列される第5磁石スロット(第1パターン)(25E)に埋め込まれる。第2磁石(24)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面(15)から遠ざかるように折れ線状に配列され、かつ第5磁石スロット(25E)よりも固定子(10)の対向面(15)から遠ざかる側に位置する第6磁石スロット(第2パターン)(25F)に埋め込まれる。この構成により、第1磁石(23)は固定子(10)の対向面(15)から径方向に第1距離又はそれ以遠の箇所に埋め込まれ、第2磁石(24)は、固定子(10)の対向面(15)から径方向に第2距離又はそれ以遠の箇所に埋め込まれる。第1磁石(23)と第2磁石(24)との間では、上記式(1)~式(8)の関係が成り立つ。これにより、回転子(20)上における永久磁石(23, 24)の配列パターンに応じて、各永久磁石(23, 24)に適正な保磁力を持たせることができる。その結果、減磁耐力と着磁性の両立を図ることができる。
【0081】
<7.第7実施形態>
以下では、
図9を参照して、第7実施形態に係る回転機(1)の構成について説明する。
図9は、第7実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)の1極分の構成を示す断面図である。
【0082】
第7実施形態に係る回転機(1)は、第5磁石スロット(25E)内に第1磁石(23)と第2磁石(24)とを有する点において、第6実施形態に係る回転機(1)とは相違する。
【0083】
第1磁石(23)は、第5磁石スロット(25E)内に部分的に埋め込まれる。具体的には、軸方向に視たときの第5磁石スロット(25E)の両端に、第1磁石(23)がそれぞれ配置される。また、第2磁石(24)は、第5磁石スロット(25E)内の第1磁石(23)が配置される位置よりも中央寄りの位置に、配置される。
【0084】
以上に示したように、第7実施形態では、第1磁石(23)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面(15)から遠ざかるように直線状に配列される第5磁石スロット(第3パターン)(25E)上に部分的に埋め込まれる。第2磁石(24)は、第1磁石(23)よりも第5磁石スロット(25E)上の中央寄りに埋め込まれる。この構成により、第1磁石(23)は固定子(10)の対向面(15)から径方向に第1距離又はそれ以遠の箇所に埋め込まれ、第2磁石(24)は、固定子(10)の対向面(15)から径方向に第2距離又はそれ以遠の箇所に埋め込まれる。第1磁石(23)と第2磁石(24)との間では、上記式(1)~式(8)の関係が成り立つ。これにより、回転子(20)上における永久磁石(23, 24)の配列パターンに応じて、各永久磁石(23, 24)に適正な保磁力を持たせることができる。その結果、減磁耐力と着磁性の両立を図ることができる。
【0085】
<8.第8実施形態>
以下では、
図10を参照して、第8実施形態に係る回転機(1)の構成について説明する。
図10は、第8実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)の1極分の構成を示す断面図である。
【0086】
第8実施形態に係る回転機(1)は、第3磁石スロット(25C)は有さない一方、第4磁石スロット(25D)は有する点で、第5実施形態に係る回転機(1)とは相違する。また、第8実施形態に係る回転機(1)は、第4磁石スロット(25D)が2つの第4リブ(25DL)を含んで4つの分割スロットに分割されている点でも、第5実施形態に係る回転機(1)とは相違する。
【0087】
第8実施形態に係る第4磁石スロット(25D)の周方向中途部には、第4磁石スロット(25D)よりも外周側の回転子鉄心(22)の部位と、第4磁石スロット(25D)よりも内周側の回転子鉄心(22)の部位と、を接続する第4リブ(25DL)が、2つ設けられる。2つの第4リブ(25DL)と、第4磁石スロット(25D)のV字の頂点とで、第4磁石スロット(25D)内が4つの領域に区画される。区画された4つの領域のうち、軸方向に視たときに第4磁石スロット(25D)の両端寄りに位置する領域に、第1磁石(23)が配置される。また、区画された4つの領域のうち、軸方向に視たときに第1磁石(23)の位置よりも中央寄りの位置に、第2磁石(24)が配置される。
【0088】
以上に示したように、第8実施形態では、第1磁石(23)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面(15)から遠ざかるように折れ線状に配列される第4磁石スロット(第3パターン)(25D)に部分的に埋め込まれる。第2磁石(24)は、第1磁石(23)よりも第4磁石スロット(第3パターン)(25D)上の中央寄りに埋め込まれる。この構成により、第1磁石(23)は固定子(10)の対向面(15)から径方向に第1距離又はそれ以遠の箇所に埋め込まれ、第2磁石(24)は、固定子(10)の対向面(15)から径方向に第2距離又はそれ以遠の箇所に埋め込まれる。第1磁石(23)と第2磁石(24)との間では、上記式(1)~式(8)の関係が成り立つ。これにより、回転子(20)上における永久磁石(23, 24)の配列パターンに応じて、各永久磁石(23, 24)に適正な保磁力を持たせることができる。その結果、減磁耐力と着磁性の両立を図ることができる。
【0089】
<9.第9実施形態>
以下では、
図11を参照して、第9実施形態に係る回転機(1)の構成について説明する。
図11は、第9実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)の1極分の構成を示す断面図である。
【0090】
第9実施形態に係る回転機(1)は、第4磁石スロット(25D)に第4リブ(25DL)を備えない点で、第8実施形態に係る回転機(1)とは相違する。
【0091】
第9実施形態においては、第4磁石スロット(25D)のV字の各辺につき、第1磁石(23)と第2磁石(24)とが設けられる。詳細には、軸方向に視たときに、第4磁石スロット(25D)の両端寄りの位置に、第1磁石(23)が配置される。また、軸方向に視たときに、第1磁石(23)が配置される箇所よりも第4磁石スロット(25D)の中央寄りの位置に、第2磁石(24)が配置される。
【0092】
以上に示したように、第9実施形態では、第1磁石(23)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面(15)から遠ざかるように折れ線状に配列される第4磁石スロット(第3パターン)(25D)に部分的に埋め込まれる。第2磁石(24)は、第1磁石(23)よりも第4磁石スロット(第3パターン)(25D)上の中央寄りに埋め込まれる。この構成により、第1磁石(23)は固定子(10)の対向面(15)から径方向に第1距離又はそれ以遠の箇所に埋め込まれ、第2磁石(24)は固定子(10)の対向面(15)から径方向に第2距離又はそれ以遠の箇所に埋め込まれる。第1磁石(23)と第2磁石(24)との間では、上記式(1)~式(8)の関係が成り立つ。これにより、回転子(20)上における永久磁石(23, 24)の配列パターンに応じて、各永久磁石(23, 24)に適正な保磁力を持たせることができる。その結果、減磁耐力と着磁性の両立を図ることができる。
【0093】
<10.第10実施形態>
以下では、
図12を参照して、第10実施形態に係る回転機(1)の構成について説明する。
図10は、第10実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)の1極分の構成を示す断面図である。
【0094】
第10実施形態に係る回転機(1)は、回転子(20)に第1磁石スロット(25A)は有さない一方、第2磁石スロット(25B)は有する点で、第1実施形態に係る回転機(1)とは相違する。また、第10実施形態に係る回転機(1)は、第2磁石スロット(25B)上に第1磁石(23)及び第2磁石(24)の両方を有する点でも、第1実施形態に係る回転機(1)とは相違する。
【0095】
第10実施形態においては、第1磁石スロット(25A)の円弧に沿って第1磁石(23)と第2磁石(24)とが設けられる。詳細には、軸方向に視たときに、第1磁石スロット(25A)の両端寄りの位置に、第1磁石(23)が配置される。また、軸方向に視たときに、第1磁石(23)が配置される箇所よりも第1磁石スロット(25A)の中央寄りの位置に、第2磁石(24)が配置される。
【0096】
以上に示したように、第10実施形態では、第1磁石(23)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面(15)から遠ざかるように円弧状に配列される第2磁石スロット(第3パターン)(25B)に部分的に埋め込まれる。第2磁石(24)は、第1磁石(23)よりも第2磁石スロット(第3パターン)(25B)上の中央寄りに埋め込まれる。この構成により、第1磁石(23)は固定子(10)の対向面(15)から径方向に第1距離又はそれ以遠の箇所に埋め込まれ、第2磁石(24)は固定子(10)の対向面(15)から径方向に第2距離又はそれ以遠の箇所に埋め込まれる。第1磁石(23)と第2磁石(24)との間では、上記式(1)~式(8)の関係が成り立つ。これにより、回転子(20)上における永久磁石(23, 24)の配列パターンに応じて、各永久磁石(23, 24)に適正な保磁力を持たせることができる。その結果、減磁耐力と着磁性の両立を図ることができる。
【0097】
<11.第11実施形態>
以下では、
図13を参照して、第11実施形態に係る回転機(1)の構成について説明する。
図13は、第11実施形態に係る磁石埋込型の回転機(1)の1極分の構成を示す断面図である。
【0098】
第11実施形態に係る回転機(1)は、回転子(20)に第1磁石スロット(25A)及び第2磁石スロット(25B)に加えて第7磁石スロット(25G)を有する点において、第1実施形態に係る回転機(1)とは相違する。
【0099】
第7磁石スロット(25G)は、軸方向に視たときに、第1磁石スロット(25A)と第2磁石スロット(25B)との間に設けられる。別の言い方をすれば、第7磁石スロット(25G)は、径方向において第1磁石スロット(25A)と第2磁石スロット(25B)との間に配置される。
【0100】
第1磁石スロット(25A)には、第1磁石(23)が配置される。第2磁石スロット(25B)には、第2磁石(24)が配置される。第7磁石スロット(25G)には、第2磁石(24)が配置される。
【0101】
以上に示したように、第11実施形態では、第1磁石(23)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面(15)から遠ざかるように円弧状に配列される第1磁石スロット(第1パターン)(25A)上に埋め込まれる。第2磁石(24)は、中央寄りになるほど固定子(10)の対向面(15)から遠ざかるように円弧状に配列され、かつ第1磁石スロット(第1パターン)(25A)よりも固定子(10)の対向面(15)から遠ざかる側に位置する第2磁石スロット(25B)及び第7磁石スロット(25G)(第2パターン)上に埋め込まれる。この構成により、第1磁石(23)は固定子(10)の対向面(15)から径方向に第1距離又はそれ以遠の箇所に埋め込まれ、第2磁石(24)は固定子(10)の対向面(15)から径方向に第2距離又はそれ以遠の箇所に埋め込まれる。第1磁石(23)と第2磁石(24)との間では、上記式(1)~式(8)の関係が成り立つ。これにより、回転子(20)上における永久磁石(23, 24)の配列パターンに応じて、各永久磁石(23, 24)に適正な保磁力を持たせることができる。その結果、減磁耐力と着磁性の両立を図ることができる。
【0102】
以上に、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0103】
上記の実施形態では、回転子(20)は8つの磁極を有するとしたが、これに限定されない。回転子(20)の磁極数は、7極以下であっても、9極以上であってもよい。
【0104】
上記の実施形態では、回転機(1)は、内周側に回転子(20)が位置し、外周側に固定子(10)が位置するとしたが、これに限らない。上記に代えて、回転機の内周側に固定子が位置し、外周側に回転子が位置するとしてもよい。
【0105】
式(1)~式(8)が成り立つ磁石(第1磁石及び第2磁石)の組み合わせを2つ以上用意し、
図13のような磁石の配列パターンにおいて、径方向に隣り合う磁石同士について第1磁石及び第2磁石の関係が成立するように、3種類以上の磁石を適宜に組み合わせてもよい。
【0106】
また、上記の実施形態及び変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本開示は、回転機について有用である。
【符号の説明】
【0108】
1 回転機
10 固定子
11 固定子鉄心
12 バックヨーク部
13 ティース部
14 スロット
15 対向面
20 回転子
21 周面
22 回転子鉄心
23 第1磁石
24 第2磁石
25 磁石スロット
25A 第1磁石スロット
25AL 第1リブ
25B 第2磁石スロット
25BL 第2リブ
25C 第3磁石スロット
25D 第4磁石スロット
25DL 第4リブ
25E 第5磁石スロット
25F 第6磁石スロット
25G 第7磁石スロット
26F 第6磁石スロット
30 回転軸