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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】低ヘイズのポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20231226BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20231226BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20231226BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08L79/08 A
C08K5/00
C08G73/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020547172
(86)(22)【出願日】2019-03-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 US2019020700
(87)【国際公開番号】W WO2019173301
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】62/640,874
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519372065
【氏名又は名称】デュポン エレクトロニクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コスタンティノス コータキス
(72)【発明者】
【氏名】ジーン エム.ロッシ
(72)【発明者】
【氏名】ペギー スコット
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-119867(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0079743(KR,A)
【文献】特開2019-048976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00- 5/24
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C08G73/00- 73/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸無水物と;
ジアミンと;
色調整化合物と
を含む低ヘイズのポリイミドフィルムであって、
1~150μmの範囲の厚さと;
前記同じ二酸無水物及びジアミン組成であるが、前記色調整化合物を含まない低ヘイズのポリイミドフィルムと比較される場合、0.2超の|Δa*|でゼロにより近いa*及びゼロから最大で0.2更に離れているb*、又は0.2超の|Δb*|でゼロにより近いb*及びゼロから最大で0.2更に離れているa*と;
4%未満のヘイズと
を有し、
前記色調整化合物は、ペリレンから選択され、
前記二酸無水物は、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、シクロブタン二酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、ビスフェノールA二酸無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二酸無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、およびそれらの混合物からなる群から選択され、
前記ジアミンは、フッ素化ジアミンを含み、
前記色調整化合物は、5~500ppmの範囲の量で前記低ヘイズのポリイミドフィルム中に存在する
低ヘイズのポリイミドフィルム。
【請求項2】
前記二酸無水物は、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物を含む、請求項1に記載の低ヘイズのポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記フッ素化ジアミンは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを含む、請求項1に記載の低ヘイズのポリイミドフィルム。
【請求項4】
前記ペリレンは、ピグメントバイオレット29である、請求項1に記載の低ヘイズのポリイミドフィルム。
【請求項5】
90超のL*を有する、請求項1に記載の低ヘイズのポリイミドフィルム。
【請求項6】
5~125μmの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の低ヘイズのポリイミドフィルム。
【請求項7】
請求項1に記載の低ヘイズのポリイミドフィルムを含む電子デバイス。
【請求項8】
前記低ヘイズのポリイミドフィルムは、デバイス基板、カラーフィルターシート用基板、カバーシート及びタッチセンサーパネルからなる群から選択されるデバイス構成要素において使用される、請求項7に記載の電子デバイス。
【請求項9】
前記カバーシートは、ハードコート層、反射防止層、又はハードコート層と反射防止層の両方を更に含む、請求項8に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、低ヘイズのポリイミドフィルムである。
【背景技術】
【0002】
低ヘイズのポリイミドフィルムは、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイなどのディスプレイ用途に現在使用されている硬質ガラスカバーシート及び他の基板に取って代わることができる可能性を有する。ポリイミドは、典型的には、320℃超のガラス転移温度(Tg)で非常に熱的に安定であり、優れた折り畳み性及び巻き取り性、次世代のフレキシブルディスプレイに必要とされる決定的に重要な特性を有する。ディスプレイ用途に使用されるポリイミドフィルムにとって、高い透過率及び低いヘイズを有することに加えて、ポリイミドフィルムは、色がニュートラルである必要もある。典型的な仕様は、a*及びb*両方がCIE L*、a*、b*色空間座標のニュートラル(0)から1色単位以下であることを要求しており、すなわち、a*及びb*の絶対値は、1未満であるべきである。CIE L*、a*、b*の3つの座標は、(1)色の明度(L*=0は、黒を生じさせ、L*=100は、拡散白色を示す)、(2)赤色/マゼンタ色と緑色との間のその位置(負のa*値は、緑色を示す一方、正の値は、マゼンタ色を示す)、及び(3)黄色と青色との間のその位置(負のb*値は、青色を示し、正の値は、黄色を示す)を表す。
【0003】
フッ素化モノマーを用いた典型的なポリイミドは、ほぼ無色であるものの、青色又はバイオレット波長(400~450nm)の光を吸収し、それは、透過での黄色外観をフィルムに与える。ポリイミドフィルムの色は、主に、ポリマー鎖内及びポリマー鎖間の両方で起こり得るHOMO-LUMO遷移に起因する電荷移動吸収から生じる。HOMO-LUMO遷移エネルギーを変更するか又は鎖間相互作用を妨げるために、様々なアプローチが用いられてきた。1つのアプローチでは、ポリイミドポリマーのHOMO-LUMO遷移エネルギーを変更するためにフッ素化モノマーが使用されるが、これらのポリイミドフィルムには、依然として若干の残留黄色が見られる場合がある。そのため、ポリイミドのモノマー組成に応じて、b*は、1より大きい場合がある。フィルムのCIE L*、a*、b*色測定は、その厚さにも依存するため、OLEDディスプレイのためのフレキシブルカバーシートアセンブリにとって典型的な厚さである、25μm超のものなどのより厚いフィルムについて、ニュートラル外観を達成することは、更により困難である。
【0004】
黄色度を下げる別のアプローチでは、ポリイミドの吸収を効果的に釣り合わせ、且つこれらのフィルムの黄色外観を低下させるために、青色顔料又はバイオレット顔料など、可視光領域に約570nm以上の最大吸収波長を有する化合物がポリイミドフィルム中に含まれ得る(米国特許出願公開第2017/0190880A1号明細書を参照されたい)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、低ヘイズのポリイミドフィルムは、二酸無水物と、ジアミンと、色調整化合物とを含む。低ヘイズのポリイミドフィルムは、1~150μmの範囲の厚さと、同じ二酸無水物及びジアミン組成であるが、色調整化合物を含まない低ヘイズのポリイミドフィルムと比較される場合、0.2超の|Δa*|でゼロにより近いa*及びゼロから最大で0.2更に離れているb*、又は0.2超の|Δb*|でゼロにより近いb*及びゼロから最大で0.2更に離れているa*と、4%未満のヘイズとを有する。
【0006】
第2の態様において、電子デバイスは、第1の態様の低ヘイズのポリイミドフィルムを含む。
【0007】
前述の概要及び以下の詳細な説明は、例示的及び説明的であるにすぎず、添付の特許請求の範囲において規定されるような本発明を限定しない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
第1の態様において、低ヘイズのポリイミドフィルムは、二酸無水物と、ジアミンと、色調整化合物とを含む。低ヘイズのポリイミドフィルムは、1~150μmの範囲の厚さと、同じ二酸無水物及びジアミン組成であるが、色調整化合物を含まない低ヘイズのポリイミドフィルムと比較される場合、0.2超の|Δa*|でゼロにより近いa*及びゼロから最大で0.2更に離れているb*、又は0.2超の|Δb*|でゼロにより近いb*及びゼロから最大で0.2更に離れているa*と、4%未満のヘイズとを有する。
【0009】
第1の態様の一実施形態において、二酸無水物は、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、シクロブタン二酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0010】
第1の態様の別の実施形態において、二酸無水物は、フッ素化二酸無水物を含む。特定の実施形態において、フッ素化二酸無水物は、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物を含む。
【0011】
第1の態様のその上別の実施形態において、ジアミンは、フッ素化ジアミンを含む。特定の実施形態において、フッ素化ジアミンは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを含む。
【0012】
第1の態様の更に別の実施形態において、色調整化合物は、ペリレン、ジオキサジン、トリアリールメタン及びそれらの混合物からなる群から選択される。特定の実施形態において、ペリレンは、ピグメントバイオレット29である。別の特定の実施形態において、ジオキサジンは、カルバゾールジオキサジンを含む。より特定の実施形態において、カルバゾールジオキサジンは、ピグメントバイオレット23である。
【0013】
第1の態様の更なる実施形態において、低ヘイズのポリイミドフィルムは、90超のL*を有する。
【0014】
第1の態様のその上更なる実施形態において、低ヘイズのポリイミドフィルムは、5~125μmの範囲の厚さを有する。
【0015】
第1の態様のなおも更なる実施形態において、色調整化合物は、5~500ppmの範囲の量で低ヘイズのポリイミドフィルム中に存在する。
【0016】
第2の態様において、電子デバイスは、第1の態様の低ヘイズのポリイミドフィルムを含む。
【0017】
第2の態様の一実施形態において、低ヘイズのポリイミドフィルムは、デバイス基板、カラーフィルターシートのための基板、カバーシート及びタッチセンサーパネルからなる群から選択されるデバイス構成要素において使用される。特定の実施形態において、カバーシートは、ハードコート層、反射防止層、又はハードコート層と反射防止層の両方を更に含む。
【0018】
多くの態様及び実施形態が上に記載されてきたが、例示的であるにすぎず、限定的ではない。本明細書を読んだ後、当業者は、他の態様及び実施形態が本発明の範囲から逸脱することなく可能であることを十分に理解する。本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【0019】
文脈に応じて、本明細書で用いられるような「ジアミン」は、(i)未反応形態(すなわちジアミンモノマー);(ii)部分的に反応した形態(すなわちジアミンモノマーに由来するか若しくはさもなければそれに起因するオリゴマー若しくは他のポリイミド前駆体の1つ若しくは複数の部分)、又は(iii)完全に反応した形態(ジアミンモノマーに由来するか若しくはさもなければそれに起因するポリイミドの1つ若しくは複数の部分)を意味することを意図する。ジアミンは、本発明の実施において選択される特定の実施形態に応じて、1つ以上の部分で官能化することができる。
【0020】
実際に、用語「ジアミン」は、ジアミン成分中のアミン部分の数に関して限定的である(又は文字通り解釈される)ことを意図しない。例えば、上記の(ii)及び(iii)は、2、1又はゼロのアミン部分を有し得るポリマー材料を含む。代わりに、ジアミンは、(二酸無水物と反応してポリマー鎖を増加させるモノマーの末端でのアミン部分に加えて)追加のアミン部分で官能化され得る。そのような追加のアミン部分は、ポリマーを架橋するか又は他の官能性をポリマーに提供するために使用することができるであろう。
【0021】
同様に、本明細書において用いられるような用語「二酸無水物(dianhydride)」は、ジアミンと反応する(ジアミンを優遇する)成分及び組み合わせて反応して中間体ポリアミック酸(それは、次に、ポリイミドに硬化させることができる)を形成し得る成分を意味することを意図する。文脈に応じて、本明細書において用いられるような「酸無水物(anhydride)」は、酸無水物部分自体のみならず、(i)カルボン酸基の対(それは、脱水若しくは同様のタイプの反応によって酸無水物に変換することができる);又は(ii)酸無水物官能性への変換が可能である酸ハロゲン化物(例えば、塩化物)エステル官能性(若しくは現在公知の若しくは将来開発される任意の他の官能性)など、酸無水物部分の前駆体も意味することができる。
【0022】
文脈に応じて、「二酸無水物」は、(i)未反応形態(すなわち前の上記段落において考察されたような、酸無水物官能性が真の酸無水物形態にあろうと、前駆体酸無水物形態にあろうと、二酸無水物モノマー);(ii)部分的に反応した形態(すなわち二酸無水物モノマーから反応したか若しくはさもなければそれに起因するオリゴマー又は他の部分的に反応したか若しくは前駆体ポリイミド組成物の1つ若しくは複数の部分)、又は(iii)完全に反応した形態(二酸無水物モノマーに由来するか若しくはさもなければそれに起因するポリイミドの1つ若しくは複数の部分)を意味することができる。
【0023】
二酸無水物は、本発明の実施において選択される特定の実施形態に応じて、1つ以上の部分で官能化することができる。実際に、用語「二酸無水物」は、二酸無水物成分中の無水物部分の数に関して限定的である(又は文字通り解釈される)ことを意図しない。例えば、(上記段落における)(i)、(ii)及び(iii)は、酸無水物が前駆体状態にあるか又は反応した状態にあるかに応じて、2、1又はゼロの酸無水物部分を有し得る有機物質を含む。代わりに、二酸無水物成分は、(ジアミンと反応してポリイミドを提供する酸無水物部分に加えて)追加の酸無水物タイプ部分で官能化され得る。そのような追加の酸無水物部分は、ポリマーを架橋するか又は他の官能性をポリマーに提供するために使用することができるであろう。
【0024】
低ヘイズのポリイミドフィルムを調製するために多数のポリイミド製造プロセスのいずれか1つが用いられ得る。本発明の実施において有用な全ての可能なポリイミド製造プロセスを考察又は記載することは、不可能であろう。本発明のモノマー系は、様々な製造プロセスにおいて上記の有利な特性を提供し得ることが十分に理解されるべきである。本発明の組成物は、本明細書に記載されているように製造することができ、任意の従来の又は非従来的なポリイミド製造技術を用いて、当業者の多くの(おそらく無数の)方法のいずれか1つで容易に製造することができる。
【0025】
本明細書に記載されるものと類似の又は均等な方法及び材料を本発明の実施又は試験において使用することができるが、好適な方法及び材料は、本明細書に記載されている。
【0026】
量、濃度又は他の値若しくはパラメーターが、範囲、好ましい範囲又は上方の好ましい値及び下方の好ましい値の一覧のいずれかとして示される場合、これは、範囲が個別に開示されているかどうかに関わらず、任意の上方の範囲限界又は好ましい値と、任意の下方の範囲限界又は好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示していると理解されるべきである。ある範囲の数値が本明細書において列挙される場合、特に明記しない限り、その範囲は、その終点並びにその範囲内の全ての整数及び分数を包含することを意図する。本発明の範囲は、範囲を明確にする場合に列挙された具体的な値に限定されることを意図されない。
【0027】
特定のポリマーの記載において、それらを製造するために使用されるモノマー又はそれらを製造するために使用されるモノマーの量により、本出願人らがポリマーに言及していることが理解されるべきである。そのような記載は、最終ポリマーを記述するために用いられる特定の命名法を含まなくてもよいか又はプロダクトバイプロセス専門用語を含有しなくてもよいが、モノマー及び量へのいかなるそのような言及も、ポリマーがそれらのモノマー又はその量のモノマーから製造されること並びに対応するポリマー及びそれらの組成を意味すると解釈されるべきである。
【0028】
本明細書における材料、方法及び実施例は、例示的であるにすぎず、具体的に述べられる場合を除き、限定的であることを意図しない。本明細書で用いられる場合、用語「含む」、「含んでいる」、「包含する」、「包含している」、「有する」、「有している」又はそれらのいかなる他の変形も、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、要素の一覧を含む方法、プロセス、物品又は装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されず、明確に列挙されていないか、又はこのような方法、プロセス、物品若しくは装置に固有の他の要素を包含し得る。更に、明確にそれとは反対を述べられない限り、「又は」は、包括的な又はを意味し、排他的な又はを意味しない。例えば、条件A又はBは、下記のいずれか1つによって満たされる:Aが真であり(又は存在し)且つBが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在せず)且つBが真である(又は存在する)、並びにA及びBが両方とも真である(又は存在する)。
【0029】
また、「1つの(a)」又は「1つの(an)」の使用は、本発明の要素及び成分を記載するために用いられる。これは、便宜上及び本発明の一般的な意味を示すために行われるにすぎない。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、単数形は、そうではないことを意味していることが明らかでない限り、複数形も包含する。
【0030】
有機溶媒
本発明のポリイミドの合成のための有用な有機溶媒は、好ましくは、ポリイミド前駆体物質を溶解させることができる。そのような溶媒は、適度な(すなわちより便利な及びあまりコストがかからない)温度でポリマーを乾燥させることができるように、225℃未満などの比較的低い沸点を有するべきでもある。210、205、200、195、190又は180℃未満の沸点が好ましい。
【0031】
本発明の溶媒は、単独で又は他の溶媒(すなわち共溶媒)と組み合わせて使用され得る。有用な有機溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラメチル尿素(TMU)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン(モノグリム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン(トリグリム)、ビス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル)]エーテル(テトラグリム)、ガンマ-ブチロラクトン及びビス(2-メトキシエチル)エーテル、テトラヒドロフランが挙げられる。一実施形態において、好ましい溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)及びジメチルアセトアミド(DMAc)が挙げられる。
【0032】
共溶媒は、一般に、全溶媒の約5~50重量パーセントで使用することができ、有用なそのような共溶媒としては、キシレン、トルエン、ベンゼン、「セロソルブ」(グリコールエチルエーテル)及び「セロソルブアセテート」(ヒドロキシエチルアセテートグリコールモノアセテート)が挙げられる。
【0033】
ジアミン
一実施形態において、p-フェニレンジアミン(PPD)、m-フェニレンジアミン(MPD)、2,5-ジメチル-1,4-ジアミノベンゼン、2,5-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン(DPX)、2,2-ビス-(4-アミノフェニル)プロパン、1,4-ナフタレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノターフェニル、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ジアミノフェニルベンゾエート、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MDA)、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス-(4-(4-アミノフェノキシ)フェニルスルホン(BAPS)、4,4’-ビス-(アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-イソプロピリデンジアニリン、2,2’-ビス-(3-アミノフェニル)プロパン、N,N-ビス-(4-アミノフェニル)-n-ブチルアミン、N,N-ビス-(4-アミノフェニル)メチルアミン、1,5-ジアミノナフタレン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、m-アミノベンゾイル-p-アミノアニリド、4-アミノフェニル-3-アミノベンゾエート、N,N-ビス-(4-アミノフェニル)アニリン、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、2,4-ジアミン-5-クロロトルエン、2,4-ジアミン-6-クロロトルエン、2,4-ビス-(ベータ-アミノ-t-ブチル)トルエン、ビス-(p-ベータ-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、p-ビス-2-(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、m-キシリレンジアミン及びp-キシリレンジアミンなどの任意の数の好適なジアミンを、低ヘイズのポリイミドフィルムを形成するのに使用することができる。
【0034】
他の有用なジアミンとしては、1,2-ビス-(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス-(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1-(4-アミノフェノキシ)-3-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス-(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1-(4-アミノフェノキシ)-4-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス-(4-[4-アミノフェノキシ]フェニル)プロパン(BAPP)、2,2’-ビス-(4-フェノキシアニリン)イソプロピリデン、2,4,6-トリメチル-1,3-ジアミノベンゼン、2,4,6-トリメチル-1,3-ジアミノベンゼンが挙げられる。
【0035】
一実施形態において、低ヘイズのポリイミドフィルムを形成するための好適なジアミンとしては、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、トリフルオロメチル-2,4-ジアミノベンゼン、トリフルオロメチル-3,5-ジアミノベンゼン、2,2’-ビス-(4-アミノフェニル)-ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノ-2,2’-トリフルオロメチルジフェニルオキシド、3,3’-ジアミノ-5,5’-トリフルオロメチルジフェニルオキシド、9.9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-トリフルオロメチル-2,2’-ジアミノビフェニル、4,4’-オキシ-ビス-[2-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン](1,2,4-OBABTF)、4,4’-オキシ-ビス-[3-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、4,4’-チオ-ビス-[(2-トリフルオロメチル)ベンゼン-アミン]、4,4’-チオビス[(3-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、4,4’-スルホキシル-ビス-[(2-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン、4,4’-スルホキシル-ビス-[(3-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、4,4’-ケト-ビス-[(2-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、1,1-ビス[4’-(4”-アミノ-2”-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]シクロペンタン、1,1-ビス[4’-(4“-アミノ-2“-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]シクロヘキサン、2-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル;1,4-(2’-トリフルオロメチル-4’,4”-ジアミノジフェノキシ)-ベンゼン、1,4-ビス(4’-アミノフェノキシ)-2-[(3’,5’-ジトリフルオロメチル)フェニル]ベンゼン、1,4-ビス[2’-シアノ-3’(”4-アミノフェノキシ)フェノキシ]-2-[(3’,5’-ジトリフルオロメチル)フェニル]ベンゼン(6FC-ジアミン)、3,5-ジアミノ-4-メチル-2’,3’,5’,6’-テトラフルオロ-4’-トリフルオロメチルジフェニルオキシド、2,2-ビス[4’(4”-アミノフェノキシ)フェニル]フタレイン-3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)アニリド(6FADAP)及び3,3’,5,5’-テトラフルオロ-4,4’-ジアミノ-ジフェニルメタン(TFDAM)などのフッ素化ジアミンを挙げることができる。特定の実施形態において、フッ素化ジアミンは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)である。
【0036】
二酸無水物
一実施形態において、任意の数の好適な二酸無水物を、低ヘイズのポリイミドフィルムを形成するのに使用することができる。二酸無水物は、それらのテトラ酸形態において(又はテトラ酸のモノ、ジ、トリ若しくはテトラエステルとして)又はそれらのジエステル酸ハロゲン化物(塩化物)として使用することができる。しかしながら、いくつかの実施形態において、二酸無水物形態は、それが一般に酸又はエステルよりも反応性が高いために好ましいものであり得る。
【0037】
好適な二酸無水物の例としては、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2-(3’,4’-ジカルボキシフェニル)5,6-ジカルボキシベンズイミダゾール二酸無水物、2-(3’,4’-ジカルボキシフェニル)5,6-ジカルボキシベンゾオキサゾール二酸無水物、2-(3’,4’-ジカルボキシフェニル)5,6-ジカルボキシベンゾチアゾール二酸無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ-[2,2,2]-オクテン-(7)-2,3,5,6-テトラカルボン酸-2,3,5,6-二無水物、4,4’-チオ-ジフタル酸無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二酸無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホキシド二酸無水物(DSDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニルオキサジアゾール-1,3,4)p-フェニレン二酸無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)2,5-オキサジアゾール1,3,4-二酸無水物、ビス2,5-(3’,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル)1,3,4-オキサジアゾール二酸無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)チオエーテル二酸無水物、ビスフェノールA二酸無水物(BPADA)、ビスフェノールS二酸無水物、ビス-1,3-イソベンゾフランジオン、1,4-ビス(4,4’-オキシフタル酸無水物)ベンゼン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二酸無水物、シクロペンタジエニルテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ペリレン3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3-ビス-(4,4’-オキシジフタル酸無水物)ベンゼン、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二酸無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,8,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ベンゼン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物及びシクロブタン二酸無水物(CBDA)が挙げられる。
【0038】
一実施形態において、低ヘイズのポリイミドフィルムを形成するための好適な二酸無水物としては、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)及び5,5-[2,2,2]-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチリデンなどのフッ素化二酸無水物を挙げることができる。特定の実施形態において、フッ素化二酸無水物は、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)である。
【0039】
色調整化合物
一実施形態において、本発明による色調整化合物は、ペリレン、ジオキサジン、トリアリールメタン、アントラセン及びそれらの混合物であり得る。一実施形態において、ジオキサジンであり得る色調整化合物は、カルバゾールジオキサジンである。ペリレン、カルバゾールジオキサジン、ジオキサジン、トリアリールメタン及びアントラセン系統におけるこれらの色調整化合物は、およそ570~590nmの黄色波長範囲を含むおよそ530nm~640nmの光を吸収する(すなわちおよそ530nm~640nmに少なくとも1つの吸収を有する)ことによってポリイミドの青色-バイオレット吸収を相殺することができる。意外にも、これらの色調整化合物は、ポリアミック酸及びポリアミックフィルムをポリイミドフィルムに変換するために使用される空気又は不活性雰囲気中での比較的高い温度処理(典型的には300℃超)に相溶性がある。それらは、意外にも、イミド形成中に閉環のために水を脱離するイミド化プロセス後に有効なままであるのに十分に加水分解に安定でもある。比較して、530nm~640nmに所望の青色-バイオレット吸収を有する他の熱的に安定な化合物は、ポリイミドフィルムの黄色外観を正確に色相殺することができない。
【0040】
一実施形態において、ペリレンである色調整化合物は、ピグメントバイオレット29(ペリレンの誘導体、C241024)であり得る。一実施形態において、ジオキサジンである色調整化合物は、ピグメントバイオレット23(9,19-ジクロロ-5,15-ジエチル-5,15-ジヒドロジインドロ[2,3-c:2’,3’-n]トリフェノジオキサジン、カルバゾールから誘導されるジオキサジンバイオレット化合物)又はピグメントバイオレット37であり得る。一実施形態において、トリアリールメタンである色調整化合物は、ピグメントバイオレット4、ピグメントバイオレット27又はメチルバイオレット10B(クリスタルバイオレット若しくはヘキサメチルパラロサニリンクロリド)、メチルバイオレット2B(N-(4-(ビス(4(ジメチルアミノ)フェニル)メチレン)シクロヘキサ-2,5-ジエン-1-イリデン)メタナミニウムクロリド)若しくはメチルバイオレット6Bなどのメチルバイオレット化合物であり得る。一実施形態において、アントラセンである色調整化合物は、アントラキノン(1,4-ジアミノ-2,3-ジクロロアントラセン-9,10-ジオン)であるソルベントバイオレット31であり得る。一実施形態において、色調整化合物は、ピグメントバイオレット31(ジクロロビオラントロン)であり得る。
【0041】
一実施形態において、色調整化合物の組み合わせが使用され得る。例えば、2つの化合物の「複合カラー」がバイオレット領域にあるように、赤色化合物が青色化合物と組み合わされ得る。当業者は、任意の数の色調整化合物を組み合わせて所望のスペクトル特性を達成し得ること及び化合物の全てがポリイミドフィルムの加工温度で熱的に安定である必要があることを十分に理解するであろう。
【0042】
光を吸収する色調整化合物の能力は、色調整化合物の化学によってのみならず、粒径及びモルフォロジーなど、それらの物理的特性によっても影響を及ぼされ得る。当業者は、色調整化合物の物理的特性の修正が低ヘイズのポリイミドフィルムの所望の特性を達成するために必要とされ得ることを十分に理解するであろう。
【0043】
一実施形態において、同じ二酸無水物及びジアミン組成であるが、色調整化合物を含まない低ヘイズのポリイミドフィルムと比較される場合、0.2超のa*の変化の絶対値|Δa*|でゼロにより近いa*及びゼロから最大で0.2更に離れているb*、又は0.2超のb*の変化の絶対値|Δb*|でゼロにより近いb*及びゼロから最大で0.2更に離れているa*を有するフィルムを製造するために色調整化合物を使用することができる。換言すれば、色座標の少なくとも1つは、よりニュートラルな色(ゼロの方)にシフトしており、a*又はb*の変化の絶対値は、0.2超である。例えば、低ヘイズのポリイミドフィルムは、色調整化合物なしで-1のa*を有し得、色調整化合物を添加した後に-0.8超のa*を有するか、又は低ヘイズのポリイミドフィルムは、色調整化合物なしで-1.5のb*を有し得、色調整化合物を添加した後に1.3未満のb*を有する。
【0044】
一実施形態において、低ヘイズのポリイミドフィルム中の色調整化合物の量は、5~500ppm、又は10~300ppm、又は20~200ppmの範囲である。
【0045】
低ヘイズのポリイミドフィルム
本発明による低ヘイズのポリイミドフィルム層は、ジアミン及び二酸無水物(モノマー又は他のポリイミド前駆体形態)を一緒に溶媒と組み合わせてポリアミック酸(ポリアミド酸とも呼ばれる)溶液を形成することによって製造することができる。二酸無水物及びジアミンは、約0.90~1.10のモル比で組み合わせることができる。それらから形成されるポリアミック酸の分子量は、二酸無水物とジアミンとのモル比を調整することによって調節することができる。ヘイズは、ASTM1003によって記載されている、平均して2.5度超だけ入射ビームから外れる光の量を測定する方法を用いて前方散乱光を集めることによって透過率で定義される。一実施形態において、低ヘイズのポリイミドフィルムは、4%未満、又は2%未満、又は1%未満のヘイズを有する。
【0046】
一実施形態において、ポリアミック酸キャスティング溶液は、ポリアミック酸溶液に由来する。ポリアミック酸キャスティング溶液は、好ましくは、ポリアミック酸溶液を含み、任意選択的に、(i)脂肪族酸無水物(無水酢酸など)及び/又は芳香族酸無水物などの1種以上の脱水剤、並びに(ii)脂肪族第三級アミン(トリエチルアミンなど)、芳香族第三級アミン(ジメチルアニリンなど)及びヘテロ環式第三級アミン(ピリジン、ピコリン、イソキノリンなど)などの1種以上の触媒のような変換化学物質と組み合わせることができる。酸無水物脱水物質は、多くの場合、ポリアミック酸中のアミド酸基の量と比べてモル過剰で使用される。使用される無水酢酸の量は、典型的には、ポリアミック酸の1当量(繰り返し単位)当たり約2.0~4.0モルである。一般に、匹敵する量の第三級アミン触媒が使用される。
【0047】
一実施形態において、ポリアミック酸溶液及び/又はポリアミック酸キャスティング溶液は、約5.0又は10重量%~約15、20、25、30、35及び40重量%の濃度で有機溶媒に溶解される。
【0048】
一実施形態において、色調整化合物は、ポリアミック酸と相溶性があり、且つポリイミドの高温加工に耐えることができる可溶性又は良分散性の(有効径が主にサブ1000nm又は主にサブ500nmである)有機化合物である。
【0049】
ポリアミック酸(及びキャスティング溶液)は、加工助剤(例えば、オリゴマー)、酸化防止剤、光安定剤、難燃性添加剤、帯電防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、無機充填材又は様々な強化剤などの多数の添加剤のいずれか1つを更に含むことができる。これらの無機充填材としては、金属酸化物、無機窒化物及び金属炭化物のような、熱伝導性充填材、並びに金属、黒鉛炭素及び炭素繊維のような導電性充填材、並びに導電性ポリマーが挙げられる。一般的な無機充填材は、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、ダイヤモンド、粘土、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、二酸化チタン、リン酸二カルシウム及びヒュームド金属酸化物である。一般的な有機充填材としては、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリジアルキルフルオレン、カーボンブラック、黒鉛、多層及び単層カーボンナノチューブ並びに炭素ナノ繊維が挙げられる。
【0050】
溶媒和混合物(ポリアミック酸キャスティング溶液)を次にエンドレスベルト又は回転ドラムなどの支持体上にキャスト又は塗布してフィルムを得ることができる。次に、溶媒含有フィルムを変換化学反応剤(化学硬化)と一緒に適切な温度で加熱する(熱硬化させる)ことにより、自立フィルムに変換することができる。次に、フィルムを支持体から分離し、熱硬化及び化学硬化を継続しながら、幅出しなどによって配向させてポリイミドフィルムを提供することができる。
【0051】
本発明に従って低ヘイズのポリイミドフィルムを製造するための有用な方法は、米国特許第5,166,308号明細書及び米国特許第5,298,331号明細書に見出すことができ、これらは、本明細書での全ての教示のために本明細書に参照によりに援用される。以下のような多数の変形形態も可能である:
(a)ジアミン成分及び二酸無水物成分が事前に一緒に混合され、次に混合物が撹拌しながら溶媒に少しずつ添加される、方法。
(b)溶媒がジアミン成分と二酸無水物成分との撹拌混合物に添加される、方法。(上記の(a)とは反対に)
(c)ジアミンが溶媒に独占的に溶解され、次に二酸無水物が、反応速度の制御を可能にするような比率でそれに添加される、方法。
(d)二酸無水物成分が溶媒に独占的に溶解され、次にアミン成分が、反応速度の制御を可能にするような比率でそれに添加される、方法。
(e)ジアミン成分及び二酸無水物成分が溶媒に別々に溶解され、次にこれらの溶液が反応器中で混合される、方法。
(f)アミン成分が過剰であるポリアミック酸及び二酸無水物成分が過剰である別のポリアミック酸が事前に形成され、次に特にノンランダムコポリマー又はブロックコポリマーをもたらすような方法で反応装置中において互いに反応される、方法。
(g)アミン成分及び二酸無水物成分の特定部分が最初に反応され、次に残りのジアミン成分が反応されるか又はその逆である、方法。
(h)変換化学物質がポリアミック酸と混合されてポリアミック酸キャスティング溶液を形成し、次にキャストされてゲルフィルムを形成する、方法。
(i)成分が部分的に又は全体として任意の順番で溶媒の一部又は全部のいずれかに添加され、また任意の成分の一部又は全てが溶媒の一部又は全て中の溶液として添加され得る、方法。
(j)二酸無水物成分の1つをジアミン成分の1つと最初に反応させて第1のポリアミック酸をもたらす方法。次に、他の二酸無水物成分を他のアミン成分と反応させて第2のポリアミック酸をもたらす。次に、フィルム形成前に多数の方法のいずれか1つでアミド酸を組み合わせる。
【0052】
一実施形態において、ポリイミドがDMAc又はNMPなどの非プロトン性溶媒に可溶である場合、ポリイミドは、任意選択的に、より高い温度(50℃超)において触媒を添加して、溶液中で形成することができる。ろ過後、ポリイミド粉末を溶媒に再溶解することができる。ポリイミド溶液を次に支持体(例えば、移動ベルト又は固定支持体)上にキャストし、合体させてポリイミドフィルムをもたらすことができる。
【0053】
ポリマーフィルムの厚さは、フィルムの意図される目的又は最終用途仕様に応じて調整され得る。一実施形態において、低ヘイズのポリイミドフィルムは、1~150μm、又は5~125μm、又は10~75μm、又は20~50μmの範囲の全厚さを有する。
【0054】
一実施形態において、ポリアミック酸を溶液キャストすることができる。キャスト溶液は、ポリイミドに後に硬化する未硬化ポリアミック酸フィルムを形成する。一実施形態において、ポリイミドフィルムは、スロットダイから移動ステンレス鋼ベルト上にキャストすることによって調製される。一実施形態において、ベルトは、次に、対流オーブンを通過して溶媒を蒸発させ、ポリマーを部分的にイミド化させて「グリーン」フィルムをもたらす。グリーンフィルムをキャスティングベルトから剥ぎ取り、巻き取ることができる。グリーンフィルムは、次に、テンターオーブンを通過して完全硬化ポリイミドフィルムをもたらすことができる。いくつかの実施形態において、テンタリング中、収縮は、端縁に沿ってフィルムを束縛すること(すなわちクリップ又はピンを使用すること)によって最小限にすることができる。
【0055】
用語「ゲルフィルム」は、ポリアミック酸がゲル膨張状態又はゴム状状態にあるような程度まで揮発性物質、主として溶媒に満ちており、且つ化学変換プロセスにおいて形成され得るポリアミック酸シートを指す。揮発性物質含有量は、ゲルフィルムの通常70~90重量%の範囲であり、ポリマー含有量は、通常、10~30重量%の範囲である。最終フィルムは、ゲルフィルム段階で「自立性」になる。それがその上にキャストされた支持体からそれを剥ぎ取り、最終硬化温度まで加熱することができる。ゲルフィルムは、一般に、10:90~50:50、ほとんどの場合に30:70のアミド酸対イミド比を有する。
【0056】
ゲルフィルム構造は、米国特許第3,410,826号明細書に記載されている方法によって調製することができる。この特許は、低温でのポリアミック酸溶液への低級脂肪酸無水物及び第三級アミンなどの化学変換剤及び触媒の混合を開示している。これに、キャスティングドラム上にフィルム形態でポリアミック酸溶液をキャストする工程が続く。フィルムは、キャストフィルムをポリアミック酸/ポリイミドゲルフィルムに変えるため、変換剤及び触媒を活性化するためにキャスティング後に例えば100℃で穏やかに加熱される。
【0057】
別のタイプのポリイミドベースフィルムは、部分的にポリアミック酸及び部分的にポリイミドであり、且つ熱変換プロセスにおいて形成され得る「グリーンフィルム」である。グリーンフィルムは、一般に、約50~75重量%のポリマーと25~50重量%の溶媒とを含有する。一般に、それは、実質的に自立するほど十分に強いものであるべきである。グリーンフィルムは、キャスティングドラム又はベルトなどの好適な支持体上にフィルム形態でポリアミック酸溶液をキャストすること及び150℃以下で穏やかに加熱することにより溶媒を除去することによって調製することができる。ポリマー中の低い割合のアミド酸単位は、イミド単位に変換され得る。
【0058】
用途
一実施形態において、低ヘイズのポリイミドフィルムは、有機電子デバイスにおいてなどの電子デバイス用途において使用することができる。1つ以上の低ヘイズのポリイミド層を有することから恩恵を受け得る有機電子デバイスとしては、(1)電気エネルギーを放射に変換するデバイス(例えば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、照明デバイス、照明器具又はダイオードレーザー)、(2)エレクトロニクスプロセスによって信号を検出するデバイス(例えば、光検出器、光伝導セル、フォトレジスター、フォトスイッチ、フォトトランジスター、光電管、赤外検出器、バイオセンサー)、(3)放射を電気エネルギーに変換するデバイス(例えば、光起電デバイス又は太陽電池)、(4)1つの波長の光をより長い波長の光に変換するデバイス(例えば、ダウンコンバートリン光体デバイス);及び(5)1つ以上の有機半導体層を含む1つ以上の電子構成部品を含むデバイス(例えば、トランジスター又はダイオード)が挙げられるが、それらに限定されない。低ヘイズのポリイミドフィルムのための他の用途としては、記憶保存デバイス、帯電防止フィルム、バイオセンサー、エレクトロクロミック素子、固体電解質キャパシター、再充電可能バッテリーなどのエネルギー貯蔵デバイス及び電磁遮蔽用途を挙げることができる。
【0059】
一実施形態において、低ヘイズのポリイミドフィルムは、フレキシブルディスプレイデバイスを形成するために、有機電子デバイスなどの電子デバイスにおいて、ガラスの柔軟性のある代替品としての役割を果たすことができる。有機電子デバイスに存在してもしなくてもよい層としては、カラーフィルター、タッチセンサーパネル及び/又はカバーシート(カバーレンズ又はカバーフィルムとしても知られる)が挙げられる。これらの層の1つ以上は、これらの層内に使用される基板又はデバイスの他の部品に加えて、本明細書に開示される低ヘイズのポリイミドフィルムから製造され得る。特定の実施形態において、低ヘイズのポリイミドフィルムは、電子デバイスのためのカバーシートに及び電子デバイスに使用することができる。
【0060】
一実施形態において、カバーシート(カバーレンズ又はカバーフィルム)は、ハードコート層、反射防止層、又はハードコート層と反射防止層の両方も含む。シロキサン若しくはアクリル層などのハードコート又はナノ粒子複合層は、カバーシートの表面硬度を高め、湾曲したディスプレイの側面にマッチする湾曲した保護フィルムの形成を可能にするために低ヘイズのポリイミドフィルムの表面上に使用され得る。カバーシートは、比較的高い、典型的にはポリイミドのTgに近いか又はそれよりも高い温度で成形可能であり、且つ十分な硬度を維持しながら、比較的高い柔軟性(すなわち比較的小さい曲げ半径)及び比較的高い破断伸びを維持することができなければならない。
【0061】
本発明の有利な特性は、本発明を例示するが、それを限定しない以下の実施例を参照することによって見ることができる。全ての部及び百分率は、特に明記しない限り、重量による。
【実施例
【0062】
試験方法
ポリイミドフィルム及び色調整化合物の熱安定性試験
硬化ポリイミドフィルム及び純粋な色調整化合物を熱安定性試験のために同じ加熱手順にかけた。
【0063】
ポリイミドフィルムについて、15ミルのクリアランス(約1ミルの硬化フィルムに対して)及び30ミルのクリアランス(約2ミルの硬化フィルムに対して)のドクターブレードを使用してポリアミック酸混合物をガラス表面上にキャストした。フィルムを20分間80℃に加熱し、その後、ガラス表面から離昇し、3×8インチのピンフレーム上に取り付けた。純粋な色調整化合物について、およそ100mgの色調整化合物をガラスシンチレーションバイアルに入れた。取り付けられたフィルム及びガラスバイアルを炉(Thermolyne(商標)F6000箱形炉、Thermo Fisher Scientific,Inc.,Waltham,MA)に入れた。
【0064】
両方の場合、炉を窒素でパージし、以下の温度プロトコル:
25℃から45℃まで(5℃/分)、45℃で5分間保持;
45℃から150℃まで(20℃/分)、150℃で10分間保持;
150℃から250℃まで(20℃/分)、250℃で10分間保持;
250℃から350℃まで(20℃/分)、350℃で5分間保持
に従って加熱した。シンチレーションバイアルを5分間350℃に加熱した後、オーブンから「ホットで」取り出し、空気中で放冷した。化合物安定性は、目視検査及びUV-可視分光測定法によって測定した。実施例及び比較例の全てについてのフィルムは、320℃よりも高い温度に熱的に安定であった。
【0065】
CIE L*、a*、b*色の測定
色測定は、ColorQuest(登録商標)XEデュアルビーム分光光度計(Hunter Associates Laboratory,Inc.,Reston,VA)を使用し、D65照明及び10°の観察者を用いて、380~780nmの波長範囲にわたって全透過モードで行った。
【0066】
UV-可視分光測光法
色調整化合物を5±1mgをDMAc(Alfa Aesar,CAS-127-19-5;ロットK02Y661)に溶解させることによってUV-可視分析の準備をした。DMAcへの原液の1:10希釈液の2mlを10mmのQSキュベットに等分し、UV-可視走査分光光度計(UV-1800、島津製作所、日本)で分析した。分析は、200~900nmの波長の範囲のスペクトル走査モードで行った。
【0067】
ヘイズ
ヘイズは、ASTM1003によって記載される方法を用いて前方散乱光を集めることにより、ヘイズが透過率で測定される状態でHaze-Guard Plus(BYK-Gardner GmbH,Germany)を使用して測定した。パーセントヘイズは、平均して2.5度超だけ入射ビームから外れている光の量を測定することによって求めた。
【0068】
比較例1
比較例1(CE1)について、BPDA 0.6/6FDA 0.4//TFMB 1.0(モル当量)のモノマー組成のポリアミック酸溶液を大きい回分反応器で製造した。窒素パージされる80ガロン反応器中で17,500gのトリフルオロメチルベンジジン(TFMB、セイカグループ、和歌山精化工業株式会社、日本)及び136,830gのジメチルアセトアミド(DMAc)を撹拌し、かき混ぜた。9,406gのビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA、三菱化学株式会社、日本)及び9,468gの4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA,Synasia,Metuchen,NJ)を6時間にわたって4つの別個のアリコートで添加した。反応混合物をこの手順中に約40℃に維持した。15.520gのBPDA及び15.622gの6FDAの3つの追加のアリコートをおよそ3時間の期間にわたって反応混合物に添加した。プレポリマーの粘度は、約100ポアズであった。
【0069】
窒素パージされる反応器中でDMAc中の6重量%のピロメリット酸二無水物の混合物を使用してポリマーの一部を約1700ポアズまで重合させた(「仕上げた」)。材料を40℃で約24時間にわたってPMDA溶液で重合させた。
【0070】
比較例2及び比較例3
比較例2及び3(CE2及びCE3)について、BPDA 0.6/6FDA 0.4//TFMB 1.0(モル当量)のモノマー組成のポリアミック酸溶液を実験室規模調製で製造した。500ミリリットルの窒素パージされる樹脂ケトルに60.47gのTFMBを381.70gのDMAc溶媒(HPLCグレード,Honeywell,USA)に添加した。33.00gの6FDA及び32.86gのBPDAを3つの5分~10分間隔にわたって3つのアリコートで添加した。追加の95.42gのDMAcを添加した。これらの添加中に反応混合物を40℃に保持した。DMAc中の6重量%のPMDA溶液の小さい添加を使用して、ポリマーを約400ポアズまで仕上げた。
【0071】
遠心遊星ミキサー(THINKY USA,Laguna Hills,CA)を使用してポリマーを脱気してプレポリマーからガスを2000rpmで5分間、続いて2200rpmで30秒間排出した。ポリマーの更なる脱気が必要とされる場合、この手順を繰り返した。
【0072】
比較例4
比較例4(CE4)について、6FDA 1.0//TFMB 1.0(モル当量)のモノマー組成のポリアミック酸溶液を実験室規模調製で製造した。窒素グローブボックス中でパージされる300mlのビーカーに16.875gのTFMB(セイカ、日本)を160.00gのDMAc溶媒(HPLCグレード,Honeywell,USA)に添加した。23.125gの6FDA(Synasia、日本)を30分間にわたってゆっくりとした添加で添加した。反応物を室温で一晩撹拌した。DMAc中の6重量%のPMDA溶液の小さい添加を使用して、ポリマーを約2000ポアズまで「仕上げた」。
【0073】
遠心遊星ミキサーを使用してポリマーを脱気してプレポリマーからガスを2000rpmで5分間、続いて2200rpmで10分間排出した。ポリマーの更なる脱気が必要とされる場合、この手順を繰り返した。
【0074】
比較例5
比較例5(CE5)について、20gのポリアミック酸を50mlの容器に最初に添加することによって色調整化合物スラリーを調製した。100gのDMAc及び0.06gのピグメントバイオレット29(Paliogen(登録商標)Red Violet K 5411,BASF Corp.,Florham Park,NJ)を次に容器に添加した。遠心遊星ミキサーを使用して2000rpmで2分間混合物を混合して、色調整化合物とポリアミック酸及び溶媒との0.05重量%スラリーをもたらした。
【0075】
ポリマー/色調整化合物複合材料の調製について、CE2に記載されたような100gのポリアミック酸を、上に記載された1gの色調整化合物スラリーと組み合わせた。遠心遊星ミキサーを使用して混合物を2000rpmで2分間かき混ぜた。混合物を次に2200rpmで10分間混合してポリマー/色調整化合物複合材料を脱気した。硬化ポリマー中の色調整化合物の計算される最終ローディングは、23.8ppmであった。
【0076】
ステンレス鋼ドローダウンバーを使用してポリマーをキャストした。クリアランスを調整するためのテープ(Scotch(登録商標)Filament tape 898,3M Co.,St.Paul,MN)を使用してクリアランスを調整した。ポリマーをガラス表面上にキャストした。フィルムを15分間85℃に加熱し、その後、ガラス表面から離昇し、8×10インチピンフレーム上に取り付けた。
【0077】
取り付けられたフィルムを150℃での炉に入れ、320℃に急速に加熱し、次に320℃のオーブンから取り出し、空気中で放冷した。
【0078】
CE5は、低ヘイズのポリイミドフィルムと色調整化合物との組み合わせについて、色調整化合物の使用がフィルムのCIE L*、a*、b*色座標をわずかに改善するが、色調整化合物のローディングが所望の色ずれを提供するには低すぎることを実証する。
【0079】
実施例1~7
実施例1~7(E1~E7)について、CE5に記載されたのと同じ手順を用いたが、色調整化合物ローディングは、表2に示す通りであった。E1~E7は、低ヘイズのポリイミドフィルムのCIE L*、a*、b*色座標を、色調整化合物ローディングを調節することによって最適化できることを実証する。
【0080】
実施例8
実施例8(E8)について、CE5に記載されたのと同じ手順を用いて、表2に示されるような色調整化合物ローディングで6FDA 1.0//TFMB 1.0(モル当量)のポリアミック酸組成物を製造した。
【0081】
実施例9
実施例9(E9)について、E8に記載されたのと同じ手順を用いたが、色調整化合物ローディングは、表2に示す通りであった。E8及びE9は、ピグメントバイオレット29(BASF)を用いた6FDA//TFMBフィルムについて、これらのローディングレベルで良好なフィルムを製造できることを実証する。
【0082】
実施例10~14及び比較例6
実施例10~14(E10~E14)及び比較例6(CE6)について、ピグメントバイオレット23(Sun Chemical Co.,Parsippany,NJ)と共にCE1のポリアミック酸を使用して、CE5に記載されたような手順を用いて、表2に示されるような色調整化合物ローディングを有するフィルムを調製した。E10~E14及びCE6は、色調整化合物ローディング及びフィルム厚さの両方を調節することにより、所望の色ずれをこのフィルム系において達成できることを実証する。
【0083】
比較例7
比較例7(CE7)について、亜鉛フタロシアニン(0.0084g)を乾燥N,N-ジメチルアセトアミド(16.7916g)と組み合わせることによって亜鉛フタロシアニン(Sigma-Aldrich,Milwaukee,WI)の0.05重量%溶液を調製した。結果として生じた混合物を、色調整化合物が完全に溶解するまでロールミルにかけた。
【0084】
CE3に記載されたポリアミック酸溶液(26.1768g、5.4971g乾燥ポリマー)を0.05重量%の亜鉛フタロシアニン溶液(10.8450g)と組み合わせることにより、1000ppmの亜鉛フタロシアニンを含有するポリイミドフィルムを調製した。2分間2000rpmで遠心遊星ミキサーを使用してポリマー/色調整化合物溶液を十分に混合した。混合物を次に1分間2200rpmで混合してポリアミック酸混合物を脱気した。
【0085】
15ミルのクリアランス(約1ミルの硬化フィルムに対して)及び30ミルのクリアランス(約2ミルの硬化フィルムに対して)のドクターブレードを使用してポリマーをガラス表面上にキャストした。フィルムを20分間80℃に加熱し、その後、ガラス表面から離昇し、3×8インチのピンフレーム上に取り付けた。
【0086】
比較例8~比較例12
比較例8~12(CE8~CE12)について、CE7に記載されたのと同じ手順を用いたが、色調整化合物ローディングは、表2に示す通りであった。
【0087】
比較例13
比較例13(CE13)について、CE7に記載されたのと同じ手順を用いたが、ホウ素サブフタロシアニン化合物を使用した。CE3に記載されたポリアミック酸溶液(24.8427g、5.2170g乾燥ポリマー)を0.05重量%のホウ素サブフタロシアニンクロリド溶液(1.0447g)と組み合わせることによってポリイミドフィルムを調製した。硬化ポリマー中の色調整化合物の計算されるローディングは、100ppmであった。
【0088】
比較例14
比較例14(CE14)について、CE7に記載されたのと同じ手順を用いたが、キナクリドン化合物を使用した。CE3に記載されたポリアミック酸溶液(25.6795g、5.3927g乾燥ポリマー)を0.05重量%のキナクリドン溶液(1.0786g)と組み合わせることによってポリイミドフィルムを調製した。硬化ポリマー中の色調整化合物の計算されるローディングは、100ppmであった。
【0089】
CE7~CE14は、可視スペクトルの上方範囲で強く吸収する化合物を単に組み入れることが、必ずしも所望のCIE L*、a*、b*色座標のフィルムをもたらさないことを実証する。
【0090】
実施例15~23
実施例15~23(E15~E23)について、ピグメントバイオレット29と共にCE1のポリアミック酸を使用して、CE5に記載されたのと同じ手順を用いて、表2に示されるような色調整化合物ローディングを有するフィルムを調製した。E15~E20について、Sigma-Aldrich製の色調整化合物を使用し、E21~E23について、Sun Chemical製の色調整化合物を使用した。E15~E23は、(E1~E9と一緒に)異なる粒径及びモルフォロジーのペリレン化合物(ピグメントバイオレット29)が、所望のCIE L*、a*、b*色座標を達成するために必要とされる色調整化合物ローディングに影響を及ぼすことを実証する。それらの粒径及び/又はモルフォロジーを変更するための色調整化合物の事前処理は、改善された性能をもたらし得る。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
概要において上に記載された活動の全てが必要とされるわけではないこと、特定の活動の一部が必要とされなくてもよいこと及び更なる活動が、記載されたものに加えて行われ得ることに留意されたい。なおも更に、活動のそれぞれが列挙される順番は、必ずしもそれらが行われる順番であるわけではない。本明細書を読んだ後、当業者は、それらの具体的な必要又は要望のためにいずれの活動を用いることができるかを決定することができるであろう。
【0094】
前述の本明細書において、本発明は、具体的な実施形態に関連して説明されてきた。しかしながら、当業者は、以下の特許請求の範囲に説明されるような本発明の範囲から逸脱することなく様々な修正形態及び変更形態がなされ得ることを十分に理解する。本明細書で開示される全ての特徴は、同じ、均等な又は同様の目的に役立つ代わりの特徴によって置き換えられ得る。従って、本明細書及び図面は、限定的な意味よりもむしろ例示的な意味で考えられるべきであり、全てのそのような修正形態が本発明の範囲内に包含されることを意図する。
【0095】
利益、他の利点及び問題の解決策が特定の実施形態に関して上で述べられてきた。しかしながら、利益、利点、問題の解決策及び何らかの利益、利点又は解決策を生じさせるか又はより顕著にさせ得るいかなる要素も、特許請求の範囲のいずれか又は全ての決定的に重要な、必要な又は本質的な特徴又は要素と解釈されるべきではない。
【0096】
量、濃度又は他の値若しくはパラメーターが、範囲、好ましい範囲又は上方値及び下方値の一覧のいずれかとして示される場合、これは、範囲が個別に開示されているかどうかに関わらず、任意の上限範囲又は好ましい値と、任意の下限範囲又は好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示していると理解されるべきである。ある範囲の数値が本明細書において列挙される場合、特に明記しない限り、その範囲は、その終点並びにその範囲内の全ての整数及び分数を包含することを意図する。本発明の範囲は、範囲を明確にする場合に列挙された具体的な値に限定されることを意図されない。