(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】縮合硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20231226BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20231226BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K7/02
C08K9/04
(21)【出願番号】P 2020548678
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 US2019022410
(87)【国際公開番号】W WO2019190775
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-01
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ディミトローヴァ、タチアナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン スティップハウト、アンマリー
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-520658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/04
C08K 7/02
C08K 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンエラストマー組成物であって、
(a)1分子当たり少なくとも2つの-OH基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサンと、
(b)ポリジオルガノシロキサン(a)を架橋する架橋剤と、
(c)充填剤成分であって、
(i)最大値で前記組成物の25重量%の炭酸カルシウム及び/又はシリカと、
(ii)ある量の、鉱質繊維、バルク繊維、耐火繊維、玄武岩繊維、又はこれらの混合物から選択される1つ以上の繊維質充填剤と、
のみからなる充填剤成分と、
(d)縮合硬化性触媒と、任意選択的に、
(e)1つ以上の添加剤と、を含み、
硬化時に、2×10
15Ω.cm以上の体積抵抗率を有するシリコーンエラストマーを提供する、
シリコーンエラストマー組成物。
【請求項2】
成分(c)(i)が、沈降若しくは粉砕炭酸カルシウムを含み、これらの各々において
、100m
2/g超のBET比表面積を有し、かつ/又は疎水性ヒュームドシリカを含む、請求項1に記載のシリコーンエラストマー組成物。
【請求項3】
成分(c)(ii)が、1つ以上のアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化アルミニウム、及び酸化鉄、並びにこれらの混合物から構成される繊維から選択される1つ以上の繊維質充填剤を含む、請求項1又は2に記載のシリコーンエラストマー組成物。
【請求項4】
成分(c)(ii)が、主にSiO
2、遷移金属酸化物、前記アルカリ及びアルカリ土類元素の酸化物からなる1つ以上の繊維質充填剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のシリコーンエラストマー組成物。
【請求項5】
成分(c)(ii)が、100μm~150μmの繊維長、及び(c)(ii)の総重量の30重量%未満のCaO/MgO含有量を有する、1つ以上のセラミック繊維又は屈折繊維を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のシリコーンエラストマー組成物。
【請求項6】
成分(c)(i)が、前記充填剤を疎水性にする
ために、脂肪酸若しく
は脂肪酸エステルのうちの1つ以上から選択される
充填剤処理剤によって、又はオルガノシラン、オルガノシロキサン、若しくはオルガノシラザン
の充填剤処理剤を使用して、処理されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のシリコーンエラストマー組成物。
【請求項7】
充填剤成分(c)が、前記組成物の10重量%~50重量%の量で存在
する、請求項1~6のいずれか一項に記載のシリコーンエラストマー組成物。
【請求項8】
充填剤成分(c)
が、前記組成物
の5重量%~15重量%の種別(c)(i)充填剤、及び前記組成物の15重量%~40重量
%の種別(c)(ii)繊維質充填剤
である、請求項1~7のいずれか一項に記載のシリコーンエラストマー組成物。
【請求項9】
使用前に少なくとも2パーツで保管さ
れる、請求項1~8のいずれか一項に記載のシリコーンエラストマー組成物。
【請求項10】
使用前に少なくとも2パーツで保管され、
第1パーツが、
ポリジオルガノシロキサン(a)、
充填剤成分(c)、及び
前記充填剤処理剤を含む、主剤組成物であり、
第2パーツが、硬化剤である、
請求項
6に記載のシリコーンエラストマー組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物
の硬化
生成物である、2×10
15Ω.cm以上の体積抵抗率を有する、シリコーンエラストマー。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物から、前記組成物を硬化させることによって、シリコーンエラストマーを調製する方法。
【請求項13】
請求項6に記載の組成物から、前記組成物を硬化させることによって、シリコーンエラストマーを調製する方法であって、
前記組成物の調製において、成分(c)(i)を、前記充填剤処理剤
を使用してその場で処理する
、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気絶縁性シーラント及び/又は接着剤として使用することができる、縮合硬化型オルガノシロキサン組成物に関する。
【0002】
硬化してエラストマー固形化する縮合硬化性オルガノシロキサン組成物は、公知のものである。典型的には、このような組成物は、反応性末端基、例えばヒドロキシ基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサンを、例えば、ポリジオルガノシロキサンと反応するシラン架橋剤、例えば、アセトキシシラン、オキシモシラン、アミノシラン、又はアルコキシシランと、好適な触媒の存在下で混合することにより得られる。このような組成物は、典型的には、その物理的特性を増強する補強充填剤、例えば、シリカ及び/又は炭酸カルシウムを含有している。
【0003】
これらの組成物は、一パーツの組成物又は二パーツの組成物として市販されているものでもよい。前者(一パーツの組成物)は、大気の湿気と接触して硬化する。後者(二パーツの組成物)は、典型的には、触媒及び架橋剤が「硬化剤」として、反応性末端基を有するポリジオルガノシロキサンポリマー、及び充填剤(例えば、CaCO3)とは別個に保たれるように、調製される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的のために、用語「硬化剤」は、触媒、架橋剤、及び任意選択的に他の成分を含有するが、反応性末端基を有するポリジオルガノシロキサンを除いた、パーツを意味するのに使用する。
【0005】
シーラント、カプセル材、及び接着剤は、広範な状況及び用途において機械的固定具を置換するのにますます多用されてきており、多くの場合、より安価でより迅速な製造プロセスを物品の製造にもたらし得る。このような物品の少なくともいくつかのパーツは電気回路を備えていることが増加しており、結果として、接着するための好適なシーラント、及び/又は同様に絶縁体として機能するこのような物品のシール組立パーツが、必要とされている。電気絶縁性シリコーンシーラント又は接着剤を使用することが有益な典型例としては、パーツと隣接材料との間、並びに/又はガラス、金属、及びプラスティック基材などのパーツ間に、恒久的なシール及び/又は接着性を生じさせることが必要な光電池用途でのシーラント及び及び接着剤が挙げられるが、これらに限定されない。また、材料の絶縁特性は、時を経ても、例えば長期間風雨にさらされた後でも、維持されている必要がある。広範なシーラント/接着剤組成物が提唱されてきており、その最も好都合なもののうちのいくつかは、シリコーン系材料である。ヒドロシリル化硬化シリコーン組成物は、概して好ましいものではなく、その理由は接着性に乏しいためであるが、他方、縮合硬化系には問題があり得、その理由は、いくつかの事例において絶縁性が十分に良好ではないためである。
【0006】
驚くべきことに、本発明者らは、硬化時に機械的特性と固有体積抵抗率との良好なバランスを提供するシリコーン組成物を見出した。「体積抵抗率」(オーム.cm(Ω.cm))は、材料の「バルク」抵抗率の尺度であり、すなわち、これは、その形状及びサイズによらない、試験済試料片の固有抵抗を示している。換言すれば、体積抵抗率は、絶縁性材料の本体を通る漏洩電流に対する抵抗である。表面抵抗率は、絶縁性材料の表面に沿った漏洩電流に対する抵抗である。したがって、表面及び/又は体積抵抗率が高くなるほど、漏洩電流が弱くなり、材料の伝導率が低くなる。
【0007】
シリコーンエラストマー組成物であって、
a)1分子当たり少なくとも2つの-OH基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサンと、
b)ポリジオルガノシロキサン(a)を架橋する架橋剤と、
c)充填剤成分であって、
(i)最大値で組成物の25重量%の炭酸カルシウム及び/又はシリカ、並びに
(ii)ある量の、鉱質繊維、バルク繊維、耐火繊維、玄武岩繊維、又はこれらの混合物から選択される1つ以上の繊維質充填剤、を含む、充填剤成分と、
d)縮合硬化性触媒と、任意選択的に、
e)1つ以上の添加剤と、を含み、
硬化時に、本明細書に記載の試験方法を使用して2×1015Ω.cm以上の体積抵抗率を有するシリコーンエラストマーを与える、
シリコーンエラストマー組成物を提供する。
【0008】
組成物を硬化することによって得られたシリコーンエラストマーであって、
a)1分子当たり少なくとも2つの-OH基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサンと、
b)ポリジオルガノシロキサン(a)を架橋する架橋剤と、
c)充填剤成分であって、
(i)最大値で組成物の25重量%の炭酸カルシウム及び/又はシリカ、並びに
(ii)ある量の、鉱質繊維、バルク繊維、耐火繊維、玄武岩繊維、又はこれらの混合物から選択される1つ以上の繊維質充填剤、を含む、充填剤成分と、
d)縮合硬化性触媒と、任意選択的に、
e)1つ以上の添加剤と、を含み、
本明細書に記載の試験方法を使用して2×1015Ω.cm以上の体積抵抗率を有する、シリコーンエラストマーを提供する。
【0009】
1分子当たり少なくとも2つの-OH基又は加水分解性基を有するポリジオルガノシロキサンは、以下の式(1)によって表すことができる。
X3-nRnSi-(Z)d-(O)q-(R1
ySiO(4-y)/2)z-(SiR1
2-Z)d-Si-RnX3-n (1)
式中、dは0又は1であり、qは0又は1であり、d+q=1であり;
nは0、1、2、又は3であり、zは200~5000の整数であり、yは0、1、又は2、あるいは2である。R1
ySiO(4-y)/2の少なくとも97%は、yが2であることで特徴付けられる。Xはヒドロキシル基若しくはアルコキシ基又は任意の縮合性基若しくは任意の加水分解性基であり、Rはアルキル基、置換アルキル基などの脂肪族基、例えばアミノアルキル基、ポリアミノアルキル基、エポキシアルキル基、及びアルケニル基、又は芳香族アリール基からなる群から個々に選択され、R1はX、脂肪族アルキル基、脂肪族アルケニル基、及び芳香族基からなる群から個々に選択される。
【0010】
ポリジオルガノシロキサン(a)は、式(1)によって表される単一のシロキサンであってもよく、又は上記式によって表されるシロキサンの混合物、若しくは溶媒/ポリマー混合物であってもよい。「ポリマー混合物」という用語は、これらの種類のポリマー又はポリマーの混合物のうちのいずれかを含むことを意味する。
【0011】
各X基は、同じでも異なっていてもよく、ヒドロキシル基、及び任意の縮合性基又は加水分解性基であってもよい。用語「加水分解性基」は、室温で水によって加水分解されるケイ素に結合した任意の基を意味する。加水分解性基Xとしては、式-OT[式中、Tは、任意の炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、オクタデシル基、アリル基、ヘキセニル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、β-フェニルエチル基である];任意の炭化水素エーテル基、例えば2-メトキシエチル基、2-エトキシイソプロピル基、2-ブトキシイソブチル基、p-メトキシフェニル基、若しくは-(CH2CH2O)2CH3;又は任意のN,N-アミノ基、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、若しくはジシクロヘキシルアミノ基の基が挙げられる。
【0012】
本発明において最も好ましいX基は、ヒドロキシル基又はアルコキシ基である。例示的なアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基、及び2-エチルヘキソキシ基であり;ジアルコキシ基群としては、例えばメトキシメトキシ基群、又はエトキシメトキシ基群、及びアルコキシアリールオキシ基群、例えばエトキシフェノキシ基群である。最も好ましいアルコキシ基は、メトキシ基あるいはエトキシ基である。
【0013】
Rは、脂肪族基、例えば、アルキル基と、アミノアルキル基、ポリアミノアルキル基、エポキシアルキル基等の置換アルキル基と、アルケニル基となど、並びに芳香族アリール基からなる群から個々に選択される。最も好ましくは、メチル基、エチル基、オクチル基、ビニル基、アリル基、及びフェニル基である。
【0014】
R1は、上記のように、X基又は脂肪族アルキル基、脂肪族アルケニル基、及び芳香族基からなる群から個々に選択される。あるいは、R1基は、メチル基、エチル基、オクチル基、トリフルオロプロピル基、ビニル基、及びフェニル基から選択される。いくつかのR1基は、上記のように末端基を有してもよいポリマー主鎖から分れていてもよい、シロキサン分枝であり得る。
【0015】
Zは独立して、CwH2w[式中、wは2以上であり、あるいはwは2~10である]の種類の飽和二価脂肪族基である。
【0016】
本開示の例によるポリジオルガノシロキサン(a)は、単一のポリマーの形態で存在してもよく、又は上記式(1)において異なる程度の値のzを有するポリジオルガノシロキサン(a)のブレンドとして存在してもよい。
【0017】
シリコーンの巨大分子又はポリマー若しくはオリゴマー分子における重合度(DP)、この場合、ポリジオルガノシロキサン(a)における重合度(DP)は、通常、その中のモノマー単位の数として定義される。合成ポリマーは、異なる重合度を有する巨大分子種、したがって異なる分子量を有する巨大分子種の混合物から本質的になる。種々のタイプの平均ポリマー分子量が存在し、それらは種々の実験で測定することができる。2つの最重要の平均ポリマー分子量は、数平均分子量(M
n)及び重量平均分子量(Mw)である。シリコーンのM
n及びMw値は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、約10~15%の精度で測定することができる。この技術は標準的であり、Mw(重量平均分子量)、M
n(数平均分子量)、及び分子量分散度(PI)が得られる。DPは、Mn/Muであり、ここで、Mnは、GPC測定による数平均分子量であり、Muは、モノマー単位の分子量である。PIは、Mw/Mnである。DPが高くなるほど、粘度が高くなる。Mwを介した、DPとポリマーの粘度との数学的関係は、典型的には、13000~70000のMw値について、Log(粘度)=3.70log(Mw)-16.3であると理解されたい。(Mills,E.,European Polymer Journal,1969,675-695、特にページ682及び683、
図4及び方程式14を参照されたい)。
【0018】
懸念の払拭に関して、ポリジオルガノシロキサン(a)は、シロキサンポリマー及び/又はシリコーンポリマーとも称されることもある。ポリジオルガノシロキサン(a)は、組成物の45重量%~75重量%、あるいは組成物の50重量%~65重量%の量で存在してもよい。
【0019】
任意の好適な架橋剤(b)を使用することができる。架橋剤(b)は、ケイ素結合加水分解性基、例えばアシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、オクタノイルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基);ケトキシミノ基(例えば、ジメチルケトキシモ(ketoximo)基及びイソブチルケトキシミノ(isobutylketoximino)基);アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、イソブトキシ基及びプロポキシ基)、並びにアルケニルオキシ基(例えば、イソプロペニルオキシ基及び1-エチル-2-メチルビニルオキシ基)を含有する、1つ以上のシラン又はシロキサンであってもよい。
【0020】
シロキサン系架橋剤の場合、分子構造は、直鎖、分枝状、又は環式であってよい。
【0021】
架橋剤は、好ましくは、1分子当たり少なくとも3つ又は少なくとも4つのヒドロキシル基及び/又は加水分解性基を有し、これらは、オルガノポリシロキサン(a)におけるヒドロキシル基及び/又は加水分解性基と反応性である。架橋剤がシランであり、そのシランが1分子当たり合計3つのケイ素結合ヒドロキシル基及び/又は加水分解性基を有する場合、第4の基は、好適には非加水分解性ケイ素結合有機基である。これらのケイ素結合有機基は、好適には、フッ素及び塩素などのハロゲンによって任意選択的に置換されたヒドロカルビル基である。このような第4の基の例としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基);シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基);アルケニル基(例えば、ビニル基及びアリル基);アリール基(例えば、フェニル基及びトリル基);アラルキル基(例えば、2-フェニルエチル基)並びに前述の有機基中の水素の全部又は一部をハロゲンで置き換えることにより得られた基が挙げられる。ただし、好ましくは、第4のケイ素結合有機基は、メチル基である。
【0022】
架橋剤として使用することができるシラン及びシロキサンとしては、メチルトリメトキシシラン(MTM)及びメチルトリエトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシランなどのアルケニルトリアルコキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン(iBTM)が挙げられる。他の好適なシランとしては、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、アルコキシトリオキシモシラン(alkoxytrioximosilane)、アルケニルトリオキシモシラン(alkenyltrioximosilane)、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ジ-ブトキシジアセトキシシラン、フェニル-トリプロピオンオキシシラン(phenyl-tripropionoxysilane)、メチルトリス(メチルエチルケトキシモ(methylethylketoximo))シラン、ビニル-トリス-メチルエチルケトキシモ)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、メチルトリス(イソプロペンオキシ)シラン、ビニルトリス(イソプロペンオキシ)シラン、エチルポリシリケート、n-プロピルオルトシリケート、エチルオルトシリケート、ジメチルテトラアセトキシジシロキサンが挙げられる。使用される架橋剤はまた、上記の2つ以上の任意の組み合わせを含んでもよい。
【0023】
あるいは、架橋剤(b)は、2つ以上のシリル基を含有するシリル官能性分子を含んでもよく、各シリル基は、少なくとも1つの-OH基又は加水分解性基を含有し、架橋剤1分子当たりの-OH基及び/又は加水分解性基の数の合計は、少なくとも3である。したがって、ジシリル官能性分子は、各々少なくとも1つの加水分解性基を有する2つのケイ素原子を含み、これらのケイ素原子は有機又はシロキサンスペーサーによって分離されている。典型的には、ジシリル官能性分子上のシリル基は、末端基であってもよい。スペーサーは、シロキサン又は有機ポリマー主鎖を有するポリマー鎖であってもよい。このようなシロキサン又は有機系架橋剤の場合、分子構造は、直鎖、分枝状、環式、又は巨大分子であってよい。
【0024】
シロキサン系ポリマーの場合、架橋剤の粘度は、Brookfield粘度計を使用して測定して、25℃で0.5mPa.s~80,000mPa.s、あるいは25℃で0.5mPa.s~25,000mPa.s、あるいは25℃で0.5mPa.s~10,000mPa.sの範囲内である。アルコキシ官能性末端基を有するシリコーンポリマー鎖を有するジシリルポリマー架橋剤の例としては、少なくとも1つのトリアルコキシ末端を有する、ポリジメチルシロキサンが挙げられ、その場合、アルコキシ基はメトキシ基又はエトキシ基であってもよい。例としては、ヘキサメトキシジシロキサン、ヘキサエトキシジシロキサン、ヘキサ-n-プロポキシジシロキサン、ヘキサ-n-ブトキシジシロキサン、オクタエトキシトリシロキサン、オクタ-n-ブトキシトリシロキサン、及びデカエトキシテトラシロキサンを挙げることができる。
【0025】
例えば、架橋剤(b)はジシリル官能性ポリマー、すなわち、2つのシリル基を含有し、各々が少なくとも1つの加水分解性基を有するポリマーでよく、例えば、下記の式
R3
3-tSi(X)t-Rv-Si(X)fR3
3-f
[式中、各R3は同じでも異なっていてもよく、脂肪族アルキル基、脂肪族アルケニル基、及び芳香族基から選択され、あるいは、R3は、1~6個の炭素を有するアルキル基であり;Xは上記のように個々に選択されてもよく、t及びfは、独立して、1、2、又は3、あるいは2又は3の整数である]によって表されるポリマーでもよい。Rvは、アルキレン(二価炭化水素基)、あるいは1~10個の炭素原子を有するアルキレン基、若しくは更にあるいは1~6個の炭素原子を有するアルキレン基、又は当該二価炭化水素基と二価シロキサン基との組み合わせである。好ましいジシリル官能性ポリマー架橋剤では、tは2又は3を有し、XはOMeであり、Rvは4~6個の炭素を有するアルキレン基である。
【0026】
アルコキシ官能性末端基を有する有機ポリマー鎖を有するジシリルポリマー架橋剤の例としては、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンが挙げられる。
【0027】
組成物中に存在する架橋剤の量は、架橋剤の特定の性質、特に、選択される分子の分子量に依存する。好適には、組成物は、上記のオルガノポリシロキサン(a)に対して、少なくとも化学量論量で架橋剤を含有する。
【0028】
充填剤成分(c)は、
(i)最大値で組成物の25重量%の炭酸カルシウム及び/又はシリカ、あるいは炭酸カルシウム及び任意選択的にシリカと、
(ii)ある量の、鉱質繊維、バルク繊維、耐火繊維、玄武岩繊維、又はこれらの混合物から選択される1つ以上の繊維質充填剤と、を含む。
【0029】
充填剤(c)(i)は、効果的な補強充填剤である。存在する炭酸カルシウムは、沈降又は粉砕炭酸カルシウムであり、これらの各々において、好ましくは100m2/g超のBET比表面積を有する。本開示の目的に関して定義されるように、補強シリカは、好ましくは疎水性ヒュームドシリカである。市販例としては、例えば、Evonik製の商標名Aerosil(登録商標)972、Aerosil(登録商標)974、及びAerosil(登録商標)812で入手することができる。このリストは、網羅的ではない。補強シリカの量を増加させることにより、材料のチキソトロピー特性及び耐サグ特性が急速に高まる。Industry Information、「Technical Bulletin Fine Particles63」は、Evonik.comから入手可能であり、そこではシリカの使用に関する更なる例及び指針を提供している。
【0030】
したがって、補強充填剤は、例えば、それらの各々が例えばステアリン酸又はステアレートなどの処理剤によって処理されている、100m2/g超のBET比表面積を有する粉砕炭酸カルシウム及び/又は沈降炭酸カルシウム、並びに任意選択的にヒュームド及び/又は沈降シリカであってもよい。充填剤成分(c)(i)の表面処理を、例えば、脂肪酸若しくはステアリン酸などの脂肪酸エステルを使用して、又はオルガノシラン、オルガノシロキサン、若しくはオルガノシラザン、例えば、ヘキサアルキルジシラザン若しくは短鎖シロキサンジオールを使用して実施することにより、充填剤を疎水性にし、これにより、組成物の他の成分との均質混合物の取り扱い及び入手をより容易にすることができる。典型的には、表面改質充填剤は凝集せず、組成物中に均質に組み込むことができる。これにより未硬化組成物の室温での機械的特性が改善される。
【0031】
弾性率、引張強度、又は破断点伸びなどのエラストマーの機械的特性を改善するために、「活性」充填剤又は補強充填剤を添加することは、補強として公知である。補強充填剤の使用により、架橋エラストマーの強度及び剛性特性の両方が改善される。充填架橋エラストマーは、同じ変形度を有する非充填の架橋エラストマーよりも著しく高い剛性を有する。更に、充填架橋エラストマーはまた、非充填の類縁体よりも相当に大きな、破壊に対する強度及び変形性を有する。
【0032】
充填剤成分(c)はまた、鉱質繊維質繊維、バルク繊維質繊維、耐火繊維質繊維、玄武岩繊維質繊維、又はこれらの混合物から選択される1つ以上の繊維質充填剤(c)(ii)を含む。繊維質充填剤(c)(ii)は、1つ以上の金属酸化物、例えば、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化アルミニウム、及び酸化鉄、並びにこれらの混合物から構成される繊維を含んでもよい。繊維質充填剤の非網羅的な例は、Morgan Ceramicsから得られる商標名Enfil(登録商標)SHの市販製品であり、又はLapinus製で市販の商標名RockForce(登録商標)/Roxul gradesである。好ましい繊維は、主にSiO2、遷移金属酸化物、アルカリ及びアルカリ土類元素の酸化物からなる。最も好ましい繊維は、100~150マイクロメートル(μm)の繊維長、及び(c)(ii)の総重量の30重量%未満のCaO/MgO含有量を有する、セラミック繊維又は屈折(refractive)繊維である。後者の好適な市販例としては、Rockforce(登録商標)MS603-Roxul(登録商標)1000、Rockforce(登録商標)MS605-Roxul(登録商標)1000、及びRockforce(登録商標)MS603-Roxul(登録商標)1000、Morgan Ceramics製のEnfil(登録商標)グレードの繊維、並びに玄武岩繊維が、例示的な目的において、挙げられる。
【0033】
充填剤成分(c)は、組成物の10重量%~50重量%、あるいは組成物の20重量%~50重量%の量で存在してもよい。上記のように、累積最大値で組成物の最大25重量%の炭酸カルシウム及び/又はシリカ(c)(i)があってもよく、組成物に依拠する補強充填剤の残部は、種別(c)(ii)繊維質充填剤である。一代替例では、約5重量%~15重量%の炭酸カルシウム及び/又はシリカ、すなわち種別(c)充填剤と、15重量%~40重量%の、あるいは15重量%~30重量%の種別(c)(ii)繊維質充填剤とがあってもよい。別の代替例では、充填剤は、(c)(ii)繊維質充填剤のみであってもよい。
【0034】
更なる選択肢として、充填剤成分は、非繊維質金属酸化物、例えば、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化アルミニウム、及び酸化鉄、並びにこれらの混合物を含む非補強充填剤を更に含んでもよい。非補強シリカは、100m2/g以下のBET比表面積を有するヒュームド及び/又は沈降シリカ粒子のいずれであってもよい。好ましくは、使用するとき、シリカは、組成物への組み込みを促進するために疎水処理される。市販の疎水性非補強処理シリカの例としては、Aerosil(登録商標)R9200、Sipernat(登録商標)D10、Sipernat(登録商標)D13、及びSipernat(登録商標)D17が挙げられる。
【0035】
非補強充填剤は、未硬化状態における組成物の粘度及び加工性を調節する機能、及び最終材料において特定の色を達成する機能などを有する。
【0036】
高比表面積を有し、オルガノポリシロキサンポリマー中に高度に分散性である材料が、より良好な補強をもたらすと概して考えられる。高比表面積は、通常、Brunauer-Emmett-Teller理論に基づく窒素吸着法、すなわち「BET」法として当該技術分野において公知の方法によって測定され、典型的には100m2/g~400m2/gである。充填剤が補強する(又はしない能力は、典型的には、製造元による技術仕様に提示されている。あるいは、単純に硬化性組成物を調製可能な場合には、充填剤の補強品質を、その硬化後の物理的特性、例えば引張強度、破断点伸び[%]及び硬度の測定によって把握してもよい。試験に関する詳細及び試料は、EVONIKから入手可能な「Technical Bulletin Fine Particles63」に提示されている。本開示の目的のために、非補強充填剤は100m2/g以下)のBET比表面積を有し、補強充填剤は100m2/g超)のBET比表面積を有する。
【0037】
縮合触媒(d)は、任意の好適なスズ系縮合触媒であってもよい。
例としては、スズトリフレート、有機スズ金属触媒、例えば、トリエチルスズタートレート、スズオクトエート、スズオレエート、スズナフテネート、ブチルスズトリ-2-エチルヘキソエート、スズブチレート、カルボメトキシフェニルスズトリスベレート、イソブチルスズトリセロエート、並びにジオルガノスズ塩、特にジオルガノスズジカルボキシレート化合物、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジメチルスズジブチレート、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズジアセテート、ジメチルスズビスネオデカノエート、ジブチルスズジベンゾエート、第一スズオクトエート、ジメチルスズジネオデカノエート(DMTDN)、及びジブチルスズジオクトエートが挙げられる。
【0038】
任意選択的に、ポリジオルガノシロキサン(a)及び架橋剤(b)の両方と非反応性であってもよく、かつ次の一般式を有する、1つ以上の更なるポリジアルキルシロキサン(f)を、組成物は含んでもよい。
R3
3-Si-O-((R2)2SiO)w-Si-RmX3-m (2)
R及びR3は、上記のとおりである。好ましくは、更なるポリジアルキルシロキサン(f)の場合、Rはアルキル基、典型的にはメチル基であり、mは2又は3である。ただし各R3は同じでも異なっていてもよく、上記と同じであってもよく、好ましくは、各R3はメチル基であり、各R2基は例えば、メチル基、ビニル基、又はフェニル基である。このような使用されるポリジメチルシロキサン(f)は、概して、25℃で約5~約100,000mPa.s、あるいは25℃で約5~約75,000mPa.s、あるいは25℃で約5~約50,000mPa.sの粘度を有し、wはこの粘度範囲をもたらす整数である。典型的には、ポリジアルキルシロキサン(f)は直鎖状であるが、ある程度の分枝を有してもよい。ポリジオルガノシロキサン(f)の重合度については、上記のように測定することができる。典型的には、それが存在する場合、このポリジオルガノシロキサン(f)は、以下に記載される2パーツ組成物の硬化剤におけるポリマーとして使用される。
【0039】
他の添加剤(g)としては、レオロジー調整剤、接着促進剤、顔料、熱安定剤、難燃剤、UV(紫外線)安定剤、鎖延長剤、並びに殺真菌剤及び/又は殺生物剤などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0040】
レオロジー調整剤
本発明による湿気(moisture)硬化性組成物中に組み込まれてもよいレオロジー調整剤としては、シリコーン有機コポリマー、例えばポリエーテル又はポリエステルのポリオールに基づく欧州特許第0802233号に記載されているものなど、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エトキシル化ヒマシ油、オレイン酸エトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、コポリマー若しくはエチレンオキサイド、及びプロピレンオキサイド、及びシリコーンポリエーテルコポリマーからなる群から選択されるノニオン性界面活性剤、並びにシリコーングリコールが挙げられる。いくつかの系について、これらのレオロジー調整剤、特に、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのコポリマー、及びシリコーンポリエーテルコポリマーにより、シーラントの、基材に対する接着性、特に可塑性基材に対する接着性を増強することができる。
【0041】
任意選択的な添加剤(g)としてはまた、1つ以上の接着促進剤、例えば、
(i)参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2007/037552(A2)号パンフレットに記載されているようなカルバシラトラン誘導体、例えば国際公開第2007/037552(A2)号パンフレットの段落[0026]及び[0027]に記載されているような構成成分B-2などのメトキシ基含有カルバシラトラン、並びに/又は国際公開第2007/037552(A2)号パンフレットの段落[0047]に記載されているような接着促進剤A;又は
(ii)次の式のアミノアルキルメトキシシランを挙げることができる。
R7-N(H)-Rv-Si-(OR5)3-jR6
j
[式中、R7はH、又は種別NH2-CdH2d-のアミン基であり;Rvは上記のとおりであり、R5はCgH2g+1であり、R6は、不飽和であってもよくかつ1~4個の炭素原子を包括的に有する炭化水素であり、jは0又は1である]。好ましくは、dは1~6であり、Rvは、CeH2e[式中、eは2~7である]であり、gは1~3、好ましくは3である。上記接着促進剤の混合物もまた含まれる。
いずれの場合でも、それが存在する場合、接着促進剤をその使用前に蒸留することができる。
【0042】
難燃剤の例としては、アルミニウム三水和物、塩素化パラフィン、ヘキサブロモシクロドデカラン、トリフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート(臭素化トリス)、及びこれらの混合物又は誘導体が挙げられる。
【0043】
顔料の例としては、二酸化チタン、酸化クロム、酸化ビスマスバナジウム、酸化鉄、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0044】
熱安定剤の例としては、金属化合物、例えば赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、水酸化第二鉄、酸化セリウム、水酸化セリウム、酸化ランタン、銅フタロシアニンが挙げられる。水酸化アルミニウム、ヒュームド二酸化チタン、ナフテン酸鉄、ナフテン酸セリウム、セリウムジメチルポリシラノレート、及び銅、亜鉛、アルミニウム、鉄、セリウム、ジルコニウム、チタンなどから選択される金属のアセチルアセトン塩が挙げられる。組成物中に存在する熱安定剤の量は、組成物全体0.01重量%~1.0重量%の範囲であってもよい。
【0045】
必要な場合、殺生物剤を組成物で更に使用することができる。用語「殺生物剤」は、殺菌剤、殺真菌剤、及び殺藻剤などを包含するものであることに留意されたい。本明細書に記載の組成物中で使用することができる、有用な殺生物剤の好適な例としては、例えば、
【0046】
カルバメート、例えば、メチル-N-ベンゾイミダゾール-2-イルカルバメート(カルベンダジム)及び他の好適なカルバメートなど、10,10’-オキシビスフェノキサシン、2-(4-チアゾリル)-ベンゾイミダゾール、N-(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、ジヨードメチルp-トリルスルホン、紫外線安定剤との組み合わせに適切な場合、2,6-ジ(tert-ブチル)-p-クレゾール、3-ヨード-2-プロピニル(propinyl)ブチルカルバメート(IPBC)、亜鉛2-ピリジンチオール-1-オキサイド、トリアゾリル化合物及びイソチアゾリノン、例えば、4,5-ジクロロ-2-(n-オクチル)-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、2-(n-オクチル)4-イソチアゾリン-3-オン(OIT)、及びn-ブチル-1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BBIT)など、が挙げられる。他の殺生物剤としては、例えば、亜鉛ピリジンチオン、1-(4-クロロフェニル)-4,4-ジメチル-3-(1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)ペンタン-3-オール及び/又は1-[[2-(2,4-ジクロロフェニル)-4-プロピル-1,3-ジオキソラン-2-イル]メチル]-1H-1,2,4-トリアゾールを挙げることができる。
【0047】
それが組成物中に存在する場合、好適には、殺真菌剤及び/又は殺生物剤は、組成物の最大0.3重量%の量で存在してもよく、それが必要とされる場合、欧州特許第2106418号に記載されているようにカプセル化形態で存在してもよい。
【0048】
硬化の手段(例えば、架橋剤及び触媒)に応じて、このような組成物は、基材上に直接適用することができる1パーツ硬化性製品にてユーザーに提供されてもよく、あるいは使用直前に複数パーツを一緒に混合することを必要とする複数パーツの組み合わせ、典型的には2パーツの組み合わせにてユーザーに提供されてもよい。上記の組成物は、主剤パーツと硬化剤とを含む2パーツ組成物を含んでもよい。
【0049】
組成物が2パーツ以上にて提供される場合、当該複数パーツ組成物の個々のパーツの特性は、概して、大気の湿気の影響を受けないが、一緒に混合されると、得られた混合物は、優れた深部硬化性を有し、かつシーラント材料の本体全体にわたって、すなわち表面から内側部分まで、実質的に均質に硬化し得る。2パーツ組成物は、シラノール末端ジオルガノポリシロキサン(a)、充填剤(c)、すなわち、(c)(i)及び(c)(ii)を含有する、第1の成分(主剤)と、アルキル末端ジオルガノポリシロキサン、スズ系触媒、架橋剤、及び必要な場合に、上記した、若しくはここに記載するような接着促進剤、すなわち例えば、一級アミノシランなどを含有する、第2の成分(触媒又は硬化パッケージ)と、を含む。
【0050】
2パーツ組成物の場合では、主剤成分は、主剤組成物の50重量%~90重量%の量、あるいは主剤組成物の50重量%~80重量%の量のシロキサンポリマー(a)(上記の組成物全体の50重量%~75重量%の量で存在させるという観点から)と、補強充填剤(c)と、を含む。
補強充填剤(c)は、組成物の10重量%~50重量%、あるいは組成物の20重量%~50重量%の量で存在し、累積最大値で組成物の最大25重量%の炭酸カルシウム及び/若しくはシリカ又は炭酸カルシウム及び任意選択的なシリカ((c)(i))があってもよく、組成物において依拠される補強充填剤の残部は種別(c)(ii)繊維質充填剤のものである。実際に、上述のように、充填剤(c)は、種別(c)(ii)繊維質充填剤のみから構成されてもよい。一代替例では、約5重量%~15重量%の炭酸カルシウム及び/又はシリカ、すなわち種別(c)(i)充填剤、並びに15重量%~40重量%の、あるいは15重量%~30重量%の種別(c)(ii)繊維質充填剤があってもよい。別の代替例では、主剤成分の成分(c)は、種別(c)(ii)繊維質充填剤のみを含有してもよい。
【0051】
非補強充填剤は、主剤組成物の0重量%~20重量%の量で主剤組成物中に存在してもよく、ただし、これは主剤組成物の総重量%を100重量%とした場合である。
【0052】
ポリジオルガノシロキサン(a)及び架橋剤(b)の両方と非反応性であってもく、かつ次の一般式を有する、1つ以上のポリジアルキルシロキサン(f)を、触媒パッケージは、含有してもよい。
R3
3-Si-O-((R2)2SiO)w-Si-RmX3-m (2)
式中、R及びR3は上記のとおりであり、mは0、1、2、又は3である。好ましくは、更なるポリジアルキルシロキサン(f)の場合、Rはアルキル基、典型的にはメチル基であり、mは2又は3である。ただし各R3は同じでも異なっていてもよく、上記と同じであってもよく、好ましくは、各R3はメチル基であり、各R2基は例えば、メチル基、ビニル基、又はフェニル基であり、好ましくは、各R2基はメチル基である。このように用いられるポリジメチルシロキサン(f)は、概して、25℃で約5~約100,000mPa.s、あるいは25℃で約5~約75,000mPa.s、あるいは25℃で約5~約50,000mPa.sの粘度を有し、wは、触媒パッケージの0重量%~80重量%の量で、この粘度範囲をもたらす整数であり、ただし、これは触媒パッケージの総重量%を100重量%とした場合である。
【0053】
2パーツシーラント組成物の場合には、各パーツの成分は、上記で与えられた範囲内の量で一緒に混合され、次いで主剤成分組成物及び触媒パッケージ組成物は、所定の比、例えば、15:1~1:1、あるいは14:1~5:1、あるいは14:1~7:1で、相互混合される。主剤成分:触媒パッケージの目標混合比が15:1以上である場合、概して、充填剤は触媒パッケージに使用されない。ただし、主剤成分:触媒パッケージの目標混合比が15:1未満である場合、触媒パッケージ中での充填剤の使用量は増加し、目標比が1:1の場合に、触媒パッケージの最大50重量%が最大値である。湿気硬化性組成物は、任意の好適な混合装置を使用して、成分を混合することにより調製することができる。本明細書で提供される組成物の2パーツは、任意の好適な順序で混合することができる。一実施形態では、主剤組成物は、以下の方法で調製される。
【0054】
上述のように、本明細書で提供される組成物が、その機械的特性と、固有「バルク」体積抵抗率との間の良好なバランスをもたらし、ここで、固有「バルク」体積抵抗率は、すなわち、その形状又はサイズによらない、試験済試験片の固有抵抗であり、表面抵抗率及び/又は体積抵抗率が高くなるほど、漏洩電流が弱くなり、かつ材料の伝導率が低くなることが理解され得る。上記のように、本明細書の組成物は、硬化時に、2×1015Ω.cm以上、あるいは、5×1015Ω.cm以上の体積抵抗率を有する、シリコーンエラストマーを提供する。組成物はこのような良好な体積抵抗率をもたらすだけでなく、接着剤としての使用にもまた好適である。
【実施例】
【0055】
使用する成分
異なる平均重合度(DP)のポリジオルガノシロキサンポリマー(a)を、以下の表に示すとおり使用した。これらは概して、特に指示がない限り、ジメチルヒドロキシ末端基を有するポリジメチルシロキサンであった。使用するポリマーのDPは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって約10%~15%の精度で測定される。上記のように、この技術は標準的であり、Mw(重量平均分子量)、Mn(数平均分子量)及び多分散指数(PI)が得られる。上記のように、PIはMw/Mn値である。DPはポリマーの粘度に関連し、DPが高くなるほど粘度が高くなる。典型的には、粘度とMwとの間の関係性は、13000~70000のMwについて、Log(粘度)=3.70log(Mw)-16.3である。
【0056】
実施例で使用するCaCO3(c)(i)をステアリン酸で表面処理した。平均粒径は60μm~70μmであり、BET表面積は製造元のデータにしたがうと18m2/g~20m2/gであった。
【0057】
繊維質充填剤
以下の実施例で使用する繊維質充填剤(c)(ii)は、市販製品のEnfil(登録商標)SH、Rockforce(登録商標)MS603-Roxul(登録商標)1000、Rockforce(登録商標)MS615-Roxul(登録商標)1000、及びCoatForce(登録商標)CF50である。Enfil((登録商標))SHはMorgan Ceramicsから入手し、他はLapinus Fibres BVから入手した。これらの技術データシートに示される、使用する繊維の組成及びいくつかの特性を、以下の表1a~表1cにまとめている。繊維は、主にSiO
2、遷移金属酸化物、アルカリ及びアルカリ土類元素の酸化物からなるものであった。
【表1】
【表2】
【表3】
【0058】
非補強シリカは、ヒュームド及び沈降のいずれであってもよい。本発明者らは、マトリックスへの組み込みを促進するのに、疎水化表面を有するシリカを使用することが有益であることを見出した。例としては、(非網羅的リスト)全てEvonik Industries製の、Aerosil(登録商標)R9200、Sipernat(登録商標)D10、Sipernat(登録商標)D13、及びSipernat(登録商標)D17が挙げられる。
【0059】
本実施例で使用する接着促進剤は反応性シランの縮合生成物であるカルバシラトラン誘導体であり、Dow Corningに帰属する国際公開第2007037552(A2)号パンフレットの段落[0047]における記載(接着促進剤A)にしたがって調製した。
【0060】
スズ系触媒(d)は、ジメチルスズジネオデカノエート、DMTDNであった。
【0061】
上記の成分は、以降、以下の実施例によって例示され、実施例では、組成について、別途記載のない限り、重量%(wt.%)にて示している。
粘度について、Brookfield(登録商標)コーンプレート粘度計(RV DIII)を使用して、40,000mPa.s以下の粘度についてはコーンプレートCP-52を使用し、40,000mPa.sより高粘度の材料についてはコーンプレートCP-51を使用し、ポリマー粘度に応じて速度を調節して測定した。
【0062】
典型的な炭酸カルシウム充填二パーツシーラント配合物の体積抵抗率を参照として使用した。主剤パーツ及び硬化剤パーツの組成を以下に示す。主剤パーツと硬化剤パーツとを、10:1の比、10:1の体積比で一緒に混合した。
【表4】
【表5】
【0063】
体積抵抗率の測定のための試料調製:
2mm厚のシートを、以下の方法で調製した。主剤及び硬化剤を適切な比で混合し、2つのテフロン加工箔の間に置いた。次いで、23±1℃の室温で作動させた油圧プレス(Agila)を使用して、箔を互いに押し付けた。このようにして得られた保護シートを、制御条件(25℃及び相対湿度50%)に3週間置いて硬化させた。次いで箔を除去し、体積抵抗率測定のために、正方形片を硬化シートから切り取った。
【0064】
本発明の目的のために、体積抵抗率は、500Vで電流を適用した際に5分かけて測定される。実験を、21℃~23℃の室温及び50%±10%の相対湿度で実施した。報告値は、3つの独立した測定値の平均である。
【0065】
体積抵抗率については、Keysight Technologiesにより供給された16008B Resistivity Cellを、同じ供給元からの4339B High Resistance Meter,DCと組み合わせて使用して測定した。装置供給元によれば、この装置は、最大1.6×1016Ω.cmの体積抵抗値を高精度で測定するのに好適とのことである。
【0066】
上記の表2a及び表2bに示される2パーツ組成物から作製された参照エラストマー材料によると、1.3×1015Ω.cmの値が得られ、これは、本明細書で必要とされる2.0×1015Ω.cm未満であり、したがって、電子環境での使用に好適ではない。
本発明の配合物の実施例
【0067】
全ての組成は質量部である。したがって、合計は必ずしも100にならない。
【表6】
【0068】
主剤の調製
以下は、上記の主剤材料を作製するための最も効率的な添加順序であると証明されたものと判断した。
シロキサンポリマー;
充填剤処理剤
充填剤。
主剤はHauschieldミキサ モデルDAC400.1FVZを使用して調製したが、代替的に遊星ミキサを使用することも可能である。
【表7】
【0069】
硬化剤の調製
硬化剤組成物で使用するAerosil(登録商標)R974は、Evonik industries製のジメチルジクロロシランで後処理した疎水性ヒュームドシリカである。比表面積は、技術データシートにしたがうと200m2/gである。
硬化剤成分の好ましい添加順序は以下のとおりであると判断した。
シロキサンポリマー
粒子状充填剤
接着促進剤
アミノエチル-アミノプロピル-トリメトキシシラン(蒸留したもの)
メチルトリメトキシシラン
1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン
DMTDN、続いて-500mBar(-50kPa)での脱気。
硬化剤については概して、HauschieldミキサモデルDAC400.1FVZを使用して調製したが、代替的に遊星ミキサを使用することも可能である。
【0070】
本発明者らは、この添加順序により最適な均質性が確保されることを見出した。 以下の表では、各実施例で使用する組み合わせを特定し、各実施例のそれぞれの体積抵抗率の結果を提示する。各実施例は2×10
15Ω.cm超であることに留意されたい。
【表8】
【0071】
1)同等の繊維含有量での最良の結果は、Enfil(登録商標)SH及びRockforce(登録商標)MS603-Roxul(登録商標)1000を使用して得られ、これらは両方とも100μm~150μmの領域の繊維長を特徴とする。
2)Enfil(登録商標)SHとCoatForce(登録商標)CF50との比較(同等投入量として)によると、CaO/MgO又はAl2O3のいずれか(又は両方)の存在は、抵抗率に対して悪影響を及ぼすことを示唆している。
3)CoatForce(登録商標)CF50とRockforce(登録商標)MS615-Roxul(登録商標)1000(同様の長さの繊維、同じAl2O3含有量)の比較によると、CaO/MgOのレベルが高くなることは、抵抗率に対して悪影響を及ぼすことを示唆している。
【0072】
耐久接着性:
保護コーティングの耐久性
接着剤の実施における実行可能性には、耐久接着性を示す材料が必要とされる。これをモデル化する方法は、1つ以上の加速耐候試験を行うことである。本開示では、「耐久接着性」とは、接着剤が、基材上にキャストされ硬化すると、最後の工程(下記の工程3)・(方法1)において50%超の接着破壊を示すことなく、3週間の耐候性試験に耐えることが可能であることを意味する。
【0073】
あるいは(方法2)、接着の耐久性試験片を(本明細書で下記の方法2のように)使用して、接着の耐久性を評価することができる。また、この方法は、有利にも、接着剤の機械的特性も提供する。方法2によると、30日間の硬化が条件として要求されるので時間がかかり、他方、方法1によると、1週間又は2週間のエイジング後に、悪い(性能に乏しい)接着剤の廃棄が可能である。
【0074】
方法1
接着破壊(AF)は、コーティングが基材からきれいに引き離されている(剥離している)状態を指す。凝集破壊(CF)は、コーティング自体が基材(例えば鋼のプレート)から引き離されることなく破断するときに観察される。いくつかの場合では、混合破壊モードが観察されることがあり、この場合には、一部の領域は剥離(すなわちAF)しているが、一部はコーティングで覆われたままである(すなわちCF)。このような場合では、CF挙動を示す表面部分(%CF)及びAF挙動を示す表面部分(%AF)が測定される。%CF+%AFの合計は100%である。
【0075】
耐久性を特定する一連の接着性試験(すなわち、3週間耐候試験)について、物理的に同じ試験片について以下の順序で説明及び実行する。いくつかの試験片が試験される場合(複製)、それらの少なくとも75%について合格が必要とされる。試験片が工程1又は工程2に不合格になると、材料の接着性が不十分であると見なされるため、実験は止められる。
工程1:1週間、室温(RT)(RTは20℃~25℃である)及び相対湿度約50%。100%凝集破壊が、必要条件である。
工程2.1週間、室温(RT)(RTは20℃~25℃である)及び水に十分に浸漬、続いて24時間、RT及び相対湿度約50%で乾燥。100%凝集破壊が、必要条件である。
工程3).1週間、高温(これは45℃~55℃である)及び水に十分に浸漬、続いて24時間、RT及び相対湿度約50%で乾燥。少なくとも50%の凝集破壊が、必要条件である。
表3cに指定された比で主剤+硬化剤の新たな混合物を、ステンレス鋼試験基材上に約6cm×4cmの面積にわたって塗布し、±6mmの厚さの層を形成した。次いで、組成物を室温(RT)に7日間置いて硬化させた。続いて、鋼プレートに可能な限り近い0.5cmで下から切り取った部分を作製した。次いで、硬化コーティングを手動で引っ張って、破壊の種別を記録した(工程1)。
【0076】
好適な材料は、全体として一連の3つの接着性試験に耐える必要がある。
【0077】
方法2
接着の耐久性試験片(「種別H試験片」とも呼ばれる)については、別個に保管された主剤及び硬化剤組成物を2つのアルミニウム4cm×5cmプレートの間で混合することによって調製した混合物を充填することによって調製した。H片の寸法については、EOTA-ETAG002(2012年5月)文書(p32)にしたがった。いくつかの例では、Dow Chemicalの市販OS1200プライマーを適用した後、H片を製造した。H片を30±4日かけて硬化させた。接着の耐久性試験片については、EOTA-ETAG002(2012年5月)文書に記載されている方法論にしたがって、片を破断するのに必要な引張強度、及び破断点伸びの両方を測定することによって評価した。加えて、目視観察によって破壊モードを評価した。より具体的には、凝集破壊に相当する表面の割合(%CF)を評価した。シリコーンゴムの表面全体が凝集破壊を受けた場合、CF率を100%と仮定した。表面全体に剥離が観察された場合、CF率は0%であった。
【0078】
加速エイジング試験を以下の方法で実施した。H片をRT及び50%RHで7日間硬化させた。次いで、硬化H片を45℃の水にて7日間保管し、次いで2日かけて戻した後、機械的試験をした。
【0079】
30±4日かけて硬化させたHバーが少なくとも90%のCFを示し、加速エイジングに供した試料が少なくとも50%のCFを示した場合に、接着性は十分であると見なした。
接着性方法1
【表9】
接着方法2
【表10】
【0080】
破断点引張の測定及び破断点伸びの測定を、ASTM D412-98aにしたがって実施した。
【0081】
試料片は33日間の硬化後に100%CF(例えば、90%超のCF)を示し、加速エイジングの試験片対象が少なくとも90%のCF(例えば、50%超のCF)を示すので、本発明の材料により、2.0×1015Ω.cm超の体積抵抗率と耐久性のある接着性とが組み合わせられことが、結論付けられた。試験片はまた、方法1の試験基準に合格した。