(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】押込み式開閉装置
(51)【国際特許分類】
B65F 1/16 20060101AFI20231226BHJP
A47G 29/22 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B65F1/16
A47G29/22
(21)【出願番号】P 2020549822
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2020015137
(87)【国際公開番号】W WO2020213409
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2019076768
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】菅佐原 純
(72)【発明者】
【氏名】菊地 厚
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-123322(JP,A)
【文献】特開平10-311359(JP,A)
【文献】特開2002-310132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65F 1/16
A47G 29/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入口(12)を画成する支持枠(10)と、
端部が上記支持枠に回転軸線(L)を中心に回転可能に支持され、上記投入口を開閉する蓋(20)と、
上記蓋に閉じ方向の回転モーメントを付与する付勢部材(30)と、
上記蓋の閉じ方向の回転を抑制するダンパ機構(40)と、
を備えた押込み式開閉装置において、
上記ダンパ機構(40)は、上記回転軸線(L)上に配置された第1、第2カム部材(41,42)とリニアダンパ(43)とを有し、
上記第1、第2カム部材と上記リニアダンパは互いに独立した部品からなり、上記第1、第2カム部材は
上記回転軸線方向に対峙して互いに接するカム面(41a,42a)をそれぞれ有
し、
上記第1カム部材(41)が上記支持枠(10)に相対回転不能に支持され、上記第2カム部材(42)が上記蓋(20)に相対回転不能に支持され、
上記第1カム部材と上記第2カム部材のうちの一方のカム部材が上記回転軸線方向に移動可能で、他方のカム部材が上記回転軸線方向に移動不能であり、
上記リニアダンパ(43)は、上記一方のカム部材が支持されている支持枠(10)または蓋(20)に支持され、上記回転軸線(L)と同軸をなすとともに、上記一方のカム部材において上記カム面の反対側に配置され、上記蓋の閉じ方向の回転に伴う上記一方のカム部材の軸方向移動を抑制
することを特徴とする押込み式開閉装置。
【請求項2】
上記第1カム部材(41)が上記支持枠(10)に
回転不能かつ軸方向
に移動不能に固定
され、
上記ダンパ機構(40)はさらに、上記蓋(20)の裏側に固定されたホルダ(45)を有し、上記ホルダは上記回転軸線上に配置された収容筒部(47)を有し、上記第1カム部材(41)に近い方の端が開口端(47a)となっており、
上記第2カム部材(42)と上記リニアダンパ(43)が上記収容筒部(47)に収容され、上記リニアダンパが上記収容筒部の奥側に配置され、上記第2カム部材は、上記開口端(47a)側に配置されるとともに、上記収容筒部に対して軸方向スライド可能かつ回転不能であることを特徴とする請求項1に記載の押込み式開閉装置。
【請求項3】
投入口(12)を画成する支持枠(10)と、
端部が上記支持枠に回転軸線(L)を中心に回転可能に支持され、上記投入口を開閉する蓋(20)と、
上記蓋に閉じ方向の回転モーメントを付与する付勢部材(30)と、
上記蓋の閉じ方向の回転を抑制するダンパ機構(40)と、
を備えた押込み式開閉装置において、
上記ダンパ機構(40)は、上記回転軸線(L)上に配置された第1、第2カム部材(41,42)とリニアダンパ(43)とを有し、上記第1、第2カム部材は互いに接するカム面(41a,42a)をそれぞれ有しており、
上記第1カム部材(41)が上記支持枠(10)に相対回転不能に支持され、上記第2カム部材(42)が上記蓋(20)に相対回転不能に支持され、上記蓋の回転に伴い上記第1、第2カム部材(41,42)のうちの一方のカム部材が軸方向に移動し、上記リニアダンパ(43)は、上記蓋の閉じ方向の回転に伴う上記一方のカム部材の軸方向移動を抑制するように配置され、
上記第1カム部材(41)が上記支持枠(10)に軸方向移動不能に固定され、上記第2カム部材(10)が上記蓋(20)の回転に伴い軸方向に移動するようになっており、
上記ダンパ機構(40)はさらに、上記蓋(20)の裏側に固定されたホルダ(45)を有し、上記ホルダは上記回転軸線上に配置された収容筒部(47)を有し、上記第1カム部材(41)に近い方の端が開口端(47a)となっており、
上記第2カム部材(42)と上記リニアダンパ(43)が上記収容筒部(47)に収容され、上記リニアダンパが上記収容筒部の奥側に配置され、上記第2カム部材は、上記開口端(47a)側に配置されるとともに、上記収容筒部に対して軸方向スライド可能かつ回転不能であり、
上記ホルダ(45)は、上記収容筒部(47)と一体をなす取付板部(46)を有し、上記取付板部には上記回転軸線(L)と平行に延びる複数のスリット(46a,46b)が形成され、上記蓋(20)の裏側には、上記蓋から突出する複数のネジ棒(51a,51b)が固定されており、上記ネジ棒は上記スリットにおいて上記第1カム部材から遠い箇所に挿通されており、上記ネジ棒に螺合するナット(52)を締め付けることにより、上記ホルダが上記蓋の裏側に固定されることを特徴
とする押込み式開閉装置。
【請求項4】
上記複数のスリットは、上記ホルダ(45)の上記取付板部(46)において上記第1カム部材(41)から遠い部位に形成された第1スリット(46a)と、上記第1カム部材に近い部位に形成された第2スリット(46b)を含み、上記第2スリットの上記第1カム部材に近い端が上記取付板部の側縁において開放されていることを特徴とする請求項3に記載の押込み式開閉装置。
【請求項5】
上記ホルダ(45)は、上記取付板部(46)と直交してその両側縁に連なるとともに上記収容筒部の両端に連なる一対の側板部(48)を有し、
上記一対の側板部のうち上記第1カム部材(41)に近い方の側板部(48)には、上記第2スリット(46b)の開放された端に連なり上記ネジ棒の通過を許容する通過穴(48a)が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の押込み式開閉装置。
【請求項6】
上記支持枠(10)はその両側縁部から裏側に突出する一対の支持板部(18)を有し、上記蓋(20)はその両側縁部から裏側に突出する一対の腕部(27)を有し、上記一対の腕部が一対の軸部材(28,29)を介して上記一対の支持板部に回転可能に支持されており、
上記第1カム部材(41)には
上記回転軸線(L)と同軸をなす筒部(28a)が一体に形成され、上記第1カム部材と上記筒部には芯部材(28b)が貫通固定され、上記筒部と上記芯部材により、上記一対の軸部材の一方(28)が構成されており、
上記芯部材(28b)の一端部が上記支持板部(18)に固定され、他端部が上記第1カム部材(41)から突出して、筒形状をなす上記第2カム部材(42)にスライド可能に挿入されていることを特徴とする請求項
2に記載の押込み式開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋を押し込むことにより投入口を開くように構成された開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特許4885257公報)に示すように、ゴミ箱には押込み式開閉装置が多用されている。この開閉装置は、支持枠と蓋と錘を有している。支持枠は、ゴミ箱の箱本体に取り付けられ投入口を画成する。蓋は、その上端が支持枠に水平の回転軸線を中心に回転可能に支持され、投入口を開閉するようになっている。錘は蓋の裏側に固定され、蓋に閉じ方向の回転モーメントを付与する。錘の回転モーメントに抗して蓋が押されると、投入口が開かれるようになっている。
【0003】
蓋を押し込んで投入口に手を差し込みゴミを投入した後、蓋から手を離すと、錘による回転モーメントにより蓋が勢い良く閉じ、蓋が支持枠に当って大きな音が発生する。そのため、特許文献1では、蓋を回転可能に支持する軸部材に回転ダンパを装着し、蓋の閉じ動作の勢いを緩和している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴミ箱が大型になると、それに伴い押込み式開閉装置も大型になる。その場合、蓋の閉じ方向の回転モーメントも増大するが、特許文献1に開示された回転ダンパでは大きな回転モーメントに対抗して十分な緩衝機能を発揮することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、投入口を画成する支持枠と、
端部が上記支持枠に回転軸線を中心に回転可能に支持され、上記投入口を開閉する蓋と、上記蓋に閉じ方向の回転モーメントを付与する付勢部材と、上記蓋の閉じ方向の回転を抑制するダンパ機構と、を備えた押込み式開閉装置において、
上記ダンパ機構は、上記回転軸線上に配置された第1、第2カム部材とリニアダンパとを有し、上記第1、第2カム部材は互いに接するカム面をそれぞれ有しており、上記第1カム部材が上記支持枠に相対回転不能に支持され、上記第2カム部材が上記蓋に相対回転不能に支持され、上記蓋の回転に伴い上記第1、第2カム部材のうちの一方のカム部材が軸方向に移動し、上記リニアダンパは、上記蓋の閉じ方向の回転に伴う上記一方のカム部材の軸方向移動を抑制することを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、蓋の閉じ方向の回転を、第1、第2カム部材により軸方向の力に変換し、この軸方向の力をリニアダンパで受け止めるので、蓋の閉じ方向の回転モーメントが大きい場合でも十分な緩衝機能を発揮することができる。
【0007】
好ましくは、上記第1カム部材が上記支持枠に軸方向移動不能に固定され、上記第2カム部材が上記蓋の回転に伴い軸方向に移動するようになっており、上記ダンパ機構はさらに、上記蓋の裏側に固定されたホルダを有し、上記ホルダは上記回転軸線上に配置された収容筒部を有し、上記第1カム部材に近い方の端が開口端となっており、上記第2カム部材と上記リニアダンパが上記収容筒部に収容され、上記リニアダンパが上記収容筒部の奥側に配置され、上記第2カム部材は、上記開口端側に配置されるとともに、上記収容筒部に対して軸方向スライド可能かつ回転不能である。
上記構成によれば、リニアダンパを蓋に配置するので、大きな制約を受けることなく十分なストロークを確保することができる。また、ホルダにリニアダンパを収容するとともに、第2カム部材を軸方向スライド可能に収容したので、安定した緩衝機能を発揮することができる。さらに、ホルダに収容された第2カム部材を支持枠に固定された第1カム部材と合わせることにより、ダンパ機構の組立作業を効率的に行なうことができる。
【0008】
好ましくは、上記ホルダは、上記収容筒部と一体をなす取付板部を有し、上記取付板部には上記回転軸線と平行に延びる複数のスリットが形成され、上記蓋の裏側には、上記蓋から突出する複数のネジ棒が固定されており、上記ネジ棒は上記スリットにおいて上記第1カム部材から遠い箇所に挿通されており、上記ネジ棒に螺合するナットを締め付けることにより、上記ホルダが上記蓋の裏側に固定される。
上記構成によれば、ホルダのスリットにネジ棒を挿通させた状態で、ホルダを回動軸線と平行に移動させることにより、第1カム部材に第2カム部材を合わせることができ、その後でナットによりホルダを蓋に固定することができるので、より一層ダンパ機構の組立作業を効率的に行なうことができる。
【0009】
好ましくは、上記複数のスリットは、上記ホルダの上記取付板部において上記第1カム部材から遠い部位に形成された第1スリットと、上記第1カム部材に近い部位に形成された第2スリットを含み、上記第2スリットの上記第1カム部材に近い端が上記取付板部の側縁において開放されている。
上記構成によれば、第2スリットの端が開放されているため、ホルダを第1カム部材に向かって移動させる前の初期位置において、ネジ棒をホルダから離れて第2スリットの真横に配置することができる。そのため、第1、第2スリットでのネジ棒とナットによる固定箇所を回転軸線方向に十分に離すことができ、ホルダの蓋への固定強度を高めることができる。
【0010】
好ましくは、上記ホルダは、上記取付板部と直交してその両側縁に連なるとともに上記収容筒部の両端に連なる一対の側板部を有し、上記一対の側板部のうち上記第1カム部材に近い方の側板部には、上記第2スリットの開放された端に連なり上記ネジ棒の通過を許容する通過穴が形成されている。
上記構成によれば、一対の側板部によりホルダの強度を高めることができる。一方の側板部には通過穴が形成されているので、ホルダから離れた位置にあるネジ棒が通過穴を通って第2スリットに入り込むことができる。そのため、ダンパ機構の組立工程において、上記一方の側板部がホルダの回転軸線方向の移動を妨げない。
【0011】
好ましくは、上記支持枠は、その両側縁部から裏側に突出する一対の支持板部を有し、上記蓋はその両側縁部から裏側に突出する一対の腕部を有し、上記一対の腕部が一対の軸部材を介して上記一対の支持板部に回転可能に支持されており、上記第1カム部材には同軸をなす筒部が一体に形成され、上記第1カム部材と上記筒部には芯部材が貫通固定され、上記筒部と上記芯部材により、上記一対の軸部材の一方が構成されており、上記芯部材の一端部が上記支持板部に固定され、他端部が上記第1カム部材から突出して、筒形状をなす上記第2カム部材にスライド可能に挿入されている。
上記構成によれば、芯部材を用いることにより、第1カム部材を強固に固定でき、蓋を安定して回転可能に支持でき、第2カム部材を安定して軸方向に移動させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、押込み式開閉装置が大型化しても蓋の閉じ方向の回転に対して十分な緩衝機能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本発明の一実施形態に係る押込み式開閉装置を装備したゴミ箱を示す斜視図であり、蓋が閉じた状態を示す。
【
図2】
図1AのII-II線に沿う上記開閉装置の平断面図である。
【
図3A】上記開閉装置の側断面図であり、蓋が閉じた状態を示す。
【
図4A】上記開閉装置を裏側から見た斜視図であり、蓋が閉じた状態を示す。
【
図5A】上記開閉装置の要部を拡大するとともに、ダンパ機構のホルダの収容筒部を切り欠いて示す斜視図であり、蓋が閉じた状態を示す。
【
図6】上記ダンパ機構の組立工程を示す斜視図であり、ホルダの収容筒部を切り欠いて示している。
【
図7】上記ダンパ機構を構成要素毎に分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1、
図2に示すように、大型のゴミ箱(物入れ箱)は、箱本体1と開閉装置2とを備えている。箱本体1の正面壁1aの上部には矩形の開口1x(
図2にのみ示す)が形成されており、この開口1xにユニット化された開閉装置2が装着されている。
【0015】
図1~
図4に示すように、開閉装置2は、箱本体1に固定される支持枠10と、この支持枠10に回転可能に支持された蓋20と、蓋20を閉じ方向に付勢する付勢部材としての錘30と、錘30による蓋20の閉じ方向の回転モーメントを抑制するダンパ機構40とを、主たる構成として備えている。
【0016】
支持枠10は、正面から見て矩形をなす平坦な枠板11と、この枠板11の左右部の裏面に固定された一対のブラケット15とを有している。枠板11は、上記正面壁1aの開口1xの周縁を正面から覆うようにして配置されており、投入口12を有している。各ブラケット15は、枠板11の裏面に固定される第1固定板部16と、この第1固定板部16の一側縁(左右方向外側の縁)から第1固定板部16と直角をなして裏側に突出する第2固定板部17と、第1固定板部16の他側縁(左右方向内側の縁)から第1固定板部16と直角をなして裏側に突出する支持板部18とを有している。一対のブラケット15の第2固定板部17を箱本体1の開口1xの左右の縁面にネジ60で固定することにより、支持枠10が箱本体1に固定されている。支持板部18には、上記ネジ60を通すための通し穴18aが形成されている。
支持板部18は、幅広をなして箱本体1の奥に向かって張り出しており、これにより、投入口12に入り込んだ人の手の動きを規制している。
【0017】
支持枠10の左右の支持板部18に、上記蓋20の上端部が回転可能に支持されている。詳述すると、蓋20の上部裏面には、補助ブラケット25が固定されている。この補助ブラケット25は、左右方向に延びて蓋20の裏面に固定され蓋20の一部を構成する細長い基板部26と、この基板部26の左右両端から基板部26と直角をなして裏側に突出する一対の腕部27とを有している。一対の腕部27の基端部が、軸部材28,29を介して、支持枠10の一対の支持板部18にそれぞれ回転可能に連結されている。これにより、蓋20の上端部が、上記軸部材28,29を通って左右に延びる水平の回転軸線L(
図3、
図7にのみ示す)を中心に、支持枠10に回転可能に支持されている。
図3に示すように、蓋20は、その下端部が折り曲げ形状を有しており、支持枠10の枠板11には、蓋20が閉じ状態にある時に、その下端部を受ける受部13が形成されている。
【0018】
上記補助ブラケット25の一対の腕部27の先端部間には、金属製の棒からなる錘30が架け渡されている。これにより、蓋20には常に錘30の自重により生じる閉じ方向の回転モーメントが付与されている。
【0019】
上記ダンパ機構40は、裏側から見て例えば左側に配置されており、
図7に示すように、回転軸線L上に配置された第1カム部材41と、第2カム部材42と、リニアダンパ43と、ホルダ45とを有している。第1カム部材41と、第2カム部材42と、ホルダ45は硬質樹脂により構成されている。
【0020】
第1カム部材41には筒部28aが一体に形成されおり、これら第1カム部材41と筒部28aには、金属製の芯部材28bが貫通固定されている。その結果、第1カム部材41は、芯部材28bに対して相対的に回転不能かつ軸方向移動不能である。
【0021】
芯部材28bの一端部は断面非円形をなし、この一端部が支持枠10の支持板部18の非円形の軸穴に嵌った状態で、ネジ61(
図5参照)を芯部材28bの端面にねじ込むことにより、芯部材28bおよび第1カム部材41は、支持板部18に回転不能かつ軸方向移動不能にして固定されている。
【0022】
上記筒部28aは、補助ブラケット25の腕部27の軸穴に回転可能に挿入されている。その結果、裏側から見て左側の腕部27は左側の支持板部18に回転可能に支持されている。筒部28aと芯部材28bにより左側の軸部材28が構成されている。なお、右側の腕部27も軸部材29により右側の支持板部18に回転可能に支持されている。
【0023】
上記説明から明らかなように、第1カム部41は、支持枠10の支持板部18に回転不能かつ軸方向移動不能に固定されており、腕部27の内側に配置されている。
図7に示すように、上記芯部材28bの他端部は第1カム部材41から第2カム部材42に向かって突出している。第1カム部材41の第2カム部材42を向く面は、周方向に沿って山と谷を繰り返す形状をなし、回転軸線Lに対して傾斜した複数のカム面41aを有している。
【0024】
第2カム部材42は有底筒形状をなしており、第1カム部41を向く面は、周方向に沿って山と谷を繰り返す形状をなし、回転軸線Lに対して傾斜した複数のカム面42aを有している。第1カム部材41のカム面41aと第2カム部材42のカム面42aは、相補形状をなしている。
第2カム部材42に芯部材28bの突出した端部が軸方向スライド可能に挿入され、両カム部材41,42のカム面41a、42a同士が接している。
【0025】
上記ホルダ45は、蓋20の上端部の裏側、より具体的には補助ブラケット25の基板部26に固定される取付板部46と、取付板部46の上縁部に連なり回転軸線L上に位置された円筒形状の収容筒部47と、取付板部46の左右縁部に連なり取付板部46と直角をなす一対の側板部48とを一体に有している。一対の側板部48は、収容筒部47の両端にも連なっている。一対の側板部48により、ホルダ45の強度が高められている。
【0026】
上記収容筒部47の一端は閉塞されており、他端は開口している。収容筒部47には、第2カム部材42とリニアダンパ43が収容されている。リニアダンパ43は閉塞端47b側に配置され、第2カム部材42は開口端47a側に配置されている。
【0027】
リニアダンパ43は、周知の構造なので簡単に説明するが、シリンダ43aと、シリンダ43a内に収容されたピストン(図示しない)と、一端がピストンに固定されてシリンダ43aから突出するロッド43bとを有しており、シリンダ43a内に収容された粘性流体の抵抗により、ロッド43bの縮み方向(後退方向)の移動に対する抵抗が生じるようになっている。なお、ロッド43bの延出方向の移動に対しては、大きな抵抗が働かない。ロッド43bはシリンダ43aに内蔵されたリターンスプリングにより、延出方向に付勢されている。ロッド43bの先端は第2カム部材42の底部に当っている。
【0028】
第2カム部材42の周面には周方向に間隔をおいてキー部42xが形成されている。このキー部42xが、ホルダ45の収容筒部47の内周面に形成されたキー溝47xに嵌ることにより、第2カム部材42は、軸方向にスライド可能かつ回転不能にして収容筒部47内に支持されている。
【0029】
上記構成をなすダンパ機構40は、
図6に示すようにして組み立てられる。以下、詳述する。最終組立工程に先立って、蓋20の腕部27は、軸部材28、29により、支持枠10の支持板部18に回転可能に支持されている。第1カム部材41は軸部材28を介して支持板部18に固定されており、第1カム部材41と芯部材28bは、腕部27の内側に突出している。ホルダ45の収容筒部47には、上述したようにリニアダンパ43および第2カム部材42が収容されている。
【0030】
ホルダ45の取付板部46において第1カム部材41から遠い部位には、回転軸線Lと平行に延びる第1スリット46aが形成され、第2カム部材41に近い部位には、同方向に延びる2つの第2スリット46bが上下方向に離れて形成されている。第2スリット46bは第1スリット46aより短いが、第2スリット46bの第1カム部材41側の端部が取付板部46の側縁において開放されており、側板部48に形成された細長い通過穴48aと連なっている。
上記第1スリット46aおよび第2スリット46bにおいて第1カム部材41から遠い端部には、座グリ46cがそれぞれ形成されている。
補助ブラケット25の基板部26には、第1スリット46aに対応するネジ棒51aと、第2スリット46bに対応するネジ棒51bがスタッド溶接されている。
【0031】
最終組立工程は、以下のようにして実行される。
最初に、
図6に示すように蓋20を支持枠10に対して開き位置にした状態で、ホルダ45の取付板部46を補助ブラケット25の基板部26に当てるとともに、初期位置に位置決めする。ホルダ45の初期位置では、1つのネジ棒51aが、ホルダ45の第1スリット46aにおいて第1カム部材41に近い端部又はその近傍に挿入され、他の2つのネジ棒51bが、ホルダ45の側板部48の通過穴48aの真横に側板部48から離れて配置されている。
【0032】
次に、
図6の矢印で示すように、第1カム部材41に向けて移動させる。すると、第1カム部材41のカム面41aと第2カム部材42のカム面42aが、
図5Bに示すように噛み合う。この過程で、ネジ棒51aが第1スリット29aに沿って移動し、第1スリット29aの第1カム部材41から遠い方の端に達する。また、ネジ棒51bが側板部48の通過穴48aを通過し、第2スリット29bを通って、その端部(第1カム部材41から遠い方の端部)に達する。この状態で、ナット52をネジ棒51a,51bに螺合させ、座ぐり46cに向かって締め付けることにより、ホルダ45が補助ブラケット25の基板部26に固定され(すなわち蓋20に固定され)、ダンパ機構40の組立が完了する。
【0033】
上述したように、ホルダ45の収容筒部47にリニアダンパ43を収容するとともに、第2カム部材42を収容し、この第2カム部材42を支持枠10に固定された第1カム部材41と噛み合わせることにより、ダンパ機構40の組立作業を効率的に行なうことができる。しかも、ホルダ45を回動軸線Lと平行に移動させることにより第1カム部材41に第2カム部材42を合わせることができ、その後でナット52によりホルダ45を固定することができるので、より一層ダンパ機構40の組立作業を効率的に行なうことができる。
【0034】
また、第1スリット46aを長くし、第2スリット46bをホルダ45の側縁で開放させることにより、上記組立工程でのホルダ45の移動ストロークを長くすることができる。これにより、ネジ棒51aとナット52による固定箇所と、ネジ棒51bとナット52による固定箇所を、回転軸線L方向に十分に離すことができるため、ホルダ45の蓋20への固定強度を高めることができる。側板部48にネジ棒51bを通過させるための通過穴48aが形成されているので、側板部48がホルダ45の移動を妨げることはない。
【0035】
上記構成をなす開閉装置2の作用を説明する。通常、蓋20は錘30の回転モーメントにより、支持枠10に当たっており、投入口12を閉じている(
図1A、
図3A、
図4A参照)。この時、
図5Aに示すように、第1カム部材41と第2カム部材42は最も離れており、カム面41a,42aの一部だけが接している。ロッド43bは後退位置にある。
【0036】
使用者がゴミ箱にゴミを捨てる場合には、蓋20を手で押すことにより閉じ方向の回転モーメントに抗して投入口12を開き(
図1B、
図3B、
図4B参照)、投入口12に差し込まれた手からゴミを箱本体1内に落とす。この蓋20の開きに伴い、第2カム部材42が第1カム部材41に対して回転し、カム面41a,42aのカム作用と、リニアダンパ43のリターンスプリングの力により、ロッド43bが延び出る。このロッド43bが第2カム部材42を第1カム部材41に向かって押すことにより、
図5Bに示すように、第2カム部材42が第1カム部材41に近づき、全開状態では完全に噛み合う。
【0037】
その後で、投入口12から手を抜くと、蓋20が錘30の回転モーメントにより閉じ方向に移動する。この際、蓋20が勢い良く閉じられると、蓋20が支持枠10に強く当たり大きな音が発生するが、ダンパ機構40によりその勢いを減じることにより、大きな音の発生を防ぐことができる。詳述すると、蓋20の閉じ方向の回転に伴い、第2カム部材42が第1カム部材41に対して回転し、カム面41a,42aのカム作用により、第2カム部材42が第1カム部材41から離れる方向に移動し、リニアダンパ43のロッド43bが、第2カム部材42に押されて後退する。この過程で、粘性流体の抵抗によりロッド43bおよび第2カム部材42の移動が抑制され、ひいては蓋20の閉じ方向の回転の勢いが減じられる。
【0038】
上述したように、蓋20の閉じ方向の回転を、第1、第2カム部材41,42により軸方向の力に変換し、この軸方向の力をリニアダンパ43で受け止めるので、蓋40の閉じ方向の回転モーメントが大きい場合でも十分な緩衝機能を発揮することができる。
第2カム部材42はホルダ45の収容筒部47に回転不能かつ軸方向スライド可能に収容されるとともに、芯部材28bにも軸方向スライド可能に支持されているので、安定して軸方向に移動でき、ひいては安定した緩衝機能を発揮することができる。
【0039】
本発明は、上記実施に制約されず、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。例えば、回転軸線を垂直にし、蓋を横開きするように構成してもよい。
蓋に閉じ方向の回転モーメントを付与する付勢部材として、錘の代わりにスプリングを用いてもよい。
蓋の上端部を水平の回転軸線を中心にして回転可能に支持する構成を採用する場合には、蓋を重くして蓋の重力により閉じ方向の回転モーメントを得てもよい。この構成では、蓋自身が付勢部材としての役割を担う。
物入れ箱は、ゴミ箱に限らず、宅配ボックス、DVDや本等の返却用ボックスであってもよい。
支持枠は、箱本体と一体をなしていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、ゴミ箱等に装着される押込み式開閉装置に適用することができる。