(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】物品管理装置、物品管理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G21C 19/02 20060101AFI20231226BHJP
G21C 17/06 20060101ALI20231226BHJP
G21C 3/30 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
G21C19/02 010
G21C17/06 080
G21C3/30 200
(21)【出願番号】P 2020182478
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】李 典燦
(72)【発明者】
【氏名】長野 真士
(72)【発明者】
【氏名】小林 希士
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-079743(JP,A)
【文献】特開平09-257981(JP,A)
【文献】特開平07-218682(JP,A)
【文献】特開2005-351659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/02
G21C 17/06
G21C 3/30
G06V 30/00
B65G 1/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が識別番号を表示する識別番号表示部を有する複数の物品の第1の配置状態を撮影した画像データを第1の画像データとし、前記第1の配置状態とは前記物品の構成または配置が異なる複数の前記物品の第2の配置状態を撮影した画像データを第2の画像データとし、前記第1の画像データの複数の区画に対応する複数の部分と、前記第2の画像データの複数の前記区画にそれぞれ対応する複数の部分と、が所定の類似条件を満たすか否かを前記区画毎に判定する画像比較部と、
前記第2の画像データの複数の前記区画のうち、前記画像比較部における判定結果が否定であった前記区画について、前記識別番号表示部に対応する箇所の文字認識を行った結果である認識文字列と、対応する前記区画に配置されるべき前記物品の識別番号として指定された指定識別番号とが一致するか否かを判定する識別番号比較部と、を備える
ことを特徴とする物品管理装置。
【請求項2】
各々が複数の前記物品のうち一部の前記物品を撮影した複数の部分画像を合成して、前記第1または第2の画像データを合成する画像合成部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の物品管理装置。
【請求項3】
前記第2の画像データを表示装置の表示画面に表示させるとともに、前記認識文字列と、前記指定識別番号とが一致しなかった前記区画に対応する表示部分に所定のマーカを表示させる出力部をさらに備える
ことを特徴とする請求項2に記載の物品管理装置。
【請求項4】
入力装置に対する作業者の入力操作に基づいて前記認識文字列を修正入力を受信する入力部をさらに備え、
前記出力部は、前記認識文字列が修正された結果、前記認識文字列と前記指定識別番号とが一致すると、前記表示画面から対応する前記マーカを除去する機能を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の物品管理装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記表示画面から前記マーカが全て除去されたときに、物品の配置確認が完了した旨を前記表示装置に表示させる機能をさらに有する
ことを特徴とする請求項4に記載の物品管理装置。
【請求項6】
各々が識別番号を表示する識別番号表示部を有する複数の物品の第1の配置状態を撮影した画像データを第1の画像データとし、前記第1の配置状態とは前記物品の構成または配置が異なる複数の前記物品の第2の配置状態を撮影した画像データを第2の画像データとし、前記第1の画像データの複数の区画に対応する複数の部分と、前記第2の画像データの複数の前記区画にそれぞれ対応する複数の部分と、が所定の類似条件を満たすか否かを前記区画毎に判定する画像比較過程と、
前記第2の画像データの複数の前記区画のうち、前記画像比較過程における判定結果が否定であった前記区画について、前記識別番号表示部に対応する箇所の文字認識を行った結果である認識文字列と、対応する前記区画に配置されるべき前記物品の識別番号として指定された指定識別番号とが一致するか否かを判定する識別番号比較過程と、を有する
ことを特徴とする物品管理方法。
【請求項7】
コンピュータを、
各々が識別番号を表示する識別番号表示部を有する複数の物品の第1の配置状態を撮影した画像データを第1の画像データとし、前記第1の配置状態とは前記物品の構成または配置が異なる複数の前記物品の第2の配置状態を撮影した画像データを第2の画像データとし、前記第1の画像データの複数の区画に対応する複数の部分と、前記第2の画像データの複数の前記区画にそれぞれ対応する複数の部分と、が所定の類似条件を満たすか否かを前記区画毎に判定する画像比較手段、
前記第2の画像データの複数の前記区画のうち、前記画像比較手段における判定結果が否定であった前記区画について、前記識別番号表示部に対応する箇所の文字認識を行った結果である認識文字列と、対応する前記区画に配置されるべき前記物品の識別番号として指定された指定識別番号とが一致するか否かを判定する識別番号比較手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品管理装置、物品管理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ID(識別番号)を付した物品の例として、原子力発電所の原子炉内に配置された燃料集合体が挙げられる。原子力発電所の定期検査等においては該燃料集合体に対して、他の燃料との換装、炉心から燃料保管プールへの移動、および新しい燃料集合体の炉心への装荷等が実行される。このとき、所定の位置から燃料が移動されているか、また、所定の位置に燃料が装荷されたか等を確認することが一般的である。下記特許文献1~4には、このような燃料集合体の管理等を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-27079号公報
【文献】特開平7-218682号公報
【文献】特開2005-249568号公報
【文献】特開平9-304576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した技術において、一層効率的に燃料集合体等の物品を管理したいという要望がある。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、効率的に物品を管理できる物品管理装置、物品管理方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明の物品管理装置は、各々が識別番号を表示する識別番号表示部を有する複数の物品の第1の配置状態を撮影した画像データを第1の画像データとし、前記第1の配置状態とは前記物品の構成または配置が異なる複数の前記物品の第2の配置状態を撮影した画像データを第2の画像データとし、前記第1の画像データの複数の区画に対応する複数の部分と、前記第2の画像データの複数の前記区画にそれぞれ対応する複数の部分と、が所定の類似条件を満たすか否かを前記区画毎に判定する画像比較部と、前記第2の画像データの複数の前記区画のうち、前記画像比較部における判定結果が否定であった前記区画である識別対象区画について、前記識別番号表示部に対応する箇所の文字認識を行った結果である認識文字列と、対応する前記区画に配置されるべき前記物品の識別番号として指定された指定識別番号とが一致するか否かを判定する識別番号比較部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、効率的に物品を管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】好適な第1実施形態による原子力発電プラントの模式図である。
【
図7】水中カメラの配置位置と撮影範囲との関係を示す図である。
【
図9】第1実施形態における非参照モードの管理プログラムのフローチャート(1/2)である。
【
図10】第1実施形態における非参照モードの管理プログラムのフローチャート(2/2)である。
【
図11】第1実施形態における参照モードの管理プログラムの要部のフローチャートである。
【
図12】第2実施形態における参照モードの管理プログラムの要部のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
〈第1実施形態の構成〉
図1は、好適な第1実施形態による原子力発電プラントSYの定期検査時における模式図である。
原子力発電プラントSYは、原子炉60と、燃料保管プール70と、燃料交換機80と、燃料配置管理装置120(物品管理装置、コンピュータ)と、表示装置110と、入力装置112と、を備えている。入力装置112は、マウス、キーボード等(図示せず)を備え、作業者によって操作される。
【0009】
原子炉60は原子炉圧力容器61と、その上部に設けられた原子炉ウエル68と、を有している。原子炉圧力容器61は、原子炉格納容器(図示せず)に取り囲まれており、原子炉建屋(図示せず)内に設置されている。原子炉60および燃料保管プール70は、ゲート部72を介して接続されている。また、原子炉圧力容器61の炉心63および燃料保管プール70には、それぞれ複数の燃料集合体4(物品)が配置されている。そして、原子炉60、燃料保管プール70およびゲート部72には、ドットで示す水Wが充填されている。
【0010】
燃料交換機80は、燃料交換台車81と、伸縮管82と、水中カメラ85と、ケーブル87と、燃料交換制御装置88と、を備えている。燃料交換台車81は、原子炉60および燃料保管プール70の上方において水平方向に移動自在に設置されている。伸縮管82は燃料交換台車81に装着され、燃料集合体4を把持して伸縮することにより、燃料集合体4を上下方向に移動させる。水中カメラ85は燃料交換台車81に装着され、燃料交換台車81の周辺における燃料集合体4の画像を撮影する。これにより、燃料交換機80は、原子炉60および燃料保管プール70において、燃料集合体4を所望の位置に移動させることができる。
【0011】
燃料交換台車81および伸縮管82は、ケーブル87を介して燃料交換制御装置88に接続されている。燃料交換制御装置88は、燃料交換作業等の内容を指令する作業信号を燃料配置管理装置120から受信し、該作業信号に基づいて燃料集合体4を移動させる。また、燃料交換制御装置88は、作業者によるマニュアル操作によっても、燃料交換作業等を実行することが可能である。また、燃料交換制御装置88は、燃料交換作業後の燃料集合体4の配置情報を燃料配置管理装置120に対して出力する。
【0012】
図2は、燃料配置管理装置120等のブロック図である。
燃料配置管理装置120は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)等、一般的なコンピュータとしてのハードウエアを備えており、SSDには、OS(Operating System)、管理プログラム、各種データ等が格納されている。OSおよび管理プログラムは、RAMに展開され、CPUによって実行される。
【0013】
図2において、燃料配置管理装置120の内部は、管理プログラム等によって実現される機能を、ブロックとして示している。すなわち、燃料配置管理装置120は、入力部122と、画像合成部124と、全体画像データベース126と、画像比較部128(画像比較手段)と、差異抽出部130と、ID画像取得部132と、文字読取部134と、計画時データベース136と、ID比較部138(識別番号比較部、識別番号比較手段)と、誤換装ID抽出部140と、出力部142と、遠隔制御部144と、を備えている。
【0014】
入力部122は、水中カメラ85から撮影した画像データを受信し、入力装置112から作業者の操作情報を受信し、燃料交換制御装置88から燃料集合体4の配置情報を受信する。但し、水中カメラ85は全ての燃料集合体4を同時に撮影できる視野角を有しないため、水中カメラ85から供給される画像データは、一部の燃料集合体4を撮影したものになる。そこで、水中カメラ85が撮影した個々の画像データを「部分画像データ」と呼ぶ。特に、燃料集合体4の換装を行う前に(例えば前回の定期検査において)水中カメラ85によって撮影された画像データを部分画像データPD_org(部分画像)と呼び、燃料集合体4の換装を行った後に水中カメラ85によって撮影された画像データを部分画像データPD_cur(部分画像)と呼ぶ。
【0015】
画像合成部124は、複数個所で撮影された部分画像データを合成して、原子炉60(
図1参照)に配置されている全ての燃料集合体4の画像を含む全体画像データを合成する。特に、上述の部分画像データPD_orgを合成した全体画像データをGD_org(第1の画像データ)と呼び、部分画像データPD_curを合成した全体画像データをGD_cur(第2の画像データ)と呼ぶ。これらは、炉心63の領域の上方から見た、炉心63内の燃料集合体4全体の合成画像になる。全体画像データベース126は、これら全体画像データGD_org,GD_curを格納する。
【0016】
ところで、各燃料集合体4には、ユニークなID(識別番号)が付与されている。そして、各燃料集合体4の上面には、その燃料集合体4のIDを刻印したID表示部30(識別番号表示部、
図5参照)が設けられている。画像比較部128は、セル62(区画、
図4参照)毎に、全体画像データGD_orgおよび全体画像データGD_curの「類似」または「非類似」を判定する。その詳細を以下説明する。まず、全体画像データGD_orgおよび全体画像データGD_curのうち、各セル62に含まれる各4個のID表示部30に対応する部分を「ID表示部対応部分」と呼ぶ。
【0017】
画像比較部128は、全体画像データGD_orgの任意のセル62におけるID表示部対応部分と、同一位置の全体画像データGD_curのID表示部対応部分とを比較し、その類似度を算出し、両者が「類似」であるか「非類似」であるかを判定する。「類似」とは、当該セル62について、算出した類似度が所定の閾値以上であることを指し、「非類似」とは、類似度が該閾値未満であることを指す。なお、類似度を算出するアルゴリズムとしては、公知の種々の画像比較アルゴリズムを適用することができる。
【0018】
差異抽出部130は、全体画像データGD_curの中から、画像比較部128において「類似」と判定されたセル62の部分を切り出す。ID画像取得部132は、差異抽出部130が切り出した部分から、ID表示部対応部分を切り出し、その結果をID画像GID_curとして出力する。但し、ID画像取得部132は、画像比較部128の判定結果にかかわらず、全体画像データGD_curから、全てのID表示部対応部分についてID画像GID_curを切り出すことも可能である。
【0019】
文字読取部134は、ID画像取得部132が取得したID画像GID_curについて文字認識処理を行い、認識した文字列である認識識別番号IDR(認識文字列)を出力する。但し、文字読取部134はセル62単位で認識識別番号IDRを認識するため、文字読取部134は一つのセル62において文字認識を行う場合は、当該セル62に対応する4個の認識識別番号IDRを出力する。
【0020】
計画時データベース136は、燃料集合体4の換装計画の内容を格納している。すなわち、計画時データベース136は、各燃料集合体4の配置位置における換装前の燃料集合体4のIDと、換装後のIDと、を記憶している。ID比較部138は、上述したID画像GID_curに係る配置位置について、換装後のIDを計画時データベース136から読み出す。読み出したIDを計画時識別番号SID(指定識別番号)と呼ぶ。さらに、ID比較部138は、計画時識別番号SIDと、対応する配置位置における認識識別番号IDRとを比較し、両者が一致するか否かを判定する。
【0021】
ここで、計画時識別番号SIDと、認識識別番号IDRとが一致しなかった場合、燃料集合体4の誤換装が発生している可能性が高い。但し、文字読取部134の認識誤りにより、誤換装が発生していないにもかかわらず、計画時識別番号SIDと、認識識別番号IDRとが一致しない場合もある。誤換装ID抽出部140は、計画時識別番号SIDと認識識別番号IDRとが一致しない燃料集合体4のリスト、すなわち誤換装リストを作成する。遠隔制御部144は、燃料交換機80を遠隔制御する作業信号を出力する。出力部142は、作成された誤換装リスト等を表示装置110に表示させる。また、出力部142は、燃料交換制御装置88に対して、遠隔制御部144から受信した作業信号を出力する。
【0022】
図3は、燃料交換機80および周辺設備の平面図である。
燃料交換機80は、
図1に示した要素に加えて、一対のレール83と、一対の他のレール84と、走行台車86と、を備えている。レール83は、原子炉60および燃料保管プール70の上方に、図中左右方向に沿って延設されている。燃料交換台車81は、レール83の上面に沿って、左右方向に移動する。また、レール84は、燃料交換台車81の上面に、レール83と直交する方向(前後方向と呼ぶ)に沿って敷設され、走行台車86とともにレール83に沿って左右方向に移動する。
【0023】
また、走行台車86は、レール84に沿って前後方向に移動する。これにより、上述したように、燃料交換台車81は、原子炉60および燃料保管プール70の上方において、平面上を自在に移動することができる。また、上述したように、燃料交換台車81には水中カメラ85が装着されており、水中カメラ85は燃料集合体4の一部を撮影することができる。そして、走行台車86がレール83,84に沿って移動することにより、水中カメラ85によって原子炉60および燃料保管プール70の全体に渡る複数の画像データ、すなわち上述した部分画像データPD_org,PD_cur等(
図1参照)を取得できる。
【0024】
図4は、原子炉60の炉心63の平面図である。
原子炉60の炉心63は、平面視において正方形である複数の区画に区切られており、区切られた区画を「セル62」と呼ぶ。
図5は、
図4の一部、すなわち破線で囲ったV部の拡大図である。
図5に示すように、各セル62は、各4個の燃料集合体4を収納することができる。そして、各燃料集合体4の上面には、燃料集合体4毎にユニークなID(識別番号)を刻印または印刷した長方形のID表示部30が設けられている。燃料集合体4を配置可能な位置を、「配置位置6」と呼ぶ。
【0025】
図6は、ID表示部30の詳細を説明する図である。1つのセル62に含まれる4個のID表示部30は、レール83またはレール84(
図3参照)に対して、45度、135度、225度または315度回転させた状態になっている。4個の燃料集合体4の中心位置40と、各ID表示部30との距離は同一であるため、各ID表示部30に刻印された文字の位置情報は、中心位置40が特定されると一意に特定される。レール83およびレール84の延設方向を軸とする座標系では、各ID表示部30は、何れかの軸に対して45°傾いた状態になる。そこで、文字読取部134がID画像GID_curの文字認識を行う場合には、ID画像GID_curを45°回転させ、さらに90°の回転または反転を適宜加えるとよい。これにより、各文字を隣接する文字から切り離して認識することができる。
【0026】
図7は、水中カメラ85の配置位置と撮影範囲との関係を示す図である。
図7において、小円で示すN個の配置位置P1~PNは、部分画像データPD_org,PD_cur(
図1参照)等を取得する際における水中カメラ85の配置位置である。なお、図示の例では配置位置数Nは「20」である。また、破線の矩形で示す撮影領域PS1,PS2,PS3は、配置位置P1,P2,P3に対応する、水中カメラ85の撮影領域である。撮影領域PS1,PS2,PS3以外の撮影領域については図示を省略する。
【0027】
図示の例によれば、画像合成部124(
図1参照)は、20個の部分画像データPD_orgまたはPD_curによって全体画像データGD_orgまたはGD_curを合成することになる。また、図示の例では、各撮影領域は、若干ずつ重複している。このように各撮影領域を重複させると、画像合成部124が部分画像データPD_org,PD_curから全体画像データGD_org,GD_curを生成する際、各部分画像データの接合位置を容易に認識できるようになる。
【0028】
図8は、出力部142が表示装置110に表示させる表示画面50の一例を示す図である。
図8において、表示画面50は、合成画像表示部51と、設計情報表示部52と、差異リスト表示部53と、ズーム表示部54,55と、判定結果表示部56と、を有している。合成画像表示部51は、燃料集合体4の換装後に取得した全体画像データGD_curを表示する。図示の例では、合成画像表示部51は全体画像データGD_curの一部(図示の例では24組のセル62のデータ)を表示しているが、合成画像表示部51をスクロールすることによって全体画像データGD_curの任意の箇所を表示させることができる。
【0029】
設計情報表示部52は、計画時データベース136に記憶されている換装後のIDを、合成画像表示部51と同様の形式で表示したものである。差異リスト表示部53は、誤換装ID抽出部140(
図1参照)が出力する誤換装リストに基づいて、出力部142が作成した、セル62の座標位置のリストを表示する。各セル62の座標位置は、左から数えてX番目、上から数えてY番目であるとき、(X,Y)の形式で表現される。図示の例においては、差異リスト表示部53に二つの項目である座標位置(3,1)および(3,2)が列挙されている。従って、これら二つのセル62において、認識識別番号IDRと計画時識別番号SID(
図1参照)とが異なる燃料集合体4が含まれていることになる。
【0030】
また、合成画像表示部51および設計情報表示部52のうち、差異リスト表示部53に列挙された座標位置に対応する箇所には、それぞれ太線矩形状のマーカ51a,52aが表示される。差異リスト表示部53に列挙された何れか項目またはマーカ51a,52aを作業者が選択すると(例えばマウスでクリックすると)、出力部142(
図1参照)は、選択された座標位置に関する詳細な情報をズーム表示部54,55および判定結果表示部56に表示させる。
【0031】
ズーム表示部54は、配置画像表示部54aと、認識結果表示部54bと、を有している。配置画像表示部54aは、選択された座標位置における合成画像表示部51の拡大画像を表示する。また、認識結果表示部54bは、選択された座標位置におけるID画像を文字認識した結果である4個の認識識別番号IDR(
図1参照)を表示する。
【0032】
また、ズーム表示部55は、配置画像表示部55aと、一覧表示部55bと、を有している。配置画像表示部55aは、選択された座標位置における設計情報表示部52の内容、すなわち4個の計画時識別番号SID(
図1参照)の拡大画像を表示する。また、一覧表示部55bは、これら4個の計画時識別番号SIDを一覧形式で表示する。判定結果表示部56は、認識結果表示部54bに表示された4個の認識識別番号IDRと、一覧表示部55bに表示された4個の計画時識別番号SIDとが一致する場合に「OK」と表示し、不一致である場合に「NG」と表示する。
【0033】
〈第1実施形態の動作〉
(燃料集合体4の交換動作)
次に、本実施形態の動作を説明するが、まず燃料集合体4を交換する動作について説明する。
図1において、原子力発電プラントSYが例えば沸騰水型原子力プラントである場合には、所定期間ごとに運転が停止され、定期検査が行われる。その定期検査の際、燃料交換台車81を用いて、原子炉60内の燃料集合体4の一部が交換される。原子力発電プラントSYの運転停止後、原子炉格納容器(図示せず)の上方に位置する原子炉ウエル68内に冷却水が充填される。その後、原子炉格納容器の蓋および原子炉圧力容器61の蓋(図示せず)が取り外される。そして、原子炉圧力容器61内に設置されている蒸気乾燥器、気水分離器およびシュラウドヘッド(何れも図示せず)が原子炉圧力容器61外に搬出される。
【0034】
原子炉圧力容器61内の炉心63に装荷されている、寿命が尽きた複数の燃料集合体4(使用済の燃料集合体4)が炉心63から取り出されて燃料保管プール70に移送される。また、燃料保管プール70内に保管されている、新燃料である燃料集合体4が炉心63内に装荷される。このような使用済の燃料集合体4および新燃料である燃料集合体4の移送に燃料交換台車81が用いられる。
【0035】
燃料交換作業は、作業者によるマニュアル操作によって実行することが可能である。すなわち、移動対象である燃料集合体4の識別情報、座標値の始点位置および終点位置を、作業者がマニュアル操作で燃料交換制御装置88(
図1参照)の操作パネル(図示せず)から入力するとよい。その作業者による入力に基づいて、燃料交換制御装置88において燃料交換台車81および伸縮管82の制御信号が生成される。
【0036】
燃料交換制御装置88に対して、炉心63内の、ある燃料集合体4の座標が入力されると、燃料交換制御装置88は燃料交換台車81の水平位置を移動させ、目標位置に停止後、伸縮管82を炉心63の下部へ降下させる。ここで、燃料交換台車81の移動と伸縮管82の伸縮動作は同時に実行してもよく、シーケンシャルに実行してもよい。また、燃料交換作業は、作業者によるマニュアル操作に限られるものではなく自動的に実行させてもよい。すなわち、計画時データベース136(
図2参照)に基づいて遠隔制御部144が燃料交換制御装置88に対して、作業信号を出力することによって燃料交換作業を実行してもよい。
【0037】
(燃料集合体4の確認動作:非参照モード)
次に、交換すべき全ての燃料集合体4を装荷した後、燃料集合体4の配置が計画通りになっているか否かを確認する動作について説明する。燃料集合体4の確認動作において、作業者は、入力装置112を操作して、前回に取得した全体画像データGD_orgを参照する「参照モード」、または全体画像データGD_orgを参照しない「非参照モード」のうち何れかの動作モードを選択することができる。全体画像データGD_orgがそもそも存在しない場合等には、非参照モードで燃料配置管理装置120を動作させることが好ましい。
【0038】
図9および
図10は、燃料配置管理装置120の非参照モードにおいて実行される管理プログラムのフローチャートである。但し、
図9および
図10には、作業者による操作内容等も含まれている。
まず、
図9のステップS2において、遠隔制御部144(
図2参照)は、燃料集合体4の撮影エリア計画に従って、燃料交換台車81を、配置位置P1~PN(
図7参照)のうち何れかに移動させる。次に、処理がステップS4に進むと、遠隔制御部144は、その配置位置において、水中カメラ85に燃料集合体4を撮影させる。燃料交換制御装置88(
図1参照)は、撮影された映像である部分画像データPD_curと、水中カメラ85の配置位置とを入力部122を介して画像合成部124に供給する。
【0039】
次に、処理がステップS6に進むと、遠隔制御部144は、全ての配置位置P1~PNにおける撮影を終了したか否かを判定する。ここで「No」と判定されると、処理はステップS2に戻る。これにより、遠隔制御部144は、未だ撮影されていない何れかの配置位置に燃料交換台車81を移動させ、上述の処理を繰り返す。そして、全ての配置位置P1~PNにおける撮影が終了すると、ステップS6において「Yes」と判定され、処理はステップS8に進む。
【0040】
ステップS8において、画像合成部124は、供給された部分画像データPD_curと、対応する配置情報とに基づいて全体画像データGD_curを合成する。次に、処理がステップS10に進むと、ID画像取得部132は、全体画像データGD_curの座標系を決定する。すなわち、ID画像取得部132は、ステップS8で作成された全体画像データGD_curの任意の位置を全体画像データGD_curの座標原点として、全体画像データGD_curの各画素の位置を特定し、各ID表示部30の位置に相当する座標を算出する。全体画像データGD_curの座標軸は、燃料交換台車81を移動させるために設けたレール83,84に平行にすると好ましいが、それに限られるものではない。
【0041】
次に、処理がステップS50に進むと、ID画像取得部132は、各ID表示部30の位置に基づいて、全体画像データGD_curの中から、全てのID表示部30に対応する部分、すなわちID画像GID_curを切り出す。なお、動作モードが非参照モードである場合、ID画像取得部132は全てのID表示部30に対応するID画像GID_curを切り出すが、動作モードが参照モードである場合には、ID画像取得部132は、一部のID画像GID_curのみを切り出す。この参照モードにおける動作については後述する。
【0042】
次に、処理が
図10のステップS52に進むと、文字読取部134は、取得した全てのID画像GID_curの文字認識を行い、その結果である認識識別番号IDRを出力する。
次に、処理がステップS54に進むと、ID比較部138は、計画時データベース136から、これら認識識別番号IDRに対応する計画時識別番号SIDを取得する。
【0043】
次に、処理がステップS56に進むと、ID比較部138は、各認識識別番号IDRと、対応する計画時識別番号SIDとを比較する。また、ステップS56において、誤換装ID抽出部140は、計画時識別番号SIDと認識識別番号IDRとが一致しない燃料集合体4のリスト、すなわち誤換装リストを作成する。さらに、ステップS56において、出力部142は、誤換装リストに基づいて、表示画面50(
図8参照)を表示装置110に表示させる。
【0044】
次に、ステップS58において、作業者は、表示画面50(
図8参照)を介して、何れかのセル62について、実際に誤換装が発生しているか否かを目視で確認する。すなわち、差異リスト表示部53において、当該セル62をマウスでクリックし、ズーム表示部54,55を目視するとよい。
【0045】
次に、ステップS60において、作業者は、誤換装が発生しているか否かを判断する。作業者は、「Yes」(誤換装が発生している)と判断すると、再換装リスト(図示せず)に、その誤換装の内容を追加する。なお、再換装リストとは、燃料配置管理装置120に記憶されている、再換装を行うべき燃料集合体4のリストである。再換装リストへの追加が終了すると、出力部142は、差異リスト表示部53から、対応するセル62の項目を削除する。また、出力部142は、削除した項目に対応するマーカ51a,52aを合成画像表示部51および設計情報表示部52から削除する。
【0046】
一方、ステップS60において作業者が「No」と判定すると(すなわち文字認識結果は誤りであり、当該セル62には誤換装は生じていないと判定すると)、作業者はステップS63において、新たな(正しい)識別番号を入力装置112から入力する。新たな識別番号が入力されると、出力部142は、入力された識別番号を認識識別番号IDRとして扱い、計画時識別番号SIDとを再び比較する。そして、IDRとSIDとが一致すると、出力部142は、差異リスト表示部53から対応するセル62の項目を削除する。また、出力部142は、削除した項目に対応するマーカ51a,52aを合成画像表示部51および設計情報表示部52から削除する。
【0047】
ステップS62またはS63の処理が終了すると、処理はステップS64に進み、出力部142は、差異リスト53が空であるか否かを判定する。ここで「Yes」と判定されると、処理はステップS66に進む。ここでは、出力部142は「燃料換装確認作業が終了した」旨のメッセージを表示装置110に表示し、本プログラムが終了する。
【0048】
(燃料集合体4の確認動作:参照モード)
次に、参照モードにおける燃料集合体4の確認動作について説明する。
上述した非参照モードの動作では、ステップS52(
図10参照)において、全ての燃料集合体4に対して文字認識処理を施した。しかし、実際には文字認識処理の読み取り精度は100パーセントではなく読み取り誤りが存在する。この読み取り誤りの数を低減することは、燃料換装状態確認の作業効率を高めるとともに、当該確認作業の正しさの向上にもつながる。そこで、参照モードにおいては、前回に(例えば前回の定期検査において)取得した全体画像データGD_orgを用いて、文字認識の回数を削減する。
【0049】
図11は、燃料配置管理装置120の参照モードにおいて実行される管理プログラムの要部のフローチャートである。
上述した非参照モードにおけるステップS2~S10およびステップS50~S66(
図9、
図10参照)に対応する処理は、参照モードにおいても実行される。但し、参照モードにおいては、ステップS10と、ステップS50との間に、
図11に示すステップS20,S22,S40,S42の処理が実行される。
【0050】
まず、ステップS20において、画像比較部128は、先のステップS8で取得した全体画像データGD_curと、前回に(例えば前回の定期検査において)取得した全体画像データGD_orgとをセル62毎にパターンマッチングを実行する。すなわち、セル62毎に、「類似」または「非類似」の判定結果を出力する。
【0051】
次に、処理がステップS22に進むと、差異抽出部130は、当該ステップS22の判定を未だ行っていない任意の一つのセル62について、ステップS20の判定結果が「類似」であるか否かを判定する。ここで「Yes」と判定されると、処理はステップS40に進み、差異抽出部130は、当該セル62を「非処理対象セル」として指定する。
【0052】
次に、処理がステップS42に進むと、差異抽出部130は、全てのセル62についてステップS20の判定が終了したか否かを判定する。ここで「No」と判定されると、処理はステップS22に戻り、未だ判定を行っていない他のセル62についてステップS22,S40の処理が繰り返される。
【0053】
ステップS42において「Yes」と判定されると、処理はステップS50に進む。これにより、非参照モードにおけるステップS50以降と同様の処理が実行される。但し、参照モードのステップS50において、ID画像取得部132は、上述のステップS22において「非処理対象セル」として指定されたセル62の部分についてはID画像GID_curを出力しない。
【0054】
従って、次のステップS52においても、文字読取部134は、「非処理対象セル」として指定されたセル62の部分については認識識別番号IDRを出力しない。従って、参照モードにおいては、非参照モードと比較して、文字読取部134が出力する認識識別番号IDRの総数を少なくすることができる。これにより、ステップS56において、誤換装ID抽出部140がリストアップする誤換装リストの項目数も、認識識別番号IDRの総数に略比例して少なくなり、作業者の手間を削減することができる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、好適な第2実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した第1実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
第2実施形態のハードウエア構成および非参照モードにおける動作の内容は、第1実施形態のもの(
図1~
図11参照)と同様である。但し、本実施形態の参照モードにおける動作は、以下に述べる点で、第1実施形態のものとは異なる。
【0056】
図12は、第2実施形態の参照モードにおいて燃料配置管理装置120において実行される管理プログラムの要部のフローチャートである。
上述した第1実施形態の非参照モードにおけるステップS2~S22、ステップS40~S66(
図9~
図11参照)に対応する処理は、参照モードにおいても実行される。但し、本実施形態においては、ステップS22と、ステップS40との間に、
図12に示すステップS32の処理が実行される。なお、
図12において、
図9~
図11に示したものと同一のステップについては、内容を省略する。
【0057】
上述したように、ステップS22において、差異抽出部130は、当該ステップS22の判定を未だ行っていない任意の一つのセル62について、ステップS20の判定結果が「類似」であるか否かを判定する。本実施形態では、ここで「Yes」と判定されると、処理はステップS32に進む。ステップS32では、差異抽出部130は、当該セル62が換装対象に含まれるか否かが判定される。すなわち、差異抽出部130は、計画時データベース136を参照し、当該セル62に含まれる何れかの燃料集合体4が換装対象にされているか否かを判定する。
【0058】
ここで、「No」と判定されると、処理はステップS40に進み、上述したように、差異抽出部130は、当該セル62を「非処理対象セル」として指定する。一方、ステップS32において「Yes」と判定されると、処理はステップS42に進む。すなわち、当該セル62について、全体画像データGD_orgと全体画像データGD_curとの内容が類似していたとしても、当該セル62は、文字認識等の対象にされる。
【0059】
ここで、本実施形態の利点について説明しておく。あるセル62が換装対象とされていた場合、そのセル62に属する何れかの燃料集合体4が誤って元の位置に装荷されてしまう可能性がある。上述の第1実施形態の動作によれば、そのセル62の部分については、全体画像データGD_orgと、全体画像データGD_curとが類似する可能性が高くなる。両者が類似する場合、そのセル62は「非処理対象セル」となり、文字認識等の処理対象外となるため、誤換装が起こったことを検出できなくなる可能性がある。
【0060】
本実施形態によれば、「当該セル62について全体画像データGD_orgと、全体画像データGD_curとが類似する」および「当該セル62は換装対象とされていない」という二つの条件を満たしたときに当該セルが「非処理対象セル」に設定される。これにより、上述したような、燃料集合体4を元の位置に戻してしまうような誤換装も確実に検出することができる。
【0061】
[第3実施形態]
次に、好適な第3実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した他の実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
第3実施形態のハードウエア構成および動作の内容は、以下に述べる点を除いて、第1実施形態または第2実施形態のもの(
図1~
図12参照)とほぼ同様である。
【0062】
本実施形態では、ステップS52(
図10参照)での文字認識処理において、文字読取部134は、機械学習による文字読み取りと、光学的文字認識(OCR)による文字読み取りとの双方を実行し、両者の結果が一致したものを認識識別番号IDRとして出力する。仮に、両者が不一致であった場合には、文字読取部134は、認識識別番号IDRとして、「認識不能」であることを示す所定の文字列を出力する。
【0063】
文字読み取り技術の読み取り精度が100%ではないが、本実施形態のように、異なる文字読み取り方法の理論積を採用することで、運用により読み取り精度を向上させることができる。なお、ここで「光学的文字認識(OCR)による文字読み取り」とは、多層ニューラルネット(4層以上のニューラルネット)を用いない文字認識方法を指す。また、「機械学習による文字読み取り」とは、多層ニューラルネットを用いた文字認識方法を指す。
【0064】
[第4実施形態]
次に、好適な第4実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した他の実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
第4実施形態のハードウエア構成および動作の内容は、以下に述べる点を除いて、第3実施形態のものとほぼ同様である。
但し、本実施形態では、ステップS52(
図10参照)において実行される「機械学習による文字読み取り」に先立って、予め機械学習用の教師データを作成する点が異なる。教師データは、以下のステップSA1~SA3によって燃料配置管理装置120が作成する。
【0065】
・ステップSA1:原子炉60に対して燃料集合体4を初期装荷した後、上述のステップS2~S6(
図9参照)と同様の処理を実行し、燃料集合体のカメラ撮影を行い、全体画像データGD_curと同様の形式の初期全体画像データを作成する。
・ステップSA2:初期全体画像データから、ID画像GID_curと同様の形式の初期ID画像を生成する。
【0066】
・ステップSA3:各々の初期ID画像を人口知能の入力とし、対応する配置位置6における初期換装計画時データを出力とするように、人工知能の学習を行う。
水中カメラ85による撮影状況は、換装前後においても大きく変化することはなく、初期装荷時には装荷誤りは皆無に等しいため、これによって正しい学習用教師データを作成することができる。
【0067】
[実施形態の効果]
以上のように好適な実施形態によれば、物品管理装置(120)は、各々が識別番号を表示する識別番号表示部(30)を有する複数の物品(4)の第1の配置状態を撮影した画像データを第1の画像データ(GD_org)とし、第1の配置状態とは物品(4)の構成または配置が異なる複数の物品(4)の第2の配置状態を撮影した画像データを第2の画像データ(GD_cur)とし、第1の画像データ(GD_org)の複数の区画(62)に対応する複数の部分と、第2の画像データ(GD_cur)の複数の区画(62)にそれぞれ対応する複数の部分と、が所定の類似条件を満たすか否かを区画(62)毎に判定する画像比較部128と、第2の画像データ(GD_cur)の複数の区画(62)のうち、画像比較部128における判定結果が否定であった区画(62)である識別対象区画について、識別番号表示部(30)に対応する箇所の文字認識を行った結果である認識文字列(IDR)と、対応する区画(62)に配置されるべき物品(4)の識別番号として指定された指定識別番号(SID)とが一致するか否かを判定する識別番号比較部(138)と、を備える。これにより、認識文字列(IDR)の総数を少なくすることができ、誤った文字認識に基づく認識文字列(IDR)も少なくすることができ、効率的に物品(4)を管理できる。
【0068】
また、物品管理装置(120)は、各々が複数の物品(4)のうち一部の物品(4)を撮影した複数の部分画像(PD_org,PD_cur)を合成して、第1または第2の画像データ(GD_org,GD_cur)を合成する画像合成部124をさらに備えると、一層好ましい。これにより、視野角の狭い水中カメラ85を用いた場合においても、高品質な第1または第2の画像データ(GD_org,GD_cur)を取得することができる。
【0069】
また、物品管理装置(120)は、第2の画像データ(GD_cur)を表示装置110の表示画面50に表示させるとともに、認識文字列(IDR)と、指定識別番号(SID)とが一致しなかった区画(62)に対応する表示部分に所定のマーカ51aを表示させる出力部142をさらに備えると、一層好ましい。これにより、作業者は、認識文字列(IDR)と、指定識別番号(SID)とが一致しなかった区画(62)、すなわち誤換装が生じた可能性のある区画(62)を一見して認識することができる。
【0070】
また、物品管理装置(120)は、入力装置112に対する作業者の入力操作に基づいて認識文字列(IDR)を修正入力を受信する入力部122をさらに備え、出力部142は、認識文字列(IDR)が修正された結果、認識文字列(IDR)と指定識別番号(SID)とが一致すると、表示画面50から対応するマーカ51aを除去する機能(S63)を有すると一層好ましい。これにより、認識文字列(IDR)が誤っていた場合に、その誤りを速やかに訂正して、表示画面50に反映させることができる。
【0071】
また、出力部142は、表示画面50からマーカ51aが全て除去されたときに、物品(4)の配置確認が完了した旨を表示装置110に表示させる機能(S66)をさらに有すると一層好ましい。これにより、作業者は、物品(4)の配置誤りが無い場合に、その旨を迅速に認識できる。
【0072】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、もしくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0073】
(1)上記各実施形態においては、燃料配置管理装置120が管理プログラム(
図9~
図12)を実行した。しかし、この管理プログラム(
図9~
図12)は、燃料配置管理装置120以外の処理装置が実行してもよい。例えば、図示せぬネットワーク経由でサーバコンピュータが管理プログラムを実行してもよく、燃料配置管理装置120が記憶する全体画像データベース126、計画時データベース136等、各種データも該サーバコンピュータに記憶させるようにしてもよい。
【0074】
(2)上記各実施形態においては、本発明における「区画」の一例として1個のセル62を適用した例を説明した。しかし、「区画」は、1個のセル62に限定されず、複数のセル62を含む領域を「区画」としてもよく、各セル62内の個々の配置位置6を「区画」としてもよい。
【0075】
(3)上記各実施形態においては、認識識別番号IDRが対応する計画時識別番号SIDと一致しない場合、判定結果表示部56(
図5参照)には単に「NG」と表示した。ここで、認識識別番号IDRが全ての燃料集合体4の何れのIDとも一致しない場合は、文字読取部134(
図2参照)において文字認識の誤りが起こった可能性が高い。このような場合は、当該認識識別番号IDRに対して、正しいと推測されるIDの候補を表示画面50に表示させるようにしてもよい。具体的には、全ての燃料集合体4のIDを格納した辞書を作成し、認識識別番号IDRと辞書内の全てのIDとのレーベンシュタイン距離を求め、レーベンシュタイン距離が短い順に所定数のIDを、正しいIDの候補として列挙するとよい。
【0076】
(4)上記実施形態における燃料配置管理装置120のハードウエアは一般的なコンピュータによって実現できるため、管理プログラム(
図9~
図12)、その他上述した各種処理を実行するプログラム等を記憶媒体に格納し、または伝送路を介して頒布してもよい。
【0077】
(5)
図9~
図12に示した処理、その他上述した各処理は、上記実施形態ではプログラムを用いたソフトウエア的な処理として説明したが、その一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit;特定用途向けIC)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いたハードウエア的な処理に置き換えてもよい。
【0078】
(6)上記実施形態においては、「物品」の例として燃料集合体4を適用した場合を説明した。しかし、本発明における「物品」は燃料集合体4に限定されず、IDを付与した種々の物品の管理に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
4 燃料集合体(物品)
30 ID表示部(識別番号表示部)
50 表示画面
51a マーカ
62 セル(区画)
110 表示装置
112 入力装置
120 燃料配置管理装置(物品管理装置、コンピュータ)
122 入力部
124 画像合成部
128 画像比較部(画像比較手段)
138 ID比較部(識別番号比較部、識別番号比較手段)
142 出力部
IDR 認識識別番号(認識文字列)
SID 計画時識別番号(指定識別番号)
GD_org 全体画像データ(第1の画像データ)
GD_cur 全体画像データ(第2の画像データ)
PD_org,PD_cur 部分画像データ(部分画像)