IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱製紙株式会社の特許一覧

特許7410053ポジ型ドライフィルムレジスト及びエッチング方法
<>
  • 特許-ポジ型ドライフィルムレジスト及びエッチング方法 図1
  • 特許-ポジ型ドライフィルムレジスト及びエッチング方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ポジ型ドライフィルムレジスト及びエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20231226BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20231226BHJP
   G03F 7/09 20060101ALI20231226BHJP
   H05K 3/06 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
G03F7/023
G03F7/004 512
G03F7/09 501
H05K3/06 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020561381
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2019048949
(87)【国際公開番号】W WO2020129845
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2018235956
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019014805
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019030248
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019198657
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019215135
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】入澤 宗利
(72)【発明者】
【氏名】中村 優子
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 邦人
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-120435(JP,A)
【文献】特開2005-215137(JP,A)
【文献】特表2013-505484(JP,A)
【文献】特開2017-078852(JP,A)
【文献】特開2008-176276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/023
G03F 7/004
G03F 7/09
H05K 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(a)支持体フィルムと(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層がこの順で積層してなり、(b)剥離層が、ポリビニルアルコールを含み、且つ、(c)ポジ型感光性レジスト層が、ノボラック樹脂及びキノンジアジドスルホン酸エステルを主成分として含むことを特徴とするポジ型ドライフィルムレジスト(但し、(a)支持体フィルムと(b)剥離層との間に熱可塑性樹脂層を有する場合、(a)支持体フィルムと(b)剥離層との間に離型層を有する場合、及び、(b)剥離層がポリシリコンを含む場合を除く)
【請求項2】
(b)剥離層の全不揮発分量に対して、ポリビニルアルコールの含有率が80質量%以上である請求項1記載のポジ型ドライフィルムレジスト。
【請求項3】
(c)ポジ型感光性レジスト層が、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテルを含有する請求項1又は2記載のポジ型ドライフィルムレジスト。
【請求項4】
上記ノボラック樹脂が質量平均分子量(Mw)16000~75000のo-クレゾールノボラック樹脂を含み、上記キノンジアジドスルホン酸エステルがナフトキノンジアジドスルホン酸エステルを含む請求項1~3のいずれか記載のポジ型ドライフィルムレジスト。
【請求項5】
上記ポリビニルアルコールが、けん化度82mol%以上のポリビニルアルコールを含む請求項1~4のいずれか記載のポジ型ドライフィルムレジスト。
【請求項6】
(a)支持体フィルムの(b)剥離層側にコロナ放電処理が施されており、且つ(b)剥離層の厚さが1~4μmであり、(c)ポジ型感光性レジスト層の厚さが3~8μmである請求項1~5のいずれか記載のポジ型ドライフィルムレジスト。
【請求項7】
少なくとも(a)支持体フィルムと(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層と(d)保護フィルムがこの順で積層してなり、(d)保護フィルムが自己粘着性樹脂フィルムからなる請求項1~6のいずれか記載のポジ型ドライフィルムレジスト。
【請求項8】
基材の少なくとも片面に、請求項1~6のいずれか記載のポジ型ドライフィルムレジストの(c)ポジ型感光性レジスト層をラミネート法で貼り付け、(a)支持体フィルム及び(b)剥離層を同時に除去し、次に所望のパターンを露光し、次に現像液により(c)ポジ型感光性レジスト層を現像してレジストパターンを形成し、次に基材をエッチング処理し、次に剥離液によりレジスト剥離を実施するエッチング方法。
【請求項9】
請求項7記載のポジ型ドライフィルムレジストの(d)保護フィルムを剥がした後、基材の少なくとも片面に、ポジ型ドライフィルムレジストの(c)ポジ型感光性レジスト層をラミネート法で貼り付け、(a)支持体フィルム及び(b)剥離層を同時に除去し、次に所望のパターンを露光し、次に現像液により(c)ポジ型感光性レジスト層を現像してレジストパターンを形成し、次に基材をエッチング処理し、次に剥離液によりレジスト剥離を実施するエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型ドライフィルムレジスト及びエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板、リードフレーム、メタルマスク、シャドウマスク、半導体パッケージ、電極部材、電磁波シールド等の製造において、金属のエッチングや金属めっき等の金属加工を行う際に、レジストが使用されている。例えば、メタルマスク、リードフレーム、シャドウマスク、プリント基板等の製造において、各種基材の金属をエッチングする方法が行われている。このエッチングに使用されるレジストとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子に、重クロム酸アンモニウム等の光架橋試薬を混合することによる光架橋を利用した感光性樹脂組成物が用いられてきた。しかし、この感光性樹脂組成物は、クロム廃液の処理が難しい等の問題を有しており、現在では、そのほとんどがアルカリ水溶液現像型感光性樹脂組成物を使用したドライフィルムレジストに置き換わっている。
【0003】
現在、このドライフィルムレジストとしてはネガ型感光性レジストが利用されており、アルカリ可溶性樹脂と光重合性架橋剤と光重合開始剤を組み合わせた組成物が一般的である。基材にドライフィルムレジストを熱圧着し、画像形成したフォトマスクを通した紫外線露光によって画像状に感光性樹脂層を硬化、難溶性とした後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液等のアルカリ性現像液で未露光部を現像液に溶出させてレジストパターンが形成される。
【0004】
しかしながら、ネガ型感光性レジストには、経時変化により感度変化が生じる問題及び現像後に基材の表面にレジスト成分の残渣が生じる問題がある。また、金属のエッチング加工後にレジストを剥離させる際には、強アルカリ性又は有機アミンを含有する特殊な剥離液を使用する必要がある。
【0005】
一方、ポジ型感光性レジストは、光重合を阻害する空気中の酸素の影響を受け難く、経時変化による感度変化も小さく、さらには金属のエッチング加工後はレジストを全面露光して現像液等で処理することによって、レジストパターンを容易に溶解剥離できる等の利点がある。また、ネガ型感光性レジストと比較し、レジストが現像液に膨潤し難いため、微細パターンに有利である。
【0006】
ポジ型感光性レジストにおいては、近年、液状レジストが広く使用されており、基材へのレジスト層の形成方法としては、スピンコートやロールコート等で、直接、基材へ塗工する方法が適用されている。しかしながら、液状レジストにおいては、液のロスが多く、塗工の手間がかかる。ポジ型感光性レジストは高価であるため、液のロスは好ましくない。また、液状レジストにおいては、両面同時にレジスト層を形成したり、レジスト層を均一に形成したりすることも難しい。そのため、ポジ型感光性レジストをドライフィルムレジストとし、熱圧着してラミネートする方法が強く望まれている。
【0007】
一方、従来から広く用いられてきたポジ型感光性レジストとしては、キノンジアジド系の材料とノボラック樹脂を主成分とする材料が挙げられる。このポジ型感光性レジストをポリエチレンテレフタレートフィルム等の支持体に塗工し、ポジ型ドライフィルムレジストにすると、支持体フィルムとポジ型感光性レジスト層との接着力が高く、ラミネート法で基材上に熱圧着したのち、支持体フィルムを剥がす工程において、支持体フィルムが剥がれない問題があった(例えば、特許文献1)。
【0008】
また、ポジ型感光性レジスト層を基材に貼り付けることができたとしても、ノボラック樹脂は銅張積層板等の基材に対して密着力が不足しているため、エッチング加工におけるサイドエッチング量が大きくなってしまい、線幅のばらつきが発生するという問題があった。
【0009】
また、ノボラック樹脂は硬く、膜質が脆く、柔軟性に欠けるため、ラミネート法によって基材上に熱圧着したときに、基材に貼り付き難いという問題があった。ラミネーターの熱ロールの温度を高くする、搬送速度を遅くする等の手段によって、充分な熱と圧力を供給すれば、ラミネートすることも可能ではあるが、130℃以上の温度を掛けると、支持体が軟化し、伸縮が起こってしまう問題が発生する。また、ポジ型感光性レジスト層が充分に軟化し難いため、基材とポジ型感光性レジスト層との間に気泡が入る問題が発生する場合もあった。
【0010】
また、ラミネート法によって熱圧着できるように、ポジ型感光性レジスト層に可塑剤を入れたり、ノボラック樹脂の軟化点を低くしたりすることによって、ポジ型感光性レジスト層の軟化点を低くし、ラミネート特性を付与する場合がある。
しかしながら、このようにした場合、支持体フィルムにポジ型感光性レジスト層用の塗液を塗工し、乾燥した後に巻き取り、ロール状で保管すると、室温長期間保管でポジ型感光性レジスト層が、反対側の支持体フィルムにくっつく「ブロッキング」と呼ばれる問題が発生する。
【0011】
この問題を解決するために、例えば、ネガ型感光性レジストであれば、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムを保護フィルムとして感光性レジスト層に貼り付ける対策が採られる。
しかしながら、ポジ型ドライフィルムレジストにおいて、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムを保護フィルムと使用する場合、充分な密着力が無く、室温での保護フィルムの貼り付けが困難であり、また、熱をかけて保護フィルムを貼り付けた場合、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムに皺が発生し問題であった。
【0012】
また、ブロッキングしないようにポジ型感光性レジスト層を硬くすることも可能である。しかし、そもそも、ポジ型感光性レジスト層は柔軟性に欠けることから、上述した課題がより発生し易くなる。さらに、ポジ型感光性レジスト層が柔軟性に欠け、脆いことから、ポジ型ドライフィルムレジストが折れ曲がった場合、割れ(クラック)が発生する場合がある。また、ポジ型ドライフィルムレジストをロール状とすることに難点がある。すなわち、通常、広幅のロールから所望の幅のロール製品へとスリット加工するが、脆いポジ型感光性レジスト層に割れが発生して、端部から切り屑が発生し易い。
また、通常、ロール状のポジ型ドライフィルムレジストを、枚葉の基材へ連続で熱圧着するが、各基材間でポジ型ドライフィルムレジストをカットする必要があり、その際にもポジ型感光性レジスト層が割れて、切り屑が発生し易い。そして、切り屑が基材の上に付着して欠陥となる問題が発生する場合があった(例えば、特許文献2)。
【0013】
これらの問題に対し、支持体フィルムとポジ型感光性レジスト層との間に剥離層を設けるという解決策がある(例えば、特許文献3及び4)。
【0014】
特許文献3には、離型層を有する可剥性支持体層(支持体フィルム)、フォトレジスト層の第1層及び貼付け可能な架橋又は架橋性有機重合体の第2層の順で構成されている多層ドライフィルムフォトレジストが開示されている。また、特許文献4には、支持フィルム(支持体フィルム)と、レジスト膜の機械的強度を補強するためのドライフィルムレジスト膜と、パターン形成に供されるレジスト膜とを含むレジストフィルムが開示されている。剥離層によって、熱圧着後の支持体フィルムの剥離を容易にすることができる。また、ポジ型ドライフィルムレジストが折れ曲がったとしても、ポジ型感光性レジスト層の割れが発生しないように、また、剥離層やポジ型感光性レジスト層が剥がれないように、さらに、カット又はスリットした場合に割れが発生しないように、剥離層とポジ型感光性レジスト層間の密着力を高める必要がある。しかし、剥離層とポジ型感光性レジスト層間の密着力が強くなるほど、熱圧着後の剥離において、支持体フィルムのみが剥がれ、剥離層がポジ型感光性レジスト層上に残り易くなる傾向にある。ポジ型感光性レジスト層上に剥離層が残っていると、露光の際に、ポジ型感光性レジスト層の露光部分から発生するガスが、ポジ型感光性レジスト層と剥離層との間に蓄積するために、現像後の画線に欠陥が生じてしまう問題が発生する場合があった。特許文献3では、フォトレジスト層の支持体フィルムとは貼付け可能な第2層を有しているため、フォトレジスト層の剥がれや剥離が抑制されている。しかし、微細パターンを形成するためには、第2層が無いことが好ましい。
【0015】
特許文献4では、機械的強度を補強するためのドライフィルムレジスト膜を化学処理によって除去した後に、レジスト膜でパターン形成をしているため、ガスによる画像欠陥の問題は生じないが、化学処理という工程を増やす必要がある。そのため、ポジ型ドライフィルムレジストを基材に熱圧着した後に支持体フィルム及び剥離層を、ポジ型感光性レジスト層と剥離層の界面から容易に剥がすことができることが求められている。
【0016】
また、支持体フィルムとポジ型感光性レジスト層との間に剥離層を設けた場合、気泡や異物が入った剥離層上に形成されたポジ型感光性レジスト層にピンホール欠陥が発生する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特開2006-267660号公報
【文献】特開2002-341525号公報
【文献】特開昭59-083153号公報
【文献】特許第3514415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の課題は、下記特性のうち少なくとも1つを有するポジ型ドライフィルムレジストと、該ポジ型ドライフィルムレジストを用いたエッチング方法とを提供することである。
【0019】
<A>ポジ型ドライフィルムレジストを基材に熱圧着した後に、支持体フィルム及び剥離層を、ポジ型感光性レジスト層と剥離層の界面から容易に剥がすことができる。
【0020】
<B>ポジ型ドライフィルムレジストをカット又はスリットする場合やポジ型ドライフィルムレジストが折れ曲がった場合に、剥がれ又は割れ(クラック)が発生し難い。
【0021】
<C>ラミネーターを使用してポジ型ドライフィルムレジストを基材に貼り付ける際、ポジ型感光性レジスト層と基材との間において、気泡が入り難く、良好に貼り付け可能である。
【0022】
<D>サイドエッチング量が少なく、線幅のばらつきが少なく、微細なパターンの形成が可能である。
【0023】
<E>ピンホール欠陥が発生し難い。
【0024】
<F>支持体フィルムとポジ型感光性レジスト層の間でブロッキングが発生し難い。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題は、下記手段により解決される。
【0026】
<1>
少なくとも(a)支持体フィルムと(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層がこの順で積層してなり、(b)剥離層が、ポリビニルアルコールを含み、且つ、(c)ポジ型感光性レジスト層が、ノボラック樹脂及びキノンジアジドスルホン酸エステルを主成分として含むことを特徴とするポジ型ドライフィルムレジスト。
【0027】
<2>
(b)剥離層の全不揮発分量に対して、ポリビニルアルコールの含有率が80質量%以上である<1>記載のポジ型ドライフィルムレジスト。
【0028】
<3>
(c)ポジ型感光性レジスト層が、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテルを含有する<1>又は<2>記載のポジ型ドライフィルムレジスト。
【0029】
<4>
上記ノボラック樹脂が質量平均分子量(Mw)16000~75000のo-クレゾールノボラック樹脂を含み、上記キノンジアジドスルホン酸エステルがナフトキノンジアジドスルホン酸エステルを含む<1>~<3>のいずれか記載のポジ型ドライフィルムレジスト。
【0030】
<5>
上記ポリビニルアルコールが、けん化度82mol%以上のポリビニルアルコールを含む<1>~<4>のいずれか記載のポジ型ドライフィルムレジスト。
【0031】
<6>
(a)支持体フィルムの(b)剥離層側にコロナ放電処理が施されており、且つ(b)剥離層の厚さが1~4μmであり、(c)ポジ型感光性レジスト層の厚さが3~8μmである<1>~<5>のいずれか記載のポジ型ドライフィルムレジスト。
【0032】
<7>
少なくとも(a)支持体フィルムと(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層と(d)保護フィルムがこの順で積層してなり、(d)保護フィルムが自己粘着性樹脂フィルムからなる<1>~<6>のいずれか記載のポジ型ドライフィルムレジスト。
【0033】
<8>
基材の少なくとも片面に、<1>~<6>のいずれか記載のポジ型ドライフィルムレジストの(c)ポジ型感光性レジスト層をラミネート法で貼り付け、(a)支持体フィルム及び(b)剥離層を同時に除去し、次に所望のパターンを露光し、次に現像液により(c)ポジ型感光性レジスト層を現像してレジストパターンを形成し、次に基材をエッチング処理し、次に剥離液によりレジスト剥離を実施するエッチング方法。
【0034】
<9>
<7>記載のポジ型ドライフィルムレジストの(d)保護フィルムを剥がした後、基材の少なくとも片面に、ポジ型ドライフィルムレジストの(c)ポジ型感光性レジスト層をラミネート法で貼り付け、(a)支持体フィルム及び(b)剥離層を同時に除去し、次に所望のパターンを露光し、次に現像液により(c)ポジ型感光性レジスト層を現像してレジストパターンを形成し、次に基材をエッチング処理し、次に剥離液によりレジスト剥離を実施するエッチング方法。
【発明の効果】
【0035】
本発明のポジ型ドライフィルムレジストの一態様では、図1に示すように、少なくとも(a)支持体フィルムと(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層がこの順で積層してなる。本発明のポジ型ドライフィルムレジストによれば、上記した課題を解決することが可能である。
【0036】
(c)ポジ型感光性レジスト層は、硬く、柔軟性が低いノボラック樹脂を含んでいるが、(b)剥離層によって、(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層間の密着力が高くなり、ポジ型ドライフィルムレジストが折れ曲がった場合やポジ型ドライフィルムレジストをカット又はスリットした場合でも、割れが発生し難い。
また、(a)支持体フィルムと(b)剥離層間の密着力も強固であり、ポジ型ドライフィルムレジストが折れ曲がった場合でも、(a)支持体フィルムと(b)剥離層間での剥がれ、及び、(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層間での剥がれが発生し難い。
(b)剥離層の全不揮発分量に対して、ポリビニルアルコールの含有率が80質量%以上であることによって、上記何れの密着力であってもより強固になる。
【0037】
(c)ポジ型感光性レジスト層内の成分のうち、主成分であるノボラック樹脂及びキノンジアジドスルホン酸エステルによって、感光特性が発現する。
【0038】
(c)ポジ型感光性レジスト層がポリプロピレングリコールグリセリルエーテルを含有する場合、(c)ポジ型感光性レジスト層を軟化させて、ラミネート特性を向上させることができる。そして、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテルを含有することによって、(c)ポジ型感光性レジスト層の感度、アルカリ現像性、レジスト形状等の、感光特性や現像特性を損なうことなく、(c)ポジ型感光性レジスト層を軟化することができ、(c)ポジ型感光性レジスト層と基材との間に気泡が入ることを抑制でき、良好に貼り付け可能となる。
【0039】
また、(c)ポジ型感光性レジスト層に含有されるノボラック樹脂が質量平均分子量(Mw)16000~75000のo-クレゾールノボラック樹脂を含む場合、ポリビニルアルコールを含む(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層間の密着力が高く、また、(a)支持体フィルムと(b)剥離層間も強固に密着していることから、ポジ型ドライフィルムレジストをカット又はスリットした場合でも、割れが発生し難い。
また、ポジ型ドライフィルムレジストを折り曲げた場合においても、(b)剥離層や(c)ポジ型感光性レジスト層の剥がれが発生し難い。さらに、該ノボラック樹脂が質量平均分子量(Mw)16000~75000のo-クレゾールノボラック樹脂を含むことによって、(c)ポジ型感光性レジスト層と基材との密着力に優れ、エッチング後の線幅のばらつきが小さくなる。
【0040】
そして、基材にポジ型ドライフィルムレジストを熱圧着後、(a)支持体フィルムを剥がす必要があるが、(b)剥離層が、けん化度82mol%以上のポリビニルアルコールを含んでいることによって、(a)支持体フィルム及び(b)剥離層を、(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層の界面から容易に剥がすことができる。
【0041】
また、ノボラック樹脂として質量平均分子量(Mw)16000~75000のo-クレゾールノボラック樹脂を使用することによって、基材との密着力に優れ、エッチング後の線幅のばらつきが小さくなる。
【0042】
また、(a)支持体フィルムの(b)剥離層側にコロナ放電処理が施されていることによって、(b)剥離層との密着力が高くなり、(c)ポジ型感光性レジスト層から(a)支持体フィルムと(b)剥離層を同時に剥がし易くなる。
また、(b)剥離層の厚さが1~4μmの場合、塗工時にレベリングが進み、気泡等が原因のピンホール欠陥が少なくなる効果が得られる。なお、(b)剥離層の厚さが4μm以下と薄くても、(a)支持体フィルムにコロナ放電処理が施されていると、基材にポジ型ドライフィルムレジストを貼り付けた後、(a)支持体フィルムと(b)剥離層の界面から剥がれ難く、(a)支持体フィルム及び(b)剥離層を同時に除去し易くなる。
【0043】
また、(c)ポジ型感光性レジスト層は、硬く、柔軟性が低い場合が多いが、厚さが3~8μmであることによって、ポジ型ドライフィルムレジストをカット又はスリットする際に端部から切り屑が発生し難く、また、(a)支持体フィルム及び(b)剥離層を、(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層の界面から容易に剥がすことができる。
【0044】
本発明のポジ型ドライフィルムレジストの別の態様では、図2に示すように、少なくとも(a)支持体フィルムと(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層と(d)保護フィルムがこの順で積層してなる。
(d)保護フィルムが自己粘着性樹脂フィルムであることによって、(c)ポジ型感光性レジスト層に熱を掛けて(d)保護フィルムを貼り付ける必要が無く、また、ポジ型ドライフィルムレジストをカット又はスリットしても、割れや切り屑が発生し難く、ブロッキングも発生し難い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明のポジ型ドライフィルムレジストの一態様を示す断面概略図である。
図2】本発明のポジ型ドライフィルムレジストの別の態様を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
<ポジ型ドライフィルムレジスト>
本発明のポジ型ドライフィルムレジストの一態様では、少なくとも(a)支持体フィルムと(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層がこの順で積層してなる。また、別の態様では、少なくとも(a)支持体フィルムと(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層と(d)保護フィルムがこの順で積層してなる。
そして、(b)剥離層が、ポリビニルアルコールを含み、且つ、(c)ポジ型感光性レジスト層が、ノボラック樹脂及びキノンジアジドスルホン酸エステルを主成分として含むことを特徴とする。
【0047】
<(a)支持体フィルム>
(a)支持体フィルムとしては、(b)剥離層を形成でき、ポジ型ドライフィルムレジストを、ラミネート法で基材に貼り付けた後に剥離することができれば、どのようなフィルムであってもよい。光を透過する透明フィルム、又は、光を遮光する白色フィルム若しくは有色フィルムであってもよい。
例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン;ポリイミド;ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、難燃ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルのフィルム;ポリカーボネート、ポリフェニレンサルフィド、ポリエーテルイミド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリウレタン等のフィルムが使用できる。その中でも特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用すると、ラミネート適性、剥離適性、平滑性に対して有利であり、また、安価で、脆化せず、耐溶剤性に優れ、高い引っ張り強度を持つ等の利点から、非常に利用し易い。
【0048】
(a)支持体フィルムの厚さは、1~100μmであることが好ましく、12~50μmであることがより好ましい。
【0049】
本発明では、(a)支持体フィルムの(b)剥離層側に、(b)剥離層を形成する前にコロナ放電処理が施されていることが好ましい。コロナ放電処理は、電極から支持体フィルム表面に向けてコロナ放電を照射する。(a)支持体フィルムの表面にコロナ放電処理を施すことによって、表面張力を低下させ、(b)剥離層との密着力を高めることができ、(c)ポジ型感光性レジスト層から(a)支持体フィルムと(b)剥離層を同時に剥がし易くなる。好ましいコロナ放電量は、10~200W・min/mである。
【0050】
<(b)剥離層>
(b)剥離層は、ポリビニルアルコールを含む。
剥離層用塗液であるポリビニルアルコール水溶液を、(a)支持体フィルム上に塗工することによって、(b)剥離層を形成できる。
(a)支持体フィルムの(b)剥離層側に、(b)剥離層を形成する前にコロナ放電処理が施されている場合は、ポリビニルアルコール水溶液を、(a)支持体フィルムのコロナ放電処理が施された面(コロナ放電処理面)上に塗工して、乾燥することによって、(b)剥離層を形成できる。
【0051】
本発明において、(b)剥離層は、(b)剥離層上に(c)ポジ型感光性レジスト層をムラ無く均一に形成できる特性を有している。また、(a)支持体フィルムと(b)剥離層の密着力に優れ、且つ(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層との密着力にも優れている。
【0052】
(b)剥離層において、ポリビニルアルコールの含有率は、(b)剥離層の全不揮発分量に対して、80~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましく、95~100質量%であることがさらに好ましい。
該含有率が80質量%未満である場合、(b)剥離層と(b)ポジ感光性レジスト層間の密着力が高くなることによって、(b)剥離層と(a)支持体フィルムを一緒に剥がすことが難しくなる場合があり、(a)支持体フィルムを剥がすと、(b)剥離層が(c)ポジ型感光性レジスト上に残るおそれ、又は、(c)ポジ型感光性レジスト層ごと部分的に剥がれるおそれがある。
なお、上記「全不揮発分量」とは、剥離層用塗液を(a)支持体フィルム上に塗工し、十分乾燥させて(b)剥離層を形成させた場合には、(b)剥離層全体の質量のことを言う。
【0053】
なお、ポリビニルアルコールの含有率が100質量%未満である場合、残りの成分としては、可塑剤等の低分子化合物又は高分子化合物等が挙げられる。これらの化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシメチルセルロース(CMC)、にかわ、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロイルモルホリン等の水溶性樹脂が挙げられる。
【0054】
(b)剥離層に用いられるポリビニルアルコールは、けん化度82mol%以上のポリビニルアルコールを含むことが好ましく、けん化度82mol%以上のポリビニルアルコールであることが特に好ましい。
該ポリビニルアルコールとしては、(a)支持体フィルムと(b)剥離層間の密着力が高く、且つ(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層間の密着力によって、ポジ型ドライフィルムレジストが折れ曲がった場合でも、(c)ポジ型感光性レジスト層の剥がれが抑制され、且つ、(a)支持体フィルムと(b)剥離層を、(c)ポジ型感光性レジスト層から剥離する際に、(c)ポジ型感光性レジスト層の凝集破壊が生じ難いポリビニルアルコールが好ましい。
【0055】
上記ポリビニルアルコールのけん化度は、82~99.5mol%であることがより好ましく、83~98mol%であることがさらに好ましい。使用するポリビニルアルコールは、未変性のものでも、部分的に変性基を導入し、耐水性、耐溶剤性、耐熱性、バリア性、柔軟性等の機能性を付与したものを用いることもできる。また、合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
【0056】
市販品としては、限定はされないが、例えば、株式会社クラレ製のクラレポバール(登録商標)3-98、4-98 HV、5-98、11-98、28-98、60-98、(以上、けん化度=98~99mol%)、3-88、5-88、9-88、22-88、30-88、44-88、95-88(以上、けん化度=86~89mol%)、29-99、25-100(以上、けん化度=99mol%以上);日本酢ビ・ポバール株式会社製のJC-25、JC-33(以上、けん化度=99mol%以上)、JF-03、JF-04、JF-05(以上、けん化度=98~99mol%)、JP-03、JP-04(以上、けん化度=86~90mol%)、JP-05(けん化度=87~89mol%)、JP-45(けん化度=86.5~89.5mol%)、JL-18E(けん化度=83~86mol%);三菱ケミカル株式会社製のゴーセネックス(登録商標)シリーズZ-100、Z-200、Z-205(以上、けん化度=98mol%以上)、Z-300、Z-410(以上、けん化度=97.5~99mol%)、Z-210(けん化度=95~97mol%)、Z-220、Z-320(以上、けん化度=90.5~94mol%)等が挙げられる。
【0057】
(b)剥離層において、けん化度82mol%以上のポリビニルアルコールの含有率は(b)剥離層の全不揮発分量に対して、80~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましく、95~100質量%であることがさらに好ましい。
該含有率が80質量%未満である場合、(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層間の密着力が高くなり過ぎることによって、(b)剥離層と(a)支持体フィルムを一緒に剥がすことが難しくなる場合があり、(a)支持体フィルムを剥がす際に、(b)剥離層が(c)ポジ型感光性レジスト上に残る場合、又は、(c)ポジ型感光性レジスト層ごと部分的に剥がれる場合がある。
なお、該含有率が100質量%未満である場合、残りの成分としては、特に限定はないが、上述した、可塑剤等の低分子化合物又は高分子化合物等が挙げられる。また、けん化度82mol%未満のポリビニルアルコールが挙げられる。
【0058】
(b)剥離層の厚さは、1~20μmが好ましく、1~10μmがより好ましく、1~4μmがさらに好ましく、1~2μmが特に好ましい。1μmより薄いと、皮膜形成した際に厚さむらやピンホールの問題が発生し易い場合がある。20μmより厚いと、(b)剥離層用塗液が水系であるために乾き難く、塗工後の乾燥工程が長引く傾向にある。
また、(b)剥離層用塗液中の気泡が残存し、それによるピンホール欠陥が発生する課題を解決するためには、(b)剥離層の厚さが4μm以下であることが好ましい。(b)剥離層の厚さは、乾燥後の厚さである。
【0059】
<(c)ポジ型感光性レジスト層>
(c)ポジ型感光性レジスト層は、ノボラック樹脂及びキノンジアジドスルホン酸エステルを主成分として含む。「主成分として含む」とは、(c)ポジ型感光性レジスト層の全不揮発分量に対する、ノボラック樹脂及びキノンジアジドスルホン酸エステルの合計の含有率が、60質量%以上であることを言う。該含有率は、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましく、上限値は100質量%である。
なお、上記「全不揮発分量」とは、ポジ型感光性レジスト層用塗液を(b)剥離層上に塗工し、十分乾燥させて(c)ポジ型感光性レジスト層を形成させた場合には、(c)ポジ型感光性レジスト層全体の質量のことを言う。
【0060】
上記ノボラック樹脂は、フェノール類若しくはナフトール類と、アルデヒド類若しくはケトン類とを、酸触媒を用いて縮合して得られる樹脂である。なお、ここでの「フェノール類」とは、クレゾール類、キシレノール類、レゾルシノール類、カテコール類、レゾルシノール類、ピロガロール類等の「ベンゼン環等の芳香環にフェノール性水酸基が結合したもの全体」をも含むものである。
該ノボラック樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、キシレノールノボラック樹脂、レゾルシノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等が挙げられる。
【0061】
ノボラック樹脂の原料となるフェノール類若しくはナフトール類としては、特に限定はないが、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、o-プロピルフェノール、m-プロピルフェノール、p-プロピルフェノール、o-ブチルフェノール、m-ブチルフェノール、p-ブチルフェノール、オクチルフェノール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、メトキシフェノール、2-メトキシ-4-メチルフェノール、ビニルフェノール、アリルフェノール、ベンジルフェノール、メトキシカルボニルフェノール、ベンゾイルオキシフェノール、クロロフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、β-ナフトール、p-ヒドロキシフェニル-2-エタノール、p-ヒドロキシフェニル-3-プロパノール、p-ヒドロキシフェニル-4-ブタノール、ヒドロキシエチルクレゾール等が挙げられる。これらのフェノール類は、単独又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0062】
ノボラック樹脂を得るために用いられるアルデヒド類若しくはケトン類としては、特に限定はないが、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド、メトキシフェニルアセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、クロロアセトアルデヒド、クロロフェニルアセトアルデヒド、アセトン、グリセルアルデヒド、グリオキシル酸、グリオキシル酸メチル、グリオキシル酸フェニル、グリオキシル酸ヒドロキシフェニル、ホルミル酢酸、ホルミル酢酸メチル等が挙げられる。これらのアルデヒド類若しくはケトン類は単独又は2種類以上組み合わせて用いることができる。また、これらの縮合物を用いてもよい。
【0063】
上記ノボラック樹脂は、o-クレゾールノボラック樹脂を含むことが好ましく、質量平均分子量(Mw)16000~75000のo-クレゾールノボラック樹脂を含むことがより好ましい。
ここで、「o-クレゾールノボラック樹脂」とは、ノボラック樹脂の原料となるフェノール類若しくはナフトール類の全体に対して、o-クレゾールを、50~100mol%含み、ノボラック樹脂の原料となるアルデヒド類若しくはケトン類の全体に対して、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドの縮合物を、50~100mol%含む樹脂のことを言う。
o-クレゾールを、60~100mol%含むことがより好ましく、70~100mlo%含むことがさらに好ましく、80~100mol%含むことがそれ以上に好ましく、90~100mol%含むことが一層好ましく、96~100mol%含むことが特に好ましい。また、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドの縮合物を、60~100mol%含むことがより好ましく、70~100mol%含むことがさらに好ましく、80~100mol%含むことがそれ以上に好ましく、90~100mol%含むことが一層好ましく、96~100mol%含むことが特に好ましい。
o-クレゾールが100mol%未満の場合、残りの成分としては、特に限定はないが、前記した「フェノール類若しくはナフトール類」等が挙げられる。
ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドの縮合物が100mol%未満の場合、残りの成分としては、特に限定はないが、前記した「アルデヒド類若しくはケトン類」等が挙げられる。
【0064】
上記o-クレゾールノボラック樹脂の質量平均分子量が16000以上であることによって、耐酸性及び基材との密着力を高めることができ、エッチング加工においてサイドエッチ量が小さくなるという効果が得られ易い。一方、質量平均分子量が75000以下であれば、感度が向上すると共に、基材との密着力が極めて高くなり、エッチング加工においてサイドエッチ量が小さくなるという効果が得られ易い。
より好ましい質量平均分子量は、22000~51000であり、さらに好ましい質量平均分子量は26000~43000である。ここで、質量平均分子量は、高速液体クロマトグラフによるポリスチレン換算の質量平均分子量を言う。
【0065】
上記した「質量平均分子量(Mw)16000~75000のo-クレゾールノボラック樹脂」の、「(c)ポジ型感光性レジスト層に含有されるノボラック樹脂」全体に対する含有率は、60~100質量%が好ましく、70~100質量%がより好ましく、80~100質量%がさらに好ましく、90~100質量%が特に好ましい。
上記範囲内にすることによって、前記した効果が特に得られる。
【0066】
上記含有率が100質量%でない場合には、その他のノボラック樹脂としては、前記したようなノボラック樹脂、前記した原料から得られるノボラック樹脂、質量平均分子量(Mw)が16000~75000の範囲に入っていないo-クレゾールノボラック樹脂等が挙げられる。
【0067】
(c)ポジ型感光性レジスト層に含有されるキノンジアジドスルホン酸エステルとしては、具体的には、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノンのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、2,3,4、4’-テトラヒドロキシベンゾフェノンのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル等が挙げられる。また、例えば、フェノール樹脂のキノンジアジドスルホン酸エステル、クミルフェノールのキノンジアジドスルホン酸エステル、ピロガロール・アセトン樹脂のキノンジアジドスルホン酸エステル等を挙げることができる。
本発明では、上記キノンジアジドスルホン酸エステルが、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルを含むことが好ましい。
【0068】
本発明において、キノンジアジドスルホン酸エステルの配合量は、ノボラック樹脂100質量部に対し、10~50質量部であることが好ましく、15~40質量部であることがより好ましい。この配合量とすることによって、耐酸性や基材との密着力が著しく優れ、金属や金属酸化膜等の種々の素材のエッチング加工に好適である。
【0069】
本発明における(c)ポジ型感光性レジスト層においては、前記した「質量平均分子量(Mw)16000~75000のo-クレゾールノボラック樹脂を含むノボラック樹脂」を含み、且つ、上記キノンジアジドスルホン酸エステルがナフトキノンジアジドスルホン酸エステルを含むことが特に好ましい。
【0070】
本発明おいて、(c)ポジ型感光性レジスト層が、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテルを含有することが好ましい。ポリプロピレングリコールグリセリルエーテルは一般式(i)で表される化合物であり、m+n+o=3~50であることが好ましい。
該ポリプロピレングリコールグリセリルエーテルの平均分子量は、300~3500が好ましく、500~1500がより好ましい。平均分子量が300より小さいと、非露光部が現像液に溶出する場合があり、平均分子量が3500より大きいと、露光部が現像液に溶出し難くなる傾向がある。
ポリプロピレングリコールグリセリルエーテルを含有することによって、感度、アルカリ現像性、レジスト形状等の感光特性や現像特性を損なうことなく、(c)ポジ型感光性レジスト層を軟化することができ、また、(c)ポジ型感光性レジスト層と基材との間に気泡が入ることなく、基材に良好に貼り付けることができ、有用である。
一般式(i)におけるmとnとoは、何れも一般式(i)における繰り返し単位数であり、何れも0又は自然数である。
【0071】
【化1】
【0072】
ポリプロピレングリコールグリセリルエーテルの含有率は、ノボラック樹脂、キノンジアジドスルホン酸エステル及びポリプロピレングリコールグリセリルエーテルの総量に対して、1~30質量%であることが好ましく、3~20質量%がより好ましい。ポリプロピレングリコールグリセリルエーテルの含有率が1質量%未満では、(c)ポジ型感光性レジスト層の軟化が不十分となり、基材へのラミネートが困難になる場合があり、30質量%より多くなると、未露光部のレジストパターンであっても現像液で膨潤して基材から脱離してしまう場合がある。
【0073】
(c)ポジ型感光性レジスト層には、ノボラック樹脂、キノンジアジドスルホン酸エステル及びポリプロピレングリコールグリセリルエーテル以外にも、必要に応じて他の成分を含有させてもよい。例えば、カルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド等の樹脂を含有してもよい。これらの樹脂等の「他の成分」の配合によって、可とう性、耐エッチング液性、現像性、密着力が向上する場合がある。
また、溶剤、着色剤(染料、顔料)、光発色剤、光減色剤、熱発色防止剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、熱硬化剤、撥水剤、撥油剤等の添加剤を含有してもよい。
【0074】
上記した「他の成分」や「添加剤」は、(c)ポジ型感光性レジスト層の全不揮発分量に対して、各々0.01~20質量%程度含有することができる。これらの成分は1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0075】
(c)ポジ型感光性レジスト層の厚さは、1~20μmが好ましく、2~10μmがより好ましく、3~8μmがさらに好ましく、4~6μmが特に好ましい。1μm未満であると、基材に熱圧着する際に気泡が入り易くなる場合がある。また、皮膜形成した際に厚さむらやピンホールの問題が発生し易くなる。一方、20μmより厚いと、露光時に光が(c)ポジ型感光性レジスト層の底部まで届かず、レジストパターンのボトムが太くなり、細線が形成できない場合がある。
正確な細線を形成するためには、(c)ポジ型感光性レジスト層の厚さは8μm以下であることが好ましい。本発明において、細線とは幅50μm以下のラインを言う。なお、(c)ポジ型感光性レジスト層の厚さは8μm以下である場合、幅5μm以下のラインも形成することができる。また、ポジ型ドライフィルムレジストをカット又はスリットする際に端部から切り屑が発生することを抑制でき、さらに、ポジ型ドライフィルムレジストが折れ曲がった際に、(c)ポジ型感光性レジスト層に割れや剥がれが発生し難くなる。(c)ポジ型感光性レジスト層の厚さは、乾燥後の厚さである。
【0076】
(a)支持体フィルム上に(b)剥離層を形成する方法、及び、(b)剥離層上に(c)ポジ型感光性レジスト層を設ける方法としては、ロールコータ、コンマコータ(登録商標)、グラビアコータ、エアーナイフ、ダイコータ、バーコータ等を用いた塗工方法が挙げられる。
【0077】
<(d)保護フィルム>
本発明のポジ型ドライフィルムレジストは、必要に応じて(d)保護フィルムで(c)ポジ型感光性レジスト層を被覆してもよい。保護フィルムは、ポジ型ドライフィルムレジストを巻回した際等に、(c)ポジ型感光性レジスト層の(a)支持体フィルムへのブロッキングを防止するために設けられるもので、(a)支持体フィルム及び(b)剥離層とは反対側の(c)ポジ型感光性レジスト層上に設けられる。(d)保護フィルムとしては、フィッシュアイの小さいものが好まれる。例えば、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられる。
【0078】
(d)保護フィルムとしては、自己粘着性樹脂フィルムを使用することが好ましい。
該自己粘着性樹脂フィルムは、基材層と粘着層とが共押出しで形成されるフィルムである。このような自己粘着性樹脂フィルムは、アウトガス成分による製品の汚染や糊残りや成分移行等の懸念が少なく好適である。また、加熱することなく、(d)保護フィルムによって、(c)ポジ型感光性レジスト層を被覆することができる。
【0079】
自己粘着性樹脂フィルムは、少なくとも基材層と粘着層とからなり、該基材層は自己粘着性を有さず、材質としては、前記したもの等が挙げられる。
また、該粘着層としては、PMMA(ポリメタクリレート)板と23℃で張り合わせることが可能で、その際の粘着力が0.01N/50mm幅以上、0.30N/50mm幅以下のものを用いることが好ましい。該粘着層の例としては、エチレン酢酸ビニル共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリアミド;合成ゴム;ポリアクレート;ポリウレタン;等が挙げられる。
粘着層の材料は、分子量の調整や可塑剤を添加することで、自己粘着性の特性を有するように設計される。市中から入手可能なものとしては、例えば、トレテック(登録商標、東レフィルム加工株式会社製)、FSA(登録商標、フタムラ化学株式会社製)、サニテクト(登録商標、株式会社サンエー化研製)等が挙げられる。
【0080】
自己粘着性樹脂フィルムの厚みは、5~100μmが好ましい。自己粘着性樹脂フィルムの厚みが5μmより薄いと、ハンドリング性が難しい場合があり、100μmより厚いと、コスト高、ロール状体における嵩高、質量増になる場合がある。
【0081】
<エッチング方法>
次に、本発明のポジ型ドライフィルムレジストを用いたエッチング方法について詳説する。まず、本発明のポジ型ドライフィルムレジストを基材の少なくとも片面に、(c)ポジ型感光性レジスト層が基材に接触するようにして、ラミネート法によって貼り付けるが、ラミネート法によって熱圧着して貼り付けることが好ましい。
本発明のポジ型ドライフィルムレジストが(d)保護フィルムを有するものである場合は、(d)保護フィルムを剥がした後に、基材の少なくとも片面に貼り付ける。
【0082】
本発明に係わる基材とは、エッチング加工を実施する基材であり、製造物によって決定される。プリント配線板、リードフレーム、メタルマスク、シャドウマスク、半導体パッケージ、電極部材、電磁波シールド等の製造においては、金属を含有する基材が選択される。
例えば、銅、銅系合金(チタン銅合金、銅ニッケル合金等)、ニッケル、クロム、鉄、タングステン、ステンレス、42アロイ等の鉄系合金、アルミニウム、アモルファス合金等の「金属を含有する基材」が使用できる。また、ITO、FTO等の金属酸化膜が使用できる。さらに、プリント配線板製造等に使用される、銅張積層板、(無)電解めっき済基板、フレキシブル銅張積層板、フレキシブルステンレス板、積層体等が使用できる。
【0083】
基材の少なくとも片面に、本発明のポジ型ドライフィルムレジストを貼り付ける方法は、ラミネート法が使用される。一般的な、プリント基板用熱ラミネーター、また、真空ラミネーターが使用できる。ニップ圧力、搬送速度、ロール温度は、使用する基材によって異なるが、気泡やムラ無く、熱圧着によって貼り付けることができれば、いずれの条件であってもよい。
【0084】
ポジ型ドライフィルムレジストを基材に貼り付けた後、(a)支持体フィルム及び(b)剥離層を(c)ポジ型感光性レジスト層上から除去する。この場合、(a)支持体フィルム及び(b)剥離層を同時に除去することが好ましい。本発明によれば、このように、(a)支持体フィルム及び(b)剥離層を、同時に剥離等で除去することができる。
ただし、(a)支持体フィルムのみを除去する態様を排除する訳ではなく、その場合でも、残存する(b)剥離層は、その後に現像してレジストパターンを形成する際に、現像液によって同時に除去することができる。
【0085】
次に、所望のパターンを露光する。露光には紫外線を使用することが好ましい。露光方法は、レーザー直接描画、フォトマスクを介した密着露光、投影露光等によって行われる。露光の光源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、レーザー、LED等を用いることができる。
【0086】
次に、現像を実施する。現像によって、(c)ポジ型感光性レジスト層の露光部を除去する。現像に使用する現像液としては、アルカリ水溶液が有用に使用される。現像液に使用される塩基性化合物としては、例えば、ケイ酸アルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物、リン酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム塩等の無機塩基性化合物;エタノールアミン、エチレンジアミン、プロパンジアミン、トリエチレンテトラミン、モルホリン、水酸化テトラメチルアンモニウム等の有機塩基性化合物;等を挙げることができる。
【0087】
露光部の(c)ポジ型感光性レジスト層に対する現像性を調整するために、現像液の濃度、温度、スプレー圧等を調整する必要がある。現像液の温度が高いほど、現像速度が速くなり、40℃以上の温度が好ましい。現像液における塩基性化合物の濃度としては、水酸化カリウムの場合、1~4質量%であることが好ましい。装置としては、ディップ処理装置、シャワースプレー装置等を利用することができる。
【0088】
次に、基材のエッチング処理を実施する。本発明において、使用される基材を溶解除去できるものであれば、どのようなエッチング液、装置、方法であってもよい。
エッチング液としては、例えば、アルカリ性アンモニア、硫酸-過酸化水素、塩化第二銅、過硫酸塩、塩化第二鉄、王水等が挙げられる。また、装置や方法としては、例えば、水平スプレーエッチング、浸漬エッチング等の装置や方法を使用できる。これらの詳細は、「プリント回路技術便覧」(社団法人日本プリント回路工業会編、1987年刊行、日刊工業新聞社発行)に記載されている。
【0089】
次に、剥離液によってレジスト剥離を実施するが、その前に、レジストパターンに紫外線を照射する露光をしてもよい。露光をすることによって、(c)ポジ型感光性レジスト層は、剥離液によって除去し易くなる。
該剥離液としては、アルカリ水溶液が有用に使用される。剥離液に使用される塩基性化合物としては、例えば、ケイ酸アルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物、リン酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム塩等の無機塩基性化合物;エタノールアミン、エチレンジアミン、プロパンジアミン、トリエチレンテトラミン、モルホリン、水酸化テトラメチルアンモニウム等の有機塩基性化合物;等を挙げることができる。
【0090】
レジスト剥離工程において、剥離液の濃度、温度、スプレー圧、超音波条件等を調整する必要がある。該剥離液の温度が高いほど、(c)ポジ型感光性レジスト層が溶解する速度が速くなり、40℃以上の温度が好ましい。剥離液における塩基性化合物の濃度としては、溶解性に適した濃度がよく、塩基性化合物が水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの場合、1~4質量%であることが好ましい。装置としては、ディップ処理装置、超音波装置、シャワースプレー装置等を利用することができる。
【実施例
【0091】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0092】
[実施例1-1~1-8]
ポリビニルアルコール(商品名:クラレポバール44-88、株式会社クラレ製、けん化度87.0~89.0mol%)5質量部に対して95質量部の水を加え、温水で撹拌することによって溶解させ、5質量%のポリビニルアルコール水溶液(剥離層用塗液)を得た。
次に、ワイヤーバーを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム((a)支持体フィルム、商品名:ダイアホイル(登録商標)T100、25μm厚、三菱ケミカル株式会社製)上に塗工し、90℃で10分間乾燥し、水分を除去し、PETフィルム上にポリビニルアルコールを含む(b)剥離層を厚さ3μmで設け、(a)支持体フィルムと(b)剥離層の積層フィルムを得た。
【0093】
次に、o-クレゾールノボラック樹脂(質量平均分子量44000)100質量部、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル24質量部、及び、「成分G」14質量部を、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート300質量部に溶解した溶液を、メンブレンフィルター(孔径1μm)にてろ過して、実施例1-1~1-7のポジ型感光性レジスト層用塗液を得た。
【0094】
「成分G」
(実施例1-1)ユニオール(登録商標)TG-330(ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、平均分子量330、日油株式会社製)
(実施例1-2)ユニオールTG-1000R(ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、平均分子量1000、日油株式会社製)
(実施例1-3)ユニオールTG-3000(ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、平均分子量3000、日油株式会社製)
(実施例1-4)ユニオールD-1000(ポリプロピレングリコール、平均分子量1000、日油株式会社製)
(実施例1-5)ユニオールD-4000(ポリプロピレングリコール、平均分子量4000、日油株式会社製)
(実施例1-6)ユニオックス(登録商標)M-1000(ポリエチレングリコール、平均分子量1000、日油株式会社製)
(実施例1-7)PEG#600(ポリエチレングリコール、平均分子量600、日油株式会社製)
【0095】
また、「成分G」を含有せずに、o-クレゾールノボラック樹脂(質量平均分子量44000)100質量部、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル24質量部を、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート300質量部に溶解した後、この溶液をメンブレンフィルター(孔径1μm)にてろ過して、実施例1-8のポジ型感光性レジスト層用塗液を得た。
【0096】
次に、上記で用意した積層フィルムの(b)剥離層面に、上記各ポジ型感光性レジスト層用塗液を、ワイヤーバーで塗工して、90℃で10分間乾燥し、溶剤を除去し、実施例1-1~1-8の3層の構造((a)支持体フィルム/(b)剥離層/(c)ポジ型感光性レジスト層)からなるポジ型ドライフィルムレジストを作製した。(c)ポジ型感光性レジスト層の厚さは7μmであった。
【0097】
次に、研磨、脱脂した銅張積層板(基材)の銅層表面に、上記実施例1-1~1-8のポジ型ドライフィルムレジストの(c)ポジ型感光性レジスト層が銅層表面に接触するように貼り付けた。その際、一般的なプリント基板用ラミネーターを用いた。ラミネート条件は、ロール温度100℃、搬送速度0.5m/min、圧力0.2MPaにて実施した。
その際、実施例1-1~1-7は、銅層表面に、(c)ポジ型感光性レジスト層を貼り付けることができた。実施例1-8では、銅層表面にしっかりと貼り付かず、(c)ポジ型感光性レジスト層と基材の間に気泡が入ったが、ロール温度120℃においては、貼り付けることができた。しかしながら、(a)支持体フィルムの端部に皺が発生した。
【0098】
次に、銅張積層板から(a)支持体フィルムと(b)剥離層とを、(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層との界面から剥がした。
実施例1-1~1-8に関して、(a)支持体フィルムと(b)剥離層とを、(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層との界面から剥がすことができた。
【0099】
次に、超高圧水銀灯紫外線照射装置を用い、30μm及び60μmのライン&スペースを有するテストチャートマスクを、(c)ポジ型感光性レジスト上に被せ、吸引密着させて露光した。次に、30℃の現像液(1質量%の水酸化カリウム水溶液)に80秒間浸漬させ、(c)ポジ型感光性レジスト層の露光部を除去して、現像を行った。その後、水洗を行い、乾かした。形成したレジストパターンを顕微鏡で観察を行った。
【0100】
観察した結果、実施例1-1~1-3のいずれにおいても、30μmのライン&スペースが形成できており、また露光部に(c)ポジ型感光性レジスト層の残りが無く、良好なレジストパターンが形成されていた。
実施例1-4、1-6、1-7、1-8では、60μmのライン&スペースのレジストパターンは形成できたが、30μmのラインは残存しなかった。また、実施例1-5では、露光部に(c)ポジ型感光性レジスト層が残ったが、現像液の温度を50℃と高くすることによって、残存した(c)ポジ型感光性レジスト層が除去できた。60μmのライン&スペースのレジストパターンは形成できたが、30μmのラインは残存しなかった。
【0101】
次に、60℃の塩化第二鉄溶液を用意し、0.2MPaの圧力でスプレー処理を約5分間実施し、銅層のエッチングを行った。その後、速やかに水洗-乾燥を実施した。次に、300mJ/cmの紫外線を全面に照射し、続いて、40℃の剥離液(1質量%の水酸化カリウム水溶液)に3分間浸漬して、レジスト剥離を実施した。
実施例1-1~1-3の銅層の30μm及び60μmのラインパターンを観察したところ、サイドエッチングの少ない良好なエッチングができていることが確認できた。また、実施例1-4~1-8において、銅層の60μmのラインパターンを観察したところ、同様にサイドエッチングの少ないエッチングができていることを確認した。
【0102】
以上の結果から明らかなように、本発明のポジ型ドライフィルムレジストによれば、良好なレジストパターン形成と良好なエッチングができることが判った。さらに、(c)ポジ型感光性レジスト層が、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテルを含有するポジ型ドライフィルムレジストによれば、特に、ポジ型感光性レジスト層と基材との間に気泡が入らず、また微細なレジストパターンが形成可能であることが判った。
【0103】
[実施例2-1~2-7]
表1に示すポリビニルアルコールを準備し、ポリビニルアルコール5質量部に対して80質量部の水を加え、温水で撹拌することによって溶解させ、ポリビニルアルコール水溶液を得た。次に、15質量部のエタノールを加えて、固形分5質量%の剥離層用塗液を作製した。
【0104】
ワイヤーバーを用いてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム((a)支持体フィルム、商品名:ダイアホイル(登録商標)T100、25μm厚、三菱ケミカル株式会社製)の片面に、実施例2-1~2-7の剥離層用塗液を塗工し、90℃で10分間乾燥し、水分を除去し、PETフィルム上に(b)剥離層(厚さ8μm)を設けた。
【0105】
【表1】
【0106】
次に、100質量部のo-クレゾールノボラック樹脂(質量平均分子量44,000)と、30質量部の2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルを、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート300質量部に溶解した後、この溶液をメンブレンフィルター(孔径1μm)にてろ過して、ポジ型感光性レジスト層用塗液を得た。
【0107】
次に、(b)剥離層を設けた(a)支持体フィルムの(b)剥離層面に、上記ポジ型感光性レジスト層用塗液を、ワイヤーバーで塗工して、80℃で10分間乾燥し、溶剤を除去し、3層の構造((a)支持体フィルム/(b)剥離層/(c)ポジ型感光性レジスト層)からなるポジ型ドライフィルムレジストを作製した。
【0108】
(カット試験)
作製したポジ型ドライフィルムレジストを、10cm×10cmの大きさに、カッターマット上でカッターを用いてカットした。カットした切り口を顕微鏡で観察した結果、実施例2-1~2-7の何れにおいても、(c)ポジ型感光性レジスト層には割れが発生していなかった。
【0109】
次に、研磨及び脱脂した銅張積層板の銅層表面に、上記実施例2-1~2-7のポジ型ドライフィルムレジストの(c)ポジ型感光性レジスト層が銅層表面に接触するように熱圧着により貼り付けた。その際、一般的なプリント基板用ラミネーターを用いた。ラミネート条件は、ロール温度110℃、搬送速度0.5m/min、圧力0.2MPaにて実施した。
【0110】
(剥離試験)
次に、ポジ型ドライフィルムレジストを貼り付けた銅張積層板から(a)支持体フィルムを剥がした。実施例2-1~2-5に関しては、(a)支持体フィルムと(b)剥離層を、(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層との界面から剥がすことができた。
一方、実施例2-6~2-7に関しては、(a)支持体フィルムを剥がすと、(a)支持体フィルムと(b)剥離層との界面から剥がれ、(b)剥離層が(c)ポジ型感光性レジスト層上に残った。
【0111】
(レジストパターン再現性)
次に、超高圧水銀灯紫外線照射装置を用い、50μmのラインとスペースを有するテストチャートマスクを、実施例2-1~2-5では(c)ポジ型感光性レジスト上に、実施例2-6~2-7では(b)剥離層上に被せ、吸引密着させて露光した。
次に、1質量%の水酸化カリウム水溶液(現像液)に、40℃にて、80秒間浸漬させ、(c)ポジ型感光性レジスト層の露光部を除去して、現像を行った。なお、実施例2-6~2-7では、(b)剥離層も上記現像時に除去できたため、(b)剥離層も同時に除去した。
【0112】
その後、水洗を行い、乾かした。テストチャートマスクと同等のラインとスペースが再現できているかどうかを確認したところ、実施例2-1~2-5では、再現性は良好であり、画線上に欠陥が存在しなかった。実施例2-6~2-7では、露光時のガス発生が原因と考えられる、画線のエッジ部分の上側における円形の欠け欠陥が多発していたが、それ以外は良好であった。
【0113】
(エッチングパターン再現性)
次に、60℃の塩化第二鉄溶液を用意し、0.2MPaの圧力でスプレー処理を約5分間実施し、銅のエッチングを行った。その後、速やかに水洗-乾燥を実施した。次に、300mJ/cmの紫外線を全面に照射した後、40℃の1質量%水酸化カリウム水溶液(剥離液)に3分間浸漬して、レジスト剥離を実施した。
銅層の50μmのラインパターンを観察したところ、実施例2-1~2-5についてはパターンの欠けも無く、再現性は良好であった。一方、実施例2-6~2-7については、ラインパターンの線幅にばらつきが見られた。
【0114】
以上の結果から明らかなように、本発明のポジ型ドライフィルムレジストによれば、良好なレジストパターン形成と良好なエッチングができることが判った。特に、ポリビニルアルコールが、けん化度82mol%以上のポリビニルアルコールを含むポジ型ドライフィルムレジストによれば、ポジ型ドライフィルムレジストを基材に熱圧着した後に、(a)支持体フィルム及び(b)剥離層を、(c)ポジ型感光性レジスト層と(b)剥離層の界面から容易に剥がすことができ、また、割れが発生し難いことが判った。
【0115】
[実施例3-1~3-14]
製造例:o-クレゾールノボラック樹脂の製造
撹拌機及び還流冷却器を備えた2リットル四つ口フラスコに、o-クレゾール756質量部、37質量%ホルマリン369質量部、及び、反応触媒としてp-トルエンスルホン酸1水和物7.52質量部を仕込み、これらを撹拌混合しつつ還流温度まで昇温し、還流下に12時間反応を続けた。
【0116】
次に脱液を開始し、230℃まで昇温して濃縮を行い、さらに2kPaの減圧度で240℃まで昇温して濃縮を行った。留分を留去し、軟化点150℃の固形のo-クレゾールノボラック樹脂600gを得た。得られたo-クレゾールノボラック樹脂の質量平均分子量は12000であった。
【0117】
一方、37質量%ホルマリンの量を変更する以外は、同様にして、o-クレゾールノボラック樹脂を製造した。37質量%ホルマリンの量を、397質量部、510質量部、624質量部、681質量部、695質量部、709質量部と変化させて合成を行い、それぞれ得られたo-クレゾールノボラック樹脂の質量平均分子量を測定した結果、18000、25000、44000、58000、71000、80000であった。
【0118】
次に、ポリビニルアルコール(商品名:クラレポバール44-88、株式会社クラレ製、けん化度87.0~89.0mol%)5質量部に対して95質量部の水を加え、温水で撹拌することによって溶解させ、5質量%のポリビニルアルコール水溶液(剥離層用塗液)を得た。次に、ワイヤーバーを用いてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム((a)支持体フィルム、商品名:ダイアホイル(登録商標)T100、25μm厚、三菱ケミカル株式会社製)上に塗工し、90℃で10分間乾燥し、水分を除去し、PETフィルム上にポリビニルアルコールを含む(b)剥離層を3μmの厚さで設け、(a)支持体フィルムと(b)剥離層の積層フィルムを得た(積層フィルム1)。
【0119】
また、上記、5質量%のポリビニルアルコール水溶液100質量部に対して、ポリエチレングリコール♯600を0.7質量部加えた剥離層用塗液を作製した。次に、ワイヤーバーを用いてPETフィルム((a)支持体フィルム、商品名:ダイアホイル(登録商標)T100、25μm厚、三菱ケミカル株式会社製)上に塗工し、90℃で10分間乾燥し、水分を除去し、PETフィルム上にポリビニルアルコールとポリエチレングリコールを含む(b)剥離層を3μmの厚さで設け、(a)支持体フィルムと(b)剥離層の積層フィルムを得た(積層フィルム2)。
【0120】
次に、上記の各質量平均分子量のo-クレゾールノボラック樹脂100質量部及び2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル30質量部を、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート300質量部に溶解した後、この溶液をメンブレンフィルター(孔径1μm)にてろ過して、各ポジ型感光性レジスト層用塗液を得た。
【0121】
次に、上記で用意した積層フィルム1及び積層フィルム2の(b)剥離層面に、上記各ポジ型感光性レジスト層用塗液を、ワイヤーバーで塗工して、90℃で10分間乾燥し、溶剤を除去し、3層の構造((a)支持体フィルム/(b)剥離層/(c)ポジ型感光性レジスト層)からなるポジ型ドライフィルムレジストを作製した。各実施例のポジ型ドライフィルムレジストにおける、積層フィルム及びo-クレゾールノボラック樹脂の関係を表2に記載した。
【0122】
【表2】
【0123】
次に、作製したポジ型ドライフィルムレジストをカッターにて、10cm×10cmの大きさに、カッターマット上でカットした。カットした切り口を顕微鏡で観察した結果、実施例3-1~3-10に関しては割れが発生していなかったが、実施例3-11~3-14に関しては、端部から500μmの範囲内で、(c)ポジ型感光性レジスト層に割れが発生していた。
【0124】
次に、研磨、脱脂した銅張積層板の銅層表面に、上記実施例3-1~3-14のポジ型ドライフィルムレジストの(c)ポジ型感光性レジスト層が銅層表面に接触するように貼り付けた。その際、一般的なプリント基板用ラミネーターを用いた。ラミネート条件はロール温度110℃、搬送速度0.5m/min、圧力0.2MPaにて実施した。次に、銅張積層板から(a)支持体フィルムと(b)剥離層を、(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層との界面から剥がした。何れも良好に剥がすことができた。
【0125】
次に、超高圧水銀灯紫外線照射装置を用い、50μmのラインとスペースを有するテストチャートマスクを(c)ポジ型感光性レジスト層の上に被せ、吸引密着させて露光した。
次に、現像液(1質量%の水酸化カリウム水溶液)を、30℃にて、80秒間浸漬させ、(c)ポジ型感光性レジスト層の露光部を除去して、現像を行った。その後、水洗を行い、乾かした。
【0126】
テストチャートマスクと同等のラインとスペースが再現できているかどうか(レジストパターン再現性)を確認したところ、実施例3-1~3-14のいずれにおいても、再現性が良好であった。
【0127】
次に、60℃の塩化第二鉄溶液を用意し、0.2MPaの圧力でスプレー処理を約5分間実施し、銅層のエッチングを行った。その後、速やかに水洗-乾燥を実施した。次に、300mJ/cmの紫外線を全面に照射し、次に、40℃のアルカリ剥離液(1質量%水酸化カリウム水溶液)に3分間浸漬して、レジスト剥離を実施した。銅層の50μmのラインパターンを観察し、エッチング後のライン巾を測定した。
【0128】
表3は、エッチング後のパターンのライン巾を4点測定した結果である。実施例3-1~3-10は、ライン巾が45~48μmの範囲内であり、サイドエッチングの少ない良好なエッチングができていることが確認できた。実施例3-11~3-14は、ライン巾が41~47μmであり、線幅のばらつきが大きく、サイドエッチングが大きかった。
【0129】
【表3】
【0130】
以上の結果から明らかなように、本発明のポジ型ドライフィルムレジストによれば、良好なレジストパターン形成ができることが判った。特に、ノボラック樹脂が質量平均分子量(Mw)16000~75000のo-クレゾールノボラック樹脂を含み、キノンジアジドスルホン酸エステルがナフトキノンジアジドスルホン酸エステルを含むポジ型ドライフィルムレジストでは、カットする際に端部から切り屑が発生し難く、また、エッチングした際に線幅のばらつきが少ない良好なエッチングが可能であることが判った。
【0131】
[実施例4-1~4-12]
ポリビニルアルコール(商品名:クラレポバール44-88、けん化度87.0~89.0mol%)を準備し、5質量部に対して95質量部の水を加え、温水で撹拌することによって溶解させポリビニルアルコール水溶液(剥離層用塗液)を得た。
【0132】
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム((a)支持体フィルム、商品名:ダイアホイル(登録商標)T100、25μm厚、三菱ケミカル株式会社製)の片面に、実施例4-8以外について、コロナ放電処理を施した(実施例4-1~4-12)。コロナ放電量は、15W・min/mであった。
次に、(a)支持体フィルムのコロナ放電処理面に、ワイヤーバーを用いて、上記ポリビニルアルコール水溶液を塗工し、90℃で10分間乾燥し、水分を除去し、(a)支持体フィルム上に(b)剥離層を設けた。(b)剥離層の膜厚を表4に示した。
【0133】
【表4】
【0134】
(b)剥離層を顕微鏡にて観察した結果、実施例4-9の(b)剥離層の一部にピンホール欠陥が発生していた。また、実施例4-10の(b)剥離層の一部に気泡が入っていた。
【0135】
次に、100質量部のo-クレゾールノボラック樹脂(質量平均分子量44,000)と30質量部の2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルを、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート300質量部に溶解した後、この溶液をメンブレンフィルター(孔径1μm)にてろ過して、ポジ型感光性レジスト層用塗液を得た。
【0136】
次に、(b)剥離層を設けた(a)支持体フィルムの(b)剥離層面に、上記ポジ型感光性レジスト層用塗液を、ワイヤーバーで塗工して、80℃で10分間乾燥し、溶剤を除去し、3層の構造((a)支持体フィルム/(b)剥離層/(c)ポジ型感光性レジスト層)からなるポジ型ドライフィルムレジストを作製した。(c)ポジ型感光性レジスト層の膜厚を表4に示した。
【0137】
(カット試験)
作製したポジ型ドライフィルムレジストを、10cm×10cmの大きさに、カッターマット上でカッターを用いてカットした。カットした切り口を顕微鏡で観察した結果、実施例4-1~4-11のいずれにおいても、(c)ポジ型感光性レジスト層には割れが発生していなかった。実施例4-12においては、(c)ポジ型感光性レジスト層に大きな割れが発生しているものがあり、切り屑が発生し、コンタミ等の問題となる可能性があった。
【0138】
次に、研磨及び脱脂した銅張積層板の銅層表面に、上記実施例4-1~4-12のポジ型ドライフィルムレジストの(c)ポジ型感光性レジスト層が銅層表面に接触するように、ラミネート法によって熱圧着して貼り付けた。その際、一般的なプリント基板用ラミネーターを用いた。ラミネート条件はロール温度110℃、搬送速度0.5m/min、圧力0.2MPaにて実施した。
【0139】
次に、ポジ型ドライフィルムレジストを貼り付けた銅張積層板から(a)支持体フィルム及び(b)剥離層を剥がした。実施例4-1~4-7においては、(a)支持体フィルムと(b)剥離層を、(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層との界面から同時に剥がすことができた。
一方、実施例4-8においては、(a)支持体フィルムを剥がすと、(a)支持体フィルムと(b)剥離層との界面から剥がれ、(b)剥離層が(c)ポジ型感光性レジスト層上に残った。また、実施例4-9及び4-10においては、ピンホールや気泡が入った(b)剥離層上の(c)ポジ型感光性レジスト層に、ピンホール欠陥が発生した。また、実施例4-11においては、(c)ポジ型感光性レジストが銅張積層板に充分に圧着しておらず、銅張積層板からポジ型ドライフィルムレジストが一部剥離した。
【0140】
(レジストパターン再現性)
次に、超高圧水銀灯紫外線照射装置を用い、50μmのラインとスペースを有するテストチャートマスクを、実施例4-1~4-7、4-9及び4-10では(c)ポジ型感光性レジスト層上に、実施例4-8では(b)剥離層上に被せ、吸引密着させて露光した。
次に、1質量%の水酸化カリウム水溶液(現像液)に40℃にて、80秒間浸漬させ、(c)ポジ型感光性レジスト層の露光部を除去して、現像を行い、レジストパターンを形成した。なお、実施例4-8では、現像時に(b)剥離層も同時に除去した。その後、水洗を行い、乾かした。
【0141】
テストチャートマスクと同等のラインとスペースが再現できているかどうかを確認したところ、実施例4-1~4-7では、再現性は良好であり、画線上に欠陥が存在しなかった。実施例4-8では、露光時のガス発生が原因と考えられる、画線のエッジ部分の上側における円形の欠け欠陥が発生しているものがあった。また、実施例4-9及び4-10では、(c)ポジ型感光性レジスト層にピンホール欠陥が発生しているものがあった。
【0142】
(エッチングパターン再現性)
次に、60℃の塩化第二鉄溶液を用意し、0.2MPaの圧力でスプレー処理を約5分間実施し、銅のエッチングを行った。その後、速やかに水洗と乾燥を実施した。次に、300mJ/cmの紫外線を全面に照射した後、40℃の1質量%水酸化カリウム水溶液(剥離液)に3分間浸漬して、レジスト剥離を実施した。
銅層の50μmのラインパターンを観察したところ、実施例4-1~4-7についてはパターンの欠けも無く、再現性は良好であった。
【0143】
以上の結果から明らかなように、本発明のポジ型ドライフィルムレジストによれば、いずれもレジストパターン形成とエッチングができることが判った。
特に、(a)支持体フィルムの(b)剥離層側にコロナ放電処理が施されており、且つ(b)剥離層の厚さが1~4μmであり、(c)ポジ型感光性レジスト層の厚さが3~8μmであるポジ型ドライフィルムレジストでは、基材に熱圧着した後に支持体フィルム及び剥離層を、ポジ型感光性レジスト層と剥離層の界面から、より容易に同時に剥がすことができた。また、ポジ型ドライフィルムレジストをカット又はスリットする際に、端部から切り屑が特に発生しにくかった。さらに、ピンホール欠陥が特に発生しにくかった。
【0144】
[実施例5-1~5-6]
ポリビニルアルコール(商品名:クラレポバール44-88、株式会社クラレ製、けん化度87.0~89.0mol%)5質量部に対して95質量部の水を加え、温水で撹拌することによって溶解させ、5質量%のポリビニルアルコール水溶液(剥離層用塗液)を得た。
次に、ワイヤーバーを用いてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム((a)支持体フィルム、商品名:ダイアホイル(登録商標)T100、25μm厚、三菱ケミカル株式会社製)上に塗工し、90℃で10分間乾燥し、水分を除去し、PETフィルム上にポリビニルアルコールを含む(b)剥離層を3μmの厚さで設け、(a)支持体フィルムと(b)剥離層の積層フィルムを得た。
【0145】
次に、o-クレゾールノボラック樹脂(質量平均分子量44000)を100質量部、及び、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル30質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート300質量部に溶解した後、この溶液をメンブレンフィルター(孔径1μm)にてろ過して、(c)ポジ型感光性レジスト層用塗液を得た。
【0146】
次に、上記で用意した積層フィルムの(b)剥離層面に、上記(c)ポジ型感光性レジスト層用の塗液を、ワイヤーバーで塗工して、90℃で10分間乾燥し、溶剤を除去した。形成した(c)ポジ型感光性レジスト層面に、(d)保護フィルムを形成するために、下記の(d)保護フィルムを準備した。
【0147】
「(d)保護フィルム」
(実施例5-1)トレテック(登録商標)7332(自己粘着性樹脂フィルム、東レフィルム加工株式会社製)
(実施例5-2)トレテック7832C(自己粘着性樹脂フィルム、東レフィルム加工株式会社製)
(実施例5-3)トレテック7H52(自己粘着性樹脂フィルム、東レフィルム加工株式会社製)
(実施例5-4)FSA(登録商標)010M(自己粘着性樹脂フィルム、フタムラ化学株式会社製)
(実施例5-5)GF1(登録商標)(ポリエチレンフィルム、タマポリ株式会社製)
(実施例5-6)アルファン(登録商標)FG-201(ポリプロピレンフィルム、王子エフテックス株式会社製)
【0148】
上記(d)保護フィルムを、(c)ポジ型感光性レジスト層面にゴムローラーを用いて、貼り付けた。その際、一般的なプリント基板用ラミネーターを用いた。ラミネート条件は、ロール温度25℃、搬送速度0.5m/min、圧力0.2MPaであった。
【0149】
実施例5-1~5-4の(d)保護フィルムは、気泡や皺の混入が無く、綺麗に貼り付けることができた。一方、実施例5-5及び5-6については、室温で貼り付けることができなかった。そのため、ラミネート温度を80℃まで上げることによって貼り付けることができたが、熱収縮により、(d)保護フィルムに皺が発生し、綺麗に貼り付けることができなかった。
【0150】
実施例5-1~5-4の(d)保護フィルムを貼り付けたポジ型ドライフィルムレジストを、10枚重ねて室温で3ヶ月間保管したが、ブロッキングが発生していなかった。また、(d)保護フィルムを剥がしても、(c)ポジ型感光性レジスト層と(b)剥離層間で剥離することなく、綺麗に(c)保護フィルムを剥がすことができた。また、(d)保護フィルムを剥がしたのちの(c)ポジ型感光性レジスト層の表面を観察したが、糊残りは発生していなかった。
【0151】
また、カッターを用いて、ポジ型ドライフィルムレジストを10cm×10cmにカットした。カット面を観察したところ、実施例5-1~5-4のポジ型ドライフィルムレジストには切り屑が発生していなかった。一方、(d)保護フィルムを貼り付けない状態でカットした場合は、(c)ポジ型感光性レジスト層由来の切り屑が発生しやすかった。
【0152】
次に、研磨、脱脂した銅張積層板の銅層表面に、上記実施例5-1~5-4のポジ型ドライフィルムレジストの(d)保護フィルムを剥離した後、(c)ポジ型感光性レジスト層が銅層表面に接触するように貼り付けた。その際、一般的なプリント基板用ラミネーターを用いた。ラミネート条件はロール温度100℃、搬送速度0.5m/min、圧力0.2MPaであり、銅層表面に貼り付けることができた。
【0153】
次に、銅張積層板から(a)支持体フィルムと(b)剥離層を、(b)剥離層と(c)ポジ型感光性レジスト層との界面から剥がした。実施例5-1~5-6のいずれに関しても、(a)支持体フィルムを(b)剥離層との界面から剥がすことができた。
【0154】
次に、超高圧水銀灯紫外線照射装置を用い、30μmのラインとスペースを有するテストチャートマスクを(b)剥離層の上に被せ、吸引密着させて露光した。
次に、現像液(1質量%の水酸化カリウム水溶液)を30℃にて、80秒間浸漬させ、(b)剥離層を除去すると同時に(c)ポジ型感光性レジスト層の露光部を除去して、現像を行った。その後、水洗を行い、乾かした。形成したレジストパターンを顕微鏡で観察を行った。
【0155】
観察した結果、実施例5-1~5-4のいずれにおいても、30μmのライン&スペースが形成できており、また露光部に(c)ポジ型感光性レジスト層の残りが無く良好であった。
次に、60℃の塩化第二鉄溶液を用意し、0.2MPaの圧力でスプレー処理を約5分間実施し、銅層のエッチングを行った。その後、速やかに水洗-乾燥を実施した。次に、300mJ/cmの紫外線を全面に照射し、次に、40℃のアルカリ剥離液(1質量%水酸化カリウム水溶液)に3分間浸漬して、レジスト剥離を実施した。
銅層の50μmのラインパターンを観察したところ、実施例5-1~5-4のいずれにおいても、サイドエッチングの少ない良好なエッチングができていることが確認できた。
【0156】
以上の結果から明らかなように、本発明のポジ型ドライフィルムレジストが(d)保護フィルムを有し、(d)保護フィルムが自己粘着性樹脂フィルムからなる場合、脆い膜質のポジ型感光性レジスト層であっても、スリットやカットした際に切り屑が発生し難く、さらに、支持体フィルムとポジ型感光性レジスト層の間でブロッキングが発生し難いことが判った。
【0157】
[比較例1]
<(b)剥離層が積層されていないポジ型ドライフィルムレジスト>
o-クレゾールノボラック樹脂(質量平均分子量44000)100質量部、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル24質量部、及び、ユニオールTG-1000R(ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、平均分子量1000、日油株式会社製)14質量部を、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート300質量部に溶解した溶液を、メンブレンフィルター(孔径1μm)にてろ過して(c)ポジ型感光性レジスト層用の塗工液を得た。
【0158】
次に、ワイヤーバーを用いてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム((a)支持体フィルム、商品名:ダイアホイル(登録商標)T100、25μm厚、三菱ケミカル株式会社製)上に、(c)ポジ型感光性レジスト層用の塗工液を塗工し、90℃で10分間乾燥し、溶剤成分を除去し、2層の構造((a)支持体フィルム/((c)ポジ型感光性レジスト層)からなるポジ型ドライフィルムレジストを作製した。(c)ポジ型感光性レジスト層の厚さは7μmであった。
【0159】
次に、研磨、脱脂した銅張積層板(基材)の銅層表面に、上記ポジ型ドライフィルムレジストの(c)ポジ型感光性レジスト層が銅層表面に接触するように貼り付けた。その際、一般的なプリント基板用ラミネーターを用いた。ラミネート条件はロール温度100℃、搬送速度0.5m/min、圧力0.2MPaにて実施した。
【0160】
(a)支持体フィルムを(c)ポジ型感光性レジスト層から剥がすことを試みたが、強固に密着しており、剥がすことができなかった。強引に剥がそうとすると、(c)ポジ型感光性レジスト層の層内で凝集破壊が発生し、次の露光工程に進めなかった。(b)剥離層が積層されていないポジ型ドライフィルムレジストでは、(a)支持体フィルムの剥離性が悪く使用できないことが判った。
【0161】
[比較例2]
<ポリビニルアルコールを含まない(b)剥離層が積層されているポジ型ドライフィルムレジスト>
メチルメタクリレート/n-ブチルアクリレート/メタクリル酸を、質量比63/15/22で共重合させた、カルボキシル基を含有するアクリル共重合体(質量平均分子量100000)40質量部、10質量部のポリエチレングリコール600、及び、プロピレングリコールモノメチルエーテル50質量部を撹拌混合することによって溶解させ、アクリル樹脂層用溶液を得た。
次に、得られたアクリル樹脂層用溶液を、ワイヤーバーを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム((a)支持体フィルム、商品名:ダイアホイル(登録商標)T100、25μm厚、三菱ケミカル株式会社製)上に塗工し、90℃で10分間乾燥し、溶剤成分を除去し、PETフィルム上に、アクリル樹脂からなる(b)剥離層を厚さ3μmで設け、(a)支持体フィルムと(b)剥離層の積層フィルムを得た。
【0162】
次に、o-クレゾールノボラック樹脂(質量平均分子量44000)100質量部、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンのo-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル24質量部、及び、ユニオールTG-1000R(ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、平均分子量1000、日油株式会社製)14質量部を、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート300質量部に溶解した溶液を、メンブレンフィルター(孔径1μm)にてろ過して、(c)ポジ型感光性レジスト層用の塗工液を得た。
【0163】
次に、上記で用意した積層フィルムの(b)剥離層面に、上記各(c)ポジ型感光性レジスト層用の塗工液を、ワイヤーバーで塗工して、90℃で10分間乾燥し、溶剤を除去し、3層の構造((a)支持体フィルム/(b)剥離層/(c)ポジ型感光性レジスト層)からなるポジ型ドライフィルムレジストを作製した。(c)ポジ型感光性レジスト層の厚さは7μmであった。
【0164】
銅張積層板に貼り付ける前に手で持った際、多少の折り曲げに対してもポジ型ドライフィルムレジストに割れ(クラック)が発生した。そして、(c)ポジ型感光性レジスト層が、(b)剥離層から大面積で脱離し、使用できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明のポジ型ドライフィルムレジストは、プリント配線板、リードフレーム、メタルマスク、シャドウマスク、半導体パッケージ、電極部材、電磁波シールド等の製造において、金属基材のエッチング加工やめっきによる金属加工の際のレジストとして利用可能である。
【符号の説明】
【0166】
(a)支持体フィルム
(b)剥離層
(c)ポジ型感光性レジスト層
(d)保護フィルム

図1
図2