IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヨトゥン アーエスの特許一覧

<>
  • 特許-船体洗浄用の磁気ホイール付きロボット 図1
  • 特許-船体洗浄用の磁気ホイール付きロボット 図2
  • 特許-船体洗浄用の磁気ホイール付きロボット 図3
  • 特許-船体洗浄用の磁気ホイール付きロボット 図4
  • 特許-船体洗浄用の磁気ホイール付きロボット 図5
  • 特許-船体洗浄用の磁気ホイール付きロボット 図6a
  • 特許-船体洗浄用の磁気ホイール付きロボット 図6b
  • 特許-船体洗浄用の磁気ホイール付きロボット 図7
  • 特許-船体洗浄用の磁気ホイール付きロボット 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】船体洗浄用の磁気ホイール付きロボット
(51)【国際特許分類】
   B63B 59/10 20060101AFI20231226BHJP
   B08B 1/32 20240101ALI20231226BHJP
   B63B 73/60 20200101ALI20231226BHJP
【FI】
B63B59/10 Z
B08B1/04
B63B73/60
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020546917
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2019055909
(87)【国際公開番号】W WO2019170888
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】1803700.2
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515168776
【氏名又は名称】ヨトゥン アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リッグ, トリル フェルダース
(72)【発明者】
【氏名】ペーデシェン, ロアール
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0340529(US,A1)
【文献】特開2016-068702(JP,A)
【文献】米国特許第06000484(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102012020121(DE,A1)
【文献】中国実用新案第204488915(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 59/10
B08B 1/04
B63B 73/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体に対する作業を実行するためのロボットであって、前記ロボットが、
ホイールと、
前記ロボットの本体にホイールを支持すること、および前記ロボットが凸凹面にわたって移動することを可能にするサスペンション装置と
を備えており、
前記ロボットが、前記ロボットの長さに沿って互いに間隔があいた第1組のホイールと第2組のホイールとを備えており、
前記サスペンション装置が、前記第1組のホイールの中心間に延びるラインが前記第2組のホイールの中心間に延びるラインに対して回転できるようにするサスペンションピボット機構を備えており、
前記サスペンション装置が、各ホイールについて、ホイールがその回転軸を船体の表面と位置合わせできるように、前記ホイールの回転軸が他のホイールの回転軸に対して回転できるようにする反りピボット機構も備えており、
前記ロボットを前記船体に取り付けるための磁力が、前記サスペンションピボット機構および前記反りピボット機構を回転させるように作用するロボットにおいて
前記第1組のホイールと第2組のホイールは磁化されて、ロボットが鉄製の船体に接着することを可能にして
前記サスペンションピボット機構及び反りピボット機構を回転させる磁力は、ホイールを介して加えられる磁力であり
前記ホイールの表面には弾性層があり、該弾性層が、前記ホイールの直径の2%未満の厚さを有する、ロボット。
【請求項2】
前記反りピボット機構のピボットにバイアスがない、請求項1のロボット。
【請求項3】
前記反りピボット機構が、各ホイールをロボットに結合するホイールモジュールの一部を各々形成し、前記ホイールモジュールが、ホイール用の車軸を備え、各ホイールが、個々の車軸を有し、各車軸が、他のホイールの車軸に対する前記車軸の向きを変えるために前記反りピボット機構により回転することができる、請求項1または2に記載のロボット。
【請求項4】
前記反りピボット機構が、ブラケットと、前記ブラケットを支持するスターラップ部材とを備えており、反りピボットにより、前記ブラケットが前記スターラップ部材に結合されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項5】
前記スターラップ部材が、前記ロボットに結合している、請求項4に記載のロボット。
【請求項6】
前記反りピボット機構は、ホイールの回転軸と直角な回転軸を有し、該回転軸は前記ロボットの使用中に前記船体の表面に平行に位置するように構成されている軸を含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項7】
前記反りピボット機構の回転軸が、ロボットの使用中に前記ホイールの回転軸よりも船体の表面に近づくように配置されている、請求項6に記載のロボット。
【請求項8】
前記サスペンションピボット機構は、回転梁に設けられたピボットを含み、ホイールの組の一方は前記回転梁に取り付けられ、前記回転梁が、前記ホイールの組の他方に対して回転することができる、請求項1から7のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項9】
前記サスペンションピボット機構のピボットにバイアスがない、請求項1から8のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項10】
前記ロボットが、操舵可能なホイールを含み、操舵機構により、少なくとも1組のホイールのホイールが、ホイールの接触面に垂直に延びる軸の周りに回転することができる、請求項1から9のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項11】
前記第1組のホイールと第2組のホイールの両方のホイールが、ホイールの接触面に垂直に延びる軸の周りに各々回転できるようにする操舵機構を備え、前記反りピポット機構はホイールとともに回転する、請求項10に記載のロボット。
【請求項12】
前記操舵機構が、操舵アームと各操舵可能ホイール用ヨークとを含み、前記ヨークが、前記ホイールの位置を変えることなく前記ホイールの回転を可能にするために配置されている、請求項10または11に記載のロボット。
【請求項13】
前記ホイールの回転を駆動するためのハブモーターを含み、前記ハブモーターが、ホイールが反りを変えるときにホイールと一緒に移動するようにホイールに結合されている、請求項1から12のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項14】
前記反りピボット機構が、1つのモジュールとして取り外し可能である、請求項1から13のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項15】
斜め向かいのホイールとその反りピボット機構が、同一かつ交換可能な要素を含んでいる、請求項1から14のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項16】
前記ホイールが、前記ロボットを前記船体に固定するために使用される唯一の機構である、請求項1から15のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項17】
前記ロボットが、前記船体の表面の洗浄用ロボットであり、前記ロボットが、洗浄機構を含んでいる、請求項1から16のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項18】
前記洗浄機構が、前記船体表面とほぼ平行な円筒の軸を備えた円筒形ブラシであり、前記ブラシが、前記表面と接触するときに、その軸の周りに回転して表面に洗浄動作を適用するように構成されている、請求項17に記載のロボット。
【請求項19】
前記円筒形ブラシが、前進中に、いずれかの1組のホイールが前記船体と接触する前に前記ブラシが前記船体に作用するように、前記ホイールの前方に取り付けられている、請求項18に記載のロボット。
【請求項20】
前記円筒形ブラシの長さが、前記ロボットの全幅にわたって延びている、請求項18または19に記載のロボット。
【請求項21】
船体に対する作業を実行するための方法であって、請求項1から20のいずれか一項に記載のロボットの使用を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船体を洗浄するためのロボットなど、船体に対する作業を実行するためのロボットの形態の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船体の状態は、時間とともに変化する可能性があるため、船体の洗浄や検査が必要である。船体のコーティングの劣化の速度と汚損の蓄積の速度は、船が経験した状態に応じて異なり得るが、これは、海と港と船が移動する場所で過ごした時間の点で船の活動に依存する。汚損を取り除くための洗浄や船体の状態を確認するための検査など、船体に対する作業を実行できることが望ましい。
【0003】
追跡ロボット(「クローラー」と呼ばれることがある)は、これらのタイプの作業のために船体で使用されることで知られている。このようなロボットは、ロボットを鉄の船体に接着させるための磁石を含む無限軌道を有する。これらのロボットは、船体の海中横断中に作業を実行できる。特許文献1は、クローラーロボットの一例を示している。磁気ホイールを備えた同様のロボットも提案されている。例えば、特許文献2は、対角(長方形)配置の4つの磁気ホイールを備えたロボットを開示している。さらに、代替設計では、吸引システムまたはスラスタを使用して、ロボットを船体の表面に押し付ける。後者の設計には、海中でしか使用できず、喫水線の上では使用できないという欠点がある。磁気システムは、喫水線の上下両方で使用できる。
【0004】
ホイールをロボットのシャーシに接続するための弾性手段を使用しなくても、すべてのホイールが曲面に確実に接触するように、3つのホイールを有するという概念が提案されている。しかし、ホイールの配置により、ロボットの重心から、関連する方向の2つのホイールの間の接触と表面との間の「転倒軸」までの距離が短くなる。したがって、3輪ロボットは、4輪ロボットよりも安定性が低い。特に、3輪の配置では、ロボットが転倒しないように保持する接着力と「転倒軸」との距離は、ロボットが船体の側面を横断するとき、すなわち、ロボットの重量が横倒しに掛かるとき、ホイールと船体表面との間の磁力に比べて小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2010/126403号明細書
【文献】米国特許第6000484号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、特許文献2は、対角配置の4つのホイールを使用する洗浄ロボットを開示している。ホイールは車軸に固定されており、1つの車軸が中央で回転して傾くことができる。これにより、4つのホイールすべてが均等な力で船体表面に確実に接触するようになる。ロボットは、2組のホイールの軸間で分割され、操舵される馬車のように関節式ジョイントで互いに接続されたシャーシを有することにより操舵される。この操舵方法では、操舵半径が比較的大きくなり、ロボットの操舵性が損なわれる。さらに、十分な接着力を確保するために必要となる可能性がある磁気ホイールが幅広であると、この配置により、ホイールが常に磁気ホイールの幅にわたって船体の表面、特に曲面または凸凹面に整列した接触面を有することができなくなる。磁石表面と鉄表面との間に生じる非磁石のギャップは、ホイールと船体との間の接着力を減少させる。これにより、牽引力が低下したり、ロボットが転倒または単に船体から落下しやすくなったり、船体の側面を横断するときに滑ったりするなど、ロボットの動作が再び損なわれる。したがって、凸凹面など、広範囲の船体表面特性を備えた船体に対する作業を実行できるロボットが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様から見ると、本発明は、船体に対する作業を実行するためのロボットであって、ロボットが、磁力によりロボットが鉄の船体に接着することを可能にする磁気ホイールと、ロボットの本体にホイールを支持すること、およびロボットが凸凹面にわたって移動することを可能にするサスペンション装置とを備えており、ロボットが、ロボットの長さに沿って互いから間隔があいた第1組のホイールと第2組のホイールとを備えており、サスペンション装置が、第1組のホイールの中心間に延びるラインが第2組のホイールの中心間に延びるラインに対して回転できるようにするサスペンションピボット機構を備えており、サスペンション装置が、各ホイールについて、ホイールがその回転軸を船体の表面と位置合わせできるように、ホイールの回転軸が他のホイールの回転軸に対して回転できるようにする反りピボット機構も備えており、ホイールを船体に取り付けるための磁力が、サスペンションピボット機構および反りピボット機構を回転させるように作用する、ロボットを提供する。
【0008】
したがって、この構成では、ロボットの2組のホイールが、ホイールの相対的な高さを調整するために磁力に従って互いに対して移動できるようになり、各ホイールの反りもホイールと船体との間の磁力に従って個々に調整される。したがって、ホイールは、船体表面が凸凹または湾曲している場合でも、船体との確実な磁気接触を維持するために、位置も反りも移動する。さらに、ホイール間には力が均等に分配される。ホイール表面は、反りピボット機構によるホイールの回転により有利に回転して、ホイールと船体との接触を最大にすることができる。この反り補償効果により、凸凹及び/又は湾曲した船体表面上のロボットと船体との効果的な接着を確保できる。
【0009】
システムに対する主な力はロボットの質量によるものではなく、ロボットを船体に固定するために使用される磁力から生じるため、提案されたサスペンション装置は、一般に知られている車両のサスペンション装置に比べて、多くの点で反直感的であることに留意されたい。したがって、サスペンション装置の能力は、車両の質量から負荷を支えるために使用される車両サスペンションシステムに類似していない。このような車両サスペンションシステムは、ホイールと道路との間の良好なグリップを確実にするためにホイール位置を調整しながら、このような力を効率的に伝達するために必要な特定の特徴を有する。対照的に、磁気ホイールを備えたロボットのために提案されたサスペンションシステムは、主に磁石の船体への引力から生じる力に適応している。このような力は、従来の車両ホイールには存在しない。提案されたロボットの特定の要件を考慮に入れて、発明者は、各ホイールに反りピボット機構を含めるという稀なステップを踏み出した。
【0010】
いくつかの例では、反りピボット機構の反りピボットには、ピボットの周りのホイールの移動中にピボットに復元力を加える弾性要素がないなど、バイアスがない場合がある。したがって、他の目的のためのサスペンション装置とは対照的に、ホイールの反りに影響を与えるバネまたは他の復元機構がない場合がある。代わりに、反りピボット機構は、船体へのホイールの磁気引力に対して、ホイールの回転軸の自由な回転を可能にすることができる。このような付勢手段が存在しないことは、上記の運動学的補償手段の使用とともに、ロボットのホイールにわたって、および各ホイールと船体の間の接触経路にわたって、接触力の均等な分配を容易にすることが理解される。しかし、サスペンション装置からすべての弾性を省略することは必須ではなく、反りピボット機構による反り補償は、サスペンション装置の他の弾性要素が荷重下で変形する場合でも力を均等化することができるため、ある程度の弾性がある効果的なシステムを作ることはなお可能である。
【0011】
各ホイールは、同様の設計の反りピボット機構を備えている場合がある。類似または同一の部品の使用は、例示的な実施形態の有利な特徴であるサスペンション装置のモジュール構造に寄与する。反りピボット機構は、ホイールをロボットに結合するホイールモジュールの一部を形成することができる。このホイールモジュールは、ホイール用の車軸を備えることができ、各ホイールは個々の車軸を有し、車軸は反りピボット機構により回転することができる。
【0012】
反りピボット機構は、ブラケットと、ブラケットを支持するスターラップ部材とを備えることができる。その場合、ホイールは、反りピボット機構のブラケットから吊り下げられる車軸を有することができ、ブラケットは、車軸から反りピボット機構の反りピボットまで延び、反りピボットがブラケットをスターラップ部材に結合する。反りピボットは、ブラケットの回転を可能にするため、スターラップ部材に対する車軸の回転を可能にする。反りピボットは、ロボットの使用中に船体の表面に沿って位置するように構成される軸など、ホイールの回転軸と直角な回転軸を有することができる。スターラップ部材は、ホイールをロボットに結合するホイールモジュールの他の部分などによりロボットに接続することができる。
【0013】
反りピボットの回転軸は、有利には、船体の表面に比較的近くに、すなわち、使用時にホイールが船体に接触する場所に比較的近くに配置される。例えば、反りピボット軸は、ホイールの回転軸よりも船体の表面に近づくように、すなわち、以下に説明されるように、ロボットが「垂直」向きにある場合に、反りピボット軸がホイールの回転軸の下にあるように配置することができる。例えば、反りピボット軸は、ホイールの回転軸よりもホイールの直径の少なくとも10%、またはホイールの直径の少なくとも15%だけ、船体の表面に近づくことができる。特に、機構に特定のバイアスがなく、サスペンションを「停止」構成に戻すように作用する力の点で弾性がないか、または弾性が制限される「受動性」構成で接触しているサスペンション装置の動作を改良するホイールの回転軸よりも、反りピボット軸の配置は、船体の表面に近づくように配置することができる。
【0014】
サスペンションピボット機構は、ホイールの組の一方が他方のホイールの組に対してホイールの組の中心間の仮想線の相対回転で移動できるようにする任意のタイプの機構の一部として提供されるピボットを含むことができる。例えば、ホイールの組の一方は、他方のホイールの組に対して回転することができる回転梁に取り付けられてもよい。このように、サスペンション装置は、各ホイールでの反りピボットによる適応性のある反りが追加された、道路車両で使用される梁車軸サスペンションと同様のいくつかの特性を有することができる。したがって、1組のホイールが梁の両端で支持されてもよく、サスペンションピボット機構は、梁が他方のホイールの組の中心間に延びる線に対して回転できるようにするピボットを含んでもよい。次いで、他方のホイールの組は、ピボットの支持体を形成する同様の梁上にあり得、固定梁と呼ばれる場合がある。いくつかの例では、回転梁は、ロボットの本体に対して旋回することもできる一方、回転梁は、ロボットの本体にしっかりと取り付けることができる。
【0015】
サスペンションピボット機構のためのこのような回転梁システムの使用は、簡単で効果的な解決策とみなされるが、必要なホイールの動きを可能にするために他のサスペンションピボット機構が可能であり得ることを理解されたい。
2つのホイールを備えたこのような回転梁は、ロボットに対して横方向配置または縦方向配置であり得る。この文書では、以下のより詳細な説明で横方向のレイアウトを扱うが、どちらのタイプの配置も第1の態様の変形で使用できることを理解されよう。
【0016】
サスペンションピボット機構のサスペンションピボットには、機構の移動中に復元力を加える弾性要素がないなど、バイアスがない場合がある。したがって、サスペンションピボットの周りの1組のホイールの回転に影響を与えるバネまたは他の復元機構がない場合がある。代わりに、サスペンションピボット機構により、船体へのホイールの磁気引力に対して、1組のホイールが他方に対して自由に回転することができる。反りピボット機構にバイアスがないことと同様に、サスペンションピボット機構にバイアスがないことにより、サスペンション装置の最適な動きが可能になり、ホイールと船体との効果的な接触が保証される。
【0017】
いくつかの例では、これは、上記のように、反りピボットにバイアスがないことと対になる場合がある。いくつかの例示的な実施形態では、サスペンション、サスペンション装置は、サスペンション装置の静的負荷中に作用する弾性要素を有しないため、静止中のホイールの任意の特定の位置に対するバイアス、または少なくとも反りピボットおよびサスペンションピボットの回転に関するバイアスがない。この結果、力がホイール間でより簡単に均等化され、ロボットが磁気ホイールにより船体を把持するための最適な位置をとることができるようになる。以下に説明されるように、システムの唯一の弾性が、ホイールの表面の弾性層から生じる場合もある。しかし、他の場合では、反り補償およびサスペンションピボットの動作を介する負荷の均等化に影響を与えないが、ロボットにクッションを備えるための弾性を追加できる。この説明では、バイアスがないとは、バネやゴムなどの弾性材料を含む要素により意図的に導入された弾性がないことを意味する。ロボットへの損傷を防ぐために、動的衝撃荷重を吸収するように調整された弾性がある場合がある。
【0018】
一例では、2組のホイールは、略長方形状を形成し、ホイールは各角で長方形である。ホイールは、ロボットの外側部分にあってもよく、有利には、ロボット本体の両極端に位置していてもよく、すなわち、ホイールは、ロボットの主容積の外側にあって、ロボットの重心から間隔があいていてもよい。これは、安定した配置を与える。4つのホイールが必要であるが、ロボットは4つのホイールだけ有する必要はなく、一部の変更された形態では、ロボットが、さらなるホイール、例えば、さらなる組のホイールの中心間に延びるラインが第1組のホイールと第2組のホイールに対して回転できるようにする、すなわち、各組のホイール中心を通る各ラインに対する回転を可能にするさらなるサスペンションピボット機構により支持されるさらなる組のホイールを有している可能性があると想定されている。上記のように、さらなるホイールは各々反りピボット機構を有することができる。
【0019】
ロボットは操舵可能であり得、ロボットの操舵は、ホイールの角度の変化及び/又は各ホイールの回転量の制御により実現され得る。好ましくは、ロボットは、操舵機構が、少なくとも1組のホイールのホイールがホイールの接触面に垂直に延びる軸の周りに回転できるようにする操舵可能なホイールを含む。操舵性の程度は、使用される操舵機構に応じて変化することが理解されよう。有利には、ロボットは、第1組のホイールと第2組のホイールの両方のホイールが、ホイールの接触面に垂直に延びる軸の周りに各々回転できるようにする操舵機構を有し得る。上記のように反りピボット機構が使用されると、操舵機構は、反りピボット機構のブラケットを回転させることができる。このような反りピボット機構と一緒に4ホイール操舵機能を有すると、ロボットが船体にしっかりと接着するように、ホイールが船体と最適な接触を維持することを保証しながら、小さな旋回円で最大の操舵性が可能になる。
【0020】
いくつかの例では、操舵機構は、操舵アームおよび各操舵可能ホイール用ヨークを含み、ヨークは、ホイールの位置を変えることなくホイールの回転を可能にするために配置される。したがって、有利には、ホイールは、ロボットが動くことなく「その場で」旋回することができてもよい。
【0021】
ロボットは、ホイールの回転を駆動するためのハブモーターを含むことができ、好ましくは、すべてのホイール用のハブモーターを備えている。ハブモーター装置は、任意にホイール内に配置されたギアリングなどを含むことができる。ハブモーターを使用すると、他の場所にある駆動システムからホイールに回転の伝達が要求されないため、必要なサスペンション装置を実装したり、上記の操舵装置を使用したりすることがより簡単になる。ハブモーターは、ホイールが反りを変えるときにホイールと一緒に移動するようにホイールに結合されるため、ハブモーターは、上記のブラケットおよびスターラップシステムの場合に、各反りピボット機構のブラケットに取り付けることができる。ハブモーターは、有利には、ロボットの反対側でのホイールの反対の回転を可能にすることなどにより、ロボットの操舵を改良するために使用することができる。このようなシステムでは、ロボット全体が他の移動なく回転することができ、これによりロボットの最大の操舵性が可能になる。
【0022】
ロボットは、ホイールの各組の2つのホイール、またはすべてのホイールについて同じ設計のホイールを含むことができる。これは、ロボットの設計のモジュール性がさらに改良し、使用される種々の部品の数が減り、これにより、使用中に比較的高い程度の摩耗があるホイールの場合に特に有利になり、ロボットの他の部品の場合よりも多くの定期的交換につながる。
【0023】
上記のように、ホイールは、ホイールの表面に弾性層を含むことができる。ホイールは各々同じ材料の外層を有していてもよい。弾性層を使用すると、ホイールと船体の間の摩擦力を増加させることができる。磁気ホイールが、ロボットを船体に保持する主な機構であると、磁力は、以下で説明するように重力から生じる力に耐える必要があるが、それらはまた、波の負荷からの力とロボットへの流体力学的力に耐える必要がある。これらの力が、船体の表面に沿って発生する、または船体の表面に沿って重要な要素を有していると、これらの力によるロボットの動きに対する抵抗は、船体とホイールとの間の表面摩擦によるものであり、これは、滑りを妨げるように作用する。弾性層を含むことにより、摩擦係数を増加できる。
【0024】
弾性層は、ホイールの直径と比べて比較的薄くてもよく、例えば、それは、ホイールの直径の2%未満、任意に1.7%未満であってもよい。端的には、これは、約3mmの厚さを意味し得る。通常、これは、150mmから220mmの範囲のホイール直径に当てはまる。上記のように、提案された設計では、サスペンション装置の目的で大幅な弾性を可能にする必要はないが、ある程度の弾性を使用して、ロボットを衝撃などから緩衝する。したがって、弾性層の厚さは、大幅な緩衝効果を提供する必要がないため、比較的薄くすることができる。実際は、これにより、ロボットを船体に保持する磁力が低下するため、ホイールの位置の点で大幅な弾性を避けるのは有利であり、ホイールの磁気要素と船体の表面との間の間隔を過度に増加するのを避けるのは有利である。
【0025】
しかし、船体の粗面化領域につながる小さな表面の欠陥または汚損がある場合でも、接触面ひいてはホイールの表面と船体との間の摩擦を最大にするために薄い変形可能な外層を可能にするのは有利である。ホイールの磁石や磁石の周りの金属ケーシングなどの比較的剛性の高い材料であり得るホイールの主構造と比べて、ホイールの接触面に異なるタイプの材料を可能にするのも有利であり得、これには、弾性層と同じ船体との摩擦係数がない。弾性層は、ゴム化合物またはPURなどの弾性高分子化合物などのゴム状特性を有する弾性材料であってよい。
【0026】
有利には、弾性層は、道路タイヤで知られているタイヤトレッドと同様にホイールのトレッドを形成する3次元表面パターンなど、船体上のホイールの効果的なグリップのために選択された形状を有していてもよい。ロボットが船体の完全に水没した一部を横断する場合でも、ホイールは、船体の表面から水を取り除くことができる必要があり、介在水膜なく、または少なくとも最小限の水膜で、ホイール表面を船体に直接接触させることができる必要がある。3次元表面パターンにより、水膜を最小化または完全に避けることができる。
【0027】
ホイールによる磁力がロボットを船体に取り付けるための主な機構になる可能性があるという事実の点から見ると、また永久磁石が使用されると、一部のシステムが船体からロボットを取り外すことができることは有用である可能性がある。例えば、ロボットが、損傷したり、他の理由で故障したりして、船体の一部の遠隔部からロボットが戻るのを妨げられると、ロボットが、それ自体を船体から取り外して水からの回収を可能にすることができることは有用である可能性がある。一例は、船体を押し付けたり、ホイールを船体から取り外したりするのに十分な力でホイールを傾けたりするための適切な機構を使用するエジェクタユニットである。このようなエジェクタユニットは、各ホイールに隣接して配置できる。
【0028】
上記の特徴のいくつかは、ロボットの複数の異なる場所で使用されている同様の部品で、ロボット用のモジュール構成を可能にすることであることに留意されよう。ロボットが長い航海で使用するために船に搭載される状況で必要な種々のスペア部品の数を最小化するのは有利である。モジュール設計を可能にすることにより、ロボットの数箇所で単一のスペア部品が利用可能である場合がある。したがって、サスペンション装置の要素、ホイールなどは、ロボットの複数の場所で同一の部品を使用する場合がある。さらに、ロボットの種々の部品またはモジュールは、ロボットの完全分解を必要とせずに、交換のために取り外し可能にすることができる。これにより、時間の制約がある場合に迅速かつ効率的な修理または交換が可能になり、ロボットから取り外されるモジュールは、次いで、例えば、船の別のワークショップや陸上でロボットから外れている間に修理およびテストされる。したがって、反りピボット機構を備えたホイールは、1つのモジュールとして取り外し可能であり得る。例示的な実施形態の操舵機構は、モジュールとして取り外し可能であり得、任意に、操舵機構は、ホイールおよび反りピボット機構と一緒に取り外し可能であり得る。
【0029】
例示的な実施形態のハブモーターは、その関連するギアリングと一緒に、ホイールと一緒にロボットから取り外し可能であり、検査及び/又は保守のために必要に応じてホイールから取り外すことができる。各ハブモーターは同じ設計であり、すべてのホイール間でハブモーターを交換できる。
効果的に操作するためには、1組のホイールの一部の部品が互いに逆であることが最善であり得るため、すべてのホイールと反りピボット機構が同一要素を使用することは不可能かもしれない。しかし、例示的な実施形態では、斜め向かいのホイールとその反りピボット機構は、1つ以上の同一要素を使用することができ、任意に、それらは完全同一であり得る。したがって、左前ホイールと反りピボット機構は、右後ホイールと反りピボット機構と同じであってもよく、同様に、前右は、設計上、後左に対応していてもよい。この対称性により、スペア部品の数を減らすことができ、ロボットの製造を簡素化することができる。
【0030】
例示的な実施形態では、操舵機構はまた、斜め向かいのホイールに対して同一であってもよく、これは、製造および保守の点でロボットをさらに改良する。
モジュール構成を形成するために斜め向かいのホイールに対して同一の要素を使用することは、それ自体が新規で独創的であるとみなされるため、第1の態様の代替の態様では、本発明は、船体に対する作業を実行するためのロボットであって、ロボットが、磁力により鉄の船体に接着できるようにする磁気ホイールを備えており、ロボットが、ロボットの長さに沿って互いから間隔があいた第1組のホイールと第2組のホイールとを備えており、各ホイールが、ロボットから取り外し可能なホイールモジュール内に設けられており、ホイールモジュールが、1つ以上のサスペンション要素と1つ以上の操舵要素とを備えており、斜め向かいのホイールモジュールが互いに同一である、ロボットを提供する。
【0031】
したがって、斜め向かいのホイールモジュールの場合、ホイールとそのサスペンション要素および操舵要素の少なくとも一部とは同一である。一部の例では、2つの斜め向かいの組のモジュールのいくつかの要素間に同一性がある、すなわち、同じ要素を各ホイールに使用できる場合もある。しかし、ロボットの特定の「コーナー」での動きに対してホイールの一部が最適化されるように、完全な対称性を避けるのが通常である。したがって、左前は、右後と同じホイールモジュールを有し、右前は、左後と同じホイールモジュールを有する。
【0032】
上記から理解されるように、この態様では、ホイールモジュールは、ホイール用の反りピボット機構を含むことができ、反対側のホイールモジュールの同一要素は、反りピボット機構の少なくとも一部の部品、任意に、反りピボット機構のすべての部品を備えることができる。したがって、ロボットは、斜め向かいのホイールモジュールにおいて完全同一である反りピボット機構を含むことができる。
【0033】
例示的な実施形態では、ロボットの操舵は、上記のように、ホイールの角度の変化及び/又は各ホイールの回転量の制御により実現することができる。したがって、ホイールは、ホイールの接触面に垂直に延びる軸の周りに回転できるようにする操舵可能なホイールであり得、斜め向かいのホイールモジュールは、同一の操舵機構を含む。上記のように反りピボット機構が使用される場合、操舵機構は、反りピボット機構のブラケットを回転させることができる。一部の例では、操舵機構は、操舵アームと、各操舵可能なホイールのヨークとを含み、ヨークは、ホイールの位置を変えることなくホイールの回転を可能にするために配置され、ヨークと操舵アームは、斜め向かいのホイールモジュールに対して同一である。
【0034】
第1の態様に対して上記したように、ハブモーターは、対応するホイールモジュールに対して同一であり得るため、ハブモーターとその関連するギアリングは、斜め向かいのホイールモジュールに対して同一であり得る。
この代替の態様のロボットは、第1の態様の特徴及び/又は第1の態様に関連するオプションの特徴として上記の他の特徴のいずれかと組み合わせることができることがさらに理解されよう。したがって、この態様のロボットは、第1の態様に対して上記のサスペンション装置を含むことができたり、本明細書に記載の他の特徴を含むことができたりする。したがって、ロボットは、上記のように、サスペンションピボットを備えた回転梁を含むことができ、この梁は、ロボットの横方向または縦方向に延びることができる。
【0035】
要素をモジュールにグループ化するには、理想的には、主にモジュールを取り外して単一の組み合わせ部品として交換できることが必要であることを理解されたい。それは、モジュールが、例えば、反りピボット機構モジュールまたは操舵モジュールなど、他のより小さなモジュールを含み得ることを排除しない。また、例えば、梁モジュールに取り付けられているホイールモジュールなど、モジュールが、より大きなモジュールの一部であってもよいことを排除するものではない。
【0036】
ロボットが垂直の船体表面上を移動できるだけでなく、船体の基部で下向きに面する船体表面を部分的または完全に反転できるように、例示的な実施形態の磁力は、ロボットの重量を、例えば、少なくとも4対1の係数、または6対1の係数だけ超える必要がある。したがって、磁気ホイールは、ロボットを船体に固定するための主な機構であり得、例示的な実施形態では、磁気ホイールは、ロボットを船体に固定するために使用される唯一の機構である。したがって、ロボットは、船体を把持するための他の磁気システム及び/又はスラスタまたは真空吸引など、他の異なる機構を有しない場合がある。
【0037】
ロボットは、磁気ホイールにより船体に取り付けられている間に、船体に対する作業を実行するためのものである。作業には、船体の洗浄及び/又は検査が含まれる。例示的な実施形態では、ロボットの主な目的は、船体の表面を洗浄して、例えば、汚損を取り除いたり、船体の塗装仕上げを維持したりするためである。船体の検査を同時に行ってもよい。
洗浄作業を実行するために、ロボットは、ブラシであり得る洗浄機構を含んでもよい。ブラシの好ましい形態は、円筒の軸が船体表面とほぼ平行である円筒形ブラシであり、表面と接触するときに、その軸の周りに回転して表面に洗浄動作を適用するように構成されている。このブラシは、剛毛または柔軟な羽根など、その周囲の周りに多数の柔軟なブラシ要素を含むことができる。前進中に、いずれかの1組のホイールが船体と接触する前にブラシが船体に作用するように、回転する円筒形ブラシをホイールの前方に取り付けることができる。円筒形ブラシの長さは、ロボットの全幅にわたって延びていてもよく、任意に、ホイールの外側範囲を超えて延びていてもよい。これにより、ロボットの前進中に、ブラシは、ホイールの経路をきれいにすることができ、ロボットの操舵性を過度に低下させる障害となることなく、各洗浄経路の幅を広げることができる。
【0038】
本発明は、さらなる態様において、上記のロボットの使用を含む、船体を洗浄する方法など、船体に対する作業を実行するための上記のロボットの使用に及び、これは、上記のオプションの特徴または例示的な特徴のいずれかを含むことができる。
本発明はまた、任意にその特徴を含む、上記のロボットの製造に及ぶ。したがって、ロボットの製造方法は、任意の態様に関して上記の特徴を提供すること、およびロボットを組み立てるために適切にそれらの特徴を一緒に結合することを含むことができる。有利には、これは、上記のように、モジュール要素及び/又は同一の部品を使用するモジュール式構造を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
次に、特定の好ましい実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して説明する。
図1】斜視図の船体洗浄ロボットを示す図である。
図2】サスペンション装置のモジュール性を示している、図1のロボットを分解図で示す図である。
図3図1のロボットにしっかりと固定されている1組のホイールのためのサスペンション装置および操舵機構の接写図を示す図である。
図4図1のロボットに回転可能に固定されている1組のホイールのためのサスペンション装置および操舵機構の接写図を示す図である。
図5】サスペンションピボット機構の動作を示す図である。
図6a】磁気ホイールとサスペンション装置が抵抗する必要がある転倒力に対するロボットの向きの影響を示す図である。
図6b】磁気ホイールとサスペンション装置が抵抗する必要がある転倒力に対するロボットの向きの影響を示す図である。
図7図1のロボットと比べて追加の組のホイールを備えた別の船体洗浄ロボットの例を示す図である。
図8】磁気ホイールの断面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図に示されるように、ホイール式水中ロボット1は、船舶の塗装された船体を洗浄(手入れ)するなどの目的で提案されている。ロボットのホイール4は、鉄の船体に接着するために磁性である。ロボット1は、ホイール4により駆動され、ホイール4は、減速ギアにより電動モータ9により駆動され、減速ギアは、両方ともホイール4の内部にいくつかの要素と一緒にホイール4に取り付けられている。このタイプの推進システムでは、「ホイールハブ駆動」という表現が一般に使用される。
【0041】
ロボットシャーシ2は、しばしば船体表面と直角に位置しているため、ホイール4は、ロボットシャーシ2と直角な、すなわち、船体表面とほぼ直角な軸の周りに操舵される。
洗浄作業中、ロボット1は、船体の下および側面での船体表面25、ならびに船体の側面と底部との間のビルジを横断する。ロボット1は、磁気ホイール4のみを使用して船体表面を掴む、すなわち、この例示的な実施形態では、ロボット1を船体に接着させる他の機構はない。
【0042】
ロボット1は、ロボットステーション(図示せず)では静止している。ロボットステーションは、海面上の船に配置されており、作業の合間にロボット1の駐車を可能にする。すなわち、ロボット1は必要な作業の前後に船体の側面を横断し、作業が完了するとロボットステーションのガレージに戻る。
磁気ホイール4は、ロボット1を船体に接着させるために使用される機構であるため、以下の要件を満たすように構成されている:
・船体の側面や下など、すべての位置で重力に逆らってロボット1を保持する。
・波、海流、船の動きなどの流体力に逆らってロボットを保持する。
・必要な推進力(モーメント、トルク)を伝達できるように、ホイール4と船体との間に十分な摩擦を発生させるのに十分な接着力をホイール4に提供する。
・ビルジ領域を斜めに横断するときや、溶接点、パイプ出口などの凹みや突起など、船体の形状不規則性を越えるときなど、不利な形状条件の間は船体と接触し続ける。
【0043】
磁気ホイール4は、例えば、図8に示され以下に説明されるように、ホイールの周囲に配置され金属ハウジング上に保持された永久磁石を含む。金属ハウジングは、磁石の外周の周りのケーシング及び/又は磁石の内周の支持体を含み得る。船体との接触を分散させるために、ゴムやポリマー材料などの弾性材料の薄層(カバー、ライニング)がホイールの外側に形成されている。最適化された化合物は、多くの条件で良好な摩擦特性を有している。しかし、塗装された船体、特にその上に最初の海洋生成物を有する船体は、上記によるホイールカバーに対して比較的低い摩擦係数を有し得ることが知られている。磁気ホイール4と鉄表面との間の接着力は、ホイールの磁性体と表面との間の距離により支配されることも知られている。すなわち、ホイールカバー(ライニング)の厚さにより規定される「寄生」非磁性ギャップが、既に規定されたギャップを超えて増加することは許されるべきではない。したがって、船体への確実な磁気接着を確保するために、ホイールカバーは比較的薄く、好ましい実施形態では、ホイールカバーの弾性材料の厚さは、ホイールの直径の1.7%以下または3mm未満である。
【0044】
提案されたロボット1は、以下により詳細に説明されるホイールサスペンション装置をさらに含み、サスペンションは、力がホイール間で均等化されホイールの幅全体にわたって比較的一定に維持されることを保証するように構成されている。図1から図6の実施形態は、対角配置の4つのホイール(すなわち、2組のホイール4)を使用する。2組のホイール4は、梁5に取り付けられ、これらの梁の1つは、ピボット24の周りに傾斜可能である。スターラップタイプ(片面でも可)の部材12に接続されているロボットシャーシ2とほぼ直角のステアリング軸の周りで、すべてのホイール4に個々のステアリングがあり、部材12は、ホイール4の幅(接線)にわたって船体の表面とほぼ均等な接触(圧力)を有するように、ホイール4が上反りになる(傾く)ことを可能にする反りピボット11によりホイール4に接続されている。
【0045】
この装置は、1つ以上の追加のホイールの組を有するように拡張することができ、追加のホイールの組は、各々図1から図6の回転梁と同様の回転梁に取り付けられている。追加のホイールには、4輪ロボットのホイールと同様の反りピボット機構がある。3組のホイールの例が図7に示される。追加のホイールの組は、操舵されてもされなくてもよく、モーター駆動装置があってもなくてもよい。モーター駆動装置のないさらなるホイールの組の場合に、ホイールが追加の安定性と船体への磁気引力の増加を提供することが理解されよう。
4ホイールと6ホイールの両方の例の場合(実際は、さらにホイールの組が追加される場合)、各ホイールの回転梁サスペンションと反りピボット機構の組合せは、ロボットのすべてのホイールが上記による各ホイールの「反り補償」構成で均等な力で凸凹な船体表面と接触することを意味する。
【0046】
次に、ロボットの特徴が、図を参照してより詳細に説明される。ロボットの説明における「垂直」への言及は、ロボットの垂直、すなわちロボットが位置する表面と直角であり、重力の方向とは無関係であることに留意されたい。
図1では、ロボット1は完全に組み立てられた斜視図で示されている。ロボット1のシャーシ2は、ロボットの電子制御システムと、電源(バッテリーなど)、通信システム、データ記録システムなどの電機部品を囲む密閉容器3を保持するペリメーターフレームである。容器3は防水性であり、水の浸入を防ぐために密封されている。グロメットなどの適切な装置を使用して、ケーブルなどが密閉容器3のケーシングを通過できるようにすることができる。シャーシ2と容器3は、保護カバー(図示せず)と一緒に、ロボット1の本体を一緒に形成する。2つの梁「車軸」5がシャーシ2に固定されており、これらの梁5は、ホイール4ならびにサスペンション装置の関連要素およびホイール4の操舵機構を支持している。梁5は、ホイール4の回転に関して軸を形成するのではなく、各ホイール4は、図3に関して以下により詳細に説明されるそれ自体の個々の車軸を有することが理解されよう。ロボット1は、回転円筒形ブラシの形態をとる洗浄機構6を含み、これはまた、シャーシ2に固定される。ロボットの全体寸法が許す限り、4つのホイールが互いから間隔があいていることが分かるであろう。
【0047】
図2は、ロボットの構造のモジュール性を示す、ロボット1の分解図である。梁「車軸」アセンブリ7は、ホイール4をそれらの駆動装置、サスペンション、およびステアリング手段と一緒に含む取り外し可能な「モジュール」を形成する。容器3とフレーム2はエフェクトモジュールにもある。その支持体上のブラシ6はまた、洗浄(手入れ)アセンブリ8としてモジュールを形成する。モジュールに分割することにより、ロボット1の構築中に迅速かつ効率的な仕上げ組立作業が可能になり、ロボット1が現場サービスに展開されるときに修理と保守が大幅に容易になる。梁アセンブリ7は、ホイール4の要素および関連するステアリング部品用およびサスペンション部品用のモジュールなど、以下に説明されるより小さなモジュールにさらに細分される。
【0048】
ロボット1は、2つの梁5(および梁アセンブリ7のすべての要素)が互いに対して旋回する能力によりその一部が提供されるサスペンション装置を含む。したがって、一方の梁5はシャーシ2にしっかりと固定される一方、他方はシャーシ2に回転可能に取り付けられる。この例では、前部ホイール4は、関連する梁5によりシャーシ2にしっかりと固定されている。これにより、ブラシ6がサスペンション装置の動作を妨げるリスクなく、ブラシ6の近くに位置することができる。図4に示されるように、後部ホイール4は、シャーシ2に回転可能に固定され、関連する梁5は、ピボット24によりシャーシ2に結合される。したがって、2組のホイールは、船体表面の湾曲したセクションまたは凸凹なセクションに続く位置に移動することができる。
【0049】
図3は、前方梁アセンブリ7の詳細図を示す。上記のように、前方梁アセンブリ7は、フレームにしっかりと固定されており、これは、ボルト18により行われる(フレームは図示せず)。ホイール4、モーター9、操舵機構、反りピボット機構に関連する部品は、図4に示される後方梁アセンブリ7の部品と同様である。実際は、ホイール4とその関連するサスペンション部品および操舵部品には、斜め向かいの要素が同一であるモジュール設計がある。したがって、左前ホイールは、反りピボット機構および操舵機構の同一の要素を備えた右後の同等モジュールと同一であるモジュールで保持され、同等に右前と左後に類似性がある。電動モータ9は、必要なギアも含むハウジング内にあり、これらの部品のいくつかは、ホイール4のハブ内に保持されている。このハブモーター装置により、各ホイール4は、必要に応じて独立して、モーター9のハウジングへの接続により形成された各ホイール4の「車軸」を用いて駆動することができる。したがって、ホイール4は、モーター9のハウジングに回転可能に固定されている。
【0050】
ロボットのサスペンション装置の別の部分を形成する反りピボット機構は、(各ホイールに対して)モーター9のハウジングに固定されたブラケット10、およびホイール4の前後のピボットボルトにより形成された反りピボット11によりブラケット10に接続しているスターラップ12(この例ではクレードル状構造)を含む。反りピボット11の作用下にホイール4が回転する自由に影響を与えるバネまたは他の弾性バイアス機構はない。スターラップ12は、操舵機構により梁5に結合されている。ホイール4は、前後のピボットボルトを通るラインにより画定された反りピボット軸の周りの所定角度内で、梁5に対して自由に旋回する。この反りピボット軸は、ホイール4の回転軸と直角であり、ロボット1の垂直軸に対してほぼ水平方向に延びている。また、それは、通常、ロボット1が配置されている船体の表面と平行に位置するであろう。反りピボット機構により、ホイールは、船体表面が、凸凹、またはロボットシャーシ2の基準となる向きに対して斜めになっている場合でも、ホイール接触面が船体表面に最大限に位置合わせされて、接続する船体表面に対して常に「直立」するように適応できる。この「ホイール反り補償」角度は、スターラップ12の移動停止手段19により、いずれかの回転方向の指定角度に制限される。
【0051】
スターラップ12は、ハウジング13により梁5に回転可能に固定され、ハウジング13は、梁5としっかりと固定され、ホイール4の操舵機構の要素を形成する。スターラップ12は、平鋼から形成することにより製造することができる。それは、2つ以上のこのような棒鋼を有し得るという意味で積層され得、そして棒鋼は、等しくない長さであり得る。これにより、クレードルは、比較的硬くはあるが、前後方向だけでなく垂直方向にもやや柔軟になる。それは、いくつかの方向に堅く跳ね上がるホイールサスペンションを可能にするが、ホイールの方向を制御することができるように、「垂直操舵軸」の周りに十分に剛性が高い。このサスペンションの弾性は、ロボットの駆動、牽引、接着、ステアリング特性に重大な悪影響を及ぼさないように、またサスペンション装置の静的な力の点でバイアスや弾性を追加しないように調整することができる。しかし、ホイール4からの打撃に対してロボット、特に制御システムおよび電力システムの電子機器および電気機器を緩衝するために、動的衝撃荷重のある程度の吸収を可能にすることは有益である可能性がある。
【0052】
各ホイールには操舵機構が設けられており、上記のように、斜め向かいのホイールに同一の部品を使用している。操舵機構は、ハウジング13の周りのスターラップ12の回転、ひいてはロボット1の向きを基準に(より正確には梁5の向きを基準に)ほぼ垂直方向の周りのホイールの回転を可能にする。ハウジング13の上部の操舵アーム14は、ハウジング13を通過するシャフトに結合され、スターラップ12の上部に固定されている。これは、ハウジング13のベアリング22内を延びている。操舵アーム14は、ピボットまたはボールジョイント23などにより、ドラッグリンク15により操舵入力アーム16に接続される。この装置は、「平行四辺形機構」として幾何学的に設定することができる。機構の上面図に見られるように、アーム14およびアーム16は、「非平行」に設定されて、同じ軸上の1組の操舵ホイール4の間にいわゆる「アッカーマン」効果を生むことができる。とりわけ、いずれかのホイール4の移動弧の中心が、操舵される曲線の半径の中心で互いに遮断することを保証することに関するアッカーマン効果は、代替的に、操舵アクチュエータ17のための制御システムにより生むことができる。この効果の目的は、操舵動作中のホイール4と船体との滑り接触を最小化することである。操舵アクチュエータ17は、梁5に固定されている、すなわち、それらは、梁アセンブリ17の一体部分を形成する支持体に取り付けられ得、それらは、梁5と一緒に移動する。代替設計では、単一の操舵アクチュエータが梁アセンブリ17の両方のホイール4に接続することができる。操舵アクチュエータ17は、通常、減速ギアにより出力操舵アーム16を駆動する電動機を有する。さらに、アクチュエータ17は、両方向でアーム16の操舵角を制限する一体式端部ストッパー21を有することができる。
【0053】
上記のように、図4は後方梁アセンブリ7を示し、これは前方梁アセンブリ7と大まかに類似している(斜め向かいのホイール4と同じ部品を含む)。それは、梁5が、内部のホイールの移動を可能にするために、ロボットのシャーシ2に回転可能に取り付けられているという点で異なる。これは、モジュールの車軸5に固定されているサスペンションピボット24により実現される。サスペンションピボット24の軸の周りに旋回する回転梁5の自由度は、移動端部ストッパー(図示せず)により、いずれかの方向の所定角度に制限される。代替的に、最大許容操舵角の端部ストッパーを、スターラップなどでホイールの近くに配置できることが理解される。サスペンションピボット24の周りの回転梁5の動きに影響を与えるバネまたは同様の弾性機構はない。
【0054】
ホイール4、モーター9、反りピボット機構10、11、12、および操舵アーム14、ベアリング22、ハウジング13、ステアリングロッド(ドラッグリンク)15を含む操舵機構に使用される要素が、梁5から取り外すことができるモジュールに形成されることに留意されたい。これらのモジュールは、ロボットの製造および保守中に要素を交換できる斜め向かいのホイールモジュールに対して同一である。操舵アクチュエータ17およびアクチュエータ操舵アーム16はまた、斜め向かいのホイールモジュールに対して同一であり得るか、4つのホイールすべてに対して類似する可能性がある場合もある。真向かいのホイール(したがって、ロボットと同じ側のホイールでもある)反りピボット機構など、一部の部品に鏡面対称が存在する場合がある。
【0055】
図5は、回転梁5の動作を示し、ロボットが、船体の側面と底部との間の船体表面25上の凸凹な膨らみを斜めに横断することを示している。前方梁5bは、ロボットのシャーシ2に固定されているため、シャーシ2と整列している。後方梁5aは、ピボット24でシャーシ2に取り付けられているため、シャーシ2および前方梁5bに対して回動することができる。図5は、そのホイールが船体表面25に続くために梁5bが旋回している様子を示す。本図はまた、ホイール4が反りピボット11の周りに旋回して船体表面25に整列するため、ホイールが局所的に表面に対して「直立」する様子を示す。サスペンションピボット24または反りピボット11には、バネまたは他のバイアスがないため、これらの角度合わせを確実にする力は、ホイール4の磁気接着力であると理解される。
【0056】
これは、ロボットが船体の底部の下で「反転」されているか、船体の側面にあるか、またはこれらの領域の間のビルジ部分にあるかなど、船体表面25上のロボット1の位置にかかわらず有効になる。さらに、各ホイールの磁気接着力は、すべての位置で、ロボットに対する重力、ならびに波、潮流などの海水からの力、またはロボットが水中を移動しているときの流体力学的抵抗により誘発される力を切り抜けるような寸法であることが理解される。さらに、接着力は、ロボットが操作している可能性のあるツールから生じる反力に対処するような寸法である。
【0057】
図6a及び図6bは、船体の側面に配置されたロボットを示し、この場合、ロボットは、2つの異なる方法で「転倒」しやすい。図6aでは、図の上部ホイールが船体表面との接触を失うと、ロボットは、底部ホイールと船体表面との間の接触点28の周りに反転する可能性がある。図6bでは、ロボット1の下側のホイールのピボット11の周りに同じことが当てはまる。さらなる故障モードは、各磁気ホイールがその端部29の周りに平行に転倒することであろう。ホイールの十分な幅「b」を、「低い」重心27および重心27の高さ「a」に対する「低い」ピボット高さ「c」と一緒に、十分に強い磁気接着力26と組み合わせることにより、ロボットはどちらの向きにも転倒(反転)しない。したがって、図に見られるように、ピボット高さ「c」、すなわち反りピボット軸の高さは、ホイールの回転軸よりも船体の表面に近い。この説明では、「低い」とは、船体から離れたロボットの範囲、すなわちロボットの垂直軸の意味で関連している。このように、4つ(またはそれ以上)のホイールを備えたロボットの使用は、潜在的な転倒点が重心からさらに離れて間隔があいているため、3輪ロボットに比べて利点がある。
【0058】
上記のように、さらにホイールを追加することが可能である。図7は、3つの梁5と3つの組の6つのホイールを備えたロボットを示す。追加された梁5dが追加のピボット31により他の回転梁5cに結合されるため、このロボットは、4つのホイールを備えたバージョンと同様に、湾曲した船体への接触を維持することができ、これにより、2つの梁を相互に、またシャーシ2と残りのホイールの組の固定梁5に対して移動することができる。舷外材30は、シャーシ2に固定され、ピボット31は、ロボットの左右(横)方向の軸で、長手部材32を舷外材31に接続する。車軸5cおよび車軸5dは、サスペンションピボット24により部材32に接続され、サスペンションピボット24は、4輪ロボットのサスペンションピボット24と同様に機能する。この機構は、磁気ホイール4が、このような船体の形状を補償するために、さもなければホイールサスペンションで発生する力により制限されないという意味で、6つのホイール4すべてが船体の凸凹面または曲面に等しく接触することを保証する。各ホイールには、上記の反りピボット機構と同様の構造を有し得る反りピボット機構がある。6つのホイールすべてを操舵してもよく、代替的に6つのホイールすべてよりも少ない数により操舵することが可能であり得る。サスペンションの種々のレベルでピボットを使用して、同様に、さらなるホイールを備えた車軸を追加することができる。
【0059】
図8は、上記のロボットで使用することができる磁気ホイール4の断面図を示す。これには、ホイール4内にあるモーター9の部品が含まれる。この図では、モーターハウジング37は、モーター(図示せず)および、モーター9とホイール4との間の減速ギアの両方を含む。モーターからの出力シャフト36は、ホイールのハブに接続されている。このシャフト36およびそのフランジは、ベアリング(図示せず)上に支持されている。ホイールリム35は、ホイールハブにより出力シャフト36に固定され、これは、一群のリング磁石コア34を保持する。多数のこれらのコア34は、リムに一緒に保持され、固定され得ることが理解される。最後に、弾性カバー33は、磁石コア34の周囲に固定され、任意に、磁石を囲む介在ケーシングを備えている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8