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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】エラストマー性物品用の反応性炭酸塩
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20231226BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20231226BHJP
   C08K 5/04 20060101ALI20231226BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20231226BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/26
C08K5/04
C08K5/09
C09C3/08
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020520652
(86)(22)【出願日】2018-10-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 US2018055162
(87)【国際公開番号】W WO2019075021
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】62/571,035
(32)【優先日】2017-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】398031330
【氏名又は名称】アイメリーズ ユーエスエー,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【氏名又は名称】臼井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】ウィックス,ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】ストーヴァル,カリナ
(72)【発明者】
【氏名】パク,サン ジン
(72)【発明者】
【氏名】シング,ヴィレンドラ
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-290266(JP,A)
【文献】特表2009-534486(JP,A)
【文献】特開2004-315359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
C09C 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱物質結合型エラストマー性材料であって、
弾性ポリマーと、
少なくとも1個の接続基及び鉱物質結合基を含むポリマーマトリックス単位と、
前記鉱物質結合基を介して前記ポリマーマトリックス単位に結合された金属炭酸塩の内包物と、
を含み、
前記弾性ポリマーが前記接続基を介して前記ポリマーマトリックス単位に共有結合されており、
前記接続基が、6個~24個の炭素原子と、O、N、S及びハロゲンからなる群から選択される少なくとも1個の原子とを含む飽和又は不飽和の有機基を含み、前記有機基が、前記弾性ポリマーを前記鉱物質結合基に接続し、
前記鉱物質結合基が、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸誘導体、無水物、無水物誘導体、ホスフェート、リン酸塩、ホスフェート誘導体及びスルホネートからなる群から選択される少なくとも1個の官能基を含み、
前記弾性ポリマーは、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、フルオロカーボンゴム、クロロプロペンゴム、ポリアクリレートゴム、エチレンアクリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエステルウレタンゴム、ポリエーテルウレタンゴム、ポリエステルウレタン/ポリエーテルウレタンゴム、天然ゴム、又はそれらの混合物から選択される、鉱物質結合型エラストマー性材料。
【請求項2】
前記金属炭酸塩は、シラン又はシラノールで前処理されていない、請求項1に記載の鉱物質結合型エラストマー性材料。
【請求項3】
前記材料は、30mmまでの厚さを有する被膜の形で存在する、請求項1に記載の鉱物質結合型エラストマー性材料。
【請求項4】
前記鉱物質結合基は、カルボン酸又はその塩を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の鉱物質結合型エラストマー性材料。
【請求項5】
前記金属炭酸塩は、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ土類金属炭酸塩である、請求項1~のいずれか一項に記載の鉱物質強化型エラストマー性材料。
【請求項6】
前記金属炭酸塩は、炭酸カルシウムであり、かつ前記鉱物質結合基は、カルボン酸塩である、請求項1~のいずれか一項に記載の鉱物質結合型エラストマー性材料。
【請求項7】
前記金属炭酸塩の内包物は、以下の条件:
(i)前記内包物が0.01μm~2μmの範囲のd10を有する金属炭酸塩の粒子を含むこと、
(ii)前記内包物が50nm~5μmの範囲のd50を有する金属炭酸塩の粒子を含むこと、
(iii)前記内包物が1μm~10μmの範囲のd90を有する金属炭酸塩の粒子を含むこと、
(iv)前記内包物が3μm~15μmの範囲のd98を有する金属炭酸塩の粒子を含むこと、及び、
(v)前記内包物が20~70の範囲のスティープネス係数を有する金属炭酸塩の粒子を含むこと、
の少なくとも1つを満たす、請求項1~のいずれか一項に記載の鉱物質結合型エラストマー性材料。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の鉱物質結合型エラストマー性材料を含む、物品。
【請求項9】
キャビテーションを受けにくい弾性材料として請求項1~のいずれか一項に記載の鉱物質結合型エラストマー性材料を含む、保護手袋である請求項に記載の物品。
【請求項10】
エラストマー性組成物を作製する方法であって、弾性ポリマーを反応性炭酸塩及び加硫剤又は架橋剤と反応させて、鉱物質結合型エラストマー性組成物を得ることを含み、
前記反応性炭酸塩は、連結基により共に接続された鉱物質結合基とポリマー反応性基とを含む反応性化合物に結合された金属炭酸塩を含み、
前記鉱物質結合基は、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸誘導体、無水物、無水物誘導体、ホスフェート、リン酸塩、ホスフェート誘導体及びスルホネート、からなる群から選択される少なくとも1個の官能基を含み、
前記連結基は、6個~24個の炭素原子と、O、N、S及びハロゲンからなる群から選択される少なくとも1個の原子とを含む飽和又は不飽和の有機基を含み、前記有機基は、前記ポリマー反応性基を介して結合された前記弾性ポリマーを前記鉱物質結合基へと接続し、
前記鉱物質結合型エラストマー性組成物は、前記金属炭酸塩が前記鉱物質結合基を介して結合された前記弾性ポリマーを含
前記弾性ポリマーは、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、フルオロカーボンゴム、クロロプロペンゴム、ポリアクリレートゴム、エチレンアクリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエステルウレタンゴム、ポリエーテルウレタンゴム、ポリエステルウレタン/ポリエーテルウレタンゴム、天然ゴム、又はそれらの混合物から選択される、方法。
【請求項11】
前記金属炭酸塩は、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ土類金属炭酸塩である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記金属炭酸塩は、粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマー反応性基は、少なくとも1個の加硫可能な官能基を含む、請求項1012のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマー反応性基は、アルケン基、アルキン基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、エステル基、ラクトン基、チオール基、チオエステル基、エポキシド基、アミン基、イソシアネート基、マレイミド基、アクリレート基、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1個の重合可能な官能基を含む、請求項1012のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記反応性化合物は、式(2)又は式(2a):
(R-(L-(R-(L)-X-Z (2)
(式中、
Zは水素原子を表し、
XはCO、PO、PO、SO又はSOからなる群から選択される部を表し、
は、独立して、C1~30アルキル基、分岐状アルキル基、C1~30アルケニル基、分岐状アルケニル基、C3~30脂環式基、C6~30芳香族基、又はC3~30ヘテロ芳香族基を表し、ここで、前記基は、O、N及びSからなる群から選択される少なくとも1個の橋架け原子を含み、
は、独立して、アルケン基、アルキン基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、エステル基、ラクトン基、チオール基、チオエステル基、エポキシ基、アミン基、及びイソシアネート基からなる群から選択される重合可能な官能基を含む有機基を表し、
は、独立して、任意に置換されたC1~30アルキレン基、任意に置換されたC1~30アルケニレン基、任意に置換されたC3~30脂環式基、任意に置換されたC6~30芳香族基、又は任意に置換されたC3~30ヘテロ芳香族基を表し、ここで、前記基は任意に、O、N及びSからなる群から選択される少なくとも1個の橋架け原子を含み、
は、独立して、アルケン基、アルキン基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、エステル基、ラクトン基、チオール基、チオエステル基、エポキシ基、アミン基、及びイソシアネート基からなる群から選択される分岐状又は非分岐状の重合可能な官能基を含む有機基を表し、
bは1~4の整数を表し、
cは0~4の整数を表し、かつ、
dは0~4の整数を表す)、又は、
A-(X-Y-CO)(O-B-CO)OH (2a)
(式中、
Aは末端エチレン性結合と共に1個以上の隣接するカルボニル基を含む部であり、
XはOであり、かつmは1~4であり、又はXはNであり、かつmは1であり、
YはC1~18アルキレン又はC2~18アルケニレンであり、
BはC2~6アルキレンであり、
nは0~5であるが、但し、
Aが前記エチレン性基に隣接する2個のカルボニル基を含む場合に、XはNである)、
のいずれかの化合物である、請求項1014のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記反応は、水性環境中で行われる、請求項1015のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応は、非水性環境中で行われる、請求項1015のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記反応は、非水性溶剤の存在下で行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
エラストマー性材料を含む組成物に含まれ、反応性化合物に結合された金属炭酸塩を含む反応性炭酸塩であって、前記反応性化合物は、連結基により共に接続された鉱物質結合基とポリマー反応性基とを含み、
前記金属炭酸塩は、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ土類金属炭酸塩であり、
前記鉱物質結合基は、カルボン酸塩であり、
前記ポリマー反応性基は、アルケン基又はアルキン基であり、かつ、
前記連結基は、6個~24個の炭素原子と、O、N、S及びハロゲンからなる群から選択される少なくとも1個の原子とを含む有機基であ
前記組成物は、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、フルオロカーボンゴム、クロロプロペンゴム、ポリアクリレートゴム、エチレンアクリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエステルウレタンゴム、ポリエーテルウレタンゴム、ポリエステルウレタン/ポリエーテルウレタンゴム、天然ゴム、又はそれらの混合物から選択される弾性ポリマーを含む、
反応性炭酸塩。
【請求項20】
前記組成物は、さらに架橋剤を含む、請求項19に記載の反応性炭酸塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権主張]
本PCT国際出願は、2017年10月11日付けで出願された米国仮特許出願第62/571,035号の優先権の利益を主張し、その主題は、引用することによりその全体が本出願の一部をなす。
【0002】
本出願は包括的には、材料技術に関し、特にポリマー性材料の或る特定の特質を付与することができる反応性炭酸塩の調製及び使用に関する。本出願は、鉱物質結合基と連結基とを含むポリマーマトリックス単位を介して金属炭酸塩がポリマーマトリックスに結合されている鉱物質結合型エラストマー性材料の作製方法を開示している。本明細書に開示される反応性炭酸塩はまた、鉱物質結合基と、ポリマー反応性基と、連結基とを含む反応性化合物に結合された金属炭酸塩を含み得る。そのような反応性炭酸塩は、例えばエラストマー性材料におけるキャビテーションを減らす方法において有用である。
【背景技術】
【0003】
天然ゴムラテックスは1世紀以上にわたって保護材料として広く使用されてきた。近年では、例えば、HIV及びAIDS等の感染症の蔓延を一因とし、ゴムラテックス手袋の使用が浸透している。
【0004】
炭酸カルシウム等の鉱物質は、エラストマー性材料において、エラストマー性物品の特性を改変することができると共に、より高価なバインダー材料の使用を減らすこともできるフィラー材料として広く使用されている。炭酸カルシウムは、手袋等の天然エラストマー性物品において広く使用され、ニトリル手袋等の合成ゴム物品での使用への拡大が見られている。最も重要なフィラーの中で、炭酸カルシウムは最大の市場規模を有し、主としてプラスチック分野で使用されている。
【0005】
場合によっては、炭酸カルシウム及び他の鉱物質は、特に鉱物質がポリマーマトリックス中に十分に分散されていない場合に、エラストマー性ポリマーを含むポリマー性材料において、弱点部又はキャビテーション部位を生ずる場合がある。キャビテーションは、半結晶性ポリマー性材料が変形(例えば、延伸)する間に観察され得る現象である。ポリマーが変形する間に、非晶質相の内部に多数の内包物(空隙又は空洞)が形成される。エラストマー性物品中にキャビテーションによって形成された不所望な内包物が存在すると、使用の間に段階的な破壊又は更には破局的な破壊が引き起こされる場合がある。
【0006】
例えば、天然ゴム又は合成ゴムから形成された保護手袋(しばしば、器用さ等の特性を改善するためにゴムマトリックス内に炭酸カルシウム等の鉱物質を含めることが望ましい)において、一般的な破壊の様式には、変形が繰り返される箇所(例えば、指先)での漏れ又は破局的な破壊が含まれる。これらの弱点部はしばしば、エラストマーの変形に抵抗する傾向があるため内包物につながり得る炭酸カルシウム等のフィラーの存在に起因するキャビテーション部位の発生によって引き起こされる。
【0007】
エラストマー性材料との相容性を改善するために鉱物質に表面変性がなされてきたが、延伸の繰り返し及び他の変形過程を受けるエラストマー性材料の耐久性を高めるには、更なる改善が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
鉱物質材料を含むエラストマー性物品の特性を改善するための方法及び材料を見出すことが求められている。例えば、エラストマー性物品におけるキャビテーションを減らすことにより、保護用ゴム手袋等のエラストマー性物品の特性及び耐久性を改善することができる方法及び材料を見出すことが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下の開示は、鉱物質及び他の無機フィラー材料を天然エラストマー又は合成エラストマーのポリマーマトリックスに確実に結合することができる反応性鉱物質の調製及び使用を記載している。鉱物質及び他の無機フィラー材料のこの確実な結合は、エラストマー性物品中に生ずる弱点部及びキャビテーション部位の頻度及び激しさを低下させることによりエラストマー性材料の特性を改善することができる。
【0010】
当業者が作製及び使用することができる本明細書に記載される本開示の実施の形態には、以下のものが含まれる:
(1)幾つかの実施の形態は、鉱物質結合型エラストマー性材料であって、弾性ポリマーと、少なくとも1個の接続基及び鉱物質結合基を含むポリマーマトリックス単位と、前記鉱物質結合基を介して前記ポリマーマトリックス単位に結合された金属炭酸塩の内包物とを含み、前記弾性ポリマーが前記連結基を介して前記ポリマーマトリックスに共有結合されている、鉱物質結合型エラストマー性材料に関する。
(2)幾つかの実施の形態は、エラストマー性組成物を作製する方法であって、モノマー混合物、プレポリマー又はその両方を、反応性炭酸塩及び任意にカップリング剤の存在下で反応させて、鉱物質結合型エラストマー性組成物を得ることを含み、上記反応性炭酸塩は、連結基により共に接続された鉱物質結合基とポリマー反応性基とを含む反応性化合物に結合された金属炭酸塩を含み、上記鉱物質結合型エラストマー性組成物は、上記金属炭酸塩が、上記鉱物質結合基を介して結合されたポリマーマトリックスを含む、方法に関する。
(3)幾つかの実施の形態は、エラストマー性材料におけるキャビテーションを減らす方法であって、反応性炭酸塩の存在下で重合過程又は架橋過程を実施して、鉱物質結合型エラストマー性材料を得ることを含み、上記反応性炭酸塩は、連結基により共に接続された鉱物質結合基とポリマー反応性基とを含む反応性化合物に結合された金属炭酸塩を含み、以下の要素、すなわち(a)重合過程において存在する反応性炭酸塩の割合、(b)反応性炭酸塩における金属炭酸塩の粒子サイズ、(c)鉱物質結合基の構造、(d)ポリマー反応性基の構造、(e)連結基の構造、(f)反応性炭酸塩に含まれる鉱物質結合基の数、及び(g)反応性炭酸塩に含まれるポリマー反応性基の数の少なくとも1つを、鉱物質結合型エラストマー性材料が、反応性炭酸塩を用いずに金属炭酸塩の存在下で重合過程又は架橋過程を実施することにより得られたエラストマー性材料と比較してキャビテーションを殆ど起こさないように制御する、方法に関する。
(4)幾つかの実施の形態は、反応性化合物に結合された金属炭酸塩を含む反応性炭酸塩であって、前記反応性化合物は、連結基により共に接続された鉱物質結合基とポリマー反応性基とを含む、反応性炭酸塩に関する。
【0011】
本開示の更なる目的、利点及び他の特徴は、一部は以下の説明に示され、一部は以下を考察することで当業者に明らかとなるであろう、又は本開示の実施から理解され得る。本開示は、以下に具体的に説明されるものとは他の異なる実施形態を包含し、本明細書の詳細は、本開示から逸脱することなく様々な点で変更が可能である。この点に関して、本明細書の説明は、例示的な性質のものであり、限定するものと解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態は、反応性鉱物質を製造する方法及び該方法から形成された鉱物質結合型ポリマー性材料を含む。本開示の鉱物質結合型ポリマーは、従来の鉱物質充填されたポリマーに対して利点を有する。それというのも、本明細書に記載される反応性鉱物質の添加剤としての使用は、炭酸カルシウム等の鉱物質が、鉱物質結合基と接続基とを含むポリマーマトリックス単位を介してポリマーマトリックスへと強固に結合されているポリマーマトリックスを提供し得るからである。接続基は、6個~24個の炭素原子と、任意にO、N、S及びハロゲンからなる群から選択される少なくとも1個の原子とを含む飽和又は不飽和の有機基を含み得て、該有機基は、弾性ポリマーを鉱物質結合基へと接続し得る。上記マトリックス単位は、モノマー混合物、プレポリマー又はその両方に対して反応性鉱物質の存在下で重合過程又は架橋過程を実施することによって形成され得る。
【0013】
幾つかの実施形態は、反応性化合物に結合された鉱物質コアを含む反応性鉱物質であって、上記反応性化合物が、連結基により共に接続された鉱物質結合基とポリマー反応性基とを含む、反応性鉱物質に関する。
【0014】
本開示の実施形態は、例えばイオン結合及び共有結合等のあらゆる形又は機構の鉱物質コアと反応性化合物との間の結合を含み得る。特定の理論に縛られるものではないが、鉱物質結合基が塩の形である実施形態においては、イオン結合が、鉱物質コアと反応性化合物との間の結合の主な形又は機構であると考えられる。
【0015】
「コア」という用語は、「鉱物質コア」が複数の反応性化合物に結合され得る又は複数の反応性化合物により少なくとも部分的に取り囲まれ得ることを意味するが、本開示は、鉱物質が複数の反応性化合物に結合されない又は複数の反応性化合物により少なくとも部分的に取り囲まれない実施形態も含む。幾つかの実施形態では、反応性鉱物質は、反応性化合物に結合された複数の鉱物質から形成され得る。
【0016】
幾つかの実施形態では、鉱物質コアは金属塩又は粘土鉱物を含む。例えば、鉱物質コアは、金属炭酸塩、金属水酸化物、金属リン酸塩、金属硫酸塩及び他の金属塩又はそれらの混合物であり得る。他の実施形態では、鉱物質コアは、アルミニウム塩、バリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩及び他の金属塩又はそれらの混合物から選択され得る。例えば、鉱物質コアは、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸バリウム、リン酸バリウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム及び他の金属塩から選択される少なくとも1つの金属塩を含み得る。他の実施形態では、鉱物質コアは、粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、及びそれらの組み合わせから選択される金属炭酸塩を含み得る。
【0017】
鉱物質コアが天然産生源から得られる場合に、幾つかの鉱物質不純物が鉱物質コアを汚染することを避けられない場合がある。例えば、天然産生炭酸カルシウムは、他の鉱物質を伴って存在する。また、幾つかの状況では、少量の添加量の他の鉱物質も含まれる場合があり、例えば、カオリン、焼成カオリン、ウォラストナイト、ボーキサイト、タルク又はマイカの1つ以上が存在する場合もある。しかしながら、一般的に、本開示の実施形態で使用される鉱物質コアは、5重量%未満、例えば2重量%未満、例えば1重量%未満の他の鉱物質不純物を含有することとなる。
【0018】
「鉱物質結合基」は、鉱物質コアとして使用される鉱物質に結合することができる官能基である。幾つかの実施形態では、鉱物質結合基には、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸誘導体、無水物、無水物誘導体、ホスフェート、リン酸塩、ホスフェート誘導体及びスルホネートからなる群から選択される官能基が含まれ得る。例えば、幾つかの実施形態では、反応性鉱物質は、鉱物質コアとして炭酸カルシウムを含み、かつ鉱物質結合基としてカルボン酸塩を含む反応性化合物を含む反応性炭酸塩であり得る。
【0019】
「ポリマー反応性基」は、重合反応、架橋反応、末端封鎖反応又は他の結合形成反応によりポリマーマトリックス中に導入され得る官能基である。例えば、反応性鉱物質の存在下で形成される鉱物質結合型エラストマー性組成物において、ポリマー反応性基は一般的に、上記官能基から、該官能基から誘導される単位へと変換される。従来のポリマー性材料の特性を改変するために使用される従来の表面変性されたフィラーとは異なり、本開示の反応性鉱物質に少なくとも1個のポリマー反応性基が存在することで、ポリマー反応性基が重合過程又は架橋過程に関与することで、ポリマー反応性基がポリマーマトリックスに共有結合された有機基へと変換されるため、反応性鉱物質がポリマーマトリックスへとより強固に結合することが可能となる。幾つかの実施形態では、ポリマー反応性基には、アルケン基、アルキン基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、エーテル基、エステル基、ラクトン基、チオール基、チオエステル基、エポキシド基、アミン基、アミド基、イミン基、イソシアネート基、スルフィド基、スルフェート基、マレイミド基、アクリレート基又はそれらの混合物から選択される官能基が含まれ得る。幾つかの実施形態では、反応性鉱物質は、同じ又は異なる官能基であり得る複数のポリマー反応性基を含み得る。
【0020】
「接続基」は、ポリマーを少なくとも1個の鉱物質結合基へと接続することができる重合反応、架橋反応、末端封鎖反応又は他の結合形成反応によりポリマーマトリックス中に導入され得る有機基及び官能基を含む。例えば、該有機基は、飽和又は不飽和であり得て、2個~30個の炭素原子と、任意にO、N、S及びハロゲンからなる群から選択される少なくとも1個の原子とを含み得ることで、反応性鉱物質から形成される鉱物質結合型エラストマー性組成物において、該有機基及び官能基は、エラストマー性組成物のポリマーマトリックスを鉱物質結合基に接続する。他の実施形態では、該飽和又は不飽和の有機基は、6個~24個の炭素原子、又は8個~20個の炭素原子、又は9個~15個の炭素原子を含み得る。該官能基は、アルケン基、アルキン基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、エーテル基、エステル基、ラクトン基、チオール基、チオエステル基、エポキシド基、アミン基、アミド基、イミン基、イソシアネート基、スルフィド基、スルフェート基、マレイミド基、アクリレート基又はそれらの混合物から選択され得る。幾つかの実施形態では、接続基は、該官能基を含む脂肪族又は芳香族のスペーサー基を含む。
【0021】
「連結基」は、少なくとも1個の鉱物質結合基を少なくとも1個のポリマー反応性基に接続することができる有機基である。例えば、連結基は、2個~30個の炭素原子と、任意にO、N、S及びハロゲンからなる群から選択される少なくとも1個の原子とを含む飽和又は不飽和の有機基を含み得ることで、反応性鉱物質から形成される鉱物質結合型エラストマー性組成物において、該有機基はポリマー反応性基に接続し、該ポリマー反応性基はエラストマー性組成物のポリマーマトリックスを鉱物質結合基に接続する。他の実施形態では、該飽和又は不飽和の有機基は、6個~24個の炭素原子、又は8個~20個の炭素原子、又は9個~15個の炭素原子を含み得る。幾つかの実施形態では、連結基は、エーテル基、エステル基、アミン基、ハロゲン基、アミド基、イミン基、スルフィド基、スルフェート基又はそれらの混合物から選択される官能基を含む脂肪族又は芳香族のスペーサー基を含む。
【0022】
幾つかの実施形態では、接続基又は連結基の有機基は、少なくとも1つの不飽和結合を含む有機基である。例えば、幾つかの実施形態では、連結基は、有機基の末端部に少なくとも1つの不飽和結合を含む有機基である。
【0023】
幾つかの実施形態では、反応性鉱物質は、式(1a)若しくは式(1b):
(R-(L-(R-(L)-X-Z (1a)
(式中、
Zは水素原子、金属イオン又はアンモニウムイオンを表し、
XはCO、PO、PO、SO又はSOからなる群から選択される部を表し、
は、独立して、C1~30アルキル基、分岐状アルキル基、C1~30アルケニル基、分岐状アルケニル基(ここで、アルケニル基又は分岐状アルケニル基は2個以上の不飽和炭素原子を有し得る)、C3~30脂環式基、C6~30芳香族基、又はC3~30ヘテロ芳香族基を表し、ここで、上記基は任意に、O、N及びSからなる群から選択される少なくとも1個の橋架け原子(bridging atom)を含み、
は、独立して、アルケン基、アルキン基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、エステル基、ラクトン基、チオール基、チオエステル基、エポキシ基、アミン基、及びイソシアネート基からなる群から選択される重合可能な官能基を含む有機基を表し、
は、独立して、任意に置換されたC1~30アルキレン基、任意に置換されたC1~30アルケニレン基、任意に置換されたC3~30脂環式基、任意に置換されたC6~30芳香族基、又は任意に置換されたC3~30ヘテロ芳香族基を表し、ここで、上記基は任意に、O、N及びSからなる群から選択される少なくとも1個の橋架け原子を含み、
は、独立して、アルケン基、アルキン基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、エステル基、ラクトン基、チオール基、チオエステル基、エポキシ基、アミン基、及びイソシアネート基からなる群から選択される分岐状又は非分岐状の重合可能な官能基を含む有機基を表し、
bは1~4の整数を表し、
cは0~4の整数を表し、かつ、
dは0~4の整数を表す)、又は、
A-(X-Y-CO)(O-B-CO)OH (1b)
(式中、
Aは末端エチレン性結合と共に1個以上の隣接するカルボニル基を含む部であり、
XはOであり、かつmは1~4であり、又はXはNであり、かつmは1であり、
YはC1~18アルキレン又はC2~18アルケニレンであり、
BはC2~6アルキレンであり、
nは0~5であるが、但し、
Aが上記エチレン性基に隣接する2個のカルボニル基を含む場合に、XはNである)、
のいずれか又はそれらの組み合わせの反応性化合物又はポリマーマトリックス単位に結合された鉱物質コアを含み得る。Bは線状又は分岐状であり得る1個以上のC1~6アルキル基により置換されていてもよい。基(O-B-CO)は1個以上の異なるヒドロキシカルボン酸又はそのラクトンの残基であり得る。Bは5個又は6個の炭素原子を含み得る。適切なヒドロキシカルボン酸又はラクトンの非限定的な例は、5-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン及びアルキル置換されたε-カプロラクトン類、例えば4-メチルε-カプロラクトン、3-メチルε-カプロラクトン、7-メチルε-カプロラクトン、5-メチルε-カプロラクトン、5-tertブチルε-カプロラクトン、4,4,6-トリメチルε-カプロラクトン及び4,6,6-トリメチルε-カプロラクトンである。基(O-B-CO)が2個以上の異なるヒドロキシカルボン酸又はラクトンの残基である場合に、その基はδ-バレロラクトン及びε-カプロラクトンから誘導され得る。(O-B-CO)が2個以上の異なるヒドロキシカルボン酸又はそのラクトンから誘導される場合に、6-ヒドロキシカプロン酸又はδ-カプロラクトンが主成分であり得る。
【0024】
例えば、幾つかの実施形態では、反応性化合物は、β-カルボキシエチルアクリレート、β-カルボキシヘキシルマレイミド、10-カルボキシデシルマレイミド、5-カルボキシペンチルマレイミド、β-アクリロイルオキシプロパン酸又はそれらの混合物から選択される。
【0025】
本開示の反応性鉱物質は、それぞれ1個以上のポリマー反応性基を有する非分岐鎖及び/又は分岐鎖を有する連結基から構成され得る。反応性鉱物質は、様々な鎖長を有する種々の連結基から構成される反応性鉱物質の混合物を含む、様々な鎖長を有する連結基から構成され得る。
【0026】
反応性鉱物質は、炭酸カルシウム等の鉱物質コアと反応性化合物とを化合させることにより製造され得て、その化合は、乾燥形で又は炭酸カルシウム及び反応性化合物の水、有機溶剤若しくはそれらの組み合わせ物中のスラリーとして行われ得る。化合工程の前に、鉱物質コアを湿式粉砕又は乾式粉砕にかけて、鉱物質コアの粒子特質を調整することができる。そのような湿式粉砕若しくは乾式粉砕及び/又は化合工程は、分散剤の存在下又は不存在下に行われ得る。
【0027】
幾つかの実施形態では、反応性鉱物質は、反応性化合物に結合された金属炭酸塩を含む反応性炭酸塩である。例えば、金属炭酸塩は、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ土類金属炭酸塩であり得る。他の実施形態では、金属炭酸塩は、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム又は炭酸バリウムから選択される。更に他の実施形態では、金属炭酸塩は、粒状金属炭酸塩、例えば粉砕炭酸カルシウム(GCC)、沈降炭酸カルシウム(PCC)又はそれらの組み合わせであり得る。
【0028】
本開示において金属炭酸塩として使用される粒状炭酸カルシウムは、天然源から粉砕によって得ることができ(GCC)、又は合成により沈降により調製することができ(PCC)、又は2つの組み合わせ、すなわち天然由来の粉砕材料と合成沈降材料との混合物であってもよい。本開示において反応性炭酸塩として使用されるPCCを粉砕することもできる。
【0029】
本開示において金属炭酸塩として使用されるGCCは、白亜、大理石又は石灰石等の鉱物源を粉砕することにより得ることができ、それに続いて、粒子サイズ分級工程を経ることで、所望の微細度を有する生成物を得ることができる。粒状固体材料は、自生的に、すなわち、固体材料自体の粒子間の摩滅によって、又はそれに代えて、粉砕されるべき炭酸カルシウムとは異なる材料の粒子を含む粒状粉砕媒体の存在下で粉砕することができる。炭酸カルシウムの湿式粉砕は炭酸カルシウムの水性懸濁液の形成を含み、次いで、その水性懸濁液は、任意に適切な分散剤の存在下で粉砕され得る。炭酸カルシウムの湿式粉砕に関する更なる情報については、例えば、欧州特許出願公開第614948号(その内容は、引用することによりその全体が本出願の一部をなす)が参照され得る。
【0030】
本開示において金属炭酸塩として使用されるPCCは、当該技術分野で利用可能な既知の方法のいずれかにより製造することができる。TAPPI Monograph Series No 30, "Paper Coating Pigments"の第34頁~第35頁には、本開示の様々な実施形態で使用するために適したPCCを調製する3つの主要な商業的方法が記載されている。3つの方法全てにおいて、石灰石がまず焼成されて生石灰が生成され、その後に生石灰は水中で消和されて水酸化カルシウム又は石灰乳が得られる。第1の方法では、石灰乳は二酸化炭素ガスで直接的に炭酸飽充される。この方法は、副生成物が形成されず、炭酸カルシウム生成物の特性及び純度の制御が比較的簡単であるという利点を有する。第2の方法では、石灰乳をソーダ灰と接触させることで、複分解によって炭酸カルシウムの沈降物と水酸化ナトリウムの溶液とが生成される。この方法を商業的に魅力あるものにすべきであれば、水酸化ナトリウムを炭酸カルシウムからほぼ完全に分離しなければならない。第3の主たる商業的な方法では、石灰乳をまず塩化アンモニウムと接触させることで、塩化カルシウム溶液とアンモニアガスとが得られる。次いで、塩化カルシウム溶液をソーダ灰と接触させることで、複分解によって沈降炭酸カルシウムと塩化ナトリウムの溶液とが生成される。
【0031】
PCCの作製方法では、非常に純粋な炭酸カルシウム結晶と水とが得られる。使用される具体的な反応過程に応じて、様々な異なる形状及びサイズで結晶が生成され得る。PCC結晶の3つの主要な形態は、アラゴナイト、菱面体晶、及び犬牙状晶であり、それらの全てが、それらの混合物を含めて、本開示の様々な実施形態における使用に適している。
【0032】
反応性炭酸塩等の本開示の反応性鉱物質は、約0.01μm~約2μmの範囲のd10を有する粒状反応性鉱物質の形で存在し得る。例えば、反応性鉱物質は、約0.01μm~約1.5μm又は約0.01μm~約1μm又は約0.01μm~約0.5μm又は約0.1μm~約2μm又は約0.1μm~約1.5μm又は約0.1μm~約1μm又は約0.1μm~約0.5μmの範囲のd10を有し得る。
【0033】
反応性炭酸塩等の本開示の反応性鉱物質は、約0.3μm~約5μmの範囲のd50を有する粒状反応性鉱物質の形で存在し得る。例えば、反応性鉱物質は、約0.4μm~約5μm又は約0.5μm~約5μm又は約1μm~約4.5μm又は約1μm~約4μm又は約1μm~約2μm又は約1.5μm~約4μm又は約2μm~約3.5μm又は約2.5μm~約3μmの範囲のd50を有し得る。他の実施形態では、反応性鉱物質は、約1μm~約2μm、例えば約1μm~約1.75μm、例えば約1μm~約1.5μmの範囲のd50を有し得る。
【0034】
反応性炭酸塩等の本開示の反応性鉱物質は、約1μm~約10μmの範囲のd90を有する粒状反応性鉱物質の形で存在し得る。例えば、反応性鉱物質は、約1μm~約9μm又は約1μm~約8μm又は約1μm~約7μm又は約1μm~約6μmの範囲のd90を有し得る。他の実施形態では、粒状鉱物質は、約2μm~約10μm又は約2μm~約9μm又は約2μm~約8μm又は約2μm~約7μm又は約2μm~約6μmの範囲のd90を有し得る。
【0035】
反応性炭酸塩等の本開示の反応性鉱物質は、約3μm~約15μmの範囲のd98を有する粒状反応性鉱物質の形で存在し得る。例えば、反応性鉱物質は、約3μm~約14μm又は約3μm~約13μm又は約3μm~約12μm又は約3μm~約11μm又は約3μm~約10μm又は約3μm~約9μmの範囲のd98を有し得る。他の実施形態では、反応性鉱物質は、約4μm~約12μm又は約4μm~約11μm又は約4μm~約10μm又は約4μm~約9μmの範囲のd98を有し得る。
【0036】
反応性炭酸塩等の本開示の反応性鉱物質は、約20~約70の範囲のスティープネス係数を有する粒状反応性鉱物質の形で存在し得る。例えば、反応性鉱物質は、約20~約65、又は約20~約60、又は約25~約55、又は約30~約50、又は約35~約45、又は約30~約40の範囲のスティープネス係数を有し得る。
【0037】
反応性炭酸塩等の本開示の反応性鉱物質は、約0.5μm~約2μmの範囲のd50、約4μm~約10μmの範囲のd98及び約0.1μm~約0.6μmの範囲のd10を有する粒状反応性鉱物質の形で存在し得る。反応性鉱物質はまた、例えば約2μm~約6μmの範囲のd90を有し得る。反応性鉱物質はまた、例えば、約20~約50の範囲のスティープネス係数を有し得る。
【0038】
反応性炭酸塩等の本開示の反応性鉱物質は、約0.5μm~約1.5μmの範囲のd50、約4μm~約5μmの範囲のd98及び約0.1μm~約0.4μmの範囲のd10を有する粒状反応性鉱物質の形で存在し得る。反応性鉱物質はまた、例えば約2μm~約3μmの範囲のd90を有し得る。反応性鉱物質はまた、例えば、約40~約50の範囲のスティープネス係数を有し得る。
【0039】
反応性炭酸塩等の本開示の反応性鉱物質は、約1μm~約2μmの範囲のd50、約7.5μm~約9μmの範囲のd98及び約0.3μm~約0.4μmの範囲のd10を有する粒状反応性鉱物質の形で存在し得る。反応性鉱物質はまた、例えば約4.5μm~約5.5μmの範囲のd90を有し得る。反応性鉱物質はまた、例えば、約20~約30の範囲のスティープネス係数を有し得る。
【0040】
反応性炭酸塩等の本開示の反応性鉱物質は、約1μm~約2μmの範囲のd50、約5μm~約7μmの範囲のd98及び約0.4μm~約0.6μmの範囲のd10を有する粒状反応性鉱物質の形で存在し得る。反応性鉱物質はまた、例えば約2.5μm~約4μmの範囲のd90を有し得る。反応性鉱物質はまた、例えば、約45~約55の範囲のスティープネス係数を有し得る。
【0041】
特段の定めがない限り、反応性鉱物質等の粒状材料について本明細書で言及される粒子サイズ特性は、米国ジョージア州ノークロスにあるMicromeritics Instruments Corporation社(電話:+17706623620、ウェブサイト:www.micromeritics.com)から供給されるSedigraph 5100装置(本明細書では、「Micromeritics Sedigraph 5100ユニット」と呼ばれる)を使用して、水性媒体中に完全に分散された状態で粒状フィラー又は粒状材料を沈降させることにより、よく知られた様式で測定されたものである。そのような装置は、サイズ(当該技術分野で「等価球直径(e.s.d)」と呼ばれる)が所与のe.s.d値よりも小さい粒子の累積重量パーセントの測定及びプロットを提供する。平均粒子サイズd50は、粒子の50重量%がそのd50値未満の等価球直径を有する粒子のe.s.dのこのようにして測定された値である。d98、d90及びd10は、粒子のそれぞれ98重量%、90重量%及び10重量%がそのd98値、d90値及びd10値未満の等価球直径を有する粒子のe.s.dのこのようにして測定された値である。スティープネス係数は、(d30/d70×100)として定義される。本明細書で言及される粒子サイズ特性は、被覆を一切有しない粒状鉱物質の粒子サイズ特性に関連する。
【0042】
反応性炭酸塩等の本開示の反応性鉱物質は、約1m/g~約50m/gの範囲の表面積を有する粒状反応性鉱物質の形で存在し得る。例えば、反応性鉱物質は、約2m/g~約45m/g、又は約3m/g~約40m/g、又は約4m/g~約35m/g、又は約5m/g~約30m/gの範囲の表面積を有し得る。他の実施形態では、反応性鉱物質は、約1m/g~約15m/g、又は約1.5m/g~約14.5m/g、又は約2m/g~約14m/g、又は約3m/g~約13m/g、又は約4m/g~約12m/g、又は約5m/g~約11m/g、又は約6m/g~約10m/g、又は約7m/g~約9m/gの範囲の表面積を有し得る。
【0043】
反応性鉱物質等の本明細書で使用される粒状材料の表面積は、上記粒子の表面上に吸着されて、上記表面を完全に覆う単分子層を形成する窒素の量によりBET法に従って測定され得る(BET法、AFNOR規格X11-621及び622又はISO9277に従う測定)。或る特定の実施形態では、比表面積は、ISO9277又はそれと同等の任意の方法に従って決定される。本明細書で言及される表面積特性は、被覆を一切有しない粒状材料の表面積に関連する。
【0044】
幾つかの実施形態では、反応性鉱物質は、以下の条件:(i)炭酸カルシウムが約0.01μm~約2μmの範囲のd10を有する粒子の形で存在すること、(ii)炭酸カルシウムが約0.3μm~約5μmの範囲のd50を有する粒子の形で存在すること、(iii)炭酸カルシウムが約1μm~約10μmの範囲のd90を有する粒子の形で存在すること、(iv)炭酸カルシウムが約3μm~約15μmの範囲のd98を有する粒子の形で存在すること、及び(v)炭酸カルシウムが約20~約70の範囲のスティープネス係数を有する粒子の形で存在することの少なくとも1つを満たす炭酸カルシウムの鉱物質コアを含む反応性炭酸塩である。
【0045】
幾つかの実施形態では、反応性鉱物質は、金属炭酸塩が炭酸カルシウムを含み、かつ反応性化合物が不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸塩である反応性炭酸塩である。例えば、幾つかの実施形態では、反応性鉱物質は、金属炭酸塩が炭酸カルシウムであり、かつ反応性化合物が9-デセン酸である反応性炭酸塩である。
【0046】
上述のように、「コア」という用語は、鉱物質コアが、複数の反応性化合物に結合され得る又は複数の反応性化合物により少なくとも部分的に包囲され得ることを意味する。このように、幾つかの実施形態では、反応性鉱物質は、反応性化合物の層により少なくとも部分的に覆われている金属炭酸塩コアを含み、こうして鉱物質結合基が金属炭酸塩コアの表面に直接的に結合される反応性炭酸塩である。
【0047】
本開示の実施形態はまた、エラストマー性材料と、上記の反応性炭酸塩等の反応性鉱物質と、任意に架橋剤とを含む組成物に関する。
【0048】
本開示の実施形態はまた、エラストマー性組成物を作製する方法であって、モノマー混合物、プレポリマー又はその両方を、反応性鉱物質及び任意にカップリング剤の存在下で反応させて、鉱物質コアが鉱物質結合基を介してポリマーマトリックスに結合されている鉱物質結合型エラストマー性組成物を得る工程を含む、方法を含む。
【0049】
例えば、幾つかの実施形態は、エラストマー性組成物を作製する方法であって、モノマー混合物、プレポリマー又はその両方を、反応性炭酸塩及び任意にカップリング剤の存在下で反応させることで、炭酸カルシウム結合型エラストマー性組成物が得られ、上記反応性炭酸塩は、連結基により共に接続された鉱物質結合基とポリマー反応性基とを含む反応性化合物に結合された金属炭酸塩を含み、上記鉱物質結合型エラストマー性組成物は、金属炭酸塩が鉱物質結合基を介して結合されたポリマーマトリックスを含む、方法に関する。
【0050】
「ポリマーマトリックス」は、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、フルオロカーボンゴム、クロロプロペンゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、ポリアクリレートゴム、エチレンアクリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエステルウレタンゴム、ポリエーテルウレタンゴム、ポリエステルウレタン/ポリエーテルウレタンゴム、天然ゴム又はそれらの混合物等のエラストマー性材料から選択され得る。
【0051】
幾つかの実施形態では、エラストマー性組成物を作製する方法は、反応性炭酸塩と、ポリアクリレートポリマー、エチレン-アクリレートポリマー、ポリエステルウレタン、ブロモイソブチレンイソプレンポリマー、ポリブタジエン、クロロイソブチレンイソプレンポリマー、ポリクロロプレン、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロロヒドリンポリマー、エチレンプロピレンポリマー、エチレンプロピレンジエンポリマー、ポリエーテルウレタン、フルオロカーボンポリマー、フルオロシリコーンポリマー、水素化ニトリルブタジエンポリマー、ポリイソプレン、イソブチレンイソプレンブチルポリマー、アクリロニトリルブタジエンポリマー、ポリウレタン、スチレン-ブタジエンポリマー、スチレンエチレンブチレンスチレンコポリマー、ポリシロキサン、ビニルメチルシリコーンポリマー、アクリロニトリルブタジエンカルボキシポリマー、スチレンブタジエンカルボキシポリマー又はそれらの混合物から選択される少なくとも1つのプレポリマーとを含む混合物を反応させることを含む。
【0052】
上述のように、鉱物質結合型エラストマー性組成物を作製する方法は、少なくとも1つのカップリング剤の存在を含み得る。適切なカップリング剤には、加硫剤、架橋剤、硬化剤、促進剤及びそれらの混合物が含まれる。そのようなカップリング剤を使用することで、個々のポリマー鎖間及びポリマー鎖と反応性化合物のポリマー反応性基との間で架橋(橋架け)を形成することにより、エラストマー性材料又はプレポリマーが変性され得る。本開示の方法に適したカップリング剤の例には、硫黄系の加硫剤、過酸化物系のカップリング剤、フェノール系のカップリング剤、金属酸化物系及び非金属酸化物系のカップリング剤、シラン系のカップリング剤並びにウレタン系のカップリング剤が含まれる。
【0053】
硫黄系のカップリング剤の例には、粉末硫黄、沈降硫黄、高分散性硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、ジモルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド等が含まれる。過酸化物系のカップリング剤の例には、過酸化ベンゾイル、t-ブチルヒドロペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジ(ペルオキシルベンゾエート)等が含まれる。フェノール樹脂系のカップリング剤の例には、臭素化アルキルフェノール樹脂並びにアルキルフェノール樹脂と一緒に塩化スズ及びクロロプレン等のハロゲン供与体を含む混合架橋系が含まれる。酸化物系のカップリング剤の例には、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、一酸化鉛、p-キノンジオキシム、p-ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロ-p-ベンゾキノン、ポリ-p-ジニトロソベンゼン、メチレンジアニリン等が含まれる。
【0054】
促進剤の例には、アルデヒド-アンモニア塩基、グアニジン塩基、チアゾール塩基、スルフェンアミド塩基、チウラム塩基、ジチオ酸塩塩基、チオ尿素塩基等が含まれる。具体的な例には、アルデヒドアンモニア加硫促進剤、例えばヘキサメチレンテトラミン等、グアニジン加硫促進剤、例えばジフェニルグアニジン等、チアゾール加硫促進剤、例えばジベンゾチアジルジスルフィド(DM)、2-メルカプトベンゾチアゾール及びそのZn塩、シクロヘキシルアミン塩等、スルフェンアミド加硫促進剤、例えばシクロヘキシルベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-オキシジエチレンベンゾチアジル-2-スルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2-(チモールポリニルジチオ)ベンゾチアゾール等、チウラム加硫促進剤、例えばテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等、ジチオン酸塩加硫促進剤、例えばZn-ジメチルジチオカルバメート、Zn-ジエチルジチオカルバメート、Zn-ジ-n-ブチルジチオカルバメート、Zn-エチルフェニルジチオカルバメート、Te-ジエチルジチオカルバメート、Cu-ジメチルジチオカルバメート、Fe-ジメチルジチオカルバメート、ピペコリンピペコリルジチオカルバメート等、並びにチオ尿素加硫促進剤、例えばエチレンチオ尿素、ジエチルチオ尿素等が含まれる。
【0055】
幾つかの実施形態では、鉱物質結合型エラストマー性組成物を作製する方法は、加硫可能なエラストマーを反応性炭酸塩及び加硫剤の存在下で反応させて、架橋された鉱物質結合型エラストマー性組成物を得ることを含む。
【0056】
幾つかの実施形態では、鉱物質結合型エラストマー性組成物を作製する方法は、水、有機溶剤、分散剤、無機フィラー、有機フィラー、色素、酸化防止剤、ワックス、ラジカル開始剤、耐衝撃性改良剤、それらの混合物から選択される添加剤の存在下で行われ得る。幾つかの実施形態では、該方法の反応工程は、シラン又はシラノールの存在下では行われない。
【0057】
鉱物質結合型エラストマー性組成物を作製する方法は、モノマー混合物、プレポリマー又はその両方の反応が、非反応性鉱物質の存在下で行われるように実施され得る。例えば、その反応は、非反応性炭酸カルシウム、タルク、珪藻土、粘土及びそれらの組み合わせから選択される非反応性鉱物質の存在下で行われ得る。
【0058】
幾つかの実施形態では、鉱物質結合型エラストマー性組成物を作製する方法は、エラストマー性組成物中に結合された金属炭酸塩の割合が、ポリマーマトリックス100部当たり、約0.1部~約80部、又は約1部~約50部、又は約5部~約30部の範囲であるように実施され得る。
【0059】
本開示はまた、上記方法により得られる鉱物質結合型エラストマー性組成物及び該鉱物質結合型エラストマー性組成物を含む物品を含む。例えば、本開示の実施形態は、鉱物質結合型エラストマー性組成物から形成されるゴム製衣料品及びゴム手袋等の保護用物品を含む。そのような物品は、鉱物質充填されたエラストマー性組成物から作製された同様の物品に対して、より優れた材料及び強度並びにより少ないキャビテーション等の改善された特性を示すことが予想される。実施形態はまた、他の種類(非エラストマー性)のポリマー、例えばポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエチレンイミン、ポリオキシメチレン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリ乳酸、ポリシロキサン並びにそれらのコポリマー及びブレンド、例えばアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー等に基づく鉱物質結合型ポリマー組成物から形成される物品を含む。
【0060】
本開示の実施形態はまた、(1)弾性ポリマーと、(2)少なくとも1つの連結基及び鉱物質結合基を含むポリマーマトリックス単位と、(3)鉱物質結合基を介してポリマーマトリックス単位に結合された鉱物質コアの内包物とを含み、上記弾性ポリマーが上記連結基を介して上記ポリマーマトリックス単位に共有結合されている鉱物質結合型エラストマー性材料を含む。
【0061】
「弾性ポリマー」は、エラストマー性組成物を作製する方法に関して上記のモノマー混合物、プレポリマー又はその両方を反応させることにより形成される弾性ポリマーであり得る。例えば、弾性ポリマーは、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、フルオロカーボンゴム、クロロプロペンゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、ポリアクリレートゴム、エチレンアクリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエステルウレタンゴム、ポリエーテルウレタンゴム、ポリエステルウレタン/ポリエーテルウレタンゴム、天然ゴム、又はそれらの混合物から選択され得る。
【0062】
「ポリマーマトリックス単位」は、一般に、反応性鉱物質中に上記のポリマー反応性基が存在するため、モノマー混合物、プレポリマー又はその両方の反応の間に形成される。反応性鉱物質の連結基及び鉱物質結合基がポリマーマトリックス単位の形成の間に殆ど反応しないことから、ポリマーマトリックス単位は、依然として連結基及び鉱物質結合基を含む。ポリマーマトリックス単位中に鉱物質結合基が存在することで、従来の非反応性鉱物質フィラーを使用して達成することができないように、弾性ポリマーが鉱物質コアと結合することが可能となる。本開示の鉱物質結合型エラストマー材料中の鉱物質コア材料(例えば、炭酸カルシウム)の強固な結合により、改善された引張強さ、改善された破断伸び、改善されたヤング率、改善された靭性及びより少ないキャビテーション等の改善された特性が付与される。
【0063】
幾つかの実施形態では、ポリマーマトリックス単位は、複数の連結基を含み得る。
【0064】
ポリマーマトリックス単位に含まれる「連結基」は、より詳細に先に記載される連結基を含む。例えば、連結基には、6個~24個の炭素原子と、任意にO、N、S及びハロゲンからなる群から選択される少なくとも1個の原子とを含む飽和又は不飽和の有機基が含まれ得る。本開示の連結基において、該有機基は、上記のように弾性ポリマーを鉱物質結合基に接続する。
【0065】
本開示の鉱物質結合型エラストマー性材料において、「鉱物質結合基」及び「鉱物質コア」は、反応性鉱物質に関して先に記載されるように定義され得る。例えば、鉱物質結合基には、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸誘導体、無水物、無水物誘導体、ホスフェート、リン酸塩、ホスフェート誘導体及びスルホネートからなる群から選択される官能基が含まれ得て、鉱物質コアは、金属炭酸塩、金属水酸化物、金属リン酸塩、金属硫酸塩及び他の金属塩又はそれらの混合物であり得る。
【0066】
幾つかの実施形態では、鉱物質コアは、アルミニウム塩、バリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩及び他の金属塩又はそれらの混合物から選択され得る。鉱物質コアは、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸バリウム、リン酸バリウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム及び他の金属塩から選択される少なくとも1つの金属塩を含み得る。他の実施形態では、鉱物質コアは、粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、及びそれらの組み合わせから選択される金属炭酸塩を含み得る。
【0067】
例えば、幾つかの実施形態では、鉱物質結合型エラストマー性材料は、鉱物質結合基としてカルボン酸又はその塩を含み得て、鉱物質コアとしてアルカリ金属炭酸塩又はアルカリ土類金属炭酸塩を含み得る。
【0068】
鉱物質結合型エラストマー材料に含まれる「内包物」は、弾性ポリマーの有機部と区別される鉱物質コアの実体又は粒子の形で存在する。先に説明されたように、金属炭酸塩等の鉱物質コアの内包物は、鉱物質結合基を介してポリマーマトリックス単位に結合される。内包物が弾性ポリマーの有機部と明らかに区別される限り、内包物は任意の形状又はサイズを有してもよい。
【0069】
幾つかの実施形態では、前記内包物は、以下の条件:(i)前記内包物が約0.01μm~約2μmの範囲のd10を有する金属炭酸塩の粒子を含むこと、(ii)前記内包物が約0.3μm~約5μmの範囲のd50を有する金属炭酸塩の粒子を含むこと、(iii)前記内包物が約1μm~約10μmの範囲のd90を有する金属炭酸塩の粒子を含むこと、(iv)前記内包物が約3μm~約15μmの範囲のd98を有する金属炭酸塩の粒子を含むこと、及び(v)前記内包物が約20~約70の範囲のスティープネス係数を有する金属炭酸塩の粒子を含むことの少なくとも1つを満たす。
【0070】
幾つかの実施形態では、0.1μmより小さい内包物の割合は、鉱物質結合型エラストマー性材料の全体積に対して、約5体積%以下である。他の実施形態では、0.1μmより小さい内包物の割合は、鉱物質結合型エラストマー材料の全体積に対して、約3体積%以下、又は2体積%以下、又は1体積%である。
【0071】
本開示の鉱物質結合型エラストマー材料はまた、例えば、水、有機溶剤、分散剤、無機フィラー、有機フィラー、色素、酸化防止剤、ワックス、耐衝撃性改良剤及びそれらの混合物のような追加の成分を含み得る。
【0072】
本開示の鉱物質結合型エラストマー材料に含まれていてもよい粒状フィラーには、例えば、アルカリ土類金属炭酸塩(例えば、ドロマイト、すなわち、CaMg(CO)、金属硫酸塩(例えば、石膏)、金属ケイ酸塩、金属酸化物(例えば、チタニア、酸化鉄、クロミア、三酸化アンチモン又はシリカ)、金属水酸化物(例えば、アルミナ三水和物)、ウォラストナイト、ボーキサイト、タルク(例えば、フレンチチョーク(French chalk))、マイカ、酸化亜鉛(例えば、ジンクホワイト又はチャイニーズホワイト)、二酸化チタン(例えば、アナターゼ又はルチル)、硫化亜鉛、炭酸カルシウム(例えば、沈降炭酸カルシウム(PCC)、例えば、石灰石、大理石及び/又は白亜から得られる粉砕炭酸カルシウム(GCC)、又は表面改質炭酸カルシウム)、硫酸バリウム(例えば、バライト、ブランフィクス又はプロセスホワイト(process white))、アルミナ水和物(例えば、アルミナ三水和物、軽質アルミナ水和物、レーキホワイト又はトランスペアレントホワイト)、粘土(例えば、カオリン、焼成カオリン、陶土又はベントナイト)、シリカ系又はケイ酸塩系の鉱物(例えば、珪藻土)、ゼオライト又はそれらのブレンドが含まれる。
【0073】
本開示はまた、鉱物質結合型エラストマー性組成物を含む物品を含む。例えば、本開示の実施形態は、鉱物質結合型エラストマー性組成物から形成されるゴム製衣料品及びゴム手袋等の保護用物品を含む。そのような物品は、鉱物質充填されたエラストマー性組成物から作製された同様の物品に対して、高められた靭性及び強度等の改善された特性と共により少ないキャビテーションを示すことが予想される。例えば、幾つかの実施形態は、キャビテーションを受けにくい鉱物質結合型エラストマー組成物を含む保護手袋に関する。実施形態はまた、他の種類(非エラストマー性)のポリマー、幾つか例を挙げると、例えばポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエチレンイミン、ポリオキシメチレン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリ乳酸、ポリシロキサン並びにそれらのコポリマー及びブレンド、例えばアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマーに基づく鉱物質結合型ポリマー組成物から形成される物品を含む。
【0074】
幾つかの実施形態は、エラストマー性材料におけるキャビテーションを減らす方法であって、反応性鉱物質の存在下で重合過程又は架橋過程を実施して、鉱物質結合型エラストマー性材料を得ることを含み、(1)上記反応性鉱物質は、連結基により共に接続された鉱物質結合基とポリマー反応性基とを含む反応性化合物に結合された鉱物質コアを含み、(2)以下の要素、すなわち(a)重合過程において存在する反応性鉱物質の割合、(b)反応性鉱物質における鉱物質コアの粒子サイズ、(c)鉱物質結合基の構造、(e)ポリマー反応性基の構造、(e)連結基の構造、(f)反応性鉱物質に含まれる鉱物質結合基の数、及び(g)反応性鉱物質に含まれるポリマー反応性基の数の少なくとも1つを、鉱物質結合型エラストマー性材料が、反応性鉱物質を用いずに鉱物質コアの存在下で重合過程又は架橋過程を実施することにより得られたエラストマーと比較してキャビテーションを殆ど起こさないように制御する、方法に関する。
【0075】
キャビテーションを減らす方法における「鉱物質コア」、「鉱物質結合基」、「ポリマー反応性基」、「接続基」及び「連結基」は、上記と同じ成分に対応する。例えば、幾つかの実施形態では、反応性鉱物質は、反応性化合物に結合された金属炭酸塩を含む反応性炭酸塩である。
【0076】
先に説明されたように、キャビテーションは、ポリマーの非晶質相内部に空隙又は空洞の形の内包物が形成される現象である。キャビテーションは、しばしば、半結晶性ポリマー性材料が変形(例えば、延伸)する間に起こる。キャビテーションによる不所望な内包物の形成は、エラストマー性材料において特に問題があり、しばしば、使用の間に段階的な破壊又は更には破局的な破壊を引き起こす。
【0077】
本開示の様々な実施形態によれば、反応性鉱物質の存在下でエラストマー性組成物を調製することにより、キャビテーションは軽減(低減又は更には排除)され得る。理論に縛られるものではないが、本開示の鉱物質結合型エラストマー性材料は、従来の鉱物質充填されたエラストマー材料に対して、キャビテーションを減らすと考えられる。それというのも、本明細書に記載されるエラストマー性組成物中の鉱物質コアは、それ自体ポリマーマトリックスに共有結合されている鉱物質結合基を介してポリマーマトリックスへとより強固に結合されるからである。
【0078】
ポリマーマトリックスに結合された鉱物質コアの剛性は、接続基及び鉱物質結合基の特性により直接的に影響される又は鉱物質結合基、ポリマー反応性基及び連結基の特性により直接的に影響される反応性成分に結合されるので、鉱物質結合基の構造、ポリマー反応性基の構造、連結基の構造、接続基の構造、反応性鉱物質に含まれる鉱物質結合基の数、及び反応性鉱物質に含まれるポリマー反応性基の数並びにそれらの組み合わせ等の要素を制御することにより鉱物質結合型エラストマー性材料のキャビテーション特質を調節することが可能である。さらに、鉱物質結合型エラストマー性材料のキャビテーション特質は、重合過程に存在する反応性鉱物質の割合、反応性鉱物質中の鉱物質コアの粒子サイズ及びそれらの組み合わせを制御することにより更に調節され得る。
【0079】
幾つかの実施形態では、キャビテーションを減らす方法は、鉱物質結合基としてカルボン酸塩を含み、かつポリマー反応性基としてアルケン基又はアルキン基を含む反応性化合物に結合された炭酸カルシウムを含む反応性炭酸塩の存在下で架橋過程を実施することを含む。他の実施形態では、鉱物質結合型エラストマー性材料は、反応性炭酸塩及び加硫剤等のカップリング剤の存在下でエラストマーを架橋させることにより形成される。適切なカップリング剤及び加硫剤は、上記の通りである。
【0080】
或る特定の要素の組み合わせを制御することで、エラストマー性材料におけるキャビテーションをより効果的に減らすことができる。例えば、幾つかの実施形態では、連結基又は接続基における炭素原子の数、連結基又は接続基に含まれる有機分岐基の数又はサイズ、反応性炭酸塩に含まれるポリマー反応性基の数、及びそれらの組み合わせを制御することにより、鉱物質結合型エラストマー性材料で起こるキャビテーションは低減される。
【0081】
実施形態
実施形態(1)は、エラストマー性組成物を作製する方法であって、モノマー混合物、プレポリマー又はその両方を、反応性炭酸塩及び任意にカップリング剤の存在下で反応させて、鉱物質結合型エラストマー性組成物を得ることを含み、上記反応性炭酸塩は、連結基により共に接続された鉱物質結合基とポリマー反応性基とを含む反応性化合物に結合された金属炭酸塩を含み、上記鉱物質結合型エラストマー性組成物は、上記金属炭酸塩が上記鉱物質結合基を介して結合されたポリマーマトリックスを含む、方法に関する。
【0082】
実施形態(2)は、前記金属炭酸塩が、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ土類金属炭酸塩である、実施形態(1)の方法に関する。
【0083】
実施形態(3)は、前記金属炭酸塩が、粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態(1)及び(2)の方法に関する。
【0084】
実施形態(4)は、前記鉱物質結合基が、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸誘導体、無水物、無水物誘導体、ホスフェート、リン酸塩、ホスフェート誘導体、及びスルホネートからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含む、実施形態(1)~(3)の方法に関する。
【0085】
実施形態(5)は、前記ポリマー反応性基が、アルケン基、アルキン基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、エステル基、ラクトン基、チオール基、チオエステル基、エポキシド基、アミン基、イソシアネート基、マレイミド基、アクリレート基、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1個の重合可能な官能基を含む、実施形態(1)~(4)の方法に関する。
【0086】
実施形態(6)は、前記連結基が、6個~24個の炭素原子と、任意にO、N、S及びハロゲンからなる群から選択される少なくとも1個の原子とを含む飽和又は不飽和の有機基を含み、前記有機基が、前記ポリマーマトリックスを前記鉱物質結合基へと接続する、実施形態(1)~(5)の方法に関する。
【0087】
実施形態(7)は、前記反応性化合物が、式(1a)又は式(1b):
(1a):(R-(L-(R-(L)-X-Z
(式中、
Zは水素原子、金属イオン又はアンモニウムイオンを表し、
XはCO、PO、PO、SO又はSOからなる群から選択される部を表し、
は、独立して、C1~30アルキル基、分岐状アルキル基、C1~30アルケニル基、分岐状アルケニル基、C3~30脂環式基、C6~30芳香族基、又はC3~30ヘテロ芳香族基を表し、ここで、前記基は任意に、O、N及びSからなる群から選択される少なくとも1個の橋架け原子を含み、
は、独立して、アルケン基、アルキン基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、エステル基、ラクトン基、チオール基、チオエステル基、エポキシ基、アミン基、及びイソシアネート基からなる群から選択される重合可能な官能基を含む有機基を表し、
は、独立して、任意に置換されたC1~30アルキレン基、任意に置換されたC1~30アルケニレン基、任意に置換されたC3~30脂環式基、任意に置換されたC6~30芳香族基、又は任意に置換されたC3~30ヘテロ芳香族基を表し、ここで、前記基は任意に、O、N及びSからなる群から選択される少なくとも1個の橋架け原子を含み、
は、独立して、アルケン基、アルキン基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、エステル基、ラクトン基、チオール基、チオエステル基、エポキシ基、アミン基、及びイソシアネート基からなる群から選択される分岐状又は非分岐状の重合可能な官能基を含む有機基を表し、
bは1~4の整数を表し、
cは0~4の整数を表し、かつ、
dは0~4の整数を表す)、又は、
(1b)A-(X-Y-CO)(O-B-CO)OH
(式中、
Aは末端エチレン性結合と共に1個以上の隣接するカルボニル基を含む部であり、
XはOであり、かつmは1~4であり、又はXはNであり、かつmは1であり、
YはC1~18アルキレン又はC2~18アルケニレンであり、
BはC2~6アルキレンであり、
nは0~5であるが、但し、
Aが前記エチレン性基に隣接する2個のカルボニル基を含む場合に、XはNである)、
の化合物である、実施形態(1)~(6)の方法に関する。
【0088】
実施形態(8)は、前記金属炭酸塩が、炭酸カルシウムを含み、かつ前記反応性化合物が、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸塩である、実施形態(1)~(7)の方法に関する。
【0089】
実施形態(9)は、前記金属炭酸塩が、炭酸カルシウムであり、かつ前記反応性化合物が、9-デセン酸である、実施形態(1)~(8)の方法に関する。
【0090】
実施形態(10)は、前記反応性炭酸塩が、前記反応性化合物の層により少なくとも部分的に覆われている金属炭酸塩コアを含み、こうして前記鉱物質結合基が、前記金属炭酸塩コアの表面に直接的に結合される、実施形態(1)~(9)の方法に関する。
【0091】
実施形態(11)は、前記ポリマーマトリックスが、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、フルオロカーボンゴム、クロロプロペンゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、ポリアクリレートゴム、エチレンアクリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエステルウレタンゴム、ポリエーテルウレタンゴム、ポリエステルウレタン/ポリエーテルウレタンゴム及び天然ゴムからなる群から選択される、実施形態(1)~(10)の方法に関する。
【0092】
実施形態(12)は、反応性炭酸塩と、ポリアクリレートポリマー、エチレン-アクリレートポリマー、ポリエステルウレタン、ブロモイソブチレンイソプレンポリマー、ポリブタジエン、クロロイソブチレンイソプレンポリマー、ポリクロロプレン、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロロヒドリンポリマー、エチレンプロピレンポリマー、エチレンプロピレンジエンポリマー、ポリエーテルウレタン、フルオロカーボンポリマー、フルオロシリコーンポリマー、水素化ニトリルブタジエンポリマー、ポリイソプレン、イソブチレンイソプレンブチルポリマー、アクリロニトリルブタジエンポリマー、ポリウレタン、スチレン-ブタジエンポリマー、スチレンエチレンブチレンスチレンコポリマー、ポリシロキサン、ビニルメチルシリコーンポリマー、アクリロニトリルブタジエンカルボキシポリマー及びスチレンブタジエンカルボキシポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのプレポリマーとを含む混合物を反応させることを含む、実施形態(1)~(11)の方法に関する。
【0093】
実施形態(13)は、前記反応が、水、有機溶剤、分散剤、無機フィラー、有機フィラー、色素、酸化防止剤、ワックス、ラジカル開始剤、カップリング剤、及び耐衝撃性改良剤からなる群から選択される少なくとも1つの存在下で行われる、実施形態(1)~(12)の方法に関する。
【0094】
実施形態(14)は、加硫可能なエラストマーを反応性炭酸塩及び加硫剤の存在下で反応させて、架橋された鉱物質結合型エラストマー性組成物を得ることを含む、実施形態(1)~(13)の方法に関する。
【0095】
実施形態(15)は、前記反応が、シラン又はシラノールの存在下で行われない、実施形態(1)~(14)の方法に関する。
【0096】
実施形態(16)は、モノマー混合物、プレポリマー又はその両方の反応を、非反応性炭酸カルシウム、タルク、珪藻土、粘土及びそれらの組み合わせからなる群から選択される非反応性鉱物質の存在下で行う、実施形態(1)~(15)の方法に関する。
【0097】
実施形態(17)は、前記エラストマー性組成物中に結合された金属炭酸塩の割合が、ポリマーマトリックス100部当たり約0.1部~約80部、又は約1部~約50部、又は約5部~約30部の範囲である、実施形態(1)~(16)の方法に関する。
【0098】
実施形態(18)は、実施形態(1)~(17)の方法により得られる鉱物質結合型エラストマー性組成物に関する。
【0099】
実施形態(19)は、実施形態(1)~(17)による方法により得られる鉱物質結合型エラストマー性組成物を含む、物品に関する。
【0100】
実施形態(20)は、鉱物質結合型エラストマー性材料であって、
弾性ポリマーと、
少なくとも1個の接続基及び鉱物質結合基を含むポリマーマトリックス単位と、
前記鉱物質結合基を介して前記ポリマーマトリックス単位に結合された金属炭酸塩の内包物と、
を含み、前記弾性ポリマーが前記接続基を介して前記ポリマーマトリックスに共有結合されている、鉱物質結合型エラストマー性材料に関する。
【0101】
実施形態(21)は、前記弾性ポリマーが、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、フルオロカーボンゴム、クロロプロペンゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、ポリアクリレートゴム、エチレンアクリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエステルウレタンゴム、ポリエーテルウレタンゴム、ポリエステルウレタン/ポリエーテルウレタンゴム、及び天然ゴムからなる群から選択される、実施形態(20)の鉱物質結合型エラストマー性材料に関する。
【0102】
実施形態(22)は、前記接続基が、6個~24個の炭素原子と、任意にO、N、S及びハロゲンからなる群から選択される少なくとも1個の原子とを含む飽和又は不飽和の有機基を含み、
前記有機基は、前記弾性ポリマーを前記鉱物質結合基へと接続する、実施形態(21)及び(22)の鉱物質結合型エラストマー性材料に関する。
【0103】
実施形態(23)は、前記マトリックス単位が、式(1a)又は式(1b):
(1a):(R-(L-(R-(L)-X-Z
(式中、
Zは水素原子、金属イオン又はアンモニウムイオンを表し、
XはCO、PO、PO、SO又はSOからなる群から選択される部を表し、
は、独立して、C1~30アルキル基、分岐状アルキル基、C1~30アルケニル基、分岐状アルケニル基、C3~30脂環式基、C6~30芳香族基、又はC3~30ヘテロ芳香族基を表し、ここで、前記基は任意に、O、N及びSからなる群から選択される少なくとも1個の橋架け原子を含み、
は、独立して、アルケン基、アルキン基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、エステル基、ラクトン基、チオール基、チオエステル基、エポキシ基、アミン基、及びイソシアネート基からなる群から選択される重合可能な官能基を含む有機基を表し、
は、独立して、任意に置換されたC1~30アルキレン基、任意に置換されたC1~30アルケニレン基、任意に置換されたC3~30脂環式基、任意に置換されたC6~30芳香族基、又は任意に置換されたC3~30ヘテロ芳香族基を表し、ここで、前記基は任意に、O、N及びSからなる群から選択される少なくとも1個の橋架け原子を含み、
は、独立して、アルケン基、アルキン基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、エステル基、ラクトン基、チオール基、チオエステル基、エポキシ基、アミン基、及びイソシアネート基からなる群から選択される分岐状又は非分岐状の重合可能な官能基を含む有機基を表し、
bは1~4の整数を表し、
cは0~4の整数を表し、かつ、
dは0~4の整数を表す)、又は、
(1b)A-(X-Y-CO)(O-B-CO)OH
(式中、
Aは末端エチレン性結合と共に1個以上の隣接するカルボニル基を含む部であり、
XはOであり、かつmは1~4であり、又はXはNであり、かつmは1であり、
YはC1~18アルキレン又はC2~18アルケニレンであり、
BはC2~6アルキレンであり、
nは0~5であるが、但し、
Aが前記エチレン性基に隣接する2個のカルボニル基を含む場合に、XはNである)、
の基を含む、実施形態(20)~(22)の鉱物質結合型エラストマー性材料に関する。
【0104】
実施形態(24)は、前記鉱物質結合基が、カルボン酸又はその塩を含む、実施形態(20)~(23)の鉱物質結合型エラストマー性材料に関する。
【0105】
実施形態(25)は、前記金属炭酸塩が、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ土類金属炭酸塩である、実施形態(20)~(24)の鉱物質強化型エラストマー性材料に関する。
【0106】
実施形態(26)は、前記金属炭酸塩が、炭酸カルシウムであり、かつ前記鉱物質結合基が、カルボン酸塩である、実施形態(20)~(25)の鉱物質結合型エラストマー性材料に関する。
【0107】
実施形態(27)は、前記金属炭酸塩の内包物が、以下の条件:
(i)前記内包物が約0.01μm~約2μmの範囲のd10を有する金属炭酸塩の粒子を含むこと、
(ii)前記内包物が約0.3μm~約5μmの範囲のd50を有する金属炭酸塩の粒子を含むこと、
(iii)前記内包物が約1μm~約10μmの範囲のd90を有する金属炭酸塩の粒子を含むこと、
(iv)前記内包物が約3μm~約15μmの範囲のd98を有する金属炭酸塩の粒子を含むこと、及び、
(v)前記内包物が約20~約70の範囲のスティープネス係数を有する金属炭酸塩の粒子を含むこと、
の少なくとも1つを満たす、実施形態(20)~(26)の鉱物質結合型エラストマー性材料に関する。
【0108】
実施形態(28)は、0.1μmより小さい内包物の割合が、鉱物質結合型エラストマー性材料の全体積に対して、約5体積%以下である、実施形態(20)~(27)の鉱物質結合型エラストマー性材料に関する。
【0109】
実施形態(29)は、水、有機溶剤、分散剤、無機フィラー、有機フィラー、色素、酸化防止剤、ワックス、及び耐衝撃性改良剤からなる群から選択される少なくとも1つを更に含む、実施形態(20)~(28)の鉱物質結合型エラストマー性材料に関する。
【0110】
実施形態(30)は、前記ポリマーマトリックス単位が、複数の連結基を含む、実施形態(20)~(29)の鉱物質結合型エラストマー性材料に関する。
【0111】
実施形態(31)は、実施形態(20)~(30)による鉱物質結合型エラストマー性材料を含む、物品に関する。
【0112】
実施形態(32)は、キャビテーションを受けにくい弾性材料として実施形態(20)~(30)による鉱物質結合型エラストマー性材料を含む、保護手袋に関する。
【0113】
実施形態(33)は、エラストマー性材料におけるキャビテーションを減らす方法であって、反応性炭酸塩の存在下で重合過程又は架橋過程を実施して、鉱物質結合型エラストマー性材料を得ることを含み、
前記反応性炭酸塩は、連結基により共に接続された鉱物質結合基とポリマー反応性基とを含む反応性化合物に結合された金属炭酸塩を含み、
以下の要素、すなわち、
(a)前記重合過程において存在する前記反応性炭酸塩の割合、
(b)前記反応性炭酸塩における前記金属炭酸塩の粒子サイズ、
(c)前記鉱物質結合基の構造、
(d)前記ポリマー反応性基の構造、
(e)前記連結基の構造、
(f)前記反応性炭酸塩に含まれる鉱物質結合基の数、及び、
(g)前記反応性炭酸塩に含まれるポリマー反応性基の数、
の少なくとも1つを、前記鉱物質結合型エラストマー性材料が、前記反応性炭酸塩を用いずに前記金属炭酸塩の存在下で前記重合過程又は架橋過程を実施することにより得られたエラストマーと比較してキャビテーションを殆ど起こさないように制御する、方法に関する。
【0114】
実施形態(34)は、前記鉱物質結合基としてカルボン酸塩を含み、かつ前記ポリマー反応性基としてアルケン基又はアルキン基を含む反応性化合物に結合された炭酸カルシウムを含む反応性炭酸塩の存在下で架橋過程を実施することを含む、実施形態(33)の方法に関する。
【0115】
実施形態(35)は、前記鉱物質結合型エラストマー性材料が、前記反応性炭酸塩及び加硫剤の存在下でエラストマーを架橋させることにより形成される、実施形態(33)及び(34)の方法に関する。
【0116】
実施形態(36)は、前記鉱物質結合型エラストマー性材料で起こるキャビテーションが、以下の要素:
(e1)前記連結基における炭素原子の数、
(e2)前記連結基に含まれる有機分岐基の数又はサイズ、及び、
(g)前記反応性炭酸塩に含まれるポリマー反応性基の数、
の少なくとも1つを制御することにより低減される、実施形態(33)~(35)の方法に関する。
【0117】
実施形態(37)は、反応性化合物に結合された金属炭酸塩を含む反応性炭酸塩であって、前記反応性化合物は、連結基により共に接続された鉱物質結合基とポリマー反応性基とを含む、反応性炭酸塩に関する。
【0118】
実施形態(38)は、前記金属炭酸塩が、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ土類金属炭酸塩であり、
前記鉱物質結合基が、カルボン酸塩であり、
前記ポリマー反応性基が、アルケン基又はアルキン基であり、かつ、
前記連結基が、6個~24個の炭素原子を含む有機基である、実施形態(37)の反応性炭酸塩に関する。
【0119】
実施形態(39)は、前記金属炭酸塩が、炭酸カルシウムであり、かつ、
前記反応性化合物が、9-デセン酸である、実施形態(37)及び(38)の反応性炭酸塩に関する。
【0120】
実施形態(40)は、前記連結基が、少なくとも1つの不飽和結合を含む有機基である、実施形態(37)~(39)の反応性炭酸塩に関する。
【0121】
実施形態(41)は、前記連結基が、前記有機基の末端に少なくとも1つの不飽和結合を含む有機基である、実施形態(37)~(40)の反応性炭酸塩に関する。
【0122】
実施形態(42)は、エラストマー性材料と、
実施形態(37)~(41)の反応性炭酸塩と、
任意に架橋剤と、
を含む、組成物に関する。
【0123】
本明細書に開示される実施形態に対する様々な変更は容易に明らかになるであろう。そして、本明細書で定義された一般原則を、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の実施形態及び用途に適用することができる。したがって、本開示は、示される実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原則及び特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。この点に関して、本開示内の或る特定の実施形態は、広く考慮される本開示の全ての利点を示さない場合がある。