(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】時計香箱の爪車をブロッキングするためのシステム、時計機構、時計及び腕時計
(51)【国際特許分類】
G04B 11/02 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
G04B11/02
(21)【出願番号】P 2020548757
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2019056133
(87)【国際公開番号】W WO2019175153
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-02-16
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】513114803
【氏名又は名称】ウブロ ソシエテ アノニム, ジュネーブ
【氏名又は名称原語表記】HUBLOT S.A., GENEVE
【住所又は居所原語表記】30, Rue du Rhone, CH-1204 Geneve
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ライナー, クリストフ
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】スイス国特許発明第11490(CH,A)
【文献】特開2008-64760(JP,A)
【文献】特開2005-156304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計香箱(2)の爪車(3)をブロッキングするためのシステム(1)であって、前記システムは、
フレーム(50)と、
前記フレーム上に旋回可能な態様で搭載されるレバー(4)と、
前記レバー及びまたは前記フレーム上に旋回可能な態様で搭載される、少なくとも1つの第1歯付き歯車(6)を含む歯車列(20)と、
前記レバーを、前記歯車列が前記爪車(3)と噛合する静止位置へ戻すばね(5)と、を含み、
前記歯車列は、不可逆ギア(30)の歯列(61;71)を含む、システム。
【請求項2】
前記歯車列は、前記第1歯付き歯車と、第2歯付き歯車(7)とを含む、
請求項1に記載のブロッキングシステム(1)。
【請求項3】
前記歯車列は、前記第1歯付き歯車と、前記レバー(4)上に旋回可能な態様で搭載される第2歯付き歯車とを含む、
請求項1に記載のブロッキングシステム(1)。
【請求項4】
前記不可逆ギアは、前記第1歯付き歯車と前記第2歯付き歯車との間に形成される、
請求項2又は3に記載のブロッキングシステム。
【請求項5】
前記第1歯付き歯車は、前記レバーが前記フレーム上で旋回する軸(8)周りで、旋回可能な態様で搭載される、
請求項1から4のいずれか一項に記載のブロッキングシステム。
【請求項6】
前記第1歯付き歯車は、前記レバーが前記フレーム上で旋回する軸(8)周りで、前記レバー上に旋回可能な態様で搭載される、
請求項1から4のいずれか一項に記載のブロッキングシステム。
【請求項7】
前記不可逆ギアは、前記歯車列と前記爪車との間に形成される、
請求項1から6のいずれか一項に記載のブロッキングシステム。
【請求項8】
前記ばねは、板ばね(5)である、
請求項1から7のいずれか一項に記載のブロッキングシステム。
【請求項9】
前記ばねは、前記レバーと一緒に製造されるまたは前記レバーと一体である板ばね(5)である、
請求項1から7のいずれか一項に記載のブロッキングシステム。
【請求項10】
前記システムは、前記レバーの前記静止位置を定義するため、前記レバー(4)の表面(12)と協働する止め具(10)を含む、
請求項1から9のいずれか一項に記載のブロッキングシステム。
【請求項11】
前記歯車列と前記レバーは、主ぜんまいのほどける方向に駆動される前記爪車が、前記歯車列に、前記レバーを前記静止位置に向かって駆動する作用を発揮するように配置される、
請求項1から10のいずれか一項に記載のブロッキングシステム。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のシステム(1)を含む、時計機構(200)。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載のシステム(1)を含む、時計ムーブメント。
【請求項14】
請求項12に記載の機
構または請求項13に記載の時計ムーブメン
トまたは請求項1から11のいずれか一項に記載のシステムを含む、時計(200)。
【請求項15】
請求項12に記載の機
構または請求項13に記載の時計ムーブメン
トまたは請求項1から11のいずれか一項に記載のシステムを含む、腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計香箱の爪車をブロッキングするためのシステムに関する。本発明はまた、当該システムを含む、時計機構に関する。本発明はまた、当該システムまたは当該時計機構を含む、時計に関する。
【背景技術】
【0002】
機械的に巻き上げられる機械式ムーブメントを含む時計は、香箱を含み、その爪車は、ブロッキングシステムの作用を理由に、その軸周りに一方向のみに回転可能である。ブロッキングシステムは、爪である。
【0003】
爪は、香箱へ伝達されるエネルギーの一部を吸収し、香箱の巻き上げ中に、カチカチという騒音を発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/193809号
【文献】スイス国特許発明第700806号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述の欠点の是正を可能とし、従来技術から既知のシステムを改善可能な、ブロッキングシステムを提供することである。特に、本発明は、香箱へのエネルギーの伝達の最適化を可能とし、香箱の巻き上げ中のブロッキングシステムの騒音の制限を可能とする、ブロッキングシステムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるシステムは、請求項1に定義される。
【0007】
部品の様々な実施形態は、請求項2から11に定義される。
【0008】
本発明にかかる機構は、請求項12に定義される。本発明にかかるムーブメントは、請求項13に定義される。
【0009】
本発明にかかる時計は、請求項14に定義される。本発明にかかる腕時計は、請求項15に定義される。
【0010】
添付の図面は、本発明にかかる時計の実施形態を例として示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、ブロッキングシステムが第1構成にある時計の実施形態の模式図である。
【
図2】
図2は、ブロッキングシステムが第2構成にある時計の実施形態の模式図である。
【
図3】
図3は、ブロッキングシステムが第3構成にある時計の実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
時計200の実施形態を、
図1から3を参照して以下に説明する。時計は、例えば小型時計であり、特に腕時計である。時計は時計機構を、特に機械式時計ムーブメント100を含む。時計ムーブメントは、例えば、手動巻き上げ型または自動巻き上げ型である。
【0013】
ムーブメントは、香箱と、香箱の巻き上げまたは主ぜんまいの締付を可能にしつつも、主ぜんまいがゆるんだりほどけたりすることを防止するために、香箱をブロッキングするためのシステム1とを含む。
【0014】
香箱は、ムーブメントのフレーム50上の軸32周りに回転可能に搭載される。香箱は、主として、香箱真、胴、及びぜんまいを含み、軸と胴とは、軸周りに巻き上げられ、胴内に含まれる、ぜんまいにより機械的に接続される。香箱真は、手動または自動型の巻き上げ歯車列に機械的に接続される。
【0015】
時計が巻き上げられると、香箱真は、ぜんまいを巻き上げまたは締付または圧迫するために、フレーム及び胴に対して軸32周りに回転駆動される。このため、香箱真は、爪車3を介して、回転駆動される。
【0016】
ムーブメントの駆動中、香箱胴は、時計の歯車列を駆動するために、フレームと真とに対して軸32周りに回転駆動される。このため、香箱胴は、時計の歯車列の第1歯車と噛合する歯列を含む。
【0017】
図示した実施形態において、ブロッキングシステムは、
図1に示すその第1構成において、爪車を軸32周りに時計周りに回転可能にする。これにより、時計の巻き上げを可能にする。
【0018】
図示する実施形態において、ブロッキングシステムは、
図2に示すその第2構成において、フレーム50に対する爪車の軸32周りの反時計回りの回転を防止する。これは、時計の歯車列が駆動されている場合以外で、主ぜんまいがゆるむことを防止することを可能にする。
【0019】
このため、ブロッキングシステムは、香箱の、特に真または香箱の爪車の、一方向のブロッキングを可能にする。ブロッキングシステムはまた、フレームに対する、香箱の、特に真のまたは香箱の爪車一方向の回転を可能にする。
【0020】
上述のように、ブロッキングシステム1は、時計香箱2の爪車3の条件付きブロッキングを可能にする。
【0021】
ブロッキングシステムは、
- フレーム50と、
- フレーム上に旋回可能な態様で搭載されるレバー4と、
- レバー及びまたはフレーム上に旋回可能な態様で搭載される少なくとも1つの歯付き歯車6を含む、歯車列20と、
- 歯車列が爪車3と噛合する静止位置にレバーを戻す、ばね5と、
を含み、
歯車列は、不可逆ギア30の歯列61、71を含む。
【0022】
レバー4は、フレーム上に軸8周りに旋回可能な態様で搭載される。当該軸は、例えば、軸32に平行である。好ましくは、レバーは、単安定型のものである。このため、レバーは第1の、静止または戻り位置に戻される。この第1の、静止または戻り位置は、
図1及び2に示される。この戻りは、ばね5により保証される。ばねは有利には、レバーと一緒に製造されるまたはレバーと一体である。ばねは、
図1及び2の第1位置への弾性戻しを保証するために、フレームの、またはより一般的にはムーブメントの止め具51に当接する。例えば、ばね5は板ばね5である。
【0023】
レバー4は、フレームの、またはより一般的にはムーブメントの止め具10と協働する止め面12を含む。止め具10は、ピンであってもよい。止め面12と止め具10との接触による協働は、
図1及び2に示すレバー4の第1位置を定義する。このため上述のばね5は、止め面12を止め具10との接触へ戻すことが可能である。
【0024】
レバーは、歯車列20の少なくとも一部を支持する。換言すれば、歯車列を構成する1以上の要素6、7は、レバー4上に、特にレバー4のアーム41上に、旋回可能な態様で搭載される。例えば、歯車列を構成する単一の要素または全ての要素6、7は、レバー4上に、特にレバー4のアーム41上に、旋回可能な態様で搭載される。図示する実施形態において、歯車列は、第1歯付き歯車6と、第2歯付き歯車7とを含む。第1及び第2歯付き歯車は、互いに永続的に噛合するように、レバー上に配置される。
【0025】
第1歯付き歯車6は、フレーム50上に軸8周りに旋回可能な態様で搭載される。第2歯付き歯車7は、レバー上に軸9周りに旋回可能な態様で搭載される。好ましくは、軸8と9は、互いに並行であり、香箱の軸32と平行である。また好ましくは、第1歯付き歯車がレバー上でその周りで旋回される軸は、レバーがムーブメント上でその周りを旋回される軸である。第1歯付き歯車6は、軸8周りに旋回可能な態様で搭載される。このため、第1歯付き歯車は、レバーに対して自由に旋回可能であることを条件として、レバー上で旋回されていると見做すことができる。
【0026】
図示した実施形態において、第1歯車6は第1歯列61を有し、第2歯車7は第2歯列71を有する。これら第1及び第2歯列は、第1及び第2歯車間で不可逆ギアを形成するよう配置される。このため、第2歯車が駆動歯車であって反時計回り方向に回転する場合、第2歯車は、第1歯車を回転駆動し、このため第1歯車は被駆動歯車となる(
図1参照)が、第2歯車が駆動歯車であって時計周り方向に回転する場合、ギアがブロッキングされ、第2歯車の回転は第1歯車によりブロッキングされる(
図2参照)。具体的には、第1及び第2歯車の形状は、時計周り方向に回転する第2歯車が第1歯車の駆動を始めるときに、第1及び第2歯列の歯の先端を接触させる。
【0027】
当該実施形態において、ギアの不可逆性は、第1歯列61及び第2歯列71の特定のプロファイルと、第1及び第2歯車の配置により、保証される。図示した第1及び第2歯列のプロファイルとは別個に、不可逆ギアを形成するために、他の歯列のプロファイルを、特に特許文献1及び特許文献2に図示される歯列を用いることもできる。
【0028】
好ましくは、角穴車の歯列31は、完全に従来のものである。特に、歯列31は、そのプロファイルが標準時計プロファイルである、歯列である。
【0029】
好ましくは、第1歯列は、30本より少ない、または20本より少ない、または10本より少ない歯を含む、及びまたは第2歯列は、30本より少ない、または20本より少ない、または10本より少ない歯を含む。
【0030】
図1及び2に示すレバーの静止または戻り位置において、歯車列20は、特に第2歯車7は、爪車と噛み合う。
図3に示すレバーの第2位置において、レバーは旋回し、爪車の歯列31は、もはや歯車列20と噛み合わない、特にもはや第2歯車7の歯列71と噛み合わない。当該第2位置は、ブロッキングシステムの第3構成を定義する。具体的には、歯列31と71は、互いに離れて位置する。当該第3構成において、爪車は、フレーム50に対して軸32周りに、特に反時計回り方向に、自由に回転可能である。当該第2位置は、レバーの止め面11と止め具10との接触による協働により定義可能である。当該第2位置は、例えばムーブメントを分解するために、ぜんまいを巻き戻すことを可能にする。第3構成は、
図3に示す。
【0031】
レバーは、例えば、歯車列がその上に搭載される第1アーム41を有する。レバーは、例えば、1以上の止め具10との協働により、レバー4の旋回振幅を制限するために設けられる止め面11、12がその上に搭載される、第2アーム42を有する。レバーは、例えば、ばね5により形成される第3アーム43を有する。3本のアームは、例えば、T字型に、すなわち3本のアームが実質的に2つの直角を形成するよう、分布される。
【0032】
有利には、歯車列とレバーとは、主ぜんまいの巻き戻し方向(すなわち、反時計回り方向)に駆動される爪車が、レバーを静止位置へ駆動する作用を歯車列にもたらすように配置される。
【0033】
上述の実施形態において、レバーは、歯車列の支持、旋回振幅の制限、及びレバーの弾性戻しの機能を保証する、3本のアームを含む。変形例として、アームは、その他の方法で幾何学的に編成されてもよい。更に、変形例として、これら3本のアームにより保証される機能は、アーム上に異なって編成されてもよい、特にこれら機能のいずれかが同一のアームに統合されてもよい。このため、レバーは2本のアームのみを、または1本のアームのみを有してもよい。
【0034】
上述の実施形態及びその変形例において、第1及び第2歯列は特徴的である。変形例として、第1歯列のみ、または第2歯列のみが特徴的であり、それぞれプロファイルが標準時計プロファイルである第2歯列または第1歯列と協働してもよい。
【0035】
上述の実施形態およびその変形例において、不可逆ギアは、第2歯車と第1歯車との間に形成される。しかしながら、変形例として、不可逆ギアは、歯車列と爪車との間に形成されてもよい。この場合、爪車の歯のプロファイルは、好ましくは、標準的時計プロファイルであり、爪車と噛合する歯車列の歯車の歯のプロファイルは、標準的プロファイル歯と噛合するときに不可逆性を生成する特徴的なプロファイルである。
【0036】
上述の実施形態およびその変形例において、歯車列は、2つの歯車を含む。しかしながら、変形例として、歯車列は単一の歯車を含んでもよい。この場合、歯車は、フレーム上でレバーがその周りを旋回する軸周りに、レバー上で旋回されない。更なる変形例として、歯車列は、2以上の歯車、特に3つの歯車または4つの歯車を含んでもよい。
【0037】
上述の実施形態およびその変形例において、歯車列は、フレーム上でレバーがその周りを旋回する軸において、フレーム上で旋回する歯車を含む。しかしながら、変形例として、歯車列は、フレーム上でレバーがその周りを旋回する軸以外の場所で、フレーム上で旋回する歯車を含んでもよい。この場合、歯車列は、少なくとも2つの歯車を含む。更に、この場合、フレーム上で旋回する歯車とレバー上で旋回する歯車の間の噛合は、レバーの第2位置において切断されてもよい。
【0038】
本明細書中、「不可逆ギア」の表現は、第2歯列の第1歯列との噛合であって、第2歯列が駆動中に、第1歯列を一方向のみに駆動可能であり、第1及び第2歯列が他の方向ではブロッキングされる噛合を意味すると理解される。有利には、当該ブロッキングは、第1及びまたは第2歯列の形状により得られる。特に、ブロッキングは、突合せ現象によりもたらされる。
【0039】
時計200の、特にムーブメント100の動作を、以下に説明する。
【0040】
レバー4へ作用がないこと、特にレバー4への時計職人による作用がないことを前提とする。このため、レバーは、
図1及び2に示す第1位置にある。
【0041】
自動または手動巻き上げ動力伝達装置は、爪車を時計まわり方向に駆動することを前提とする。この駆動により、主ぜんまいの圧迫または巻き上げが引き起こされる。この爪車の回転を理由として、その歯列31が反時計回りに回転する第2歯車7の歯列71を駆動する。第2歯車の回転を理由として、その歯列71が時計回りに回転する第1歯車6の歯列61を駆動する。第1及び第2歯車の回転は、抵抗なくしてまたは実質的に抵抗なくして自由に行われる。克服すべき唯一の抵抗は、歯列の噛み合い摩擦と、レバー上の歯車の旋回摩擦である。これら抵抗は非常に小さい。
【0042】
ここで、自動または手動巻き上げ動力伝達装置が、もはや爪車を保持しないこと(手動巻き上げ小型時計の場合は、小型時計の巻き上げが終了したとき、または自動小型時計の場合は、分解の途中のいずれか)を前提とする。当該爪車は、主ぜんまいの効果の下、反時計回り方向に回転する傾向にある。しかしながら、当該回転は、以下に説明するとおり、防止される。具体的には、反時計回り方向への爪車3の起こりうる回転であって、当該回転中は、歯列31、71と61との噛合を理由として第2歯車が時計回り方向に駆動され第1歯車が反時計回り方向に駆動される回転に続いて、第2歯列の歯が、第1歯列の歯の先端と当接する。これは、第2歯列の回転の突合せによるブロッキングをもたらし、反時計回り方向への爪車の回転に対する障害物を形成する。突合せは、第1歯列61の第2歯列71への力F1(矢印で示す)が、第1歯車がその周りを旋回する軸8を通過する方向に向けられているため、発生する。
図2に示すように、第1歯車の第2歯車への力F1は、爪車の第2歯車への力F2(矢印で示す)により軸9周りに生成されるトルクに対抗する、軸9周りのトルクを生成する。爪車によりレバーに発揮される力F2は、その回転軸8周りに時計回り方向にレバーを回す、またはレバーをその静止位置へ、特に止め面12が止め具10との接触する位置へ、戻す傾向にあることを注記する。ばね5もまた、レバーを同一方向へ回転する傾向にある。
【0043】
しかしながら、メンテナンス作業中、主ぜんまいをゆるめ、香箱に保存されたエネルギーを解放することを可能にすることが必要になる。このため、レバー4は(時計職人により)、静止位置から移動するように作用される。このため、ばね5により与えられる力は無効になり、爪車のレバーへの作用は無効になる。レバーが旋回振幅に到達すると、爪車と第2歯車の歯列は、もはや噛み合わず、爪車もまた反時計回りに自由に回転可能になる。レバーは、特に
図3に示すように、止め具10の止め面11との接触により定義される第2位置へ移動される。
【0044】
上述のブロッキングシテムを理由として、
- 爪のない、または爪が設けられない、
- 時計職人による(レバーの回転という)単純な作用によって簡単に解除可能な、
- 香箱へのエネルギーの伝達を最適化する、
- 香箱の巻き上げ中に発生する騒音を制限する、
ブロッキングシステムを得ることが可能になる。