(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】流速センサ
(51)【国際特許分類】
G01P 5/12 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
G01P5/12 C
(21)【出願番号】P 2020521377
(86)(22)【出願日】2020-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2020016245
(87)【国際公開番号】W WO2020213551
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2019078202
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519077964
【氏名又は名称】池野 智一
(74)【代理人】
【識別番号】100169188
【氏名又は名称】寺岡 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】池野 智一
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-215825(JP,A)
【文献】特開2006-133243(JP,A)
【文献】米国特許第6030709(US,A)
【文献】特開平10-332455(JP,A)
【文献】特開平4-38425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 5/10- 5/12
G01F 1/68- 1/699
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗器からの信号を処理する信号処理部を有し、前記抵抗器の放熱を利用して流体の流速を検知する流速センサであって、
前記流体に晒される側の第1の基板面と、前記第1の基板面とは反対面の
、前記流体に晒されない側の第2の基板面と、を有する基板と、
前記第2の基板面に実装される前記抵抗器と、を有し、
前記抵抗器の発熱部が、前記第2の基板面と対向するように配置される、流速センサ。
【請求項2】
前記基板が、厚み1mm以下のフィルム状基板あるいは薄板基板である、請求項1記載の流速センサ。
【請求項3】
前記発熱部の領域と対向する前記基板が孔を有する、請求項1または2に記載の流速センサ。
【請求項4】
前記第1の基板面または前記第2の基板面の一部または全部を被覆する、絶縁皮膜として樹脂膜および/またはガラス膜を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の流速センサ。
【請求項5】
前記絶縁皮膜には、金属箔および/または蒸着膜を配置する、請求項4記載の流速センサ。
【請求項6】
前記第2の基板面を覆うカバー部材を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の流速センサ。
【請求項7】
前記抵抗器の温度上昇は、前記抵抗器から基板への放熱によって決まる、請求項1から6のいずれか1項に記載の流速センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流速センサに関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流速に対応した発熱体の放熱を利用して流体の流速を検知する流速センサが知られている。この種の流速センサは、発熱用抵抗(発熱体)と温度補償用抵抗が公知の抵抗ブリッジ回路を構成している。そして、発熱用抵抗は流体の温度より一定温度高くなるように加熱制御される。そして、温度補償用抵抗は流体そのものの温度を検知し、流体温度の変化の影響を補償するために用いられる。
【0003】
このような技術に基いて、共にチップ抵抗器である発熱用抵抗と温度補償用抵抗を、絶縁基板面上に近接して配置する流速センサが提案されている(特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-53967号公報
【文献】特開平8-35978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2に記載されている流速センサは、発熱用抵抗と温度補償用抵抗のいずれもが、流体との接触機会が多く、流体に含まれる水分または汚れによって劣化したり、壊れやすい。つまり、特許文献1および2に記載されている流速センサは、耐候性が劣る。
【0006】
そこで本発明の目的は、耐候性に優れた流速センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の流速センサは、抵抗器からの信号を処理する信号処理部を有し、抵抗器の放熱を利用して流体の流速を検知する流速センサであって、流体に晒される側の第1の基板面と、第1の基板面とは反対面の、流体に晒されない側の第2の基板面と、を有する基板と、第2の基板面に実装される抵抗器と、を有し、その発熱部が、第2の基板面と対向するように配置される。
【0008】
ここで、基板が、厚み1mm以下のフィルム状基板あるいは薄板基板であることとしても良い。
【0009】
また、発熱部の領域と対向する基板が孔を有することとしても良い。
【0010】
また、第1の基板面または第2の基板面の一部または全部を被覆する、絶縁皮膜として樹脂膜および/またはガラス膜を有することとしても良い。
【0011】
また、絶縁皮膜には、金属箔および/または蒸着膜を配置することとしても良い。
【0012】
また、第2の基板面を覆うカバー部材を有しても良い。さらに、抵抗器の温度上昇は、抵抗器から基板への放熱によって決まることとしても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、耐候性に優れた流速センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る流速センサの平面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る流速センサの底面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る流速センサを構成する回路の概略図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る流速センサの変形例を示す、
図1のA-A断面に相当する箇所の図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る流速センサの変形例に用いるカバー部材の斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(本発明の実施の形態に係る流速センサの構成および動作)
以下、本発明の実施の形態に係る流速センサについて、図面を参照しながら説明する。
【0016】
流速センサ1は、抵抗器2,3からの信号を処理する信号処理部を有し、抵抗器2の放熱を利用して流体の流速を検知する。また流速センサ1は、流体に晒される側の第1の基板面4と、第1の基板面4とは反対面の第2の基板面5と、を有する略長方形の基板6を有する。第2の基板面5に実装される抵抗器2,3は、その発熱部2h,3hが、第2の基板面5の後述する孔21,22と対向するように配置される。
【0017】
また、第2の基板面5には、配線11,12,13,14が形成されている。配線11,12,13,14の端部には、抵抗器2,3の端子電極2a,2b,3a,3bと、それぞれ接続されるランド11a,12a,13a,14aが形成されている。ランド11aには、端子電極2aが接続され。ランド12aには、端子電極2bが接続され、ランド13aには、端子電極3aが接続され。ランド14aには、端子電極3bが接続される。これらの接続は、はんだ付けによるが、導電性接着剤または異方性導電フィルム(Anisotropic Conductive Film、ACF)を使用しても良い。異方性導電フィルムは、電導と絶縁と伝熱を同時に実現することができる。
【0018】
なお、抵抗器2は、発熱用抵抗であり、流体の温度より一定温度高くなるように加熱制御される。前記抵抗器2の温度上昇は抵抗器2の消費電力と、抵抗器2から流体及び基板6への放熱のし易さ、つまり熱コンダクタンスによって決まる。そして、抵抗器3は、温度補償用抵抗であり、流体そのものの温度を検知し、流体温度の変化の影響を補償するために用いられる。
【0019】
抵抗器2,3には、第2の基板面5に対向する抵抗皮膜配置面2c,3cと、抵抗皮膜配置面2c,3cとは反対側面の抵抗皮膜非配置面2d,3dがある。抵抗皮膜2R,3Rは、通電すると発熱するため、前述の「発熱部2h,3h」と同一となる。抵抗皮膜2R,3Rの上面、すなわち第2の基板面5に対向する面には、図示を省略する抵抗器2,3の一部である、保護コートが施されている。抵抗器2,3は、第2の基板面5に対向するように、ランド11a,12a,13a,14aと、抵抗器2,3の端子電極2a,2b,3a,3bとが接続されているため、いわゆる「フェイスダウン」の実装がされている。
【0020】
また、基板6は、厚み0.1mmの薄板基板である。基板6の材質は、樹脂製としたが、セラミック製としても良い。また、基板6には、ガラス繊維が混入されたエポキシ樹脂等の、プリント配線板に用いられる材質を用いることができる。
【0021】
また、抵抗器2,3の発熱部2h,3hの領域と対向する基板6が、それぞれ孔21,22を有している。孔21,22は、それぞれ同形状で、抵抗器2,3の通電方向と直交する方向に長い、長円形をしている。
【0022】
また、
図1および
図2には明確に図示せず、
図3に図示するように、流速センサ1は、第1の基板面4の全部と、抵抗器2,3と、第2の基板面5の全部を被覆する、ポリプロピレン樹脂からなる樹脂膜23を有している。さらに、樹脂膜23の全域には、ステンレスからなる金属箔24が配置されている。樹脂膜23および金属箔24は、第1の基板面4側から基板6の孔21,22に入り込んでいる。
【0023】
流速センサ1の発熱用の抵抗器2と温度補償用の抵抗器3は、
図4に示すようにチップ状の抵抗器31,32と共に公知の分圧回路を構成している。
図1から
図3では図示しなかった信号処理部33は、抵抗器31,32と、オペアンプ34と、トランジスタ35等を有している(その他の信号処理部33の構成要素の図示は省略する)。ここで、発熱用の抵抗器2と温度補償用の抵抗器3の抵抗温度係数(TCR)は、抵抗器31,32のTCRよりも大きい。
【0024】
ここで、流速センサ1の絶縁基板6の第1の基板面4側をうちわで扇いで風を送るとする。すると、発熱用の抵抗器2の温度が下がる。信号処理部33は、発熱用の抵抗器2と温度補償用の抵抗器3との温度差を常に一定となるように
図4に示すブリッジ回路に駆動電圧を印加する。流速センサ1は、この加熱に要する電圧の変化を利用して流体の流速(風速等)を換算し出力する。出力された流速(風速等)は、たとえば、LED(Light Emitting Diode)の光量または発光色等によって、その強さ等が表現される。たとえば流速が速ければ、LEDの光量を大きく(明るく)し、流速が遅ければ、LEDの光量を小さく(暗く)表現するか、または流速を具体的な数値で表示する。
【0025】
(本発明の実施の形態によって得られる主な効果)
上述のように、本発明の実施の形態に係る流速センサ1は、抵抗器2,3の発熱部2h,3hが、流体に晒されない第2の基板面5と対向するように配置されている。そのため、抵抗器2,3が基板6によって流体から隠れるため、耐候性に優れる流速センサ1を提供することができる。そして、仮に基板6の孔21,22が塞がれる流速センサ1の構成であっても、抵抗器2,3の端子部からのランド11a,12a,13a,14a等への放熱によって機能は保たれる。但し、孔21,22が無い場合は、抵抗器2,3の発熱部2h,3hと基板6との間に、熱伝導性接着剤、導電性接着剤または熱伝導フィルムなどを介在させることによって、良好な熱伝導を確保することが好ましい。さらに、基板6に、厚み0.1mmのフィルム状基板あるいは薄板基板を用いることによって、基板6の厚み方向の熱移動が容易となり、孔21,22が塞がれる流速センサ1であっても、感度は保たれる。
【0026】
また、抵抗器2,3等の部品または配線11,12,13,14が、測定対象流体と非接触で動作可能な流速センサ1を得ることができる。また、金属の研削または樹脂モールド加工といったコストがかかる工程を必要とせず、リフローというコスト低減の進んだ一般的なプリント基板製造工程で流速センサ1を製造できる。また、流速センサ1は、薄さ、扱いやすさ、耐候性の高さから、様々な新しい用途の開拓が期待できる。
【0027】
また、基板6に孔21,22を設けることによって、流体と発熱部2h,3hとの接触が直接的になるため、流速センサ1の感度は向上する。ここで、孔21,22を設けることによっても、抵抗器2,3の端子電極2a,2b,3a,3bと、それぞれ接続されるランド11a,12a,13a,14aの接続部分は、依然として基板6によって流体から隠れているため、流速センサ1の耐候性は、確保される。
【0028】
また、抵抗器2,3への流体の接触は、孔21,22を介してのものであり、熱コンダクタンスに対する、流体の流れ方向の差による影響が出にくいため、流速センサ1の指向性は良好となる。また、流速センサ1の感度に差を生じる主な要因は、流体の流れの方向が抵抗器2、3の長辺方向に一致するか短辺方向に一致するかの違いである。そこで、前記長辺方向または前記短辺方向に対する感度ずれの実測値を測定した。すると、抵抗器2、3を基板6の流体側に実装した比較対象品の感度ずれが-33%であるのに対し、本発明による試作品の感度ずれは-6%に収まった。比較対象品および本発明による試作品の抵抗器2,3のサイズは2.0mm×1.25mm×0.45mm、基板6の厚さが0.1mm、孔21,22のサイズは2.2mm×1.0mmとして、基板面に水平から仰角10度で風を当てて評価した。なお、孔21,22が無い場合は、流体の流れ方向の差による影響を殆どゼロにでき、さらに流速センサ1の指向性は良好となる。
【0029】
流速センサ1は、第1の基板面4の全部と、抵抗器2,3と、第2の基板面5の全部を被覆する、樹脂膜23を有している。そのため、流速センサ1は、空気中の湿気または塵等に対する耐候性が、より向上する。また、樹脂膜23によって、外的な要因、たとえば人の手の接触等からも電気回路部品を保護することができる。
【0030】
さらに、樹脂膜23の全域には、金属箔24が配置されている。そのため、流速センサ1は、空気中の湿気または塵等に対する耐候性がさらに向上する。また、流速センサ1は、金属箔24の存在によって、樹脂膜23を機械的衝撃等から保護できる。また、樹脂膜23または金属箔24の貼付も熱可塑性フィルムの真空成形といった低価格で提供されるようになった技術を利用することで、より安価に流速センサ1を提供できる。
【0031】
(他の形態)
上述した本発明の実施の形態に係る流速センサ1は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々の変形実施が可能である。
【0032】
たとえば、基板6の孔21,22は無くても良い。基板6の孔21,22が無くても、抵抗器2,3の端子部からのランド11a,12a,13a,14a等への放熱によって機能は保たれる。但し、孔21,22が無い場合は、抵抗器2,3の発熱部2h,3hと基板6との間に、熱伝導性接着剤、導電性接着剤または熱伝導フィルムなどを介在させることによって、良好な熱伝導を確保することが好ましい。また、孔21,22は、それぞれ同形状で、抵抗器2,3の通電方向と直交する方向に長い、長円形をしている。しかし、孔21,22の形状は、異なっても良い。また、孔21,22の形状は、抵抗器2,3の通電方向と直交する方向に長い、長円形ではなく、たとえば、円形または、多角形であっても良い。さらに、基板6に、厚み0.1mmのフィルム状基板あるいは薄板基板を用いることによって、基板6の厚み方向の熱移動が容易となり、孔21,22が塞がれる流速センサ1であっても、感度は保たれる。
【0033】
また、基板6は、厚み0.1mmの樹脂製の薄板基板である。しかし、基板6の厚みは、0.1mmを超えたとしても、流速センサ1の機能に大きく影響しない場合が多いので、厳しく限定はされない。ただし、基板6に代えて厚み1mm以下のフィルム状基板あるいは薄板基板を用いることができる。基板6の厚みは、薄くなればなるほど流速センサ1の意匠面に良い影響を与えやすい。流速センサ1全体が薄ければ、スリムでかっこいい流速センサ1となりやすい。基板6の材質は、樹脂製としたが、セラミック製または、ガラス繊維が混入されたエポキシ樹脂等の、プリント配線板に用いられる材質、更には、ステンレス板などの金属板の表面を絶縁体で覆ったものを用いることができる。
【0034】
また、流速センサ1は、第1の基板面4の全部と、抵抗器2,3と、第2の基板面5の全部を被覆する、樹脂膜23を有している。しかし、樹脂膜23は、必須の構成要素ではないため、省略できる。また、仮に樹脂膜23を設けるにしても、基板6と抵抗器2,3の全面を覆うように設ける必要はない。たとえば、樹脂膜23は、第1の基板面4または第2の基板面5の一部または全部を被覆してもよい。また、たとえば、流体に晒される第1の基板面4の一部または全部を覆うように樹脂膜23を設けても良い。それに加えてランド11a,12a,13a,14aと、抵抗器2,3の端子電極2a,2b,3a,3bのような、電気接続箇所のみに樹脂膜23を設けたり、それに加えて配線11,12,13,14と、抵抗器2,3といった、電子部品および配線を覆うように樹脂膜23を設けても良い。しかし、流速センサ1の、空気中の湿気または塵等に対する耐候性の万全を期すためには、第1の基板面4の全部と、抵抗器2,3と、第2の基板面5の全部を樹脂膜23で被覆することが好ましい。また、樹脂膜23の材質はポリプロピレンとしているが、その他の樹脂、たとえばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等を用いることができる。
【0035】
また、樹脂膜23の全域には、ステンレスの金属箔24が配置されている。しかし、金属箔24は、必須の構成要素ではないため、省略できる。また、仮に金属箔24を設けるにしても、たとえば、ランド11a,12a,13a,14aと、抵抗器2,3の端子電極2a,2b,3a,3bのような、電気接続箇所のみに金属箔24を設けることができる。また、金属箔24の材質はステンレスに限らず、他の金属とすることができる。ただし、抵抗器2,3を覆う箇所には、抵抗器2,3の発熱を過度に発散する、熱伝導率の高い金属、たとえば銅等は、好ましくないが、使用することはできる。
【0036】
また、
図4に示すように信号処理部33は、抵抗器31,32と、オペアンプ34と、トランジスタ35等を有している。そして、信号処理部33は、発熱用の抵抗器2と温度補償用の抵抗器3との温度差を常に一定となるようにブリッジ回路に駆動電圧を印加している。この駆動電圧は抵抗器2の温度上昇を制約する熱コンダクタンスと回路定数の関数となることが知られている。さらに前記熱コンダクタンスは流速の関数であることから、信号処理部33は流速とそれに対応する熱コンダクタンスの両方を求めることができる。
【0037】
また、出力された流速は、たとえば、LEDの光量または発光色等によって、その強さ等を表現している。たとえば、流速センサ1を平面上に縦横規則的に複数配列してサーモグラフィーの熱画像の様に流速分布を可視化することができる。この平面は固く変形しにくい材質とすることができるが、柔らかく曲面に変形可能なシート、または布状等にすることもできる。また、一次元の直線的に流速センサ1を配列すれば、風速が見えるものさし状等とすることもできる。また、複数の流速センサ1を、公園に設置されたジャングルジムと呼ばれる遊具のような立体的な網状支持体に設置すれば、支持体の太さに対して十分大きな開口によって流れを阻害せず流れの分布を可視化、もしくは情報化等することができる。たとえば流速センサ1の配置は、支持体の直径3cm、間隔50cm等といった寸法でよいし、これに限定されるものでもない。さらに、流速センサ1を複数配列して自然の風が偶然作る、あるいは人がうちわで扇ぐ等して作る流速分布を得て、その情報で音階または音色、自然音等を制御することもできる。
【0038】
また、流速センサ1により、環境の空気の揺らぎまたは風の様子を表示することで、たとえば植栽の葉の動きと連動して光が明滅して木漏れ日のような変化等を見せ、あらかじめプログラムされた表現では得られない安らぎまたはリラックス効果を与えるインスタレーションを構築できる。また、流速センサ1により、流速、風速で演出される照明等を実現できる。演出の一例としては、建物の壁面にプロジェクションマッピング技術などを利用して、風車の羽根そのもの、または風車の羽根を想起させる映像または光等を投影し、その回転速度を風速に応じて変化させることができる。また、別の演出の一例としては、人、もの、生き物の動きを、風速として検知して反応させる等することができる。また、さらに別の演出の一例としては、動く物体表面に流速センサ1を取り付けて、その物体の移動速度を風速として間接的に表現等することができる。
【0039】
また、さらに別の演出の一例としては、流速センサ1によるLEDの光の色または形、光の大きさ、を現実のろうそくと異なるものとし、一見して炎が持つ危険性を感じさせないが、揺らぎ等、光り方の変化の特徴がろうそくを想起させることで、ろうそくが持つ高い演出性を実現できる電子ろうそくを得ることができる。たとえば、流速センサ1によるLEDの光の大きさが1mmと小さい、あるいは1mと大きくする。また、流速センサ1によるLEDの光の色は、たとえば微風の時、ろうそく色で小さく明滅して、ろうそくに似て見えるが、風が強い時だけ青、赤といったろうそくと異なる色が強く明るく光る等する。演出性については、たとえば複数の光源の明滅が空気の動きと連動し、息を吹きかけると順番に消えたり、消えかかってもまた明るくなるといった、バースデーケーキに飾られたろうそくのような振る舞い等をさせることができる。また、風速の分布情報を映像または音声情報と関連づけて保存、伝送し、現実世界または仮想空間で映像または音声の再生時に関連づけられた、風速分布情報を提供すること等もできる。
【0040】
また、密閉した空間の外に置かれた流速センサ1で検知した風に反応する、密閉空間に置かれた電子風鈴等を得ることができる。さらに、温度と熱コンダクタンスとから、塗料または食品の乾きやすさといった、表面状態の変化のしやすさを推定するデバイス(流速センサ1)を得ることができる。
【0041】
また、流速センサ1の雰囲気または気品といったものへの配慮が重要となる場合もある。そのようなときには、基板6、樹脂膜23または金属箔24に流速検出機能とは直接関係が無い意匠が施されていても良い。たとえば、前述の意匠には、自然な木目調、木の葉のような模様、壁紙のような模様、それらを模した凹凸、外形、あるいはハートマーク等、様々なデザイン要素が含まれ、全体としてそこに流速センサ1が存在することで場の雰囲気を悪化させない配慮が成されるものである。あるいは、前述の意匠は、そこに流速センサ1が存在することで、積極的に場の雰囲気を向上させる配慮が成されるものである。このような意匠により、おしゃれな流速センサ1が実現される。
【0042】
(変形例)
図5は、本発明の実施の形態に係る
図3に示す流速センサ1の変形例を示す図である。なお、変形例の流速センサ41のカバー部材42以外の構成は、流速センサ1と同じ構成である。そのため、流速センサ41において、流速センサ1と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
図6は、カバー部材の斜視模式図である。変形例の流速センサ41は、第2の基板面5を覆うステンレス製で、厚みが1mmのカバー部材42が、流速センサ41の基板6の四角形部分の端部43に、接着剤等で固着されている。
【0043】
カバー部材42を流速センサ41に固着することで、より第2の基板面5の配線11,12,13,14と、抵抗器2,3といった、電子部品および配線を覆うこととなり、より耐候性が良好になる。
【0044】
カバー部材42は、ステンレス製であるが、他の金属製、樹脂製、またはセラミック製であっても良い。また、カバー部材42の厚みは1mmであるが、それより厚くても、薄くても良い。カバー部材42の厚みは、意匠面から考えると、より薄くたとえば0.7mmの方が好ましい。また、カバー部材42を流速センサ41に固着する際には、接着剤を用いずに、粘着テープ等を用いたり、粘着テープと接着剤を併用しても良い。
カバー部材42と基板6とで囲まれた内部空間は発泡プラスチック等の断熱材で充填されていてもよい。これにより流速センサの機械的強度がより向上する。また流速センサ41は、カバー部材42を省略し、前記の充填された断熱材を充填しても良い。
【0045】
樹脂膜23は、絶縁被覆であれば良く、たとえば、ガラス膜等のみ、またはガラス膜と樹脂膜23とを積層した膜であっても良い。
【符号の説明】
【0046】
1,41 流速センサ
2 抵抗器(発熱用)
2h 発熱部
3 抵抗器(温度補償用)
3h 発熱部
4 第1の基板面
5 第2の基板面
6 基板
23 樹脂膜
24 金属箔
33 信号処理部
42 カバー部材